いじめ防止対策協議会(第3回) 議事要旨

1.日時

平成27年3月5日(木曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. いじめ防止対策推進法施行後の状況に関する調査の結果について
  2. 不登校における重大事態の対応について
  3. 文部科学省の取組(報告)

4.出席者

委員

相上委員,愛沢委員,新井委員,尾上委員,木太様(柏木委員の代理),高田委員,小泉委員,水地委員,直田委員,森田委員

文部科学省

徳久大臣官房総括審議官,小松初等中等教育局長,伯井大臣官房審議官,内藤児童生徒課長,平居生徒指導室長,齊藤課長補佐,丸山生徒指導調査官 滝充統括研究官

5.議事要旨

議論に先立ち,座長より平成27年2月に神奈川県川崎市で発生した中学生殺害事件に関して言及があった。

《議題(1)いじめ防止対策推進法施行後の状況に関する調査の結果について》
※事務局から資料説明(資料1)
【委員】組織に対する委員の人選等で公平・中立性を担保できる人材の確保に苦慮しているようである。日弁連としては,全国の会から推薦を求められた際には,その要件と留意事項について各弁護士会に通知している。また,保護者との対立等にもいろいろ苦慮しているようである。教育委員会で抱え込んだりせず,法律家を活用するといいのではないか。
【委員】日本社会福祉会では,全国で子供家庭支援委員会というものを組織して,全国でバックアップする体制を作ったところである。
【委員】生徒指導学会でも,いじめ防止対策推進改善委員会というものを作り,必要な人材の推薦,研修会,協議会を開催して広げていくとともに,必要な人材の推薦を進めているところである。
【委員】ほとんどの学校で基本方針を作成し,それに基づいて対応を進めている。外部専門家のやりくりについては,今のところ特別大きな話は聞いていないが,それぞれの地区の教育委員会がリーダーシップを取り,各学校へ様々な形で支援をすることが一般的である。ただ,法施行から1年以上経過したので,各学校が立てたいじめ防止の基本方針を見直していく必要があるだろう。来年度の新しい教育課程が始まる中で,学校としても少しずつ改善策を考えていくことが求められている。
【委員】精神保健福祉士につきましては,社会福祉士とともにスクールソーシャルワーカーの基礎資格と位置付けられているかと思う。スクールソーシャルワーカーに関しては,人の確保をできるだけ常勤に近いスタイルで教育委員会であるとか,学校に配置されていくことが重要である。
【委員】第三者委員会で臨床心理士を推薦してほしいという要望が多い。第三者委員会に推薦できるような人材の研修システム,また他県からの派遣を可能とするシステム作りを進めている。第三者委員会ということになると,被害者支援の知識だけでは対応しきれず,専門的な法律等についても研修して,資質の向上を高めていかなければいけないという意見もある。
もう一つは,個人情報の観点から,法的なことと併せて,臨床心理士としての倫理の問題も含めて研修していく必要があり,客観的に役に立てる委員を推薦していけるシステムを作っていく。
【委員】この法ができて,推進状況においては,組織の面では充実した内容をそろえている。しかし,今度は組織をどのように機能させるかに課題がある。教育委員会と学校も含めて,あるいは警察等も含めて,どのように教育委員会がリーダーシップをとっていくか課題である。また,重大事案について,教育委員会がどのように学校に援助ができるか。どうチームを作って学校をリードしていくか。指導主事を地域にあてがって,情報伝達等の仕組みを整えていく必要がある。
しかし,重大事件につながるような懸念があるものについては,教育委員会のトップがリーダーシップを発揮していく必要がある
【委員】日本PTAとしては,見逃せないことや関連する情報は横の繋(つな)がりで解決できることもあると考え,横の繋(つな)がりを意識した取組とともに,学校において基本方針を作成する際には,こちらから適切に発信していかないと,的確な関わりが薄くなる懸念が生じる。
また,組織内にも委員会を設置して,その委員会にて継続して審議することにしているので,発信する内容が,保護者に少し参考になるような形になればいい。ただ,保護者対応に苦慮しているので,しっかりカバーしていくべきだろう。
【委員】子供を救済したい,子供の権利を実現したいということからしても,立場によって異なってくるということがあり,感情に関わることでもあるため,学校が直接対応することにより,疲弊してしまったりすることが一番問題となる。そこは第三者に委ねて,学校が本来やるべきことをやっていくことが重要だろう。特に子供に関することは時間が大切なので,お互いが時間を使い,疲れていくことからは避けるという意味で,ある部分からは司法に委ねるということが,むしろ傷が小さくて済むこともあるということを,少しずつ試みていただければと思う。あわせて,弁護士の専門性を高めていくことも実施しているので,連携を取ってやっていけたらと考えている。
【委員】学校としても一生懸命対応しているが,他機関の方に入っていただいて,第三者的な立場で意見を言っていただくというのがいいだろう。この法律によって,学校あるいは教育委員会に組織が設置されていったというのは前進だろう。
《今後の見通しについて》
【事務局】学校あるいは教育委員会に義務あるいは努力義務を課している大きな法律あるいは基本方針であるので,その対応に対して,かなり負担もあるという率直な御意見も頂いている。地方をより支えるようなことをしていかなければいけない。
外部専門家を派遣するような仕組み,教育委員会から専門家チームを派遣して,調整をしたりすることができるような補助の仕組みは以前から作っているが,別途,総務省に地方交付税として要望しており,これも活用しながら体制を整えていけるよう教育委員会にも意見を聞きながら支援をしていきたい。

《議題2 不登校における重大事態への対応について>
※事務局から資料説明(資料2)
【委員】初期段階のアセスメントについてはイメージとしてよろしいのではないかと思う。
【委員】初期の段階で早く介入をして,適切な支援に結びつけることが大事である。登校できないことの背景にあるものにも踏み込んで,支援の入り口を考えていくことが大事である。
【委員】今,御指摘になったところが重要だと思っており,今回のこの取組が,いじめ法の対処についての方策であるが,いじめがあってもなくても,学校に来られない,来にくいということもあるので,不登校の原因について,いじめの有無にとらわれすぎないように見ていくことが重要ではないか。
【委員】基本的には,いじめ云々(うんぬん)よりも子供が学校に来ない状況を学校がどう把握するかということが大切な視点である。基本的に不登校の場合,3日目が勝負だということを学校は認識しているので,3日の間に状況を把握し,仮にいじめということが背景としてある場合には,それ以前からそういったサインなり,あるいは情報なりを得ている場合もあるので,早期対応という視点から,学校としても対応していくべきものだと思う。
また,仮に1週間休んだ場合,今度は地教委との連携も当然出てくる。地教委も各学校の不登校の状況は把握しているが,一つの情報だけではなく,複数の情報を組み合わせながら,子供の様子を見ていくことが大切な視点であるので,提案の形で受けていきたい。
【委員】初期の段階にいかにどれだけ対応できるかというのが重要で,それによって改善できる部分も大きいだろう。こういった形でガイドラインとかアセスメントが出ていくと有効であろう。
【委員】社会全体でこういったことを防ごうということからすると,もう少し初期段階で,プライバシーの問題とか個人情報もあるが,地域の目線は必要であろう。
【委員】「個人情報」というキーワードがよく出てきているが,これに関して,学校現場は過剰に反応して,必要であるにも関わらず,情報を機関同士で提供し合えないだとか,あるいは,なかなか家庭の中へ情報なり様子をうかがいにいけないとか,非常に個人情報という1つの大きな壁がある。けれども,常に開示請求ということを前提にしなくとも,これは必要な情報として記録なり,あるいはとどめておくべきこともあるわけなので,正しい解釈が現場に行きわたるように整理することも必要だろう。
【事務局】子供の安全を確保するために必要な行為について,必要な機関に必要な形で情報を提供したり共有したりすることは,個人情報保護条例の定める個人情報の保護を逸脱するものでは決してないと私どもは考えてございます。
もう一つ,不必要な個人情報に関するものを必要以上に取るというのは避けるべきなのですが,そもそも必要な個人に関する記録なども,極力残さないようにしている風潮が学校現場にあるのではないか。ただ,そういう情報は個々の子供たちについて,ある意味計画的,組織的に支援をしていくためには必要なものですので,そういった風潮に対して,私どもとして何らかの整理をしていかなければいけないのではないか。
私学の場合は個人情報保護法,公立の学校の場合は個人情報保護条例が適用になるが,いずれも正確に現場では理解されていないという節がある。記録の件に関して言えば,書かれていることが明確に個人情報なのであれば,条例によって守られる,開示請求が来ても不開示で対応できることを分かっていれば,記載を避けるということはあり得ないのだが,恐らく理解されていない。
個人情報の共有の部分については,個人情報の第三者提供の可否が問題になるわけだが,個人情報保護法上も個人情報保護条例上も,通常は,例えば,本人の生命,身体を守るためという目的であれば,できることになっており,そこでも法的な問題は生じないのではないかと思う。
ただ,一方,公務員の場合は守秘義務があり,第三者提供は守秘義務を解除するものなのかどうかという論点は残るが,仮に守秘義務を解除しなかったとしても,刑法35条の正当行為あるいは法令行為になるので,少なくとも捜査機関が刑罰権を発動することはあり得ないため,もう少し子供を守るために個人情報を必要な機関同士で共有する方法に舵(かじ)を切ってもいいのではないかと思う。
【委員】これを現場に分かりやすい形で,何か手引書のようなもの,例えば,厚労省は児童民生委員を加えて,今の守秘義務,個人情報に関しての機関同士のやり取りに関しては,きっちりと整理をして定義を作られていたと思うが。
【厚生労働省】虐待対応に関しては,子供虐待対応の手引きで示している。
【委員】文科省でもいじめ等問題行動等に関わって,その点は整理をして,現場に伝わるように工夫した方がいいのではないか。今の組織を作るにしても,専門家を入れていくにしても,多様な関連する問題点が多く,組織が機能していかない。あるいは,機関同士の連携がうまく進んでいかないという弊害が出てきているように見受けられる。
【委員】いじめや不登校だけではなくて,様々な子供との関わりの中で記録が持つ重要性というのは非常に大きい。ここでも個別の支援ということが出てくるわけだが,特別支援教育の中では個別の支援計画を立ててきっちりと対応していく。この生徒指導上の課題に関しても同じである。記録をすることによって,一つは学校内,それから学校と関係機関との情報共有ができる。その記録の取り方という面で,実は教員が問題に気づいていく気づきの力のようなものが育まれていくのではないかという気もする。欠席1日目がスタートだが,そこに至るまでの経過をきちんとアセスメントの中に入れていく。そういう記録をすることによって,欠席1日目よりもっと早い段階での,本当に早い段階での気づきが学校の中で生まれてくるのではないかという意味で,記録を残す,記録を取ることの大事さをもう一回改めて,法の絡みと併せて学校現場に下ろしていくことはとても大事なことであると思う。
【委員】スクールカウンセラーを要請するときに,記録の取り方という部分は非常に重要な問題であって,実際にカリキュラムの中でも指導していくのだが,スクールカウンセラーとして学校に入って,いろいろなアセスメントをしたときに,開示請求を,お子さん御本人がされたときはどうなるのか。
【事務局】個人情報保護法なり,個人情報保護条例なりに個人情報開示請求の手続があって,そこにも開示事由が定められておりますので,本人の評価に関わるような内容のものについては通常,不開示情報になります。
【委員】要保護児童対策協議会のような地域の守秘義務をきちんと課したところと連携をしながら支えていく仕組みを,福祉分野とも連携しながら考えていく必要性はあるのではないか。
【委員】スクールカウンセラーが学校へ行って活動をするときに,一番重要なのが,この心理アセスメントである。何の情報で判断するかといったら,先生方とかいろいろな方から頂く情報である。一番肝腎なのはプランを立てるときの客観的な情報である。情報という部分のアセスメントに関しては,私たちの生命線であり,そのためには客観的な情報を頂く,また,頂ける人間関係,先生との信頼関係を作っていくことが重要だろうなと思う。
【委員】これは個別支援計画にも関わるところであり,個別支援というのは,その場ではなくてある程度の時間的な時系列の中でどう回復させていくかということに関わる問題である。

《議題3 文部科学省の取組(報告)》
※事務局より資料説明。
《自由討議》
【委員】今回の川崎の中1殺害事件については学校というよりも地域として,地域の中で引き起こされた事案であるという具合に私は考えている。文部科学省としては推進法との関連で今回の事案はどういう具合に位置付けているか。
【事務局】特にいじめの加害者の方が,当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等というところが,法律上の定義になっている。 今回の事件については,仮に学校に在籍していないのであれば,厳密なことを言えば,このいじめ防止対策推進法の定義には該当しない。ただ,今回のこのいじめ防止対策推進法の観点として重要なのは,いじめられている子供をどういうふうに守っていくこと。これが観点の中の一つの重要なポイントだと思っており,当該学校の児童からいじめられるだけではなくて,同じ学校に在籍しない児童生徒からのいじめも含めて,その対象にしているということなので,学校としては子供を守る観点で,子供がいじめられている,若しくはそういう懸念のある状況にあった場合に,他の機関と連携し,必要に応じて連携しながら組織的に対応することが必要だと思っている。
今回の川崎の事件について,法の要件を仮に満たさないとしても,子供を守っていくという観点で,学校や教育委員会が,早期に組織的に対応し,また,地域社会や学校機関との連携を強化していくことは言うまでもなく重要なことであるので,今後もそのような連携の一層の促進に努めていく。いじめ防止対策推進法の観点にも合致する話なのではないかと思っております。
【委員】法との関係を少し整理していただいたが,一つ大事な点が浮かび上がってきた。それは,地域における防止対策,再発防止も含めてどういう手立てがあるのか。それを私たちも考えていかなければいけない。それは,今回の事案に関わらず,他のいろいろないじめ事件に関しましても重要な点だろうと思っている。
【委員】関わりのスピード感が必要である。私は少年補導員という形でも関わらせてもらっているが,小学校のPTA,中学校のPTA時代から,多く関わってきたこともあるので,地域の人を活用するという部分が必要であろうと思った。
【委員】今回は,学校の生徒ではなくて,年上のいろいろな課題を抱えている方との関係の中で起きてきていると思うが,子供がこれだけ大変な状態に追い込まれながら,大人にSOSを出せなかったことが大きな問題で,大変な状況にある子供を早く発見して,誰かがつながるということが大事だなと考えている。
個人の生活の問題などがあり,入っていきにくいところかもしれないが,背景にある生活の課題にも,学校側の社会のプラットフォームになって福祉の制度にもきちんとつながっていくとか,子供の貧困対策に関する大綱にも掲げられているようなところをきちんと今回の事件を把握してできることを学校や地域でやっていくと同時に,そういう社会的な面でも今回の事件を見つめ直して,できる支援につなげていくことを私たちは考えなくてはいけないと感じている。
【委員】私も青少年指導補導員を二十数年間やっている。その中でいろいろなやり方を工夫してきました。広い範囲から情報を収集していけたらと考えている。
【委員】この問題は文科省でもコミュニティスクールというプランニングを今進めているが,学校を含めて地域自体が一つの大きな教育力を増していく装置として,これからどう作っていくかということも絡んで,この問題を位置付けていかなければいけない。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課