いじめ防止対策協議会(第2回) 議事要旨

1.日時

平成26年10月24日(金曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省5階 5F3会議室

3.議題

  1. 平成25年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」の結果について
  2. 学校,教育委員会,関係団体におけるいじめ防止対策推進法に基づく取組状況の把握について
  3. 文部科学省の取組
  4. その他

4.出席者

委員

相上委員,鎌倉様(愛沢委員の代理),安倍委員,新井委員,尾上委員,柏木委員,高田委員,實吉委員,水地委員,外山委員,直田委員,道永委員,森田委員,横山委員

文部科学省

赤池文部科学大臣政務官,小松初等中等教育局長,伯井大臣官房審議官,内藤児童生徒課長,平居生徒指導室長,齊藤課長補佐,丸山生徒指導調査官 他

5.議事要旨

※議事に先立ち,赤池文部科学大臣政務官及び委員より挨拶があった。
※議事次第(1)~(3)について事務局より説明があった。
※事務局の説明に関して質疑応答の後,委員より会の進め方についての説明があった。

【委員「いじめの防止等」の「防止等」は,「未然防止」「早期発見」「対処」という大きく三つの柱(領域)から成っている。今回はそのうちの「未然防止」及び「早期発見」を中心にして御議論する。また,問題行動等調査の結果も踏まえ,あるいは取組事例集,あるいは地方・学校の基本方針を参照していただき,各委員から現在の状況と課題について,御意見を頂きたい。
その際,一部の委員に関係する団体については,団体の取組が事例集に盛り込まれているが,その補足説明,あるいは各団体として,いじめ問題の現在の課題というものに対して,どう協力できるのかという観点も含めながらも御議論いただきたい。
議論の整理上,まず「未然防止」という観点から御意見を頂き,その後「早期発見」の観点へ移らせていただき,残された時間で両者を踏まえながら,この問題にどう取り組んでいき,実効性のあるものにしていくかという観点で御議論いただきたい。
【委員】弁護士の対応では,「対処」が中心になると受け止められがちである。しかし,「未然防止」の段階についても,「子どもの権利について検討する委員会」等で研究しており,市民の方,学校の先生方,場合によっては子供たちに直接そういった問題を考えようという企画を持つなどしている。さらに,1995年の段階で,『いじめ問題ハンドブック』を作成し,現在,全面改訂を今回の法施行を踏まえ,3月か4月に完成する見込みである。
また,「未然防止」に関わるという取組として,「いじめ防止授業」を学校に入って行う活動をここ10年ぐらい実施している。
ただ,制度として国や自治体の認知を受けていないというところがあり,各地の弁護士会が各学校や教育委員会に,提案という形で実施しているという状況である。
【委員】「いじめ」というのは「人権侵害」であるといった視点からの捉(つか)まえ方が必要であり,いわゆる「人権教育」を確実に取り組んでいくところに,法律の専門家が入っていく意義は大きいのではないか。
一方で,弁護士が教育の世界に入っていくことについて,疑問を持たれる方もいらっしゃると思うが,授業をする中で,生徒たちの変わり方あるいは先生方の意識改革があると思っている。
しかしながら,そのような授業ができるメンバーをどうやって作っていくかという点,人権ということを改めてしっかりと考えていかなければならない点で,弁護士会自身もブラッシュアップ(底上げ)に取り組んでいるという段階である。
授業では傍観者の問題に視点を当てて実施する必要があることから,今回の取組事例集の中でも力点を置いている。また,傍観者が仲裁者になることによって,いじめの構造が変わってくることの動機付けをいろいろな事例を通して紹介しながら,あるいはロールプレーを取り入れることも試みている。教育界の視点と違った視点で,人権侵害の観点から取り組むことが大きいのではないか。
資料3の中で,未然防止の中で道徳教育の抜本的改革・充実と,それから健全育成のための体験活動の推進という2項目あるが,ここに第3の視点として人権侵害,人権教育についても一つの柱にする必要があるのではないか。
【委員】臨床心理士会では,「未然防止」という観点で子供や保護者も含めて話をするときに,人権教育の依頼も受けることが多い。
また,企業のメンタルヘルスを考えるときに,一番大切なのは企業のトップの方々の意識改革が重要である。同様に,いじめをする子供たちの理解も大切だが,親や学校の先生方のいじめに対する意識改革が未然防止という部分では一番重要である。
【委員】当会では,大津のいじめ事件に発して,いじめ対策委員会を立ち上げ,一定の宣言文という形で終了したが,今年度より,それを継続していこうということと,保護者としての指針として,そういったものを全面的にアピールしていこうという動きがある。
また,保険会社がCSR活動で取り組んでいるいじめ防止対策標語の取組を,今までは各協議会の選択性という形で実施していたが,今後は全国的に取り組んでいくとで,未然防止を進めていきたい。
【委員】日本社会福祉士会では,県にスクールソーシャルワーカーが配置されており,そのスクールソーシャルワーカーがいじめ問題への対応として,相談・援助をするという体制がある。
会としては,児童を取り巻く全てのものが社会的な環境として影響することを伝達している。また,スクールソーシャルワーカーを支援する体制ということで弁護士会の方とも連携をしながら,実は高齢者,障害者の方は虐待専門職チームという形で,今,各都道府県で弁護士会と連携して一緒に行っている。
一方,児童の方は,児童相談所が中心になって動くという形になっているために,児童相談所の方には社会福祉士が多く配置されているが,実際に虐待防止の専門職チームがない。児童相談所を含めてスクールソーシャルワーカーを支援する体制を整えることで未然予防としたい。
【委員】2点お話ししたい。1点目。先日,定時制・通信制の高校生の生活体験発表大会があったが,教員の子供たちへの言葉がけが不登校のきっかけになっていることを感じた。
子供たちが傷付きながらも頑張っている姿を見ると,まずは,指導する教員が人権意識,人権感覚というのをどう持つかというところからスタートする必要がある。子供たちは先生の後ろ姿を見ているので,いじめ問題の解決の一つのポイントになる。
2点目。いじめ防止の宣言というものは多くの学校でやっていると思うが,S市の場合は,通学路の電柱に,広告会社と連携して宣言文が書いてある。登下校中の働きかけを一般の企業とか業者と連携しながら取り組んでいくというのも一つの切り口である
【委員】連携というと,ともすれば,学校・地域・家庭という三者の連携になるが,企業との関係については,よい事例を紹介いただけたかと思う。いろいろな企業との連携を考え推進していくことが結果として地域へ広がり,あるいは国民挙げてのいじめへの対応,あるいは防止というところへつながっていくだろう。
【委員】この法の施行後,市町村ではいじめの防止ということで,教師の言動・姿勢について,しっかり取り組んでいこうという意識を高めている。いじめの予防として最も大事なことは,何も起こっていないときの指導であり,この視点に立ち,人権侵害にならないような具体的なことを学校で考えていきたい。
それから,日常の教育活動を通して子供との信頼関係の醸成が大事であるが,家庭と教師の関係,学校との関係,家庭生活にいろいろ問題があるので,いろいろな方の話を聞きながら推進していくということが,学校としても大事であり,教育委員会など学校を把握する立場にあるところも,啓発を進めていくのが大切である。
【委員】人権侵害という観点は大事である。重大事案に至らないいじめに関しても,人権侵害に当たる行為は含まれており,これは子供たちだけではなくて,社会全体の中に含まれている人権侵害問題は少なくない。いじめというのは人権侵害行為であり,その面に焦点を当てるということも,今後大事なポイントとなるだろう。
【委員】未然防止という観点では,臨床心理士がスクールカウンセラーとして学校で活動しているが,学校の先生たちが精神的な健康度を高く維持しながら,明るく楽しいクラス経営をされることが重要である。そのために,先生方に対するカウンセリングなど様々な支援により,先生方が少しでもエンパワーメントし,子供たちと明るく楽しく関わっていくのも未然防止には役に立つのではないか。
【委員】先ほど的確な御指摘を頂いたが,関係機関,専門家同士の連携についても意識をしていかなければならないと思っている。
現在,弁護士会の取組として,大阪の場合では臨床心理士会と連携して,いじめに関する電話相談を毎年「こどもの日」のあたりで実施している。これは子供,あるいは悩んでいる人たちが,すぐ専門家に相談できるという効用がある。したがって,社会福祉士との連携と弁護士会の連携,あるいは臨床心理士会との連携という形で,文科省も含めた上での連携ということを大事にしたいと考えている。
各団体の連携を意識した取組の報告をとおして,各委員の意識を高めることも必要ではないか。
【委員】学校教育関係者以外の方から様々な御意見を伺って,今まで自分が自明に捉えていたもの,前提とした認識の枠組み自体を揺さぶられるという経験が随分あった。
そういう意味で学校に外の風が入ってきたことを高く評価しているが,一方で,教員が萎縮してしまう可能性もある。先ほどエンパワーメントという言葉が出たが,教員が元気に,連携しながら,いじめに取り組んでいくという教員の専門性に対するお互いのリスペクトがある中で連携をして,いじめの問題に取り組んでいくということが大切である。学校がいつも批判の対象だけになるのではなく,学校が自信を持ってやれるような状況ができればいいと考えている。
【委員】私たち,特にメンタルヘルスに強いソーシャルワーカーとして感じることは,我々は非常に数が少ないので,先生方が私たちを活用してくださらなければ,全く連携も調整もすることはできないと思っている。我々は,先生方を本当に後方で支援するような連携・調整機関を生み出したいと思っているので,是非活用していただきたい。
【委員】県のいじめ問題の対策連絡協議会では,学校の問題の解決は教員だけでなく,専門家の知見なりを活用してもらいたいという意見があった。
もう一つ,印象的な意見だったのは,保護者に対してもっときめ細かな情報提供をやることによって,保護者の問題意識も高まるのではないかという意見。まさにこれは「連携」というキーワードの中で進めていくことだと思う。
【委員】子供たちのためには,教員自身が幅広い見識を持つということが大事だと思う。弁護士や臨床心理士をはじめとして,幅広い分野の方と連携をとることを研修等で進めていくことが大事である。
【委員】私は複数の附属機関の委員を務めているが,社会福祉士,あるいは精神保健衛生士の方が入っているケースが非常に少ない。一方,スクールカウンセラーの臨床心理士関係や弁護士会,医学関係も入っている。ところが,福祉の場面が非常に少ない。
とりわけ今回の概算要求を見すると,スクールソーシャルワーカーの拡充が700人とかなり増加している。これは,支援・協力関係に加えて福祉の観点というのが学校へ大幅に入ってくるということである。こういうものを一つの契機として,今後の連携の在り方を模索しながら福祉的支援を必要とする子供たちへの支援体制を整えていただきたい。
もう1点は,関係機関という形で捉えると,一つの地域社会を作る社会資源の観点で,学校教育というのは位置付ける必要がある。従来の制度の枠組みでは,コミュニティスクール,あるいは学校評議員制度がある。これは,本来の学校教育も支援するだけでなく,地域もそれによって教育力を増していくという重要な一つの仕掛けとなるのではないか。
それをもう少し日本社会の中で広げていく必要があるのではないか。それは,まさしく地域社会との方々と協力しながら,子供たち,あるいは地域,家庭というものの教育力を上げ,ひいては,いじめの未然防止,あるいは対処に対しても,あるいは早期発見に対しても,いろいろな御協力を頂く重要な仕掛けになるだろう。
【委員】様々な職種の方と横の連携を取っているが,ある程度,縦割りのところの連携も十分必要になってくると思う。
【委員】「早期発見」に関しても意見をお出しいただきたい。早く気付いて,そして早く対応してやるというのは,事態が深刻化しない,あるいは重大事態に至らない一つの重要な方策である。
今回の基本方針の一つの大きな特徴は,徹底した組織的対応というところにある。組織が形成されたあと,いかに機能させていくかというところが大事なところである。形はあっても機能させるのが難しいという面があり,どう機能させながらいじめの早期発見へつなげていくかというところが難しい。
しかし,これは学校として,日常の中にあるいろいろなグループや組織とのインフォーマルな関係,あるいはセミフォーマルな関係と,それからフォーマルな学校の機関の組織というものの連動をどう取っていくのかというところがポイントであり,組織論としても非常に大事なポイントとなる。
皆さん方の団体において,早期発見に関して,どういう形で学校と協働しているのか,あるいは実効を上げるための連携関係が可能になってくるのかについて,提案や実例を御紹介願いたい。
【委員】スクールロイヤーへのニーズを,調査してみると分かるのではないかと思うが,スクールロイヤーとして活動しているメンバーに話を聞くと,予防ということより,早期発見ということでスクールロイヤーが入っていることが多いようである。
【委員】子供がいじめられている友達を見たときに,そんなに先生にストレートに相談できるような状況ではないと感じている。
そばにいる子供たちが何らかの形で相談機関にアクセスできる方法というのはどういうものが考えられるのか。
【委員】弁護士会でやっているのは「子どもの人権110番」で,匿名でもいいから子供から直(じか)に電話を受け付ける。
【委員】子供たちのSOSを受けるための手を広げるところだけでなく,対応者が力をつけておかないとならず,課題は山積している。
【委員】教員の意識をどうするかということ,あるいは学校としてどう意識を持っているかということについては,例えば,校長として教員に啓発していくということが第一に必要である。
【委員】スクールカウンセラーは外部から来ているので,子供たちも悩みを言いやすいと思われるが,なかなか言ってもらえないのが現状である。ただ,後から考えると,いろいろなサインがあり,これを見落としていることを反省しなければならない。
それと,児童養護施設では,聞き取りを頻繁に行い,子供たちの状況を把握するが,スクールカウンセラーだから可能なことがある。
山口県がやっているFitという検査があるが,先生方の負担にならないように,採点を私がして先生方に返却するようにしている。大切なのは「聞き取り」ではないかと思う。
【委員】相談してきた子供の立場を考えたとき,相談を積極的に促すような,知らせてくることの正しさというものもしっかりと子供たちに教えていき,情報収集を行わなければならない。被害の子供を守るだけではなくて,言ってきた子供をフォローアップしながら,しっかりと守っていくという体制を作りながら信頼関係を作っておかないと功(こう)を奏さないということになってしまうため,これは非常に大事だと思っている。
法律及び基本方針は,施行状況を勘案して3年後に見直すこととなっている。その際に,本協議会の意見を盛り込んでもらい,本協議会としても引き続き取組状況の議論を展開していきたい。


お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課