【資料1】これまでの意見の概要

■英語教育について

○ 今回の英語教育改革の目的を明確にすることが必要である。とりわけ、小学校において、3年生から活動型、5年生から教科型とする考え方を分かりやすく示すべき。
 これまでの議論を通じて、社会における急速なグローバル化の進展という社会的な背景と、これまでの英語教育改革の進展を踏まえた更なる取組の充実、の2点が指摘されている。

○ 第一に、社会の急速なグローバル化の進展の中で、英語教育の一層の充実は我が国にとって極めて重要な問題。
 東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020(平成32)年はもとより、現在、学校教育で学ぶ児童生徒が卒業後に社会で活躍している2050(平成62)年には、我が国の置かれる国際的状況は大きく異なっており、英語教育の一層の充実に対する社会の期待は更に強まっていると想定される。

○ 第二に、これまで英語教育については、幾多の議論を経て、現行の学習指導要領が実施されており、その成果と課題を踏まえながら、小・中・高が連携し、一貫して英語によるコミュニケーション能力を養うことが求められる。

○ 現行の学習指導要領では、すべての教科領域において、児童生徒の思考力、判断力、表現力等を育むため、言語に対する関心や理解を深め、言語に関する能力を育成できるよう、更に言語活動を充実することが必要である。
 外国語教育の充実に当たっては、学習者が、言語の性質・仕組み・働きを理解することにより、母語の効果的な運用能力を向上させ、更に外国語の効果的運用に必要な能力を伸ばすという観点も重要である。
 英語力とともに、自らの考えを主体的に述べる意欲と態度、表現力を身に付けさせ、「自分は英語を使ってコミュニケーションを図ることができる」という自信を持たせることが大切である。

■検討における論点

○ 研究開発学校や教育課程特例校も含めて、これまでの英語教育の成果と課題を検証することが必要。

○ 英語教育の議論に当たっては、いろいろな前提が曖昧だと混乱しがちなので留意する必要がある。

  1. 教室・集団での学習と、一人での学習を区別して議論する必要があること。
  2. 極めて高い英語力を持つ生徒を念頭に置いた議論と、多様化が進む高校生の実態を踏まえた議論を区別する必要があること。
  3. 初等中等教育修了後の進学先として、国内大学だけを考えるのか、海外大学も想定するか、前提を整理する必要があること。
  4. 外国語の指導は日本人だけが行うのか、日本の学校組織のグローバル化をどう考えるか、ということを整理する必要があること。

1.教育目標・内容の在り方について

(1)小・中・高を通じた目標・内容の在り方に関する共通事項

○ 中学校・高等学校の先進的な実践事例では、コミュニケーションを重視した授業改善が徐々に広がっているが、課題としては、今回の改革が小・中・高を通した英語教育の高度化の方向性から、各学校種の到達目標の在り方を含め、学校種間の接続の部分を明確にしつつ検討していくことが、指導者の在り方と並び重要である。

○ 義務教育ではない高等学校は、同じ高校英語教育でも学校間の学力、教科書の差はあることも踏まえながら、今後、小・中・高を通した英語教育改革を考えていく場合、学校種間のつなぎの部分をどのように捉えるかということが重要である。

○ 小学校高学年での教科型の英語教育を検討するに当たり、中学校や高校が抱えている課題と無縁ではない課題は各学校の課題として解決することなのか、もう一段階前の学校種でその解決が図られるべきことなのかといった議論が重要である。

(2)小・中・高を通じた学習到達目標について

(これまでの取組)

○ 現行の学習指導要領は、外国語科の目標に「コミュニケーション能力」を養うことを掲げており、多くの学校において、その目標に沿った授業が行われている。

○ そのような中、「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策」(平成23年)等が示されたこともあり、中学校・高等学校において「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から、4技能に関する学習到達目標を、いわゆる「CAN-DOリスト」の形で設定する取組が進んでいる(平成25年度末までに、中学校の17%、高等学校の34%で作成されており、これから設定する予定の学校を含めると6~7割に達する)。

○ そうした取組を更に進める観点から、今後、国において、小・中・高で一貫した学習到達目標を設定し、その実現に向けて検討を進めることとしている。
 その一環として、文部科学省において、現行の学習指導要領(外国語)に基づき、その学習内容を「~することができる」の形式で編集し直したものを「能力記述文の形で示した国の学習到達目標(試案)」として提示している。

(学習到達目標を設定する効果)

 

○ 具体的な学習到達目標は、各学校において、それぞれの実情に応じて作成することが想定される。
 その場合の効果として、以下を挙げることができる。

  1. 学習到達目標を通じて、児童生徒にどのような英語力が身に付くか、英語を用いて何ができるようになるか、あらかじめ明らかにすることができる。また、そうした情報を生徒や保護者と共有することでゴールが明確になる。
  2. 特に、学習指導要領に基づいて目標を設定し、指導と評価を行う際に、文法や語彙等の知識の習得にとどまらず、それらの知識を活用してコミュニケーションが図れるよう、4技能の総合的な育成を重視することが期待される。
  3. ともすれば、校内でも教員により指導方法が大きく異なることがある中で、学習到達目標の策定を通じて、教員間で、指導に当たっての共通理解を図ることができる。
  4. 評価が、面接・スピーチ・エッセー等のパフォーマンス評価などによって「言語を用いて何ができるか」という観点からなされることが期待され、更なる指導と評価の一体化とそれらの改善につなげることができる。

(留意事項)

○ 一方で、学校における学習到達目標の作成に当たっては、以下の留意点が挙げられている。国や教育委員会は、そうした取組が円滑かつ効果的に進むよう支援していくことが必要となる。

  1. 学習到達目標に掲げられた内容を形式的に達成すればよいのではなく、授業を通じて教員が児童生徒の状況を的確に把握しながら、英語力の向上を支援していくことが必要である。
  2. 学習到達目標を設定すること自体が目的となってしまわないように、研修等を通じて、教員の共通理解を図ることが求められる。
  3. 小・中・高を通じた学習到達目標の設定に当たっては、早期の段階から高度な水準を求めることがないよう計画し、児童生徒のモチベーションを維持・向上させるような配慮が必要である。
  4. CEFR (Common European Framework of Reference for Languages) における議論との関わりを整理することが必要である。

○ 学習到達目標の明確化について、その目標まで到達しない生徒がそのまま次学年や次の学校種の学校に進むということも実態としてあると考える。その中で、学習到達目標はどのような考え方で設定するのか、全員の生徒に到達させることを前提とした目標であるのか、ということを考える必要がある。

(小・中・高を通じた学習到達目標に関わるその他の論点)

○ 小学校の出口だけを考えるのではなく、中学、高校、大学も含めて、どのような学習成果、また学習到達指標、到達目標を設定するかによって、教科型がいいのか、何年生から始めたらいいのかということは決まってくると考える。

○ 昨年12月に発表された実施計画を見ると、中学の段階ではCEFRのA1からA2程度、高校はCEFRのB1からB2程度となっており、このような世界標準まで引き上げるということを前提として、小学校中学年から活動型、高学年から教科型を導入するということか。また、英検準1級、TOEFL iBTで57点以上や、CEFRのB1からB2レベルの設定は、現状を踏まえると、かなりチャレンジングな設定だと思うが、学校における限られた授業時数だけで達成できるというよりは、それを含めた生徒の自律的な学習、あるいは様々な校外活動に参加した上での到達指標としての目標と考えるべきではないか。

○ 高校の出口のところでB1、B2レベルを達成するというのは、学校教育では困難であり、社会全体の中で様々な協力を得ながら達成する可能性もあるというふうな目標として捉えて良いか。

○ 高等学校は非常に学校が多様化しており、英語のレベルも上から下までかなり差がある。生徒自身も学力に差があり、全員が英語を学んでいかなければいけないという現状を踏まえた上での目標を設定していただきたい。少なくとも小学校から英語を勉強してきて、そのモチベーションや興味関心が高まる、深まるといったところの気持ちは基本的に押さえておくべき点である。

○ 学習指導要領について、国が示している指導や授業の在り方、あるいはゴールなどが必ずしも共有されていないケースが多々あり、学習指導要領の書き方に課題があると考える。「CAN-DOリスト形式」の目標を学習指導要領本体に位置づけるべき。同時に、現行の学習指導要領では、思考力、判断力、表現力を育てることを重視しているので他教科でもCAN-DOで書き込めることはたくさんあると考えるので他教科でも学習指導要領でCAN-DOリストを本体に位置づけるべき。

○ 「コミュニケーション」が重視されているが、口頭によるコミュニケーションということに特化されるのではなく、読み書き、文字によるコミュニケーションというものに対しての配慮が必要である。また、「ことば」という視点を重視する観点から、母語によるコミュニケーションと外国語である英語によるコミュニケーションの連携が必要ではないか。

○ 学習到達目標を明確化することは良いが、CAN-DO形式の目標は到達指標をとして設定されたものであり、それ自体を到達目標として学習指導要領の中に位置づけることは、大きな問題があるので慎重に検討すべき。

○ 教科書について、児童生徒の言語活動の充実と総合的なコミュニケーション能力の育成を重視した形で編集されるよう、どのような工夫が可能か検討する必要がある。

○ 教員養成課程において、児童生徒の4技能を伸ばすための指導や評価の方法などの教授が充実されることが期待される。

○ 学習到達目標が設定されていく中で、それと入学試験や外部試験との関わりがどうなっていくか検討する必要がある。

(3)小学校における英語教育の目標・内容

○ これまで外国語活動の実施に尽力してきた小学校教員の努力と実績、課題を踏まえることが必要。

○ 今後の我が国の社会経済のグローバル化の進展の中で、将来、どのような職業に就くにせよ、英語の必要性は一層強まっていく。そのため、学校教育を修了した時点で求められる英語力について構想しながら、小学校段階における取組を検討する必要がある。

○ 中学校の英語教育を小学校にそのまま下ろすのではなく、小学校ならではの英語教育を行うべき。
 英語だけでなく、広く世界の言語を見据えた観点を持つことが重要である。

○ グローバル社会、グローバル人材育成を掲げるとき、日本のような国では、母語と違った言葉、異なる異文化を背負った人たちとのコミュニケーションというのは今後更に重要になる。言葉は重要な手段であり、母語ではないものを使って小学生が関わることの難しさ、面白さ、意義というものを感じることが必要である。現在、外国語活動は体験的な活動として、慣れ親しむということを通して異文化コミュニケーションの素地を養うことを目標に取組が進められているが、次期学習指導要領では、更に教科として系統的・体系的な学習をするという方向で検討する。

○ 現在、小学校高学年で外国語活動を1時間、中学校では教科英語というのを4時間行うことになっている。今後、小・中学校間をつなげていく必要があるが、その落差というものをある程度どういうふうに埋めていくのかということが、教科としての目標・内容を決める大きなポイントとなる。

○ 教育の目的は、他の教科ではできない、また外国語活動でもできないものとして明確にする必要がある。小学校高学年になぜ教科英語が必要なのかということ、言語習得の話では必ずしもないということ政策的な狙いを明確に打ち出すべき。

○ 小学校の先行した取組の中で、教科型で教えているところがあるが、5・6年生の発達段階に合わせ、どのような指導にしていくか。調査研究の結果、それらの中ではどのような工夫があって、どのような定着が起きているかという科学的データ等を示し検討することが必要。

○ 外国語活動の授業が好きだ、あるいは学級の様子が非常に良くなったということを聞いているが、研究開発校等において小学校高学年の後半になってくると、子供たちの中に腑(ふ)に落ちない、曖昧さに耐えにくいという傾向が見られる。これまでの外国語活動の中では音声中心だったが、教科に取り組むことによって、今後、文字を通すと、こんなところに「s」が付いていているという気づきを基に子供たちの理解を確かめながら、きちんと引き上げていくということを研究開発学校等の中で進めていくことが必要。  

○ 小学校で体験的な外国語活動でかなりの成果が出ているが、中学校における文字学習のつまずきが見られる。小学校と中学校の間のギャップを埋めるのは、文字が鍵を握っているのではないか。文字を通じて子供たちが明確に腑(ふ)に落ちることが出てくるのではないか。言語材料としては前倒しの部分もある。

○ 肯定文、否定文、疑問文や語彙も含め、中1、中2で扱っているようなことは当然5年、6年でも扱っており、また文章、表現、語彙等については、小学校5年、6年、中には3年で単語にも触れることもある。現在、中学校における指導法、例えば文構造をそのまま教えるというよりは、言語活動を繰り返しながら文構造を意識させて、子供たちの中に文構造を理解させていくが、それらを、そのまま小学校へスライドするかどうか。仮に、教科になった場合には、ある程度の定着を求め、中学校では、小学校で学んだことを、もう一段上へ行く形で指導することになるのではないか。

○ 中学校の内容が小学校高学年に入ることは当然とだと思うが、指導法の違いが大きい。現在、中学校でされている指導法を、そのまま5、6年に持ってくるとうまくいかないのではないか。また、発達段階に応じた指導があると考えるので、中学校からの単なる前倒しではない。

○ 学校で6年生文字指導を行うと、アルファベットには抵抗感があり、また、それらが一つの単語になると読み方も変わり、どうなるかという戸惑いも見られる。日本語と違って面白いし、学びたいという好奇心を持っている子もいるが全員ではない。文字そのものも書けない児童もいるので、そのような子供たちが興味を失うことなく文字を抵抗なく受け入れていくような仕組みやカリキュラムが必要である。

○ 中学校との一番大きな違いとして小学校の外国語活動の多くで実施しているのは、帰納させるときに例を意図的に与えず、子供たちに自発的に気付かせる環境を作るということに肝があるのではないか。

○ 児童には、自らの考えを英語で表現するための十分な語彙や表現を身に付けることが困難であるが、コミュニケーションに積極的に関わろうとする態度は育ってきている。今後、小学校中学年から学習を開始することに伴い、英語学習への動機付けを更に高め、コミュニケーション能力の素地を養うことで、小学校卒業時までに表現の幅が広がることが期待される。

○ 小学校高学年の外国語活動を教科化する場合、現在中学校で行っている指導法等をそのまま下ろすのではなく、音声を中心に「聞く」「話す」ことに十分に慣れ親しんだ上で、「読む」「書く」機会が提供されることが必要。

○ 英語の指導に関し、小学校と中学校の接続が不十分な場合があり、小学校での外国語活動の成果が中学校で十分に生かされていないと指摘されることがある。小学校卒業時における目標を明確にすることで、中学校では、それを踏まえた対応が可能となると考えられる。

○ 小学校高学年の教科化は、小学校中学年での外国語活動と、中学校の少しレベルアップをする英語教育とどうつなぐかが重要。例えば、中学校の英語教育の色を青とし、小学校の外国語活動が黄色だとすると、それを合わせると緑色になるが、その緑色の部分をどういうものを作っていくのか議論する必要がある。
 例えば、小学校の場合には、学級担任の力が非常に大きく、教科化が図られたとしても、子供たちの一挙手一投足をしっかりと見て、その反応に合わせて教員が子供たちにアドバイスをしたり、例えば英語の専門家としてALTを活用するということができるのは、まさに担任だと考える。その役割を、中学校の専科教員による指導とどのように区別をしていくか、つなぎの部分をどのように考えていくのが非常に重要である。

○ 早期からの英語教育の有効性を脳科学的に検証すべきとの観点から、いわゆる「臨界期説」について論点を整理した。

  • 「臨界期仮説」は、本来、母語習得に関するものであり、第2言語習得環境(第2言語に接する機会が日常生活にとても多い環境)を対象とする研究にも広げられた。明確な臨界期の存在は未確認であるが、一般的に、学習年齢が高くなるほど、ネイティブ・スピーカー(母語話者)に近い言語習得が難しくなると解釈されている。
  • 一方、日本のように、日常的に外国語に接する機会が少ない環境での外国語学習は、第2言語習得環境と分けて考える必要がある。スペインでの研究によれば、8歳から英語学習を始めた子供は、11歳から始めた子供と比較すると、文法能力では追い抜くことはできないが、リスニングと発音では、統計的に有意な差が出ている。国内でも、小学生から英語を学習した者の方が、大学生になってもリスニングの力が高く、英語への肯定的な態度が高いという研究結果がある。リスニング力等や英語を使うことの自信に関して一定の相関関係が見られる。
  • 脳科学は、著しい進歩を遂げているが、今のところ、言語教育や外国語教育に関する政策や教授法に直接に示唆を与える研究成果はない。

○ 中教審教育課程部会などの場を含め、学校教育全体の中で、コマ数等を含めた英語教育の在り方を検討すべき。

(4)中学校における英語教育の目標・内容

(これまでの取組)

○ 小学校への外国語活動の導入により、中学校入学時において、生徒のリスニング力が高まっているとの指摘がなされている。

○ 現行の学習指導要領により、中学校において、50分授業の半分以上を英語で指導する教員が多く見られる。また、生徒が授業で英語を使用する機会も増えている。
 高等学校における英語の授業においても、ペア・ワークやディベートなどの活動が日常的に見られるなど、英語の授業は大きく変わってきている。

○ 一方で、文法解説や訳読が指導の中心であったり、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするといった言語活動が不十分という実態が一部にあり、英語指導法に関する教員研修を充実することが必要である。

○ 教科の目標に関しては、バランスよく4技能の総合的な育成を図ることを基本に、授業時数は140時間、週で言えば4コマ相当、各学年とも増えるとともに、語数が1,200語程度増えている。また、言語活動の充実という観点から、各領域について4項目からきめ細かく5項目立てに編成し直した。
また、題材として、「伝統文化」あるいは「自然科学」を追加している。

○ 目標に関しては、理解、態度、コミュニケーション能力の基礎の三つの柱があり、三つ目が解説に指摘されているように、中核的な目標という位置付けとなっている。また、旧学習指導要領においては「聞くことや話すこと」とあり音声重視というスタンスであったが、現行は、小学校に外国語活動が導入され、「聞くこと」、「話すこと」への慣れ親しみが小学校の役割として入ったこともあり、それを踏まえた中学校の英語教育の在り方として、「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」、「書くこと」の4技能の総合的な育成とされた。  

○ また、第1学年においては、外国語活動で育成された素地を踏まえた指導を行うということで、小中連携が明記され、例えば、積極的な態度等、素地が育まれているという子供たちの実態をしっかり踏まえて、中学校1年生、特に入門期においては、きめ細かく指導することとなっている。

○ 今回の改善のポイントは、聞く、読むといった形で受信したことをもと に、話したり書いたりして発信することを目指していくということ、又は、四つの技能の統合、総合といった関連付け、バランスよい育成となっている。また、文法に関しては、コミュニケーションの支えであり、高等学校と全く同じスタンスで、言語活動との一体化を図ること、関連して活用することを通して定着を図る。要は、言語材料については、子供たちに実際のコミュニケーションの中で使う場面を作ってあげる、使いながら定着を図るといったこともかなり前面に出している。

(中学校の英語教育の目標・内容に係る課題・成果・今後の方向性)

○ 読むことに関しては、様々な場面が考えられるが、コミュニケーションの場面で読むとなっており、平成22年度の国の調査においては、例えば、幾つかの情報がたくさんあるものを整理して、正確に読み取っていくことが課題として出ている。また、書くことに関しては、まとまった内容の文章を書くといったところに大きな課題が残っている。一定程度の分量を書くことはかなりできるようになってきているが、質の問題、よりまとまった内容が書けることが、これからの課題ではないか。

○ コミュニケーションのための言語活動が真の「コミュニケーション」になっているかどうか、考えながら「表現」させているかどうか、教科書を活用した題材内容の扱いはどうなっているのか、単元ゴールはどのように設定されているかといった課題がある。

○ コミュニケーションに関しては、伝えたい内容があって、伝える目的があって、相手がいてという、そういう意味での真の「コミュニケーション」ですね。真のコミュニケーションギャップも設定してといった中での英語使用になっているかどうか。あるいは、考えながら「表現」というのは、準備したものをそのままそらで言ったり、覚えたものを言ったりではなくて、その場で、ちぐはぐな英語でもいいので、何とか伝えようという気持ちに支えられてコミュニケーションを図っている場面を設定されているかどうか。

○ 現行の学習指導要領に自然科学や伝統文化も加わった形で様々な題材が中学校の教科書では使われているが、そのような題材そのものを扱う言語活動における扱いがどうなっているか。

○ 単元ゴール、CAN-DOの視点からの付けたい力が設定されているかどうか。英語でどんなことができることを目指すかといった単元構想ができているかといった点です。

○ それぞれ、どのようなコミュニケーション能力を身に付けさせようとしているのかがどこまで明確になっているかといったことが、ややまだ十分ではないのではないか。

○ 教員の授業における英語使用の状況は、授業の半分以上で発話を英語で行っている割合は、いずれも4割強となっている。生徒に英語で言語活動をする場面をどの程度設定しているかについて、授業の半分以上を設定していると答えた割合は、52%、47%、43%と高いが、3年生に向かうにつれてだんだんと低くなっており、これは高校入試が影響しているのではないか。

○ CAN-DOリストの作成状況については、17.4%の学校が設定しており、その中で、達成状況を更に把握もしている学校は66.8%。

○ 昨年度、国立教育政策研究所において「学習指導要領実施状況調査」を実施しており、現在分析中している。調査には二つの視点があって、今回の学習指導要領改訂の基本方針、特に思考力・判断力・表現力を見る工夫をした課題、及び過去問からの経年比較として、過去、以前の課題がどうなっているのかといったことから見る調査を行っている。4技能について分析をした上で、遅くとも来年度の初め頃までには公表されている予定であり、今後の検討において、この調査を踏まえた検討が考えられる。

○ 国立教育政策研究所の「学習指導実践研究協力校」、昨年度から特に学校・高等学校との連携に関わる研究をしているが、平成25年度当初段階では、高等学校、小学校との連携もほとんどされていない状況があった。校長、市教委、県教委、教育センターも一体となって支援をしながら、教員の意識も高まった上で、中学校が小学校、高等学校と連携が、全く以前の姿とは異なる形でスムーズに行われ、ふだんから日常的に小・中・高が行き来する状況ができ上がったという実践事例において高校での連携を生かした授業改善が見られる。

○ 県の取組として教育委員会が学習到達目標の設定に向けた学校へのサポートをかなり強く進め、県下の全学校において作成・評価する例として、手引きの作成、各学校への配布などを通じ、各学校がスムーズに作成できるよう工夫をされている。年間指導計画や、指導と評価の改善の視点がしっかりできていて、作成して終わりではなく、それをどう授業改善に生かすかというところまで県の方で指導している。

○ 教職員研修センターでは、学習到達目標に該当するものとして系統表を各教科で作成し、単元計画例が複数、中学校の場合と高等学校の場合と示されていて、全てにおいてその系統表との関連が明記され活用され、教師・生徒の英語使用度を高める工夫をしている例もある。

○ 地域の実情から県全体での統一した研修を開くことが大変困難な状況あるため、「地区別ブロック型研究事業」を立ち上げ、教育事務所ごとに県の統一方針を各地域に浸透させ、どの教育事務所においても、例えば、単元構想ひとつ取っても、かなり統一感が見られる。地域によるばらつきがないといった成果が見られる。

○ 言語活動において理解した内容を口頭で第三者へ伝えるというようなことをもって、理解したと規定「即興力」の育成、その橋渡しとしての「メモに基づくスピーキング指導」の実践を通じた先進事例における成果。

○ 「英語の授業が楽しい」「授業が分かる」という意識など肯定的な回答をする子供が増えている。また、英語の発話量が増えたという肯定的な評価は上がってきている。小学校の外国語活動の効果であろうという指摘があり、音声に慣れてきている、コミュニケーションに臆することがないなど、多くの研究会や指導主事から指摘されている。さらに、ある地区では、小学校1年から週2時間外国語活動を行っていて、高学年になりますと、文字に対する欲求が出てくるというようことが現場で多々見られる。

○ 今後の方向性として、授業は英語で行うことを基本とし、内容に踏み込んだ言語活動を重視する。中学校は、小学校からの接続だけではなく高校への接続、いわゆる基礎体力を付けるといった意味で、もっと内容に踏み込んだ言語活動を展開していくことが必要である。

○ 先進事例を踏まえ、学習到達目標に基づいた指導と評価いかに展開していくか。

○ 高校入試における4技能のバランスをどうとるか。特に「話すこと」は、全都道府県において実質的に入試の中では見ていないという状況がある。これをどう改善していくかといったことが挙げられる。

○ 地域全体として指導力、評価力を向上させていくということが必要ではないか。先進事例においては、地域において共通した実践を行うため、学習到達目標の仕組み制度を活用。今後、小学校での外国語活動の教科化という動きを受けて、中学校でどこまで英語教育を引き上げていけばいいのかということを念頭に置く必要がある。教室でモティベートされた心をエンジンに、教室の外でも積極的に英語と接する量を増やしていくというようなことを地域全体で推し進めていく必要があると考える。

○ 教員については、研修をしたいという意欲を持っているという表れが見られる。昨年度の研究部研究授業には、400名、一昨年度は220名、その前は例年170~180名と非常に人数が増えており、英語教育が変わっていくというのを意識している教員が多くなっている。

○ 「習熟度別授業」のクラス分けの基準が、今までは定期テストの点数で分けているというのがほとんどだったが、いわゆる技能別、スピーキングテストを行い、生徒の得意な部分と、苦手な生徒を習熟度で分けてみようといったトライをしてみようという教員が出てき始めたという状況もある。

○ 文法・訳読式中心の授業がいまだに散見される。若い教員でも文法・訳読式で授業を終わってしまっている例もある。例えば、TOEICでは900点前後を取る教員が授業を見ると文法・訳読式で行っているので「なぜ君の英語力を使わないか」と聞くと「どのようにやっていいか分からない」という教員もいる。このような課題に対応し、先進的事例をいかに周知していくかが今後の大きな課題であり、周知を通じて英語の教員は若手に多いのでどんどん伸びていくと考える。

○ 今後の方向として、小・中連携で、中学校も授業が変わってきているので、その視点は必ず生かしていくべき。中・高校との連携については、すばらしい連携の事例もあるが、もっと高校との連携が必要だという声はたくさんある。一方で、実際にほとんど連携が図れていない。高校の授業を見たことがある中学校の教員が少ない。まずは、そこから取り組んでいく必要があると考える。

(5)高等学校における英語教育の目標・内容

○ 学習指導要領改訂後は「コミュニケーション英語基礎」から始まり、「コミュニケーション英語3」までは、4技能を総合的・統合的に育成する科目とし、このうち、必履修科目として、「コミュニケーション英語1」を標準単位数3で設けている。更に「話すこと」や「書くこと」を中心として、論理的に表現する能力を育成する科目として、「英語表現1」、「英語表現2」を設けるとともに、会話を中心とする「英語会話」、この7科目に新しくなった。

○ 目標は中学校と同様、三つ柱があり一つは、言語や文化に対する理解、2点目は、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度、3点目は、中核的な目標として、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養うということになっている。コミュニケーションを内容的に充実させるため指導すべき語彙数の増加が必要であるということで、新課程では、高等学校で1,800語、中学校の1,200と合わせると高校までに3,000語の学習が可能となっている。これは、「コミュニケーション英語3」まで履修した場合に、3,000語の学習が可能であるということであり、それまでの中・高で2,200語から比べますと、800語増えている。

○ 文法指導についての新しい視点は「文法はコミュニケーションを支えるものである」と捉えるということを明記し、文法事項を言語活動と効果的に関連付けて指導する。その際、用語や用法の区別などが指導の中心にならないように配慮し、実際に使えるようになることを目標としている。

○ また、文法事項全てを必履修科目「コミュニケーション英語Ⅰ」で扱うこととしており、重要な点として文法かコミュニケーションかという二項対立的に捉えるということではなく、あくまでも文法はコミュニケーションを行うための基盤であるという意識を持つこととなっている。

○ 「授業は英語で行うことを基本とする」という規定が明記され、生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮することを前提にしている。授業を英語で行うというのは、それ自体が目的というわけではなく、生徒が英語に触れる機会を充実させる、また、英語を英語のまま理解したり、英語で発信しやすくするということの手段として規定がされた。

○ さらに、教材、題材は4技能を総合的に育成する活動、これに適した題材や内容を扱うこととなっており、目標を達成するための言語活動に応じて適した素材を選ぶという考えで授業を組むという意図がある。

○ 高校の先進的な事例として、生徒の「表現したい」という意欲を引き出す指導として、日常的に機会を持たせる言語活動を中心とした授業や「CAN-DOリスト」を作成して、教員がいろんなアイデアを出し合うといった取組を通じて、一つの成果検証として英語の外部試験の結果が大幅に増加する例がある。

○ 「正解を当てさせる」という授業から脱却し、生徒が自分の主張を伝えるという方向にカリキュラムを見直して、3年間を通じて4技能をバランスよく育てようという取組、授業内外を精査し、子供たち同士で意見を伝え合うといったと取組を通じて英語の外部試験の結果が大幅に増加する例もある。

○ また、科目ごとに到達目標、指導計画、評価規準・方法を明確に示し、それを全外国語科教員が共有して、それに基づいて授業を行うとともに、観点別学習状況の評価を着実に行い、その中に「CAN-DOリスト」の形による学習到達目標を生かした指導計画、評価を行っている例がある。

○ 新学習指導要領開始後の教員の変容として、普通科等の授業における英語担当教員の英語使用状況が、「コミュニケーション英語1」と「英語1」、平成25年度と22年度を比較すると、「発話をおおむね、あるいは半分以上英語で行っている」は22年度の「英語1」は合わせて16%、25年度の「コミュニケーション英語1」は53%へ大きく伸びている。

○ 教員の英検準1級程度以上等の取得割合は、成22年度の旧課程下の49%から平成25年度の新課程下では4%増の53%に伸びている。また、生徒がどのぐらい言語活動を行っているかについては、平成25年度では、「おおむね言語活動を行っている」、「授業の75%程度以上言語活動を行っている」のが、「コミュニケーション英語Ⅰ」では11%、半分以上が30%、これを合わせ41%の授業の半分弱は言語活動を行っている。

○ 「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標の設定状況は大きく変容があった。普通科において、平成23年度は4%、25年度では33%ということで大きく伸びている。さらに、ディベートなど高度な言語活動の取組として、「全国高校生英語ディベート大会」では、すが、2013年12月時点で37都道府県、78.7%が実施をしている。

○ 今後の高等学校における課題と方向性として、1.初等中等教育全体を見据えたロードマップ、これを明確な学習到達目標として設定する必要、2.高等学校でどこまでレベルを引き上げていくことが適切かという検討が必要であり、例えば全ての生徒が、生徒の実態・状況に応じて英語で「発表」、「討論」、「交渉」するといったことが必要になるのではないか。

○ 高等学校は多様化しており、それぞれの生徒、それぞれの学校に合った対応ができるかどうか、高度な目標だけではなく、その学校の実情に合った現実的な目標をいかに設定していくかということは課題がある。

○ 都道府県による先進事例として、域内の全中学校・高等学校において「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標を設定し、生徒の言語活動の充実を図る取組を通じて効果を上げている例がある。参考としての「県版CAN-DOリスト」を作成するとともに、普通科、専門高校向けの2種類を作成(英語の単位数が専門高校の場合は2年次以降単位数が減)。また、作成後は、各学校の「CAN-DOリスト」の点検・修正、DVDを付けた実践例実践事例を出すとともに、公開授業の指導案にはCAN-DOリストを添付するなどの取組を通じて普及を図っている。また、中・高で「CAN-DOリスト」共有を図る取組を始めている。

○ 「CAN-DOリスト」の取組とともに、生徒の英語力を判定する外部試験の活用を県費支援するとともに、教員研修会の実施、指導主事が学校訪問を重点的に行いながらの成果検証を行うことなど、教員の指導力を支援する取組を3年計画し多くの成果を上げている。

○ 高等学校では、学習指導要領が新しいのが実施されて1年余りであり、また、学校の特徴も様々ということで、全体的な分析は一概には言えないが、成果として四つの観点から分析すると、1.授業の変化として、活動重視の授業が多く、コミュニケーションの場として確実に大きく変化していること、英語で行う授業ということの工夫やALTの活用についてこれまでとは違う改善や工夫を図った活用をしていく動きや、先進的にディベートやスピーチを取り上げ授業全体が変わってきている。2.生徒の変化として、中学校の例のように発話量は確実に増え、発言・コミュニケーションへの意欲の向上として生徒が英語を口にすることに抵抗感がなくなってきたということ、3.比較的内向きと言われている高校生が、留学への希望が増加しているように感じている。留学への募集に対し非常に多くの応募者があること、特に、長期の1年以上の留学を希望する生徒が毎年いるはこれまでになかった変化、4.生徒の求めや状況に応じて 工業高校でも英語による授業を先生が一所懸命やっている取組がある。

○ 教員の変化として、研修に対する意欲は高まり、多くの教員が参加が非常に増えている。

○ 学校の変化として、「CAN-DOリスト」や学習到達目標等を設定することによって、また教科内で議論することによって、学校の教員の組織的な指導、学校の統一した指導が進んでいる

○ 他教科との連携では、例として社会科で同じテーマでディベートを行うなど他教科と様々な連携をとることによって、英語力の向上とともに、グローバル人材としてのそういった視点の広がりがある。また、レポートの作成を他教科で英語も含めて書かせるといった試みもある。

2.指導・評価の在り方について

(1)各学校段階における効果的な指導方法

○ 高等学校において、生徒間及び学校間で学力差が見られ、そうした現状を踏まえて対応しなければならない。

○ 英語を特殊な技術でなく「ことば」の教育と捉えることが必要。ヨーロッパで見られるようなCLIL(Content and Language Integrated Learning、内容言語統合型学習)やイマージョン教育を取り入れることも有効ではないか。

○ 英語学習とその指導に関し、小・中・高を通じて、一貫した目的・目標を設定することが必要。各学校段階の中だけで考えるのではなくて、英語教育全体を見通した上で、小・中・高のそれぞれの段階で果たす役割を明確化すべき。
 特に、小学校と中学校の間で、「領域(活動)」と「教科」という違いにより、系統性や体系性が必ずしも連続していないことがあり、そうした実態を踏まえるべき。

(小学校における指導方法)

○ これまで外国語活動の実施に尽力してきた小学校教員の努力と課題を踏まえることが必要。

【成果の例】

  • 小学生の76%が「英語の学習が好き」、96%が「英語が使えるようになりたい」と回答。
  • 小学校の外国語活動導入前と比べて、教員の78%が、中1の生徒に「成果や変容がとてもみられた」「まあまあみられた」と感じる。

【課題の例】

  • 中学生の7割以上が、小学校で「英単語・英語の文を読むこと、8割が「英語の単語・文を書くこと」をしておきたかったと回答。
  • 指導者へのアンケートでは、51%が「準備や打合せの時間の確保、45%が「教員の指導力」、30%が「ALT等の外部人材との打合せ」、24%が「外国語活動に関する教員研修」が挙がっている。
  • 小学校において中学校での指導を意識した指導が、中学校において小学校での活動を踏まえた指導が、それぞれ不十分である。

【研究開発学校等での取組】

 

  • 小1や小3から英語教育を開始する研究開発学校では、外国語学習を肯定的にとらえる児童が増加し、また、教科化したことで児童の理解力・表現力が高まり、学習意欲が向上している。高学年で文字学習を導入しており、児童の意欲維持に一定の効果が出ている。
  • 一方で、小学校と中学校の連携を十分に整える体制が必要である。教育委員会が小中連携を徹底している学校では、9割以上の小学生が英語の学習が楽しいという肯定感を持ち、中学校に進学しても、その意欲が維持されている。
  • 小1~6を外国語活動として取り組んでいた学校では、高学年になって学習意欲の低下が見られたため、小6で読み書きの学習を加えることで改善を図り、その後、小1~2を外国語活動、小3~6を教科として取り組んだところ、93%の児童が「小学校で文字を学習してよかった」と回答している。
  • 外国語学習においては、母語との関わりを重視することが必要である。

(2)各学校段階における評価

(小学校における評価)

 

○ 小学校における三つの評価の観点の趣旨を踏まえ、一人一人の子供たちについて様子を書く評価は大変であるという意見があったが、先生が年間を通じて外国語活動の授業で子供の様子をきちんと見取っていたら、そう恐れることはないのではないか。教育課程特例校の例では、高学年において数値による評価を行ったところ、妥当性に疑問があるので数値による評価はしなかったというものもある。また、1年生から4年生までは外国語活動の3観点で評価し、5、6年生は教科として取り組み、数値による評価を実施している例もある。

(中学校・高等学校における評価)

 

 

(3)高校入試・大学入試の在り方

○ 大学入試を世界標準にすることが重要であり、TOEFLに一本化すべき。それにより、高校生がTOEFLのスコアを持っていれば、進学先の選択肢が、国内だけでなく、海外の大学にも広がり、留学生数が増加すると思われる。

○ 学習指導要領は、4技能の総合的な育成を前提としており、大学に入学するための試験においても、4技能がバランスよく構成されている必要がある。4技能を把握する外部試験としては、TOEFLやIELTSなどの海外の大学への留学に対応するものもあるが、高校生の英語力の現状を踏まえると、英検、GTEC for STUDENTS、TEAPなど、それ以外の適切な外部試験も活用することで、4技能に関する英語力を総合的に引き上げることが望ましい。そういった生徒の実力に沿った試験を活用することにより、海外留学やそれ以降の英語学習との連続性・親和性・一貫性を生み出すことが可能となる。

○ 大学に入学するための試験が学習指導要領を踏まえて4技能を評価するものになれば、高等学校での授業も変わることが期待される。

○ 高い英語力を有する生徒とそうでない生徒がいる状況を踏まえた検討を行う必要がある。

3.教科書・教材の在り方について

(1)共通的な課題

○ 教科書について、児童生徒の言語活動の充実と総合的なコミュニケーション能力の育成を重視した形で編集されるよう、どのような工夫が可能か検討する必要がある(再掲)。

○ 英語に接する時間を増やすため、ICT技術の進化を十分に生かすことが有効であり、スマートデバイスの導入と活用を積極的に進めるべき。
 世界的には、ICTを活用した遠隔教育への関心が高まっており、そうしたものを活用しながら、

○ ICT活用として、1.学校現場と連携をしながら、ICTの活用の成功事例を共有していくことが重要、2.学習効果の高いコンテンツを検討、3.地方財政措置の活用を推進しながら、ハードウェアの充実を図っていくといった点が重要。

○ 英語教育におけるICT活用の利点としては、1.動的、インタラクティブなコンテンツを提供しながら英語に対する興味関心を高められること、2.ネイティブ音声による教材を使って学習効果を高めていくこと、3.デジタルなログ管理をしながら進捗確認や課題の発見に役立つことができるのではないか。

○ 英語に限らず、小学校においては、興味・関心度合いを高めることに成功しているというような事例があり、また、小学校中学年・高学年においても同様の傾向が出ている。さらに、学びのイノベーション事業の中学校の実証校においては、最も評価の高い評定5を、全国比で経年比較すると年々高くなっている傾向が見られた。

○ 1.海外のニュースを聞いて、リスニングやスピーキングの練習としているケース、2.Skype等を活用し、フィリピンなど他地域の英会話の講師と英会話のレッスンをするソフトを活用した学習、3.ネイティブの発音の判定が可能なソフトもある。音声認識の方の技術が非常に進んでいるので、かなり高度な学習ができるような形になっている。今後ICTを活用していく上で、コスト面からも、このようなソフトも活用していくことも状況に応じて検討が必要ではないか。

○ 親のITリテラシーによって、かなり子供の学習環境が左右されることを念頭にすべき。また、自治体間の財政格差ということによる整備の格差が生じないように地方交付税措置によって学校全体のIT環境の整備を進めており、英語教育における環境整備も進んでいくと期待。

○ ICTの活用において、Skypeの場合のように生徒同士の対面の教育とほぼ同じ効果が得られるインタラクティブな活動が、コミュニケーション発達上も一番重要なポイント。

(2)小学校の活動型における教材

(3)小学校の教科型における教科書・教材

(4)中学校・高等学校における教科書・教材

○ 学校での授業だけではなく、家庭学習を含め学校外での学習というのが非常に大事になってくる。家庭で教科書の音をリピーティングして勉強したいという場合には、で努力して、全ての生徒が教科書ではなくて、教科音を使って学習できるような体制を整えるべき。

○ 学習指導要領の内容が、特に高等学校の場合、高等学校の授業にどれほど生きているか、学習指導要領改訂後の授業において、教科書等と従来教員が指導してきたことの繰り返すことがないよう検証し、今後の方向性を検討していく必要があると考える。

4.指導体制の在り方について

(1)小学校における指導体制

○ 児童の関心・意欲・態度を高める観点からは、小学校の英語教育は、学級担任が他教科等とも関連付けながら指導するのが適していると思われる。その上で、高い英語力を有する者の協力を得て、ティーム・ティーチングで指導することも有効と考えられる。

○ 小学校では授業コマ数に余剰があるとは言えない中で授業時数を確保する必要がある。

○ 小学校では、児童との人間関係を重視しながら、学級の実情に応じた教材を用いながら、英語によるコミュニケーションの基礎を養うことが重要である。そのためにも、児童の実態をよく知っている学級担任が中心となることが必要と考えられる。

○ 小学校段階で、積極的に外国語を聞いたり、話したりすることを重視する必要があり、専門性の高い教員との連携や、外部人材やICTの活用を通じて指導していくことが重要である。
 ICTについては、学校における環境整備も重要である。

○ 小学校3~4年においては、学級担任が中心となって、外国語によるコミュニケーションの基礎を養うことが必要であるが、5~6年生では、専科教員の導入を含めて、より専門性を重視した指導について考える必要がある。

○ 中長期的に見て、指導者の英語を指導する人の力量を上げいくことが必要。当面は研修で対応するかもしれないが、高学年における教科化などにおいは、基本は養成段階からしっかりとした英語力・指導力のある人材を養成することが重要である。

○ 外国語活動に関しては学級担任を中心にALTなど外部人材を活用してきたが、高学年での教科化というときに、どのような目的、目標・内容にして、それを教えるのに最もふさわしい指導者は誰が最も適しているのかについて検討することが必要である。

(2)教員養成課程、採用、研修

○ 教員は自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励まなければならない。また、その使命と職責の重要性にかんがみ、教員養成課程と研修の充実が図られなければならない。
 教育委員会によっては、教員採用試験で、英語によるコミュニケーション能力を考慮した採用選考が実施されており、こうしたことも踏まえながら、教員養成課程・採用の在り方を検討することが必要である。

○ 多くの外国語科担当教員が、多忙な中で熱心に各種の研修に参加しており、研修に参加できる環境が必要。

○ 教員免許制度・教員養成の改善を検討する中で、英語教育に携わる者の免許要件について検討する必要がある。
 その際、小学校教員の免許取得要件をどうするか、また、小・中・高を通じて、教科としての英語教育を担う者のための免許取得要件をどうするか、それぞれ検討する必要がある。

○ 指導体制等については、1.効果的な教材とともに、2.生徒のコミュニケーション能力を総合的に育成する教員が必要であり、教員自身が受けた英語教育とは全く異なる現状を踏まえ、既存の初任者研修、経験者研修、免許状更新講習等を活用することが考えられる。また、優れた教員が他教員へ研修を展開できる体制を整えるということが必要である。

○ 教員養成については、より実践的な英語教員養成カリキュラムの開発が必要である。例えば、高校、大学、地域社会が連携して、高等学校で既に優れた実践をしている英語教員が授業を持ち新たなカリキュラムとするなどの取組が必要ではないか。また、英語教員採用について、英語力を更に重視することが求められる

○ 高等学校の学習内容が反映された、4技能を適切に評価する大学入試が行われることが必要である。

(研修)

○ 先進事例のように指導主事等が域内の教員の研修等をサポートしているシステムがある例と、システムのない地方自治体に対して国はどのような支援を行うのか。指導主事の時間が議会等の対応で、「指導」にほとんど使われていないということ状況が見られる。研修は大事であるが、研修は時間的余裕とのセットで考えるべき。特に急激な変化を求められる英語の先生は忙しく、「研修しろ、研修しろ」と言っても疲れ果てているという状態を踏まえた国による支援体制を強化すべき。

○ 研修参加への環境として、教員は非常に多忙で、教科指導以外のところでの時間が割かれているのが現実であり、分掌、担任、部活動、様々な時間の中で、研修会へ参加するという環境をどうにか整備していく必要があると。

○ 限られた時間での4技能の伸長では、主に発信、発話、話すことを中心に進めていくと、これまでの読む力などはどのように担保していくのか、どうしたらいいのか、いわゆる統合型の指導というものをそれぞれの教員が身に付けていかないと、逆に偏った指導になってしまうのではないか。バランスのよい指導がどうやって限られた時間の中でやっていけるか、授業以外のところでどういった指導をしていくかが教員養成・研修の課題になる。
 また、教員の意識を研修等で変えていく必要がある。

○ 課題に対する方向性として大学入試の改革、現職教員の研修制度の改革、言語活動の高度化に向けた小学校・中学校の流れの体系を踏まえ、高校での出口としての指導が適切でないのではないか、流れを明確化する必要がある。

○ 教員養成について、習熟度が低い生徒から、かなり高度な言語活動が指導できる教員を確保しなければいけないというところでは、教員養成の段階で、養成プログラムの中でそのような力を付けられるプログラムを開発し養成をする必要がある。

(3)外部人材の活用

○ 外国人教員を活用していきながら、中学校・高等学校の組織のグローバル化を図ることも重要。

○ 外国語指導助手(ALT)を招聘(しょうへい)しているJETプログラムの充実に当たっては、JET終了後のキャリアアップが見通せることが重要。

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初等中等教育局国際教育科外国語教育推進室

(初等中等教育局国際教育科外国語教育推進室)