【資料2-2】中央教育審議会答申(平成20年)の記述の抜粋

中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」(平成20年1月17日)

【構成】

これまでの経緯

1.教育の目的とこれまでの学習指導要領改訂

2.現行学習指導要領の理念

3.子供たちの現状と課題

4.課題の背景・原因

(1) 社会全体や家庭・地域の変化

(2) 学習指導要領の理念を実現するための具体的な手立て

(3) 教師が子供たちと向き合う時間の確保や効果的・効率的な指導のための条件整備

5.学習指導要領改訂の基本的な考え方

(1) 改正教育基本法等を踏まえた学習指導要領改訂

(2) 「生きる力」という理念の共有

(3) 基礎的・基本的な知識・技能の習得

(4) 思考力・判断力・表現力等の育成

(5) 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保

(6) 学習意欲の向上や学習習慣の確立

(7) 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実

6.教育課程の基本的な枠組み

(1)小・中学校の教育課程の枠組み
 ・小・中学校の授業時数の現状と国際比較
 ・小学校の授業時数
 ・中学校の授業時数

(2)高等学校の教育課程の枠組み
 ・高等学校教育の共通性と多様性
 ・年間の授業週数、週当たりの授業時数等
 ・必履修教科・科目の在り方

(3)学校週5日制の下での土曜日の活用

(4)発達の段階に応じた学校段階間の円滑な接続

(5)教育課程編成・実施に関する各学校の責任と現場主義の重視

7.教育内容に関する主な改善事項

(1)言語活動の充実

(2)理数教育の充実

(3)伝統や文化に関する教育の充実

(4)道徳教育の充実

(5)体験活動の充実

(6)小学校段階における外国語活動

(7)社会の変化への対応の観点から教科等を横断して改善すべき事項
 (情報教育)
 (環境教育)
 (ものづくり)
 (キャリア教育)
 (食育)
 (安全教育)
 (心身の成長発達についての正しい理解)

8.各教科・科目等の内容

(1)幼稚園

(2)小学校、中学校及び高等学校
 ・国語
 ・社会、地理歴史、公民
 ・算数、数学
 ・理科
 ・生活
 ・音楽、芸術(音楽)
 ・図画工作、美術、芸術(美術、工芸)
 ・芸術(書道)
 ・家庭、技術・家庭
 ・体育、保健体育
 ・外国語
 ・情報
 ・専門教育に関する各教科・科目
 ・道徳教育
 ・特別活動
 ・総合的な学習の時間

(3)特別支援教育
 ・特別支援学校
 ・幼稚園、小学校、中学校及び高等学校等における特別支援教育

9.教師が子供たちと向き合う時間の確保などの教育条件の整備等

(1)教職員定数の改善

(2)教師が子供たちと向き合う時間の確保のための諸方策

(3)効果的・効率的な指導のための諸方策

(4)教育行政の在り方の改善

10.家庭や地域との連携・協力の推進と企業や大学等に求めるもの

(1)家庭や地域との連携・協力の推進

(2)企業や大学等に求めるもの

 

【関連する記述の抜粋】

5.学習指導要領改訂の基本的な考え方

(4)思考力・判断力・表現力等の育成

○ 3.で示した子供たちの学力に関する各種の調査の結果は、いずれも知識・技能の活用など思考力・判断力・表現力等に課題があることを示している。今回の改訂においては、各学校で子供たちの思考力・判断力・表現力等を確実にはぐくむために、まず、各教科の指導の中で、基礎的・基本的な知識・技能の習得とともに、観察・実験やレポートの作成、論述といったそれぞれの教科の知識・技能を活用する学習活動を充実させることを重視する必要がある。各教科におけるこのような取組があってこそ総合的な学習の時間における教科等を横断した課題解決的な学習や探究的な活動も充実するし、各教科の知識・技能の確実な定着にも結び付く。このように、各教科での習得や活用と総合的な学習の時間を中心とした探究は、決して一つの方向で進むだけではなく、例えば、知識・技能の活用や探究がその習得を促進するなど、相互に関連し合って力を伸ばしていくものである。

○ 現在の各教科の内容、PISA調査の読解力や数学的リテラシー、科学的リテラシーの評価の枠組みなどを参考にしつつ、言語に関する専門家などの知見も得て検討した結果、知識・技能の活用など思考力・判断力・表現力等をはぐくむためには、例えば、以下のような学習活動が重要であると考えた。このような活動を各教科において行うことが、思考力・判断力・表現力等の育成にとって不可欠である。
ア 体験から感じ取ったことを表現する
 (例)
 ・日常生活や体験的な学習活動の中で感じ取ったことを言葉や歌、絵、身体などを用いて表現する

イ 事実を正確に理解し伝達する
 (例)
 ・身近な動植物の観察や地域の公共施設等の見学の結果を記述・報告する
ウ 概念・法則・意図などを解釈し、説明したり活用したりする
 (例)
 ・需要、供給などの概念で価格の変動をとらえて生産活動や消費活動に生かす
 ・衣食住や健康・安全に関する知識を活用して自分の生活を管理する
エ 情報を分析・評価し、論述する
 (例)
 ・学習や生活上の課題について、事柄を比較する、分類する、関連付けるなど考えるための技法を活用し、課題を整理する
 ・文章や資料を読んだ上で、自分の知識や経験に照らし合わせて、自分なりの考えをまとめて、A4・1枚(1,000字程度)といった所与の条件の中で表現する
 ・自然事象や社会的事象に関する様々な情報や意見をグラフや図表などから読み取ったり、これらを用いて分かりやすく表現したりする
 ・自国や他国の歴史・文化・社会などについて調べ、分析したことを論述する
オ 課題について、構想を立て実践し、評価・改善する
 (例)
 ・理科の調査研究において、仮説を立てて、観察・実験を行い、その結果を整理し、考察し、まとめ、表現したり改善したりする
 ・芸術表現やものづくり等において、構想を練り、創作活動を行い、その結果を評価し、工夫・改善する
カ 互いの考えを伝え合い、自らの考えや集団の考えを発展させる
 (例)
 ・予想や仮説の検証方法を考察する場面で、予想や仮説と検証方法を討論しながら考えを深め合う
 ・将来の予測に関する問題などにおいて、問答やディベートの形式を用いて議論を深め、より高次の解決策に至る経験をさせる

○ これらの学習活動の基盤となるものは、数式などを含む広い意味での言語であり、その中心となるのは国語である。しかし、だからといってすべてが国語科の役割というものではない。それぞれに例示した具体の学習活動から分かるとおり、理科の観察・実験レポートや社会科の社会見学レポートの作成や推敲(すいこう)、発表・討論などすべての教科で取り組まれるべきものであり、そのことによって子供たちの言語に関する能力は高められ、思考力・判断力・表現力等の育成が効果的に図られる。
 このため、学習指導要領上、各教科の教育内容として、これらの記録、要約、説明、論述といった学習活動に取り組む必要があることを明示すべきと考える。

○ その際、生命やエネルギー、民主主義や法の支配といった各教科の基本的な概念などの理解は、これらの概念等に関する個々の知識を体系化することを可能とし、知識・技能を活用する活動にとって重要な意味をもつものであり、教育内容として重視すべきものとして、適切に位置付けていくことが必要である。

○ 思考力・判断力・表現力等の基盤となる言語の能力の育成に当たっても、発達の段階に応じた指導が重要である。幼児期から小・中・高等学校へと発達の段階が上がるにつれて、具体と抽象、感覚と論理、事実と意見、基礎と応用、習得と活用と探究など、認識や実践ができるものが変化してくる。
 このため、小学校の低・中学年の国語科において、音読や漢字の読み書き、暗唱などにより基本的な国語の力を定着させるとともに、古典の暗唱などにより、言葉の美しさやリズムを体感させた上で、小・中・高等学校を通じ、国語科のみならず各教科等において、記録、要約、説明、論述といった言語活動を発達の段階に応じて行うことが重要である。

○ なお、(3)で示した「重点指導事項例」には、基礎的・基本的な知識・技能の習得に関する例示とともに、知識・技能のようには具体的に示すことはできないと考えられるが、思考力・判断力・表現力等にかかわるものについても例示し、各学校において、これらの力の育成にしっかりと取り組むようにすることが必要である。

7.教育内容に関する主な改善事項

(1)言語活動の充実

○ 各教科等における言語活動の充実は、今回の学習指導要領の改訂において各教科等を貫く重要な改善の視点である。
 それぞれの教科等で具体的にどのような言語活動に取り組むかは8.で示しているが、国語をはじめとする言語は、知的活動(論理や思考)だけではなく、5.(7)の第一で示したとおり、コミュニケーションや感性・情緒の基盤でもある。
 このため、国語科において、これらの言語の果たす役割に応じ、的確に理解し、論理的に思考し表現する能力、互いの立場や考えを尊重して伝え合う能力を育成することや我が国の言語文化に触れて感性や情緒をはぐくむことを重視する。具体的には、特に小学校の低・中学年において、漢字の読み書き、音読や暗唱、対話、発表などにより基本的な国語の力を定着させる。また、古典の暗唱などにより言葉の美しさやリズムを体感させるとともに、発達の段階に応じて、記録、要約、説明、論述といった言語活動を行う能力を培う必要がある。

○ 各教科等においては、このような国語科で培った能力を基本に、知的活動の基盤という言語の役割の観点からは、例えば、
 ・観察・実験や社会見学のレポートにおいて、視点を明確にして、観察したり見学したりした事象の差異点や共通点をとらえて記録・報告する(理科、社会等)
 ・比較や分類、関連付けといった考えるための技法、帰納的な考え方や演繹(えんえき)的な考え方などを活用して説明する(算数・数学、理科等)
 ・仮説を立てて観察・実験を行い、その結果を評価し、まとめて表現する(理科等)
 など、それぞれの教科等の知識・技能を活用する学習活動を充実することが重要である。
 また、コミュニケーションや感性・情緒の基盤という言語の役割に関しては、例えば、
 ・体験から感じ取ったことを言葉や歌、絵、身体などを使って表現する(音楽、図画工作、美術、体育等)
 ・体験活動を振り返り、そこから学んだことを記述する(生活、特別活動等)
 ・合唱や合奏、球技やダンスなどの集団的活動や身体表現などを通じて他者と伝え合ったり、共感したりする(音楽、体育等)
 ・体験したことや調べたことをまとめ、発表し合う(家庭、技術・家庭、特別活動、総合的な学習の時間等)
 ・討論・討議などにより意見の異なる人を説得したり、協同的に議論して集団としての意見をまとめたりする(道徳、特別活動等)
 などを重視する必要がある。

○ 5.(2)でも述べたとおり、各教科等におけるこのような言語活動の充実に当たっては、特に教科担任制の中・高等学校の国語科以外の教師が、その必要性を十分に理解することが重要である。そのためには、学校が各教科等の指導計画にこれらの言語活動を位置付け、各教科等の授業の構成や進め方自体を改善する必要がある。

○ なお、このように各教科等における言語活動を行うに当たっては、これらの学習活動を支える条件として次のような点に特に留意する必要がある。
 第一は、語彙を豊かにし、各教科等の知識・技能を活用する学習活動を各教科等で行うに当たっては、教科書において、このような学習に子供たちが積極的に取り組み、言語に関する能力を高めていくための工夫が凝らされることが不可欠である。また、特に国語科においては、言語の果たしている役割に応じた適切な教材が取り上げられることが重要である。
 第二に、読書活動の推進である。言語に関する能力をはぐくむに当たっては、読書活動が不可欠である。学校教育においては、例えば、国語科において、小学校では、児童が日常的に読書に親しむための指導内容を、中学校においては生徒の読書をより豊かなものにするための指導内容をそれぞれ位置付けるなど、各教科等において、発達の段階を踏まえた指導のねらいを明確にし、読書活動を推進することが重要である。もちろん、読書習慣の確立に当たっては家庭の役割が大きい。学校、家庭、地域を通じた読書活動の一層の充実が必要である。
 第三は、学校図書館の活用や学校における言語環境の整備の重要性である。言語に関する能力の育成に当たっては、辞書、新聞の活用や図書館の利用などについて指導し、子供たちがこれらを通して更に情報を得、思考を深めることが重要である。また、様々なメディアの働きを理解し、適切に利用する能力を高めることも必要である。

7.教育内容に関する主な改善事項

(6)小学校段階における外国語活動

○ 社会や経済のグローバル化が急速に進展し、異なる文化の共存や持続可能な発展に向けて国際協力が求められるとともに、人材育成面での国際競争も加速していることから、学校教育において外国語教育を充実することが重要な課題の一つとなっている。
 国際的には、国家戦略として小学校段階における英語教育を実施する国が急速に増加している。例えば、アジアの非英語圏を見ると、1996年にタイ、97年には韓国、2005年には中国が必修化を行っている。また、フランスにおいては2007年から必修化されている。

○ 我が国においては、外国語教育は中学校から始まることとされており、現在、中学校においてあいさつ、自己紹介などの初歩的な外国語に初めて接することとなる。しかし、こうした活動はむしろ小学校段階での活動になじむものと考えられる。また、中学校外国語科では、指導において聞くこと及び話すことの言語活動に重点を置くこととされているが、同時に、読むこと及び書くことも取り扱うことから、中学校に入学した段階で4技能を一度に取り扱う点に指導上の難しさがあるとの指摘もある。
 こうした課題等を踏まえれば、小学校段階で外国語に触れたり、体験したりする機会を提供することにより、中・高等学校においてコミュニケーション能力を育成するための素地をつくることが重要と考えられる。

○ 一方、外国語のいわゆるスキルの習得に関しては、例えば、聞くことなどの音声面でのスキルの高まりはある程度期待できるが、実生活で使用する必要性が乏しい中で多くの表現を覚えたり、細かい文構造に関する抽象的な概念について理解したりすることを通じて学習への興味・関心を持続することは、小学生にとっては難しいことから、むしろ、ALTの活用等を通して積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成等を基本とすべきとの指摘がある。

○ このため、小学校段階では、小学生のもつ柔軟な適応力を生かして、言葉への自覚を促し、幅広い言語に関する能力や国際感覚の基盤を培うため、中学校段階の文法等の英語教育を前倒しするのではなく、国語や我が国の文化を含めた言語や文化に対する理解を深めるとともに、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図ることを目標として、外国語活動を行うことが適当と考えられる。
 また、アジア圏においても国際的な共通語としては英語が使われていることなど、国際的な汎用性の高さを踏まえれば、中学校における外国語は英語を履修することが原則とされているのと同様、小学校における外国語活動においても、英語活動を原則とすることが適当と考えられる。なお、小学校段階においては、幅広い言語に触れることが国際感覚の基盤を培うことに資するものと考えられることから、英語を原則としつつも、他の言語にも触れるように配慮することが望ましい。

○ このような外国語活動を行うに当たっては、身近な場面やそれに適した言語や文化に関するテーマを設定し、ALTの活用等を通して、英語でのコミュニケーションを体験させるとともに、場面やテーマに応じた基本的な単語や表現を用いて、音声面を中心とした活動を行い、言語や文化について理解させることを基本とすることが適当である。
 なお、日本語とは異なる英語の音声や基本的な表現に慣れ親しませることは、言葉の大切さや豊かさ等に気付かせたり、言語に対する関心を高め、これを尊重する態度を身に付けさせることにつながるものであり、国語に関する能力の向上にも資するものと考えられる。

○ 小学校段階における英語活動については、現在でも多くの小学校で総合的な学習の時間等において取り組まれているが、各学校における取組には相当のばらつきがある。このため、外国語活動を義務教育として小学校で行う場合には、教育の機会均等の確保や中学校との円滑な接続等の観点から、国として各学校において共通に指導する内容を示すことが必要である。
 この場合、目標や内容を各学校で定める総合的な学習の時間とは趣旨・性格が異なることとなる。また、小学校における外国語活動の目標や内容を踏まえれば一定のまとまりをもって活動を行うことが適当であるが、教科のような数値による評価にはなじまないものと考えられる。これらのことから、総合的な学習の時間とは別に高学年において一定の授業時数(年間35単位時間、週1コマ相当)を確保する一方、教科とは位置付けないことが適当と考えられる。

○ 指導者に関しては、当面は各学校における現在の取組と同様、学級担任(学校の実情によっては担当教員)を中心に、ALTや英語が堪能な地域人材等とのティーム・ティーチングを基本とすべきと考えられる。これを踏まえ、国においては、今後、教員研修や指導者の確保に関して一層の充実を図ることが必要である。
 また、外国語活動の質的水準を確保するためには、まず第一に、国として共通教材を提供することが必要と考えられる。さらに、音声面の指導におけるCDやDVD、電子教具等の活用、へき地や離島等の遠隔教育及び国際交流におけるテレビ会議システムの利用など、ICTの活用による指導の充実を図ることも重要と考えられる。

○ 小学校段階における外国語活動の導入に当たっては、小学校と中学校とが緊密に連携を図ることが重要である。例えば、中学校においては、小学校における外国語活動の内容や指導の実態等を十分に踏まえた上で、中学校における外国語教育への円滑な移行と、指導内容の一層の充実・改善を図ることが求められる。
 さらに、中学校の学習指導要領の改訂を行うに当たり、小学校における外国語活動を通じて培われた一定の素地を踏まえて、中学校における外国語教育では、「聞く」「話す」「読む」「書く」という4技能のバランスのとれた育成がなされるよう見直しを図る必要がある。 

8.各教科・科目等の内容

(2)小学校、中学校及び高等学校

・国語

改善の基本方針
○ 国語科については、その課題を踏まえ、小学校、中学校及び高等学校を通じて、言語の教育としての立場を一層重視し、国語に対する関心を高め、国語を尊重する態度を育てるとともに、実生活で生きてはたらき、各教科等の学習の基本ともなる国語の能力を身に付けること、我が国の言語文化を享受し継承・発展させる態度を育てることに重点を置いて内容の改善を図る。
 特に、言葉を通して的確に理解し、論理的に思考し表現する能力、互いの立場や考えを尊重して言葉で伝え合う能力を育成することや、我が国の言語文化に触れて感性や情緒をはぐくむことを重視する。
 そのため、現行の「話すこと・聞くこと」、「書くこと」及び「読むこと」からなる領域構成は維持しつつ、基礎的・基本的な知識・技能を活用して課題を探究することのできる国語の能力を身に付けることに資するよう、実生活の様々な場面における言語活動を具体的に内容に示す。また、現行の〔言語事項〕の内容のうち各領域の内容に関連の深いものについては、実際の言語活動において一層有機的にはたらくよう、それぞれの領域の内容に位置付けるとともに、必要に応じてまとめて取り上げるようにする。
 また、〔言語文化と国語の特質に関する事項〕を設け、我が国の言語文化に親しむ態度を育てたり、国語の役割や特質についての理解を深めたり、豊かな言語感覚を養ったりするための内容を示す。

○ 子供たちの発達の段階を踏まえた学習の系統性を重視し、学校段階・学年段階ごとに、具体的に身に付けるべき能力の育成を目指し、重点的な指導が行われるようにする。その際、小学校においては日常生活に必要な国語の能力の基礎を、中学校においては社会生活に必要な国語の能力の基礎を、高等学校においては社会人として必要な国語の能力の基礎をそれぞれ確実に育成するようにする。

○ 古典の指導については、我が国の言語文化を享受し継承・発展させるため、生涯にわたって古典に親しむ態度を育成する指導を重視する。
 漢字の指導については、実生活や他教科等の学習における使用や、読書活動の充実に資するため、確実な習得が図れるよう、指導を充実する。書写の指導については、実生活や学習場面に役立つよう、内容や指導の在り方の改善を図る。
 敬語の指導については、人間関係を円滑にし、日常の言語生活を豊かにするため、相手や場に応じた言葉遣いが適切にできるようにすることを重視する。言葉のきまりの指導については、系統的に指導するとともに、実際に文章を書いたり読んだりするときなどに役立つよう、指導の改善を図る。
 読書の指導については、読書に親しみ、ものの見方、感じ方、考え方を広げたり深めたりするため、読書活動を内容に位置付ける。教材については、我が国において継承されてきた言語文化に親しむことができるよう、長く読まれている古典や近代以降の作品などを、子供たちの発達の段階に応じて取り上げるようにする。

8.各教科・科目等の内容

(2)小学校、中学校及び高等学校

・外国語

改善の基本方針
○ 外国語科については、その課題を踏まえ、「聞くこと」や「読むこと」を通じて得た知識等について、自らの体験や考えなどと結び付けながら活用し、「話すこと」や「書くこと」を通じて発信することが可能となるよう、中学校・高等学校を通じて、4技能を総合的に育成する指導を充実するよう改善を図る。

○ 指導に用いられる教材の題材や内容については、外国語学習に対する関心や意欲を高め、外国語で発信しうる内容の充実を図る等の観点を踏まえ、4技能を総合的に育成するための活動に資するものとなるよう改善を図る。

○ 「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の4技能の総合的な指導を通して、これらの4技能を統合的に活用できるコミュニケーション能力を育成するとともに、その基礎となる文法をコミュニケーションを支えるものとしてとらえ、文法指導を言語活動と一体的に行うよう改善を図る。また、コミュニケーションを内容的に充実したものとすることができるよう、指導すべき語数を充実する。

○ 中学校における「聞くこと」、「話すこと」という音声面での指導については、小学校段階での外国語活動を通じて、音声面を中心としたコミュニケーションに対する積極的な態度等の一定の素地が育成されることを踏まえ、指導内容の改善を図る。併せて、「読むこと」、「書くこと」の指導の充実を図ることにより、「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の四つの領域をバランスよく指導し、高等学校やその後の生涯にわたる外国語学習の基礎を培う。

○ 高等学校においては、中学校における学習の基礎の上に、聞いたことや読んだことを踏まえた上で、コミュニケーションの中で自らの考えなどについて内容的にまとまりのある発信ができるようにすることを目指し、「聞くこと」や「読むこと」と、「話すこと」や「書くこと」とを結び付け、四つの領域の言語活動の統合を図る。

○ 高等学校において、中学校における学習が十分でない生徒に対応するため、身近な場面や題材に関する内容を扱い、中学校で学習した事柄の定着を図り、高等学校における学習に円滑に移行させるために必要な改善を図る。

改善の具体的事項
(中学校)
○ 義務教育修了段階として中学校において身近な事柄についてコミュニケーションを図ることができるようにするとともに、高等学校やその後の生涯にわたる英語学習の基礎を培うこととして、次のような改善を図る。
 (ア) 小学校段階での外国語活動を通じて育成された素地を踏まえ、「聞くこと」、「話すこと」に関して、簡単な話しかけに対して正しく応答したり、身の回りの出来事などについて、事実関係を伝え合ったり、自分の考えを述べ合ったりすることができるよう、指導の改善を図る。
 (イ) 「読むこと」に関して、内容的にまとまりのある文章を読み、情報を整理して正確に読み取ったり、書き手の意図をとらえたりすることができるよう、指導の充実を図る。
 (ウ) 「書くこと」に関して、自分の考えや気持ちなどを読み手に正しく伝えられるよう、内容的にまとまりのある一貫した文章を書けるように、指導の充実を図る。
 (エ) コミュニケーション能力を高めるため、言語の使用場面と言語の働き、言語材料を効果的に関連付けた言語活動を充実し、文法指導の改善を図るとともに、コミュニケーションにおける使用頻度の高い慣用表現や指導すべき語数を充実する方向で見直す。また語彙や文構造を定着させ、実際に活用できるようにするために必要な指導の改善を図る。
 (オ) 日本語とは異なる言語の運用についての理解や、自国や郷土についての理解、国際理解などを通して、言語や文化に対する理解を一層深められるよう、指導の充実を図る。
 (カ) 自発的・持続的な学習を推進するため、辞書の使い方、音声と文字との関係などに関する指導の充実を図る。

(高等学校)
○ 四つの領域の言語活動の統合を図るとともに、発信力の向上や、中学校との円滑な接続を図る観点から、科目の構成及び内容等を次のように改善する。
 (ア) 「コミュニケーション英語基礎」は、身近な場面や題材に関する内容を扱い、日常的な事柄についてコミュニケーションを図る活動等を行うことを通して4技能を総合的に育成することにより、高等学校での学習に円滑に移行させることをねらいとして内容を構成する。
 (イ) 「コミュニケーション英語1」は、4技能を総合的に育成することをねらいとして内容を構成し、統合的な活動が行われるようにするとともに、そうした活動に適した題材や内容を扱うこととする。その際、例えば、社会科や理科など他教科で学習する内容、自国や郷土の風俗・習慣、歴史、その他の様々な伝統や文化に関する内容、発明や発見などの科学技術や自然に関する内容、異文化コミュニケーションに関する内容等、コミュニケーションへの関心・意欲・態度の育成にも資する題材や内容を選択的に取り上げ、体系立てて扱うものとする。
 (ウ) 「コミュニケーション英語2」は、「コミュニケーション英語1」の基礎の上に、総合的な英語力の向上を図る指導を行うことをねらいとして内容を構成する。
 (エ) 「コミュニケーション英語3」は、「コミュニケーション英語1」及び「コミュニケーション英語2」の基礎の上に、総合的な英語力の向上を図る指導を行うことをねらいとして内容を構成する。
 (オ) 「英語会話」は、身近な場面や題材に関する内容を扱い、音声を中心にコミュニケーションを図る活動等を行うことを通して、必要な情報や考えを聞いたり、話したりすることができる力の向上を図るような指導を行うことをねらいとして内容を構成する。
 (カ) 「英語表現1」は、基本的な言語規則に基づいて、様々な場面に応じて適切に話すことや書くことができるようにし、併せて論理的思考力や批判的思考力を養うことをねらいとして内容を構成する。
 (キ) 「英語表現2」は、スピーチやプレゼンテーション、ディスカッション、ディベートなど高度なコミュニケーションを行うことができるようにすることや複雑な文構造を用いて正確に内容的なまとまりのある多様な文章が書けるようにすること、併せて論理的思考力や批判的思考力を養うことをねらいとして内容を構成する。
 (ク) 言語活動、言語材料、教材、指導上の工夫及び配慮事項については、各科目のねらいに配慮しつつ、中学校と同様の趣旨で改善を図る。また、ICTなどを指導上有効に活用することに配慮する。
 (ケ) コミュニケーション英語1・2・3は、それぞれの科目において扱う題材や内容、言語材料の難易度によって分類したものであることから、「コミュニケーション英語2」は、「コミュニケーション英語1」を履修した後に、「コミュニケーション英語3」は「コミュニケーション英語2」を履修した後に、履修させるようにする。

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