【資料2-2】前回の議論(能力記述文の形で示した国の学習到達目標)について

英語教育について

○ 今回の英語教育改革の目的を明確にすることが必要である。とりわけ、小学校において、3年生から活動型、5年生から教科型とする考え方を分かりやすく示すべき。
 これまでの議論を通じて、社会における急速なグローバル化の進展という社会的な背景と、これまでの英語教育改革の進展を踏まえた更なる取組の充実、の2点が指摘されている。

○ 第1に、社会の急速なグローバル化の進展の中で、英語教育の一層の充実は我が国にとって極めて重要な問題。
 東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020(平成32)年はもとより、現在、学校教育で学ぶ児童生徒が卒業後に社会で活躍している2050(平成62)年には、我が国の置かれる国際的状況は大きく異なっており、英語教育の一層の充実に対する社会の期待は更に強まっていると想定される。

○ 第2に、これまで英語教育については、幾多の議論を経て、現行の学習指導要領が実施されており、その成果と課題を踏まえながら、小・中・高が連携し、一貫して英語によるコミュニケーション能力を養うことが求められる。

○ 現行の学習指導要領では、すべての教科領域において「言語活動の充実」を図ることを求めており、その確実な実施が必要である。
 英語力とともに、自らの考えを主体的に述べる意欲と態度、表現力を身に付けさせ、「自分は英語を使ってコミュニケーションを図ることができる」という自信を持たせることが大切である。

検討における論点

○ 研究開発学校や教育課程特例校も含めて、これまでの英語教育の成果と課題を検証することが必要。

○ 英語教育の議論に当たっては、いろいろな前提が曖昧だと混乱しがちなので留意する必要がある。
 (1) 教室・集団での学習と、1人での学習を区別して議論する必要があること。
 (2) 極めて高い英語力を持つ生徒を念頭に置いた議論と、多様化が進む高校生の実態を踏まえた議論を区別する必要があること。
 (3) 初等中等教育修了後の進学先として、国内大学だけを考えるのか、海外大学も想定するか、前提を整理する必要があること。
 (4) 外国語の指導は日本人だけが行うのか、日本の学校組織のグローバル化をどう考えるか、ということを整理する必要があること。

1.教育内容・目標の在り方について

(1) 小・中・高を通じた学習到達目標について

(これまでの取組)

○ 現行の学習指導要領は、外国語科の目標に「コミュニケーション能力」を養うことを掲げており、多くの学校において、その目標に沿った授業が行われている。

○ そのような中、「国際共通語としての英語力向上のための五つの提言と具体的施策」(平成23年)等が示されたこともあり、中学校・高等学校において「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から、4技能に関する学習到達目標を、いわゆる「CAN-DOリスト」の形で設定する取組が進んでいる(平成25年度末までに、中学校の17%、高等学校の34%で作成されており、これから設定する予定の学校を含めると6~7割に達する)。

○ そうした取組を更に進める観点から、今後、国において、小・中・高で一貫した学習到達目標を設定し、その実現に向けて検討を進めることとしている。
 その一環として、文部科学省において、現行の学習指導要領(外国語)に基づき、その学習内容を「~することができる」の形式で編集し直したものを「能力記述文の形で示した国の学習到達目標(試案)」として提示している。

(学習到達目標を設定する効果)

○ 具体的な学習到達目標は、各学校において、それぞれの実情に応じて作成することが想定される。
 その場合の効果として、以下を挙げることができる。
 (1) 学習到達目標を通じて、児童生徒にどのような英語力が身に付くか、英語を用いて何ができるようになるか、あらかじめ明らかにすることができる。また、そうした情報を生徒や保護者と共有することでゴールが明確になる。
 (2) 特に、学習指導要領に基づいて目標を設定し、指導と評価を行う際に、文法や語彙等の知識の習得にとどまらず、それらの知識を活用してコミュニケーションが図れるよう、4技能の総合的な育成を重視することが期待される。
 (3) ともすれば、校内でも教員により指導方法が大きく異なることがある中で、学習到達目標の策定を通じて、教員間で、指導に当たっての共通理解を図ることができる。
 (4) 評価が、面接・スピーチ・エッセー等のパフォーマンス評価などによって「言語を用いて何ができるか」という観点からなされることが期待され、更なる指導と評価の一体化とそれらの改善につなげることができる。

(留意事項)

○ 一方で、学校における学習到達目標の作成に当たっては、以下の留意点が挙げられている。国や教育委員会は、そうした取組が円滑かつ効果的に進むよう支援していくことが必要となる。
 (1) 学習到達目標に掲げられた内容を形式的に達成すればよいのではなく、授業を通じて教員が児童生徒の状況を的確に把握しながら、英語力の向上を支援していくことが必要である。
 (2) 学習到達目標を設定すること自体が目的となってしまわないように、研修等を通じて、教員の共通理解を図ることが求められる。
 (3) 小・中・高を通じた学習到達目標の設定に当たっては、早期の段階から高度な水準を求めることがないよう計画し、児童生徒のモチベーションを維持・向上させるような配慮が必要である。

(小・中・高を通じた学習到達目標に関わるその他の論点)

○ 教科書について、児童生徒の言語活動の充実と総合的なコミュニケーション能力の育成を重視した形で編集されるよう、どのような工夫が可能か検討する必要がある。

○ 教員養成課程において、児童生徒の4技能を伸ばすための指導や評価の方法などの教授が充実されることが期待される。

○ 学習到達目標が設定されていく中で、それと入学試験や外部試験との関わりがどうなっていくか検討する必要がある。

(2) 小学校における英語教育の目標・内容

○ これまで外国語活動の実施に尽力してきた小学校教員の努力と課題を踏まえることが必要。中学校の英語教育を小学校にそのまま下ろすのではなく、小学校ならではの英語教育を行うべき。

○ 児童には、自らの考えを英語で表現するための十分な語彙や表現を身に付けることが困難であるが、コミュニケーションに積極的に関わろうとする態度は育ってきている。今後、小学校中学年から学習を開始することに伴い、英語学習への動機付けを更に高め、コミュニケーション能力の素地を養うことで、小学校卒業時までに表現の幅が広がることが期待される。

○ 小学校高学年の外国語活動を教科化する場合、現在中学校で行っている指導法等をそのまま下ろすのではなく、音声を中心に「聞く」「話す」ことに十分に慣れ親しんだ上で、「読む」「書く」機会が提供されることが必要。

○ 英語の指導に関し、小学校と中学校の接続が不十分な場合があり、小学校での外国語活動の成果が中学校で十分に生かされていないと指摘されることがある。小学校卒業時における目標を明確にすることで、中学校では、それを踏まえた対応が可能となると考えられる。

○ 早期からの英語教育の有効性を脳科学的に検証すべきとの観点から、いわゆる「臨界期説」について論点を整理した。
 ・ 「臨界期仮説」は、本来、母語習得に関するものであり、第2言語習得環境(第2言語に接する機会が日常生活にとても多い環境)を対象とする研究にも広げられた。明確な臨界期の存在は未確認であるが、一般的に、学習年齢が高くなるほど、ネイティブ・スピーカー(母語話者)に近い言語習得が難しくなると解釈されている。
 ・ 一方、日本のように、日常的に外国語に接する機会が少ない環境での外国語学習は、第2言語習得環境と分けて考える必要がある。スペインでの研究によれば、8歳から英語学習を始めた子供は、11歳から始めた子供と比較すると、文法能力では追い抜くことはできないが、リスニングと発音では、統計的に有意な差が出ている。国内でも、小学生から英語を学習した者の方が、大学生になってもリスニングの力が高く、英語への肯定的な態度が高いという研究結果がある。リスニング力等や英語を使うことの自信に関して一定の相関関係が見られる。
 ・ 脳科学は、著しい進歩を遂げているが、今のところ、言語教育や外国語教育に関する政策や教授法に直接に示唆を与える研究成果はない。

(3) 中学校・高等学校における英語教育の目標・内容

(これまでの取組)

○ 小学校への外国語活動の導入により、中学校入学時において、生徒のリスニング力が高まっているとの指摘がなされている。

○ 現行の学習指導要領により、中学校において、50分授業の半分以上を英語で指導する教員が多く見られる。また、生徒が授業で英語を使用する機会も増えている。
 高等学校における英語の授業においても、ペア・ワークやディベートなどの活動が日常的に見られるなど、英語の授業は大きく変わってきている。

○ 一方で、文法解説や訳読が指導の中心であったり、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするといった言語活動が不十分という実態が一部にあり、英語指導法に関する教員研修を充実することが必要である。

2.指導・評価の在り方について

(1)各学校段階における効果的な指導方法

○ 高等学校において、生徒間及び学校間で学力差が見られ、そうした現状を踏まえて対応しなければならない。

○ 英語を特殊な技術でなく「ことば」の教育と捉えることが必要。ヨーロッパで見られるようなCLIL(Content and Language Integrated Learning、内容言語統合型学習)やイマージョン教育を取り入れることも有効ではないか。

○ 英語学習とその指導に関し、小・中・高を通じて、一貫した目的・目標を設定することが必要。各学校段階の中だけで考えるのではなくて、英語教育全体を見通した上で、小・中・高のそれぞれの段階で果たす役割を明確化すべき。
 特に、小学校と中学校の間で、「領域(活動)」と「教科」という違いにより、系統性や体系性が必ずしも連続していないことがあり、そうした実態を踏まえるべき。

(2)各学校段階における評価

(小学校における評価)

(中学校・高等学校における評価)

(3)高校入試・大学入試の在り方

○ 大学入試を世界標準にすることが重要であり、TOEFLに一本化すべき。それにより、高校生がTOEFLのスコアを持っていれば、進学先の選択肢が、国内だけでなく、海外の大学にも広がり、留学生数が増加すると思われる。

○ 学習指導要領は、4技能の総合的な育成を前提としており、大学に入学するための試験においても、4技能がバランスよく構成されている必要がある。4技能を把握する外部試験としては、TOEFLやIELTSなどの海外の大学への留学に対応するものもあるが、高校生の英語力の現状を踏まえると、英検、GTEC for STUDENTS、TEAPなど、それ以外の適切な外部試験も活用することで、4技能に関する英語力を総合的に引き上げることが望ましい。そういった生徒の実力に沿った試験を活用することにより、海外留学やそれ以降の英語学習との連続性・親和性・一貫性を生み出すことが可能となる。

○ 大学に入学するための試験が学習指導要領を踏まえて4技能を評価するものになれば、高等学校での授業も変わることが期待される。

○ 高い英語力を有する生徒とそうでない生徒がいる状況を踏まえた検討を行う必要がある。

3.教科書・教材の在り方について

(1) 共通的な課題

○ 英語に接する時間を増やすため、ICT技術の進化を十分に生かすことが有効であり、スマートデバイスの導入と活用を積極的に進めるべき。

(2) 小学校の活動型における教材

(3) 小学校の教科型における教科書・教材

(4) 中学校・高等学校における教科書・教材

 

4.指導体制の在り方について

(1) 小学校における指導体制

○ 児童の関心・意欲・態度を高める観点からは、小学校の英語教育は、学級担任が他教科等とも関連付けながら指導するのが適していると思われる。その上で、高い英語力を有する者の協力を得て、ティーム・ティーチングで指導することも有効と考えられる。

○ 小学校では授業コマ数に余剰があるとは言えない中で授業時数を確保する必要がある。

(2) 教員養成課程、採用、研修

○ 教員は自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励まなければならない。また、その使命と職責の重要性にかんがみ、教員養成課程と研修の充実が図られなければならない。
 教育委員会によっては、教員採用試験で、英語によるコミュニケーション能力を考慮した採用選考が実施されており、こうしたことも踏まえながら、教員養成課程・採用の在り方を検討することが必要である。

○ 多くの外国語科担当教員が、多忙な中で熱心に各種の研修に参加しており、研修に参加できる環境が必要。

(3) 外部人材の活用

○ 外国人教員を活用していきながら、中学校・高等学校の組織のグローバル化を図ることも重要。

○ 外国語指導助手(ALT)を招へいしているJETプログラムの充実に当たっては、JET終了後のキャリアアップが見通せることが重要。

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初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室

(初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室)