英語教育の在り方に関する有識者会議(第5回) 議事録

1.日時

平成26年6月18日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省(合同庁舎第7号館東館)3階3F1特別会議室

3.出席者

委員

吉田座長、松川副座長、石鍋委員、大津委員、佐々木委員、髙木委員、多田委員、藤村委員、松本委員、安河内委員

文部科学省

板東文部科学審議官、前川初等中等教育局長、德久総括審議官、義本大臣官房審議官、榎本国際教育課長、圓入外国語教育推進室長、太田視学官、直山教科調査官、平木教科調査官、向後教科調査官、葛城英語教育プロジェクトオフィサー

オブザーバー

吉澤教諭兼教育専門監(大仙市立大曲中学校)、寒河江主任指導主事(岩手県教育委員会)

4.議事録

【吉田座長】 それでは、定刻になりましたので、第5回英語教育の在り方に関する有識者会議を開催いたします。お忙しいところ御参集いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日の会議の全体の中の位置付けということを、もう一回ちょっと振り返りたいと思います。ということで、今まで大体どういう議論がなされてきたかというのを簡単にまとめた上で、きょうの議論に入っていきたいと思います。
 これまでは、CAN-DOリストの形での学習到達目標の在り方について、あるいは、小学校における外国語活動の現状、成果、また課題について、さらに、言語獲得における臨界期や「ことば」という視点などについての御発表を頂きながら、今後の方向性について議論をしてきたわけです。
 また、指導体制に関する小委員会と英語力の評価及び入試における外部試験活用に関する小委員会における議論なども行ってまいりました。
 そこで、本日第5回は、中学校・高等学校における英語教育の現状、成果、課題について、現場からの御発表を中心に議論をしていきたいと思います。それを今後の方向性の議論の一助としていければと思っております。
 本日の議論は、有識者会議全体の取りまとめに向けて、これまでの議論と併せて、次回、7月開催の有識者会議における小・中・高等学校を通じた英語教育の在り方を議題として検討していく際につなげていく予定でございます。
 それでは、まず事務局の方から配付資料についての御説明をお願いいたします。

【圓入室長】 それでは、お手元の資料を御覧いただければと思います。本日、資料のセットでとじさせていただいております第5回の議事次第を御覧いただきますと、資料1から、これまでの意見の概要、後ほど御説明いただきます資料2につきましては、先ほど座長からも頂きましたように、中学校・高等学校における、事務局で用意いたしました論点、それから、参考データ集等がございます。その後、現在までの状況で成果と課題というようなことも教科調査官からも御発表いただきながら、本日は、資料4と資料5を御覧いただきたいと思いますが、中学校・高校の、それぞれ今一所懸命取り組んでいただいている事例を発表いただくということで、お二方にお越しいただいておりますので、是非御発表をお聞きいただければと。その後でございますけれども、石鍋委員、佐々木委員から、資料6、資料7ということで、御意見を頂く予定となっております。きょうは別冊で、その論点に関する参考資料集ということで、資料が2セットございます。机上の方には、いつものように、参考資料として、昨年の12月発表いたしました実施計画も配付させていただき、また、CAN-DOリスト、以前も配付させていただきました机上資料を置かせていただきながら、後ほど秋田県の例を御発表いただきます大曲中学校のCAN-DOリストのリーフレットも配付させていただいております。資料に過不足ございましたら、お手数ですが、事務局にお知らせいただければと思います。
 以上でございます。

【吉田座長】 ありがとうございました。
 それでは、次に、これまでの審議に。どうぞ。

【大津委員】 前回も申し上げたと思うのですが、これまでの議論の中で、「ことば」という視点がとても重要だという認識が共有されたという点が重要です。しかし、きょうの資料1を拝見すると、その点についての記載が、ざっと見たところではないように思えるのですが。いずれにしても、これまでの議論の中で、英語教育を考えるに当たって、「ことばlanguage」という視点が大切だというのは、この会議のこれまでの大きな成果の、少なくとも一つだと思っていますので、次回の「これまでの意見のまとめ」には、是非その点を含めていただきたいとお願いいたします。

【吉田座長】 じゃ、どうぞ、榎本さん。

【榎本課長】 ありがとうございます。
 きょうまでは、いろいろ個別のテーマに関して議論してきたと思っておりまして、その際にも委員から頂いております言葉に関する議論も、次回以降で論点を集約していく際に、うまくまとめていきたいなと思っておりますので、また是非お知恵もお貸しいただきながらと思っております。

【大津委員】 はい。

【吉田座長】 ありがとうございました。
 それでは、今の大津委員からのお話も踏まえてになると思いますけれども、これまでの審議について、事務局の方から、論点メモについて用意をしていただいていますので、説明をお願いしたいと思います。続きまして、本日の審議の主なる議題として、中学校・高等学校における英語教育の在り方に関する論点等について、文部科学省より説明をしていただきます。時間もございませんので、続けて、本日予定している事例発表や、石鍋委員、佐々木委員からの御意見の発表を頂いた後に、論点ごとに具体的な議論を行っていきたいと思います。
 それでは、よろしくお願いします。

【圓入室長】 それでは、議事次第が表紙になっております資料をおめくりいただければと思います。資料1は、これまでの意見の概要でございますが、本日は御説明を省略させていただきたいと思います。なるべく御意見の集約をと思っておりますが、先ほど大津委員からも御指摘いただきましたように、次回におきましては、言語の視点の重要性ということも含めて、整理をして御提示させていただければと思います。少し飛びますけれども、資料の19ページ、2-1でございますが、ここからが、本日、事務局が御参考ということで御用意させていただいた論点メモでございます。
 小学校に続きまして御用意させていただいたので、形式が同じくなっておりますが、1番につきましては、目的(必要性)ということでまとめております。前回お示しした小学校の論点メモをベースに、少し加えさせていただいております。二つ目の丸に、下から3行目ですが、学校において主体的に学ぶ態度を養うとともに、これも御意見をたくさん頂きましたけれども、英語の授業以外でも英語に触れる多様な機会や環境を整えるということを書かせていただいておりますが、続けて、その下の丸を加えさせていただいております。きょうも机上配付させていただいておりますが、昨年発表させていただいた実施計画にもお示しさせていただいております。国際的に活躍する人材育成を目指したときに、高校卒業段階までの達成目標を、図では国際水準の、例えばCEFRのB1~B2レベルと書いております。そういった前提で、小学校中学年から英語教育を開始するとともに、中・高等学校での英語教育の指導改善、高度化が必要という、基本的スタンスについていま一度少し整理をお願いさせていただきたいと思っております。
 それから、20ページ以降でございますが、新たに加えさせていただいたところを少し御説明させていただきます。目標と内容の方でございますけれども、丸の四つ目以降でございます。ここからが、中学校・高等学校において更に高度化を図る場合ということで、幾つか目標と内容面を例示で挙げさせていただいております。ただ、これも前回の小学校と同様に、先進的な取組の成果・課題点を踏まえて、どのように考えるかということで、今後の方向性について御意見を頂ければと考えております。
 21ページ以降が、その例示でございますけれども、中学校では、身近な話題についての理解や簡単な情報交換、表現ができるコミュニケーション能力を養う。例の方には、これも実施計画もお示しさせていただいておりますけれども、具体的に例示を挙げていくという前提で、短い新聞記事を読んだり、テレビのニュースを見たりして、その概要を伝えることができるというように挙げております。
 それから、今現在、高校では行われておりますが、授業を英語で行うことを基本とし、内容に踏み込んだ言語活動を重視する。
 続きまして、次の矢印でございますけれども、小学校高学年の教科型導入を踏まえまして、中学校ではより多くの英語に触れることにより、学習内容の着実な定着を図る。また、コミュニケーションを円滑に図るために必要とされる基本的な文法事項については中学校で一通り活用できるようにするというようにさせていただいております。
 次に、高等学校でございますけれども、幅広い話題について抽象的な内容を理解できる、英語話者とある程度流暢(りゅうちょう)にやりとりができる能力を養う。
 それから、次の矢印でございますが、授業を英語で行うとともに、言語活動の高度化、括弧は例示でございますが、発達段階や、生徒の英語力等の状況に応じた発表、討論、交渉等ということで、それらの高度化の内容を図るという方向性を出させていただいております。例示も、先ほど御説明したとおりで、具体的に挙げさせていただいております。
 最後の矢印でございますが、高校段階におきましては、中学校で学習した語彙・表現・文法事項等に意味のある文脈の中でコミュニケーションを通して繰り返し触れることができるよう、様々な言語活動を工夫し、言語の運用能力を高めるということで挙げさせていただきました。
 それから、続きますが、次の丸でございますけれども、第2回に御報告も御議論いただいたCAN-DOリストの関係でございますが、各学校で学習指導要領の内容に基づき、生徒に求められる英語力を達成するための具体的な学習到達目標をCAN-DOリストの形で設定する。現状もまず前提として押さえさせていただきながら、その際、教科書・教材、生徒の学習状況、授業時数等を踏まえつつ、学校及び各科目の単元ごとの学習到達目標を具体的に設定し、指導方法や評価方法の工夫・改善を図るということを押さえさせていただいております。
 その上で、次の丸でございますが、各学校において、生徒の学習意欲を高めながら英語力の向上を図るため、各学校において取組も行われるわけでございますが、そういった取組を踏まえつつ、今後のグローバル化に対応した世界標準の英語力育成を目指して、国として、各学校がCAN-DOリストを作成する際の指標を設定することを検討するということを挙げさせていただきました。こちらにつきましては、本日の参考資料にも添付させていただいているのですけれども、平成23年のときに御提言いただきました「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策」、資料集の方は75ページに概要を添付いたしております。当時から、国としての指標なるものを検討するということが提示されておりますので、改めて御提示もさせていただきました。
 それ以降は、3番、4番、5番と続いておりますけれども、ここは少し簡単にさせていただければと思います。指導と評価とございますけれども、こちらにつきましても、これまで御説明いたしましたように、まず目標と内容に応じた指導と評価のありようというものを御議論いただくというような論点といたしまして挙げさせていただきました。先ほど御説明いたしました中・高等学校の目標・内容に応じた、例えば、言語活動の高度化、CAN-DOリストといったものも活用しながらの指導と評価の在り方について、22ページに論点を挙げさせていただいておりますので、適宜御覧いただければと思います。また、それに応じた教科書・教材の改善というものもあるかと思いますし、23ページの5番以降でございますが、これも指導体制の小委員会で具体的には御議論いただくと思いますけれども、1、2、3、4と前提といたしました上で、指導体制の在り方につきましては、研修、養成、採用というような段階での御議論を頂くということで、改めて論点を挙げさせていただいております。
 24ページも御覧いただければと思いますが、例えば、教員の養成・確保の在り方ということで挙げさせていただいております。言語活動の高度化に対応した履修内容の改善、指導方法の充実というところから、現在、これは高等教育局の方でも議論いただいております。大学と教育委員会のそれぞれの強みを生かした実践的、かつ一貫した教員養成の在り方ということで、今後求められる、特に、当面5年間につきましては、現職教員の方々に対する研修内容などの方向性も頂ければと思っております。さらに、研修等ということで続いておりますので、御参照いただきながら、後ほど事例発表まで御発表いただく際の御参考にしていただければと思います。
 なお、参考資料、少しだけデータを御紹介いたしますけれども、ページをずっとおめくりいただくと、前回配付させていただいたものから、それから、今回は中学校・高校の10ページ以降につきましては、目標と内容ということで添付させていただいております。なお、16ページの後段を御覧いただきますと、「授業は英語で行うことを基本とする」ということを、定義を添付させていただいております。全て英語ということではなくて、ここの3の前段に書いておりますように、教師が授業を英語で行うとともに、生徒も授業の中でできるだけ多くの英語を使用することにより、英語による言語活動を行うというようなことで、定義付けがございますので、御参照いただければと思います。
 それから、少し飛びますが、20ページ以降については、指導と評価の参考資料ということで、それぞれ中学校と高校の指導要録の様式などついております。小学校と異なりまして、段階別の評価、それから、高校につきましても、観点ということで、31ページ以降に、学校が、地域や生徒の実態に即して設定した科目目標の内容に照らした評価を行うというような形になっております。
 さらに、34ページ以降、各種データをつけさせていただいております。なかなか観点別評価というのも、状況としては難しいという状況と、それから、35ページ以降は、「CAN-DOリスト」のデータを添付させていただいております。23年当時から比べますと、実施の状況と設定状況などの状況を見ますと、増えているというようなことが見てとれます。パフォーマンステストの状況、それから、36ページ以降は、英語担当教員の英語の使用状況ということも添付させていただいております。それから、38ページに飛びますけれども、生徒の英語力の状況。これについては、前回のデータから、少し中学校は上がっておりますが、高校については同程度というような内容になっております。
 そのほか、後ろの方になりますけれども、前回から新たに加えたものとして、42ページ以降、中学校・高校段階における、例えば外国人教員などの採用状況という話ですとか、それから、44ページ以降につきましては、採用における実技試験の実施状況。事例といたしましても、17都道府県で実施している事例の一部を添付させていただいております。外部試験を活用しているという状況でございます。49ページ以降が、海外留学の状況、それから、英語教員の方々の英検準1級という、一つの客観的な英語力ということでのデータを添付させていただいております。50、51ページにつきましては、各県の状況ということでございまして、様々なデータも添付させていただきながら、御議論いただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【吉田座長】 ありがとうございました。
 ざっと今まで資料についての説明をしていただいたわけですけれども、きょうは、これから中・高の現状について御発表をそれぞれ頂くわけですけれども、現在どのような状況にあるのか、また、設定されているこういう目標に向けて、どのような形で進むことが可能なのか、その辺の議論をきちんと考える材料をきょう提供していただければと思っております。
 それでは、最後に議論の方は時間を取って行いたいと思いますので、まず文部科学省の方から、中学校・高等学校における英語教育の現状と成果と課題について説明をお願いしたいと思います。では、お願いします。

【大津委員】 すいません、今の室長の話で確認しておきたいことがあるのですけど。

【吉田座長】 いいですよ、どうぞ。

【大津委員】  私、ちょっと情報が処理できていないのですけど、資料の21ページに、「中学校では」、「高等学校では」というのがあって、そこで先ほどお話があった、授業を英語でという話が出てきます。中学校の部分については、「授業を英語で行うことを基本とし」とあって、この「基本とし」の意味については、先ほど御説明があったかと思います。それで、今度は高等学校へいくと、「授業を英語で行うとともに」ということで、「基本とし」の部分がありませんが、これは意図的な削除なのか、それとも全く意図のないものなのか、その辺を教えていただければと思います。

【吉田座長】 いかがでしょう。

【圓入室長】 本日、資料として実施計画をお配りしておりますが、先ほど御紹介いたしましたのは、ここから抜き出しをしているものでございます。当時のお話を聞きますと、余り意図がなかったようにもお伺いしているのですが、ただ、一つお願いさせていただきたいと思っておりますのは、やはり現状からどのように次の形として姿を描いていただけるかということがございますので、前提としてこれが決まっているということではなくて、後ほど御発表いただく事例発表などの状況から、また御議論を頂ければと思っております。

【大津委員】 分かりました。

【吉田座長】 それでは、平木調査官、お願いいたします。

【平木調査官】 失礼いたします。中学校を担当しております平木と申します。10分程度、中学校における英語教育の現状、それから、今後の方向性についてお話しいたします。
 議事次第がある方の資料の26ページ以降に、このスライド、1ページに二つのスライドを入れたものがございますので、御覧ください。
 お話としては、大きく四つにまとめたいと思います。まずは改訂の内容、それから、実施後の現状、それから、その課題はどんな点にあるか。その前に、2本ほど、中学校での実際の授業の様子を2分程度御覧いただきたいと思います。それから、取組として、中学校あるいは教育委員会等でどんなことをやっていらっしゃるか、5事例ほどきょうは御用意しております。最後に、今後の方向性をまとめたいと思います。よろしくお願いいたします。
 まず改訂のポイントですけれども、資料2-2の方に、先ほども事務局からありましたけれども、学習指導要領の部分は10ページ以降に中学校のものはございますので、必要があったら御覧いただきながらと思います。
 ポイントですので、かいつまんで申しますと、まず教科の目標に関しては、4技能の総合的な育成、つまり、バランスよく4技能を育成していくというスタンスになりました。
 また、時数が140時間、週で言えば4コマ相当、各学年とも増えたということがあります。
 それから、語数が1,200語程度。
 あるいは、言語活動の充実という面から、各領域について1項目、ア、イ、ウ、エだったものを、ア、イ、ウ、エ、オということで、5項目立てで示しております。これは、1項目が全く新しく増えたというわけではなくて、4項目立てのものを、もう少しきめ細かく5項目立てに編成し直したというのが趣旨でございます。
 それから、題材としては、「伝統文化」あるいは「自然科学」といったものを追加しております。
 その目標に関してですけれども、10ページの方にも具体的な教科の目標がありますが、かいつまんで言えば、大きくは3本、理解のレベル、態度のレベル、それから、コミュニケーション能力の基礎といったことになります。もちろん、最後の3点目が、解説でもはっきりと書いてございますけれども、中核的な目標という位置付けにしております。
 その目標に関しては、先ほど申し上げましたが、旧の教育課程においては「聞くことや話すこと」などという言葉がございまして、要は、音声重視というスタンスでしたけれども、今回、小学校に外国語活動が導入され、聞くこと、話すことへの慣れ親しみが小学校の役割として入っていったということもあり、今回は、それを踏まえた中学校の在り方ということで、聞く、話す、読む、書くというのが四つが並んで書かれ、先ほど申し上げましたとおり、「4技能の総合的な育成」という言葉が出てきたわけです。
 一例として、聞くことに関する言語活動の変化を御覧いただきたいのですけれども、旧の課程では、具体的な内容や大切な部分を聞き取ることという言語活動がございましたが、その部分に関してもう少し踏み込んで、要は、二つに整理したのですけれども、情報を正確に聞き取るといった面と、まとまった英語を聞いて、その概要や要点を適切に聞き取るといったふうに、聞く場面、あるいは、目的に応じた聞き方をさせるということを意識して言語活動の編成をし直した、これが一例でございます。全てについて申し上げられませんけれども、10ページ以降の資料も御覧ください。
 具体的な改訂の事項について少し補足いたしますと、例えば、第1学年においては、外国語活動で育成された素地を踏まえた指導を行うということで、小中連携をしっかりするということが明記されてございます。つまり、例えば、積極的な態度等、素地が育まれているという子供たちの実態をしっかり踏まえて、中学校1年生、特に入門期においては、きめ細かく指導してほしいというふうに書いております。
 幾らか今回の改善に向けたキーワードがございまして、例えば、発信ということをかなり前面に出しています。つまり、受信するだけではなくて、聞く、読むといった形で受信したことをもとに、話したり書いたりして発信することを最終的には目指していくということがかなり強く出ています。あるいは、先ほども言いましたけれども、統合であるとか総合であるとかいった関連付け、あるいは、バランスよい育成、こういったものもキーワードになっております。
 また、文法に関しては、コミュニケーションの支えである。この辺、後から言いますけれども、高等学校と全く同じスタンスで、言語活動との一体化を図るといったことも明記されています。また、それと少し関連がありますけれども、活用することを通して定着を図る。要は、言語材料については、子供たちに実際のコミュニケーションの中で使う場面を作ってあげる、使いながら定着を図るといったこともかなり前面に出しています。
 そこで、もう少し各技能について、これは過去に国で行った状況調査等の結果から少しまとめているのですけれども、どんなことが今後の改善のポイントかということで、技能ごとにこういうふうにまとめております。聞く、話す、それから、読む、書くについてです。
 やはり読むことに関しては、先ほどもありましたけれども、様々な場面が考えられると思います。コミュニケーションの場面で読むということについて。ですので、例えば、こういった幾つかの情報がたくさんあるものを整理して、正確に読み取っていくなんていうことも、国の調査からは課題として出ているところです。
 書くことに関しても、やはり特にまとまった内容の文章を書くといったところには、大きな課題が残っております。22年度に特定の課題に関する調査というのを国立教育政策研究所で行ったのですけれども、そこからも、まとまった内容の文章を書くことについての課題が浮き彫りになっております。ただ、一定程度の分量を書くことはかなりできるようになってきております。質の問題かと考えております。よりまとまった内容が書けることが、これからの課題かと考えております。
 映像の方をお願いできますでしょうか。2本、中学校の実践を御覧ください。
 まずは、青森県のむつ市立田名部中学校です。

(映像放映)

【平木調査官】 今正面に映っている生徒は高校生です。高校生と中学生の交流授業を行った場面です。こちらが中学生です。
 浜松市南部中学校です。第2学年。

(映像放映)

【平木調査官】 今のは、教師と生徒、英語でのやりとりをスムーズに行っている例と御覧いただければと思います。
 ここから幾つか、この2年間余り、新教育課程になってから経過しましたが、あちこちで拝見していて私が感じたことをまとめてみました。
 教師と生徒の親和関係であるとか、授業を、先ほどの授業のような形ですけれども、英語で展開することであるとか、ペア・ワークなどの「活動」中心といった、授業の基本的なぱっと見た印象なのですけれども、ある程度できているのかなというふうには思っています。「外国語活動の成果か?」とクエスチョンを付けていますが、あるかなと。子供たちが英語での活動に取り組む姿というものは、やはり完全に外国語活動が入ってきたことによって大きく変わったということは、中学校の先生方からもよく聞く話です。
 ただ、授業を英語で展開するであるとか、活動中心というのは、表面上はということを少しお断りしておきたいと思います。つまり、それは課題でもあるということで、課題と考えられることを4点挙げてみたいと思います。
 1点目は、コミュニケーションのための言語活動を、先ほども一つ、浜松市の方で行っていましたけれども、真の「コミュニケーション」になっているかどうかということです。あるいは、考えながら「表現」させているかどうか。それから、教科書本文、つまり、題材内容の扱いはどうなっているのか。さらには、単元ゴールはどのように設定されているか。こういったことが少し課題かと考えます。
 若干補足しますと、コミュニケーションの部分に関しては、やはり伝えたい内容があって、伝える目的があって、相手がいてという、そういう意味での真の「コミュニケーション」ですね。真のコミュニケーションギャップも設定してといった中での英語使用になっているかどうかということです。
 あるいは、考えながら「表現」というのは、準備したものをそのままそらで言ったり、覚えたものを言ったりではなくて、その場で、ちぐはぐな英語でもいいので、何とか伝えようという気持ちに支えられてコミュニケーションを図っている場面を設定されているかどうか。
 それから、内容の扱い。これは本文に示された様々な題材が中学校の教科書では使われていますけれども、先ほど申し上げた自然科学とか伝統文化も今回新たに加わりましたけれども、そういったものも含めて、そういった題材そのものを扱う言語活動における扱いがどうなっているか。
 単元ゴール、CAN-DOの視点からの付けたい力が設定されているかどうか。英語でどんなことができることを目指すかといった単元構想ができているかといった点です。
 つまり、一言で言えば、どんなコミュニケーション能力を身に付けさせようとしているのかがどこまで明確になっているかといったことが、ややまだ十分ではないかなと感じるところが多いです。
 昨年度行われた英語教育実施状況調査から幾らかデータを御覧いただきたいと思いますけれども、教員の英語使用です。授業の半分以上で発話を英語で行っているパーセンテージは、このように学年ごとになっております。いずれも4割ちょっとということなのですけれども、生徒の方を御覧ください。生徒に英語で言語活動をする場面をどの程度設定しているか。授業の半分以上を設定していると答えたパーセンテージが、52、47、43と、高いことは高いのですが、3年生に向かうにつれてだんだんと低くなっていることにお気づきかと思います。やはり言葉を借りれば、高校入試があるのでということが言い訳になっている面はかなり見られるように感じております。
 それから、同じく調査で、もう1個、CAN-DOリスト、これは先ほど事務局の方からも補足説明がありました、あのデータですが、中学校の場合は、昨年度の場合は、17.4%の学校が設定しております。その中で、内訳として、達成状況を更に把握もしているといった学校は66.8%、こういった状況がございます。後ほどCAN-DOリストのことは、少し実践事例でお話ししたいと思います。
 さらに、昨年度、国立教育政策研究所の方で、「学習指導要領実施状況調査」を実施しております。現在分析中でございますが、二つの視点があって、今回の改訂の基本方針、特に思考力・判断力・表現力のところを見る工夫をした問題、あるいは、マル2番の方にございますが、要は、過去問からの経年比較ですけれども、過去、以前の課題がどうなっているのかといったことから見る問題という、大きくは二つの色分けをした調査を行ってございます。予定としては、4技能について分析をした上で、遅くとも来年度の初め、このごろまでには公表されている予定でございますので、具体的なデータは、それを待つということも考えられます。
 そこで、簡単に実践を少し報告いたします。学校の例を2件ですが、これは和歌山県の初島中学校です。これは文部科学省の拠点校で、昨年度研究をされた学校ですが、学習到達目標をいち早く設定されていました。マル3番がポイントで、単元の目標と学習到達目標とをきっちりと関連付けておられました。つまり、この単元では学習到達目標のこの部分を指導するための単元ですといったことが明確にされているというところが、かなり先進的でした。
 それから、静岡県の裾野の東中学校です。こちらは国立教育政策研究所の「学習指導実践研究協力校」、昨年度・今年度、特に連携に関わる研究をしていただいております。小学校・高等学校との連携です。実際、25年度の冒頭の段階では、高等学校はおろか、小学校との連携もほとんどされていない状況がありました。校長先生、それから、市教委、県教委、一体となって、センターも一体となって支援をしながら、教員の意識も高まった上で、小学校、高等学校と連携が、全く以前の姿とは異なる形でスムーズに行われ、ふだんから日常的に小・中・高が行き来する状況ができ上がったという実践事例です。やはり高校での連携を生かした授業改善は、かなり授業でも私の方も拝見することができたという状況です。
 それから、教育委員会ですけれども、島根県が、学習到達目標の設定に向けた学校へのサポートをかなり強く進めておられます。手引きを作られて、それを各学校に配布して、作成ガイドとして作られて、各学校がスムーズに作れるようなとてもよい工夫をされています。年間指導計画であるとか、指導と評価の改善といったもの、そういった視点がしっかりできていて、作っておしまいではなくて、作ってそれをどう授業改善に生かすかというところまで、きっちり県の方で指導されている。今月末で全校で作成完了し、提出し、点検していくということだそうです。
 それから、東京都の教職員研修センター、こちらは、マル2番にございますが、要は、これが学習到達目標に該当するものですけれども、系統表というものを各教科で作って、外国語でも作っておられます。単元計画例が複数、中学校の場合と高等学校の場合と示されていて、全てにおいて、その系統表との関連が明記されています。これは先ほどの初島中学校の場合と同様なのですが、かなりこれが系統的に行われているという、一つのキーワードの中できっちりとまとめられていました。教師・生徒の英語使用度を高める工夫をしながらということで。
 それから、最後、沖縄県の教育委員会です。沖縄県は、御存じとおり、離島が多くて、県全体での統一した研修を開くことが大変困難な状況にございますので、「地区別ブロック型研究事業」というのを立ち上げて、6教育事務所ごとに、県の統一方針を各地域に浸透させるべく、この事業を立ち上げているといったことがございます。私もいろんな教育事務所を訪問しましたが、どこの教育事務所に行っても、例えば、単元構想ひとつ取っても、かなり統一感が見られる。地域によるばらつきがかなりないなと。それが大きな成果かなと感じた次第です。
 最後に、今後の方向性ですけれども、3点挙げてみました。
 一つは、先ほどの実施計画にもございますとおり、授業は英語で行うことを基本とし、内容に踏み込んだ言語活動を重視する。特に高等学校への接続といった面からも、中学校は、小学校からの接続だけではなくて、高校への接続、いわゆる基礎体力を付けるといった意味で、もっと内容に踏み込んだ言語活動を展開していくことが必要ではないかといったことが1点目です。
 それから、2点目は、学習到達目標に基づいた指導と評価です。これ、「と評価」が消えていますけれども、指導と評価をいかに展開していくか。先進事例に学ぶということです。
 それから、最後は、高校入試における4技能のバランスをどうとるか。特に話すことは、全都道府県において実質的に入試の中では見ていないという状況がございます。これをどう改善していくかといったことが挙げられるかと考えます。入試に関しては、小委員会の方で議論をこれからも重ねていくというふうに考えております。
 なお、この方向性については、その他、教材、あるいは研修、それから、教員養成等の課題もあるとは考えますが、高等学校の方でこの後担当の方からも話がありますので、そちらでまとめるというふうに御理解いただければと思います。
 以上です。

【吉田座長】 ありがとうございました。
 それでは、向後調査官、お願いいたします。

【向後調査官】 よろしくお願いいたします。向後と申します。
 高等学校につきましては、主に5点御説明いたします。1点目は、新学習指導要領「外国語」、平成25年度からスタートしておりますが、その改訂内容。2点目は、その趣旨に即した授業の実際が、現在どうなっているかということです。3点目は、高等学校の事例の中で、優れた取組をしていると思われるものを幾つか紹介したいと思います。4点目は、実施した後の、教員の授業、それから、生徒の様子の変容について御紹介したいと思います。最後に、今後の課題と方向性でございます。
 まず、学習指導要領改訂前と改訂後の科目構成ですけれども、左側が改訂前、右側が改訂後ということになります。左側の改訂前の科目を一新しまして、右側が新しい科目になっております。「コミュニケーション英語基礎」から始まりまして、「コミュニケーション英語3」までは、4技能を総合的・統合的に育成する科目としております。このうち、必履修科目として、「コミュニケーション英語1」を標準単位数3で設けております。その下ですが、「話すこと」や「書くこと」を中心として、論理的に表現する能力を育成する科目として、「英語表現1」、「英語表現2」を設けております。さらに、会話を中心とする「英語会話」、この7科目に新しく生まれ変わりました。
 目標ですけれども、上段が旧、下段が新ということになります。中学校と同様、三つ柱がありまして、一つは、言語や文化に対する理解、2点目は、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度、3点目は、中核的な目標になりますが、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養うということになっております。
 今回、語数も充実するということで、コミュニケーションを内容的に充実させるためには、指導すべき語彙数の増加が必要であるということで、新課程では、高等学校で1,800語、中学校の1,200と合わせますと、高校までに3,000語の学習が可能であるということになります。これは、「コミュニケーション英語3」まで履修した場合に、3,000語の学習が可能であるということです。それまでの中・高で2,200語から比べますと、800語増えているということになります。
 続きまして、文法指導についての新しい視点でございますが、「文法はコミュニケーションを支えるものである」と捉えるということを明記しております。そのため、文法事項を言語活動と効果的に関連付けて指導するようにお願いしてございます。その際、用語や用法の区別などが指導の中心にならないように配慮し、実際に使えるようになることを目標としていただきたいということでございます。今回、文法事項全てを必履修科目「コミュニケーション英語1」で扱うこととしております。大切なのは、文法かコミュニケーションかという二項対立的に捉えるということではなくて、あくまでも文法はコミュニケーションを行うための基盤であるという意識を持っていただきたいということでございます。
 その次のポイントですが、先ほど室長から説明がありましたように、「授業は英語で行うことを基本とする」という規定が明記されております。その際、生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮する、つまり、先生のスピーチ大会にならないようにするということですね。この授業を英語で行うというのは、それ自体が目的というわけではなく、生徒が英語に触れる機会を充実させる、それから、英語を英語のまま理解したり、英語で発信しやすくするということの手段として、こういう規定がございます。
 さらに、教材、題材ですが、4技能を総合的に育成する活動、これに適した題材や内容を扱っていただきたいということです。下に書かれていますけれども、最初に素材があるということではなくて、最初にあるのは目標で、それを達成するための言語活動に応じて適した素材を選ぶという考えで授業を組んでいただきたいという意図がございます。
 それでは、新課程に基づいて行われている授業の映像を御紹介いたします。

(映像放映)

【向後調査官】  1年生です。

(映像放映)

【向後調査官】  2年生、学校設定科目です。

(映像放映)

【向後調査官】  3年生です。

(映像放映)

【向後調査官】  2年生の学校設定科目は、ニュートンの法則を英語で説明していましたが、お分かりになりましたでしょうか。
 それでは、具体的な事例を幾つかフォローさせていただきますが、まず事例1として、北海道函館中部高等学校の実践です。北海道函館中部高等学校では、とにかく生徒の「表現したい」という意欲を引き出す指導にフォーカスを当てています。ですから、その機会を日常的に持たせる言語活動を中心に授業を行っています。特徴的なのは、2点目に書いてありますが、「コミュニケーション英語基礎」という、必履修科目の前にこの基礎科目を履修させて、英語で考えたり、英語で発信したりという活動に慣れさせ、3年間を見通して教育課程を組んでいるということですね。それから、「CAN-DOリスト」を作成して、教員がいろんなアイデアを出し合うということです。
 GTECのスコアを一つの成果検証として挙げておりますが、GTECは、前回に安河内委員からも説明がありましたように、「読む」、「聞く」、「書く」の3技能をスコア制の絶対評価で測定しております。2012年度、2年生は、1年次4月から12月の8か月で64点伸びています。これ、平均的な伸びが30~35点ですから、倍近く伸びています。特にライティングは、高校卒業程度の英語力とされている「グレード5」の人数が、4月時点は4名でしたが、12月では96名と大幅に増加しています。
 続きまして、石川県立金沢桜丘高等学校の実践ですが、大きな特徴は、「正解を当てさせる」という授業から脱却するということです。教員がこの正解に引っ張ろうという授業を脱却して、生徒が自分の主張を伝えるという方向にシフトしています。そして、カリキュラムを見直して、3年間を通じて4技能をバランスよく育てようということです。4点目に書かれていますが、授業とそれ以外を精査して、授業は授業でしかできないこと、つまり、子供たち同士で意見を伝え合うとか、そういったことを中心にやりましょうということで変えております。
 この石川県立金沢桜丘高等学校のGTECによる成果検証ですが、指導改革が始まったのは2009年度です。その2009年度の1年生は、1年次の4月から12月の8か月で47点の伸び、1年次12月から2年次12月の1年間では48点伸びています。先ほど申し上げましたように、平均的には1年間で30~35点ですから、比較的伸び幅が大きいと思います。特に2010年度1年生は、1年次の4月から12月の8か月で50点伸びています。
 もう一つ事例を紹介させていただきますが、北海道旭川北高等学校、この高等学校は、1点目として、科目ごとに到達目標、指導計画、評価規準・方法を明確に示して、それを全外国語科教員がシェアして、それに基づいて授業を行っているということです。そのために、科目ごとに教員の指導マニュアル、生徒用補助プリントを示しています。さらに、観点別学習状況の評価を着実に行い、その中に「CAN-DOリスト」の形による学習到達目標を生かして、指導計画、評価を行っています。
 その例がこちらです。これは旧課程のシラバスですが、旧課程のシラバスであっても、学習内容、目標をCAN-DO型で設定しており、評価規準に「CAN-DOリスト」を生かしているという例でございます。
 北海道旭川北高校のホームページに行っていただくと、このように公開をしています。教員の指導手順、この教科書でこういうふうに指導しますよという指導手順、それから、生徒用にはこういうプリントを使っていますよというものを全て公開しています。
 次に、新学習指導要領開始後の教員、それから、生徒の変容についてお話をさせていただきます。
 普通科等の授業における英語担当教員の英語使用状況ですが、左側、「コミュニケーション英語1」と「英語1」、平成25年度と22年度を比較していますが、先生方が「発話をおおむね、あるいは半分以上英語で行っている」は22年度の「英語1」は合わせて16%、25年度の「コミュニケーション英語1」は53%というふうに大きく伸びています。
 続きまして、先生方の英検準1級程度以上等の取得割合です。「英検準1級以上等」というのは、英検準1級以上、TOEFL PBT 550点以上、TOEFL CBT 213点以上、TOEFL iBT 80点以上、TOEIC 730点以上の割合ですが、平成22年度の旧課程下では49%高等学校の先生方が取っていましたが、25年度、新課程では4%増の53%に伸びています。
 続きまして、生徒がどのぐらい言語活動を行っているかということですが、これは平成25年度、新課程スタートの年にとった調査で、「おおむね言語活動を行っている」、つまり、「授業の75%程度以上言語活動を行っている」のが、「コミュニケーション英語1」では11%、半分以上が30%、これを合わせますと41%です。ですから、授業の半分弱は言語活動を行っているということになります。右側が、「英語表現1」ですが、ほぼ同じ数値が出ています。
 続きまして、「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標の設定状況ですが、これはやはり大きく変容がありまして、平成23年度、左側、これは普通科です。普通科を見ていただきたいと思います。平成23年度、旧課程では、設定しているは4%、25年度では33%ということで、大きく上がっています。
 さらに、高度な言語活動に取り組んでいる高等学校の生徒ということで、ディベートに取り組む高校生を御紹介したいと思います。これは全国高校英語ディベート連盟が主催する「全国高校生英語ディベート大会」の予選等の結果ですが、2013年12月時点で、37都道府県、78.7%が実施をしています。
 そして、こちらが第1回から第9回まで、第9回は今年ですが、論題の一覧です。第8回の映像、「日本政府は輸入米の関税を撤廃すべきである」という論題でのディベートの映像を一部御紹介いたします。お願いいたします。長野県立伊那北高等学校と茨城県立竹園高等学校による準々決勝です。

(映像放映)

【向後調査官】  時間の関係で、ここで終了させていただきたいと思います。
 今後の課題と方向性について、最後にお話しさせていただきます。
 1点目ですが、やはり初等中等教育全体を見据えたロードマップ、これを明確な学習到達目標として設定する必要があろうというのが1点目です。
 2点目は、高等学校でどこまでレベルを引き上げていくことが適切かという検討が必要です。例えば、全ての生徒が、生徒の実態・状況に応じて英語で発表する、討論する、交渉するといったことが必要になるのではないかというふうに考えます。
 3点目ですけれども、効果的な教材です。昨日、学校訪問をしましたが、その教科書の中に、“The sun rises in the east.”という文がありました。いまだに「太陽は東から上がっている」ことを生徒は一生懸命学習していたということですね。
 4点目ですが、生徒のコミュニケーション能力を総合的に育成する教員が必要であるということです。自分自身が受けてきた教育とは恐らく大きく異なる方法で指導しなくてはいけないという先生も多いと思いますので、そのための研修を、一部ではなく、全ての先生が受けることが大切です。既存の初任者研修、経験者研修、免許状更新講習等を利用するという方法もあると思います。それから、例えば、優れた教員が他教員へ研修を展開できる体制を整えるということが大事だと思います。
 最後に、5点目として、教員養成です。より実践的な英語教員養成カリキュラムの開発が必要であろうと思います。例えば、高校、大学、社会が連携して、高等学校で既に優れた実践をしている英語教員がコマを持つとか、そういった考えもあるのではないかと思います。あるいは、英語教員採用について、英語力を更に重視するということです。
 最後、6点目としては、やはり高等学校の学習内容が反映された、4技能を適切に評価する大学入試が行われなければ、全てはうまくいかないだろうというような考えもあると思います。これは、現在、小委員会で検討しております。
 以上でございます。

【吉田座長】 ありがとうございました。
 全体的な議論は後ほど、まだ発表者がおりますので、やるとして、今、お二人の調査官からお話がありました。何か御質問がもしございましたら。では、安河内委員。

【安河内委員】 簡単な質問です。教科書の改訂が行われましたね。よく旧課程のときに生徒たちと話していると、教科書の音にアクセスできないということがよくあったのですね。CDを持っているかと聞くと、そのCDは本屋さんに行って何千円か出して買わないと手に入らないとか。中学生なんかもそうですね。音が教科書に付いていない。だから、めちゃくちゃな発音で読んで勉強しているという子がすごく多かったのですけれども、新課程に変わって、子供たちがあまねく教科書の音にアクセスできるようにはなっているのでしょうか。

【吉田座長】 じゃ、向後さん。

【向後調査官】 CD教材等へのアクセスは、基本的には方法は変わっておりませんが、ICTを使って先生方が授業をしてきていますので、そこで使ったりとか、あるいは、先生がCDを学校で使いやすくしているという状況はあります。

【安河内委員】 ということは、生徒が個別に音は入手できないのですね。大きな目標を達成するためには、学校での授業だけではなくて、前にもあったとおり、やはり家庭学習、それから、学校の外での学習というのが非常に大事になってくるという話があったと思うのですが、じゃ、おうちで教科書の音をリピーティングして勉強したいという場合には、現在では音にはアクセスできないという状況ですか。多くの生徒は。

【吉田座長】 じゃ、向後さん。

【向後調査官】 それは、学校や担当する先生によって異なると思います。そういうふうにアクセスできるように配布している学校もあるということです。

【安河内委員】 教える立場からなのですけれども、是非その点で努力して、全ての生徒が教科書ではなくて、教科音を使って学習できるような体制を整えていただければと思います。

【吉田座長】 ありがとうございました。今後の一つの課題として考えられると思います。
 ほかは、御質問というのは。では、大津委員、どうぞ。

【大津委員】 中学校の方の資料の30ページの、聞くことの最初の項目に、「文形式ではなく内容に応じて応えること」というのがあるのですけれども、これは、私、理解不能なので、解説していただけますでしょうか。

【吉田座長】 じゃ、平木さん。

【平木調査官】 簡単な話をすれば、「How are you?」に対して、何も考えずに「I’m fine.」と応えちゃうということがあります。状況によっては、「I’m fine.」ではない場合もあるということです。だから、もう形式だけ教えてしまっているので、状況に応じた応じ方ができないというのが、調査から出てきました。

【大津委員】 そうすると、そのときの「文形式」とおっしゃっているのはどういうことですか。

【平木調査官】 この言葉は報告書のまま持ってきたのですけれども、要は、定型表現という意味です。

【大津委員】 そうですか。

【平木調査官】 はい。

【吉田座長】 ありがとうございます。
 ほかにはございますか。
 それでは、時間もございますので、続きまして、現場の先生方から少し御発表をお願いしたいと思います。
 まず、中学校の方ですけれども、吉澤先生、お願いいたします。

【吉澤教諭兼教育専門監】 秋田県大曲中に勤務しております吉澤と申します。
 今回の発表におけるキーワードは二つございます。一つは、言語活動における「即興力」の育成、二つ目は、その橋渡しとしての「メモに基づくスピーキング指導」です。これらに関しまして、いまだ実践途上のものの発表になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
 本日の発表概要でございます。1から5のような構成で進めさせていただきます。
 まず、「即興力」の規定です。「読むこと」と「話すこと」を統合した指導に際し、初見の英文から必要な情報を読み取り、その場で作成したメモに基づいて伝える内容を整理し、口頭で伝える力、これをもって本実践の「即興力」と規定いたしました。
 それでは、なぜ現場で「即興力」が必要となるのか。「読むこと」における指導では、英語と日本語が対比されたハンドアウトを配布し、日本語を通した英文理解をさせていた実態もあります。このような場合、生徒の目は日本語に行ってしまい、結局、理解するのは英語ではなく日本語といった問題が生じます。また、英語と日本語を対比する過程で、一字一句にこだわってしまい、限られた時間に必要な情報を取るというような視点がどうしても欠落していたということが問題点として感じておりました。
 一方、「話すこと」においてでありますけれども、事前に原稿を書き、それを読む、又は、その書いた原稿を暗記して再生する、こういったことを課題として感じておりました。原稿をそのまま読んだり、暗記したものを再生するのではなく、将来的には原稿を書かずに即興で、そして創造的に伝えることを目指して、その橋渡しとして、メモ書きから話すというようなことをプロセスとして取り入れることといたしました。時間をかければ対応できるというのと、即座に対応できるというのとでは、これはもう単に時間的な差というのではなく、英語運用力の質的な差というぐあいに考えたからです。ここにこそ、即興力をテーマとして掲げた理由がございます。
 地域に共通するこれらの問題を改善するために、拠点校・協力校制度の枠組みの中で、改善の手段として、CAN-DO形式による学習到達目標を活用することといたしました。
 それでは、なぜ手段としてCAN-DO形式の学習到達目標を取り入れたのか。教育現場においては、教員は日々多くの生徒と関わり、複数の同僚と仕事をしているわけでございます。それにもかかわらず、実際の授業における指導法の共有などは意外に少なく、それぞれがそれぞれのスタンスで授業を行っているということが非常に多くございました。指導の方法を統一するための足場の役割ということで、学習到達目標に役割を期待し、改善の手段として用いることにいたしました。CAN-DO形式の目標を作成するだけでなく、実際の指導に反映してこそ初めて意味を持つといったことを踏まえたものであります。
 皆様のお手元に実物がございます。紫とか、場合によってはオレンジ色のリストでございます。例といたしまして、スピーキングの欄を縦に御覧いただけますでしょうか。ここでは、話す活動において、全て原稿を書かずに、キーワードから話す、こういった点を貫くことといたしました。このような方向性を共有することで、指導に関する教員間の意識統一を図るということを意図いたしました。
 今日は、一部の学校だけが先進的な取組を行うことが求められるというような時代ではないと思います。地域全体として指導力、評価力を向上させていくという必要を感じています。共通実践を行うため、複数の教員の協力というのはどうしても不可欠になるわけで、そういった意味でも、標記の制度を活用して実践を行ったという次第であります。
 次に、実際に行った改善の取組の具体例を御紹介いたしたいと思います。
 最初に、「読むこと」についてでございますが、従来の対訳式による理解から脱却するために、改めて理解するとはどういうことかということを英語科で議論しまして、理解した内容を口頭で第三者へ伝えるというようなことをもって、理解したと規定いたしました。つまり、理解できているかどうかというのは、口に出してみないと分からないのではないかということによるものであります。また、読んだ先に目的となる活動を設定し、その目的のために情報を収集する、又は、英語表現を取り込むというような視点も入れたという点がございます。
 「話すこと」に関わりましては、次のような1から4とスモールステップとして設定いたしました。1、伝える内容を整理する。2、キーワードのみでメモを作成する。3、頭の中で英文を構成し、伝える。口頭で伝えた後に、書くプロセスの中で、自分がうまく伝えられなかったなといった部分を文字に起こしまして、自分で確認したりして修正する、又は、教員からフィードバックを受けるというようなステップでございます。
 この画像は実際のメモです。高校生のアルバイトの是非についての簡易ディスカッションを前提に作成したものでございます。メモを作成する際、単語のみ書くという習慣が今までなかったため、単語のみでメモを取るということには相当の訓練を必要といたしました。
 実際の1単位時間で、どのようにメモから話す活動を取り入れたのかというのをお示しいたします。投げ込み教材を読み、話の要点を伝えた上で、自分の気持ち、意見などをメモをもとに伝え合う活動というのを設定いたしました。題材にいたしましたのは、アメリカ大使館発行「アメリカン・ビュー」に掲載された記事をもとに自作した英文でございます。内容を端的に申し上げますと、北海道に住む中2の少女が、東日本大震災による津波で流された父の漁船を救うために、アメリカ海軍に自分で英語でメールを送り、無事発見されたという内容でございます。表題の“I am a 14-year-old Japanese.”というのは、少女が送ったメールの実際のタイトルでございます。
 真ん中はその少女で、右側がお父さん、左側は米軍のキャプテンとなっております。
 この教材を通しまして、父の漁船を救うという目的のために、つたない英語であっても、実際に教室の外で英語を使って行動を起こしたということを生徒に投げかけたいと思いました。
 実際の授業映像でございますが、これはメモを作成し、グループで伝え合った後に、全体で発表している場面であります。映像をお願いいたします。

(映像放映)

【吉澤教諭兼教育専門監】 口頭で伝えた後は、書いて確認いたします。このメモでありますが、先ほどの生徒とは別の生徒の例であります。こういったぐあいに書いて確認するわけでありますが、この生徒の場合は、英語というのは教室だけのものではないということに着目し、教室の外でも英語を使ってコミュニケーションを成立させた同年代の少女、シホさんを、自分にとってのa good modelというぐあいに表現しております。
 次に、別のクラスの授業を御覧いただきたいと思います。では、お願いいたします。

(映像放映)

【吉澤教諭兼教育専門監】 この場面でありますが、33歳に将来なったときの同窓会を場面として設定し、33歳というのは、秋田でも厄年というような感じで毎年集まるのでありますが、お互いの近況を訪ねたり、それから、どういう職業に就いて、どういった活動をしているかというようなことを報告している場面でございます。
 次の映像でありますが、自分の職業生活を報告しております。

(映像放映)

【吉澤教諭兼教育専門監】 今の生徒でありますが、どちらかというと即興というよりも、家で自学で学習したものを活用しているような面が私は感じられました。本校では、先ほど音声の話が出ましたけれども、教科書音声のみでなく、自作した構文パターンをCDに収録したものを、ELECで収録したものなのですが、科研費等を利用いたしまして、生徒に配布して、家で活用させております。家でできることと学校でできることを区分けして、こうやるというようなことで。今まで即興をテーマにしながら、私、原稿を読んでしまいまして。少し即興のコメントを入れてしまいまして、申し訳ございません。
 次に行きます。では、ビデオがもう一つあります。お願いいたします。
 こういった形で、授業でも東京と秋田の話題になりましたので、それこそ教師側も即興でロールプレイをやらせることといたしました。
 次、最後の映像であります。東京に出たい息子と、それを止める母親ということで。

(映像放映)

【吉澤教諭兼教育専門監】 スライドの方、よろしくお願いいたします。
 時間が押しておりますので、この辺はちょっと飛ばしたいと思います。拠点校制度での成果というようなことであります。
 最後になりますが、今後、小学校での外国語活動の教科化という動きを受けまして、中学校でどこまで英語教育を引き上げていけばいいのかということを念頭に置く必要を感じております。例えば、今まで書いたことを発表するというような、一見うまくいっているような授業も、実際にはコミュニケーション能力の育成にはつながっていないのではないかということが多く、そのような意味で、「即興力」の必要性を感じ、本日お示しいたしました。そのためには、教室でモティベートされた心をエンジンに、教室の外でも積極的に英語と接する量を増やしていくというようなことを地域全体で推し進めていければと考えております。
 ありがとうございました。

【吉田座長】 どうもありがとうございます。
 それでは、また御議論よりも、まず今の御発表に質問がもしございましたらお願いします。では、松本委員、お願いいたします。

【松本委員】 すばらしい取組で感動しました。それでまず、吉澤先生の職務についてお聞きしたいのですが、教諭兼教育専門監というのは、どういうお立場なのでしょうか。それから二つ目は、ほかの地域ですが、中学校の授業を見に行くと、英語の力がちょっと低いなと思う先生がいらっしゃるのですね。そういう方々が吉澤先生の地域にもしいらっしゃった場合、そういう人たちをどういうふうに巻き込んで、地域として改善しているのか。先生御自身の授業だけではなくて、ほかの教員の授業をどういうふうに良い方向へ持っていっていらっしゃるのかということについて、吉澤先生の職位と関連付けて教えていただきたいと思います。

【吉田座長】 お願いします。

【吉澤教諭兼教育専門監】 教育専門監という堅い名前が付いておりますが、週3回、この大曲中学校を本務校として勤務しております。週2回は、例えば、火曜日は大曲西中学校と、それから、金曜日は大曲南中学校という感じで、定期的に週1回ずつ別の学校に回っていきまして、ティームティーチングを通して、一緒に組む教員と一緒に授業改善を図るというようなことでございます。
 今ビデオでお示ししましたメールの授業ですとか、ああいったものを題材に持っていって、今度は、次の次の週とか、ほかの学校で一緒にやってみまして、ちょっとやってみた後に、余り負担にならない程度にフィードバックをお互いにするというようなプロセスを毎週行っております。

【吉田座長】 ありがとうございます。
 ほかの方、いかがですか。よろしいでしょうか。
 それでは、時間も押していますので、高等学校を……。

【吉澤教諭兼教育専門監】 すいません。先ほどちょっと急ぎすぎまして、1点補足させていただいてもよろしいでしょうか。
 資料の62ページになります。こういった実践は、拠点校という枠組みの中でお話ししたわけですが、やはりどうしてもこういった事業を検証する上で、協力校、いわゆる受入れ側ですね、協力してくださる教員の意識は一体どういうものかと、それから、及ぼすことができる影響はどの程度かということを調べてみました。
 質問紙でありますが、62ページでは、ペーパーではちょっと見にくいのですが、メモから話す、この方針につきましては、ほぼ100%の教員が、非常にやりやすかった、効果的であったというような感想を出してくれております。
 一方、右側の63ページですが、教員だけでなく、生徒においても質問紙で調査してみたところ、統計的な検定をかけてみたところ、3校において全て積極的肯定の回答が多かったのですが、ポイントは、その3校によって差がない積極的肯定だったと。拠点校のみ高いということではなくて、3校とも同じレベルで積極的に肯定してもらえた。このことは、拠点校と協力校、同じレベルで、差を生じさせることなく、一定の手法の効果を波及、広めていくことができるのではないかなという可能性をちょっと感じとった次第でございます。
 補足させていただきました。

【吉田座長】 ありがとうございます。非常に教員研修などに参考になるのではないかと思いますね。
 それでは、続きまして、高等学校は、岩手県の寒河江指導主事にお願いいたします。

【寒河江主任指導主事】 岩手県教育委員会の寒河江と申します。よろしくお願いいたします。
 発表のタイトルが「岩手県における英語教育の取組」となっておりますが、内容は、基本として、県としてのCAN-DOリストの形での学習到達目標の設定における効果、それから、生徒の言語活動の充実を図る取組、この2点についてお話ししていきたいと思います。
 CAN-DOリストの形での学習到達目標の作成までということで、スタートは2009年になっております。平成で言いますと、平成21年になります。検討を開始して、作成をして、修正をして、実践例を出してなどという一連の流れを書いております。2011年の段階で、5つの提言というのが発表されまして、県の取組を更にバックアップといいますか、推し進める力になったというような状況です。現在は、CAN-DOリストの形式での学習到達目標を中・高で何とか共有できないかということで模索しております。本県では、中学校・高校とも、全ての学校でCAN-DOリストを作成しておりますので、何とかそこら辺で目標を共有したいなと考えております。ただ、問題として、中学生が高校に入るときに高校入試がありまして、その地域の子供が必ずしもその地域の高校に入るわけではなく、いろんなところに散らばっていきますので、具体的になればなるほど、地域連携がちょっと難しい面もあるのかなということで、今、模索中というような状況です。
 続きまして、岩手県版CAN-DOリストにおける特徴ということで、何点かお話ししたいと思います。
 県内の県立高校は64校あるのですが、三つのグループに分けまして、3年計画で実施しております。1年目24校、2年目24校、3年目16校ということです。いきなり「CAN-DOリストを作ることになりました、はい、先生方やってください。」と言われても、「何で?」ということになるので、この24校を指定校という形にして、県の英語教育推進のための、あなたの学校は指定校なのですということで、CAN-DOリストをまず作りましょうということと、英語能力判定テスト、これは英検協会で作成しているものですが、これを県費で受験して、それの成果検証もしましょうと。それから、学校訪問を重点的に行って、先生方の指導力の支援をしましょうというような形で、3年計画で実施しました。
 それから、教員研修会も実施しておりまして、この教員研修会の中身は、その3年計画の中では、CAN-DOリストの作成に特化した教員研修会に1日かけまして、あともう1日は、いろんな方々に来ていただいて、講演ですとか、教員の指導力の向上に向けての講義ですとかという形でやっております。現在も、毎年4月に県内の教員のベクトルを合わせるために、教員研修会、全校対象のものを開催しております。
 それから、参考としての「県版CAN-DOリスト」を作成しました。これはあくまでもたたき台として、岩手県の、主に進学を希望する生徒用のCAN-DOリスト、それから、工業高校や、商業高校のような、専門高校に向けたものです。というのも、英語の単位数が専門高校の場合は2年次以降、2単位くらいに減ってしまいますので、そういうことを考慮して、2種類作りました。そのCAN-DOリストをもとに、各校で作成しましょうということです。県で作って、これを全校でやりましょうという形のCAN-DOリストではなく、あくまでもたたき台というような形で作成しました。
 それから、CAN-DOリストの点検・修正ということで、この点検・修正が教育委員会としては非常に大事だと思っております。つまり、県としてこういうCAN-DOリストを作って、じゃ、提出してくださいと言うと、学校側としては、提出して、「ああ、終わった」ということになり、あとはほとんど使われていないというケースが実は1年目にありました。そこで、実際に生徒の学習状況を学校訪問で見ながら、「こういう方がいいのではないかな」、「この目標はもう達成しているから、もうちょっと高いレベルでもできるのではないでしょうか」なんていうようなアドバイスをしております。
 その他、DVDを付けた実践例を付けたり、公開授業の指導案にはCAN-DOリストを添付して、CAN-DOリストを広めようという形で取り組んでまいりました。
 これが研修会の様子です。いろいろな種類の学校があるのですが、進学を希望する学校、農業高校グループ、商業高校グループ、総合学科高校グループとかというふうにいろいろ分けまして、うちの生徒にはどれくらいの到達目標があればいいのかということをグループで検討して、発表してという研修会でございます。
 これがちょっと小さくて見にくいのですが、岩手県版CAN-DOリストです。リスニングとリーディングのところしかないですが、その下にスピーキングとかライティングとかも入っております。学習指導要領の文言などを入れて、学習指導要領の中身も周知したいということと、なるべくシンプルなものにしないと、これは広まらないであろうということで、非常にシンプルなものにしております。右側に達成度というのがあるのですが、これ、毎年5月に、本年度版のCAN-DOリストを提出してもらっています。2月末に、右側の達成度、ここはAとかBとかCとかと入るのですが、達成度を入れたものを回収してという形で、2回回収をして、検証をしております。
 続きまして、CAN-DOリスト作成による変化、どのような変化が起きたかということですが、授業の目標がまず明確になりました。お恥ずかしい話、最初のころは、授業訪問した後に、「きょうの先生の目標は何でした?」と聞くと、「いや、きょうは16ページを終わることでした」というのを結構平気で答える教員がたくさんいて、「これじゃいかん」ということで、CAN-DOリストをもとに、目標を明確化して、技能習得型のゴールになるようにしました。
 あとは、英語がそのような形で、今日の目標を示し、授業を行っているのを、管理職等が授業参観のときに見て、「これはいい。」ということで、ほかの教科もやろうということで、英語科の実践が他教科にも好影響を与えている例が県内で幾つもございます。
 続きまして、定期考査が大きく変化いたしました。CAN-DOリストがある関係で、パフォーマンステスト、スピーキングテストですとかがどんどん増えてきています。スピーキングテストについて、なかなか先生方は、「時間がかかる」とか、「教員が少なくて大変」とか、できない理由を結構最初は並べたのですけれども、「親和関係もできますよ。生徒も喜んでやるようになりますよ。」ということをお話しして始めたところ、今ではどんどん増えてきまして、昨年末の調査で、64校中62校が定期考査にパフォーマンステストを導入して評価をしているという結果になりました。
 それから、リーディングにおきましても、今までは、教科書で一度読んだ英文をもう一度テストに出して、それについて再度質問をするというようなパターンがあったのですが、リーディングのCAN-DOリストのところに、何語ぐらいの英文を何分ぐらいで読んで概略をつかむなんていうことが書いてありますので、初見の英語を用いて読解力を測る、そういう定期考査がどんどん増えております。
 それから、ペア・ワークやグループ・ワークも増加しておりますし、発表の場面も増加しております。実際、ペア・ワークはほとんどもちろん英語でやっているのですが、グループ・ワークになると、今まで英語で行っていたペア・ワークがちょっと日本語タイムになってしまうケースがあるので、そこら辺を今後改善していかなければならないと思っています。いずれ英語による授業でペア・ワークを見ていますと、生徒の笑顔が確実に増えていくということを感じております。
 これはCAN-DOリストの本時の目標を黒板に書いている写真です。これは黒板に書くよう指示しています。そして、生徒と目標についてきちっと共有してから授業を始めましょう、この時間が終わったら、あなたはこういうことができるようになるよ、ということを示すために、「You can・・」から始まる文で書くといいのではないというような話をしており、こういう授業が最近増えてまいりました。
 続きまして、言語活動中心の授業に向けてということで、学校訪問指導というところ、ほかの県でも結構やられていると思いますが、本県では学校訪問をメイのとする指導主事がおりまして、学校訪問を強化しております。私も指導主事となって今年6年目になるのですが、5年間は、どちらかというと学校訪問を主体ということで、中・高の授業をたくさん見て回りました。昨年までの5年間で784名の中・高の授業を見ております。最近では10分ぐらい見ると、もうマルバツをつけられるようになったのですけど、駄目なものは駄目と言っています。「ならぬものはならぬ」というのがはやりましたが、ちょっと授業が苦しいなという先生には、2回、3回と訪問して、趣旨を理解していただいて、やっております。
 それから、「授業は英語で行うこと」ということで始まったのですが、やっぱり当初は、前もってかなり研修会をしていたつもりだったのですが、実際回りますと、先生がずっと英語をしゃべっている場面が多く、そういう誤解を解消することが必要だなと感じましたので、助言の中身的には、誤解を解くための話が多かったです。生徒の英語による発話を引き出すためなのですよと。それから、英語による授業の実施について、教師が生徒を過小評価しないようにと。「うちの生徒には英語での授業はちょっと無理です」と言う先生に「そんなことないですよ。ちょっと見てください」ということで、なるべくいい例をたくさんビデオに撮りながら、先生方に紹介したり、事例発表してもらったりという形で行っております。これも調査結果なのですが、昨年度の調査で、1年生担当で「コミュニケーションの英語1」を担当している教員127人中、100人が50%以上は英語を使って、言語活動中心の授業を行っているという結果が出ております。
 昨年だけ考えると、私、100人ちょっと見たのですけれども、99%以上は、私が行けばなのかもしれませんが、英語で授業を行っておりました。最近はちょっとずるいことを考えて、「行くよ」と言って、教室の外で2~3分ぐらい待機して、どうやって授業をしているかなというのを聞いてから教室に入るという、小ずるい手段を使っていますが、英語で行っておりました。
 あとは、言語活動を通じて文法指導を行うというところが、徐々にですが、これは増えてきております。ただ、やっぱり先生方の中には、教科書というのは順番どおり全てやらなければいけないものだという、そういう固定観念がありまして、教科書「で」教えるというのは頭で分かっていても、なかなかうーんというような話が聞こえてきます。しかし文法を説明するのではなくて、その文法を使った文を書かせたり、言わせたりというような形での授業が、これは徐々に増えてきたことは間違いない状況でございます。
 最近の授業では、授業は英語で行っていたり、ペア・ワークを行っていたり、ストップウォッチを持って時間をはかって言語活動をさせている場面などが見られます。先生一人で授業をするときには、ストップウォッチも何も要らないわけですので、そういうことで、時間を管理して言語活動をさせているところをよく見ます。
 あとは、文法訳読式授業なのですが、これは自然に消滅してきました。毎年毎年、自然に減ってきます。多分、有名な模擬試験から和訳問題がなくなったのも大きいのかなというふうに思うのですけど、徐々になくなって、今ほとんど見ることはなくなりました。私が行っていないところでやっているかもしれませんが、私はほとんど見ません。
 それから、授業ディベートということで、これも県で2年前から取組をしていまして、思考力、判断力、表現力、英語の4技能のバランスというようなところで導入しております。先生方が、自分自身、ディベートをやったことがないので、ちょっと抵抗感はあるのですが、やり始めた学校へ行きますと、もう自分よりも生徒が乗ってくるということで、生徒がやりたがっている状況がすごく増えてまいりました。ディベートをやることによって、シンプルな英語会話程度では駄目だということが分かりますし、相手を説得するにはどういうことをしなければならないのかということで、まさしく言語活動の高度化に向けた一つの取組です。今後も、これも実は指定校化して、この学校とこの学校をお願いしますということでやっているのですが、県でバックアップしたいと考えております。
 最後のスライドです。まだ解決が必要な課題というところを最後にまとめてみました。
 活動は増えました。確かに増えたのですが、その活動をして何の力が付くのかちょっと疑問が残る、「活動あって学びなし」的な、ただ「楽しかったね」で終わるような活動がまだあるということ。
 それから、「答え合わせ」みたいな形、つまり、先ほどもありましたが、一つの答えを求める英問英答でやっていきますと、生徒はだんだん自発的な発言をしなくなって、コミュニケーションがうまくいかなくなる場面を見ます。確かに英語ではやっているのですけれども、ちょっと生徒がつまらなそうな顔をしているという場面も見ます。
 それから、コミュニケーションよりは、どっちかというと、ただ指示だけしているというような、定型句による指示だけの英語の授業もまだありますし、CAN-DOリストを達成しましょうというところを余りにも強調しすぎるために、コミュニケーションが抜けた、トレーニングばっかりしているような、そういう授業の場面も見ます。
 あとは、「英語表現1・2」に関しては、ちょっと言いづらいところもあるのですが、この教科書で工夫せよと投げられても、先生はちょっと大変かなと県教委としても思います。先生方から話を聞くと、英語表現がやりづらいというような話がよく出ております。
 それから、大学入試対策ということでは、大学入試対策用問題集というものが余り変わっていない部分もあるのと、先生方の思い込みもあるのとで、例えば、「必ず出る」とか、「これをやっておけば大丈夫だ」みたいなものをずっとやって、コミュニケーションと二項対立になっては駄目だと分かっていても、何かそういうことをやってしまうとか、「3年になったらいいのですよね?」みたいな感じで、3年になったら問題集へ行きますみたいな、そういうところをこれから解決していかなければならないと思っています。
 最後、いろいろ先生方は当初不安があったのですが、だんだん自分が、これはつらい、どうにかしてこれは何とか回避できないかということで、だんだん不満を言ってくるような先生も出てきて、英語力調査とか、生徒の英語力調査ならまだしも、先生自身の英語力調査とかというのももちろんやっているのですけど、「何で英語科だけこんなにいじめられるの」みたいな感じで、いつも私は文句を言われつつ頑張っているのですけど、そういう教員がまだ実際存在していますので、そこら辺の課題をこれから教育委員会の中で相談をしながら、あるいは先生方と相談しながら解決していったらなというふうに思っております。
 以上になります。御清聴ありがとうございました。

【吉田座長】 ありがとうございました。
 一言、お一人だけもし御質問ございましたら。
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、委員の中にも、中学・高校を現場としておられる委員がおられますので、一言ずつ御発表をお願いしたいと思います。
 まずは、石鍋委員の方からお願いいたします。

【石鍋委員】 議論の時間がなくなってしまってはいけないので、簡潔にお話をします。資料では68ページ、資料6を御覧ください。
 私、東京都に勤めておりますので、東京都全体の中学校の英語教育研究会という組織がありまして、そこの役員会と、23区の中で大規模な地区、英語教員が約100名存在している地区の指導主事から聞き取った内容を今回まとめてまいりました。今、調査官の先生や、それぞれの中・高の先生方、指導主事の先生から発表のあったものに重なる点は多々あるのですけれども、全体像を見て課題を見ますと、先進的にやっているところとかなりの差があるというのが見えると思います。そのあたりを私の方では少し強調して説明をいたします。
 まず68ページは、聞き取った成果ですけれども、非常に共通項は多いです。左側の東京都の中学校英語教育研究会の初めに、「英語の授業が楽しい」「授業が分かる」という意識のところを示させていただきました。東京都は中学2年生を対象に、学力向上を図るための調査、いわゆる学力調査を行っておりまして、その中で質問紙調査をしております。これは18年間からの経年で見ますと、右肩上がりに肯定的な回答をする子供が増えているという事実がございます。これはA区の方でも、これは調査はありませんけれども、英語の発話量が増えたという肯定的な評価は上がってきております。その辺は共通しているなと思っています。
 あと、小学校の外国語活動の効果であろうという意見が両方から出ておりまして、やはり音声に慣れてきているとか、コミュニケーションに臆することなくというような言葉は、多くの研究会の役員や指導主事の方から聞いているという実情です。
 また、ある地区では、小学校1年から週2時間外国語活動を行っていて、その地区は、やはり高学年になりますと、前回、直山教科調査官からもありましたが、文字に対する欲求が出てくるというようなことが、現場で多々見られるということでした。
 教員の方につきましては、実は、研修をしたいという意欲を持っているという表れが、68ページの下の段の黒ポチの三つ目にあります。昨年度の研究部研究授業(九段中)にはというのがありますが、400名の教員が参加しております。一昨年度の人数を調べましたら、一昨年度は220名、その前は例年170~180名、非常に人数が増えてきて、これから英語教育が変わっていくというのを意識している教員が多くなっているという表れだろうと思っております。
 あと、細かいところでは、A区の方に書きましたけれども、「習熟度別授業」のクラス分けの基準が、今までは定期テストの点数で分けているというのがほとんどだったと。それが、いわゆる技能別、スピーキングテストをやって、この子の得意な部分と、ある苦手なお子さんを、習熟度で分けてみようとか、そういうトライをしてみようという教員が出てき始めたという状況を聞き取ってまいりました。
 次に、課題なのですけれども、課題のところは、たくさんあると言えばたくさんあります。左側の枠の教員の枠の下から二つ目の黒ポチ、今、岩手県の指導主事の先生からありましたが、訳読式の授業が自然消滅だと言っていましたが、まだまだ都内では散見される。そして、若い教員でも平気で文法・訳読式で終わってしまっているというのがあります。
 実際に私が接した若い教員に、次のような教員が偶然複数おりましたので、紹介しますと、TOEICでは900点前後を取る、そういう教員でしたが、授業を見ると文法・訳読式だったのですね。それで、「なぜ君の英語力を使わないんだい」と聞いたときに、同じ答えが返ってきました。「どのようにやっていいか分からない」。ですから、きょう発表していただいたような先進的な事例をいかに周知していくか、そういったところは今後の大きな課題なのだろうと。そこがクリアできれば、力を持った英語の教員は若手に多いですから、どんどん伸びていくのだろうと思われます。
 時間がありませんので、最後になりますけれども、今後の方向としましては、やはり小学校との連携で、中学校も授業が変わってきていますので、その視点は必ず生かしていくべきであろう。
 もう一つは、高校との連携については、先ほどの発表ではすばらしい連携の事例がありましたけれども、私が知っている限りでは、高校との連携が必要だという声はたくさん聞きます。ただ、実際にほとんど連携が図れていない。高校の授業を見たことがある中学校の教員が少ない。まず、そのところから切り込んでいく必要があるのだろうと思っています。
 時間の関係で、以上にさせていただきます。

【吉田座長】 ありがとうございました。
 もう時間もありますので、続きまして佐々木委員の方からお話ししていただいた後に、質問と全体の議論をしたいと思います。よろしくお願いします。

【佐々木委員】 佐々木でございます。それでは、高校の方から、時間もあれですので、簡単にお話をさせていただきます。
 最後の71ページ、資料7になります。ポイントだけ書かせていただきましたので、それにちょっと加えながら、この順にお話をさせていただきます。
 まだ学習指導要領が新しいのが実施されて1年余りなので、全体的な分析ですとか、正確なところではありませんけれども、また、高等学校というと、学校の特徴も様々、学力差も様々ということで、一概には言えませんけれども、私が捉えている傾向としてお話をさせていただきます。
 まず成果ですけれども、この四つの観点から見ると、確実に変化をしているということが言えると思います。
 まず授業の変化ですが、コミュニケーションの場として確実に変化している。これは私も多くの授業を見させていただいていますけれども、生徒がおとなしく聞いているというような状況から、やはり活動重視で行っている授業が多く、いわば動きのある授業といったところに大きく変化していると思います。また、今回、英語で行う授業ということで、工夫が重ねられてきたり、ALTの活用についても、これまでと変えて改善・工夫した活用をしていこうという動きがありますので、そういった授業そのものの雰囲気や場面が変わってきているというふうに思います。また、先進的にディベートを取り上げているとか、スピーチを取り上げているところでは、当然のことながら、授業全体が変わってきています。
 次、生徒の変化ですが、これは先ほどの中学校のここの例にもありましたけれども、発話量は確実に増えている。また、発言・コミュニケーションへの意欲の向上というのは、これも発言することに、また英語を口にすることに抵抗感がなくなってきたということは、これはどの教員からも聞かれるところでございます。これは恐らく、今回の新学習指導要領以前のところから、中学校の指導の中で音声重視といったところの流れの成果が、やっぱり高校の授業のところに出てきているのではないかなというふうに思います。
 次に、一つの特徴として、留学への意欲とありましたが、比較的内向きと言われておりますけれども、高校生は、どちらかというと、留学への希望というのはまだまだ高く、増加しているように感じております。東京都の次世代リーダー育成道場というところで留学生を募集していますけれども、定員から考えると、非常に多くの応募者があったり、校内選考も多くの生徒が希望してくるというところで、生徒の気持ちからすると、留学したいというところがあると思います。特に、本校でもそうですが、長期の1年以上の留学を希望する生徒が毎年いるということは、やはりこれまでになかったかなというふうに思います。また、そういった留学をしているかしていないか、また、できるかということを確認して、それを目標にして高校を選んできたり、入ってくるという生徒もおりますので、一つの特徴としてあるのではないかなと思います。
 あと、生徒の変化の事例としますと、進学校だけではなくて、専門高校の話ですけれども、工業高校でも英語による授業を一所懸命やっている先生がおります。そういった英語の授業を粘り強くやっていく中で、生徒が留学をしたいとか、又は、海外のことを考えた就職を視野に入れたりとか、又は、自営の中小でも外国人の雇用者が多くなるので、そういったところでの英語を使いたいといったことで、実際使える英語を求めてくる生徒もいるというところでは、生徒の変化として挙げられるというふうに思います。
 三つ目は、教員の変化ですが、先ほどありましたけど、研修に対する意欲は高まって、多くの教員が研修したいというふうに思っております。全英連というところでは、毎年一回研究大会を全国で行っておりますけれども、ここ二、三年の傾向で言いますと、やっぱり授業実践、直接いろんな先生の、先ほどの高校の事例ですとか、先進校の事例を発表するところには、非常に多くの方が参加をされて、1,400名ぐらい全体で参加するところを、200名とか100名以上各分科会にそろってあふれているというところでは、そういった先生方に研修に対する姿勢というのが表れているかなと思います。また、都の研修も立ち会わせていただいておりますけれども、英語による授業の研修については、最初参加したときには、「えー」という感じで参加した先生方が、いろんな他校の事例ですとか実際の授業を見ることによって、最後の方には非常に盛り上がって質問が活発に出てくるとかいうようなところで、こういった先生方の意欲も見られると思います。こういった1、2、3の変化が更に進んでいくと、計画にあるような言語活動の高度化といったところに必ず結びつくのではないかなと考えております。
 また、四つ目のこととして、学校の変化ですけれども、これは何回か言われていますが、CAN-DOリストとか、そういった到達目標等を設定することによって、また教科内で議論することによって、学校の先生方の組織的な指導、学校の統一した指導が進んでいるということになると思います。
 あと、他教科との連携ですけど、これは一例で言いますと、ディベートを行っている学校で、同じテーマで、例えば社会科でディベートするとか、他教科といろんな連携をとることによって、英語の力もあれですけれども、いわゆるグローバル人材としてのそういった視点は広まっているというところで、他教科との連携というのは、学校の変化としては大きいところがあると思います。また、レポートの作成を他教科で英語も含めて書かせるといった試みも聞いております。
 国際理解教育は、英語の授業だけではなくて、例えば、留学生を呼んで、その国の紹介をしてもらうといった学校がありましたけれども、それは英語でやってくださいということによって、同年代、又は、ちょっと年代の上の留学してきた各国の学生が、英語で自分の国の説明やいろいろやりとりをするというところでは、これも英語だけではないところでの成果として出てきたと思います。
 課題ですけれども、いろいろ課題はあるかと思います。高等学校、最初申し上げたように、多様化しておりますので、それぞれの生徒、それぞれの学校に合った対応ができるかどうかということ、高度な目標だけではなくて、その学校の実情に合った現実的な目標をいかに設定していくかということは課題があるかと思います。
 あと、教員の意識改革。やはり現職としてずっと長くやってきた方の旧態依然とした考え方がまだありますので、これもやはり研修等で変えていく必要があるかと思います。
 三つ目、研修参加への環境ですが、やっぱり非常に多忙で、教科指導以外のところでの時間が割かれているのが現実でございます。分掌、担任、部活動、様々な時間の中で、研修会へ参加するという環境をどうにか整備していく必要があると思います。
 四つ目は、限られた時間での4技能の伸長ですが、主に発信、発話、話すことを中心に進めていくと、これまでの読む力とか、そういったところを担保していくにはどうしたらいいのか、いわゆる統合型の指導というものをそれぞれの先生方がやっぱり身に付けていかないと、逆に偏った指導になってしまうのではないかなと。バランスのよい指導がどうやって限られた時間の中でやっていけるか、又は、授業以外のところでどういった指導をしていくかということが課題になると思います。
 あと、大学入試、これも先ほどから出ておりますし、小委員会で検討されているかとは思います。一つの課題であります。
 教科書、これも先ほど出てきましたけれども、教員は教科書で授業をするので、教科書が変わると、もう必然的に授業は変わってくる、指導方法は変わってくると思います。是非その教科書の中身、内容をこういった方向に変えていただくことによって、これはもう授業が変わってくるというふうに思います。
 今後の方向性ですが、今の課題に対する方向性ということになります。大学入試の改革、現職教員の研修制度の改革、あと、言語活動の高度化に向けた小学校・中学校との、高校から言うと、連携が必要だろうと。小学校で何をやっているのか、中学校で何をやっているのか、一つの流れた体系を見ないと、やっぱり高校での出口としての指導が適切でないのではないかなと思いますので、その辺の流れを明確化した方がいいだろうと。
 最後ですが、教員の養成に関しても、習熟度が低い生徒から高校としてのかなり高度な言語活動が指導できる教員を確保しなければいけないというところでは、教員養成の段階で、養成プログラムの中でそういった力を付けられるプログラム、養成をしていただきたいなというふうに、これは希望ですけれども、方向性として挙げさせていただきました。
 すいません、長くなりましたけれども、以上でございます。

【吉田座長】 ありがとうございました。
 本当に時間的に押してしまっていますけれども、わずかな時間ですが、御意見、御質問も含めて、何かございましたら、どうぞお手をお挙げください。じゃ、松本委員、まずはどうぞ。

【松本委員】 まず一つ目は、学習指導要領についてですけれども、資料の21ページ。私も現場へ行かせてもらいますが、視学官や調査官が全国を駆けめぐって説明しているにもかかわらず、国が、文科省が示している指導や授業の在り方、あるいはゴールなどが必ずしも共有されていないケースが多々あると思います。それは、やはり学習指導要領の書き方の問題が大きいと思います。やはり、CAN-DOリストを是非、学習指導要領本体に入れてほしい。それと同時に、英語だけではなくて、ほかの教科でもCAN-DOで書き込めることはたくさんあると思うのですね。特に現行の要領では、思考力、判断力、表現力を育てることを重視していますので、是非ほかの教科でも学習指導要領でCAN-DOリストを本体に入れてほしいと思います。
2点目は、サポート体制を国がどこまで支援するのかという点です。今に御発表いただいた岩手と秋田というのは、指導主事がサポートしている、専門教育監がサポートしているというシステムがある例ですね。こういうシステムのない地方自治体に対して、何かサポートするのかということが重要ではないでしょうか。指導主事が何をしているのかと聞くと、ほとんどの時間が議会対応に使われていて、「指導」にほとんど使われていないということがあるわけで、それでは変わらないと思います。
48ページに関わることですけど、そのサポート体制を考える上で研修は大事なのですけど、研修は時間的余裕とのセットで考えてほしい。特に英語の先生は忙しい。その中で、「研修しろ、研修しろ」と言っても、もう疲れ果てているという状態についてはやっぱり考えてあげる必要があると思います。全ての人がスーパーティーチャーではないので、体力的にもですね。ですから、その辺を考えてほしい。
そのサポート体制にとって重要なのは、他教科の指導と評価をもっと変えてほしいということです。「英語ばっかり」という感じがどうしてもするのですね。社会科の授業は一向に変わっていません。理科は、実験をしないで先生が説明しています。これを変えないのに、英語の授業だけ「生徒主体に」と言っても、これではやっぱり各学校の雰囲気や授業は変わらないので、是非、他教科の研修ももっともっと強化してほしいと思います。
 3番目の点は、情報です。資料の46ページに、英語の競技ディベートの話があったので追加情報です。全国的に競技ディベートが盛んになっています。県大会も開催していない、かつ、単独の学校としても全国大会に参加していないというのは、現在全国に4県しかない状態になりました。ちなみに、秋田県、福島県、山梨県、鳥取県です。吉澤先生にも、県にお戻りになったらディベート大会に参加するように、是非働きかけていただきたいと思います。
 以上です。

【吉田座長】 ありがとうございました。
 ほかの方。じゃ、安河内委員。

【安河内委員】 すいません。1分間で終わります。
 文法・訳読式の授業が自然消滅しているという話なのですけれども、学校で自然消滅しても、今度は予備校や塾で自然繁殖するのです。この点、ちょっと御理解いただきたい。
 その理由は何かというと、それは、向後さんの発表の中にあった映像に如実にそれが表れていました。千葉県の長生高校で、すばらしいスピーチをする女の子、感動しました。でも、女の子の後ろの背景を、皆さん、御覧になってください。本棚です。全てオレンジです。つまり大学入試の過去問集です。彼らはカメラがいなくなった後に、どんな勉強をしているのでしょうか。高校3年生になったら、千葉県長生高校の子供たちはどういう勉強をしているでしょうか。二つの価値観に挟まれて、子供たちも先生達も、苦しんでいます。ここのところを皆さんに理解していただければと思います。

【吉田座長】 ありがとうございました。
 それじゃ、髙木さん、どうぞ。

【髙木委員】 先ほどの松本委員の21ページのところなのですが、私は、この会議の中では、どちらかというと、繰り返し申し上げているように、教育方法論の方から委員になっている者で、英語だけを特化して考えていない、その立場から少し話をいたします。
 ここに、先ほど取り上げられましたように、学習指導要領の内容が、実は英語だけではなくて、特に高等学校の場合、高等学校の授業にどれほど生きているか、それから、きょう教科書の問題も出ましたけれども、例えば、教科書改訂になっても、学習指導要領に書いてあることが本当に教科書に反映されていない教科もあります。それはなぜかというと、教員が選んで、自分が今までの体験や経験の中で、今までやってきたことを繰り返したいがために、新しく変わった学習指導要領の内容に沿わない教科書を選んで使っているという現状、例えば、高校で言いますと、高校の古典Aの問題が今きちんと出ております。是非それを検証して御覧いただければすぐ分かります。
 ですから、そういうことをやるためには、やはり検証をきちんとすべきだろうと。今行われている学校の授業はどうであるか、そういったことをエビデンスに基づいてきちんと考えて、教科書もそうだし、能力の高い高校、それから、いろいろ英語にちょっとだけ親しみたい子供たちの高校、そういったことをきちんとまず検証・検討した上で、ここで話しませんと、きょう非常に先進的に出ていて、すごいなと思うところだけが出てきて、それだけを大きく取り上げてしまいますと、高校生いろいろいますので、そのあたりをこの会議はきちんと見極めていかないといけないというふうに思っております。
 以上です。

【吉田座長】 ありがとうございました。
 じゃ、大津委員、どうぞ。

【大津委員】 三つほど手短に申し上げたいのですけど、その前に強く要望したいのは、議論のための時間が10分しか残らないというのは、これはどう考えても異常な会議の構成です。私も結構貴重な時間をやりくりしてきているわけですから、こういう構成は是非次回からは避けていただきたいと強く要望します。
 手短に3点。
 1点は、「コミュニケーション」ということが再三話題になってきていますけれども、きょうの実践を拝見しても、大筋のところは口頭によるコミュニケーションということに特化されている。これはとても危惧される偏りであって、この点について、もう少し読み書き、文字によるコミュニケーションというものに対しての配慮というものをしなくてはいけないだろうと思います。
 2点目は、コミュニケーションということがありましたけれども、ほとんどの実践は「コミュニケーションごっこ」みたいなもので、実際のコミュニケーションにはなっていない。唯一の例外が、即興力の実践だったと思います。この点については、いろいろと工夫の余地があるかと思うのですけれども、一つ大切な欠落というのは、母語によるコミュニケーションとの連携というものが、今回の話の中には何も出てこなかった。私が冒頭に申し上げたように、「ことば」という視点を重要視するのであれば、当然、母語によるコミュニケーションと外国語である英語によるコミュニケーションというのが連携されるべきで、このあたりのところを十分に考えないと、子供たちの力を十分に生かし切ることはできないと思います。
 3点目は、さっき松本さんが言った、CAN-DOということを学習指導要領の中に入れるということですけれども、それについては、私は反対です。到達目標を明確化する、具体化するということについては賛成ですけれども、CAN-DOリストについては、前から申し上げているように、もともとは到達指標として設定されたもので、それを到達目標というふうに読みかえるのは、とても大きな問題をはらんでいますので、この点については慎重にしたい。議論の時間がありませんから、この点については、次回に松本さんとゆっくり議論をしたいと思います。

【吉田座長】 松川委員。

【松川委員】 本日の中学校と高等学校の実践の御発表を拝見し、コミュニケーションを重視した授業改善が徐々に広まってきているという実感をもちました。ただ、非常に課題だと思いますことは、今回の改革が小・中・高を通した英語教育の高度化ということになっているにもかかわらず、今日の御発表の中で、他校種とのつながりということに余り言及されなかったということです。それぞれの校種でそれぞれの実践が行われているという印象を受けました。
 高等学校は義務教育ではないため、同じ高校英語教育といっても、学校によってその実質は全く異なっております。異なっているということ自体非常に問題だと認識しているところですが、学校間の学力差が出てくるのは当然なことです。その一例が教科書であり、同じ科目であるにもかかわらず全くレベルの異なる教科書が使われているという実態があります。そのようなことも踏まえながら、これから小・中・高を通した英語教育改革を考えていく場合、私は、学校種間のつなぎの部分をどのように捉えるかということが大事だと考えるわけです。先ほどの御発表で様々な課題が挙げられておりましたが、それらの課題は、御自分の中学校なり高校なりで解決することなのか、それとも、もう一段階前の学校種でその解決が図られるべきことだとお考えなのか。その議論が重要だと考えます。現在、小学校高学年での教科型の英語教育の実施について話題にしているわけですが、その段階における指導内容をどうするかということは、当然、これまでの外国語活動の成果を踏まえて検討されるわけですが、中学校教育の抱えている問題や高校が抱えている問題と無縁ではないわけです。したがいまして、今中学校でこのような実践を行っている、高校でこのように実践しているということを別々に議論するのではなく今後の議論の中では、学校種間のつなぎの部分を明確にしていただきたいということです。また、到達目標を明確にするということなのですが、その目標まで到達しない生徒がそのまま次学年や次の学校種の学校に進むということも実態としてあろうかと思います。その中で、到達目標というのはどのような考え方で設定するのか、本当に全員の生徒に到達させることを前提とした目標であるのか、ということを考えないと、単なる絵に描いた餅となってしまい、英語教育の改革はなされていかないと思います。
今後の議論においては、各学校種の到達目標の在り方を含め、学校種間の接続の部分をどのように考えていくのかということが、指導者の問題と並び大事な観点だと考えております。

【吉田座長】 ありがとうございました。
 時間はちょっとオーバーしていますが、ほかはいかがですか。よろしいですか。
 少し時間をオーバーいたしましたけれども、議論の時間が確かに余りなかったというのはちょっと残念ですが、いろんな事例を御発表いただいて、現状でどんな問題があるか、現状はどこまでいっているかということについては、少しは分かったのかというふうに思います。
 中・高等学校の英語教育については、今いろいろ御意見ございましたけれども、これらの御意見の論点も、きょうの発表をもとに整理していただきまして、次回は、それを踏まえながら、今松川先生がおっしゃった、小・中・高を通じた英語教育の在り方について議論を深めていきたいと思います。
 それでは、最後に、今後のスケジュールについて、事務局からお願いいたします。

【圓入室長】 時間が押してしまいまして、申し訳ございません。
 最後の資料8のページを御覧いただければと思います。72ページでございます。
 次回は、7月16日水曜日、ちょっと遅い時間でございますが、17時から19時ということで、場所は、こちらの同じ3階の特別会議室でございます。議題も、小・中・高を通じた英語教育の在り方と、先ほど座長からもお話ありましたように、これは論点をまとめまして、今後の取りまとめに向けた議論に段階としては移らせていただければと思っております。
 なお、下の方に書いてありますが、小委員会の関係でございます。日程が決まっているものもございます。こちらの方も、議論いただいたものは、それぞれまとまった段階で有識者会議の方に御報告を頂くということでございます。
 本日御議論いただく時間が少なくございましたので、次回までに、いろいろメールでもやりとりもさせていただいておりますが、御意見を是非事務局の方までお寄せいただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【吉田座長】 どうもありがとうございます。
 それでは、本日はこれにて閉会としたいと思います。お忙しいところ、本当にありがとうございました。

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