英語教育の在り方に関する有識者会議 英語力の評価及び入試における外部試験活用に関する小委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成26年6月4日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省(合同庁舎第7号館東館)3階3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 英語力の評価及び入試における外部試験活用の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

石鍋委員、佐々木委員、松本委員、三木谷委員、安河内委員、吉田委員

文部科学省

上野大臣政務官、山中文部科学事務次官、前川初等中等教育局長、義本大臣官房審議官、圓入外国語教育推進室長、平野大学入試室長、太田視学官、平木教科調査官、向後教科調査官、葛城プロジェクトオフィサー

オブザーバー

竹岡広信氏

5.議事録

【圓入室長】 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第1回英語教育の在り方に関する有識者会議 英語力の評価及び入試における外部試験活用に関する小委員会を開催させていただきます。本日は、お忙しいところ有識者会議にお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 本小委員会につきましては、第3回の有識者会議において設置をお認めいただきました。その後、委員のメンバー、座長一任ということでございましたので、吉田座長に御相談をさせていただきまして、また、委員も含めまして、それから主査の方も吉田座長にお願いさせていただくということで御了承いただきましたので、そのまま会議の議事に入らせていただきたいと思っております。
 なお、委員の御紹介をさせていただくところでございますが、きょうは議題も盛りだくさんということでございますので、お手元の資料1の委員名簿と座席表をもって御紹介に代えさせていただきたいと思っています。よろしくお願いいたします。
 それでは、吉田主査から一言御挨拶を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

【吉田主査】 きょうは、お集まりいただきましてありがとうございます。有識者会議の親会議の方でも3回ほど議論してまいりましたけれども、やはり日本の英語教育の根幹に関わる問題というのは入試だと思います。ですから、いかに教え方をどうするとか、学習指導要領をどう変える。今までも学習指導要領はすごく変わってきたわけですよね。にもかかわらず教え方が余り変わらないとなってくると、なぜそうなのか。やはり目の前にある大学入試であるとか高校入試であるとかという大きな壁があるわけですね。ですから、そこにメスを入れない限りは、なかなか日本の英語教育は改善されないのではないかと思います。そういう意味で、この小委員会は非常に大きな役割を担っているのではないかなと思いますので、できるだけ皆さんと有益な、また実行力のある、そういう議論をしていければと思っています。
 それでは、これから議事を進めたいと思いますけれども、この委員会自体は2回、あるいは3回ぐらい開催されることになるのかなと思いますが、英語力の評価及び入試における外部試験の活用に関して、皆さんと一緒に議論をしていきたいと思っております。その結果を有識者会議の方に報告してまいります。
 本日は、委員の先生方と、有識者として英語の分野でいろいろ活躍しておられます竹岡先生に来ていただきまして御意見を発表していただき、その後、意見交換をしていきたいと思っております。
 まずは事務局から、有識者会議におけるこれまでの主な意見及び主な検討課題について説明をお願いしたいと思います。

【圓入室長】 それでは、お手元の資料を御覧いただきたいと思います。全ての資料を、きょうは一括で綴(と)じさせていただいております。順番にページ番号を振っておりますので、それに基づきながら御説明させていただきます。
 おめくりいただきまして4ページでございますが、資料2でございます。有識者会議の方ではいろいろと議論も進んでおりますが、まだ今回の小委員会の関係でのテーマでは議論をいたしておりません。その中でも御発言いただいたことを掲載させていただいております。時間の都合で説明の方は省略させていただければと思いますが、TOEFLやそのほかの外部試験の活用ということでこのような御意見を頂いているということなので、本日の議論にも御参考としていただければと思います。
 また、5ページの方を御覧いただければと思います。資料3でございます。議論の御参考として論点を御用意させていただきました。最初の丸でございます。英語力の評価及び入試における外部試験の活用の在り方を御議論いただくわけでございますが、先ほど主査からも御発言いただきましたように、その活用についてのそもそもの意義ですとか目的ということも、改めて少し整理をいただけければと思っております。その次に、活用を促進していくというところでの具体的方策、短期、中長期的なものはあるかと思いますが、是非御意見を頂ければと思いまして、例示としては、先ほど挙げていただきました、まずは入試ということがあるかと思います。ただ、今回の小委員会の名前のとおり、入試だけではなくて、そもそもの、これまで中学校、高校で学んできたこと、その英語力ということで評価する方策ということもあると思いますし、大学や高校における効果的な取組というものも具体的に進めていく必要があるかと思っております。
 その次の丸でございますが、そうはいいましても、促進するに当たりまして、いろいろな関係団体が試験を実施されております。活用の方におきましても、例えば大学でも任意でこのようなものを活用するという現状だと思います。留意点と書いておりますけれども、活用するに当たって、このようなことをやはり踏まえて活用すべきではないかというようなこともあろうかと思いますので、例示として幾つか挙げておりますが、議論を頂ければと思います。
 最後に、参考資料を御紹介させていただければと思います。31ページ以降でございまして、最近の、本小委員会に関係する議論、それから取組というものを添付させていただいております。例えば中央教育審議会の高大接続部会の中には、今御議論いただいている達成度テストというものがございます。1行でございますが、31ページ最後の丸の米印のところを御覧いただければと思います。これは選択も可能という意味で書いてあるのですけれども、「英語等、一部は外部試験による代替も検討」というようなことが書いてあります。これは今後、議論もまたされておりますけれども、今年の夏ぐらいには何らかの取りまとめがされるというようなことも伺っております。
 それから、32ページ以降、これは教育再生実行会議での御提言というものを添付させていただいております。例えば英語力の評価というときには、32ページ、丸の三つ目でございます。こちらの中に、2行目ぐらいからですけれども、英語教員の方々の一つの客観的な能力の評価ということでの外部試験の活用でしたり、それから次に、少しページが飛びますけれども35ページ、これも教育再生実行会議の第四次提言でございますが、こちらの中にも、いわゆる達成度テストの導入ということで御議論があったものがまとまっております。下から丸一つ目でございますけれども、下から2行目のあたりに、やはり外国語等の外部試験の活用という提言がなされているというものでございます。
 そのほか、37ページ以降は大学入試の現状ということでの御紹介です。37ページの後段を御覧いただきますと、基本的には大学入学者選抜というのは、まず各大学がどのような選抜で入学者を受け入れるかという、その入学者の受入れ方針に基づいて実施するということになっております。それに当たりまして、毎年、大学入学者選抜実施要項というものを文部科学省の方からお知らせしております。今年度のものにつきましては先日、5月28日に通知として発出しております。その中に、第6の個別学力検査等とございますが、4番の(1)の1に御覧いただけると思いますけれども、昨年度に書かれていないものとして、「TOEFL等」以降ですが、「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を測ることができる資格・検定試験等の結果を活用するということで、ここで、学習指導要領に基づく4技能を意識した内容を初めて加えさせていただいたという状況でございます。
 45ページ以降は省略させていただきまして、かなり飛びますけれども、そのほか具体的な活用促進の方策といたしまして、56ページ以降でございますが、大学における外部試験の活用事例ということでございます。今、大学の方でいろいろと先進的な取組を行っていただいている事業が幾つかございまして、その中で、57ページの事業の名前を申し上げますと、経済社会の発展を牽引(けんいん)するグローバル人材育成支援事業というものがございます。ここでは、選択された大学、今42大学が取り組んでおります。それぞれ卒業時の外国語力のスタンダードといたしまして試験を活用されているということです。各大学でそれぞれの目標というものを掲げて、例えば毎年このぐらいの達成度合いというのがあるということも公表をしていただいているような取組になっております。
 それから58ページですけれども、今年度から始めましたスーパーグローバル大学創成支援につきましても、これはまだ公募して、選定が終わっておりませんが、要領の中に入試改革という項目がありまして、そこで外部試験を活用するというようなことで盛り込まれております。採択される大学につきましてはこのような目標と、それから達成を図る、検証していくということが今後なされるということになっております。
 それから、今度は高校の方でございます。60ページ以降を御覧いただければと思います。これは初回の会議でお配りしているのですけれども、今の高校入試における英語検定試験の活用状況でございます。後段の欄を御覧いただければと思いますが、まだまだ少ないということがお分かりいただけると思います。61ページにつきましては、大阪府立高等学校入学者選抜における英語資格の活用についてということでございます。大阪府につきましては先駆けて活用を図るということで、スタートを予定しているのが平成29年度の入学者選抜からということで、もうこれは御発表されておりますので、御参考までに御紹介させていただきました。
 そのほか、63ページでございます。スーパーグローバルハイスクールにおける活用ということでございます。こちらも世界標準であるCEFRのレベルとの関係というものを目標に掲げていただくということになっております。全ての学校ではないのですが、それとの関連で外部試験の活用ということを図っているというものがございます。
 最後に65ページを御覧いただければと思いますが、先ほど申し上げましたCEFRの概要を添付させていただきました。御存じの方も多いかと思いますが、そもそも学習段階ごとの到達基準を設定するということで、評価の実用的なツールとしてヨーロッパで開発されたものということでございます。活用例でフランスの例も挙げさせていただきましたが、具体的には66ページ以降に概要と、恐縮ですが英語でそのまま、グローバルスケールということで添付させていただいているのが67ページ以降でございます。
 さらに、御参考ですが、69ページと70ページは主なということで、英語の外部試験の状況ということで資料を、各団体さんに御協力を頂きながら作成させていただいたものでございます。試験の名前から受験者数、実施回数というようなものを挙げさせていただいたので、適宜御参照いただければと思います。
 最後に71ページでございますが、これは今年度からスタートさせていただいた英語力の調査ということでございます。これは、まず高校生ですけれども、国公私立の3年生、8万人を対象に、4技能がバランスよく育成されているかどうかという観点から調査します。更にその結果につきましては、教員の先生方の指導改善に活用できるようにということでスタートさせているものでございます。7月にはテスト、試験を行いまして、英語力だけではなくて、生徒、教員の方々、学校の状況というものも併せて測定させていただいて、71ページの後段のような形で、英語力の評価という意味で活用させていただければと考えているものでございまして、添付させていただきました。
 以上、論点から、最近の取組なども御紹介させていただきましたので、議論の御参考にしていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【吉田主査】 どうもありがとうございました。いろいろ今、資料を説明していただきましたけれども、この外部試験の活用というのが非常に大きな、今ポイントになっていますので、それについてこれから何名かの方に発表をしていただきながら、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
 まず、これから佐々木委員と安河内委員、そして私の方から少し意見発表させていただきまして、その後、竹岡さんからヒアリングを行って、残りの時間を自由に皆さんに議論していただくというふうにしていきたいと思います。
 それではまず、佐々木委員、お願いいたします。

【佐々木委員】 はい。失礼いたします。高校の現場からということで、それを踏まえて、大学入試とその外部試験の活用ということについて、ちょっとお話をさせていただきたいと思います。
 資料としては6ページに、簡単にまとめたものを出させていただきましたけれども、お話の前に、前提として、私の基本的なスタンスですけれども、英語の外部試験そのものについては、現場の先生方も非常に意義があり、英語力の育成に関しては有用なものであるということは認識が高いかと思います。そして片方で、大学入試に関しても様々な課題を抱えているということもあるかと思います。ただ、その大学入試の課題を解決するときに、外部試験をそのまま活用できるかということに関してのこの議論は、相当慎重に考えていかなければならないというふうに思っています。当然のことですけれども、その結果、活用されたとしても、それが現場の授業、先生方、生徒のところに有益なものである変わり方をしないと、やはり本末転倒な話になってしまうのではないかなというふうに思っています。
 ということで、ペーパーに沿ってお話をさせていただきたいと思いますけれども、外部試験の活用は現在でも何らか、推薦の優遇措置ですとか、いろいろな形で採用されていると思いますし、それを指導することによって生徒の英語力の向上とか教員の改善にもつながっているということがあると思います。また、外部試験が内包する課題、後で挙げますけれども、そういったものは当然クリアしていかなければいけないし、飽くまで高校までの学習の成果を、妥当性、信頼性のある評価で公平に測定できる、これは大学受験の一番の基本だと思います。つまり学校で学んできたこと、高校までやってきたことが適正に測定されているかということ、それが高校側にとっては大学入試の一番の基本だなというふうに思っております。
 また、今の流れから申し上げますと、学習指導要領があって、我々はそれに基づいて授業を行い、指導をしていると。そしてその成果が入試という形で測定されるという流れの中で、その整合性がとれていくと。4技能をしっかり伸ばして、それを測定していただけるということが非常に重要なことだなというふうに思います。現在、AOとか推薦入試でも採用されておりますけれども、一般入試の飽くまで選択肢の一つとして、これから申し上げるような観点を踏まえていけば、大学が外部試験の活用を設置することは有意義であるというふうに考えております。それは大学試験が、やはり生徒の多様化に伴って、試験そのものも多様化していくということに対応するものだというふうにも思います。
 幾つか話を分けて考えたいと思いますが、最初は、最初の丸のところにあります大学入試の課題です。これも様々議論がされているかと思いますが、この課題の前に、高校の方では、これまで行ってきたセンター試験がありますが、当初のところから比較するとかなり改善をされてきて、いわゆるいいセンター試験の問題になってきているのではないかなというふうな意見も多くあります。当然そういったところから、今の役割は十分に果たしてきているのではないかなというふうに思います。
 ただ、そこに書きましたように、4技能を測っていないと、特に話すことについては測れていない、また聞くことについても部分的であるということで、偏りがあるが故に、学校での指導内容もそれに準じて偏らざるを得ない現実があるというのも事実だと思います。ここに大学を受験する生徒と書きましたけれども、高校生の受験する生徒は約半分です。ですから、その半分の生徒とそれ以外の生徒というふうに分けて考えるわけではありませんけれども、受験をする生徒に対しては、やはりその大学受験に沿った指導をせざるを得ない、そういう、いわば偏った形での指導にならざるを得ない状況がまだまだあるかと思います。
 授業だけではなくて、やはりその受験に対応するということで、朝、夕方、放課後、また長期休業中を使って、講習、補習をやっておりますけれども、それも恐らくこの大学入試に対する対応のための勉強というふうになっております。いわば大学入試というのは非常に現場に対する波及効果が大きいということが言えると思います。
 二つ目の点として、外国語の外部試験の有用性。これは入試とちょっと離して考えますけれども、先ほど申し上げたように幾つかの外部試験には非常に意義があるというふうに考えており、それは4技能を測っているということ、また試験に一貫性、問題の一貫性等があると思いますが、加えて実施可能性、今まで行ってきた問題の作成ですとか採点、そういった評価等は、これまでの経過から見ても十分に適正に行われる実施の可能性があるということが言えると思います。
 また、これは入試と離れますが、大学を受験しない生徒にとっても、外部試験を受けるということは学習への動機につながっている、これは現状で言えると思います。特に英語に関して興味、関心の薄い生徒にすると、特にそういった目標を設定してあげることは、外国語を学ぶ、英語を学ぶということプラス、やはり学習そのものへの意欲を高めるという動機付けになっているのではないかなというふうに思います。また、そういった生徒たち、また大学受験を越えた生徒たちもそうですけれども、生涯にわたって外国語、英語を使っていこう、また英語を更に学んでいこうという態度は、この外部試験によってかなり刺激的に育成できるのではないかなというふうに思っています。
 また、教員の立場からすると、とかく先ほどの入学試験について、「読む」を中心とした、「読む」、「書く」の指導になるかと思いますが、それを中心としたところから、こういった外部試験を活用することによって、「聞く」、「話す」の授業改善、また指導の改善につながっているということになります。
 そして、外部試験はこれまでの実績のとおり、社会的に認知されていて、その評価についてはある意味世界的に評価されている部分もありますし、国内でもいろいろな場面で活用されているというところからすると、十分認知されているというメリットがあると思います。また、学習指導要領と照らし合わせても、その4技能を測るというところでは、いろいろな場面で、レベルは別にして学習指導要領との親和性が高いということも、その4技能を測るという点では言われているというふうに思います。
 次に、外部試験の課題ですけれども、高校側から幾つか挙げられる点をお話しさせていただきますが、まず目的ですが、これもそれぞれの外部試験が、それぞれの目的を持って設定しているということで、先ほど申し上げた高校までの学習の成果を直接測る目的ではないというところでは、それぞれの試験の目的に合わせた問題が作られているので、直接高校までの学習の成果を測っているということは言えないかもしれないと思っています。また、難度は、これも試験によって違うと思いますが、かなり高校までに行う授業のレベルからすると難度の高いものが含まれていて、それを受験に直接活用するとなると、学校の中でのそういったレベルアップ、またそれに向けた準備という、かなり高度なものが要求されるというふうに思います。
 換算方法、これは多様な外部試験があると思いますので、それをどのようにすり合わせていくか。一部、一覧表もあるようですけれども、大学入試として使った場合にどういった換算をするかというのも課題になると思います。
 そして受験環境ですが、ここに挙げたのは、私は特にコンピューターを使用した場合の環境を想定しております。コンピューターを使用するとなると、学校の方でも1人1台、公立ではあるわけではありませんし、生徒によってはコンピューターを家庭に有しているという生徒も全てではありません。そういう状況の中で、やはりコンピューターを中心にそういった試験を受けるということになると、その環境を十分に整備していかないと公平性が保てないということになります。また生徒だけではなくて、学校としても、生徒全員分のコンピューターがある場合と、ない場合、又はその予算が付いている場合、付いていない場合、公立、私立などのそういった環境で、コンピューターを使える頻度はコンピューターの習熟度に恐らく連動してきますので、このコンピューターをかなり修練するということにおいては、コンピューターがあるかないか、環境によって相当その点数に差が開いてくるということが考えられます。
 また、実施場所も、今お話ししたコンピューターと同じですけれども、そういった場所が確保できるかと。また、実施時期は複数回ということも考えられますけれども、その複数回に合わせて、今度は学校の現場で指導していくときに、余りにも早いと、そこに合わせていった指導が間に合うかどうかということがあると思います。
 そして費用、これも、特に公立学校に通う生徒の中に、受験に対する費用の経済的な負担というのは大きなものがあります。現在でもそういった経済的な負担がある上に、外部試験のそういった費用を負担する、又は複数回負担していくということには、生徒も保護者の方も大変な思いがあるのではないかなというふうに思います。
 様々な課題を挙げましたけれども、最初に申し上げましたように、こういった課題を何らかクリアして、その外部試験の導入に持っていかなければいけないなというふうに思います。
 最後、教員の大学入試への期待ですけれども、当然ながら4技能を測っていただきたいと、それを公正に、公平に測れる大学入試であっていただきたい。それが本来の学習指導要領の目的に沿った指導をし、それが測っていけることになるだろうと。大学入試が変わると授業が変わるという現実があり、またそのために、それが学習指導要領に沿った形で変わっていくのであれば、順序は逆かもしれませんけれども、学校にとってみれば非常に有意義なことであるというふうに思っています。また、センター試験が、達成度テスト、発展部分ということで改善されているようでありますけれども、並行してこういった外部試験をどのように活用していくかということを議論していくことは非常に意義があるのではないかなというふうに考えております。
 以上でございます。

【吉田主査】 ありがとうございました。
 御意見のある方は最後にまとめたいと思いますが、もし今の佐々木先生のお話に何か、御質問とかがございましたら挙手をお願いします。よろしいでしょうか。
 それでは、御意見に関しては後ほどまとめてしていただければいいと思いますので、続きまして、安河内委員の方に発表をお願いいたします。

【安河内委員】 今、佐々木委員の方から大学入試に関して、そして外部試験の導入に関して大まかなことを説明いただきました。ありがとうございます。私の方ではそれを具体的に、どうやって大学入試に導入していくかというお話をさせていただきます。
 実はこの外部試験の導入というのは10年以上前から、何度も何度も言われていますよね。でも、ほとんどといっていいほど導入されていない。何が原因なのでしょうか、そこを探っていきたいと思います。
 さて、まずそもそもの話なのですけれども、大学入試の何が問題なのでしょうか。今の大学入試でいいじゃないかという意見もあると思いますが、何が問題なのでしょう。大学入試全体の出題バランスを見ていただきたいと思います。これはベネッセさんから頂いた資料なのですが、実は大学入試ではリーディング、つまり読解、和訳、文法、語彙を中心とした問題が8割を超えています。そしてライティングの問題が2割くらいですね、そしてリスニングコンプリヘンションは何と2%以下なのです。そしてスピーキングはゼロです。大学入試にそんなに影響力があるのかと皆さん思われると思うのですけれども、影響力はあるのです。50%の子供たちは大学に進学します。そして、この部屋にいらっしゃる皆さんの恐らく9割以上が進学校という名前の高等学校を卒業して、大学入試を経て、こういう政策に関わる仕事をされています。物すごい影響力があるのです。
 進学校の高校2年生、3年生は、その英語の学習時間の多くを、この大学入試に向けて勉強しています。どうでしょうか、皆さんのお子さんが大学入試を控えた受験生であると、スピーキング、勉強しますか、この入試に向けて。先生方も指導要領どおりにスピーキングを教えたい。でも、そういう先生方は、今、隠れキリシタンのようにスピーキングを教えているのです。スピーキングを教えると父母から文句が出る、生徒から苦情が出る。だから簡単な話ですよ、大学入試が4技能のバランスのよいものになれば、スピーキングを教えても誰にも文句は言われないということです。これをよく大学入試の波及効果、ウオッシュバック効果というふうに言いますね。
 もう一つ問題なのは、出題傾向が各学校でばらばらだということです。A大学を受ける人はA大学の出題傾向に合わせて、2年くらい準備しなくちゃいけないのです。例えば東京大学と京都大学、全く問題傾向が違います。2年間その大学に合わせてやらなければならない、更に早稲田大学、慶應大学、上智大学、明青立法中、全部問題傾向が違います。2年間、その問題に合わせてやらなくちゃいけないのです。
 ここで私が言っているのは、大学入試の問題がいい、悪いということではありません。個別の問題がいい悪いということではないのです。ばらばらだから、生徒たちが予備校に行ったり、個別の対策をしたり、本来の英語教育とは違う時間を過ごさなければならなくなっていること、これが問題だというふうに申し上げているのです。
 さて、入試は高校生の学習に大きく影響します。入試が近付くと、必然的に高校生の学習バランスは、このバランスになってしまいます。ですよね、お子さんが受験されるときには、このバランスになりますよね。ばらばらの出題形式です。早稲田大学対策、慶應義塾大学対策、東京大学対策、個別にやらなければいけません、2年間。
 センター試験、センター試験の問題自体は非常にいい問題だと思いますが、バランスを見てみましょう。50点がリスニング、200点がリーディングです、ほとんど1技能ですね。スピーキング、ライティングはありません。TOEIC試験、これは世の中で非常に重視されている試験ですが、これはビジネスマン向けの試験です。入試とは余り関係ないのですけれども、TOEIC試験のバランス、2技能です。S、Wもあるのですが、一般のTOEIC試験という名称の試験は2技能です。ここからはスピーキングの勉強をしようというモチベーションが生まれません。
 私の母校であるJ大学、1技能です、全部マークシート。この受験の半年前に、皆さんのお子さんはどういう勉強をするでしょうか。想像力を働かせて考えてみてください。指導要領は4技能の教育を求めています。しかし自分のお子さんが、この受験が迫ってきたらどういう勉強をさせますか。
 外部試験のL、R、S、Wのバランスを見てみましょう。4技能均等の試験、とりあえず今回はTOEFL iBT、IELTS、それからGTEC CBT、TEAP、この四つの試験、これらは4技能均等バランスですから、こういうバランスで表示してみました。もしもこれが皆さんのお子さんが目標とする試験だったら、どういう勉強をお子さんはやるでしょうか。さらに、これらの試験は親和性が高いのです、試す内容が似ている、違うのはレベルです。だから、これらの試験をレベル別に組み合わせれば、上位層に関しては、さっき佐々木委員がおっしゃったような、そのレベル別に適切な4技能を教えるという指導が可能になるわけです。
 さて、問題は日本の高校生の英語のレベルです。やはり現状を認識するということは大事ですよね。将来の希望もあると思うのですが、まずは今の子供たちがどういう状況になっているのか。
 CEFR、さっきの資料の中にありましたが、これは国際的に英語力を測る物差しとして使われているレベル表のようなものですけれども、日本の高校3年生。高校3年生ですよ、2年でも1年でもなくて、高校3年生の現状平均レベルはA2のレベルです。何と97%の高校生がA2とA1のレベルにいるのです。だから、この高校生に対して、例えばC2レベルの、C1レベルのテストをいきなり使おうというのは、これは非現実的です。幾ら何でもCEFRの1目盛りか2目盛り、これが限界だと思います。例えば、どうでしょうか、中学3年生とか高校1年生にいきなり英検1級しか受けちゃ駄目だ、ほかの級は受けちゃ駄目だと言うと、どういうことが起こるでしょうか。
 GTECという試験で見てみます。GTEC for STUDENTSですね、これは3技能の試験です。3技能で換算すると、高校3年生の平均値はA2の下位、そしてTOEFL iBTに換算すると30ですが、これは相当甘く出ているのではないかと思います。一番苦手なスピーキングがないですからね。120点満点の30点ですよ。もうこうなってくると、試験というのは測定能力を失います。例えば皆さん、TOEICテストは990点満点です。平均240点の母集団にそれをやり受けさせることに意味があるでしょうか。旧帝大以上、これは東大を含んでいますが、東大を含む旧帝大以上の合格者がTOEFL iBT推定値50点ということです。まだ半分行かないのです。
 さて、試験にもレベルがあります。佐々木委員がおっしゃったように、適切なレベルの試験を使わなければ現場が混乱する、これは間違いないですね。ここに先生方もいっぱいいらっしゃると思うのですけれども、やはり適切な目標を与えて4技能の指導をすることが非常に重要になってきますよね。英検1級レベルの試験としてはIELTS、TOEFL iBT、これがあります。英検準1級、2級1レベルの試験としてはTEAP、それからTOEFL Junior Comprehensive、それからGTEC CBTがあります。青と緑の違いは何かというと、青は4技能均等スコアです。緑は4技能全てそろっているけれども、均等かどうかというと少しずれていて、均等ではないということです。
 ここから下は、まだ均等の配分の試験、4技能試験がありません。大きな問題です。高校生の平均レベルは、このレベルなのです。これをこれから上げていくために、こういった外部試験を利用していこうというのが私たちのプランだと思いますが、この試験のレベルをよく考えながら、適切な対象に、適切な試験を当てていかなければなりません。そうすれば段階的に無理なく引き上げて、グローバル化の計画にあるとおりのCEFRの目盛りを上げるというもくろみを達成することができるのではないかと思います。
 さて、世界で利用できるテスト。やはりこのグローバル人材育成という英語教育のスローガンなのですけれども、世界に学生を送り出すということが非常に重要になってくると思います。だから世界で利用できるテスト、このテストでスコアを最終的にとらせること、これを目標にしていかなければなりません。では、世界ではどういうテストが使われるのでしょうか。
 まず、世界で最も受験者が多いテスト、IELTSです。これはアメリカのアイビーリーグ、それからアメリカの有名大学、これも全部IELTSを採用しています。ヨーロッパ、オーストラリア、実質上世界のスタンダードになっています。それからTOEFL iBT、今ちょっとイギリスではカンニング問題で停止になっているのですが、TOEFL iBT、こちらも世界スタンダードです1。両方とも非常に難易度が高いです、英検1級レベルくらいですね。英検1級より難しいというふうに判断される方もいらっしゃいますが、大学生を海外の大学に送り出すためには、最終的には大学在籍時にこういった試験を受けていい点をとれる、そういった4技能の実力を育てなければならないということになるかと思います。ただし、いきなりこれを受けさせれば点がとれる、英語指導というのはそんなに甘いものではないですよね。段階的な指導、これが必要になってきます。
 今後の大きな課題を一つ、現実的な導入案に行く前にお伝えしておきたいと思います。今ある4技能テストでは、全体、大学を受ける生徒が60万人くらいいるとすると、超トップ層はIELTS、TOEFLでいいでしょう。難関大受験者はTEAP、GTEC CBTでいいでしょう。しかしながら、多くの高校生はここにいるのです。この子たちをどうすればいいのでしょうか。この子たちの指導はどうすればいいのでしょうか。きょうは試験機関の皆さんもいっぱい来ていらっしゃいますが、このレベルの4技能均等試験がこれから絶対に必要になっていくと思います。さらに、入試というのは大学入試だけではありません。高等学校の入学試験もあるわけです。高等学校の入学試験にこういった試験が使えるでしょうか。無理ですね。だから、こういうレベルの試験が絶対に必要になってくるということです。今ある4技能均等テストでは、上位の学生しか試せない状況にあります。
 今、新しい試験がたくさん生まれています。そして英検もこれから改革されていくと思います。そういった中で、iTEP、MELAB、ケンブリッジ英検その他、4技能を試す新試験がいろいろ出てくると思います。ただ、こういった試験をよく精査せずに使うということはあり得ないと思いますから、しっかりこういう試験を精査する、そういった公的仕組みも必要になってくると思います。
 現在の英語教育の状況をまとめておきます。今、親会議で、小学校からの指導要領に準拠した4技能指導をどうやればいいかと、かんがんがくがくの議論が続いているわけです。参加されている委員の皆さんも必死です。官僚の皆さんも必死に、この小学校からの指導を成功させようと頑張っています。そしてグローバル人材を社会に送り出していこう、世界に送り出していこうと、これを目標に皆さん頑張っているのですが、なぜかこの10年間、皆さんの努力が報われておらず、うまくいっていない。なぜ高大接続がうまくいかないのでしょうか。これが原因です。指導要領に合わない入試が高大接続を寸断しているのです。せっかくの皆さんの努力が大学入試のせいで水の泡になっているのですね。今、親会議でやっている努力も、この大学受験にメスを入れなければ、何のためにやったか分からないということになります。絶対に今、私たちが下からの努力と併せてやらなければならないのは、上からの努力です。つまり、大学入試の改革です。
 例えばスピーキングテスト、こういった問題が出てきます。「Agree or disagree:Technological advances have made the world a safer place.Is the Japanese healthcare system a good model for other countries?」もしも子供たちが、こういったディベートの問題であるとかスピーキングの課題に対して、論理的に人前でプレゼンテーションをする能力を磨くことが入試対策になったら、どうなるでしょうか。試験の前の日までディベートの授業ができます。試験前日までプレゼンテーションの授業ができます。どうでしょう、これが私たちが目指している英語教育ではないですか。そうすると、この形が出来上がるのです、小学校からの指導要領に即した4技能指導、レベルに合った4技能入試、IELTS、TOEFL iBTで世界に送り出していく、実力に合った4技能テストで入試をし、英語活動や海外留学にバトンタッチをしていく、つまり高大接続が寸断されないということになるのです。ここに初めて一貫性、親和性、連続性が生まれてくるということです。それほど、私は大学入試は大切だと思います。
 20年間大学入試の指導をしてきました。では、どうして大学入試は変わらないのか、ここを様々な大学の関係者の皆さんからヒアリングをし、まとめてみました。外部試験導入には大きな壁があります。それは何でしょうか。入学者を選抜する権利、これは大学の自治権として聖域化しています。例えば文科省が、外部試験が大事だから、大学の皆さん外部試験を使ってくださいといって、大学の皆さんが簡単に外部試験を使ってくれるという、そういう簡単な話ではないのですね。この自治権をオーバーライドするためには、法律を定めたり等の、困難なプロセス、つまり、非常に時間が掛かる困難なプロセスを伴うわけです。憲法との関係もあると思います。文科省に現在できることは、指導と予算措置ですね、これに限られてくるということです。
 さて、これまで10年間、外部試験の導入がこれほどまでに言われているのに変わらなかった。これはどうしてかというと、大学側にとって魅力的で自発的に採用したくなるプランがなかったということです。だから大学が自発的に動かなければ、幾ら上からやれと言ったって、何も変わらないわけです。では、どうすればいいのか。
 これは私の案です。これだったら、来年の受験からできます。「みなし満点」です。みなし満点というのはどういうプランかというと、指定の4技能試験、これで高い実力を示すことが1年以内のスコアでできたならば、満点をあげてしまいましょうということです。例えば、ここに書いてありますTOEFL iBT80点以上、各技能15点以上、これを1年以内に取得していたら、英語科目は満点をあげましょうということです。英語以外の科目は現行どおり受験しなければなりません。英語のみが満点免除になります。
 さあ、今、大学側が抱えている悩みは何でしょうか。学生が留学しようとしてくれない、何とあの上智大学でも交換留学の枠が余っているのですよね。それほど学生が留学しようとしない。その理由は何なのでしょうか。一つは、英語力の不足です。さらに、入学してから留学させるまでの英語力の隔たりが大き過ぎる、だから留学できない、英語で授業をしても付いてこられない、もう1回、再教育しなくちゃいけない。あともう一つ大きな問題は、既存の入試問題を作られている先生方も、その入試問題作りに御尽力されています。いきなり、はい、外部試験に変わるから、もう今までの入試問題作りをやめてください、受験は止めますと、大学がそんなに簡単に言えることではないのですね、大学側の事情としては。
 では、大学生はなぜ留学しないのか。これは予算の問題もあるのですが、語学力の不足が大きいのです。英語ができれば留学したいという子は、たくさんいるのですね。英語の勉強を大学に入って始める、TOEFLやIELTSで点数がとれたときには、もう就職活動が来ているから留学できないということになるのです。
 さて、このみなし満点、やることによって大学側にどういうメリットがあるのでしょうか。英語の4技能をバランスよく習得した語学力の高い生徒を獲得することができます。英語ができる子が自分の大学に集まってくるということです。もちろん得点の設定は、他の大学とにらみ合いながら競争すればいいのだと思います。他教科も一定の点数をとらなければならないです。そして、入試と大学での英語活動に連続性が生まれます。つまり、無駄がなくなるのですね。もういきなり役に立つ英語を受験で勉強すればいいというふうになるわけです。こうです、大学側の事情もありますから、既存の入試問題作りと実施システムは当面変える必要がないのです。現行のシステムをとりあえずは維持できます。つまり出願要項を変えるだけで、これは実現できることなのです、敷居が低いのですね。
 受験生も悩んでいます。もっとスピーキングを勉強したい、大学に入って役に立つ勉強をやりたい、なのに受験があるから1技能、和訳、翻訳、それをやらなければならないという事情があるのです。さんざん大学受験のために読解、訳、文法を勉強したのに、入ってからまたIELTSやTOEFLの勉強をしろと言われても、これはつらいですよね。
 みなし満点を導入すると、生徒側にどういうメリットがあるのでしょうか。4技能をバランスよく評価された力が入試で有利に、4技能をバランスよく勉強したその力が入試で有利に働きます。さらに、早期に英語の満点を確保して、本試験での優位性を得ることができます。つまり生徒側も有利だし、大学側も有利なのです。そして、先生方も有利です。指導要領どおりに4技能を教えれば、大学合格に近付くわけです。大学受験の学習が、そのまま海外留学に結び付きます。
 さらに、このみなし満点、何がすぐれているかというと、完全な切替えよりも安全かつ慎重に、使用する試験の妥当性を検証していくことができるということです。どの試験で入ってきた子が一番優秀なのか、一番留学するのかということです。さらに、みなし満点合格組、一般入試合格組の比較も可能です。入学後に比較することによって、その基準の妥当性、これも検証することができます。そして、それぞれの外部試験の間に、そして外部試験と従来の入試の間に競争原理が働きます。つまり試験同士でその妥当性、これを競争することができるわけですね。
 さて、国際教養大学は既にこれを実施しています。センター試験、みなし満点です。TOEFL iBT71点以上、今回、私はこのTOEFL PBT、TOEFL ITPというのは外すべきだと思います。なぜかというと、2技能試験だからです。昭和のTOEFLの再利用だからです。TOEFLは4技能のiBTのみというふうに考えた方がいいと思います。あとは、TOEFL Junior Comprehensive。それから英検準1級、4技能試験です。IELTS、これも4技能試験です。その他の4技能試験、ありますが、こういう複数の試験を設定して、競争させるということですね、妥当性に関して。
 国家試験では通訳案内士試験でみなし合格という制度が入っています。みなし合格が入ると、みんなこっちに来るのです。生徒だって、いい試験に向けて勉強したいに決まっています。一番いい試験が勝つ、この競争原理が働くのですね。
 みなし満点の設定案です。この後皆さんに議論していただきたいので、できるだけ早めに進めます。やはり一番に設定すべきものは大学入試センター試験、そして今後行われる達成度テスト、ここで導入するのが一番大きなインパクト、ウオッシュバック効果を世の中に与える、そういうふうに私は考えます。例えばTEAPであれば260点、4技能に最低ラインを設定し、縛りをかけるべきだと思います。例えばリーディングやリスニングだけで点数を稼いで、スピーキングで点数をとらないでも達成できるような設定だとよくないと思います。TOEFL iBTだと70点、これも技能縛り、各技能10点を下回らない。英検1級合格、なぜ緑かというと、これは4技能不均等だからです。大学入試センター試験、ほかのテストで設定してみますと、GTEC CBT1100点、各技能150点を下回らないということです。IELTS、6.5以上ですね。TOEFL Junior、これは私、まだこれは正式な資料が余り出てきていないので、適当に設定してみました。L、Rともに155点、S、Wともに12点以上と。
 みなし満点の設定案、例えば偏差値65の大学であれば、こういう設定もあるでしょう。また偏差値70の大学であれば、こういう設定もあるでしょう。各大学がにらみ合いながら、それぞれの試験をうまく使って、設定競争をしていくということです。
 ここで初めて、この大学入試にもう一つの道が生まれます。その道はどういう道か。世界に直結する4技能の道です。4技能のバランスのとれた英語を身に付けることが大学受験の目標になるのです。これは指導要領との乖離(かいり)がなくなるということを意味します。指導要領どおりに一生懸命先生方が教えられた、そして生徒が達成した成果が入試で評価されるようになる、そして世界に直結しているということなのですね。大学別にばらばらの特殊な入試の対策をしなくてもよくなります。4技能を高めること、試験の前日までスピーキングの勉強をすることが大学受験の対策になるのです。大学入試が留学に役に立つ勉強になっていきます。高大接続がスムーズに行われます。
 まずは第一歩を踏み出しましょう、第一歩はみなし満点です。これであれば、入試要項に3行加えるだけで、来年の入試から実施できます。みなし80%、みなし90%、こういったプランもあるでしょう。更にAO入試、推薦入試の加点方式、こういったプランもあるでしょう。
 さあ、ここで非常に重要になってくるのは、各試験の妥当性です。いろいろな問題があります。iBTにはいろいろな問題がありますし、また様々な試験はいろいろな問題を抱えていると思います。カンニング問題もあります。そういったことを洗い出して、各試験どれが優秀な試験なのか、国際通用性、それから指導要領との親和性、これを検証する、このことが非常に重要になってくると思います。外部試験だったら4技能だから何でもいいということではないと思います。
 試験の品質管理と競争原理、これが非常に重要なポイントになってくると私は思っております。今はもう自己申告です、うちの試験はこのレベルが測れるから、うちの試験はこのレベルが測れるからという。今は、試験機関の自己申告をうのみにするような形に今なっていますからCEFRという国際基準に基づいて、国際基準に基づいて妥当性検証、被験者テスト、これをしっかりやるのです。自動車の安全基準を設定しているのと同じだと思います。4技能試験機関連絡協議会、こういったものを設置するべきではないでしょうか。そして客観的に、そして公正に試験の実力を測り、それを大学入試で運用するよう指導していくと、こういうことをやらなければ、各試験が申告したことをうのみにしてしまうことになります。大学もどれを選んでいいか分からないということになります。さらに、レベル、運営の適切さ。非常にずさんな試験もあります。カンニングし放題みたいなね。そういうことになっては駄目です。指導要領との親和性、世界での通用度、4技能のバランス、設問の妥当性、客観的に判定する機関が必要だと思います。
 英語教育というのは非常に重要だと思います。子供たちは小学校から高校まで、英語という科目に最も大きな、多くの時間を費やすわけですね。私は、今よりもたくさん英語に時間を割いて、国語を勉強する時間、社会を勉強する時間、そういう時間まで潰して英語を勉強すべきだとは思いません。今ある時間を、無駄なことではなくて、世界で役に立つ英語力の養成に充てるべきだということを言っているわけです。だから、今ある時間を大事にさせたいのです、子供たちに。だから4技能の入試を導入することが日本の英語教育に大きなインパクトを与えるということを主張したいと思います。Everybody in this room shares the same goal, so let’s work it out.Thank you.

【吉田主査】 どうもありがとうございました。
 先ほどの佐々木委員のときと同じで、御意見に関しては後でまとめて伺いたいと思いますが、今の御発表の中身について何か御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、私の方からも少しお話をさせていただきます。今、安河内委員が最後の方でおっしゃっていただいた外部テスト、あるいは使われるテストの質の保証の問題、妥当性の問題と関連のある話をさせていただきたいと思います。今、セットアップしてもらっています。
 私の場合も、きょうお話しする具体的内容は、先ほどもう出てきましたけれども、TEAPというテストに関するものです。TEAPというのは4年ほど前から上智大学と英検で、新たなテストを作ろうというので開発をずっと進めてきて、今年から公開受験ができるようになったというテストです。これは、ちなみに一つの例としてお話しさせていただきますので、先ほど安河内委員から出ていたGTECのCBTであるとか、TOEFL JuniorのComprehensiveであるとか、いろいろ新しいテストが最近出てきていますので、そのあたりにも基本的には同じことが当てはまると考えていただいていいと思います。ただし、具体的にこういう検証をしているのは余りほかに見ないので、TEAPで少しお話しさせていただきたいと思います。
 このTEAPというテストは、言ってみれば日本の高校生にとってふさわしいテストということで設計しています。つまりEFLという、外国語として英語を学んでいる国において、大学で英語での授業を受ける際に必要な英語力ってどういうものだろうということを考えたときに、これぐらいの英語力がないと英語で授業は受けられないだろうという、そういう発想からやっているものです。したがいまして、このテスト自体、上智大学で最初に考え出したわけですけれども、大学の中のいろいろな学部、学科で必要とされる英語力は何だろうということをヒアリングした上で設定、作っていったものです。
 難易度からすると、ここに御覧いただけますとおり、英検で言えば準2級から、準1級程度の間の識別力が非常に強いテストということで開発しました。先ほどのCEFRでいいますとA2レベルからB2レベルです。その間の識別力は非常に高いというふうな、そういうテストになっております。
 どういうような検証をやってきたかというと、4年間やりまして、いろいろな形でデータ収集をしました。ここに出ているのは上智大学に既に入った学生が中心なので、つまり1年生で、入った学生中心です。高校生にも実際にはいろいろな形で参加してもらっていますけれども、その高校生のデータは入っておりません。これは何をやったかというと、TEAPも4技能テストですけれども、リーディングとリスニングです。R、Lだけを取り出したテスト。これを今現在うちではプレースメントテストに使っているわけですが、その得点と、受けた学生たちがセンターテスト、先ほどの安河内委員の話でも、センターテスト自体リーディングが大半を占めているわけですけれども、リスニングは50点のみですから少ないわけですが、その間の相関をとったのですね。ですから、TEAPの点数とセンター試験の相関をとったら、御覧のようにポイント59ぐらいしかないのですね。余り相関はなくて、逆に250点満点取っていても、TEAP200点、これはL、R合わせると200点なのですが、130点にようやくなる程度です。つまりこれで分かることは、TEAPの方が、少なくともこの2技能に関してセンター試験よりも難しい。しかも、御覧のようにセンター試験のL、Rの点数はかなりばらついてしまっているということがお分かりになるかなと思います。
 そして次ですが、昨年12月に上智大学の一般外国語をとっている学生…、これはちょっと別ですね。先ほどと同じ母集団になりますけれども、TOEFLのいわゆるITP、つまり2技能のテストとの相関です。リーディングとリスニングのテスト、677点満点ですけれども、そのテストと、それからTEAPのリーディングとリスニングの相関をとりましたら、御覧のように非常に高くて、ポイント94あるということは、ほぼ同じ内容のものが測れているということになるかと思います。ここでプロットしたので、御覧いただければ非常に相関が高いことがお分かりになると思います。ただ、やはりうちの場合、LとRそれぞれ100点ですから、合わせて200点満点で大体620前後ですから、どちらかというとまだTOEFLの方がレベルは高いテストだというふうに言えるかなと思います。ですから、大体ここにあるようにITPで600ちょいぐらいがTEAPでは満点というふうに言ってもいいかもしれない。ということは、ITPTOEFLよりも使いやすいテストということになるかなと。
 ちなみに言っておきますけれども、TEAPというのは学習指導要領を基にしていますので、一応、学習指導要領の考え方がそのまま使われている4技能テストになっております。
 次は、これは去年の12月に、100名なのですけれども、上智大学一般外国語として英語をとっている学生、つまりこれは英語学科、英文学科、国際教養学部の学生は入っていません。それ以外の学部の学生たちで、初級から上級まで100名、参加してもらいまして、TEAPの4技能全て、400点満点全てと、それからiBTTOEFL4技能全て、受けてもらいました。
 その結果がこういうような相関で、ポイント874です。ですから非常にやはり高い相関が見られると。どちらかというとTEAPは、したがってこのあたりまでは測れますが、iBTの高い人は、この先、この辺まで測れているということになるかと思います。ですから同じ直線上にある、ただしTEAPで測れているのはここまでの部分が測られている、ここから先はTEAPでは測れませんよということになりますが、少なくともそういう学生がまずいませんでしたね。
 ということは、質的に言うと、妥当性検証として、もう既に認められているテストとの相関をもってその妥当性検証をするということがありますが、かなり、いわゆるアカデミックな英語力を測るテストとしては有効なものになっているのかなというふうに、私たちは思っています。
 ということで、大体その関連性で今まで言ったことをまとめますと、こういうことが言えるのかなと。CEFRで言うと一番高いところで、先ほど言いましたようにA2からB2を一応識別領域として設定してやっていますので、TOEFL iBTの場合はC1まで行っていますので、もっと高いところ。多分iBTの場合はB1からC1、C2に場合によってはちょこっと入るぐらいですから、このあたりの識別力は非常に強いのですね。ここの識別力というのは、先ほど安河内委員からありましたが、日本の高校生のアベレージが大体A1、A2に90%、100%近くいるということを考えれば、非常に高い。1ランク、2ランク上という話がありましたが、少なくとも日本の高校生にしてみると、このあたりの識別力は強いというのが、ある意味では今の学習指導要領などの流れからすると妥当なレベルなのかなというふうに私たちは考えております。あとは、ここにあるように、大体B2レベルで準1級、TEAPで言えば100点満点のリーディングとリスニングで80点前後です。合わせると160点ぐらいです。それがITPで言えば、2技能だけを考えたときには550点ということになります。
 こういうような結果から、私としては、先ほど安河内委員がお話しされたGTECのCBTもそうですし、それから英検の問題自体も、英検自体が既に留学でも使えるというテストになってきていますので、日本にあるテストでも、こういう検証をきちんとすることによって、かなり国際的基準に沿ったテストは作れるというふうに私は自信を持っておりますし、また国際的基準に沿いながら、日本の高校生のレベルに合ったものというのが、最初の佐々木委員の話にもありましたが、一番今大事なのではないかなというふうに思っているわけです。ここではTEAPしか、ここまでの検証をやっているのはほかのテストでないので、例として出していませんけれども、ほかのテストも同じようなことをやれば、必ず私は、似たような、あるいはこれに類似したような結果が出るのではないかというふうに思っていますし、是非、そういう意味で言うと、先ほど安河内委員が最後におっしゃっていたような、そういうテストの質的な管理をしていく連絡協議会のようなものを設定することは悪いことではないなと思っております。
 以上、私の方からお話をさせていただきましたが、何か私の今の話についての質問とかがございましたら、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。

【安河内委員】 では、一つ、これは単純に意見でもあるのですけれども。

【吉田主査】 意見は後にしましょう。

【安河内委員】 意見は後。では、どうぞ。

【吉田主査】 意見は後でまとめてやりますので、今は質問だけで。よろしいですか。
 それでは続きまして、竹岡氏に、きょうはヒアリングということで来ていただいていますので、また幅広い英語教育の体験をお持ちですので、ひとつお話の方を伺いたいと思います。
 それでは、発表の方をお願いいたします。

【竹岡氏】 御紹介にあずかりました竹岡です。このたびは本当に、このような大事な場にお招きいただきまして、ありがとうございます。
 今、安河内先生がおっしゃったことには、私も大賛成でして、きょうはそちらの話はおいておきまして、現状を、一刻も早く今の入試問題をやめてほしいということを切々と語りに来ました。
 私は元々工学部出身だったのですが、30年前に英語教育の、使えない英語教育を何とかしたいという思いで文学部に移りまして、それから30年やってきましたが、ほとんど変わらない。ほぼ絶望を感じてきました。ここへ来てようやく、何か変わるのではないかという期待感を持ってきましたので、本当に、ちょっとうれしいと。
 資料の方なのですが、ちょっと生々し過ぎて、固有名詞が多過ぎたので全員には配れませんが、早速、話をさせていただきます。
 やはり英語教育を変えるには、本当にもう入試の改革以外考えられません。安河内先生は、先ほどバランスが悪いとおっしゃいました。踏み込んではおられませんが、内容も悪いと思います。特に、内容がどう悪いか、早速ですが入試問題について述べます。例えば、資料では、ナンバー10です。
 某大学の入試問題です。英作文です。「日本では電車に乗ると、長距離通勤のためか、乗客が居眠りをしている光景をよく見うける」、別にわざわざ作文しなければいけない内容ではないと思いますけれども、何よりも問題なのはロジックがない。なぜ日本人が寝ているか、それは長距離通勤ではなくして、日本が安全だからです。よって、こんな作文をやったところで、何のロジックも育たない。
 その下、「日本では1クラスにおよそ40名の生徒がいるので、生徒一人一人が授業を理解するのは不可能だ」、これをイギリス人と一緒に作りましたところ、イギリス人の答えはこうでした。“Japanese teachers are not competent enough”でした。人数なんて関係ないじゃないかということです。こういうのを我々30年間教えてきまして、本当にもうたまりません。きょうすぐにでもやめたいぐらいです。
 次に、特に西日本の大学は英作文が大好きで、ちょっと出しますが、ナンバー12。これは西日本の非常に有名な大学です。今年の問題です。「近年、電子書籍の普及が急速に進んできた」、もしこれを本当に主張だとするならば、この後ろにサポートが要ります。すなわち、いかに電子書籍が、具体的にどの程度の数出てきたのかということを検証していく必要があります。ところがこの大学の続きの文章は、「アメリカほどではないが、日本でも」、全く話が変わってきます。そして最後は、何と「きちんと製本された真新しい本には、何とも言えない味わいがあるらしい」、と終わっています。一体これを作文することによって、どのようなロジックが得られるのか。
 第2問は、もう泣けてきます。「きのう通勤帰りの満員電車で揺られていたら、小学生ぐらいの男の子が大きな声を張り上げて車内の人込みをかき分けて走ってきた」、まず非常に少ない状況です。「子供は?を真っ赤に染めて、『運転手さん、さっきの駅で降ろしてください!』と叫んでいた」、電車で運転手さんに誰か叫ぶのでしょうか。「そしてたちまちのうちに私の目の前から姿を消した」、一体どこに行ったのでしょう。「忘れ物でもしたのだろうか? だとしたら、あの必死の形相からして、よほど大事なものだったに違いない」、これが、この大学を受ける生徒が今年受けた作文です。この作文の訓練をすることで、果たしてどのようなロジックが育って、国際的になっていくのでしょうか。もう私はこの授業をするのが苦痛で、苦痛で、苦痛で、苦痛で、きのうも生徒に悪態をついていました。もう私はこんな授業をするのは嫌だ、もうやめてやる。しかし、生活していかねばなりません。
 この大学、まだあります。僕はこの大学をこよなく愛していますが、ナンバー18です。「週末にキャンプを楽しむ人が増えてきました」、やはり週末にキャンプを楽しむ人が増えてきたと言った以上は、具体的にどのような資料に基づいてそう言ったのかをはっきりしてほしい。「確かに、都会生活でたまった疲れをいやすためには、自然の中でのんびりするのが一番でしょう」、ということは、多分週末にキャンプに行く人は都会の人だけだということなのですね。田舎の人は行かないと。最後は、「自分の疲れはとれても、自然の方はいい迷惑だと思います」、こんな問題解く方がいい迷惑です。もう挙げれば切りがございません。
 実は西日本の方の大学は、この大学の影響で、ほとんどが下線部訳を課しています。それがどのような影響を持っているか。今度は1ページです。生々しい模試の結果です。これは某予備校のハイレベル模試の結果です。まず、国語の優秀者の出身地を見てください。上位層です。読みますね。奈良、静岡、最近は個人情報の関係で名前は出さない子がいるのですね。東京、和歌山、島根、埼玉、岐阜、愛媛、鳥取、東京、兵庫、徳島、兵庫、東京、東京、東京、奈良、香川、鳥取、東京、大阪、宮崎、東京、奈良、長野、島根。東北が少し少ないのが気になりますが、全般的にこういう感じです。
 では、英語です。香川、東京、神奈川、東京、東京、山梨、東京、東京、東京、東京、東京、東京、神奈川、東京、東京、千葉、兵庫、長野、東京、東京、神奈川、神奈川、以上です。3技能が優先している関東の入試を勉強している子たちの方が、はるかに英語ができる。もう西日本、京都、大阪はほぼ全滅です。これは、一つの大学の責任にしたくはございませんが、やはりその大きな責任を担っているのではないでしょうか。毎回この入試を見るたびに、本当に悲しい気持ちでいっぱいになります。だから、まず現状の英作文を続けている限り、TOEIC、TOEFLのライティングにはつながりません。
 では、関東の方の入試問題はどうかといいますと、まずナンバー22、これは首都圏の文系中心の有名大学です。右側が、この英作文を解いたイギリス人の意見です。とにかく設問がはっきり分からない、以上です。120字の英作文なのですが、残念ながら設問さえはっきりしない。この大学の更にその前の問題ですが、ナンバー21、この場に及んで、なぜか単語を並べ替える問題です。しかも答えがよく分からない。何名かの英米人にチェックしましたが、“This is strange.”、以上です。特に単科大学ではこのような状況が相当強いというふうに感じています。今年の京都の某単科大学の問題も、ジャパンタイムズからの出題でしたけれども、非常に偏った出題でした。何としてもチェック機能、先ほどのTOEICとかTOEFL、若しくはTEAP、GTEC、ケンブリッジ英検の機能も必要ですが、もし入試をこのまま続けていかれるならば、何としても入試をチェックする機能が要るのではないでしょうか。
 では、首都圏の有名な大学はどうでしょうか。ここの資料にはありませんが、今年のその大学の正誤問題は、バートランド・ラッセルからの出題です。1930年初版の本です。しかも大幅な改変、これが日本を代表する大学の問題です。もちろんその大学はすばらしい問題もたくさん作っておられます。もちろん西日本の方もそうでしょう。だけれども、何でわざわざこの時期に1930年初版のものを、作って出すのでしょう、意味分からないです。ちょっと言い過ぎました。
 だから、もうとにかく入試を変えてほしい、これが現場からの切実な願いです。今すぐにでも、もうあしたからみなし満点で結構です。本当にそのような状況を私は感じます。
 問題は、ここだけで収まらないのです。なぜか。今の高等学校の生徒が持っている問題集は、入試問題をベースにしたものを持っています。一体どうなるか。資料のナンバー2。私の勤務する京都の高等学校で毎年新入生に対して試験をしています、例えば、「could」なんですが、当然皆さん御存じのように、「could」は通例、「かもしれない」という意味です。ところが今、中学の塾の問題を見ていますと、「could」は「できた」が中心なのです。では、一体どの程度の生徒が「could」をきちんと認識しているか、すなわち“Bob could go to Tokyo.”を「東京に行くかもしれない」と訳せるかをチェックしました。
 去年の高校1年生ですが、96人中、「かもしれない」としたのはゼロ。その高等学校は相当関西でも有力な高等学校で、つまりレベルは高いです。ただ、そこでもゼロです。3年前も同じ調査をしました。そうしたら、今度はたった1人だけ、「かもしれない」がいました。僕は、どこの中学だと聞きました。そうしたら、ベルギーでした。これが、この30年間の変わらない状況なのです。“could”一つ、ちゃんと分かっていない。
 そして、更に見てもらいたいのですが、資料のナンバー4、固有名詞は避けますが、ここには書いていますけれども、下の問題集が日本の50大きなシェアを占めている問題集です。恐らく30年前の、ここにおられる委員の方々が使っておられたのと何ら変わらない。出てくる固有名詞は、ボブ、トム、ナンシー、グリーン先生だけ。そして意味のない、訳の分からない例文、「父が死んで10年」、「トムは教師というよりむしろ詩人だ」、だったら詩人をしたらいいじゃないか。しかも、それに標準と書いてある。これは何か、何で標準か。これは入試問題のデータでの標準であって、実際に使うのとは何の関係もない標準。こういうものをみんな持たされて、毎日のようにやっている。
 よく生徒が来ます、「先生、もうこういう問題集を僕は6周しました。でも英語できません。なぜでしょうか先生」、もうね、涙が出ます。本当に悲しくなってきます。しかもこの説明、“may as well”というのは、上の問題集は普通のイギリスベースの問題ですから、まともな問題集だと思いますけれども、「had betterよりもやわらかい婉曲(えんきょく)的な表現だが、本問題の英文はこの表現を使って逆に「すごみ」を出そうとしていると考えられる」、もう意味が分からないです。今も、この会議をやっているこの瞬間も、全国の高等学校でこういう問題集を使って生徒たちは勉強しているわけです。もう今すぐにでもみなし満点にしてください、お願いします。
 だから結局、現場の先生方も、私も毎年、教員セミナーといいまして学校の先生対象の授業をしておりますが、とにかく先生からの声が聞こえてくるのは、さっき安河内先生がおっしゃったとおり、幾らコミュニカティブな授業をやっても、最後は入試でこの4択文法問題がある限り、これをやらないわけにはいかない。もうそれがある限り無理なのですということです。ですから、まず高等学校の教育の正常化には、やはり高等学校の生徒たちが使う問題集の正常化が何よりです。そのためには、そのデータベースとなる入試問題の正常化以外には考えられません。もう一度言いますが、先ほどの入試問題が出ている以上、その英作文の授業をしなければいけないのです。私もそのような本を出しています。1でも、もう私は、みなし満点になれば、そんな問題集は全部捨てます。もちろんそういう勢いで来ているわけですが、とにかく入試に合わせた問題集ではなくて、普通の問題にしたいと思います。
 では、実際生徒が耐えられるかという問題です。ナンバー8です。高校2年生の生徒に英検1級のライティングのテストをさせました。そうしたら、やはりちゃんと適応してくるのです。だから日本人は英語ができないのではなくて、その能力を伸ばす機会をもらっていない。だからライティングでも高校2年からロジックを与えて、それを徹底的に指導してあげれば伸びると思います。ただ残念ながら、ここに載っている2人の子供は関西の某有名大学志望ですので、ロジックの訓練は、3年以降はやりたがりません。先ほどの、「頬を真っ赤に染めて、『運転手さん』と走る」問題をやらねばいけない。だから、本当にもしこれがライティングが入り、スピーキングが入ってくれば、日本の英語教育は随分と変わっていくと思います。もう入試を変える以外に全く。現場の方は多分混乱するでしょう、きっと混乱します。間違いなく混乱します。予備校の方も随分と困るでしょう。でも、いいじゃないですか、それで。
 とにかくまず入試を変えれば、変わってきます。なぜか。私の時代にはリスニングがなかったです、共通一次。よって、僕らの仲間でリスニングをやっているのは、ごく一部のマニアだけ。東京外大を受ける、大阪外語を受けるところでした。よって、幾ら筆記の力が高くても、リスニングの力が弱い子がいっぱいいました。ところが今やリスニングが入ったために、みんなやっています。入ったらやるのです。もうだから入試の中に入れるしか方法はないというふうに。ただし、そのときにハードランディングになって、例えばある外部導入の試験一本化にしてしまって、もうこれでやりなさいと押し付ければ、絶対大学側が、恐らく、僕は、反対すると思います。そうしたら、またさっきの入試問題に戻ってしまうのです、もう戻るのは嫌です。頼むから戻らんでください。だから、もう何としてでも、先ほどのみなし満点からで結構です。今すぐ全部変えろと言いませんから、とにかく一刻も早く、国民の世論を含めて、もう変えましょうということを言ってほしいと思います。
 話の種ですが、ナンバー7、こんな堅い会議にいかがかと思ったのですが、新大阪駅の駅の中に名店街があります。御飯を食べていましたところ英語の表示がありまして、余りにも拙(つたな)い英語なので、思わず、僕はびっくりしまして、それを全てイギリス人に書き直してもらい、それを渡してきました。西日本は隅々まで英語ができない、本当に。見てください、この英語、情けなくて涙も出ませんよ、“○○○○ is a origin restaurant”、せめて“an”にしてよ。
 ただし、僕は外部試験で一つだけ、悲しいことがあります。それはいいのですけれども、例えばエッセイです。今年もある大学のエッセイ、面白かったです。先ほどのラッセルを出題した大学ですけれども、非常に面白いエッセイだった。小説、エッセイです。それが多分このアカデミックな試験では全部消えていきますでしょう、すると、そのエッセイで英語が好きになった子もいるかもしれません。その辺のバランスがもし入るなら、更にいいなとは思いますけれども、その辺はちょっと私の個人的な感想です。
 あと、先ほど佐々木委員がおっしゃっていました、受験しない子にも使える試験ということで、去年私の勤務校には、マスコミをにぎわわせました陸上の生徒がおりました。彼だって立派な高校生です。多分彼らこそ普通に英語を使えるものの試験をしてあげないといけないと思います。だから本当に受験する子ももちろんですけれども、受験しない子にとったら、英語は使うためのもの以外の何物でもないです。そうしたら、もう1技能、スピーキングだけでもいいような勢いだと思います。私の知り合いのイギリス人ですが、日本語は相当流暢(りゅうちょう)に話します。奥さんも日本人です。でも、日本語は書けません。書けないけれども、何とか生きています。つまり、そのスピーキングがもっともっと重視されるような勉強でも全く問題なくて、ライティングはやはりもっと高いレベルの、アカデミックな話かなというふうに感じたりします。
 ということで、ナンバー9ですが、これは「19の春」という、もう古典中の古典の、田端義夫さんの曲なのですが、去年の11月ぐらいに、ある生徒が、予備校生が私のところに持ってきまして、添削してくれというわけですね。最初、私はいかがなものかと思ったのですが、こんなの入試に関係ないかと思いましたけれども、イギリス人と2人で、ああでもない、こうでもないと言いながらやりました。でも結局、ここは大事なことなのですけれども、昔、私はスピーキング、リスニングを鍛えずに、リーディング中心の勉強の方が効率がいいと思ってきましたが、それは大きな間違いでして、例えば今、私立文科系の子でリスニングのない子はリスニングしません。けれども、これは明らかに勉強としても不完全なのですね。やはり4技能をバランスよくやらないと、英語は伸びないのです。この子は何の関係もない詞をやりましたが、やはり彼は相当伸びました。すなわち入試勉強というのは、別にリーディングがあるからリーディングだけでなくて、本当は4技能をバランスよくやらないと伸びないのです。だから、それも含めて4技能の勉強の方が絶対いいというふうに感じるわけです。
 先ほどのバランスの問題ですが、今センター試験は200対50です。よって当然ながら、予備校の授業もそれに合った比率の勉強しかしていません。多分どの大手予備校もそうでしょうが、リスニングはほとんど中心ではありません。あってせいぜい教室の前でCD流すだけ、それが週に1回あるだけだと思います。やはりこれがもし1対1に変わっていって、若しくは1対1対1対1に変われば、随分と変わってくると思います。そういうふうに感じるわけであります。
 あと、ついでにナンバー11ですが、これも西日本のある有名大学ですが、下線部“for satisfying their appetites?”とありますね。これは「食欲を満たすために」というふうに訳すわけですが、お気付きだと思いますが、文法的にはおかしいと思います。普通、「何とかするために」はto不定詞だと思います。なぜでしょうか。これは原文が“for food”なのです。原文の“for food”を書き換えて“appetite”を聞きたかった。よって、どうしても“appetite”を入れたかった。その結果このような不備が生じた。もちろん人間ですからミスをしますので、私もミスをいっぱいしますので人のことを言えませんけれども、こういうことが起きてしまっているわけです、現状です。
 ちなみに、ナンバー19ですが、今はどうか知りませんが、その西日本の大学の大学院の入試も、やはり下線部訳でした。ナンバー19がその理学部の学生の入試問題です。一応、参考程度にしておいてください。
 あと、ナンバー23、あと少し。これも東京の某有名大学ですが、女の子と男の子が描いてあって、窓にUFOが飛んでいる絵を見て、これの内容を書きなさいということです。この大学は、今年の問題はこんな問題でした。自動販売機の前に2人の人が立っていて、その横に犬が1匹いる。自由に会話を書きなさいです。いや、面白いのですよ、けれどもそのレベルの作文で、果たしてアカデミックなライティングになるのでしょうか。高校1年生でも書いてしまえそうですね。ただネーティブスピーカーたちの意見は、やはり東の大学の方がはるかに評価は高いと思います。やはり面白いですね、問題自体が、すごく。それでもやはりもう少し改善の余地はあるのではないかというふうに感じています。
 一応、ナンバー25。よって、その大学は、後期ではこのように英語のサマリーをやりなさい、120字。更に感想を120字というふうに、後期ではちょっと実験的なことをやり出しています。だから、この影響、多分出題者たちもよく分かっておられて、このようになっているのだというふうに私は感じています。だんだんといい方向には向かっているのだろうというふうには思います。
 以上、意見をまとめますと、入試問題、もちろんいいものもありますが、やはり日本語のロジックと合わない英語の作文については早急な改善が必要かと思います。ただ、もしみなし満点が実施されたとしても、その問題が続くとするならば、やはりその第三者機関としてそれをチェックする機関が必要かと思います。多分その機関の中には、やはりある程度教養のある英米人を入れた方がいいのではないかと感じています。
 あともう一つは、やはり4技能というのは、もちろん英語が使えるための最低条件ですが、英語の勉強をする上でもその方がはるかに効率がいいのだということです。ですから、やはり4技能の試験の方がもう圧倒的に良いということです。
 今、もうとにかく現場では何十万人単位の高校生が、この瞬間も受験勉強をしているわけですから、一刻も早く変えてもらいたいと感じています。何分不慣れなもので、言い過ぎたこともあったと思いますけれども、本当にそういうふうに感じております。どうもありがとうございました。

【吉田主査】 どうもありがとうございました。
 先ほどと同じように、竹岡さんの御発表に対して質問はございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、残りもう20分ちょっとしかございませんので、あとは自由に、今いろいろな方の発表、お話がありましたので、質問ということよりも意見を自由に言っていただければと思いますが、では、三木谷委員、どうぞ。

【三木谷委員】 競争力会議で私が提案しましたのは、英語の教育改革をするためには、出口論といいますか、「入試を改革してゴール設定を変えればいい」「そうすると、予備校、塾、そして中学、高校教育も含めて英語の勉強方法が変わるだろう」ということです。この提案に対する反応は、総理も含めて、極めて前向きに是非やりたいという意向があるように思います。国家公務員試験においては、平成27年度から最大で合格点数に対して5%程度をTOEIC・TOEFL等のスコアに応じて加点するということになりました。試験改革というのは、非常に実現性が高いと思っています。
 二つ目は、楽天では御存じのとおり英語化を始めておりまして、そこでの私の驚くべき発見というのは、日本のエンジニアは英語ができないということでした。当時、英語化を始めたときの大前提は、日本のエンジニアというのは当然英語はできるのだろうと思っていたのです。なぜなら、ブラジルに行っても、それからフランスに行っても、ビジネスサイドの人は英語ができなくても、大体エンジニアは英語ができるのです。プログラミングを使いますから。ところがですね、日本のエンジニアというのは英語が苦手な人が工学部に行くということで、日本のエンジニアは本当に英語ができない。東京大学を出たエンジニアでも英語が苦手だという人がたくさんいるということがあって、もうこれは国家的な競争力という意味において非常に問題があります。
 リテラチャーとかエッセイに対するノスタルジーというのも分かるのですけれども、今の日本の状況はそういう問題ではなくて、やはり一刻も早く実用、実践英語に切り替えるということがとても重要だと思っています。ハイレベルの人以外でも、東京オリンピックもあるし、これから外国人観光客も2020年に向けて2,000万人を国家目標としているわけで、今年既に1,300万人ぐらいを突破そうだということですから、ファーストフードのサービスからコンビニの店員まで、もうある程度基礎的な英語がしゃべれないと仕事が難しくなるような状況になってきているということを考えれば、やはり実用英語、これは簡単な形でスピーキング、リスニングができることを満たしておくということが、今後生きていくという意味においても重要だというふうに考えております。
 哲学であったりリテラチャーであったりというようなところについては、その上の話で、今の日本の英語のレベルは、そこまで行っていないと思います。まず基礎は、ちゃんとしゃべれる、聞ける、コミュニケーションできる。これがベースで、アカデミックな論文が書けるとか、そういうのはその上の話なので、まずここのベースができているかどうかということを、入試で確認するべきだと思っています。大学入試が変われば、当然高校入試も変わる。みなし満点がいいかどうかについては、皆さんの方で議論していただければいいと思っているのですけれども、ここが、極めて重要なポイントであると思っておりますので、できるだけ早い実施をしていただきたいと考えております。
 以上です。

【吉田主査】 ありがとうございました。
 ほかの方、いかがでしょうか。
 では、石鍋委員。

【石鍋委員】 私は中学校の教員なので、高校入試に触れながらちょっとお話をしますが、まず、きょう皆さんから御意見のあった4技能を測るというのは、これは当然高校入試でも必要であり、中学校の授業自体が4技能をきちんと総合的に育成していくということですから、それを、中学校の授業をそのままテストで測っていただきたいという気持ちは強く持っています。
 きょうの議論の中で、中学生だと少し感覚が違うなと思うのは、大学入試があって、それがある意味スモールゴールになって勉強していくということが、高校生の多くにはあるのだと思うのですけれども、中学生の発達段階からすると、勉強していれば試験に受かるよというような意識を、私は持たせたいと思うのですね。試験に受かるために君たち勉強しなさいではなくて、一生懸命勉強しなさい、そうすれば必ず試験に受かりますよ、これは心持ちの問題ですけれども、やはり子供の発達段階はそういったものであろうと思っています。これは大学入試のときの話とは別の問題かもしれませんので、ただ、心のどこかに置いておいていただければと思っています。
 もう一つは、中学校ではまだまだ散見される授業の中に、暗記中心というのがあるのです。音声を使っていても暗記中心というのがあって、自分の思いを乗せて英語に換えて発話するという授業がなかなかできないというものもございます。そうなってくると、やはり入試などでも暗記だけではなくて、是非身に付けた知識や技能を活用して、その活用ができるかどうかを見ることができるような、そんな入試がたくさん出てくれば、もちろん授業も変わりますし、子供の活用力は中学段階から上がっていくのだろうと思います。

【吉田主査】 ありがとうございました。
 それでは、松本委員、お願いします。

【松本委員】 4点ほどあります。最初の二つは論点の整理の仕方についてです。
 一つ目は、確かに入試問題に様々な問題があるということは分かったのですけれども、入試問題の改善だけでなくて、外部試験を活用した入学者選抜をどうするのかという、もうちょっと大きな枠組みで考えていく必要があるのではないかなと思います。問題だけをよくしても駄目で、受験者を総合的に評価するシステムをどう構築するのかというのが重要だと思います。その点、日本の多くの大学にある入学センターでは、アメリカ等の大学でやっているアドミッションズ・オフィスのような入試、入学者選抜ができない。マンパワー的にもノウハウ的にも、お金の問題も含めて。ですから、抜本的な改革が必要だと思います。その上で、どういう試験を活用するのかということを考えた方がいいのではないかというのが私の最初の考えです。
 2点目は、きょう安河内先生が、様々なテストのよい点とか問題点とかを挙げてくださったのですが、国としては「外部テストの活用を推奨するかどうか」の議論だけにとどめた方がいいと思うのです。どの試験が他よりもいいとかといったことはお互い切磋琢磨(せっさたくま)していただいて、大学が選べば、基本的に良いと思います。この会議で何というテストがいいというようなことに関して議論の時間を費やすということはいかがなものかなと思うのです。「指導要領に準拠していて4技能を測っている」といった最低限の測定条件を満たしていれば、あとは大学が選べばいいと思います。点数の相関について非公式のものが世の中に出まわっていますが、うちの学生がいろいろなテストを受けてきますが、学生によってまちまちです。こっちの学生はAというテストでは非常にいい点をとるけれども、Bというテストでは駄目だったが、全くその逆のパターンもあったりして相関については非常に難しいなと思っています。それから、例えばTOEICにしても、S、Wを含んでいれば、私が所属している経営学部とか経済学部の入試には十分使えると思います。ですから、学部とか大学がそれぞれのレベルやニーズによってテストを選べばいいと思うので、ここでの会議では「外部試験を活用するべきかどうか」、それから「活用するのだったらどういうストラテジーを立てるべきなのか」ということについて議論した方がいいと思います。
 そのストラテジーに関して、3番目の考えです。「みなし満点」についてはメリットとデメリットがあります。今年からすぐにというのはちょっと無理だと思うのですけれども、みなし満点というのは、大学や学部がきちんとしたアドミッション・ポリシーを立てていれば可能です。うちの大学、あるいは学部で4年間学んで卒業するに当たっては最低限これだけの英語力がないと無理です、という方針を発表していればできることです。立教大学は発表していますが、そういうステートメントがあれば「みなし満点」として受け入れることは可能なのです。しかし、それができていない大学がほとんどです。自分たちの授業内容と関わりなく、入試では単に優劣を付けているだけです。ここに問題があるのかなと思います。
 あとは、極めて英語力の高い受験者を合格させたいという大学もあるでしょう。そうなると「みなし満点」がマイナスに働きかねません。他教科勝負になるということはいいことなのか。あるいは、例えば秋までに満点がとれてしまったとしたら、その後、半年近く英語を勉強しないことになりかねません。ということで、「みなし満点」はマイナスにもなりうる可能性もあります。それから、英語の入試問題はかなり問題ありますが、国語や社会の問題の方がもっと問題あると思うのですよ。世の中の批判にさらされていないため、もう何十年も変わっていません。採点の基準も非常に曖昧な場合もあることを考えると、英語以外の科目の点数で選抜していいのか、という問題があるので、私は「みなし満点」はすぐには使えないと思います。
 4番目は、ではどういうふうにし変えられるのか、ということです。一つの可能性は、スーパーグローバル大学創成事業ということになると思います。西日本の旧帝大に対して、「このような入試問題を出している限りはスーパーグローバル大学とはみなされない」と文科省が言っていただければ、これは大きく変わると思います。スーパーグローバル大学創成に関する申請書には、入学者選抜についてもほとんどの大学が書き込んでいらっしゃると思います。その辺のことを、きょうは平野室長がいらしているので、大学の入試について、今後何か改善の方策があるのかどうかについてお聞きしたいと思います。42243404
 以上です。

【三木谷委員】 今のに関連して、ちょっとよろしいですか。

【吉田主査】 では、三木谷委員、どうぞ。

【三木谷委員】 みなし満点について、確かに、例えば自分のことをいうと、私は国語がすごく苦手だったのですけれども、国語に関してみなし満点制度があったら、多分私は一橋大学に入っていなかったのだろうと思います。それから、私は当然英語教育の強烈な推進者なのですけれども、やはり子供の中にはどうしても、外国語教育に関して何らかの障害があったり、非常に苦手だという人もいるはずなので、そういうところで、別に英語ができないからということで人格を否定してしまうようなことになってはならないと思っています。ですから、英語の点数によるグレード付けというのは、かなり重大なことと率直に思いました。
 松本先生とちょっと意見が違うのは、私は基本的に英語試験はTOEFLに統一するべきと考えております。中位校、下位校は難しいというのは分かるのですが、特に上位校については、そうすべきです。その理由としては、留学生を増加させるためです。今、留学生が少なくなる中、ある程度留学生を送っているのは灘高です。灘高がかなりリベラルだというのもあります。これからは、どれだけ日本の大学を良くしていくというのも重要ですが、欧米、アジアの優秀な一流大学に若者を送っていくかということも重要なポイントであると考えております。そういう意味で言えば、TOEFLで点数をクリアしてしまえばそういうところに入れる可能性もあります。あとは他のSATとかとらなくてはいけないですけれども、可能性が出てくるということです。私の見解は、基本的には国際標準のテストを採用するべきではないかということです。私がTOEFLと言ったら、麻生副総理の方から、イギリスのテストでもいいのではないかという意見も出ましたので、どのテストとは言いませんが、国際的な試験、そして、そのままその結果が外国の大学を受験する場合でも使えるテストがいいのではないかと思っております。

【吉田主査】 ありがとうございます。
 ほかの方、どなたか御意見ございますか。
 では、安河内委員。

【安河内委員】 いろいろなテストの名前が出たのですけれども、1回確認しておかなければならないのは、きょうの議論の中で2技能のテストと4技能のテストが交錯して出てきているのですね。だから、文科省の皆さんとか私たちで一つだけ縛りを掛けなければならないのは、やはりテストは4技能であるべきだということ。今TOEIC試験とおっしゃいましたけれども、TOEIC試験は2技能です。S、Wも合わせて4技能ですから、そのあたりもしっかりと最初に私たちが4技能という方針を固めておくことが非常に重要だというふうに感じました。

【吉田主査】 ありがとうございます。
 時間的にも大分押し迫ってきましたが、今まで発表していただいた内容、また御意見いただいたもの、おおよそこんな方向かなというのを、ちょっと自分なりに整理してみると、一つは、今、三木谷さんがおっしゃったような国際的な標準というのは、やはり今後の日本にとって必要だろうと思います。そういう意味ではCEFRというのが一つの標準になるだろうし、またいろいろな大学によって、そのCEFRを基にした、いわゆる4技能のテストというものが使われていいだろうと。ですから、本当にトップ校においてTOEFLなどが使われるということもあり得るだろうし、そうでないところにおいては、またTEAPであったりGTECであったりとか、あるいはTOEFLのComprehensiveであったりとか、様々な現在あるような、4技能でありながらレベルが多少違うようなテストが入ってくるということも十分可能性があると。
 私は自分なりに、先ほどの私の発表でもお話ししましたけれども、いわゆる4技能のこういうテストの相関だとかを全部とっていけば、かなりそれぞれ、どのテストをとっても相関は高いと思うのですね。ということは、基本的には同じ一つの線上にある、ただそのレベルがそれぞれ多少違うというふうに考えていけば、最初に安河内委員がおっしゃっていたように、それぞれの大学別に違った入試の準備をする必要はなくなる。一つの方向に沿って、一つのやり方で4技能をきちんと学習指導要領に沿って教えていけば、それぞれのレベルに合った入試に対する対応もそれによって可能なのかなというふうに思います。
 みなし満点に関しては、今はまだ、上智大学においても、もちろんまだみなし満点という考え方は直接ありませんので、今後それについてどうするかは分かりませんが、これから議論する必要が、確かに松本先生がおっしゃるようなことを考えればあるなというように思います。ただ、少なくともきょうの議論の中で、方向としてはやはり外部試験を活用していく。いろいろなレベルに合わせて、やはりトップ校においては本当に国際的にもそのまま通用するものも含めて、その採用、いろいろなテストの活用というものを考えていく必要があるというふうに思いますし、それから、最初に佐々木先生とか、また石鍋さんもおっしゃったように、中高の現場において、果たしてどういうようなテスト、あるいは評価の方法が必要なのかということも、そういういろいろなテストを見ることによって、逆にそれを参考にしながら新たに開発する必要があるかもしれませんし、あるいは今あるものでうまく活用できるものもあるかもしれませんが、それについても今後考えていく必要があるかなというふうに思います。
 きょうだけではありませんので、少なくともあと1回、あるいは場合によっては2回、この委員会はやっていきたいと思いますので、きょうのところは大体こんなところでよろしいでしょうか。
はい。それでは、事務局方、お願いいたします。

【圓入室長】 それでは、今後のスケジュールですが、先ほど主査からお話がございましたように、今、次回の日程を調整させていただいております。決まり次第御連絡をさせていただきたいと思います。次回は、きょう頂いた発表内容の御意見をまとめさせていただいて、この小委員会としてのまとめの方向について御議論いただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【吉田主査】 ありがとうございました。
 それでは、本日はこれをもちまして閉会としたいと思います。きょうは、お忙しい中、本当にありがとうございました。

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