資料3 教員免許更新制度の改善に係る検討会議 第6回、第7回意見

1.現代的な諸課題に対応できる免許状更新講習に係る枠組み・内容の改善について
1.「必修領域」の見直しと「選択必修領域」の導入

(必修領域の内容の見直し)
・難しい問題である。アンケート結果において必修領域に入れるべきものとして実践に生かせるような項目が挙がっているが、「E:学習指導要領の改訂の動向等」が必修領域から外れてしまうと、日本の教育がどこに向かっているのかという将来像について免許状更新講習で掴めるのか懸念がある。将来の日本の教育の方向性・あるべき姿のような内容を必修領域に入れるべきではないか。教員も10年後の日本の教育を念頭に入れて自身の教育方針等を作って行くと思う。確かに都道府県教育委員会の行政研修において、学習指導要領の改訂の理由や方向性については学べると思うが、歴史を踏まえて将来日本の教育がどのようになるのかというような内容を、自身が大学生だった頃と比較して学び直すことができるのは免許状更新講習の価値であると思う。

・先ほどの意見は非現職教員に対しては必要なことかと思うが、毎年現職教員は、日々国の状況の変化等を学んでいるため、免許状更新講習ではその内容を振り返り考え直す機会になるとは思うが、行政研修を行う側からすると「E:学習指導要領の改訂の動向等」は必要ないと思う。

・教員養成についてはそのために必要な情報を与えているが、大学教員が免許状更新講習を行う場合に、日本の教育は今後どうなるのかというような視点を今までは盛り込んでいなかったのではないかという反省をアンケート結果から感じている。行政と大学が同じ内容をやっているのであれば含める必要はないが、世界の状況を踏まえて将来こういう子供たちを育てていくべきというようなことはどこかで議論しなければならず、それは唯一大学が行えることであると思う。

・必修領域にはこれからの日本がどういう子供を育てていくかというような視点を含めて欲しい。都道府県教育委員会も伝達講習を行っているが、大学においても違う切り口で講習を行ってほしいと思う。

・大学関係者の方に伺いたい。大学の教員は研究者であり、それぞれの立場や理論、価値観で様々な意見があると思うが、それは将来の日本の教育の方向性と異なるようなことはないのか。

・現在、必修領域に学習指導要領の改訂の動向等が含まれており、それを踏まえて講習を行っているため、持論を講義するということにはなっていない。それゆえに行政研修と免許状更新講習が似通ってしまったのかなと思う。しかし世界の教育の流れを踏まえ、このように子供を育てるのだということは、どこかで誰かが論じなければいけない。教育の根幹はそう大きくはぶれないので、大学教員をもっと信用してほしい。

・研究者は考え方等が違ってくるのが当然であるため、講習を行う際にどのような論点・争点があるのかを示しながら講習内容を組み立てればよい。受講生は現場経験で色々な知識を持っているため、よく考えて理解してくれると思う。研究者としての考え・価値観の違いは余り気にする必要はないと思う。

・確かに研究者によって色々な意見があるが、10年目20年目の教員はそれを読み取れる目があるし、大学教員も哲学のある教育実践と自分自身は考えているが、どこが幹でどこが枝葉かということを踏まえつつ、今の時代、文部科学省の意向、世界の流れを散りばめながら講習を行っている。

・学習指導要領の改訂の動向等を含めた形で、教員としての子ども観、教育観等についての省察等、その他の事項についても考えられるべきだと思う。

・三つの内容(「教員としての子ども観、教育観等についての省察」、「子どもの発達に関する脳科学、心理学等における最新の知見」、「子どもの生活の変化を踏まえた課題」)の前提として、当然ながら国内外の教育改革や教育制度に関する考え方等、国の基本的な教育の方向性を盛り込むような講習内容の工夫が必要である、ということが大半の委員の意向であると承知した。

(選択必修領域に位置付ける内容)
・国が選択必修領域に位置付ける項目の範囲を示し、大学がその中から選択する方法であれば大学としては教員数等を勘案し、開講科目等を設定しやすい。しかし全国的に開講科目に偏りが出なければよいという懸念はある。
・選択必修領域の内容は、学校現場において当面の課題となっているものであるため、資料に示す「国際理解・異文化理解教育」、「英語教育」については、可能であれば選択必修領域に入れていただきたい。小学校教員の8割は英語教育を自分自身の課題と認識しており、英語教育に関する研修機会を必要としている。都道府県・市町村教育委員会でも研修は実施しているが、免許状の更新時にそれがきちんとできるようになればよい。その場合、現在抵抗の強い大学の人材をうまく活用する必要があり、その抵抗を和らげていくためにも選択必修領域に位置付けていただきたいと思う。

・資料で特に検討が必要な内容に挙がっている二つ(「G:様々な問題に対する組織的対応の必要性」、「H:学校における危機管理上の課題」)については重要な項目ではあるが、全体と比較して異質であり、免許状更新講習の必修領域、選択必修領域に位置付ける必要はないのではないかと思う。

・受講者側から考えると、必修領域と選択必修領域は同じ大学で合わせて受講したいと思う。そう考えると選択必修領域に位置付ける事項が多い方がよいと思う。選択肢が多い大学に受講希望が集まると思う。
・本学でも委託事業を受けて幼稚園・小学校・中学校・高等学校に共通する内容等について研究を行っているが、例えば「アレルギー反応」は命に関わる上、全ての校種の教員に必要となる知識であるため、免許状更新講習に入れてほしいという要望はある。しかし選択必修領域は単なる選択ではなく、必修であるので、選択肢が多くなると選択必修領域を設定する意味がなくなるし、その一方である程度講座の選択肢がないと各大学で講座が開講できない。その辺りの落とし所を議論する必要がある。

・中間取りまとめの際の議論にもあったが、校種別で選択必修領域を設定すると講習は絞れると思う。受講した立場でいうと、受講者のニーズが低いものを必修・選択必修領域に入れる必要はないと思う。受講者ニーズが高いものを、校種に応じて選択必修領域に位置付けるべきかと思う。

・必修領域及び選択必修領域に入れるべき項目のいくつかは内容が重複しており、恐らく講習を担当する教員も重複することとなる。その辺りの負担を考えると、選択必修領域として位置付ける内容としては、枠を広く設定していただく方がよい。

・本日の議論を集約すると、選択必修領域に位置付けるものとしては、「学校を巡る近年の状況の変化」、「学習指導要領の改訂の動向等」、「法令改正及び国の審議会の状況等」が選択領域から選択必修領域に移すもの、それから「選択必修領域に位置付ける内容」、そして委員から選択必修領域に位置付けてほしいという御意見が出た「国際理解・異文化理解教育」、「英語教育」となる。また「様々な問題に対する組織的対応の必要性」、「学校における危機管理上の課題」は選択必修領域ではなく選択領域でよいのではないかという意見が出ている。

・一つの考え方として必修領域は教育哲学のようなイメージであり、選択必修領域は教育哲学から分化したもの、つまり必修領域の一部をより詳しく学ぶ講習と考えると整理しやすい。大学としても必修領域のうち大学教員が得意な分野を選択必修領域として開講していただくこととすると、選択必修領域そのものの意味についても理解しやすいと思う。

・選択必修領域のイメージが混乱している。必修領域をさらに深めるものとして選択必修領域があると考えることとなったのか。
・以前は選択必修領域について、現代的な課題について学ぶ領域として議論をまとめてきたと思うが、そうであれば、現代的な課題をここで挙げていかないと選択必修領域が具体的になってこない。課題として挙げられているものもあるが、必修領域と重複しているものもあるため、その辺りを具体的に整理して詰めていく必要がある。

・選択必修領域に関し、大学の規模によって全ての項目を開設できるところとできないところがあると思うが、ここに示されているような項目は都道府県教育委員会や教育センターの研修でも扱っているのではないかと思う。そうすると、大学が実施する免許状更新講習で期待されるものと実際に講習の実施が可能なものの棲み分けを行う必要があると思っている。

・都道府県教育委員会では先ほど挙げられた選択必修領域に位置付ける項目の候補について、対象者を限定しているものもあるが、「アレルギー対応」以外は実施している。

・強弱はあるが、都道府県・市町村教育委員会においてほぼ全ての項目に対応していると思う。国の法令や指針に基づくものや現場の事例に基づいて研修や協議会を実施している。

・その状況を踏まえると、国がある程度選択必修領域についてどの程度扱うのかも含めて、いくつかの項目を例示すべきではないか。先ほどの「アレルギー対応」についてはとても重要な項目だと思うが、今扱うべきなのか、扱わない方がよいのか、ある事例等があって集中的に行うべきなのか等、扱い方について方向性や優先度を示す必要があるのではないか。

・教育委員会と大学で項目の棲み分けをする必要はないと考える。同じ項目であってもそれぞれの立場の専門性ややり方に基づいて講習を行えば、受講者にとってはどちらもプラスになる講習であるため、重複していてもよいと思う。危機管理に関しても現場でできる危機管理もある一方で、現代社会の中でアレルギー対応も含めてどのような危機管理が必要なのかといったような、包括的な内容の免許状更新講習があってもよいのではないかとも思う。

・考え方の一例であるが、必修領域は総論、選択必修領域と選択領域は各論である。そう考えた場合、危機管理が必要だと考えるのであれば、きちんと総論である必修領域に含めるべきだと思う。それによって項目が細かくなってしまうということであれば、選択領域で受講者が選べるようにすべき。全体像を見せて、その中で各論を選べるようにすることが重要だと思う。

・選択必修領域は各論ではないと思う。必修領域のいくつかの課題について、教員には全てを知っておいてほしいと思うが限度があるため、選択必修領域として示す項目の中からいくつかを選んで学ぶ、という位置付けだと思う。学校教育の中で現在課題となっていること、今後10年間で課題となるようなものを挙げてもらって、その中から項目を決めていく、という方がよいと思う。


2.所有免許状情報の一元的把握と教員免許更新制度の周知方策の充実について
1.カード化した「教員免許証」(仮称)の導入

(「教員免許証」の導入)
・「教員免許証」の導入については、非常に合理的でよいと思うが、携帯義務を課すことは難しいのではないか。義務を課すと調査する必要が出てくるため、むしろ学校で保管する方がよいのではないか。

・免許状に関して本人若しくは管理職等がきちんと意識を持つという意味合いでは、カードや証明証は非常に有効であると思う。複数の免許状ではなく1枚で全ての免許状取得の状況が確認でき、有効期間や更新講習受講期間が明示されるようになれば、本人や管理職は理解しやすくなると思う。ただし、そこに行き着くまでには、例えば「免許証」に写真が必要であるのか等、事務的な手間と得られる効果等を考えて検討しなければならないと思う。

・カード化について、このカードを見れば、失効した免許状を返納していない教員かどうかが見分けられれば非常によいと思う。

・本県の場合、免許状の授与に関しては窓口で手続を行い、本籍や氏名の書き換えについては郵送で受け付けることを認めている。資料には本籍や氏名が変わった時の届出を義務付けるという記述があるが、これは申請者にとってかなりの負担になるのではないか。「教員免許証」に顔写真を付けることにすると、本籍地や氏名の書き換え時やさらに授与権者側が写真を撮る必要があるとなれば、申請者は必ず窓口に来なければいけない。

・本学におけるeラーニングでの免許状更新講習受講の際は、現職教員については校長の割印で本人確認ができるが、現職教員でない者や過去に教員であった者、これから採用される見込みのある者は受講申込書では本人確認ができないため、運転免許証やパスポート等の写真付きの身分証明書のコピーを添付してもらう。「教員免許証」に顔写真が付けば、本人確認の業務にとっては大変有り難い。

・個人的には顔写真を付けた方がよいと考える。更新するたびに写真を貼り換えていけばよい。その方が本人確認もしやすく、後々の事務作業も楽ではないか。

・前提としてカード化と免許状更新講習を一体化、連動化する方向がよいと考えている。免許状更新講習でも当然本人確認を行っているが、本人確認の方法が大学によって違うと受講者から指摘を受けることがある。受講申込書に顔写真を添付する大学もあれば、本人確認の作業を簡素化している大学もあり、本人確認の方法について大学によって温度差がある。よって本人確認については顔写真で確認する等のルールを統一した方がスムーズにいくのではないか。

・教員免許状の取得者数がかなり増えているようなら、事務の簡素化、管理のしやすい方法を検討しておく必要があると考える。
・金銭的な問題を挙げていたが、更新した本人が使う物であるので、受益者負担で十分やっていけるのではないか。
・このシステムを全体的に統括する組織については、イメージが十分できていないが、この機会にこれからの教員免許の管理・運営がしやすいシステムを充実させていく必要があるのではないか。

・既に免許状を授与した者については、従来の免許状を「教員免許証」に取り換える必要があると思うが、全てを同時に取り換えることは現実的ではないと考える。

・「教員免許証」の再発行についてはどのように考えているのか。悪用する者はいないと考えるが、再発行もある程度システム的に行う必要があるのではないか。

・免許状の根拠規定、取得した単位等も全て格納できるようになると、以前取得した単位を基にして新たな免許状を取得する場合に、大学が発行する学力に関する証明書を提出する必要がないため、次の免許状の授与がしやすくなる。
・免許管理者としては正しい原簿情報ができていないと免許状の正しい有効期限が分からなくなるが、こうなった場合の責任の所在が不明確である。間違ったケースが発生した場合はどうしたらよいのか不安がある。

・教員免許状のカード化は賛成である。写真も組み込むべきと考える。学校現場としては免許状の失効者を任用することは、信頼を失うことにつながる。チェックを行う機関が十分にチェックできないようでは制度として不備がある。
・カードは一枚になると思うが、昔の保険証のように三つ折りにして、要点説明資料と一つにまとめて、常に一緒に見られる状態にした方が免許所持者にとっても有効ではないか。カードと別に要点説明資料を渡すことにすると、紛失につながり、講習を受けられないとか、有効期限を忘れてしまう等、現在と同じような問題が起こる。「教員免許証」と制度の要点説明資料は一つのまとまった形にした方が保管しやすく、制度の確認もしやすくよいのではないか。
・導入時には昔の保険証のような三つ折りの形でデータの読み込みができるものがよいのではないか。そもそもの目的が紛失の防止、不意の失効の防止を考えているので、煩雑にならない形で、一体化した状態のものを示す必要があるのではないか。

(「教員免許証」の携帯義務)
・携帯義務について、免許外教科担任制度や特別支援学校においては各学校種の免許状があれば教員となることができるが、この制度により教員となっている者への差別化が起こることを危惧する。

・携帯義務について 、どの程度強制することを想定しているのかわからないが、不携帯であれば教員としての仕事ができないとするのは非現実的。カード化自体には賛成だが、任用している学校で保管しておくのが現実的ではないか。教員には家庭訪問やプール指導等もあり、その時に携帯していないと指導できないとするのは問題が多い。

・学校で免許状を保管するという意見があったが、免許状の原本ではなくコピーを保管しておくことではいけないのか。管理職が免許状を保管すると、管理職に知られたくない情報、例えば就職活動のような情報についても知られることになるので、免許状所持者自身が使用でき、かつ学校でも使えるような方策を考えるべきではないのか。


2.学校関係者による教員免許状情報の確認システムの整備

(教員免許状情報の確認システムの整備)
・カードは簡単に作ることができるとの説明であるが、一方で簡単に偽造ができるということでもあるので、教員免許状について全体的なシステムを作らなければいけないのではないか。

(保護者等の閲覧)
・教員の所持する免許状の情報を、保護者等が閲覧可能とすることは問題があると思う。保護者等への情報提供は大事であるが、例えば教員の中で専修免許状を持つ者、一種免許状を持つ者、二種免許状を持つ者がいた場合、保護者から「どうしてうちのクラスは専修免許状をもつ教員が担当しないのか」という要求が出る可能性がある。
 二種免許については、上位免許状を取得する努力義務が規程されており、今でも、この規定を知る保護者等から学校・教育委員会に問合せがある。保護者等が閲覧可能になると教育現場に相当の混乱が起こる。

・保護者等への閲覧については、情報を出し過ぎると学校が授業ができる者として認めた者であっても、保護者から教員の変更要求が起こることが考えられる上、個人情報でもあるので、閲覧については慎重にするべきではないか。

・情報検索については、誰でも見られる部分があってもよいのではないか。保護者からすれば自分たちの子供の教育のためであるし、教員がきちんと免許状を持っているかどうかの確認は誰でも行えるべきではないか。そこから先の個人情報については、制限をかけて要件を満たせば見られるようにすればよい。

・資料には教員免許状情報証明書と同内容の書類について、各学校の事情等に応じて、保護者等が閲覧できるようにすることが望まれると書かれている。この辺りは個人情報との関係もあるが、国としてガイドラインを示すのか、学校の裁量に委ねるのか。

・すぐに答えを出すのは難しい。例えば、特別支援学校の教員というのは最初基礎免許状で教壇に立った後、免許状認定講習の受講等により後から特別支援学校の免許状を取得する者が多数いると思う。特別支援学校教諭の免許状を持つ者と持たない者が混在する中で、情報を出し過ぎてしまうと、保護者から様々な意見が寄せられることを懸念しており、免許状情報の閲覧は慎重にすべきと考える。

・保護者は正規の免許状を持っている教員に子供たちを学ばせたいという思いがあるので、より適正な方向に向けて努力していく必要があるのではないか。そうなると免許状情報の閲覧を学校の判断に任せるのではなく、公開を原則としていくべきではないか。


3.新免許状制度・旧免許状制度の相違を踏まえた周知方策の充実

(教職課程における教員免許制度の説明・指導)
・教職課程における教員免許制度の説明は、平成21年4月の制度導入時から、新入生オリエンテーションにおいて、授与される教員免許状は10年間の有効期間であるということは伝えている。2~4年生についても4月の授業開始前のオリエンテーションで伝えているが、オリエンテーションの時間は短いので東京都教育委員会から説明のあったような複雑な事例はなかなか説明できない。
 また、相手は教員免許状の授与も受けていない学生であり、働いているわけでもないため、実感がない印象である。
・大学としては、学生に対し教員免許状には有効期間があり教員になる際には注意しなければならないことや教員にならない場合も所有する教員免許状がどのような状況になるかという点に主眼を置いて指導することは可能である。

・本学では三つの方法で教員免許制度について理解を促している。一つは教職課程のガイダンスの中で、教員免許制度について説明している。二つ目は、「教職概論」という授業の中でガイドライン的な内容で扱っている。
・ただし、学生は免許取得が主眼であるので、免許状の更新制度までは十分に理解していない。学生の認識としては「10年で免許状が無くなる」という程度の認識である。
・学生が免許状更新を意識するのは卒業のとき、つまり教員として就職することを意識したときから関心を持ち始める。そのため、三つ目の方法として、昨年度から、卒業前に教員免許状を取得し就職する段階になった学生に対し、免許状更新等の制度について説明を行っている。ただし、細かいところまで説明はできない上に、大学側に詳細を説明できる人間も多くないため限界がある。

・昨年4名の採用取消し者を出したが、そのうち3名は現職教員ではなく、いずれも最近新たな免許状を取得しており、新免許状所持者であると誤解して免許状更新講習を受講していない者であった。その中には、大学から新免許状が授与されるので、10年間は更新する必要がないと言われた者もいた。教育委員会から大学へ、免許状一括申請の際に申請者が他の免許状を所持していないか確認をお願いしている。
・大学関係者は、旧免許状所持者が平成21年4月1日以降に新しい免許状の授与を受けた場合、旧免許状が授与されるということを十分認識していないことが多い。教育委員会としても重要な課題と考えており、説明する機会があれば周知を図っている。私立の教職課程の説明会に呼ばれた際も、できるだけ新免許状と旧免許状の制度上の複雑さについて説明することを考えている。

・旧免許状と新免許状の授与における問題は修士課程で起こってくる問題かと思う。免許状を渡すのは卒業式の場であるため、新免許状と旧免許状の違いについて説明する時間は無い。生年月日と名前に間違いがないか等の確認くらいしかできない。
・大学の事務職員は免許状の管理に関しては素人であり、教育委員会に申請して受け取った免許状を学生に渡すだけである。管理に関して教育委員会と話し合いは行っていないと思う。
・カリキュラムの中で指導できるのは新免許状のことだけで、旧免許状との違いや、権利の違いについて十分に説明できない。
・学生への指導を充実させるためには、大学の担当係がもう少し勉強しなければならないとは思うが、大学で免許状授与の業務を行う係が教員免許状更新講習の担当をしているとは限らない。部局間の意思疎通が不十分な場合、免許状更新講習を担当している者は理解していても、免許状の授与業務を行う者は十分に理解していないという状況が生まれる。部局間での意思疎通の状況を改善しないと、大学から学生への周知徹底は困難。
・大学の教職課程の事務職員に免許状の管理についての意識を持たせる場合は、かなりの研修が必要。大学の事務業務が混乱するのではないか。

・新免許状と旧免許状の制度の違いについて、大学関係者も理解しなければならないと考えていたところである。文部科学省のホームページで詳しく説明していれば、本学のホームページにリンクを張り学内に紹介し、学生や受講者が閲覧することも可能と考える。

(教員への制度の周知)
・本県では1年間に4,000件程度の免許状更新講習の修了確認申請等がある。教育委員会でも教員が勘違い等により免許状を失効するケースについて防ぐ手立てを話し合っているが、制度が導入されて4年が経過しても未だに電話で申請方法等の初歩的な内容に関する問合せがあり、全ての方に周知させることが難しい。

・新規採用者については、かなり周知に取り組んでいる。問題なのは複数の免許状所持者であり、旧免許状所持者が最近取得した免許状を新免許状だと勘違いして、修了確認期限を誤るケースが多く、各教育委員会も力を入れて周知に取り組んでいる。課題としては私立学校ではどの程度周知が行われているのか分からないため、私立学校への周知方法を検討する必要がある。

(受講対象者証明書を持たない非現職教員採用予定者の受講を認める運用)
・おそらく、余り抵抗はないと思う。定員が十分に余っている場合には大学側から断ることはない。免許状更新講習を開設するための認定を受けて開講しているので、定員が充足するまでは引き受ける。

・本学もまず問題ないと思う。受講したいという希望があれば定員までは確実に受け入れ可能。

・本学でも座席があれば問題ないと思う。ただ、大学側は受講申込者が本当に免許状を持っているかどうかの確認ができないので、なりすまし受講者を防げるのか等の心配はある。

・新免許状の授与を受ける場合、所要資格を得て10年以上経過すると、免許状更新講習を受講してからでないと免許状の授与を受けることができない制度となっている。この場合、本県では講師登録をした上で免許状更新講習を受講し、免許状の授与申請をしていただくが、免許状の授与を受けるために、免許状を持っていない者を講師登録するのはおかしいという意見がある。


4.修了確認期限や有効期間の満了日の変更

・本県では昨年4名の採用取消し者を出し、一昨年は4名の現職教員が修了確認期限の勘違い等により免許状が失効・失職したこともあり、任用者側で防止策を取っている。静岡県の例と同様に細かな管理をし、修了確認期限の勘違い等による失効を防ぐための取組を行っている。
・公立学校の教員については失効イコール失職ということが十分認識されており、どこの教育委員会においても、修了確認期限の勘違い等による失効が起こらないような対策を行っていると思う。私立は免許状が失効しても免許状が必要とされない職に就くなど 、失効即失職とはならない。
・修了確認期限や有効期間を変更するという案はかなりの混乱が生じると思う。ようやく制度が定着し、修了確認期限の勘違い等による失効が起こらないよう、教育委員会は対策を講じているところなので、もし変更した場合は混乱の方が大きいのではないかと思う。

・デメリットとして挙げられているが、「定着しつつある制度や事務の運用に変更をもたらすため、混乱が予想される」という印象が大きいと思う。定着しつつある制度の中で、失効者を出さないように様々な手当てを行っていく方がよいのではないか。
・本務者も臨時的任用者も年度替わりの任用が通常。学期の節目で教員が変わることで混乱は少ないかもしれないが、生徒にとっては1学期と2学期でどうして先生が違うのかと混乱することに変わりはない。
・免許担当者としては任用手続は免許状の有効期間までしかできない。例えば、4月初めに1年間の任期で採用したくても、辞令上は免許状の期限までである1学期分しか任用期間にできないので、手続が煩雑になったり、2学期からの補充教員をどうするのか考えねばならず、不安定な中で1学期を始めなければいけないことに、問題があると思う。

・現在、運用面が落ち着いてきている状況なので、変更に混乱は生じると思うが、もし変えるのであれば今回がチャンスであるとも思う。しかし今は教育委員会も徹底して防止策を行っているので、それほど変える必要があるとも思わない。

 

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