資料5 これまでの意見

1.「必修講習」のあり方について

・現代的な課題や必修・選択・必修選択の位置付けなどの検討を行う前提として、必修講習及び選択講習の意味をどう考えるか。
・必修講習の内容をどう捉えるのか。教員にとって、「教育の最新事情」とは何かや、共通とは何か、議論する必要がある。特に幼稚園教諭の受講者の中には、内容が小中に中心が置かれていて意味がなかったという意見がある。学校種だけではなく、受講者の30代、40代、50代という年代の違いについても考える必要がある。

・免許状更新講習の目的は、「教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識・技能を身に付けることで、教員が自信と誇りをもって教壇に立ち、社会の尊厳と信頼を得ること」となっている。つまり社会の尊厳と信頼を得ることが教員免許更新制の最終的な目的である。定期的に最新の知識・技能を身に付けることは手段である。したがって、免許状更新講習は必修だけでよいと思う。選択のような内容は任命権者に任せればよい。校種に関係なく必修にしないといけない内容に絞ればよい。社会や保護者の信頼を得るために必要な内容は、教員としての使命感だと思う。保護者が子供を預けるとき、その教員に預けるのではなく、日本の教育システムに預けているのである。公立・私立を問わず、教員には免許状の更新の度に、そのことを思い出して欲しいと思う。教え方の技術や指導方法は任命権者に任せればよい。日本の教育システムの中で、一人の教員として子供と向き合っているということを思い出させて欲しい。日本の教育システムの中で、社会の信頼を得ることが教員免許更新制の目的なら、そのことが更新制の中心となって欲しい。そのような内容を語れる方が講習を行って欲しい。
・大学における受講者のアンケートで好意的な結果が出たからといって満足してはいけない。良い内容の講習を受けているのだから、皆、内容に満足したと答えるはず。だからといってその講習内容が更新制度にふさわしいという訳ではない。講習を受講した教員が信頼を得るに足りるか否かが問題であり、そのために国の制度をどうするのかということである。

・教育委員会の研修でも、これらのジャンルを取り扱って欲しいという希望者は多い。今教員が知りたい内容だからである。しかし、これは免許状更新講習として必要なことなのか。必要だというのであればやればいい。免許状更新講習で行って欲しいのではなく、教員が今知りたい内容だから、という理由で、教育委員会の研修と免許状更新講習の両者で実施するなら、この更新制度の目的は何なのか、という議論になる。受講者に人気があるから免許状更新講習として必要な内容だ、と判断することは出来ないと思う。また、あれもこれもと欲張ってはいけない。

・免許状更新講習は、大学の教員が学校現場の教員を知り、それを教員養成に生かしていくことができるという点で、大学としても有り難い制度。しかし、講習の内容については学校現場の教員のニーズだけではなく、社会からのニーズとのバランスを考えるべき。

・必修領域の「教育政策の動向についての理解」の項目について、先般、国が教育振興基本計画を策定し、それに沿って都道府県・市町村も計画を策定している。将来の日本を担う子供をどう育成したいのか、という政策的なことも含めて、必修領域の中で現場の教員に伝えて欲しい。

・免許状更新講習を改善するにあたり、社会の受け止め方、教員の受け止め方を再度認識する必要がある。10年経験者研修と免許状更新講習の違いの明確さに関わってくる。

・「子ども生活の変化を踏まえた課題」について、これからの子供達はグローバル社会を生きていく中、「社会的・経済的環境の変化に応じたキャリア教育」のように、これからの子供達に身につけて欲しい資質能力に関するものを必修領域の中で実施している割合は17%しかない。また「教育政策の動向についての理解」については、一番低いのは道徳に関連する項目である。一方、教員が一番困っていることに保護者への対応がある。また、教員は法律について疎い面がある。体罰問題などに関する法律などを教員にあらゆる機会を通して伝えるべきである。このようなことについても、各大学の法学部の先生方等の力を借りて講座を実施する、という切り口もあると思う。

・免許状更新講習で何を学ぶのかについて、あまり網羅的に内容を盛り込むのではなく、内容を絞る必要がある。現職研修全体の枠組みの中での免許状更新講習のあり方を考える必要がある。

・必修領域の内容が広がりすぎている。さらに必修領域の中にも選択があるのは問題ではないか。内容を精査して最低限にすべきであり、そうしないと、どの教員にも必要な共通部分が明確にならない。必修領域の中にある選択部分を少なくして、最低限の内容は何かを明確にすべき。それ以外の部分については、ある程度棲み分けをすれば、任命権者の研修の中で行えるものもある。
・「最新の知識・技能」というが、「教育の最新事情」とは何かということを明確にする必要がある。受講する教員も、これは最新か最新でないか、と疑問に思っている。先日、学習指導要領については「最新」の内容ではないのではないかと受講者から意見があった。「最新」の内容についてコンセンサスが得られていないことが課題である。

・必修を絞り込むという話について、松宮委員からは教員の使命感の話があった。これは4領域でいうと「教職についての省察」に絞れば良いのではないかという話かと思うが、この4領域・細目を例に取ると、最低限の部分に絞り込む場合、どの領域を絞ればよいか。

・この4領域については、必修領域とすることはそれなりに妥当かと思う。時間数と必修領域をどこまでにするかという境界線を考慮する必要はあるが、ある程度満遍なく行う必要があるとも思う。ある領域の全ての内容が欠落するのはどうか。また教職についての省察だけというのも、教育の最新事情を行う必修領域の内容としては課題が残る。

・本質論はよく考えないといけない。大学が本質論だけを実施することとなると、座学の講習だけになってしまい、必修領域の評価をさらに下げてしまう。

・選択必修については、開設日程をどのように設定すれば良いのか、また学校種や教科別等、どのような分け方で実施するのか、設定を細かくすると教員のニーズは高くなるが大学側がどこまで対応可能なのか、検討が必要。

・選択必修については免許教科だけではなく、学級担任に必要である道徳や特別活動(学級活動)等の指導力を学べる講習なども必要なのではないか。

・自大学では、今のところ必修領域の講習を幼小と中高に分けている。選択必修について、今後より細かく内容や時間を分けて受講者のニーズに対応するのは良いと思うが、少人数定員の対面講習を提供する大学が6時間に分割した選択必修を実施することになると、必修領域さえ全て受講できずに講座を探し回る人も出てくる恐れがある。対面講習を希望する受講者のためには、近隣の大学で必修領域の受講生を全てカバーできるよう配慮する必要がある。

・現在の必修領域はカバーする領域が広すぎて、教える内容が広く薄くなってしまうことや、全学校種を対象とした共通の内容を設定することが難しいのではないかということで、第1回会議において選択必修という枠を設けることについての提案があった。仮に選択必修を設定した際、必修をどのような考え方でどのような時間配分とするのか等、再度必修領域のあり方について検討する必要がある。

・選択講習については、英語での授業のための講習が開設できたら良いと学内で話しているところ。

・必修領域は受講する者の評価が低い。また、一概には言えないが、教科に関する講習は少し評価が高くなり、さらに教養に関する講習は評価が高い。

・魅力のある講習が多くあれば、教員も学校に戻って教育に生かせる。

・受講生は日程、アクセス、講習内容等、何を重視して講習を選択しているのか、把握・精査する必要がある。

・現場の教員のニーズに応える必要がある。例えば、各大学の事例の中で、発達障害の児童への支援等に関する講習があるが、これは現場の教員にとっては喫緊の課題。一律に指導法などを扱ってもらうと、教員のニーズに応えることになる。
・事後評価結果の「あまり十分ではない」「不十分」との回答で、具体的に何が不十分なのか知りたい。改善を行う切り口になる。

・必修領域の受講者アンケートについて、結果を鵜呑みにはできないが、「Ⅰ 内容の総合的評価」「Ⅱ 最新の知識・技能習得の成果に関する総合的な評価」については、受講者の約85%が十分満足・満足という結果となった。一般に必修領域について否定的な意見が多いが、本校では再研修の機会になったという意見も多い。一方で15%のやや不満足、不満足の存在も忘れてはいけないと考えている。「講習の方法」について不満であるという結果が出たのは、座学の講習だったということのみが問題ではなく、会場が2つあることによる演習への誘導の仕方やグループ分けの問題も要因としてある。また、講師へのアンケート結果でもわかるように、講師も様々な努力をしている。
・自大学の場合は、附属学校の実践演習参加者の評価が非常に高い。実践も理論も得られるし、特別支援学校へ研修に行く機会がある等、色々と勉強でき評価が高くなっているのではないか。

・本校で必修領域を受講した教員にアンケートを取ると、この4つの領域のうち、「子供の変化についての理解」について、もっと内容を深く聞きたい、という意見が多い。また、「学校の内外における連携協力についての理解」については、危機管理やアレルギーの問題を取り上げたので、反応がとても良かった。「教職についての省察」も改めて教職について考えさせられたという意見もあり必要かと思う。学習指導要領については、講習を担当している講師も、全学校種全科目を担当することは難しいので、任命権者の研修に任せても良いのではないかと思う。

・人気のある講習は受講申し込みが殺到し、すぐに定員が埋まってしまう。
・受講を経験し、大学の工夫を感じた。小中高校の受講者が集まって講習を行った際、校種が違う者同士が触れ合う場、話し合う場を作ってもらった。そういう工夫も大切だと思う。

・大学からすると選択必修については、どのような内容の講習を選択必修とするのかを決定することが難しい。今は、教職と教科教育の区分けがはっきりしている。

・自大学はのべ6,000人を越える受講者を受け入れているが、必修講習を担当できる講師は専門分野によって限られてしまうため、制度開始後数年たち、講師に疲弊感が出てきているのが実情。今後は講師の負担を軽減する方法を考えていかなくてはならない。

・自大学の必修講習については、大規模になりすぎないよう、定員110人で20講習開講している。学校教育、心理学、特別支援教育、教科教育、附属学校の教員などが協力し、8人がチームを作って1講習を受け持ち、延べ160人が携わっている。選択講習は120講習開いているが、必修講習に心理学、特別支援教育等の領域を担当する教員を重点配置しているため、心理学や特別支援教育等の選択講習を開講するのが困難な状況になっている。

・人気の選択領域は30分で定員が埋まる。しかし、150講習の開設が限度。必修領域も限度がある。
・制度ができて数年がたち、講師に疲労感がある。特に必修領域は講習数が多く、担当できる講師が限られるため、負担が大きい。
・必修領域は講師の人数が足りないため負担感が大きい。

・必修講習は講師数の制約があるため、数分で定員が埋まってしまう。選択講習は全学体制で人選をしている。
・講習の質については大学の工夫も必要。本学では近隣の教育委員会に受講者の課題意識に関するアンケートを行っており、講習内容に反映している。

・免許状更新講習の目的にマッチさせ、主に必修領域を中心とした講習を実施するとなると、大学がそれに耐えられるだけの体制が取れるのだろうか。本県では22大学にお願いしているが、22大学が同じような講習内容を提供できるのか、担当できる教授や講師はいるのかも課題となる。大学が必修領域として実施できるものはしっかりやりつつ、各々の大学の専門性を生かし、教員の実践が理論付けられる内容が提供できれば、選択領域としてもしっかりやって欲しいと思う。大学の規模や内容をよく吟味しないといけない。

・本校の必修領域の受講者アンケートも、もう少し深く知りたいという意見や、講習を担当した講師からも、もっと深く教えたいといった要望がある。そこで、我々は選択領域としてそれに関する講習を用意している。必修領域の枠の中で、全てを掘り下げて行うことは難しい。選択領域は行わない、ということになればこれらの内容は教育委員会で掘り下げていただく必要があるが、現在のところは選択領域の講習を用意することで対応している。

・キャリア教育や道徳の指導等は学校で行うことなので、任命権者が行う内容かと思う。大学では、大学でしか学べないような専門的な知見を扱って欲しい。このように考えていくと、もっと整理ができるのではないか。

・鹿児島県は教員の1/3が離島に勤務しており、色々な面で割高。10年経験者研修を免許状更新講習として読み替えたり、大きな島では大学に協力いただき講習を開設しているが、全般的に時間・コストがかかる。
・講習を受講した者は満足しており、効果は上がっていると思う。
・教育委員会の免許事務に関する負担が大きい。

・長崎県は離島やへき地に勤務する教員が1割~1割5分存在する。教員の負担を軽減するため、県教育委員会と県下の10大学が協力して、「長崎方式」というシステムを作った。大学にとっては離島での講習実施は確実に赤字であるが、それを本土で実施する講習の黒字で埋め、全体として収支バランスを確保している。
・各教員に対しては、県教育委員会が来年更新講習がある旨を知らせ、校長からも2回知らせる。

・京都府の教育センターはとても緻密な研修計画を立てているが、これをその他の教育委員会に期待するのは難しい。その地域にある大学と役割分担をする等、実態に合わせて検討する必要がある。


2.現職研修と免許状更新講習の整理について

・教員免許更新制、また10年経験者研修で何を求めるのか、整理する必要がある。
・大学教員が講師を行うことの良さ、指導主事の先生が講師を行うことの良さを生かせるシステムを作る必要がある。
・免許状更新講習の目的を突き詰めないと、全ての問題に明確な回答が出ない。現場の教員にとって研修が必要なことは誰も否定しない。大学と都道府県教育委員会の役割を明確にしないと交通整理ができない。長崎は更新制の導入当初から喧々諤々の議論を行った。その結果、免許状更新講習は大学が行うべきと認識し、都道府県教育委員会は、それに協力しましょうとなった。受講者に関する情報等は、全て都道府県教育委員会と共有しており、教員の受講状況等が瞬時に分かるようになっている。

・大学に学びに来たのだ、ということを意識している受講者がいる。大学で講習を行う意味が、講習内容に反映されると良い。例えば大学はアカデミックさを持っており、教育委員会の研修とは違う教育の最新事情や共通内容があるのではないか。
・10年経験者研修は教員育成の観点が中心であるが、免許状更新講習と10年経験者研修とは目的・狙いが違うため、講習内容や方法は異なってくる。2つのバランスや違いを明確にしながら併存できるような仕組みを作る必要があるのではないか。特に私立学校の教員は10年経験者研修を受講できないという問題がある。私立学校には特に中・.高等学校の教員も多いため、これらを考慮しないと、不平等感や国公私を問わず全ての教員が一定水準の研修を共有することができない、という問題が起こる。

・10年経験者研修と免許状更新講習の目的を明確にする必要がある。また個々の教員の経験・キャリアに応じ、教員自身が講習を選択できるような自由度、幅を持たせた研修にすべきである。制度をなくすというのではなく、より発展的に良い形になっていくよう工夫が必要である。

・10年経験者研修と免許状更新講習の連携は、単位の互換ということであればある程度可能ではないかと思う。しかし教員に対する社会的・教育的要請を受けて教育委員会が行う研修と、大学の教官が担当する教職課程の科目としての取り組みや内容は異なる。それぞれ違うスタンスから教員養成に携わっている、このような特徴も尊重すべき。単純に大学のシステムと教育委員会システムを融合すればうまくいくというものではない。基本的には、大学で受けた教職の単位が10年、20年でどう変わったかということに教員自身が注目しながら、目の前の子供達に新たな教育を施さないといけない、ということで免許状更新講習がスタートした。必修領域だけでなく、選択領域も必要であるとの結論に至ったのは、幅広い教養を身に付けつつ、制度的な改正等も意識できる、そのような教員を研修の中で育成すべきと考えたからだと思う。都道府県の研修目的と大学の免許状更新講習の目的は、重なるところもあれば、違うところもあるため、うまく棲み分けする必要があるのではないか。
・当大学で受講した教員の意見では、受講に来るまでは面倒であったが、受講してみたら良かった、という好意的な意見が多かった。大学に赴き、研修を受けたということに関するプラス効果があるというコメントもあった。それぞれの役割分担を行いながら、検討を進めるべきだと思う。

・10年経験者研修と免許状更新講習は狙いが違う。その上で10年経験者研修の対象となっている教員は、学校現場でも要となる教員であり、負担感も大きい。本県では、教育センター等で行う機関研修と自校で行う研修を併せて行っており、免許状更新講習も考慮し研修日数を軽減している。自校研修は年間に割り振って研修を行い、夏季休業中に研修が集中することができるだけないようにしている。このような配慮は行っているが、一方で10年経験者研修の他にも任命者研修として行う研修、さらに市町村は服務監督権者としての研修等もある。10年経験者研修と更新講習は狙いが違うが、重複する内容については更新講習として読み替えができるなど、具体的な議論を行う必要がある。

・10年経験者研修と免許状更新講習は制度や目的が違うが、教員の負担が重いのも現実。本学で受講生に対しアンケートを取ると、負担感について意見が出る。大学でも夏季休業中の講習開設について、何とか工夫が出来ないかと考えているが、最近は大学の授業が夏季休業期間に食い込んできており、7月末までは授業が、8月には補講が入る。一方、8月末になると小・中学校が始まってしまうので、対面講習を開設する期間は8月上旬~お盆過ぎが限界、というのが大学の現状である。

・都道府県でも最新の知識・技能を身につける等の目的を念頭に置いて、研修計画を組んでいる。よって実質的に都道府県の行う研修と教員免許更新制は重複している。本人にとってみれば、免許状更新講習も自分の受ける研修の一つであるが、免許状が失効してしまうという点で、最優先となる。
・内容的には任命権者による研修と変わらないのだから、免許状更新講習を研修で代えられないだろうか。

・免許状更新講習と10年経験者研修の重複がなくなると教員の負担は軽減される。
・現場の教員としては負担もあるが、一方で研鑽もしなければならない。重複するところはなるべく軽減して欲しい。例えば免許状更新講習を受けた者は、10年経験者研修を軽減するという方が現実的ではないかと思う。
・教員としては、スキルアップ、新しい免許状を取得できるようなシステムがあれば良いと思う。新しい免許状を取得したことによって修了確認期限の延期ができるので、そのような環境も必要なのではないかと思う。教員が自分自身のためになる専修免許状の取得を促進できるようなシステムがあれば良い。

・本県では、大学も離島でいくつかの講座を開講しており、その大学の講座を受けている教員もいる。地理的な特性もあることから、柔軟に研修を実施できる状況を提供していくことが必要と考える。また、教育センターや義務教育課の職員を、大学へ准教授として派遣するというような連携も図っている。教育委員会の研修は実践的すぎるため、大学のより専門的な講習を受けたいという声もある。大学と教育委員会が協力していくことが必要。

・中央教育審議会教員養成部会の委員の意見で、免許状更新講習を受講し、判定・評価が出たら、その結果によっては教育委員会に行って研修を受ける、というような意見があったが、これは判定・評価をどのような基準で行うのかが非常に難しいと感じる。

・本県教育センターの職員が全学校に聴取をした中では、免許状更新講習を教育センターの研修に換えて欲しい、という希望が非常に多い。現場の教員の声を踏まえ、できることはないかと考えているが、単位の読み替えや、京都府の研修が免許状更新講習として認定を受ける、というようなことは考えていない。もしそうなると、少ない該当講座に受講者が殺到し、現実的には実施が困難となることが想定されるからである。
・この検討会議は改善策を検討する場なので、具体的な改善策を提案したい。まず、課題は既に出尽くしている。課題は3つあると考えられる。1つ目は、制度の目的と現実の乖離である。目的は違うものの、受ける側からみれば同じ。2つ目は、現職研修との内容の重複である。免許状更新講習で、ニーズを把握し、それに合わせるという方向にいくと選択講習が増えることになる。そうすると任命権者の研修に近づいてしまう。一方、任命権者は教育委員会の研修にアカデミックな内容を入れる研修を増やしており、逆に免許状更新講習に近づいている。これが現状。3つ目は、研修が夏季休業期間に集中していることである。大学が行う更新講習時期を分散させることは現実的ではないので、他の方法で何とかしなければならない。
・結論として、教育委員会で行う研修講座の中に、免許状更新講習として認められるような内容の研修講座を劇的に増やすことができないか。また、免許状更新講習の受講期間である2年間をもっと長くできないか。可能なら、個人的には10年の間に必要な講習を取るのが良いと考えている。更新から更新の間に必要な講習を受講するような、ポイント制のような仕組みができれば良い。それが無理であれば、せめて受講期間を5年に延ばすことはできないか。このような方法で、現場の教員と大学の事情を考え、折衷案ができないか。

・10年経験者研修と免許状更新講習という2つの制度を調整する上で、講習の受講期間は重要なポイントだと思う。講習の受講期間にもう少し弾力性を持たせることで両者の関係を整理し直せるのではないか、という新たな論点もある。

(講習開設時期の分散)
・8月に免許状更新講習の開設が集中しているが、都道府県や市町村もこの時期に研修を実施している。棲み分けが必要。

・講習を受ける側からは、日程的に苦しいという意見を頻繁に聞く。
・本県では、夏季休業の終了時期が早まっており、期間は実質7月20日~8月20日過ぎの1か月程度で、土日を除けばほぼ20日余り。このうちの5日が免許状更新講習となるが、たとえば、吹奏楽のコンクールの指導をずっと行ってきた教員が、コンクール当日に講習で指揮ができないといった事例がある。スポーツの監督でも同じようなことがある。

・開設時期について、都市部で交通の便が良い大学であれば、土日や冬休み、春休み、夜間などの開設も視野に入れ、時期の分散を促していく必要があると思う。
・時期との関わりでは、講習を連続開講してよいのかという問題がある。集中して受講した方が良い講習もあれば、少し間を空けた方が良いという講習もある。講習の内容面からの検討が必要である。
・翌年の4月から急遽教員に復帰するような方のために、年度後半にもある程度の講習を用意しないといけない。

・本学で平成21年に試行的に講習を実施し、6月や9月にも講習を開設したが、受講生は集まらなかった。受講者アンケートでも8月上旬~中旬に開講して欲しいという声が多い。大学としては8月前半まで授業を行っているため、幅広い時期に開講することは難しい。ハード、建物の面でも、大学が土日に講習を行うことは難しい。教育委員会が実施母体となり、教育センター等で開講していただけたら、11月や12月であっても、大学から必要な教員を派遣する等、協力は可能だと思う。

・7、8月の学校は多忙を極める。そのような状況の中、免許状更新講習と10年経験者研修の中身をどのように調整するのか。私も10年経験者研修の講師をしたが、中身が重複しないよう苦慮した。

・本学では5月の土日から講習を開設しており、講習開設数から見ると受講者の約4割が夏季休業までに受講が終了する。9月は台風があり受講者数も少ない。8月の受講者が多いのは事実。なぜ8月に受講するのかと問うと、免許状更新講習を土日に受講すると、休みを1日潰さないといけないからとのこと。教員の意向を調査すべきだと思う。
・土日に講習を開設すると、大学の講師も大変である。離島に出向く場合、金曜日から移動しないといけない。その場合、大学全体として金曜は勤務したことにする、というような取り決めが必要であるが、免許状更新講習の目的が明確でないとこのような議論もできない。

(eラーニングの活用)
・自大学では全てeラーニングで講習・試験を行っている。正月過ぎから他大学では実施していないから、又は試験が特定日で間に合わないからといった理由での受講が多い。秋口が多く、春夏が1,000人、秋冬が6,000人の受講がある。
・eラーニングはパソコンがないと受講できないが、パソコンがない方の対応に困っている。勤務する学校で受講する場合、セキュリティーが厳しく認証できないことがある。最悪ネットカフェでの受講となる。パソコンで講習を受講できるような環境が各地に欲しい。
・自大学は、修了確認の申請期限間際の受講が多く、修了認定書を速達で送っても間に合わない場合は、大学からメールで修了認定書の画像を教育委員会等に送っておき、後ほど教員から原本を提出してもらう等の対応をする。これを認めてくれる教育委員会はよいが、認めないという教育委員会もある。せっかくeラーニングで受講しながら、飛行機で往復する人もいる。教育委員会においても御理解いただきたいと思う。

・eラーニングは促進していくべきであるが、免許状更新講習の実施も5年目となり、今後は教材開発が必要である。教材開発について資金的な補助やフォローが必要である。

・eラーニングは面白いと思うが、一方で対面講習の効果もあるため、eラーニングだけの受講で良いのかとも思う。

・本学もeラーニングを試みてはいるが、履修認定試験は必ず講師等が出向いて実施している。また、異なった学校種の教員が集まる研修は免許状更新講習しかなく、受講生からは他校種の先生方の考え方が分かった、といった良い意見もあるため、そのような場をどう設定するのかも踏まえ、検討する必要がある。

・金沢大学、愛知教育大学、千歳科学大学、学芸大学の4大学でeラーニング講習を実施している。ただし桜美林大学と異なるところは試験のやり方である。全国5か所(札幌、名古屋、金沢、東京、大阪)で同時に試験を実施している。非常に緊張感が必要で大変である。eラーニングは良い面もあるが、災害等が起こった際の再試験のやり方等、試験の実施方法をよく検討する必要がある。


3.修了認定試験のあり方について

・履修認定試験や評価は、特に必修領域については大学や講習によって様々な形式があり、不平等感があると教育委員会から指摘されている。また、学んですぐに試験を受ける現在の方式が良いかどうか。

・履修認定試験や評価のやり方は各大学で全く異なる。対面式の講習とeラーニングでも異なっている。対面式の講習だと多様な試験が可能であるが、eラーニングは択一式にならざるを得ない。履修認定試験を講習の直後に実施することは妥当なのか、それでいいという評価もあるが、学んだ内容を自分の中でじっくり考える暇がないまま試験を受けるのは教員にとってストレスだろうし、免許状更新講習の趣旨に鑑み、妥当なのかという意見もある。試験ではなく、講習受講後に一定期間をおいて、講習で何を学んだのかや講習の効果等について報告書を作成・提出するというような方法等が考えられないか等、色々な意見がある。

・修了認定試験は受講者にとって最大の関心。出題内容や形式を問い合わせてくる受講者もいる。ある程度、基準等を検討する必要があるのではないか。基本的な良質の試験問題が持続されていかないと、免許状更新講習の継続にも関わる。
・履修認定試験の試験問題は、原則として公開にすべきではないかという意見もある。広く関係者の関心を集めることで、履修認定試験の質向上にもつながる。
・大前提として、免許状更新講習で何を狙うのかを明確にすべき。それによって履修認定試験の内容や形式等が決まってくる。

・大学としても履修認定試験の方法はなかなか良い案が浮かばない。数時間の講習・演習の受講で何を図るのか、試験を実施している我々も苦しい。その一方で、試験を行わずに、その講習が効果的であったと言い得るのか。我々のジレンマでもある。私の場合は、講習のポイントを理解しているのか、講習後に試験を行って確かめるという方法しか思い付かない。どこかで評価をしないと講習の意味がない。しかしレポート等の形式にして、大学教員がそれを採点するのは、負担が大きい。

・講習を修了しても、試験の出来不出来は個人によって差があり、本人に足りなかった部分をどのように還元し、資質向上につなげていくかが課題。

・本学では担当講師がA~Fの6段階評価を行っているが、履修証明書では合否のみを記している。「試験」という言葉が教員に大きなストレスを与えているので、「効果測定」という言い方に変えた方が良いのではないかという意見もある。
・履修証明書は早く送付したいが、受講者の人数が多いため、本学では10月初旬の送付となってしまう。

・6段階評価を行っているとのことだが、本人から開示請求が来たらどのように対応しているのか。

・これまではそのような事例はないが、開示請求があったら基本的に開示することになると思う。

・履修認定試験で不合格になった場合、その後の措置やアフターケアはあるのか。もし不合格になった場合、別の講習を受けないといけない。そうすると申請に間に合わないかもしれない。教員にとっては非常に重要な問題。大学で措置を行っている事例があれば教えて欲しい。

・本学では体調不良等の理由で受講を中止し、不合格になったというような事例があるが、その場合も本人の問題であるため、当事者で対応していただく。
・試験に落ちた人は次の講習を受けないといけないので、試験の結果の通知は早く行う必要がある。
・履修証明書の送付は早い方が良い。受講者も困っている。今年度から本学では8月中に本人へ結果を送付することとし、学内手続きもそれを踏まえて行っている。

・履修証明書の送付を早くするのはもっともであるが、申請期限間近に免許状更新講習を受講し、その結果不合格となったら困るじゃないか、と大学に救済措置を求められても困る。そもそも自分の生活や職業に関わる決まりがあり、それについて自分なりにどう対処していくかは、教員自身が前もって計画を立てるべきであり、教員は生徒に対し、いつもそのように指導しているのではないのか。「『自律』できる先生」が免許状更新講習の目的ではないかとも思う。大学に「駆け込み受講」という想定までさせて欲しくない。その代わり、大学も可能な限り色々な会場や期間に講習を開設する努力をするので、お互いが歩み寄った制度設計にして欲しいと思う。

・申請期限間近に受講した等のケースは本人の責任であるが、本学では、急遽新たに教員として採用が決まった方が、早急に講習を受講しなければならず、駆け込んで来るという状況が多い。このような方への対応が課題かと思う。

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