教員免許更新制度の改善に係る検討会議(第5回) 議事要旨

1.日時

平成25年12月13日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省東館15階15F1会議室

3.議事要旨

【出席者】 内田委員、◎小川委員、片平委員、中庭委員、橋本委員、濱本委員、原之園委員、本郷委員、松宮委員、森山委員 ※◎印は主査
(文部科学省関係者)
藤原大臣官房審議官、髙口教職員課長、小谷教員免許企画室長 他

【議題】
・「免許状更新講習の改善について(中間取りまとめ)案」について
・その他

【議事】
○事務局から資料2「教員免許更新制度の改善について(中間取りまとめ)案」の説明の後、中間取りまとめ案の「第1章 現代的な諸課題に対応できる免許状更新講習に係る枠組み・内容の改善について」及び「第2章 現職研修と免許状更新講習の関係の整理について」の2点に分けて意見交換を行った。

各委員の主な発言は以下のとおり。

●「教員免許更新制度の改善について(中間取りまとめ)案」

第1章 現代的な諸課題に対応できる免許状更新講習に係る枠組み・内容の改善について
第1節「必修領域」の見直しと「選択必修領域」の導入
<意見交換>
・6ページ「(2)各領域の時間数の在り方」について、事務局から最終的には「案2」の方法で実施するが、当面は「案1」の方法で進めると説明があった。
かつての学習指導要領では「総合的な学習の時間」や選択教科の時間数について、幅を持たせた時間設定をしていた。免許状更新講習における選択必修領域も同様に、例えば最初から6~12時間の時間配分とし、選択領域についても12~18時間の範囲で幅を持たせた時間設定をするという運用があってもよいのではないか。
大学が開設する講習の内容によるが、選択必修領域について、幅を持たせた時間数を設定した方が、大学側の自由度を高めることができるため、よいのではないか。

・選択必修領域の時間設定方法について意見があったが、各委員の意見を伺いたい。

・受講生の立場からすると、選択必修領域を複数受講したいという希望が多いと考えられる。選択必修領域を複数受講でき、その設定時間以上に受講した講習は選択領域に充てることができるとした方がよいのではないか。

・選択必修領域の時間数について、6~12時間の幅を持たせた時間設定をしなくてもよい、ということか。

・受講希望者がインターネットで受講申し込みをする際に、不合格になったときの場合を想定して、余分に受講申込みを行うことが多い。受講者が選択必修領域の複数受講を希望した場合の意見である。

・時間数は明確にした方がよい。選択必修領域の選択肢にもよると思うが、受講者の立場からすれば、時間数は6時間と明確にした方が分かりやすいのではないか。
・具体例として記述されている選択必修領域の事項には、現在それぞれの大学が開設しているテーマと関連する内容が含まれている。実際に講習を開設したり、運用体制等については各大学で課題もあり、選択領域で開設している講習を選択必修領域の講習としてそのまま開設できるわけではないが、具体例のテーマを見る限り、選択必修の領域として開設することは可能であると考える。

・免許状更新講習を開設する大学側の意見を伺いたい。

・制度を変えるということと、内容を充実させるということを両立させなければならない。必修領域は受講者数が多い。本学では必修領域の受講者の上限を100名に設定しているが、必修領域はどうしても講義形式の講習となる。内容を充実させるためには受講者同士が議論を行うような内容を講習に盛り込むことが必要となるが、その場合、受講者はできるだけ少ない方がよい。
選択必修領域の講習についても必修領域と同様に多人数で受ける講習となることが想定されるが、必修領域と選択必修領域の18時間分が講義形式となった場合、受講者にとって良い仕組みといえるのか疑問である。また、選択必修領域の講習は大学が開設するが、選択必修領域の内容によっては講習を担当できる教員を確保することに苦労すると思う。そのため、いきなり12時間を開設するのは難しい印象がある。
受講者の側からも必修領域と選択必修領域の18時間を講義形式で受講するのは負担となる印象がある。開設者としても、講習を充実させるという観点からも、選択必修領域は6時間から始める方がよいのではないか。

・選択必修領域は必要に応じて学んでいただきたい内容であるため、増やしていくのが望ましい。大学の都合もあり、課題もたくさんあると思うが、6~12時間の幅で選択必修領域の講習を受講できるようにするのがよいのではないか。

・受講者の側からすると、選択の幅が広い方がよいと思う。しかし、受講者は必要以上に多くの講習の受講申込みをする傾向があるため、キャンセル待ちが発生する。講習に空きが出るとキャンセル待ちの受講希望者に連絡して受講の手続きを行うため、開設者側の事務的な負担となっている。選択必修領域の講習が増えた場合、十分な対応ができるか不安である。
・制度・システム的に6~12時間と設定するのは難しいのではないか。内容面では、選択必修領域について全ての内容を開設できる大学もあれば、一部しか開設できない大学もあると思う。

・教育委員会の立場から述べると、本県では最近採用者数が多い。講習の内容を充実させるため、少人数を対象とした講習もあるが、選択必修領域の時間数が段階的に増え、受講者が増加した場合、全国の講習数で全ての免許状更新講習の受講希望者を収容することが可能なのか不安である。受講者の増加をシミュレーションしておく必要があるのではないか。

・選択必修領域の講習が追加される場合、1年ほどの準備期間があれば対応できるので、開設自体は可能。
・選択必修領域の時間数について、6~12時間と幅を持たせた場合、本学の受講者を想定すると、混乱を招く恐れがある。開設者の側からすると、当初は選択必修領域6時間で実施し、12時間に移行する方がシステムとして運用しやすいのではないか。

・免許状更新講習は大学が中心となって開設しているので、大学側の実施しやすい方法がよいと思う。ただし、教育委員会の立場からすると、6時間から12時間に移行した場合、受講者からの問い合わせが教育委員会に殺到することが考えられるので、最初から6~12時間の幅を持たせていてもよいとも思う。

・いくつか意見を伺ったが、検討会議としての発信は明確にしておいた方がよいと思う。「案1」で慎重にスタートし、徐々に「案2」に移行する方がよいのではないか。開設者である大学の事務負担等を考えると慎重にすべきではないかと思うが、事務局の意見を伺いたい。

・免許状更新講習を受講した方に対し、大学は「免許状更新講習修了(履修)証明書」を発行するが、選択必修領域を設けると、この証明書にも選択必修領域の欄が追加される形になる。選択必修領域の時間数を6~12時間とすると、受講生が受講した大学によって証明時間が異なるため、制度的には難しいのではないか。

・「案1」でよいと思うが、受講者が選択必修領域を複数受講することを希望する場合、どのような対応とするのか決めておいた方がよい。

・運用上は問題がないのか。

・検討が必要であるが、1つの講習を6時間と仮定した場合、選択必修領域の講習を3つ受講し、余分に受講した分を選択領域の講習に読み替えてほしいという要望が出てくることは考えられる。ただし、選択領域に読み替える予定で選択必修領域の受講を認めると、選択必修領域の講習を受講しなければならない人が受講できなくなる可能性がある。運用上認めるにしても、大学に御協力いただき、受講申込み期間のうち、ある期間は選択必修領域の講習を受講しなければならない人のための期間とし、残りの期間にそれ以外の受講希望者を追加で募集するというような工夫をしないと難しいと思う。

・選択必修領域の複数受講を希望する受講者への対応について、各大学に運用上の工夫をお願いする方法と、想定される事案として今回の取りまとめ案の中に運用上の留意事項を記述する方法があるが、事務局の考えを伺いたい。

・参考までに申し上げると、免許状更新講習を1年目に受講する方と2年目に受講する方がいる。ある大学では2年目に受講する方の募集期間を先に設定して、その期間終了後に1年目に受講する方の受付を開始するという例がある。このような取り扱いが可能かどうかは大学の規模によると考えられる。なお、取りまとめ案に留意事項として記述することは可能ではある。

・今回の取りまとめ案には記述せず、制度がスタートする際に、文部科学省から通知等により大学での対応を依頼する方がよいと思う。

・インターネットで免許状更新講習の受講の受付を行う場合、受講の制限をかけるシステム作りに時間と労力がかかるので、大学の対応方針がある程度決まっている方が作業は進めやすい。

・選択必修領域の講習を複数受講希望する受講者の問題もあるので、やはり「案1」がよいと考える。

第2節 修了認定試験と修了認定手続きの改善
<意見交換>
・ 基本的には、現状の修了認定試験の在り方を土台にしつつ、修了認定試験の質を担保する仕組みとして、大学が修了認定試験の問題内容をチェックするために作問委員会を設ける等の努力をしていただくようお願いすることが中心になると思うが、意見を伺いたい。

・インターネットを活用した免許状更新講習において、修了認定試験をインターネットで行うことができればよいが、本学を含めたいくつかの大学で実施しているインターネットを活用した免許状更新講習は、修了認定試験を対面式で行う。インターネットを活用した免許状更新講習は全国各地に受講者がいるため、対面式となると地方から来る方も多い。本学では台風等により修了認定試験が実施できなかった場合、予備日をどうするのか等検討しているが、試験そのものが中止となった場合、同規模の試験を別の日に実施しようとすると会場や人員の確保が難しい。インターネットを活用した免許状更新講習を普及させるのであれば、修了認定試験を簡略化しないと大変。今回の取りまとめ案では記述する必要はないが、考えておく必要はある。

・本学でも予備日を設けている。インターネットを活用した免許状更新講習を実施する大学には、修了認定試験において苦労があると思う。

第2章 現職研修と免許状更新講習の関係の整理について

・受講者の利便性向上のために、インターネット等を活用した免許状更新講習の拡充を図ることは重要であるが、それだけでは不十分である。通学して講習を受講することを通して、受講者が他校種の教員等と実際に議論し、新しい視点を得る側面もある。インターネット等を活用した講習でも、そういった面について考えていくべきではないか。
・インターネット等を活用した免許状更新講習であれば、一度教材を作成すれば、それを複数回使用することができるので作成者側の労力は減らせる。しかし、研修を通してコミュニケーションの重要性を伝えることや、現職研修とは違った形で充実させるという意味では、対面式での講習もまた重要である。

・他校種の教員等と議論する場については、教育委員会が行う経年研修等もある。免許状更新講習にその機会を求めなければ、他校種の教員等と議論する機会がないというわけではない。

・研修によってテーマの設定方法等は違う。免許状更新講習の今後の充実を図るためには、他にも似たような研修内容があるから免許状更新講習においてはしなくてよい、ということにはならない。

・実際に講習を行った立場としては、受講者がどのような問題意識を持って講習に臨んでいるのかは、対面式の講習でなければ伝わらないと思う。学校現場の問題点を浮き彫りにするという意味で、免許状更新講習は重要な機会となり得る。よって、インターネット等を利用した講習と対面式の講習の良い面をうまく取り入れたようなシステムを目指すべきである。

・インターネット等の活用拡充は、あくまでも通学による受講が難しい方の状況を改善するためという文脈での議論であり、インターネット等を利用した免許更新制度を構築する、というような趣旨ではない。両者のバランスが取れたものを考えたい。

・現職研修を免許状更新講習に読み替えている立場としては、もし突然に現職研修をなくすということになると負担が大きい。経過措置を設ける等、これまでの実績・ノウハウを生かせる方法を検討できればと思う。
・eラーニングによる免許状更新講習の実施について、趣旨としては理解できるが、すぐに導入するのは難しいと思う。

(中間取りまとめ案全体を通じて)

・8月に免許状更新講習が集中している件について、秋にもある程度の規模で免許状更新講習を開設できないか。大学では秋から冬にかけては試験などの関係で忙しく、難しい面はあると思うが、教育委員会と調整する等、方法はあるのではないか。

・現職研修との関係において言えば、免許状更新講習の実施に当たり、開設大学は都道府県教育委員会とよく相談すべきである。両者が互いにカバーする領域を確認し合うことが重要である。都道府県教育委員会の実務担当者を大学に招いて免許状更新講習を実施している現状に鑑みれば、今後、両者の連携をより深めていくような方向性を示すことが不可欠である。

・夏に免許状更新講習が集中しているという問題に関して、本学では10月に免許状更新講習を開設しており、台風接近のために講座開講を中止するかどうかの判断に迫られたことがあった。結果的に開講したが、中止していれば次回開講は12月末となるところだった。約200名の受講希望者のうち、約60名以上の方が受講義務期間の2年目に当たっていた。受講後の事務手続きの期間を考えると、できる限り1年目に受講するよう指導することが望ましい。
・大学と都道府県教育委員会の連携という面では、本学では推進室を設置の上、県教育委員会と意見交換を行う等の連携を図っている。

・大学と教育委員会の連携は重要であるが、一律に両者のカバーする領域を線引きするのは難しいと思う。教育委員会において行われる研修は指導法の改善等の現場で直面している教育的課題の解決を中心とした内容であり、大学の免許状更新講習は担当講師の高い見識に基づいた内容であるため、両者が同じテーマで研修・講習を行ったとしても、大きな違いがある。この違いが明確になると、受講者にとって免許状更新講習を受講した後の満足感が増すのではないか。
・免許状更新講習の中で他校種の教員等と議論をするのは良いことであり、互いの良い面を研修の中に活かしていこうという視点は重要である。そうでなければ、せっかく講習を受けても、現場に講習の成果を還元する、あるいは自身の資質・能力を高めるという結果につながらない恐れがある。

・大学と教育委員会との連携については、様々な都道府県から受講生が訪れることを考えると、実際には難しい。両者がそれぞれの課題に応じた講習、研修を行うことが現実的である。また、特に東京都は多くの大学で免許状更新講習が開講されているため、大学間の連携も現実的には難しい。互いに連絡を取り合うことは重要であるが、免許状更新講習はそれぞれの大学で責任を持って行うべきではないか。

・都道府県教育委員会による研修は各県でどれほど違いがあるのか。それほど大きな違いはないように聞いているが、都道府県教育委員会が行う研修についての詳しい情報は大学には入らない。各講座の受講予定人数などの情報を交換し合い、連携を深めることで、互いに留意して欲しい事項なども伝えていけると思う。

・制度改善の方向性については、おおむね御了解いただけたと思う。運用面での工夫・配慮等については各委員から様々な意見が出たところであるが、これを今回の取りまとめ案にどのように反映させていくかについては、事務局と相談の上、主査一任でまとめていきたいと思うが、それでよいか。

(委員から了承)

・まとめていただくことに異論はないが、選択必修領域の具体例をとりまとめ案に記述するならば、項目をある程度詰めておく必要があるのではないか。

・選択必修領域として取り上げる事項については、現在記述しているものがそのまま確定というわけではなく、事務局から各方面と意見交換した上で具体化するという認識であるが、それでよいか。

・それについては各界の意見を聞き、必要な調査を行う予定である。この調査結果を踏まえて、再度当検討会議において議論いただき、最終的にまとめていきたいと思う。

(了)

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初等中等教育局教職員課