教員免許更新制度の改善に係る検討会議(第3回) 議事要旨

1.日時

平成25年10月23日(火曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省東館5階5F3会議室

3.議事要旨

【出席者】内田委員、◎小川委員、中庭委員、橋本委員、濱本委員、原之園委員、本郷委員、松宮委員、森山委員 (欠席:片平委員) ※◎印は主査 
(文部科学省関係者)
前川初等中等教育局長、藤原大臣官房審議官、髙口教職員課長、小谷教員免許企画室長 他

【議題】
・前回までの検討について
・免許状更新講習の開設時期の分散やeラーニングの活用について
・修了認定試験のあり方について
・その他

【議事】
○初めに、千葉県教育委員会 内田委員、埼玉県教育委員会 濱本委員、桜美林大学 本郷委員の3名から事例発表を行い、事務局から資料2の説明の後、1つ目の検討事項である「免許状更新講習の開設時期の分散やeラーニングの活用について」について、意見交換を行った。
その後、事務局から資料3について説明の後、2つ目の検討事項である「修了認定試験のあり方について」について、意見交換を行った。

各委員の事例発表及び主な発言は以下のとおり。

【免許状更新講習の開催時期の分散やeラーニングの活用について】
<事例発表>
●教員免許状更新講習を受講した体験から(資料2-1)
・免許状更新講習を受講した立場から発表する。昨年度は小学校教諭で6年生の担任であり、校務分掌は体育主任・生徒指導主任であった。免許状更新講習では第3グループに属する。さらに平成24年度は10年経験者研修の対象者でもあった。
・免許状更新講習と10年経験者研修の受講状況だが、平成23年度は免許状更新講習について、夏季休業中に必修領域を2日、11月の週休日に選択領域を1日、合わせて3日間受講した。平成24年度は免許状更新講習について、夏季休業中に選択領域を2日間受講した。また、10年経験者研修は夏季休業中に校外研修が6日間あった。
・免許状更新講習の選択領域は、体育主任の立場から必要だと思う内容や、東日本大震災を子供達に伝えたいと思い、自分自身が学校教育へ生かせるような内容を選んだ。10年経験者研修との内容の重複はなかった。夏季休業中は水泳教室、校内研修、市の研修、職員会議、日直等の行事があり、行事がない時も夏休み明けから教材研究を行っている。また中学校・高等学校の教員だと、部活動が毎日ある。24年度の夏季休業中の日程は、かなり厳しいと感じた。
・免許状更新講習の受講申込みや手続き等は、全て各自で行う。受講申込みは平日であったため、受講開始初日は朝6時に申込みを行った。人気の講習はすぐに埋まってしまう。パソコンを持っていないとかパソコンが苦手な先生にとっては、かなり負担だと感じる。勤務をしながら期日までに様々な手続きを行うのは大変。
・受講料は全て自費なので、私が共に受講した者は、講習に対し高い期待感を抱いていた。
・講習内容について大学の工夫を感じた。他校種の教員とのグループ討論や、学校現場へフィードバックできる教材作りを取り入れた講習もあり、受けて良かったと思える講習もあった。しかしビデオばかりを見るような講習もあると聞く。受講者の反応は受講した講習によって異なる。
・講習受講後は大学から履修証明書が届き、平成24年10月頃に学校を通じて県教育委員会に修了確認の申請を行った。管理職から早く手続きするように、と注意喚起があった。免許状を紛失した者は、別途、授与証明書を申請する必要があり、さらに手続きに時間がかかる。更新講習修了確認証明書は、申請してから約3か月で県教育委員会、教育事務所を通じて市教育委員会から届いた。
・大学の受講申込みに関する負担等、改善できるところは改善して欲しい。

●埼玉県教育委員会における取組事例(資料2-2)
・埼玉県は63市町村からなる。都市部や過疎部、山間部もあり日本を象徴したような県である。63市町村があるということは、服務監督権者は63あるということであり、それぞれが独自の研修を実施している。
・本務教員数は約4万4千人。県内に4つの教育事務所を設け、きめ細かな教育行政を行っている。教員免許更新制の対象者は、第3グループ(修了確認期限が平成24年度末)で4,257人。毎年4,100~4,200人で推移している。免許状更新講習の修了者は大体3,300~3,500人で推移している。
・夏季休業中の県としての研修は、例えば、県内の全小中高校対象の研修として、教育課程の研究協議等を毎年実施しており、小中学校では、4つの教育事務所で地区別に開催している。
・10年経験者研修は、本県では教育センター等研修を年間11日間としており、夏季休業中に9日間実施している。8月9日までに10年経験者研修関連の日程が組まれており、12日からの週には研修はない。また、本県では夏季休業期間を短縮している市町村があるため、8月最終週は研修を組んでいない。
・免許状更新講習は本県内では22大学が開講している。うち2大学は通信教育等で、資料では残りの20大学の開講日程を示した。これを見ると、8月12日の週は開講されておらず、8月最終週は1つの大学を除き開講していない。任命権者が行う研修、10年経験者研修、免許状更新講習はかなり重なっている現状である。
・夏季休業中に市町村教育委員会では2年次~4年次研修(教職研修)等を実施している。また、県と連携をしながら、初任者研修、5年経験者研修の一部も実施している。その他にも、県として環境教育や生徒指導、人権教育等の研修もある。
・夏季休業中に林間学校を実施している学校もあり、実施学校数は小学校で711校中397校、中学校で364校中22校である。
・学校現場への影響としては、1つ目は夏季休業中に研修が集中していること。また、10年経験者研修該当の先生方は、学校現場でも要になることが多く、研修の指導者等として招聘されることもある。2つ目は夏季休業中にはプール指導や部活動、補充指導等の学校の行事もあり、研修との日程調整が難しいこと。3つ目はこのような状況の中で、10年経験者研修に該当する先生が夏季休暇を取りにくい状況にあること。4つ目は、各学校では校内研修等を充実させているが、全員が参加できる日程調整が難しいこと。一方、教育センターが実施している専門研修も、46講座中29講座は夏季休業中に実施している。
・本県の取り組みとして、10年経験者研修の教育センター等研修を5日間減らした。また、免許状の失効者を出さないよう、校長会、教頭会、市町村の教育長が集まる会議等で免許講習等について周知徹底している。受講対象者の状況について年2回の調査を実施している。また、本県では大学との連携会議を設け、その中で調査結果等を情報提供している。教員の講習受講や手続き状況を把握するため、修了確認の申請書等を学校及び市町村がまとめて県に提出する集中受付期間を設けている。また、円滑な受講促進のため、様々な情報をホームページで提供している。

【質疑応答】
・申請の集中受付期間の話があったが、非常勤職員等も含めて行っているのか。
・基本的に本務者であるが、非常勤職員等も含めて把握して欲しいと伝えている。

・資料2-2の3ページを見ると、免許状更新講習の開設時期は7月下旬、8月上旬、下旬の3区分に分散して開催されているが、これは県が大学に要請をし、開設時期の調整を行っているのか。また、各区分の受講者数を教えて欲しい。
・受講者の意向等の情報提供は行っているが、大学と県で開催時期の調整等は行っていない。この区分ごとの受講者数は把握していない。

●桜美林大学eラーニングによる教員免許状更新講習(資料2-3)
・桜美林大学はeラーニングを利用した講習を実施している。本講習における本人確認の方法は、現職教員については申込書に添付した証明写真に所属長の割り印を押したものを送付していただき、大学側がスキャナで取り込みサーバに登録する。現職教員以外は運転免許証やパスポートの写真付き身分証明書を利用する。大学からWEBカメラとヘッドフォンを貸し出し、IDとUSBのシリアル番号を紐付け、サーバ上の写真とWEBカメラの本人映像を比較し、本人確認を行う。その後、音声をサーバ登録する。受講時に声紋が一致すれば、受講可能となる。
・オンデマンド方式のため、24時間いつでも何度でも受講可能である。最短で3日で修了証明書を送ったこともある。
・試験は番号選択式である。システム的には自由記述やレポート提出等も可能であるが、本人確認ができない。
・本学は大都市からの受講者数が多いが、概ね全国に散らばっている。月別の申込確定者数は他大学と異なり、10月~1月の受講者数が全体の45%を占めている。他大学の対面講習が満員となり、他に受講できる講習がない方が秋口から本学へ受講申込みをしているという状況が窺える。
・本学では修了認定試験を受けると即座に合否が出るため、WEBカメラを返却いただいた次の日に修了(履修)証明書を本人へ送付できる。よって月別履修証明書発行数を見ると講習が終了した時期の傾向が掴めるが、修了(履修)証明書の発行数は申請期限間際である1月が最も多い。さらに2月から4月にも修了(履修)証明書を発行しており、これは2通りの受講者が考えられる。受講期間が1年目の方は特に問題はないが、受講期間が2年目の方は、すでに申請期限を過ぎており、免許状が失効している可能性がある方である。
・講習の料金設定に関するアンケートでは、高すぎるという声が多いが、WEBカメラや履修証明書の送料を含んで1時間当たり1,500円と設定している。対面講習と違って交通費もかからないので、妥当な料金設定かと考えている。
・eラーニングの問題点としては、受講にはパソコンとインターネット環境が必要であるが、パソコンを持っていない方の対応に苦慮する。最悪ネットカフェで受講してもらったこともある。また、公的施設のセキュリティが厳しく、受講できない場合がある。申請期限直前の1月31日に受講を終えた方の対応として、修了証明書を画像で教育委員会へ送付することについて、教育委員会も便宜を図っていただきたい。

<意見交換>
・開設時期について、都市部で交通の便が良い大学であれば、土日や冬休み、春休み、夜間などの開設も視野に入れ、時期の分散を促していく必要があると思う。
・時期との関わりでは、講習を連続開講して良いのかという問題がある。集中して受講した方が良い講習もあれば、少し間を空けた方が良いという講習もある。講習の内容面からの検討が必要である。
・翌年の4月から急遽教員に復帰するような方のために、年度後半にもある程度の講習を用意しないといけない。
・eラーニングは促進していくべきであるが、免許状更新講習の実施も5年目となり、今後は教材開発が必要である。教材開発について資金的な補助やフォローが必要である。

・本学で平成21年に試行的に講習を実施し、6月や9月にも講習を開設したが、受講生は集まらなかった。受講者アンケートでも8月上旬~中旬に開講して欲しいという声が多い。大学としては8月前半まで授業を行っているため、幅広い時期に開講することは難しい。ハード、建物の面でも、大学が土日に講習を行うことは難しい。教育委員会が実施母体となり、教育センター等で開講していただけたら、11月や12月であっても、大学から必要な教員を派遣する等、協力は可能だと思う。

・7、8月の学校は多忙を極める。そのような状況の中、免許状更新講習と10年経験者研修の中身をどのように調整するのか。私も10年経験者研修の講師をしたが、中身が重複しないよう苦慮した。
・eラーニングは面白いと思うが、一方で対面講習の効果もあるため、eラーニングだけの受講で良いのかとも思う。

・免許状更新講習の目的を突き詰めないと、全ての問題に明確な回答が出ない。現場の教員にとって研修が必要なことは誰も否定しない。大学と都道府県教育委員会の役割を明確にしないと交通整理ができない。本学は更新制の導入当初から喧々諤々の議論を行った。その結果、免許状更新講習は大学が行うべきと認識し、都道府県教育委員会は、それに協力しましょうとなった。受講者に関する情報等は、すべて都道府県教育委員会と共有しており、教員の受講状況等が瞬時にわかるようになっている。
・本学では5月から土日を使って講習を開設しており、講習開設数から見ると夏季休業までに全体の4割が開かれ、年間受講者の約4割が受けている。9月~10月は台風等のこともあり講習開設は少なくなる。8月は1講習に対する受講者が比較的多くなるので、なぜ8月に受講するのかと問うと、夏季休暇中であれば、学校勤務の代わりに講習を受けることができる(職専免)が、そうでない期間は土日の休みを潰さないといけないからとのことであった。教員の意向も調査すべきだと思う。
・土日に講習を開設すると、大学の講師も大変である。離島に出向く場合、金曜日から移動しないといけない。その場合、大学として金曜日は勤務日とすることが申し合わせにより決まっているが、免許状更新講習の目的が明確でないとこのような議論もできない。
・本学もeラーニングを試みてはいるが、修了認定試験は必ず講師等が出向いて実施しているので人員の配置減にはつながっていない。一方、異なった学校種の教員が集まる研修は免許状更新講習しかなく、受講生からは他校種の先生方の考え方が分かった、といった意見が多く出されている。そのような場をどう保証するのかも踏まえ、検討する必要がある。

・金沢大学、愛知教育大学、千歳科学大学、学芸大学の4大学でeラーニング講習を実施している。ただし桜美林大学と異なるところは試験のやり方である。全国5地区(札幌、名古屋、金沢、東京、大阪)で同時に試験を実施している。入試センター試験同様に、全会場同時に試験を開始するため非常に緊張感が必要で、大変である。eラーニングは良い面もあるが、災害等が起こった際の再試験のやり方等、試験の実施方法をよく検討する必要がある。

【修了認定試験のあり方について】
・修了認定試験や評価のやり方は各大学で全く異なる。対面式の講習とeラーニングでも異なっている。対面式の講習だと多様な試験が可能であるが、eラーニングは知識を問う択一式にならざるを得ない。修了認定試験を講習の直後に実施することは妥当なのか。それでいいという評価もあるが、学んだ内容を自分の中でじっくり考える暇がないまま試験を受けるのは教員にとってストレスだろうし、免許状更新講習の趣旨に鑑み、妥当なのかという意見もある。試験ではなく、講習受講後に一定期間をおいて、講習で何を学んだのか、講習内容を自分の教職生活や実践等の反省の中で整理し考察するような報告書を作成・提出するというような方法等が考えられないか等、色々な意見がある。今後、総括的に議論したい。本日は各大学における修了認定試験実施の実情も踏まえ、検討すべき方向性等についてご意見をいただきたい。

・本学では担当講師がA・B・C・D・Fの5段階評価を行っているが、修了(履修)証明書では合否のみを記している。「試験」という言葉が教員に大きなストレスを与えているので、「効果測定」という言い方に変えた方が良いのではないかという意見もある。
・修了(履修)証明書は早く送付したいが、受講者の人数が多いため、本学では10月初旬の送付となってしまう。

・5段階評価を行っているとのことだが、本人から開示請求が来たらどのように対応しているのか。
・これまではそのような事例はないが、開示請求があったら基本的に開示することになると思う。

・修了認定試験で不合格になった場合、その後の措置やアフターケアはあるのか。もし不合格になった場合、別の講習を受けないといけない。そうすると申請に間に合わないかもしれない。教員にとっては非常に重要な問題。大学で措置を行っている事例があれば教えて欲しい。

・本学では体調不良等の理由で受講を中止し、不合格になったというような事例があるが、その場合も本人の問題であるため、当事者で対応していただく。
・修了認定試験は受講者にとって最大の関心。出題内容や形式を問い合わせてくる受講者もいる。ある程度、基準等を検討する必要があるのではないか。基本的な良質の試験問題が持続されていかないと、免許状更新講習の継続にも関わる。
・修了認定試験の試験問題は、原則として公開にすべきではないかという意見もある。広く関係者の関心を集めることで、修了認定試験の質向上にもつながる。
・修了(履修)証明書の送付は早い方が良い。受講者も困っている。今年度から本学では8月中に本人へ結果を送付することとし、学内手続きもそれを踏まえて行っている。
・大前提として、免許状更新講習で何を狙うのかを明確にすべき。それによって修了認定試験の内容や形式等が決まってくる。

・大学としても修了認定試験の方法はなかなか良い案が浮かばない。数時間の講習・演習の受講で何を測るのか、試験を実施している我々も苦しい。その一方で、試験を行わずに、その講習が効果的であったと言い得るのか、この問いに対する答えも難しい。我々のジレンマでもある。私の場合は、獲得すべき講習内容のポイントを理解しているかどうかについて、講習後に試験を行って確かめている。どこかで評価をしないと講習の意味がないとも考えている。一方、レポート等の形式にして、講習終了後に大学教員がそれを採点するのは、負担が大きい。
・修了(履修)証明書の送付を早くするのはもっともであるが、申請期限間近に免許状更新講習を受講し、その結果不合格となったら困るじゃないか、と大学に救済措置を求められても困る。そもそも自分の生活や職業に関わる決まりがあり、それに対して自分なりにどう対処していくかは、教員自身が前もって計画を立てるべきである。教員は児童・生徒に対し、いつもそのように指導しているのではないのか。「『自律』できる先生」が社会から求められていると思う。大学に「駆け込み受講」という想定までさせて欲しくない。その代わり、大学も可能な限り色々な会場や期間を設定して、講習を開設する努力をするので、大学と県及び教員の三者がお互い歩み寄った制度設計が求められている。

・申請期限間近に受講した等のケースは本人の責任であるが、本学では、急遽新たに教員として採用が決まった方が、早急に講習を受講しなければならず、駆け込んで来るという状況が多い。このような方への対応が課題かと思う。

・今回で検討課題を一通り議論した。次回以降、改めてそれぞれの課題について深めつつ、他の検討課題とも関係付け、色々な角度から検討を行っていくこととする。

(了)

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