資料1 学校図書館担当職員の質の確保を図るための方策について(骨子案)

学校図書館担当職員の質の確保を図るための方策について(骨子案)

 ○ 近年、各地方公共団体において、学校図書館担当職員の配置充実が進められてきている。文部科学省による調査結果において、学校図書館担当職員を配置する小学校は、平成19年度から24年度までの5年間で35.7%から47.8%へ、中学校でも37.1%から48.2%へとそれぞれ増加しており、厳しい財政状況の中でもその必要性が強く認識されていることがうかがえる。

○ 平成24年5月現在、全国の小・中・高等学校における学校図書館担当職員の数は約2万人余に上っており、これは今後も増加していくことが見込まれるが、他方、個々の学校における状況に目を転じると、週当たりの勤務日数や、教員免許、司書教諭資格及び司書資格の保有の状況などについて、それぞれに実態が異なっており一様ではない。

○ また、学校図書館担当職員の中には、各地方公共団体の採用条件によっては学校教育一般や学校図書館の運営・管理に関する専門的な知識を持たずに当該職に就いている者もおり、現状としては、それらについて教示する先輩職員が校内にいないことが多いほか、研修等の取組も十分には整備されていない場合があり、全国的にその資質・能力を育成・担保する環境が整備されているとは言い難い。


(1)教育委員会による取組の充実

○ このような中、平成25年5月に閣議決定された『第三次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画』においては、「地方公共団体は(中略)学校図書館担当職員の更なる配置に努めるとともに、研修の実施など学校図書館担当職員の資質・能力の向上を図るための取組を行うことが期待される」と、地方公共団体による学校図書館担当職員の資質・能力の向上への貢献に期待が寄せられている。

○ こうした実態や背景等を踏まえれば、各教育委員会においては、いかにして学校図書館担当職員の水準を維持し、その資質・能力の向上を図るかについて、それぞれの教育方針や地域の状況を踏まえつつ、効果的かつ現実的な方策を立て、実行していくことが必要と考えられる。

【学校図書館担当職員を対象とした研修】
○ 学校図書館担当職員の資質・能力の向上を図るために地方公共団体が実施することができる具体的な取組として、まずは研修の充実が挙げられる。

○ 市町村教育委員会は公立小・中学校等の設置者として、都道府県教育委員会は公立の高校や特別支援学校等の設置者として、当該学校の学校図書館担当職員を任用する立場にあることから、自らの学校に配置する学校図書館担当職員の資質・能力の向上を通じた業務の効果的・効率的な実施を期するため、意図的・計画的に研修の機会を設定することが求められる。(頁末注:地方公務員法にいう一般職に属する地方公務員の場合、同法第39条第1項により、「研修の機会が与えられなければならない」とされている。)

○ 市町村教育委員会の場合、その規模によっては、学校図書館担当職員を配置していたとしても、その人数規模が集合研修として実施しにくい状況も考えられるため、複数の市町村教育委員会が合同・協力して研修を実施したり、広域自治体である都道府県教育委員会が指導的な立場を発揮して研修機会を設定したりするなどの実施方法・体制の工夫も期待される。

○ 研修の内容については、「3(3)学校図書館担当職員に求められる資質・能力について」において示すとおり、学校図書館の「運営・管理」的な業務に当たるための知識・理解や、児童生徒に対する「教育」的な活動に携わるための学校教育一般に関する知識・理解の2つの分野を基軸に構成することが適当であり、その上で、学校図書館担当職員となる者個人の有する知識・技能等に応じて、両領域が適切なバランスで受講されるよう配慮する必要がある。(3(3)の記述如何により要字句整理)

○ 研修を実効性ある形で実施するためには、研修内容の程度について、初めて学校担当職員として勤務することになった者を対象とした初任者向けの研修、継続的に自己の知識・技能を更新して業務の質を高めていくために必要な研修等、職務経験や能力に応じて設定することが必要となる。

○ また、学校図書館担当職員のみを対象とする研修の企画・実施のほか、学校図書館担当職員が司書教諭等とともに受講できる、広く学校図書館関係教職員を対象とした研修の企画 ・実施は、司書教諭と学校図書館担当職員の業務の相互理解や連携促進に効果が期待できるとともに、学校図書館担当職員が学校教育一般に対する理解を深める観点からも有効であると考えられる。

○ これらの他、学校図書館の運営・管理的な業務に関する内容については、公共図書館と協力し、そのノウハウを活用することも考えらえる。

【学校図書館担当職員を支援するための教育委員会の体制構築】
○ 学校図書館担当職員は各学校に1人の配置であるケースが多く、日常的な疑問や悩みをすぐに相談できる先輩・同僚職員が身近にいない状況にある。その際、日常的な疑問等を相談することができる窓口となる存在を設定することが学校図書館担当職員の業務の質の向上に関して高い効果を発揮する重要な取組となり得る。

○ このため、教育委員会においては、各学校の学校図書館担当職員に対して指導・助言を行うことができる体制を整備することが有効であり、その際は、教育委員会事務局の担当課や教育センターの学校図書館担当の指導主事や支援スタッフがその役割を担うことが期待される。

○ また、近隣の学校に勤務する学校図書館担当職員同士の情報交換や交流の場を設定することも高い効果を有すると考えられるため、教育委員会がそうした場を設けることや、その場を学校図書館を担当する指導主事等のスタッフ、または経験豊かな学校図書館担当職員等がコーディネート 役を担うなどの取組も望まれる。

○ さらに、学校図書館担当職員が日常的に携帯して常時必要に応じて参照することができるような業務の手引やマニュアルを、各教育委員会が学校図書館担当職員に期待する業務の内容に応じて作成することも複数の教育委員会で取り組まれている有効な手段である。また、映像資料により学校図書館担当職員の業務を紹介するという先進的な事例もある。


(2)学校における取組の充実

○ 学校図書館担当職員が日々勤務する学校における日常的な取組の中においても、学校図書館担当職員の資質・能力向上のための種々の取組を盛り込むことが可能である。

○ 学校図書館担当職員が授業に参加・協力するためには各教科等の目標や内容についての知的理解を深めることが不可欠であるのは論を俟たないが、実際の授業を見学することを通じて授業における教員や児童生徒の様子を知ることは、学校における日常的な教育活動の中で取り組むことができ、各教科等の授業展開や児童生徒理解の促進その他学校教育一般に対する理解の促進が期待できる有効な手法である。

○ また、各教科等や生徒指導など各分野の担当教員から日常的に専門的知識の伝達を受ける機会を校内において意識的に設定することや、学校職員として求められる服務についての理解を促すために学校管理職から説明を行うなどの取組も期待される。

○ さらに、校内研修において学校図書館の利活用に関することをテーマに取り上げる場合、その一部について学校図書館担当職員に講師を担当させることにより、当該職員自身の向上にも資することとなるほか、 また、学校単位で自主的に近隣校との連携を図り、他校の学校図書館担当職員との情報交換・交流の場を設定することも考えられる。

○ また、自校だけでなく地域全体として学校図書館担当職員の資質・能力の向上を図っていく観点から、学校図書館担当職員が授業に協力・参画して行う授業を公開授業として、他校の学校図書館図書館担当職員をはじめとする学校図書館関係者の供覧に付する取組も効果が高いと考えられる。


(3)国による取組の充実

○ 国においても、全国的な教育水準の確保のために都道府県教育委員会等に必要な指導・助言を行う立場から、学校図書館担当職員の資質・能力の向上について一定の役割を担っていくことが求められる。

○ 全国的に学校図書館担当職員の配置は増加傾向にあるものの、その活動内容が授業への協力・参画にまでは至っていない学校が多く、未配置の地方公共団体や学校に対してその配置を促す観点からも、学校図書館担当職員が協力・参画した各教科等における授業の事例を、文部科学省が収集して実践事例集を作成し、全国の学校や教育委員会に普及することが有効である。

○ また、学校図書館担当職員の資質・能力の向上も含め、文部科学省において、都道府県・指定都市教育委員会の学校図書館担当指導主事を対象に、国の施策の説明、優れた取組に関する情報提供、研究協議等を行う連絡協議会を定期的に企画・実施することが期待される。

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初等中等教育局児童生徒課