資料2 全国的な学力調査に関する専門家会議(第3回)における意見の整理

1.学校名を明らかにした公表について

(各学校の判断に委ねるべきとの意見)

○ 現行の実施要領どおり、各学校の結果の公表については校長の判断とすべき。教育委員会が公表することによって、公立小・中学校に明確な序列化が出てきてしまうことを懸念。

○ 現在、国が公表する都道府県別の平均正答率についても、マスコミによって順位付けがなされてしまう。

〇 平均点で比較した場合、全国平均自体が上がれば、いくら各教育委員会・学校の努力があっても、成果として現れにくい。成績に一喜一憂してしまうことで、本来の調査の目的である、子供たちの状況を把握し、学校としてどのような教育指導を行うのかということが二番手になってしまう。

○ 現在でも、約7割の学校が何らかの形で公表や説明をしており、これを生かしていくべき。

○ 今回のアンケートの結果によれば、実際に見直しを行った場合、参加しない市町村教育委員会も出てくるおそれがあり、悉皆で実施するという調査のねらいそのものが崩れてしまう可能性があるのではないか。

〇 保護者や地域住民への説明は大事であるが、平均正答率だけで説明すると、数値だけが独り歩きしてしまう。子供の学力は、その学校の努力だけではなくて、いろいろな要因によるものであることに十分配慮しなければいけないが、現在、それを地域の方々に十分御理解頂けるまでにはなっていないのではないか。

(学校の設置者も公表できるようにすべきとの意見)

○ 調査結果を、学校における教育活動や市町村の教育施策の改善につなげることが重要であり、公表するのかどうか、公表の位置付け、公表内容等の全てについて、域内の教育に責任を有する市町村教育委員会が総合的に判断すべき。

○ 子供たちに学力を付けることは、学校だけでは難しく、保護者・地域住民に何が課題であるかを示し、改善に向かって当事者として行動してもらうことが必要。そのため、保護者・地域住民に対してどのように公表するかが一番重要であり、そのためにも、市町村が一定の権限を持つ方が取り組みやすい。

○ 行政の透明性を高めて説明責任を果たすべきであり、原則非公表とするのではなく、市町村教育委員会が各学校の結果を公表できるものとすべき。ただし、公表によって学校教育本来の目標の達成に資することが重要であり、特に教育の対象である児童生徒を傷つけたり、教職員の意欲がそがれたりするような公表の仕方であってはならない。このため、公表の仕方には、配慮事項をきちんと書き込んでおくべき。

2.市町村の結果の公表について

○ 都道府県教育委員会が市町村の結果を公表することとした場合、公表の仕方が複数になり、市町村の結果公表の仕方に支障が出る可能性もある。市町村の結果は、市町村教育委員会だけが公表することができることとするのが適当。

○ 都道府県教育委員会は、市町村立学校の設置者ではないが、市町村教育委員会を指導・助言・援助する立場にあり、設置者としての立場に比べて制約は設けるべきと思うが、ある程度公表することも可能なようにした方がよい。

○ 市町村教育委員会による市町村の結果の公表の実績は低すぎる。もっと結果公表を促すことが必要ではないか。原則公開ということもあってしかるべきではないか。

3.公表する内容に関する留意点

○ 平均正答率のみを公表したり、平均正答率を並べたりするなど、平均正答率をクローズアップさせた公表は弊害が多い。

○ 保護者をはじめとする国民やマスコミに、調査結果は学力の特定の一部分であるという基本的な認識が弱いのではないか。統計的には平均値というのは代表値の一つに過ぎないが、それが独り歩きする姿が見られる。


○ 教育の条件整備は、教育委員会の仕事であり、単に学校別に平均正答率を一覧で示すだけの公表は適当ではなく、教育委員会の責任放棄に近い。具体的な公表の仕方については、施策の成否が分かるような公表や、学校単位での努力が反映されたようなものとすることが重要であり、工夫が求められる。

○ 学校の教科別の平均正答率より、質問紙調査の結果の公表をより推進すべき。学校では、教科指導のみにより学力を上げることには限界があり、学級経営や家庭学習、生活習慣の改善などと総合的に取り組むべきであり、その点に目を向けることが必要。

○ 子供たちの学力の形成には、学校の指導力が大きな要素を占めているが、それだけではなく、社会環境等による要素も大きな影響を及ぼしていることも踏まえる必要がある。

○ 公表において一番大切なのは、様々な関係者と課題や改善策を共有し、前向きに次の行動に移ることができるようにすることである。このため、調査結果だけでなく、例えば、課題や経年変化、改善策をきちんと示した公表内容とする必要がある。

○ 本調査の趣旨からすると、結果公表には、その結果に基づいて教育委員会が講じる改善策が伴っていなければいけない。あまり成果が上がっていない学校について、その学校に教育委員会としてこれだけの支援を行うということもないまま単に公表するのは無責任。

○ 他の教育委員会・学校との比較ではなく、その教育委員会・学校が以前と比べてどのように変わったのかというデータを公表すべき。そうすれば、教育委員会・学校の取組の成果も分かり、序列化にもつながらない。

○ 教育委員会の施策にもPDCAが不可欠である。調査結果を公表するということは、域内の教育に責任を有する教育委員会の教育施策を検証して、課題を明らかにし、それに対する改善策の適否を世に問うという積極的な意義がある。このため、結果の分析や今後の施策の発表をすることが非常に重要。

4.結果の分析の際の留意点

○ 教育委員会において、国から提供されている様々なデータをもっと分析する必要がある。成果が上がっている学校の要因の評価など、各学校における教育指導の改善に資する様々な分析を行うことできる。

○ 学校に、調査結果のデータを読み取り、それをうまく保護者や児童生徒に説明するなど、調査結果を活用するノウハウができていない。教育委員会においてもおそらく同様の状況があり、どのように読み解くか、活用するかというノウハウを高めることが必要。

○ 例えば、域内の学校を学力の状況に応じてABCDの4層に層化した場合に、各層に属する学校の割合やその変化、各層の分散など、各学校の実態を多面的に分析する手法はあり、そのような分析の促進が必要。

5.その他

○ 現状のような相対評価のデータではなく、絶対評価のデータを国が提供すれば、各教育委員会・学校は、全国平均との比較ではなくて、どこが伸びて、どこに課題があるかということが分かりやすくなる。

○ 例えばオーストラリアの学力調査では、学校規模や地域の予算規模等ごとのデータを示しており、自校の現状を把握する物差しが、単に全国の平均値ではないという工夫がされている。そのような取組も参考とし、学校現場の改善に資するような物差しを工夫する必要がある。

○ データの公開によって学校を叱咤激励し、競争を促そうとしても、学校は様々な課題を抱え疲労しており、そのような手法で改善を得ようとすることは無理。それよりも、教育行政からの支援が必要であり、例えば、学力に課題がある学校に、教育委員会や国が特別な予算を講じて、学力向上を図る社会的な教育実験を行ってみてもよいのではないか。

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