育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会(第3回) 議事要旨

1.日時

平成25年2月12日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

中央合同庁舎第7号館 文部科学省 東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 国立高専が育成する資質・能力と到達目標について(市坪誠・独立行政法人国立高等専門学校機構教授より発表)
  2. モデル・コア・カリキュラムとそれに準拠した共用試験について(福田康一郎・社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構副理事長)
  3. その他

4.議事要旨

(1) 市坪誠先生(独立行政法人国立高等専門学校機構教授)より、資料1「国立高専が育成する資質・能力と到達目標」について発表があり、その後、質疑応答が行われた。

【委員】 国立高等専門学校機構(以下「高専機構」という。)の制度的な位置付け等について教えてほしい。

【有識者】 高等専門学校(以下「高専」という。)の設置者として高専機構がある。理事・理事長の下、中期計画や中期目標に基づき運営されている。

【委員】 モデルコアカリキュラムを作成したメンバーはどうなっているか。

【有識者】 高専機構が設置する教育・FD委員会のなかで検討がなされた。この委員会は、高専機構の理事が委員長となり、学校長が構成メンバーになっている。この委員会の下に教育内容・方法の改善検討専門部会を置くとともに、分野ごとに高専の教授を主要メンバーとするカリキュラム検討WGを設け、ここで実際の作業を行った。

【委員】 このカリキュラムは既に実施されているのか。

【有識者】 平成24年度は各高専でモデルコアカリキュラムの導入の検討を行っているところであり、平成26年度から本格的に実施される。

【委員】 学生自身による自己評価の取組や、卒業後も学生自身が伸びていくために学生が自己評価を続けていく仕組みはあるのか。

【有識者】 「技術者が分野共通で備えるべき基礎的能力」や「技術者が備えるべき分野別の専門的能力」、「技術者が備えるべき分野横断的能力」など、技術者としてどのような能力を育成するかをルーブリックで明記したことにより、学生自身が在学中に今の自分の到達度を把握できる。今後、CBTのような共通テストを作成する予定だが、30歳、40歳になっても、技術者としての立ち位置が分かるという意味で使えるのではないかと思う。

【委員】 自分の周りでは、学習意欲が高い学生が高専に入学しているように思うが、実際のところはどうか。学生の意識が高いから、このような取組が機能するのではないか。

【有識者】 ものづくりが好きで、早く技術者になりたい、早く社会に出て役に立ちたいという学生が多いのが高専の特徴である。MIT Committeeが、技術者教育のためには技術者が学生を育成しないと社会で通用しないというレポートを出してから、高等教育の質保証の考えが変わってきた。技術者が学校の中に入り込めるような仕掛けや学生が外に出て学べる仕掛けを通して、教員と技術者とが協働で学生(技術者)を育成するという意識付けをしている。

【委員】 質保証の観点から言うと、企業が高専の取組を理解する必要があるが、企業側にはどのように発信しているのか。

【有識者】 カリキュラム検討WGの特別委員として、企業の技術者に入っていただいている。また、高専ごとに地域産業と密接に産学連携をしているが、高専機構としても、海外インターンシップ制度を推進するなど、PR活動や企業との共同教育を行っている。

【委員】 到達レベルを評価するのに共通テストの導入を検討されているようだが、到達レベルのルーブリックについて、その全てを共通テストで網羅しようとしているのか。また、共通テストの内容としては、ペーパーテストやパフォーマンス課題などがあり得ると思うが、どのようなものをイメージしているか。

【有識者】 全てを網羅的にチェックできるとは思っていないが、CBTやOSCEを参考にすることで、技術者が備えるべき能力として示した10項目については、ある範囲、一つの指標として判断できるのではないかと考えている。パフォーマンスも含めて検討しようと考えている。共通テストについては、PISA型の論述形式のテストも考えている。また、態度・志向性がどのような形で評価できるかを模索している。テストとしては定量的にできるのではないかと考えている。

【委員】 到達レベルについては、ブルーム・タキソノミーを参考にして作成したとのことだが、ブルーム・タキソノミーは知識の扱いが限定されていることが問題視され、現在は改訂版が出ている。改訂版タキソノミーのように、知識と能力を並行して考えることも必要だと思われるが、以前のタキソノミーと同様に知識についてレベル1でとどめて整理した理由を教えて欲しい。
  また、備えるべき能力は何に基づいて抽出されたのか。主体性やリーダーシップのような情意的領域に含まれる内容も備えるべき能力の中に挙がっているが、それと認知的能力のタキソノミーを掛け合わせるのは論理的におかしくないかなと思う面もある。実際にルーブリックを作成する際にお困りになったことはなかったか。

【有識者】 日本の技術者教育には、大学の工学部が作成した分野別の到達目標と、高専が定めたモデルコアカリキュラムの二つの指標がある。両者の違いは、後者にはルーブリックを書き込んだところであるが、これは世界、特にアメリカとの対比を意識したためである。作成に当たっては、BOK2やTuning Texasを参考にして、高専卒業生が技術者として国際的に活躍できるアウトカムとした。
  なお、実際にブルーム・タキソノミーの改訂版を踏まえ、その専門家の意見も聞いたが、検討の過程でブルーム・タキソノミー自体の評価についても様々な意見が出されたところでもあり、高専の学生の実態に合わせつつ、他との比較において我々が目指すべき技術者教育とは何かを表現しようということで、ブルーム・タキソノミーの改訂版は「参考」として掲載しつつ、技術者が備えるべき能力を定めたところである。

【委員】 分野到達目標について、それぞれの分野の項目の中で育てる考える力と、汎用的技能の中で育てる考える力は同じものか、両者の関係について教えていただきたい。また、教育課程のどこで扱うかということについてだが、全ての科目で汎用的な思考力を育てるのか、それとも取り出して教える場面を作るということか。

【有識者】 人間形成に携わる中で、それらは一人の人間を見る角度が違うだけである。実験や部活動などの学校教育や寮生活を通して、様々な角度から学生の課題解決能力を見出すようにしている。

【委員】 カリキュラムは、学生に対してどのように示す予定か。

【有識者】 ホームページや冊子として示している。具体的にはシラバスという形で、学生に具体的に到達目標が示されることになる。

 (2) 福田康一郎先生(社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構副理事長)より、資料2「医学教育改革:問題点と改善の進捗」について発表があり、その後、質疑応答が行われた。

【委員】 現在、医師国家試験は筆記試験であるが、臨床能力を問うような課題を示すことは考えているか。また、OSCEに合格できなかった学生に対してはどのような指導が行われているのか。OSCEを単に総括的評価だけでなく、形式的評価として用いているかを教えていただきたい。

【有識者】 医師国家試験においてOSCEのように態度や技能などの臨床能力を測ることについては、人的・設備的に膨大な資源・経費と労力もかかることから、現時点で厚生労働省は難しいと判断しているようである。OSCEについては6段階評価となっており、「改善可能なレベル」も設定している。

【委員】 例えば、医師が独立する場合には、経営や医療保険制度、レセプトなどの知識も必要であり、大学時代にそのような素養を身に付けることも重要と考えるが、そのようなものもコアカリキュラムに含まれているか。

【有識者】 そのような内容もコアカリキュラムに入っており、「医学・医療と社会」の中で学んでいる。また、診療録の記載なども入っている。臨床実習では、患者さんの診療情報の守秘性を厳重に確保した上で、指導医の監督下と患者の了解を得て電子カルテシステムにアクセスできるように工夫している。経費的に余裕がある大学では学生専用の電子カルテシステムを構築している。

【委員】 訓練によって改善可能な資質・能力と、訓練での改善が困難な適性との見極めについては、どのように考えておられるか。

【有識者】 そのあたりの見極めは、入学時の面接で、可能な限り行うようにしている。同時に、仲間同士でチェックするとともに、学生担任制度をつくってそれを先生がしっかりフォローし入学後の経過を見ていく必要がある。心が病んで治療等が必要な場合もある。OSCEや医療面接における模擬患者さんの印象も参考になる。VTR撮影が必要となる場合もある。

【委員】 コアカリキュラムには強制力がなく、指導方法や評価項目も大学の裁量に任されていると思うが、基礎的・基本的な部分や教養的・汎用的な部分ほど、誰が育成を担うかがはっきりしないのではないかと感じる。その部分についてはどのように考えるか。

【有識者】 大学の教養部が廃止されたとき、教養教育(特に専門基礎教育)と専門教育をどのように組み合わせるかについては、かなりの議論があり、結局、工夫・分担してやらなければならないだろうというようになった。今後の医学教育に当たっては、基礎科学的分野の物理・化学・生物・情報科学や研究・実験の基礎的素養・能力の涵養も必要と考えられるので、しっかりと身に付けてほしい。

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