教職課程の質の保証等に関するワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

平成24年10月16日(火曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省 6F3

3.議題

  1. ワーキンググループの検討スケジュールについて
  2. 専修免許状の取得における実践的科目の必修化について
  3. その他

4.議事録

【高橋座長】  ただ今から第1回教職課程の質の保証等に関するワーキンググループを開催させていただきます。
 それでは、議事に入ります。最初に、ワーキンググループの検討スケジュールについて、事務局より説明をお願いします。
【藤岡教職員課課長補佐】  失礼いたします。資料2を御覧ください。ワーキンググループの検討スケジュールについてでございます。
 本ワーキンググループにつきましては、主に三つのテーマがございます。前回の協力者会議でも御説明いたしましたが、一つ目は、専修免許状に係る実践的科目の必修化についてでございます。二つ目が、教職課程の情報公開についてでございます。三つ目が、教員養成課程のグローバル化対応について、大きくこの三つでございます。この三つにつきまして、全体で4回のワーキンググループを開催して、それぞれ2回ずつ議論を進めてまいりたいと思っております。
 本日、第1回につきましては、専修免許状の実践的科目の必修化について御議論を頂きたいと思っております。第2回といたしましては、引き続いて専修免許に係る2回目の議論、そして情報公開に関する1回目の議論。第3回は11月下旬でございますが、情報公開に関する2回目の議論と、グローバル化に関する1回目の議論。最後、第4回でございますが、12月上旬にグローバル化対応の2回目の議論と、今までの議論を踏まえました全体の報告書案について議論をしていただきたいと思っております。
 飽くまでこれは案でございますので、もちろん議論の進ちょくに応じて、当然、変わり得る可能性はございます。
 なお、机上に出欠の御案内という形で、A4判、1枚で、具体的に2回目から3回目の御日程についてお配りしております。事務局としては、そのような日程を考えておりますが、委員の方の御都合等を勘案して変更もあり得ますが、今のところは、そのような御日程で考えております。
【高橋座長】  ただ今の御説明につきまして、質問がありましたら、どうぞお願いします。
 大体の日程と検討内容ということで、よろしいでしょうか。
 それでは、次に専修免許状の取得における実践的科目の必修化について、事務局より説明をお願いします。
【藤岡教職員課課長補佐】  失礼いたします。専修免許状に係る御議論をするに当たりまして、現在の状況について簡単に御説明を申し上げたいと思います。
 まず、手元の資料3、A4判横のものでございますが、専修免許状取得のための課程認定を受けている大学院等の数についてということで、専修免が取れる大学院、研究科の専攻等の数について整理をしたものでございます。
 1ページ目が幼、小、それから養護教諭や栄養教諭、特別支援学校の状況でございます。
 2ページ目でございますが、こちらが中学校の専修免許状でございます。教科ごとになってございますが、御覧になっていただければ分かりますが、まず国語の次の社会ですね。857校ということ。数学、理科。理科が603校ということで、社会と理科が大変多い状況でございます。また、課程認定を受けている設置形態につきましても、国立だけでなく、私立の数も大変多い状況になっております。
 1枚おめくりいただきまして高校でございますが、先ほどの中学と同様の傾向でございまして、高校であれば、地歴、公民が大変数が多い状況です。公民であれば789校、地歴であれば452校と、そして理科が664校ということで、大変多い状況になっております。また、先ほどと同じように、私立学校も公民であれば半分以上、地歴であれば約半分、理科であれば3割程度を占めている状況でございます。
 今のは専攻等の数でございますが、実際、学生が修得した状況についてということで、資料4でございます。同じくA4判横サイズのものでございますが、実際の大学院の新規修了者の免許状取得状況ということでございます。
 1枚目が学校種ごと、また養護教諭や栄養教諭などにつきまして記載をしているものでございますが、学校種別では、中学校と高校が大変多い状況になっております。中学校であれば合計で4,261人、高校であれば合計で5,592人という状況でございます。また、国立の教員養成系だけでなく、国立の一般研究科、また私立の大学院で取得している方が多い状況でございます。例えば、中学校であれば、国立一般で907人、割合でいけば21%程度、私学は1,512人、割合でいけば35%でございます。高校でございますと、国立一般で約30%、1,681人、私学であれば1,858人ということで33%ということになりまして、中、高では、教員養成系だけでなく、一般研究科、また私学が大変多くを占めているという状況でございます。
 次のページが、中学校の教科別でございます。やはり社会、それから数学、そして理科が多い状況でございます。数学は、先ほど課程認定を受けている専攻等の数では、それほど多ございませんでしたが、人数としては社会と匹敵するぐらいの多さになるということでございます。
 次が技術家庭などでございまして、その次のページでございますが、高校の状況でございます。やはり高校でも、数学や理科が大変多ございまして、数学であれば696人、理科であれば1,000人を超えるという数になっております。
 同じく国立の、やはり教員養成系だけではなく、国立の一般研究科や私学での取得者が多い状況にございます。
 続きまして資料5でございますが、同じく現職教員の免許状の取得状況、保有者の割合でございます。
 幼、小、中、高となるにつきまして、専修免許状の所有率は高くなっておりまして、高校では約22%を超えているというような状況になっております。
 続きまして、資料6-1、6-2でございますが、資料6-1、A4の縦の資料でございますが、これは必要単位数等に関する法令の規定を抜粋したものでございます。規定といたしましては、教育職員免許法ということで、こちらの赤い枠で囲ってある部分があると思います。
 まず、これは高校の例を示しておりますが、一種免許状、大学の学部で取得するものでございますが、教科に関する科目、教職に関する科目、そして教科又は教職に関する科目ということで、それぞれ20単位、23単位、16単位という単位が決まっておりまして、専修免許状を取るに当たりましては、教科に関する科目や教職に関する科目の単位数は同じで、教科又は教職に関する科目の単位数が40単位ということになっております。通常、大学の学部で一種免許状を取りますので、大学院におきまして専修免許状を取る場合は、先ほどのこの赤い枠の40単位から16単位を引いた、その差分の24単位を取得するという必要があるというものでございます。ただ、この単位は教科又は教職に関する科目ということで、ある意味、教職等の内容には特に縛りはかかっていないという状況でございます。
 資料6-2でございますが、具体的に、大学院でどのような単位を取って、専修免許状を取得しているのかというものでございます。一つの例ということで、ある大学の理系の専攻、電子情報工学専攻というところで、数学の専修免許状を取る場合のものでございます。
 この専攻で開講されているのが、この表で掲げられている授業の一覧でございます。この専攻の学生は、この一覧表の中から必要な単位数を取って、大学院を修了することになります。その中で、教科又は教職に関する科目として課程認定を受けているのが、この黄色く塗りつぶしている科目でございます。一般的に教科に関する科目しかないですけど、これが合計で28単位ございますので、この28単位のうち24単位を取ると専修免許状の取得の要件を満たすということになっております。御覧になって分かりますとおり、いわゆる大学院の専門の教科であるものを取得するというような状況になってございます。
 続きまして高校の理科の場合でございます。同じく理系の研究科のある専攻の例でございますが、こちらにつきましても同様のこととなっておりまして、この専攻で開講されているすべての授業が、この一覧に掲げられているものでございまして、その中から黄色い部分の単位を24単位取れば専修免許状が取得できることになっています。内容といたしましては、いわゆる教科に関する科目として非常に専門的な場合、大学院で研究する通常の教科を、科目を取得するというような状況になっているということでございます。学校現場と直結するような、いわゆる教職的な科目はないというような状況になっております。
 続きまして、資料7でございますが、本日御議論いただきます専修免許状の実践的科目につきましては、既に学部段階で教育実習を受けまして、一種免許状を取得している学生に課されるものでございます。そのため、学部の教育実習をもう一回やるということになれば、単に繰り返しをしただけということになってしまいますので、当然ながら大学院レベルの内容とします実践的科目とする必要があると考えております。
 その議論のために、大学の学部段階で教育実習は実際どのようなことをされているのかという一つの例でございます。
 そちらに掲げているのは、一つの附属中学校におきます教育実習でございますが、まずオリエンテーションを行いまして、8月の末から9月にかけまして、約5週間にわたりまして実習をしているというものでございます。
 内容につきましては、もう皆さん、御案内のとおりでもあるかと思いますが、いわゆる授業観察であるとか授業実践、また教材研究ということでございまして、いわゆる授業実践の基礎的・基本的な内容についての実習ということになってございます。
 続きまして、教育実習の課題ということで、資料8でございます。こちら、教員や学校長、教育委員会、大学などを対象にしましたアンケート調査の結果でございますが、教育実習の課題として、様々な関係者が共通して課題だと認識するものにつきましては、やはり実習期間が短いということ、また下から3番目の実習生受入校の負担が大きいというようなことがございます。教育実習につきましても、このような課題がございますので、こういった課題も踏まえて、例えば、期間であるとか、また学校側との連携の方策であるとか、そういったものを議論していただく必要があると考えております。
【高橋座長】  それでは、次に、大学院での実習の状況について、私のほか、田中委員、寺岡委員から資料の提出があります。また、もう一つのワーキンググループの委員でありますが、広島大学の坂越委員からも資料を頂いておりますので、順に説明をさせていただきたいと思います。
 高橋が提出した資料を御覧ください。
 今回、実践的科目の必修化に向けて検討の枠組みということで考えてみたわけですが、中長期的構想として、教員が高度専門職業人として位置付ける、それを一般免許状で保証するという長期的な構想の中で、現行の課題、先ほど御説明いただきましたように、教科又は教職に関する科目が24単位あるというだけで、高度専門職業人たる教員養成について保証できるものかと考えると、やはり今回、当面の改善方策として何が可能かということを考えていかなければならないと考えました。それを考える上で、現行はどうしているのか、学部はどうしているのかということを考えてみたいということで、岡山大学の教育実習について、まとめさせていただきました。
 資料を御覧ください。簡単に説明いたします。
 岡山大学では、教員養成コア・カリキュラムを学習指導力、生徒指導力、コーディネート力、マネジメント力の四つの力で構成される教育実践力をバランスよく育てるということで、ディプロマ・ポリシーを持ってやってまいりましたが、もともと積み上げ方式による教育実習というのを平成12年度からやっております。そこに書いておりますように、1年次に教職への意欲喚起とか、子どもの発達段階の理解ということで観察参加実習をやっておりまして、2年次には特別支援学校を行っております。3年次に主免許の実習をしておりまして、4年次には平成22年度入学生からですが、教職実践演習のフィールドとしての教職実践インターンシップに来年度から取り組む予定にしております。
 2ページでございますが、教職実践演習の導入によって、コア・カリキュラムを改訂した点が2点ありまして、一つは、4年次のところ、2年の一番下のところの図を見ていただければ分かるかと思います。教職実践演習とインターンシップで理論と実践を往還させて、質を保証していく仕組みです。
 それから、3ページの2番目になりますが、教科内容構成をカリキュラム全体で保障するということで、教科教育と教科専門の、特に教科専門の内容論とか各論とか、概論、各論の内容を一定のものにして身に付けていくように、カリキュラム全体で保障するようにしたということが2点目です。
 そして、3点目は、教員になる夢と希望を持たせるとともに、もう一つ大事なことは、教員は専門職であるということを学部時代に身に付けさせるということを考えて教育してまいりました。
 学習指導力と生徒指導力に関しましては、それぞれ下位項目が四つございますが、学習指導というのは、子どもの学習状況の把握力から授業の分析省察力に至るプロセスをしっかり身に付ける。生徒指導力もプロセスで、コーディネートとマネジメントは広がりで身に付けるということを、大学1年次、2年次、3年次、4年次の実習前後で身に付けていくための行動目標を示しております。
 4ページは、中教審の教職実践演習の到達目標を踏まえているということを確認しております。
 5ページでは、そういう学習指導力の構成で、中央教育審議会の到達目標では明示されていないけれども、黒丸のある「学習状況の把握力」であるとか、それから「授業の分析省察力」であるとか、「子どもの発達的特徴を理解する」であるとか、「生活の実態を理解する」であるということが非常に重要であると考えて、だから実習のときに意識して学ばすようにしております。
 コーディネート力では、同僚性を保障する、実習生同士で協働する、あるいは協力者・連携機関を理解する。それからセルフマネジメント力であるとか、学校でのマネジメントを理解するということは必要であると考えています。
 5番目に書いてありますように、私どもは授業と実習との順序性を考えて配置しておりまして、実習を自ら準備していくものと考えております。
 このポートフォリオを使いまして、実習で身に付けたい自己の目標の確認を事前に行い、事後に自分の課題を指導するということで、準備をしているわけでございます。
 6ページを見ていただくと、教育学部ではそうですが、他学部では、そこまではできませんが、しかし、この全学用のポートフォリオをこしらえまして、1年次、2年次、3年次から4年次と学年毎に目標設定をしてやっております。
 その評価でございますが、7ページに実習の自由記述をもとにしています。8ページ、9ページとお開きください。これは実習の事前と事後の自由記述ですね。3年間にわたって、1年次、2年次、3年次実習を、テキスト・マイニング法というので分析をしました。そうすると、最初に、「感性分析(課題意識)」と書いてございますけども、1年次は、附属学校へ4日間、四校園に行っただけですけれども、最初は、1年次では、教員としてふさわしい態度をとりなさいと指導するためか、ふさわしいという理念的な教員像を持っていますが、実習後には、「うまい」とか、「細かい」とか、「いろいろと」とかいう個別の教員像を見るようになっています。
 2年次の特別支援学校での観察参加実習では、事前の「しっかり」から、事後には「様々」とか、「よい」とかいうように、多様性に気が付きます。
 3年次の主免実習になると、事前の課題としては、「適切」とか「十分」という表現をしていますけれども、事後には、「明確だ」とか、「具体的な」とかいうようなことが課題意識として上がってくるという結果を得ました。つまり1年次、2年次、3年次、それぞれの実習の目標に合った意識を持っている結果になりました。3の現象分析では、考えなくてはいけないことを事前に聞いておりまして、事後に考えたことを聞いておりますが、1年次では、事前は先生とか立場ですが、事後は、生徒、様子となります。2年次では、事後はコミュニケーションとか、実習とか実態へ、3年次は、児童から自分の課題である授業とか課題とか力へと考えていくことが変化しています。
 このようにテキスト・マイニングという手法を用いまして、学生の学びを質的な側面から捉えました。事前・事後の学生の学びの違いが認められまして、1年次、2年次、3年次と、積み上げ方式の実習の意義が認められたと思います。要するに、長期にやるのではなくというか、期間だけではなく、そのときの実習の目標に合った実習、その学年に合った実習を考えていくことが必要だと思います。だから大学院における実習においては、学部段階での集中的な教育実習に基づいて何ができるかということを考えていきたいと思います。
 その次、10ページ、11ページですが、要するに、何が足りないのかについて、教科内容を、構成する課題に関して、主免実習のときのアンケート調査と評価をいたしました。
 まとめは12ページのところに書いています。4です。3年次の主免実習修了時には、教科内容の構成の力量に余り自信がないという学生がいたり、専修ごとの学生評価に差はありまして、今後、私どもは4年次にインターンシップ実習をしますので、4年次には年間の教育課程、授業の年間計画を意識させることを考えたいと思います。要するに、単元だけではなくて、年間ということを意識させる必要があるということが反省点として出ました。
 その次、岡山大学の大学院では、平成20年に教職実践専攻、教職大学院を設置しました。13ページを御覧ください。同時に修士課程の教育課程にコースワークを導入しました。これは修士課程が教職に関する科目と、教科専門に関する科目を、それぞれ何単位を取るのかということが修了要件でしたが、岡山大学の教育学研究科として、資質を保証するために、コースワークをつくりました。一つは共通基礎科目ということで、学校教育の理念と今日的課題を設定し、次にコースワークとして専門基礎科目10単位というのを別に持ちまして、特論1から特論4までは授業ですが、教育研究特論5については、附属学校での教育実践研究としてやっております。共通基礎科目については、70人の学生を担当いたしまして、授業7名とその他14名が課題探究学習を行っております。そのデータは14ページにございます。
 特に15ページでございますが、教科教育においては、やはり教科教育学専攻のコースワークとして、単に自分の教科の教科教育を、教科教育とか教科内容を学ぶだけでなくて、教育研究特論ということで、基礎理論ということで、多くの教科教育担当の教員が協力いたしまして、授業を開講しております。
 やはり広い目で見る、狭い分野を学ぶだけはなく、広い目で見ていくということ、そして自らが研究していく、自らが学ぶ態度というものを身に付けてもらうことが大事かなと思っております。
 教職大学院の実習に関しましては、16ページ、17ページの方に書いてございますが、これは福井大学等からも御報告あると思いますので、教育実践研究をコア科目にしているということで、説明を終わらせていただきます。
 それでは、田中委員、お願いいたします。
【田中委員】  資料を御覧ください。私のものは、現在行われている実習に近いような科目のシラバスを、特徴的なところを抜き出してきました。
 まず、全体の構成を説明しますと、東京学芸大学は学部の段階で、1年生のときに教職入門という科目で、異校種の学校を訪れます。それから2年生のときに観察実習を1週間、これは附属学校を中心としてやって、3年生のときに、我々、基礎実習と呼んでいますけれども、附属学校で3週間の実習を行います。それから4年生のときに、応用実習ということで、公立校で、その公立校の事情があるので、2週間から4週間の実習をやって、数は少ないですけれども、卒論関係で、わりと実践的な研究をやりたいという学生に対しては、研究実習ということで、いわば卒論のフィールドとして学校現場を使って研究をやるようなことで卒論を書かせています。それが前提になっています。
 そこの資料にあります最初の2枚ですね。これは教職大学院での実習。私たちは「創成研修」と呼んでいますけれども、簡単に言うと、ある一つの連携協力校に1年半、教育実習に行きます。ストレートマスターの場合ですけれども、1年生に入って、4月から7月までは、その連携協力校で、その学生が持っている研究課題と、その連携協力校の課題の突き合わせ等々をやりまして、ともかく実習ではないのですけれども、事前の調整を行います。9月に入って2週間だけ集中的な実習をやらせて、それ以降は1月半ばぐらいまで、週2回、実習校に行かせるような形にしています。
 それから、2年生になって、これはもう4月から2月くらいまでですね。週2回ずつ実習に行くような形です。
 御存じのように、東京都には五つの教職大学院があって、教職大学院の実習、五つとも全然違うのですね。例えば、多摩川大学の実習は、3か月集中的にやらせるような形ですけれども、私どもは、ともかく教員となるに当たる学生たちに、教員の通年的な、あるいは1年半にわたる全体の活動計画を体験させたいというようなところもあって、そういう意味では、1年半、同じ学校に連続的に行かせる。行くのは、週2回行きますけれども、その2回のうちの1回は、必ず実務家教員がついていって、それから月に1回は、研究者教員と、実務家教員と、学生本人と、3人プラス職員会議等で議論をするような場をつくりながら、1年半を過ごすようなものが、教職大学院のストレートマスターの方の実習であります。
 実は、3枚目からが教育学研究科の修士課程の方であります。私どもは教職大学院を教育学研究科という共通の屋根のもとにある修士課程と、それから教職大学院とをつくっています。だから、教職大学院は、一面では教職大学院という独立性を持っていますけれども、もう一面では、教育学研究科の16専攻のうちの1専攻という側面も持たせています。
 教職大学院を設置するに当たって、既存の修士課程の方も、高度教員養成を大学院でやるというシフトをとりまして、既設の方も教員養成ということをかなり念頭に置いたカリキュラム改訂を20年度にやった次第であります。ただし、修士課程の方は複雑な側面があって、一つは、普通、博士課程を持っていますので、博士課程に進む学生の、要するに、研究者の基礎の養成という側面もあるし、もう一面では学部の方で、教養系、いわばゼロ免課程を持っていて、その学生たちも修士課程の方に来るという側面がありますので、三つの異なる性格があって、それをカリキュラム対応で、それぞれの目的に即したような形で、個人個人のニーズに合ったようなカリキュラムをつくっていこうというような発想になっています。そのために、科目群を三つの科目群に分けています。一つが、教育実践開発科目群、これは実際に授業をつくっていくようなものですね。それから、もう一つのグループは、教育実践研究法科目群、それから3番目が教育内容基礎研究科目群という、その三つのグループの中で、そのそれぞれの目的に照らして、そこの3枚目のグラフから4枚目にあります履修モデルに従って、それぞれのパターンをとりながら、2年間にわたる履修計画を入ってすぐにつくらせながら行っております。
 ここで紹介したいのは、教育フィールド研究というものであります。これはかなり議論をしました。つまり学部の段階で、もうある程度、教育実習をやっている。その上で、大学院でのいわば教育実習の目的をどう設定するかということで、ここでの位置付けは、教育実践教育法科目群の中の1科目ということで、要するに、学校をフィールドとして研究法を学ぶという、そのような性格のものにして運営しています。
 ただし、それぞれの教科だとか分野によって、かなり違いがありますので、特徴的なものを、後半ですね。最初が国語、次が家庭科、その次が体育科ですね。それから美術科、特別支援等のフィールド研究。共通しているところは、それぞれ学校だとか、施設だとか、あるいは美術だと美術館等々を使っての授業等も企画するというような形で、場所は違いますけれども、いわば現場に出向いていって、そこで一定の課題を持って研究活動を行うというような側面からの実習的な科目と言ったらよいのでしょうか、そのような位置付けになっているものであります。これは学生たちにとっては評判がよいと思っている次第です。
【高橋座長】  ありがとうございました。
 それでは、寺岡委員、お願いいたします。
【寺岡委員】  私からの報告は、教職大学院の教育実習に限定して御報告させていただきます。
 学部の実習は、今、田中委員が言われた東京学芸大学と基本的には変わらないと思っています。
 それから、既存の大学院の研究科については、特に実習というのは設定しておりませんで、ただし、研究の中で、かなり学校と連携した研究というのはやられていると思いますが、うちの場合には、既存の大学院研究科とは、独立専攻というようなことですので、相体的に独自の仕組みでやっております。
 なぜ相体的に独自の仕組みかと言いますと、既存の枠組みを変えて、福井の場合には「学校拠点方式」というやり方をとっていますので、簡単にそれについて御説明をさせていただいて、その仕組みの中で、実習をどのように行っているのかということについて紹介させていただきます。
 最初のページを見ていただければと思いますが、言うまでもなく、今の新しい、例えば、知識基盤社会と言われる中で、子どもたちに求められている能力というものも、これまでとはかなり違ってきたものになっているというようなことで、正にそういう学力、能力というか、リテラシーにふさわしい学校教育での学びというものが求められるだろうということです。
 そうすると、次の2ページ辺りで、今度はそれを担う、実現する教師の教育改革についても同じような形で、従来の枠組みでよいのだろうかというようなことで、その転換が求められるであろうと。ある意味で、子どもの授業での学びと教師の教育改革で求められる、その中身というのは、基本的なところは同型性を持っているだろうと考えております。
 特に教師教育の場合には、大学院で個人研究中心であったというようなこと、それから学校から離れて個人が学ぶという、そういう基本的には制約を持っていたと。それでは一番肝腎な子どもの学びをどうするかということで、それを改革していく学校づくりの取組にはつながりにくいだろうというようなことで、この「学校拠点方式」と書いてございますが、基本的には学校をベースにして、そこに大学が関わると。また、その学校と大学という福井の取組にとどまらずに、それを公開した形で、いろんなコミュニティを形成しながら、公開と批判の場を開いていくと、そういう仕組みが必要であろうと考えております。
 次のところですが、そういう形で授業を改革し、教師の自己改革をし、それが実現できる教師自身が、正に組織改革の担い手になり、組織をつくるというばかりではなくて、組織を改革していく。学校だったら学校、コミュニティを改革していくための力量形成をどうするのかということで、それにふさわしい専門職学習コミュニティ、Professional Learning Communityというようなことで、世界的にも言われていますが、そういう流れの中に、きちんと課題を位置付けるべきだというようなことです。
 下の「学校拠点方式」というのは、正に学校ベースで、そこに大学も関わり、もう少し開いた形で組織をつくっていく。ある意味で、それぞれが相互に独立した実践コミュニティをつくり、それらが多層な形でネットワークをつくるというようなことを考えております。
 そういうものをベースにして、福井大学の教職大学院。これは2008年に教職大学院の仕組み、制度ができましたけれども、その前の2001年から、1998年から2年間ですか、教育職員の免許法に関わって、養成審議会が3次にわたって貴重な答申をまとめたと思いますが、特に2次答申の辺りでは、修士課程を活用した教師の力量形成というようなことを打ち出していて、それにまともにこたえていこうということで、夜間の大学院をつくりましたが、あわせて、その中に個人研修ではなくて、正に丸ごと学校と関わりながら仕組みを変えていくということで、学校改革実践研究コースというものをつくりました。そのときから、ずっとやっているものでありますが、基本的には学校の中から、特に研究主任クラスですね。研究の担い手になっているような方がスクールリーダーとして教職大学院、あるいはその前身で言えば、学校改革の実践研究コースの方に入ってくるということ。そこで学校と大学との協働ということですね。
 教職大学院をつくった、その段階では、今度はいわゆるストレートマスター、教職専門性開発コースがそうですが、それがそこの学校に行って教育実習を行うということを考えております。そのような形で、学校の中格教員が学ぶことができるような、あるいは大学の研究というものが、何か大学の方で押しつけるとか、お願いするということではなくて、正に学校の抱える課題に協働で取り組んでいく。しかも、その基本は実践と省察と再構成と、そういうケーススタディーを中心にしてできないだろうか。あわせて世代間の継承と言いますか、教師のProfessional Development、そういうものを保障するような仕組みをつくっていこうというようなことで、「学校拠点方式」の方法、仕組みをつくっております。
 繰り返しになりますが、基本的に学校の、特に研究ですね。学校改革を進めようとしている中心的な担い手の先生が、教職大学院のスクールリーダーコースに入ってくる。あわせて、今度はストレートマスターが、その学校に1年間のインターンシップに行く。スクールリーダーコースの先生と教職開発のコースの若手の院生というものが、今度は合同で、月に1回、毎月合同のカンファレンスをやる。それから夏休み等、集中講義をやる。それから若い人は週間のカンファレンスを行う。それからラウンドテーブルということで全国的に開かれる、そういう仕組みをつくっていく。できれば、そういうFD機能を持った教職大学院のネットワーク、他大学とのネットワークができればということを考えております。
 学校拠点というのは、これは福井県の地図ですが、福井県内、若狭の方も含めて広がりを見せている。それから東京都の赤塚第二中学校というのは、これは「教科センター方式」で、建物の改築も含めてやろうとしているということで、ちょっと福井に関心を持たれて拠点校と。これ学校拠点なので、むしろ私どもが出かけていく。月1回、東京の方からおいでいただくという仕組みなので可能なのであるというようなことですね。
 そういう中で、特に教職大学院の長期実習について、どうしていくかということですが、教職専門性開発とスクールリーダー養成コースというのを、このような形で行っております。若手の教職専門性開発については、長期インターンシップということで、1年間ですね。それからスクールリーダーの養成コースについては、三つの実習を分けておりまして、基本的には、そこの当該の学校で行う企画運営・組織に関わる実習ということで7単位、それから他校の実践研究に関わる、あるいは支援する実習として1単位。それから、若い世代の教師を支えるメンターシップということで2単位を考えております。
 1年間の実習ということですが、下に書いてありますように、学部レベルの、例えば2週間とか4週間の実習では学び得ない内容であると。正に1年間のリズムや生態系の理解、それから教育の一員として、ある意味で正統的な周辺参加という、そういう経験をする機会になるということ。やはり実践し、省察し、再実践する、そういう仕組みをつくっていく上では、それだけの期間が要るだろうというようなことで、先ほどアンケート調査でいえば、実習期間が短いということについて、やはりこれだけのものは要るのではないかと考えております。
 それから、次のページ、最後の方にスクールリーダー実習の重要性ということで、当初、教職大学院をつくったときには、スクールリーダー実習1については免除しておりました。ただし、やはりこれは要るのであろうということですが、ただ、当該の勤務している学校を離れて新たに実習するということは大変な負担を強いると、また意味がないことなのですね。それを、実習と通常の勤務と、どれほど明確に分けられるのかということはありますが、あえて、それを分ける必要はないのだろうと。それだけ、スクールリーダーに来られる先生というのは、学校の中で、企画、それから組織運営に関わることなので、それを新たに、もちろん、大学の方も関わるわけですが、意味付けするような形でできればと考えております。
 それで、一応、長期インターンシップを支えるスタッフとしては、学校担当者というような責任者、教頭先生、それからメンターの先生で、特に拠点校の場合にはスクールリーダーに入ってくる院生。現職の院生そのものがメンター教員になると。それから支援教員、更に大学の教員が拠点校の場合には2名ないし3名、担当校ということで張りつきますので、そこで行っていく。
 それから、長期インターンシップの年間サイクルを簡単に書いておきました。週モデルは、ここに書いてあるような格好ですね。
 それから、1年間なのですが、週のうち3日、拠点校に行って実習します。2日は大学に来て、その振り返りをやるということで、その中身について書いておきました。
 最後に月モデル表、年間計画というのがございますが、特に2、3月から始まる。もう入試で合格が決まっていますから、そうすると学校の方は、もう3月の終わりくらいには予定を決めているわけです。校務分掌とかも決める。そこのところに、加わりながら、こちらの方も参加し、4月の最初には、始業式から実際に実質的に参加できるような格好で考えているということです。
 最後の資料は私ではなくて、教職大学院協会をつくったときに、教職大学院協会の中に、授業改善・FD検討委員会というワーキンググループ的なものをつくりました。その中、そのメンバーが最後の方に書いてあるメンバーですね。責任者として福井大学の松木が取りまとめを行ったということで、2010年に報告書をまとめています。それで、各教職大学院の学校実習について調査をしたということで、これは御参考までに見ておいていただければよいと思います。
 特に教職大学院の場合には、学校での実習、あるいは既存の大学院での実習とはまた違う意味付け、意味のある実習をどのようにつくっていくのかということと、それからストレートマスターの場合には、既に同期では採用して教員になっている。それとは違うような経験、意味付けというのは、どのように組織するのかというようなことですね。
 それから、先ほどのアンケートでもありましたけれども、受入校の場合には、学校の方が負担になるという、そこら辺りは、かなりやり方を変えていけば、むしろ受入校の教育スタッフの一員になり得るのではないかというようなことなどが指摘されております。
【高橋座長】  ありがとうございました。
 では、次に、坂越委員提出の資料について、事務局から説明をお願いします。
【藤岡教職員課課長補佐】  もう一方のワーキンググループであります修士レベルの教員養成課程の改善に関するワーキンググループに関わっております広島大学の坂越委員から、広島大学での取組事例の資料の提供を頂いております。坂越委員、本日、所用のために御出席が難しいということで、恐縮でございますが、事務局から簡単に資料の御説明を申し上げたいと存じます。
 資料といたしましては、坂越委員提出資料、広島大学の教育学研究科における取組でございます。
 広島大学の教育学研究科におきましては、教職高度化プログラムというものが設置されておりまして、このプログラムの中に、特に特徴といたしまして、アクションリサーチという実習系の科目を設定しているものでございます。
 資料1枚目のプログラムのねらいというところでございますが、特にその2番目と3番目でございますが、高度で総合的な実践的指導力を備えた教員を育てるためのプログラムのねらいとしてありまして、3番目といたしまして、学校教育の今日的課題の解決や特色ある学校づくりの推進に向けた教育実践研究(アクションリサーチ)のできる教員。こういった教員を、養成を目指しているというものでございます。
 一つ飛ばしまして、プログラムの特色といたしまして、最初の中黒でございますが、初等教育開発プログラム、中等教科教育開発プログラムにおきまして、附属学校や連携協力校でのアクションリサーチ実習や課題解決実習などでカリキュラムが構成、編成されているというものでございます。
 具体的には、1枚おめくりいただきまして、「アクションリサーチ実習」の実施要項というところを御覧いただければと思いますが、特にこのプログラムにおきまして、中等教育小学校の教育実践を教科指導という側面から捉えて、教科指導力を高めるという観点から、正に自身でカリキュラムや教材を開発する、指導計画を作成する、すぐれた授業実践を行う、そして評価に基づいて授業改善を行う、そういった実践的な指導力を備えた人材を育成するというものでございます。
 具体的に、どのようなことをされるのかというところでございますが、4番でございますが、プログラムの授業内容・方法の特色というところがございます。そこで表がございますが、このプログラムの一部といたしまして、この表の一番右下でございますが、学校等における実習ということで、アクションリサーチ実習1番、2番ということが設定されているものでございます。それぞれ2週間ですから、合計で4週間、修士1年の第1セメスターで2週間、第2セメスターで2週間という形で行うものでございます。
 このアクションリサーチにつきましてですが、次のページを見ていただきますと、上から5行目あたり、(2)番、教育実習の概要ということで、アクションリサーチ実習1、アクションリサーチ実習2というものがございます。このアクションリサーチ実習につきましては、先ほど申し上げましたように、修士の1年生が附属学校で2週間、それぞれ2週間、実習を行うものでございまして、単に、いわゆる学部の教育実習のようなものを行うものではなく、いわゆる教科指導に関しまして、各人、各大学院生が自己成長のために、自ら行動を計画して、実施して、実習という形で実施をいたしまして、その行動の成果を、結果を観察をして、その結果に基づいて内省を行う、リフレクションを行って、1年のサイクルが回るというものでございます。具体的には、教科指導の中で、どのような指導を子どもたちにすると、すべての子どもたちの理解が深まるのかであるとか、興味、関心を引くような指導法はどういうものがあるのか、そういったものを各人が大学の教員などと調整をしながらテーマを設定いたしまして、そのテーマに沿った形で、2週間、附属学校で実習、正に計画に基づいて実習を行って、その計画の結果を、また大学の教員などの協力を得ながら内省をしていくというものでございます。これを第1セメスター、第2セメスターで4週間行うと、それぞれ2週間ずつ行うというものでございます。
【高橋座長】  ありがとうございました。
 それでは、今、各委員からの資料につきまして、御説明を頂きました。では、その実習の現状も参考にしまして、専修免許状の取得における実践的科目の必修化について協議を始めたいと思います。
 議論するポイントにつきましては、まずどのような内容とすべきか。2番目には、どのくらいの単位数とすべきか、それから3番目に、小、中、高、学校種や職種ごとに、どうあるべきかということがあると思います。
 それで、専修免許状は大学院レベルの免許状として、当然に学部レベルよりも高度な内容とすることが必要でありますし、一方、専修免許状の課程認定を受けている大学は、先ほど御説明ありましたように、国立の教員養成系大学の修士課程だけではなくて、国立や私立の一般研究科も非常にたくさんございます。また、教科としては理科や数学が多く、社会も多かったわけですが、修士課程における教育や研究との両立も必要となります。ただ今説明、委員から御報告のあった大学の実習は、大変立派な準備されたものでございますけれども、こういう実情も踏まえて、内容や単位数につきまして、まず御議論を頂きたいと思います。御意見のある委員、よろしくお願いいたします。
【大槻委員】  上智大学の大槻です。この「ワーキンググループの構成」の中では上智大学教授としか書いていないのですが、私、専門は理工学部及び理工学研究科で物理を教えています。物理の学生は、高校にも物理が科目としてありますので、高校の先生になりたいという学生もいますし、特に学校のカラーとしては女子学生も多く教員希望者も多いという状況を踏まえて、大学院について、我々の立場からの意見を述べさせていただければと思います。
 最初の資料を見て、さすがに理科、社会、数学は専修免許状を乱発しているなという印象です。前からそうではないかとは思っていたのですけれども。専門的に教育学の内容や、教育法を学んだ人と、そのまま物理の勉強をしているだけで同じ免許になるというのは、何か違和感があるなというのは、通常からほかの教員も感じていたところであります。
 ただ、理科の先生は、大抵は修士を取っているということが多くて、余り修士を取った人と取ってない人で競争になるということはないかもしれないというような気はしています。要するに、どこかで物理の採用をしようと思ったら、物理の教員希望の学生の中で争うことになって、物理を取った学生と教職大学院出身の学生が同じ専修免許を持っていて、ぶつかり合うということは、現実には余りないような気もしているので、それでそれほど不公平だというのを学生から聞かないのではないかなというような認識をしております。教職大学院の先生たちから、もし、「いや、そうではない。不公平だとみんな言っている」と言われたら、それまでですけれども、少なくとも我々は、多少心苦しいなと感じています。同じ専修免許状を取得するのは心苦しいなと、何かしなきゃいけないというような気持ちはありますけれども、かといって、非常に不利益を与えているというような気持ちはないというのが私の考えているところです。
 それを踏まえて、まず理工系の大学院の目的が最先端の科学技術の研究をさせるということで、それをさせた上で学生諸君を社会に送り出すことだと指摘したいと思います。社会というのは、もちろん教育界も含まれているのですが、最先端の研究までさせるというのが大学院の設立の目的なので、ここで30単位分のほとんどを教育関係の科目にしてしまうと、大学院の設立の趣旨に関わってしまうので、それはできないかなというのが私の印象です。むしろ、最先端の研究をさせたことを、どうやって社会に生かし、教育界に生かすかということが、我々として考えるべきなのではないかなと思っております。
 以上を踏まえて、どれくらいの単位数が適当かというと、30単位のうち4単位程度は、教育学部とか教育心理学とかの院の単位ではなくて学部の単位を大学院の単位として認めるのはどうでしょう。それを大学院の専門科目として置きかえて、単位、卒業認定に加えてよいと思っています。
 それだけだと楽なだけというか、厳しくなっていないのですが、そのほかに、これは単位数にどう換算してよいか分からないのですが、必修科目として、実践的な科目を取り入れざるを得ないだろうと思います。それは他の教職大学院を見ても、やはり実践が必要だということから、専修免許状をもらうためには何らかの実践はしなければいけない。先ほどの理工系の大学院の趣旨を考えると、やはり最先端の科学技術の内容を中学、高校に行って教えるという実習が一番適当ではないだろうかというのが私の考えているところです。
 この最先端の研究というのは、自分の研究内容でも構わないですし、その自分の研究内容と関連したテレビとか新聞で報道された内容で、学生たちがより深く知っておいた方がよいものです。身近な例で言うと、iPS細胞の話とか、宇宙開発の話、ヒッグス粒子の話とか、幾らでもそういったものが、最近、話題になっていますので、そういった内容を自分の研究と絡めて話すような機会が、高校生、中学生に対してあればよいのではないかと思っております。
 やり方ですけれども、やはり指導教員が目を通さないといけません。間違ったことを言っては困りますので。よって、指導教員が関わらざるを得ないと思います。そういった形で、他の教職大学院と同じように、指導教員が関わって授業の指導をするということになると思います。
 指導教員の負担としては、それほど多くなくて、自分の最先端の研究の内容とか、そういった自分の専門の分野で、修士論文の発表会とか、学会の発表会の機会で、年中、45分ぐらいの学生の発表を見ますので、どのようにプレゼンテーションをすればよいかということは指導できると思います。
 そういうことを行うタイミングですけれども、就職活動が、修士1年の11月くらいから始まってきて、4月か5月くらいまで続くという現状を考えますと、教職だけを取りたいという学生だけではなくて、両天びんにかける学生も多いので、そうすると9月に夏季集中でやるしかないかなと考えています。実際に教育の現場に関わっている先生たちから指摘いただきたいのですけれども、9月だったら中間試験もないし、入試とかにもかかってこないしということで、適当なのではないかと思います。学園祭の前後くらいとか体育祭の前後くらいのときに行えるような、そういったようなタイミングで行い、それは1回では駄目で、数回やってもらうのが望ましいです。それで、高校1、2、3年生、一つずつやるとかというようなことです。私たち大学教員が最近やらせていただいている体験授業がイメージにありますけれども、最先端の内容を高校生に45分くらいで、うまく説明して、大学の内容に興味を持ってもらう。その際には、必ず最先端の内容を入れて、そういったような形で3回から4回やった後は教職課程センターというのがあると思うので、そこの先生たちとコンタクトをとって反省会をするわけです。1回目やった後、反省をしてもよいと思いますけれども、理工学部でいうと、20人から30人くらい対象になっていて、その学生たちの面倒を毎回見るわけには教職課程の先生もいかないと思うので、1回で学生を10人くらいずつまとめて、「こういうようなことで生徒からフィードバックがあったけれども、ここら辺の内容は全く生徒はわかってくれなかったので反省したい」とかいうようなフィードバックを今度は教育課程の先生と一緒に行うわけです。やはりそれは指導教員に対しても、学生を通してでよいので、「先生に言われたとおりにやったけれども、ここがよくなかったです」というようなことは指摘してもらって、次年度以降に対してノウハウを引き継ぐという形が現実的なのではないかと思ってます。
 先ほどの単位数ですけれども、これはどうせ取らないと、この免許は取れないというのだったら1単位でも2単位でも構わないし、この実際にかかった時間を45時間で割り算して、適当な単位を充てればよいと思います。45時間が1単位なので、それに応じた単位数を出すということで、大学院の修業単位には含めないというようなのが現実的なのでは。大学院の修業単位に含めると、また、専門の勉強時間が減るとかいうような議論も出てくるので、大学院の修業単位に含めるのは、座学の教育学部とか、教育心理学の授業で指定したものから4単位を取るというような形にして、この実践的な科目は単位数は実際にかかった時間とか、かかりそうな時間を専門の先生たちに考えてもらって、45時間で割って、1単位なり2単位、若しくは夏季集中、1か月やって、4単位ぐらいにすればよいと思います。そういったような形で指定してやっていければ、現実的で大学院の設立の趣旨にも反しないのではないかなと思っております。
 私、私立大学ですが、多分、国立大学の理科系も同じような事情になっていると思います。
【高橋座長】  御意見ありがとうございました。理系の大学院からの御意見でございました。
 理系の大学院の現状から考えると、実際的には、なかなか難しいと。専修免許状について、教員としての勉強というか学習をあまりしてないのだけど、それは不公平だとか不利益を与えるとは余り思っていないということでございました。そして、実践的な科目に関して言うと、最先端の研究を学校に行って教えるということでどうだろうかと、御提案でございました。いかがでしょうか。そのほかの委員の御意見も頂ければと思います。
【安達委員】  私も大学に勤めておりますので、その立場からということになりますが、自分の今の大学よりは、逆に、むしろ自分が大学院で学んだ経験がありまして、それで今、大槻委員のお話を聞いていても、大分研究科の種類によって、事情が違うだろうということは、皆さん、そういう認識を多分お持ちになると思います。
 その中で、今回、ある省令なり、あるいは決まりを決めていくとなると、それをどの研究科にも専修免許状というくくりの中での共通化をしていくのか、あるいは研究科の種類に応じて弾力的に対応していくようにするのかと、その辺りで大分やり方が変わってくるのかなという感じはしています。
 もちろん、専修免許状ベースということで考えれば、一つの免許状の考え方になりますので、共通的なところがよいのかと思いますが、一方で、やはり各研究科の特徴、特色を消すようなことは、うまくなかろうと思います。
 理系の大学院に関しまして、今、大槻委員からいろいろ御指摘があったとおりなのですが、例えば、教育学研究科ですね。こちらの方ですと、むしろそれが専門になる、理論と実践ということが専門になるという考え方もできますし、実際、田中委員の方から、それらの指摘がありましたが、そこで逆に、あえて教育学研究科のことを突っ込むと、職業人育成として、今後教育学研究科が進むのか、あるいは研究者育成という、こういう点の側面ですね。そこで恐らく、ちょっと考え方が変わってくるのかなという感じがしています。
 あと、実際、必修化を図るに当たり、単位として、今、教科と教職の又は科目の24単位分をどう使うかというような話にも、多分なってくると思いますけれども、実際問題としては、必修化すること自体は私も賛成ではありますが、今の教職大学院並みのやり方というものを、通常の、特に理系の教職課程を置く研究科に適用していくのは、なかなか難しいだろうとは思います。ですから、その辺りのあんばいは、研究科ごとにと言うと変ですけど、種類ごとに整理して議論した方がよいのかなという感じをしております。
【荒瀬委員】  中学校でも高等学校でも、特に理系の大学院を出た人が、教育学部とか教職大学院で勉強した人と同じ単位を取っていなければならないと、私は全く思っていません。むしろ高等学校に実際いました経験からしますと、理系の人というのは、専門性の高さということの方がより重要で、その専門性の高さを、学校の組織として、どのように活用していくのかという、正にこれは大学院の改革とか大学教育の改革ということと同じく、学校の現場の改革というのを進めていく中で初めて意味が出てくると思います。
 私がいた学校には、一番多いときで3人、博士号は持っているけれども免許は持っていないという、そういう教員がいました。もちろん臨時免許や特別免許を取っているのですが、そういった人たちに共通しているのは、高校の教育をしたいという強い熱意です。しかし、教員免許を構成するための授業を学部時代、当然、大学院でも取っていなかったわけですから、そういったところについては、採用した教育委員会であるとか、あるいはまた学校現場でどのようにサポートしていくのかということが大事です。先ほどもお話ありましたように、どういった研究をなさっていた方かということによっては、修士課程レベルというものの意味を全て一つに考えて、これはやっていないといけないみたいなことにしない方が、学校としては活性化していくのではないかなということを思っています。
 それから、教育実習のことを大槻委員がおっしゃいましたけれども、9月にやっている学校というのはたくさんある一方で、学校によりまして、5月、6月頃にやっている所も少なくありません。学校にとりましては、これも一律、9月がよいとか、6月がよいとかいうことは全くなくて、それぞれの学校の教育計画に基づいて動いている部分がありますので、御要望は御要望としてあると思いますけれども、受け入れる側(がわ)にとっても、これまたなかなか難しい問題があるなということを思いながら承っておりました。
【高橋座長】  前回の会のときに、村山主査が、これは教員の資質を向上させるために、どういう方策があるかということを検討する会であるわけで、学校現場の御意見も頂かないと、大学だけの勝手な意見ではいけないと思いますが。
 安倍委員、いかがでございましょうか。
【安倍委員】  私も荒瀬委員の意見に近いわけで、もともと私も高校の教員ですので、自分が教育実習をしたときとか、あるいは教育実習生を学校で受け入れたということを考えますと、私は専修免許の場合には、本当にいろいろな学びの過程というのは違いますので、その学びの過程の特色を教育実習のところで生かすと考えれば、余り共通化したうんぬんということをやる必要はないのかなと思います。かえって、1度学校で教育実習を行って、その反省として、大学院に戻ってから、例えば、自分の足りないところを教職大学院の方に行って教えてもらうとかというような形で、一種免許状は持っているわけですので、教育実習も経験しているわけですから、その上にプラス、やはり専門性というところに重点を置いて学校に行くということが大事なのかなという感じがしております。
 あとは繰り返しになりますけれども、反省の部分で、「何が自分に足りなかったか」ということを後で考えるというようなシステムがあればよいと思いますので、余り共通化することは、必要ないのではないかと感じております。
 また、教育実習の時期については、私が経験した学校では、9月というところがありましたけれども、中には1学期にやっている学校もありますので、学校行事との関係でいえば、1学期にやってもらいたいところと、2学期にやってもらいたいところがありますので、この辺も先ほど御意見がありましたように、一律にうんぬんというところは、なかなかしにくいのかなという感じがします。
 それから、大学によって、いろいろ事情が違うという中でいえば、事後の話もしましたけれども、事前の段階で、いわゆる専修免許状を取ろうとしている、そういう学生同士が意見交換をするような場を、いろいろなところでつくる必要もあるのかなと思います。
 例えば、これは全く個人的にですけれども、全国に放送大学という組織がありますので、ああいう場で、意識的にそういう免許を取得しようとしている人の意見交換の場を設けるとかというようなこともあってよいと感じております。
 それから、最後に一つ申し上げたいのは、私の経験からいっても、学校教育ということに、余り集中し過ぎると、教員の成長ということを考えたときに、もっと広い視点からということになりますと、社会教育という視点も、入れた方がよいという感じがします。
 これはちょっと今回の議論とずれるかもしれませんけれども、専修免許状を取るときには、これも本当に個人的な見解で申し訳ないのですけれども、国立青年の家に行って、例えば、夏休みに1週間、社会教育という視点から、子どもたちと学習するというようなことがあってもよいと思っています。と申しますのは、学校の中というのは、学校週5日制が進んできてから、いわゆる特別活動という面で集団活動を行っていくという場面が少なくなっていますし、また、教える側(がわ)にとっても、そういう要素というのが、余り求められなくなってきていると思いますので、いわゆる専門性プラス、社会性みたいなものを身に付けるという機会があってもよいとは思っております。
【荒瀬委員】  今、京都市教育委員会におりまして、小学校の授業を見ておりまして思いますのは、専科の教員も一部いますけれども、基本的にはすべての教科を1人で担当する。そうなってきますと、小学校時代の学びの質と言いますか、深さという点で課題があると思っています。
 指導方法は、一応、年限を経ていきますと熟練してくるわけですけれども、その熟練というのが、どうしても表層的な熟練と言いますか、形だけはやっているけれども、中身として、本当に迫るものを持っているのか。
 例えば、音楽を専門にしていた先生が国語の授業をするとか算数の授業をするとかといったときに、指導方法として、形はできているのですけれども、しかし、本当に算数を学ぶ面白さであるとか、国語を学ぶ面白さであるとかといったようなことが十分に理解できているのかというのを感じました。これは京都市のみならず、ほかのところの授業も見せていただきまして、そういうことを思いました。
 ですから、専修免許状と言いますか、修士課程レベルとなってくると、そういったところをもっと深くやってもらわないといけないのではないかな。それをするための実習であったり、あるいは大学院での学びであったりということが必要なのではないか。あるいは学部でもそうですね。ということを思いました。
【高橋座長】  ありがとうございました。
 一つは、大学院は開放制で、専修免許で質を保証しているわけですが、その質の保証を、それぞれの大学院の設置審に任せて、教職としての専修免許状、あるいは将来的な一般免許状で、何も保証しなくてよいのかどうかということに関しては、現状だけの問題ではなくて、真剣に考えていかなければならないと私自身は思っております。
 私の提出した資料のところで、中長期的な構想で、一般免許状で教員が高度専門職業人たり得るというときに、現行の専修免許状の内容で、それを保証していけるのか、その多様性と専門職としての保証を、ここでは両方検討していくところだろうと思います。御自分のところの大学ではどうかということも含めながら、質をどう保証していくかと考えていただけるとよいと思います。
 それで、そこに岡山大学の経験からの意見と書いてありますけど、やはり先ほどのお話を伺うと、学部での教職課程を、しっかりとそこを充実させている必要があると思います。そこで教員免許を取るわけで、教職の科目も取るわけですから、そこが充実するということが、まず基盤だと思います。その後、理学研究科に行くなり、文学研究科に行くなり、いろいろな研究科に行くと思いますけども、そのときには、実践的科目の必修化については、私見ですが、学部では集中型の教育実習が一つの特徴だと思います。それで学ぶことは、授業力が中心だと思いますけど、それはそれで重要ですが、やはり学校社会であるとか、学校での年間計画も重要だと思います。私は授業をするのに、先ほど大槻委員がおっしゃったように、最先端の研究を学校に行って教えるということが、直ちに教員としての資質を上げるということではないと思います。少なくともそこの学校で教える子どもたちの実態を見る力は最低限必要だと思います。そのためには、やはり子どもの成長過程を見ることができるとか、学級経営も、いじめの問題などもありますけれども、長期的な学級の子どもの活動のダイナミズムを学んでおくとか、年間計画、行事とか、そういうことを考えてもよいのではないかと思いました。
 それと、修士では、母校実習というわけにはいかないと思います。理学部だったら、大体母校実習なのですけど、ほか、理学研究科で研究をしつつ、こういう実践的な科目をとるときに、自分の家が遠かったりすると、現実的には近くの学校でないと、実践的な科目はできないだろうと思って、例えば、4単位で35。半日ぐらいで行けないかと考えています。
 実は岡山大学でインターンシップのことで、中学校の校長先生方と、280名全員出すのだけれどもそのフィールドとしてどうだろうかという御相談をしましたら、毎週定期的に来るのだったら、曜日を分散させて、午後からの半日だけで、部活も含めて、いろいろな経験ができますよと言われました。それだったら学校でも対応できて、その量と質を保証することはできます。実践と、そして大学へ帰って、振り返りをどうしていくかということは、今後の内容として考えないといけないけれど、専修免許状というものを持つ、教員の資質向上の上で専修免許状の在り方を考えるときに、やはり実践的な科目というもの、振り返りの内容というものを入れていくということは重要ではないかなと思っています。それを、具体的に、どのような工夫したらよいかは別にして、そういうことについて、「いや、もう、それは必要ない」とおっしゃる委員がおられれば、御意見をお聞かせいただきたいと思うし、このような工夫をしたらどうかという御意見がございましたら、教えていただければと思いますが、いかがでしょう。
【寺岡委員】  今、各委員のお話を伺っていて、例えば、最初に大槻委員が言われた、いわゆる専門を学んで教員になる場合と、例えば教職大学院になる場合、不公平さとかあるかもしれないということですけど、その辺は教職大学院という立場からも、特に不公平というのはないです。これは荒瀬委員が言われるように、基本的には、先生方の力量形成というのは、現職になる中での、正にProfessional Developmentというのかな、それをできるような学校が、そういう組織改革の仕組みをどうやってつくっていくのかという、そこにちょっと大学院、大学の方も関わらせてもらうというのが基本だろうと思っています。
 そういう意味では、例えば、教職大学院ですので、教育実習10単位とか、1年間通してとか、それはできますが、現実に一律にやるというのは、それは全く非現実的なことなので、かなり弾力的な運営、運用は要るだろうと。
 ただし、例えば、大槻委員が冒頭で言われましたように、学部の単位で置きかえるとか、それだと、やはり今の求められている課題からいうと、ちょっと合わないだろうと。いろいろ学部の教育実習についても、改革、充実という方向はなされていますけれども、やはり限られたものであるというようなことはあります。
 私ども教職大学院で、学校拠点ということで、小・中ばかりではなくて、高等学校も幾つか持っております。進学校も含めてですね。そうすると、今、高橋座長が言われたようなことであるとか、あるいは先生方が校内でどのように研修を自分たちでしていったらよいのかということも、なかなか経験されていないところがありますよね。そういう意味では、やはり一方で教科の専門を高めていただくと同時に、また違う面での力量というのは求められる。そこのところをどのように関わらせていくのかということと、それから単位をどうするかということで言えば、率直に言いまして、こちらの経験からいうと、修士レベルで求められる実習の単位からすれば、10単位とか、そういうことではないのですが、できれば6単位とか。4単位だと、ちょっと不十分かなと思います。ただ、これもどういう講習に行くのか、どういう学部で何をされているのかというようなことにも関わると思います。例えば、4ないし6単位並の幅の中でとか、いろいろその辺は、全体の仕組みを考えながら、弾力的な形であり得るのかとも思いますが、ただ、いずれにしても、別途、修士レベル化ということでいえば、それにふさわしい実習の在り方そのものについては、やはり独自に考えないとならないのではないかと思っています。
【大槻委員】  私の説明が余りよくなくて、何点か誤解を招いた点もあるかと思います。
 最初に申し上げた9月というのは、もちろんこれは大学側の、大学院の現在の教育の事情によるものです。5、6月に教育実習を行うことは、わかっていたので、それとむしろ重ならないように、9月というような提案をさせていただいたわけであります。ですので、教育実習の期間とはまた別の期間でやったらというようなことで、もし、中学校、高校で9月に教育実習が主に行われているのだったら、むしろ5月とか6月の中間試験が終わったタイミングくらいで、1学期にやったらどうかなというようなことです。教育実習の受入れ側の先生たちの事情は、私、余りよくわかっていないのですが、家族が教育実習に行ったので、学生側のことは、わりとよくわかっているつもりです。実習生が指導計画をつくって、それを中高側の指導教員に見てもらう、この部分が指導教員にはものすごい負担になっているので、そこら辺は指導教員の負担は余りなく、高校、中学の先生が、むしろ最先端の内容を一緒に学んで授業をつくることで、教育側に役立てればというような形で考えております。負担が、100が150になってしまうというよりは、100が110になって、よいこともあるというような形でできればというのが先ほどの提案です。
 先ほど、受け入れる先生の負担については触れませんでしたけれども、通常の教育実習よりは、はるかに軽く、しかも毎年同じ学生に対して同じ指導案をつくらせるというようなことだと、先生としてはモチベーションが余りなくなるかもしれませんが、毎年違うような内容で学生が授業を行うというようなことだったら、先生の方も勉強になるというか、役立てるのではないかと思います。
 単位についてですが、これは私、よく分かりません。教育学の学部の授業を受けていないでも取得できる大学院の教育課程に関する授業が開講されるのでしたら、それを取るのが理想的だと思いますが、何せ理科系の学生が、教育学の修士の単位を取ろうというのは、学部までのバックグラウンドがないので難しいと思います。その単位が座学として取っている科目として4単位ぐらいまでなら認められるというような話です。寺岡委員がおっしゃっていた6単位が欲しいというのは、実習科目として6単位が必要で、それのほかに、また何か要るということなのでしょうか。それとも、それだけで十分でしょうか。座学はとらなくて。
【寺岡委員】  いや、一応、狭い意味での。
 先ほど申し上げましたように、幾つかの、実習を想定しています。
【大槻委員】  実習で6単位というのは結構多い。
【寺岡委員】  そうですね。
【高橋座長】  むしろ、行って学ぶということは確かですが、最初に私が言いましたように、どれだけ準備された実習であるかということが大事だと思うのです。だから、大学で準備のための授業をする、そして振り返りのための授業をするということで、例えば、実習でいえば4単位でもよいと思いますけれども、その前後の指導ないし、あるいは現代的な教育事情ということでの理論的な勉強をする授業科目も含めて、私も実習4単位プラス2単位。2単位が大学での指導というぐらいだったらよいという印象を持っています。まずこういう実践的な授業科目を、やはり専修免許状というのは、理学の専門家だけではなく、文学の、博士に行く人だけではないので、それが高度専門職業人である一般免許状につながるものですから、そういう科目が設定がゼロでいくというのはよくないというところでは、一応、共通認識していただけますか。
【寺岡委員】  ちょっと今、高橋座長が言われたことでいえば、基本的に私も、そういう意味で実習ということで、4ないし6単位、できれば6単位ということですけれども、そこのところには福井でもストレートマスターですね。教職開発コースのあれは、振り返りも含めて単位化していますので、それもあわせてということで考えていただければと。だから、むしろ実際の狭い意味での実習も織り込んだ、少しプロジェクト的な科目として位置付けていくという、そういう視点も要るのかと思っています。
【田中委員】  前提をどのように置くのかということが、かなり重要かなと、議論を聞いていて思っていたのです。
 私は、前提はまず、大学の学部の時代に免許状を取っているということを前提にするということは、とても大事だと思うのです。つまり、もうその学生は教育実習の経験があるのですよね。だから、その経験がある者に対して、どういうプラスアルファをつけていくかというようなことを考えると、私は、先ほど紹介したフィールド研究やったときに、最初はとても大変かと思ったのですけれども、やはり経験あるから、学生の方が、どんどん行ってしまうというような側面もあるのですね。だから、多分、うまく組めば、実習校にとっては負担ではなくて、言わばフレッシュな若手が来るというような面を生かすような形でやれば、両方ともそんなに負担感はなくてもいけるのかなというようなところが、まず一つあります。だから、私もやるのであれば6単位ないし4単位ぐらいかなと思いました。
 ただ、もう一つは、高橋座長がおっしゃるように、実習だけを、ほかのカリキュラムと切り離してやっても、それは余り意味がないと言ったらよいのでしょうか、単位の多さに比較して、効果がそれほどないのかなと思います。
 聞きたいのは、例えば、総合大学の中の教育学部があるところの理学研究科のようなところだったならば、つまり、だれが実習関係のコーディネートだとか相談役になるかというときに、やはり教育学部の先生が、ある程度関与しないと、敷居が高いのではないかなというような感じを持つのです。
 逆に言えば、教育学部がないようなところの、例えば、理学研究なり文学研究科の大学院。例えば、ここに幾つか出ていて、教科専門しかやっていないけれども、専修免許状が出るという例も、ここの大学院とは、教育部の先生というのは大学の中に入ると考えてよいのでしょうか。それとも、全くそういう先生がいないという条件の中で議論しなければいけないかによって大分違ってくるような感じがするのですね。
【高橋座長】  学部で、当然、教員免許を出しているところがほとんどだと思うのです。そうすると教職担当の人がおられますので、そこの教員の方を修士レベルに対応できるように教育するなりすれば、一応、どこの大学院でも、その根はあると思うのです。教員の。だから、そういう人たちと一緒にやってもらうということは可能だと思いますが。
【田中委員】  つまり、そういうことを前提にして議論を組んでよいと考えてよいのですか。大分トーンが違ってくるのではないかなという。
【藤原教職員課長】  おっしゃるように、そこは基本的には教職課程があるところでございますので、一定の体制があるという前提を持って考えていくということになるのだろうと思いますけれども、それにしても、その各大学によって、体制はかなり違いがございますので、それについては、当然、今後いろんな各大学、あるいは団体から御意見はあり得ると思っております。したがって、そこはまた今後、調整を現実的にしていく必要があるのはあるわけでございますけれども、それはそれとして、まず、今の段階では、修士のレベルで、現実、今の内容が教育実践にどの程度生かされているのかということを改めて問い直したときに、そこの内容が不十分であるということであるのであれば、それを改善するための必要な内容ということを、この会議の方で提言をしていくということが、まず第一歩になるのではないかと思っておりますので、そういう観点から御議論いただければと思います。
【高橋座長】  それでは、単位数だけではなく、内容についてもお話を頂いてきたと思います。
 それで、私自身、これを実際にやるときには、ある程度、運用の幅を持った方がよいと思いますし、もう一つは、教職大学院で養成する教員と、それから、例えば、理学研究科で養成する教員に、それぞれ個性があってよいだろうと私は思いますけれども、その個性だけではなく教員としての基盤となるところを専修免許状で、押さえておきたいと思います。
 はっきり申しまして、理数系の先生に、子どもの状態が分からないとかいう方もいらっしゃいます。それは理数系だけではありませんけれども、子どもの実態を見て、やはり授業を構成できる能力というのは、専門職としては、必要と思います。それを専修免許状に入れるということについては、多様な人材を採用するということと別に保証されてもよいのではないかなと思いますが、その辺はどうですか。荒瀬委員、免許のない人も雇っている場合もあるわけですが、それは、特別の対応性としてはよいと思いますが。
【荒瀬委員】  学部であっても、大学院であっても、せめて学校で授業しようと思ったら、基礎的なことをきちっと教えていただきたいというのは、これは非常に強く思っています。
 教育実習については、これは大変ジレンマがありまして、将来教員になろうと思っている人を受け入れて、教員を、優秀な教員を育てないと学校というのは成り立ちませんので、その点については、教育実習を引き受けたいと思うのですけれども、なかなか、実際来る学生を見ていますと、必ずしも、教員になろうと思っているか。私は余り実は気にしていませんで、別に今すぐにならなくても、将来なるかもしれませんから、そういう人もいますので、それについてはよいのですが、少なくても知識とか指導法については、是非育てていただきたいなということを思っています。これは、今いらっしゃる先生方のところは、きっとそうではないと思うのですが、大学もたくさんありますので、開放制というのは非常に大切なことですけれども、一方では、「何か、まあ、じゃあ、実習あるから行ってこようか」みたいなのでは、ちょっと困るなということを思います。
 京都市でも教師塾というのをやっていまして、大学の3回生ぐらいが中心です。ついこの間、第7期の教師塾というのがスタートいたしましたが、そこで学生諸君にお願いしていますのは、大学でもっと勉強してくださいということです。せめて、基礎的なことはしっかり勉強してください。それからまた、教員になろうと思ったときには、どういう力が必要なのかというのを考えてくださいと。教師塾に来たらなれると思ったら大間違いで、大学でしっかり学ばなければいけないということを、随分と強くお願いをしています。私学、国立、様々な大学の学生がいますけれども、そういったことをお願いしています。
 この教師塾の塾生を全ての学校で受け入れて、具体的に、学校というのは、こんなふうにして動いているのですよということを、実習的なものとして、そういう取組をしています。だから実習が嫌ですという意味ではないのですが、それが、寺岡委員がおっしゃいましたように、若い人がやってきて、学校が一層、それで活性化していく、うまく動いていくという状態に本当になっているのかどうかというのは、現実に学校からすると、必ずしもそうとも言い切れない。これは何も大学や大学院にのみ責任があるわけではなくて、うまく使えていない学校にも大きな責任はあるわけですから、そういったことを含めて考えていかないと、免許状の問題だけで済む話ではないということを申し上げたいのが一番の趣旨です。
【高橋座長】  やはり本当に養成側と学校現場と教育行政と力を合わせていかないといけないと思います。本日、たくさんの御意見を頂戴いたしました。基本的に、実践的科目ということで専修免許状に位置付けるという話を進めていく上で、本日の御意見を踏まえまして、幾つかのモデルを、次回、御提案させていただきたいなと思います。それで議論を集約していけばよいと思います。そのようにさせていただいてもよろしいですか。
 では、次回集約をした意見をモデルとして、幾つかのモデルを出させていただきたいと思います。
 それでは、本日はこれで閉会とします。ありがとうございました。

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