不登校生徒に関する追跡調査研究会(平成23年度)(第1回) 議事要旨

1.日時

平成23年8月2日(火曜日)16時30分から18時30分

2.場所

文部科学省 6F1会議室

3.議題

  1. 不登校生徒に関する追跡調査について
  2. 自由討議

4.出席者

委員

森田委員、伊藤委員、笹森委員、七條委員、島委員

文部科学省

山中初等中等教育局長、德久審議官、三好視学官、滝総括研究官、城戸総括研究官、白間児童生徒課長、郷治生徒指導室長、武井課長補佐

5.議事要旨

開会

議事

(1)森田委員が座長に選任された。

(2)議事の取扱いについて了承された。

(3)初等中等教育局長、各委員からの挨拶の後、事務局から資料の説明、アンケート調査案の提示がなされた。

(4)議事に基づき議論を行った。議論の概要は次のとおり。 

【委員】家庭の経済状況について聞くなら、一つの質問として中学3年時の家庭の経済状況について聞き、同時に、「家庭の経済状況が悪化したから」というような選択肢を「不登校となったきっかけ」の問いに入れる。きっかけ・要因としての経済状況と、子どもの生活環境のベースとしての経済状況とは分けた方がよい。

【委員】家庭の経済的状況の変化が、不登校という形で本人に直接影響することがどの程度あるのか。つながりが難しいと思う。単なる経済的状況だけではなく、失業した親が精神的に不安定になってそれが子どもに影響するような事例は不景気の中ではあるかもしれないが、経済的な問題については議論をした方がよいと思われる。

【委員】家庭の影響力、特に経済的な問題は大きいと感じているので聞きたいと思っている。ただ、「不登校となったきっかけ」については、本人に聞く場合の項目の立て方、質問の仕方が難しいと思う。そこで学校が把握しているなら、A調査(学校に対する調査)で、事実としてどういう環境だったかを聞くことは一つの案ではないか。また、発達上の課題に関する内容も聞きたいという話があったが、それを本人に聞くのは残酷な感じもするし、本人が自覚していないこともあるので、これも学校側にA調査で聞く方が聞きやすいのではないか。

【委員】経済状況がきっかけで不登校になるという因果関係だけではなく、高等学校進学後中退する、あるいは、フリースクールなどの有料の施設に通っていたがお金が払えず自分で抱え込んでしまう、というような面でも、家庭の経済状況の影響があると思う。こういったことをアンケートにいかに反映させるかを検討いただきたい。

【委員】二十歳を過ぎていれば、自分の中学3年当時の経済状況について、振り返ってみて、ある程度聞くことは可能ではないか。

【委員】Q7について、ここ十数年の間に、学校の教育相談も変わってきたので、どのような施設を利用したかという問いにスクールカウンセラーやソーシャルワーカー、養護教諭などの学校の中の資源も加えるとよいだろう。また、Q7とQ8を結び付けられるのであれば、各施設・機関がどのように役に立ったのか、何を果たしたのかも明らかになるのではないか。

【委員】Q23、24について、基礎学力の面での課題が挙がったが、私も大事な点だと考える。なぜなら、在校生の9割以上が小・中学校での不登校経験者である高校で、中退率の平均が当時2.5から2.6%のとき、その高校は2.5%以下だった。その高校の子どもたちは、人間関係も何とかうまくいき、卒業し、大学にも推薦などである程度入ったが、その先で行き詰まってしまった。つまり、基礎学力の問題で単位がなかなか取れないとか、高校時代までは学力面のケアをしてもらえたが、大学に入るとなかなかそうもいかず、せっかく入れた大学等に行けなくなり、もう一回やり直しになってしまう。基礎学力は、高校のやり方で一定程度まで頑張れるが、もう少し支援があれば将来の進路や進学にもプラスの効果があるのではないか。そういう点も聞ければよいのではないか。

【委員】Q30で、不登校が継続してしまう理由として、保護者のプッシュがないという話があったが、保護者だけでなく、「学校から積極的なアプローチがなかったから」という問いはどうか。要するに、親も学校も、基本的には登校刺激をする流れにはなっていても、実質的にはされていない場合もあるのではないかと思うので。また、発達障害があまりピックアップされるのはいかがなものか。あくまで、不登校の子どもたちの中に含まれているにすぎないので。発達障害がある子とない子とを比較する研究ではない。だから、このことを踏まえて質問項目にいかに盛り込むか、検討が必要だろう。実は、発達障害と不登校の関係については、明確なデータやエビデンスがあるわけではない。発達障害そのものの枠組みのあいまいさもあり、数値に幅があったりする。多いデータだと、例えば、不登校の中で発達障害の割合が3割ぐらいと言われている。一くくりで発達障害と言っても、LDの子は、学習のつまずきなので、割と早く小学校時代から不登校になる気がする。ADHDの子は、行動面の課題なので、どちらかというと思春期になって自己コントロールの問題が生じ中学校で不登校になる可能性はある。また、自閉症の子たちは、自分の中の価値基準で動くところがあるので、学校に対する必要感というのが一度感じられなくなるとそれを取り戻すのが難しいので、やはり早い時期からなるのではないか。最近の報告では、広汎性発達障害の子について、なかなか学校に復帰するのは難しいという研究が出てきてはいる。それから、ぱっと見て特異性があり、いじめのターゲットにもなりやすい面があるので、対人関係の問題がある。一般的に発達障害の子は人とうまく関われない子たちなので、もともと集団生活は苦手であり、集団生活を送る際に支援がないと、二次障害的な形での何らかの不適応行動が出てくる可能性がある。よって、そういった意味では、もともと不登校という二次障害が起きるリスクが高いと言えば高いのかもしれない。ただ、発達障害だから適応困難を起こすわけではない。歯車がうまく合っている環境にいる子たちは、発達障害でもクラスでリーダーシップをとるなど、環境との相互作用が影響する。この調査も、発達障害の方に聞くわけではないが、おそらく何%かは発達障害系の子も含まれている中での調査になる。その結果を見て、発達障害でどこまでものが言えるのか。かえって言うことのリスクの方を心配する。協議できればと思う。

【委員】発達障害かどうかの線引きは難しい。とりわけ学校現場ではかなり違うので、例えばQ6に挙げている選択肢の中に、発達的な特徴を絡ませて、多く丸が付いていたら、発達障害的な要素を持っている、傾向があるという方法も一つの方法かと思う。ただ、中途半端ではある。明確に言えないので。

【委員】仮に調査対象が発達障害の方だとすると、例えば、字の大きさや内容的な書きやすさなども工夫が必要。選択肢の並び順も、上のほうから順に見て一つ、二つ丸を付けておしまいとなる可能性があるので、必ず全部見るように書く。

【文科省】Q31について、他の一つ一つの質問のブロックが、大きなところから聞いて、具体的なところに落とし込まれているのに、Q31だけそれで終わっている。何か意図があったのか。ここだけすごく違和感がある。

【委員】これは、次のインタビュー調査の伏線だった。

【文科省】私としては、どちらかというと、未然防止にもう少し取り組まないともたないだろうと思っている。そう考えると、小学校時代、実はお友達と遊ぶのが苦手だったとか、という話がない。私はよく、トータルで見ると学校が楽しかったかどうかという質問、授業がよく分かるか、勉強が苦手だったかどうかという質問、みんなで何かをするのは楽しいというお友達関係の質問、この3項目を割とよく使う。例えば、小学校時代の本人から見たときの適応感のような質問が、もう少しあってもよいのではないか。ただ、それはインタビューで押さえてもよいかと思う。私としては、アンケート調査項目は削らないとまずいと思っている。そういった質問をすると意外に単純なところで因果関係が見えるのではないかと思っている。特に、不登校が6万人のころとは違い、残り増えた6万人分は、ささいなところでつまずいたりしたことがきっかけではないかと思っている。そうすると、増えなくてよかった部分の子たちが、なぜ増えたのか、ということも知りたい。前回調査と同じことをやるだけではなくて、小学校時代の状況についても盛り込めないかと思う。

【委員】Q4のところで、「いつからか」は聞くが、Q5は、最初に学校を休み始めたということなので、小学校の低学年の時期から休んでいた子の理由にもなる。そうすると、Q5の項目の中で、小学校時代から、あるいは中学からスタートかは少し分析できる。

【文科省】小学校から続いている子はこの調査で分かるが、中学校になってからの子たちについては、中学校になって顕在化したが小学校時代にもその芽があったのか、あるいは、小学校時代は楽しくて、勉強もよく分かっていたが、中学校になっていきなりなのか、というあたりで、小学校時代を切り分けたもの、あるいは、中学校時代と小学校時代とを比べてどうかというようなものがあった方がよいのでは。また、気になっているのは、小学校時代から勉強の面は苦手であっても、たまたま休まなかっただけで、それが中学校へ行くと、自分の意思で休めるようになり不登校となった子たち。ただ、こういったことはインタビューでも調査できるので、無理にアンケート調査に入れる必要があるかどうか。今の子どもたちの場合、小学校までは成績の話がぴんと来ていなくて、中学校へ行って勉強ができないことに気付く、ということが、一層強まっていると思う。

【委員】とりわけ、生徒指導提要でも強調しているように、小学校の生徒指導は、やはり今後充実させていかなければならないという観点があるので、今の話はそこへ返せる視点だろう。

【文科省】二十歳のころに聞くので、中学校は不登校だったが、高校でどうなり、どういうことによって、その後、就職したり大学に進学したりして今の状態になっているのか。中学以降の教育との関わりの中でフォローしておくことが大事と考えている。

【委員】高校については、中退者への進路指導をどこが担い、中退後に次の進路につながるときにどこが責任を持ってやるのかが、すごくあいまいになっている。それがうまく結びつくと、中退しても、次の進路を見つけてちゃんとやれるが、そこができないがゆえに、中退からひきこもりに、というケースもあると思う。中退者に対する支援があったのかどうかを質問に入れられればよいのではないか。また、不登校だった子がなぜ学校に行けるようになったのか、どういうきっかけで高校に行こう、動きだそうと思ったのか、なども明らかになると、支援の仕方が変わるのではないか。インタビューで詳しく聞けるかもしれない。

【文科省】今、高校もかなり弾力化しており、不登校の子どもを多く受け入れることを前提にした高等学校も増えてきているので、中学校では行けなくても、高校なら行ける、というところもある。その辺が本当に効いているのかどうか、有効に働いているのかどうか、というあたりを聞ければと思う。

【委員】高校に行きたかった理由や、高校が続いた理由が見えるとよいだろう。

【文科省】それから、不登校の子どもたちについて、中退もそうだが、学校で一生懸命やっている取組の他に、学校外のところで支える仕組みをつくろうという施策も若干動き出しているので、それが本当に効いているのか。焦点の絞り方だとは思うが、不登校になったことに焦点を絞るか、不登校だった子どもが現在の状態に行き着くまでにどういうところがプラス・マイナスとなったのかに焦点を絞るか、が問題になると思う。

【委員】インタビューの段階にきた子は、好転している可能性が高い子だと思うが、それゆえ、インタビューでは、好転した、プラスに働いた可能性をいろいろと聞くことがよりできるのではないか。今までのことをどう受け止めているか、プラスのテーマはインタビューである程度聞き出していけばよいかと思う。

【委員】アンケートに答えた子どもの中にも肯定的に受け止めている子が多く、さらにインタビューを受ける子どもは、肯定的に自分の人生を考えている子が確かにいるので、インタビュー調査とアンケート調査を振り分けて掘り下げることも必要だろう。ただ、ウエートをかけるのを、未然防止か不登校になってからの支援体制にするかは、限られた調査項目なのでしっかり決めておかなければ、どっちつかず、中途半端になってしまうだろう。

【文科省】高校の不登校、中退に関しては、生徒指導研究センターが、ある地域の今年度の高校1年をずっと追跡していくという調査を実施する。したがって、現在の施策がどう役に立ったかというのは見える。反対に、この不登校追跡調査は、今から4、5年前の高校のことなので、良い話が出てきたとしても話半分になってしまう。アンケートよりインタビューで聞けばよいのではないか。場合によっては、センターの調査で答えが出てくるものもあるのではないか。したがって、このアンケート調査では、本当に入れなければならないものを残し、質問を減らす必要があると感じる。

【委員】これは、ある意味では、過去を振り返るだけの、自分の心の整理がついた段階、成人の段階で設定しているので、渦中に巻き込まれている子と、振り返ってというのとでは性格が変わってくる。

【文科省】ただ、ここのアンケート調査の中でそこのところをやろうと思うと、かなり細かく設定しない限り、集計結果を見ても分からないだろう。それよりは、インタビュー調査まで残った子という限定はあるが、インタビューで、具体的に「あのとき先生がこれを言ってくれたのが大きかった」とかいう話を聞く。アンケートに無理に入れると難しいと思われる。

【委員】Q7とQ8を関連付けてという発言があったが、例えば、Q8は、中3のときにこんな支援があったらよかったという問いで、高等学校に入った後どのように受けることができたかどうか、また、Q7は、高校相当年齢だと、なかなか場所がないと言われるので、インタビューで、どのように自分でそれを見付け、相談したのか尋ねる。Q5も、小学校、中学校、高等学校、あるいはQ6も、高校以降で、Q5とかQ6が、どうなっていったかというあたりのところを聞けるとよいかと思う。どういうことで克服したとか、あるいは、課題として残るものがあっても、何がエネルギーとなって、また頑張ろうというモチベーションを高めたか、インタビューでだと思うが、分かればよいと思う。それでいて、小中学校時代に、不登校にならないように何をするかが大事なので、遡って手が打てれば、それに越したことはない。

【文科省】インタビュアーには、例えば、アンケートでこの項目に丸を付けた場合にはインタビューでその理由を聞いてもらうようにお願いするとか、Q7、Q8などインタビューで詳しく聞くという意見が出た項目については、アンケート結果を見ながら背景やその後を少し詳しく聞いてもらうようにお願いするとよいだろう。

【委員】当時は、義務教育だからこそ不登校という問題があったのであり、高等学校の不登校は、制度外という位置付けだった。だから、今回は高等学校へ後をつないでいかなければならない。そこで、国研の高校1年生を対象にする調査の調査項目と突き合わせて、重ね合わせられるところは節約して、国研で分かることと、この調査でしか分からないこととをクリアにしておかなければ。その点も考えながら、前回の欠けていた点をどのように補っていくか。不登校や中退へ結びついたり、あるいは、就職だとか、いろいろな形の在り方がある。今の高等学校制度も勘案しながら、もう少しこれは拡大する必要があるだろう。

【文科省】発達障害については、平成16年あたりに発達障害の状況調査をやったが、学校に聞く場合、学校がその子に対して発達障害の視点の中で在学中に特別な支援をしていたか、また、それをどのような形でしていたかという観点であれば聞けるとは思う。

【文科省】前回調査と今度の調査は背景的に違うところとして、発達障害だとか児童虐待という話があったが、児童虐待のことについては、この調査の中に盛り込むのは難しいだろう。

閉会

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初等中等教育局児童生徒課生徒指導室