キャリア教育における外部人材活用等に関する調査研究協力者会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成23年2月24日(木曜日)15時30分~17時30分

2.場所

旧文部省庁舎2階第1会議室

3.出席者

委員

鹿嶋委員、渡辺委員、岩田委員、長田委員、江川委員、清川委員、清水委員、竹花委員、西山委員、野上委員、廣田委員、星野委員

文部科学省

山中初等中等教育局長、德久大臣官房審議官、磯谷児童生徒課長、大月児童生徒課課長補佐、藤田生徒指導調査官 他

オブザーバー

兵庫県教育委員会・西田指導主事、厚生労働省・伊藤室長補佐、経済産業省・林企画官、文部科学省・袖山高校教育改革PTリーダー、文部科学省・山下生涯学習企画官

4.議事要旨

(座長の御発言-□ 委員の御発言-○ 事務局(オブザーバー)の発言-●)

(1)全国におけるキャリア教育の取組状況等についての概要説明

  • 資料2をもとに事務局から全国におけるキャリア教育の取組状況等についての概要説明がなされた。

(2)教育委員会等のキャリア教育の取組事例について(発表)

  • 資料3をもとに長田委員から小・中学校を中心とした仙台市教育委員会でのキャリア教育の取組事例について説明がなされた。

質疑応答の概要は以下のとおり。

○仙台市の小中の学校数を教えていただきたい。
○中学校が65、小学校が125。

○小中連携等も既に行われているか。
○行われている。情報交換、実態の共有、把握などを主に行っている。

○協力している企業の数はどのくらいあるか。そして、教育委員会や学校から協力企業へどのように依頼をしているのか。
○仙台市は1学年に中学生が約9,000人いる。教育委員会側からは、中学生の職場体験活動において、同じ職場へ同時に3人まではいいけれども、4人以上は行かせないよう学校現場へ依頼している。生徒側に群集心理が働き、体験活動がうまくいかなくなる場合があるのでそのようにお願いしている。そうすると、延べで1年間に約3,000箇所の事業所に職場体験活動に協力を頂いている。
 依頼の方法だが、仙台市のハローワークに協力をしてもらっている。ハローワークが各企業へ求人票を配る際に、仙台自分づくり教育の一環で職場体験活動を引き受けてくれるか否か、もし引き受けてくれるのであれば、引受け可能な日時はいつか、場所はどこかなどを、アンケート形式で調査をしてくれている。またその調査結果を一覧表にして、教育委員会の手を経由せず、直接中学校に送ってくださっている。最も助けられた。
 あとは、各中学校区にある学校支援地域本部を使ったり、校長先生自ら体験先確保のため事業所開拓をしたりしている実態もある。

○先ほど事務局から説明があった資料2の職場体験活動実施状況の中で、仙台市は63校100%が職場体験活動を実施しているが、5日以上実施している校数は10校に過ぎず、その実施率は15.9%にとどまっているということが記載されている。以前、東京都教育委員会でも職場体験活動の長さを3日にするのか、5日にするのかいろいろと議論があって、兵庫県の事例などから学んで5日間といことでやっている。なかなか5日を確保して実施していくのも難しいという状況もあるが、仙台はどのような状況か。
○平成18年度に職場体験活動を始めてから5日間の実施率は微増している。実際には実施している学校数は増えてはいるが、実は難しいのは、校長がかわると3日間になってしまったりするケースもある。徐々に徐々に増えて、今年は15校になっているので、去年よりは5校増えているが、今までの実施している学校プラス新規5校だったということではなく、今まで実施してきている学校も3日間になってしまったりするケースもあるというのが実態。4日というところも何校かある。また、ここの二、三年、事業所の方から、3日だったら受け入れられるが、5日は厳しい旨の話もあったりする。学校によっては、5日で実施しているが、異なった事業所を3日と2日とを組み合わせて行わないと全生徒を見つけられないというような実態もあって、ここのところ数年苦しい状況が続いている。

○それは事業所の都合か。それとも学校の中で勉強時間が増えてきて、5日は難しいと校長先生が判断されているということか。
○これは両方があると思う。事実、校長がかわって実施日数が少なくなったという例もあるし、また、逆に学校側は5日間を本当は実施したいが、事業所が確保できないということもある。

○資料2の調査の中で職場体験活動の実施日数には、事前学習、事後学習などに費やした日数も入っているか。
●入っていない。

○卒業生追跡調査のところに興味を持った。働くということを考える上で、仙台市の学校での取組が役に立ったといことだが、生徒がどのような内容を役に立ったとしているのかなど、調査の内容を詳しく聞きたい。
○まだ調査内容はそこまで深くは聞けていない。卒業生を追跡し調査をするには、調査対象者が簡単に答えてもらえるような内容でなければならないと考え、深い内容にできていなかった。今年度以降、もう少し深い内容を聞いて参りたい。

□その調査の回収率はどれぐらいだったか。
○60%ぐらい。子供たちが卒業して、大学に行ったり、就職したりする4月1日よりも前、つまり3月中に調査を行うと言うのが鍵だったように思う。

○職場体験ディレクターを活用してうまくいっていると伺ったが、職場体験ディレクターのような人がいると、本来教員が考えなければならないところまで、職場体験ディレクターに頼ってしまって、ある意味で丸投げのような形にならないか。
○連絡の行き違いや会場の勘違いの等、当初はいっぱいあった。とにかくどんなクレームが来ても教育委員会側が悪いと言うことで謝るほかなかった。謝って、謝って、その後に良い関係を築いてきた。

○その職場体験ディレクターは校長先生を御退役された方がお一人でやってらっしゃったのか。現在もいるのか。
○退役校長にお願いして、現在もいる。

○その方の人件費は教育委員会が出していたのか。
○しかり。再雇用という形で、いわゆる指導主事待遇でお願いしている。

○各中学校区には更に学校支援地域本部の地域ディレクターという方がおられるとも伺ったが、その方と職場体験ディレクターの方は連携しているのか。
○している。

○キャリア教育コーディネーターも利用されていらっしゃる。どういう基準で選ぶのか。
○いろいろなボランティアで既に活動している方がいらっしゃって、その中でもコーディネーターなどに適されている方がいらっしゃるということが、何年か校長をやっていると分かる。そのような方にお任せしているケースなどがある。基本的には、校長先生に選定をお任せしている。

  • 資料4をもとに兵庫県教育委員会・西田指導主事から中学校を中心とした兵庫県教育委員会でのキャリア教育の取組事例について説明がなされた。

質疑応答の概要は以下のとおり。

○兵庫県はやはり中学生の5日間の社会教育の先べんをつけられたと思うが、なぜ5日間という日程を設定したのかということが質問の一つ。
 もう一つは、例えば、個人商店だったらこういうプログラム、大規模な製造業だったらこういうプログラムというような、モデルプログラムのようなものはつくっておられるのか。
○まず、5日間という長さだが、兵庫県は自然学校をやっていて、それを参考にした。自然学校は5泊6日で、その中で1日目、2日目ぐらいは、子供たちは普通に過ごすが、3日目ぐらいから子供たちはトラブルを起こし出す。トラブルを起こして、自分のわがままが出だす。そういう中で、友達のことをいろいろ考えて、クラスがまとまったり、人のことを考えたりすることがある。これも3日目で変わる。だから、3日目を超えたやはり5日間は必要であるという結論に至った。
 またモデルプログラムの質問だが、これは正直申し上げると何にもない。ただ、当初、県は18校だけモデル校を選定し、職場体験活動をやってもらった。それをすぐ1冊の冊子にまとめて、それを残りの三百数十校に配って、モデル校を参考にしながら取り組んでいただいたという経緯はある。

  • 資料5をもとに野上委員から高等学校を中心とした埼玉県教育委員会と埼玉県の産業界でのキャリア教育の取組事例について説明がなされた。
  • 調査官の藤田から埼玉県の取組を視察した際の感想が述べられた。以下の通り。

●4者面談をした際の効果について感想を述べる。まずは学校の先生方に気づきがある点。やはり会社を担っていらっしゃる企業人の方々が胸をひらいて、高校生に本当に親身になって声を発しているという点で、先生方が「やはり人の一生に関わるということはどういうことなのか」ということを改めて感じる機会となる。特に面談の場合、教員は誰かと連携することが余りない。迷っても相談する相手がいない。そういうときに、一緒に子供に向かっているという、その先生方の発見というものは非常に大きいものがあると感じた。
 2点目が、やはり保護者の気づきがある点。保護者はやはり自分の高校生時代を連想して、あるいは、大学生時代を連想して子育てに当たるが、やはりそれと大きく時代が異なっている。その異なり方をやはり経営者の口から実際に聞くことができる。それがやはり先ほど野上委員から御指摘になった、これだけの人たちが親身になってくれているんだという子供たちの発見につながるのだろうと感じた。

(3)討議

○仙台にも兵庫に伺いたいが、この職場体験活動の5日間というのは、学習課程上はどういう位置づけがなされているか。
○兵庫県の場合は、基本的には特別活動の時間でやっている。

○仙台市の場合は、総合的な学習の時間を使っている。総合的な学習の時間の趣旨に添うように学校の指導計画を立て、職場体験活動だけがイベント化してしまわないように、1年を通していろいろな職業観や生き方などを経験したり勉強したりすることも考え計画を立てている。しかし時間的に苦しい。来年度、総合的な学習の時間が70時間しかないうち、5日間の職場体験で使うと、30時間を占めてしまう。残りの40時間を事前事後指導等に充てるとなると、かなり苦しい。ただ特別活動よりはまだ総合的な学習の時間の方が、授業時数があるので、特別活動だけで実施することは考えていない。
●国が行っている調査と今の質問の趣旨に関して補足する。資料2を確認すると、中学校の職場体験では、全国の中学校のうち85.2%が総合的な学習の時間で実施している。一方で7.9%が特別活動で実施している。その総合的な学習の時間の趣旨だが、自分の生き方を考えるということも目的の一つなので、趣旨としては、未来展望、将来設計という観点で、決して矛盾するものではない。ただ、時間的なことから、特別活動では時間が限られているので、総合的な学習の時間の活用が多いのではないか。一方で、高等学校だが、総合的な学習の時間が24.2%、高等学校の特有の専門学科での現場実習等別の科目で23.7%が実施している。また特徴的なのが、夏休みなどの長期休暇中に自由参加で行っている学校が多く、教育課程に位置づけないというのが高等学校では特徴的。

○文部科学省としては、この職場体験についてはどのような指導をしているか。
●先ほど説明したとおり、学習指導要領の解説の中で、特に特別活動の一環の解説で、実施期間は「5日程度が望まれる」という文言で学校現場へお願いしている。また、キャッチフレーズのようなキャンペーンを一時期立てていて、現在でも継承しているが、「緊張の1日目、仕事を覚える2日目、仕事になれる3日目、創意工夫の4日目、感動の5日目」というようなキャッチフレーズをつくりながら、5日間をめどとして、それぞれの学校の事情、地域の事情に従ってやってもらっている。

○これだけ各都道府県でばらつきがあるということの理由は、文部科学省として指導が行われていないか、行き届いていないということが理由になっているんじゃないか。東京都教育委員会も同じだが、何も指導していない。でも、知事部局の方の努力があって行われてきたが、そのような指導を通知文書みたいな形で出したりはしないのか。
●平成17年から始まったキャリアスタートウィークのときに、県の教育委員会に通知文が出ているが、それ以降、文部科学省として単独の通知文は出していない。
●確かに出していない。しばらく事例集づくりとかマニュアルづくり等はしているが、通知という形では、新しい学習指導要領の中の位置づけと、その学習指導要領の解説という形での通知以外にはまだ出していないというような状況であり、まさにそういったことを含めてここで御議論いただきたい。
●平成17年からの3年間、そのキャリアスタートウィーク、全国の中学校2年生全員を対象に、できれば5日以上、社会体験をやらせたいという思いで、委託事業で始めました。昨年度、約2割の学校が5日以上の職場体験活動を行っている状況にあるが、その予算が去年は事業仕分の中で削られてしまったということも一方ではある。

○この活動はあまる大したお金もかからないので、文科省はしっかりしろと言いたい。
●おっしゃるとおり。現在では、産業社会と人間という科目が専門高校では必修でやっているが、普通科でもそのような時間を設けるなど、高校生全員にこのようなことは体験させるべきだと思うし、全ての高校でできていないというのは大きい課題だと思う。

○やはり全ての学校で5日間の職場体験活動のようなことをやってもらうということを中心に議論していくこと重要と私は考える。
□本日の資料にもありますが、文部科学省と国立教育政策研究所とでパンフレットや手引書などをかなりのお金を掛けて作成している。平成16年以降、膨大なお金をかけて文科省としてもキャリア教育を推進してきたし、厚生労働省、経済産業省も協力して、いろいろな事業展開をしてきた。国や各省、各都道府県なども力を入れているところもある。これで十分かというと、そうではない部分もあるが、かなり一生懸命やってきていただいたと感じている。
○私は非常に不十分だと思う。お金の使いどころはパンフレットを作ることではないのではないか。もっと実質的なことに使われるべきだろうというふうにも感じる。やはり5日間の職場体験活動の割合がこの程度にとどまっていることに満足してはならないと思う。一生懸命やってきて、20%足らずじゃ、何をしとるんだという、そういう話だと僕は思う。

○仙台市と兵庫県に聞きたいが、今御説明があったように、文部科学省や国立教育政策研究所のパンフレットでキャリア教育についての周知もできているということだが、ここ数年、実際現場で新しく職場体験活動などのキャリア教育に積極的に参加されている企業、参加させてほしいと申し出てくる企業、あるいは、依頼した際にすすんで参加してくれる企業が増えてきたのかどうか。職場体験活動を行っている学校数の数字だけを見ると、増えてきたということだが、その理由は抑えているか。そこによって、今後の広げ方をどういう方向性に持っていったらいいかということが異なってくると思う。感覚的でも良いので、どのような感じか御教示願いたい。
○兵庫県では、確かに電話がかかってきて参加したいという方はいらっしゃるが、かなり少ない。地域のために私たちも何か子供たちに関わって貢献したいということで電話をかけてくるが、数としてはかなり少ない。続けてもらっている企業はたくさんある。数字は把握していない。
○仙台市では、新規参加企業がこの二、三年すごく少ないというのが実状。継続されているところは多いが新規は非常に少ないというのが感覚。

○ということは、やはり幾らいいコンセプトはあっても、それを本当に企業側へ伝え切れていない、あるいは、企業側のボランティアレベルで終わってしまっている可能性が強い。今後の大きな課題になってくるのかなと思う。特に中小企業は年々精神的に厳しい環境になっていっており、このような活動に参加することの企業としてのメリット等を伝えていかなくてはならない。今後この会議でそのような議論もしていきたい。

○先ほど来、仙台市や兵庫県などのすばらしい事例を聞いて、こんなにうまく行っているところがあるのかと正直、驚いている。しかしながら、できていないところ、失敗した例というのを見ないと、全国的なボトムアップというのは難しいと思っていて、失敗した事例に潜む理由などもここで議論をする必要があるのではないかと考えている。というのは、先ほど来竹花委員が、各都道府県における職場体験活動の連続5日間実施率のばらつきについて言及されているが、ではそれが当該都道府県ではなぜできていないのか、そのあたりを検証しないと次のステップに進むことができないと思うので、是非そういった事例も集めて、ここで御議論をすることができたらと考える。
●関連して、平成20年と平成22年に実施された東京商工会議所おける教育支援活動活性化について調査をだが、教育支援活動、中心的にはインターンシップの受入れ、それから、職場体験の受入れを行った企業は、平成20年度全体の約63%で、平成22年では65%に増えている。リーマン・ショックを経て増えているが、増えている理由としては、人材の育成の一環として活用する企業が増えてきていること、CSRの一環としての教育貢献として協力している企業が増えてきているということ、それから、企業の後継者育成という観点から中間財などを製造している中小企業が、社会的に認知してもらいたい、自分たちの存在を知ってもらいたいとのことでした。

□そろそろ会議終了の時間だが、最後に文部科学省側から何かあるか。
●リーマン・ショック以降のこの経済状況の中で、離職率も高いし、就職率も下がっているということもあり、社会的にも大きな課題になっている。今までどちらかというと教育界では、このような現実の社会の問題には余り触れず、基礎的な力をしっかりつくるのが学校教育だということでやってきたが、それだけではもう不十分だという時代である。待ったなしの状況になっているので、すべての子供が、どのような形で職業について真剣に考える機会を中学校、高校などでつくっていくのか。そのためには、学校の先生だけでは不十分なので、どのような形で学校外部の教育資源を活用していくか、それをどのような形で各都道府県なり各学校が取り組んでいけるようにするか、そのようなお知恵を頂きたいと考えているのでよろしくお願い申し上げる。

(4)その他

・資料6をもとに事務局からキャリア教育に関する調査について説明がなされた。

 

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