資料1 「外国語能力の向上に関する検討会」のとりまとめに向けたこれまでの議論の整理

<検討に際しての背景>

○ 政治・経済をはじめ様々な分野でグローバル化が加速度的に進展し、ヒト、モノ、カネが国を越えて一層流動する時代を迎えている。
○ グローバル化は国内外で急速に進んでおり、これまでのように大手企業や一部の業種だけではなく、様々な分野で英語力が求められる時代になっている。また、英語力の有無が企業における採用や昇進など将来に大きな影響を与えているという事態も指摘されている。
○ また、グローバル化に伴い、異なる文化・文明との共存や国際協力の必要性も増大している。今回の東日本大震災で海外から多くの支援を受け、日本人一人一人が国際社会の一員として海外との結びつきやそれを支えるツールとしての英語の重要性をあらためて認識したところである。
○ 一方、近年、海外留学する高校生・大学生の減少など日本の若者のいわゆる「内向き志向」が指摘されているが、世界的な競争と共生が進む現代社会で豊かな語学力や文化経験を身につけ、国際社会で活躍する人材を育成することは重要である。
○ 外国語能力、特に英語力は、グローバル社会を生きるわが国の子どもたちの可能性を大きく広げる重要なツールであるとともに、我が国の国際競争力を高めていく上での重要な要素となっている。本年4月から小学校を皮切りに新学習指導要領に基づく授業が始まる。新学習指導要領では、外国語教育の改善・充実を図ったところであり、新学習指導要領に基づく外国語教育を着実に推進していくことが、我が国全体の外国語能力の水準向上に不可欠である。

1.英語の授業から日本の授業を変える

○ グローバル社会で求められる英語力をはじめとした外国語能力とは、異なる国や文化の人々と外国語をツールに効果的にコミュニケーションを図ることが出来る能力と言える。
○ 効果的にコミュニケーションを図ることが出来る能力とは、例えば、異なる国や文化の人々と臆せず積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や、相手の文化的・社会的背景を適切に理解した上で、相手の意図を読み取り、自らの考えに理由や根拠をつけ加えて、論理的に説明出来る能力などが挙げられる。
○ このような能力を育成するためには、教員が一方的に話す講義形式中心の授業から生徒の言語活動中心の授業へと抜本的な授業改善を図る必要がある。
○ 英語は他教科と比べて活動を基礎とする内容となっていることから、積極的に授業の中でディベートやディスカッションの時間を確保したり、ICTを活用した海外との交流学習や協働学習等の取組を行うことが期待される。
○ また、このような能力は、英語教育だけの問題ではなく、新学習指導要領の中で各教科を貫く言語活動の充実を通して学校教育全体を通して育成するものであり、英語の授業が変わることで、我が国の授業全体を変えるということも可能ではないか。

2.成果を検証する

○ 実用英語技能検定(英検)は、学習指導要領の内容に基づき作成されており、中学校・高等学校卒業時に求められる英語力として示すことは、生徒の英語力を測る際の目安として有効である。
○ 英語教育を改善するための課題を的確に把握するとともに、個々の生徒の英語学習のモチベーション向上を図るためには、目安とするだけでなく実際に生徒の英語力を把握・分析することにより、求められる英語力に対する成果の検証が必要である。
○ 各学校では、新学習指導要領の着実な推進のため、また、グローバル社会に対応する英語力を育成するため、それぞれの学校の実態や生徒の能力に応じて英語教育に関する学習到達目標を設定するとともに、各学校でその達成状況についての適切な検証を行うべき。

3.若者にグローバルな夢を持たせ、英語学習のモチベーション向上を図る

○ 外国語能力、特に英語力は、グローバル社会を生きるわが国の子どもたちの可能性を大きく広げる重要なツールとなっており、英語が使えるようになったら将来どのようなことが可能になるのかを具体的に示すことにより、子どもたちにグローバルな夢を与え、英語学習のモチベーション向上につながるのではないか。
○ 英語で実際にコミュニケーションを図れた経験が喜びや自信となり、英語学習のモチベーション向上につながる。その意味で、英語を使う機会を充実することが重要であるが、その際は、ALTをはじめとして、英語に堪能な地域の専門家や、民間企業OB、学生ボランティアなど民間の力をさらに活用すべきであると同時に、それらの人材と各学校とをつなぎコーディネートする人材や組織が重要。また、英語を使う活動は、やらされ感のあるものではなく、生徒が興味のある分野や生徒のやる気を刺激する方法で行うことが重要。
○ 人生における多感な時期に、多様な文化や背景を持った人々と触れあうことにより、視野を広げ見識を深めることは、国際社会で活躍できる人材を育成する上でも重要であり、高校生・大学生留学をさらに推進すべき。

4.英語でコミュニケーションを行う機会を増やす

○ 英語もスポーツなどと同じで、習得するためには使う練習が必要であるが、一方で、生徒が英語を使う機会は基本的に英語の授業内に限られており、英語を使う機会が十分に恵まれていないのが現状である。ALTやICTを効果的に活用することにより、英語を使う機会の充実が図られるとともに、異文化・自文化理解や英語学習のモチベーション向上にも資する。

(1)ALTの力をもっと使う
○ ALTの趣味や特技を活かし英語の授業内のみならず他の授業や部活動、特別活動などの授業外においてもALTを活用する機会を充実させるべき。その際は、より柔軟な活用が可能なJET-ALTの役割は大きい。また、英語サロンなどの授業外の取組については、授業における取組との連携を図るべき。
○ ALTの効果的な活用を図るためには、ALTに求められる役割や期待、ティーム・ティーチングの効果的な指導方法などについて、ALTや英語教員が理解を深めることが重要。また、ALTの取組への定期的な評価やフィードバックが重要。

(2)英語こそICTを最大限使う
○ 英語は他教科と比べ活動を基礎とする内容となっていることから、ICTを使った授業を積極的に導入することが可能ではないか。
○ 具体的には、ICTを用いた海外との交流学習や協働学習は、英語によるコミュニケーションの機会の充実や異文化・自文化理解、英語学習のモチベーション向上にも資するものであり、有効である。また、交流学習や協働学習の推進のためには、交流学習を取り込んだ英語の授業のカリキュラムのモデルを示したり、交流学習や協働学習のコーディネートを行う組織を紹介したりすることが必要である。
○ 英語を習得するためには、反復練習やリスニングなど、個人でのトレーニングが重要であるが、そのような個別学習、課外学習においてオンラインの動画・音声教材などのICTの活用が有効である。ただし、その際は、適度なコーチングとモニタリングが必要であり、効果的なコーチングやモニタリングの手法に関する研究や研修が必要。
○ デジタル教科書、教材を活用しわかりやすい授業を行うなど、ICTの活用により授業の効果・効率を高めることが可能となるが、その際は教員のICT活用力や授業設計力の向上が必要。
○ 教材や授業実践事例など英語教育に役立つ情報を集めたポータルサイトを構築することが有効である。

5.先生に自信と力を

○ 英語の授業の在り方を変え、生徒の英語力向上を図るためには、英語教員の指導力の強化が重要。英語力については、英語ができるから「いい先生」というわけでは必ずしもないが、上述のような授業を実現するためには一定程度の英語力が必要。
○ 英語資格試験のスコアを活用した英語教員に求められる英語力はこれまでも示してきたところであるが、英語教員の英語力を測る際の目安として有効である。また、目安とするだけでなく実際に教員の英語力を把握・分析することにより、求められる英語力に対する成果の検証を行い、英語教育の改善につなげることが必要。一方で、英語資格試験では英語教員のすべての能力は測れないので、現状ではとるべき選択肢のひとつではないか、という意見もあった。
○ 教育委員会においては、英語教員の採用に当たって、採用の条件に英語資格試験のスコアを求めるなど、英語教員に一定の英語力を求めるようにすべき。
○ 英語教員には、特に、授業をつくり上げる力と生徒の英語力を評価する力の育成が重要。生徒の英語力の評価については、これまで定期考査などにおいて「聞く」「読む」といった受容技能の評価に偏っていたが、「話す」「書く」といった発信技能を評価する力を育成していくべき。
○ 英語教員の英語力・指導力向上のためには、英語教員に対する集中的な研修を実施することが必要。また、「日本人若手英語教員米国派遣事業」を引き続き推進していくとともに、研修の成果の普及を図り、英語教員全体の水準向上につなげていくことが重要。あわせて、「求められる授業」「学習指導要領に沿った授業」など具体的な授業のイメージを英語教員に伝えることが重要。
○ 英語教員の個人の努力には限界があり、頑張る教員の努力を自信につなげていくためには、個人の取組を線や面に広げられるよう、優れた取組を行う学校がハブの役割となり域内の学校にその取組を普及させるなど、教育委員会が主体となって地域全体で戦略的な英語教育改善を図る必要がある。各学校においても、校長など管理職のイニシアティブのもと、英語教員が学校全体で共有する目標を設定し、チームとなって授業改善に取り組むことなどが重要。
○ グローバル社会に通用する人材の育成のため、英語以外の科目や授業外の取組も英語で行う学校や英語教育にも力を入れるスーパーサイエンスハイスクールなど、先進的な取組を推進することが必要。
○ 教員養成課程において、生徒の英語力の向上に資する英語教員の英語力・指導力を育成するよう改善・充実を図っていくべき。特に、小学校教員の教職課程においては、外国語活動に関する科目の開設をさらに進めるべき。

6.グローバル化時代の大学入試

○ 一部の大学では、AO試験において英語能力試験のスコアを所持していることを条件に英語の試験を免除しているが、このような取組をさらに進めることも考えられる。
○ 大学入試における英語の試験は、「話す」力を含めたグローバル社会に通用する英語力を測るものに必ずしもなっていないのではないか。
○ アドミッション・ポリシーのさらなる明確化をはかり、公表することにより、小・中・高等学校と大学を貫く一貫した英語教育が可能となるのではないか。

お問合せ先

初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室

企画調整係
電話番号:03-5253-4111(内線3787)

(初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室)