外国語能力の向上に関する検討会(第7回) 議事録

1.日時

平成23年5月26日(金曜日)10時~12時

2.場所

中央合同庁舎第7号館(金融庁)9階 共用会議室-1(903)
東京都千代田区霞が関3-2-1

3.議題

  1. これまでの審議のまとめ

4.出席者

委員

吉田研作座長、池上久雄、市村泰男、卯城祐司、岡田恵介、太郎良博、中村保、根岸雅史、松本茂、本下俊秀

文部科学省

山中初等中等教育局長、德久審議官(初等中等教育局担当)、中井国際教育課長、渡邉外国語教育推進室長

5.議事録

(1)開会

【吉田(研)座長】  それでは、定刻でございますので、ただいまから第7回外国語能力の向上に関する検討会を開催させていただきます。
 本日はお忙しいところをご参集いただきまして、ありがとうございます。本日は、これまでの審議のまとめを議題として、これまで6回行われてきた検討会での議論を踏まえて、審議の取りまとめに向けて皆様のご議論をいただきたいと思っています。
 まず本日の議題に関して、事務局から配付資料についてのご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

(2)事務局説明

 渡邉外国語教育推進室長から資料1について説明。

【吉田(研)座長】 どうもありがとうございました。今まで6回開催してきた内容についてまとめていただいて、主要なポイントを抜き出していただいているわけですけれども、今日の進め方としては、どなたかヒアリングということで来られるわけでもありませんので、できるだけ皆さんにいろいろなご意見をいただきながら、最終報告に向けてそれぞれのポイントについてより固めていきたいなと思っています。
 そういう意味では、全体に対してご意見はありませんかといっても、あまりにも大き過ぎると思いますので、それぞれ1から6とございますので、それについて皆さんから何か、全員1回ずつということではなくて、複数回でも構いませんし、項目によっては私は意見がないという方はそれでも構いませんので、自由にいろいろ発言していただきながら少しずつ中身を固めていければなと思っています。
 検討に際しての背景に関しては、これはもうよろしいかと思います。現状はこうだということに関してはそれほど大きな問題はないと思いますので、まずは1番の英語の授業から日本のほかの教科を含めた授業を変えていくのだという、この項目に関して皆様から、どなたでも構いませんが、何かご意見がございましたら発言していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

(3)自由討議

【池上委員】 ちょっとすみません。背景についてですが、背景というわけではないと思いますけど、今回の震災に当たって、やはり我々、その途中もこの会議をやってきているわけです。例えば震災に当たって、世界の人たちから大変な支援と協力を、励ましをもらいました。一方で、日本からの情報発信が足りないということで、殊に英語における発信が全く足りないという厳しい批判も受けております。このようなことを通じて日本が世界の中で孤立しているのではなくて、世界とのつながりの中で生きていくという姿を実際に目の当たりにし、今後もこういうことが必要だということが認識されたというような、そういった今の状況での文言のようなものを入れたらどうかなと思います。ここは皆さんのご意見にお任せしますけれども、いかがでしょうか。

【吉田(研)座長】 ありがとうございました。多少は触れていると思いますけれども、確かにもう少しその辺についてはきちんとした形で、本当に今回大きな体験でしたので、具体的にもう少し書いたほうがいいかと思いますが、ほかの方、よろしいでしょうか。
 今背景についての部分、池上委員からご意見が出てきましたけれども、ほかにもありますか。

【松本委員】 グローバル化、グローバル化と、この検討会でも随分取り上げましたが、高校や中学校の現場に行くと、日本は本当にグローバル化に向かっているのかと思ってしまいます。先生たちは、日本はグローバル化しているとは感じてないような気がします。このことが根本的な問題ではないでしょうか。グローバル化している、グローバル化に向けて教育を変えていく必要性があるということをどうやってシェアしていくのかということが、この報告書にとっては一番重要なことではないでしょうか。どのように指導法を変えるかというよりは、先生たちの意識をどう変えるのかということが一番大きな課題ではないかと思います。

【吉田(研)座長】 ありがとうございました。今までもいろいろな研修をやっていても、同じことを皆さん、多分研修に携わった先生方は感じていると思います。確かに今おっしゃったのは非常に大事だと思います。一番根本的な部分ですよね。先生が変わらなければ、あと何も変わらないわけですから。意識というところが一番大事だということも頭に入れながら、どこにどういう形で、具体的に意識改革というか、それを具体的な形で折り込んでいけばいいか、その辺も考えながら、皆さんこれから議論していただければいいかと思います。ありがとうございます。

【卯城委員】 背景のところの4点目の内向き志向についてですけれども、確かに今の高校生、大学生、若者は内向き志向で、留学生の数も減っていることは減っております。そのような志向が全くないかというとそうではないですが、1つには、日本の大学や大学院のシステムが徐々に整ってきて、そこでも勉強ができるということがあると思います。もう一つは、やはり日本のシステムは流動性がないので、行って戻ってきてどうなのかというところもあるように思います。ですから、高校、大学の段階、あるいはもっと社会に出てから、生涯の中で海外に行って、例えばいろいろな仕事を経験するとか、大学、高校、違うところを経験してから戻ってきたときに、今の段階ですと、学期制も違いますし、戻ってきて単位も生かされないということがあると思います。
 個人的ではありますが、私は、大学時代に文科省、旧文部省の教員養成大学学部学生派遣で1年間アメリカに行かせていただきました。単位の互換ができて、4年間の中で1年間、アメリカに行かせていただきましたけれども、4年で卒業することができました。今の大学、大学院、高校の中で、そのような形、単位の互換とか、システムの流動性といったことを高めていくことができれば、もっと海外に出やすくなるのではないかと思いました。
 文言は結構ですけれども、そういったところの背景も入れるといいのではないかと思います。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。これも確かに制度が違うということで非常にやりづらい点があるのは事実ですね。単位互換の点で1つ上智大学でもずっと誤解していた点があって、ようやく去年解消してほっとしているところがあるのですが、海外でとってきた単位を30単位まで換算できるということで、認定できるということはずっとやってきましたが、どういうわけか教職の単位はできないという印象をずっと持っておりました。ところが、いろいろと文部科学省の方と話していたらそのようなことはないということがやっとわかりました。去年の秋から、教職に必要な単位の互換も留学して取得してきた単位は可能であるということで、うちの大学の中の規定をやっと変えましたので、その辺の誤解などもあるかもしれません。ですから、制度上できないと思っていることが実はできるということもあり得ます。そういう意味でも、制度上もう少しどういうことが本当に可能で、まだ問題として残っているのはどういうことなのかということを整理するという必要があるという点は指摘しておく必要があると思います。

【根岸委員】 そろそろ1番に移ったほうがいいとは思うのですが、最初に気になってしまったので、発言します。
 もしかすると私が休んでいたときに議論されたのかもしれないですが、この検討会の名前が外国語能力の向上に関する検討会ということで、この5番目のところも外国語能力、特に英語力はということで、ずっとこの委員会では外国語と言いながら、英語というように置きかえてきております。私の大学などは東京外国語大学というので、外国語という中にはほかの言語もいっぱいありまして、どちらかというと外語大の中では英語というのはかなり特殊な立場で、力もあまり強くない。細々と暮らしておりますが・・・。
 ですから、この委員会に出ていてうちの大学に戻ると、外国語のことをやってくれているのかなといったように皆さん思われます。私自身はいつも外語大を代表しているというわけでもないので、英語のことしか話してきませんでしたが、この委員会として最終的にどこら辺まで、先ほどの世界に発信するといったときにも、英語だけで発信するという発想でいいのかという問題もあります。あまり議論してこなかったかもしれないですが、最終的にどこら辺まで、ここはカバーするのかということが気になっております。

【吉田(研)座長】 確かに議論していませんね。それに関しては、ほとんど全くと言っていいほど議論していません。その点に関しては、しかし、新たな一つの議論になってしまうと思いますので、とりあえず現段階では過去6回やってきたことについてまずまとめて、その上で、今根岸委員がおっしゃったことも大事な点ではありますので、それについて、何らかの形で触れるということで、最終答申の際には皆さんのご意見をいただいて、入れていきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

【岡田委員】 そもそも論になるのですけれども、教育政策は一貫性、継続性が大事だと思っています。政権交代があろうとなかろうと基本は変わらないということです。その意味でいいますと、今回の検討会が唐突に出てきたということではあってはならないし、その結論も過去との継続性によって裏打ちされていなければいけないと思っております。その意味で7年前の行動計画──討議の中でもいろいろ話題になり、参考資料もかなりいただきましたが、その総括なり達成、未達成を踏まえた上で、今私たちがやっている討議が位置づけられて、さらに発展形として新しい展開ができるような流れにすべきだと思っております。その意味で、触れていいかどうか別ですけれども、行動計画についての言及はどこかで必要ではないかというふうに感じております。

【吉田(研)座長】 ありがとうございました。研修の問題とか、あるいはSELHiの問題も今まで触れられてきていますし、そういう意味では行動計画でなされてきたことというのはそれなりに触れられてきているかと思います。また、教員や生徒の現在の語学力です。英語力に関しても当時言われていた一つの目標というのはどれぐらいの割合で達成できているか、その辺の資料もある程度出てきていますので、基本的にはそれを踏襲した上で、今回も答申は出てくるというように考えております。ありがとうございます。

【太郎良委員】 私はとりあえず2点ほど感じておることをお話し申し上げたいと思います。
 まず1つは、今岡田委員から、現行の行動計画についてのご指摘がありましたが、このことについて私もいろいろ思っていることがあります。申し上げる機会がないと困るので、ここで一言、確認方々申し上げますが、実際に学校現場の実態を見ますと、行動計画の存在というものが十分にというより、十分も要らないでしょうか、周知されていない。極端に言うと、そういったものがあるということすら知らない人が私は多数であると思います。その1つの証左として、いろいろな研究会等がありますが、私はいまだかつてこのような大事な行動計画に基づいた研究発表であるとか、実践研究の推進というものを見聞したことがありません。
 そのような意味で、今回この検討結果を発表される場合、やはり新しい学習指導要領と行動計画とのかかわりはどのような形になっているのかといったことについて触れておかないと、実際に英語教育を学校で推進する教員自身が一番大事なことを十分に理解、認識しないままに毎日の実践が細々と行われていき、私たちが日本の英語教育を変えていきたいのだという思いが十分に伝わらなくなる可能性があるのではないかと思います。その点について、ぜひご検討、ご配慮をお願いしたいと思います。
 次に2点目といたしまして、冒頭、背景についてのご意見がありましたが、私もその点については漠然と何とかもう少しここは書きぶりがならないかなという思いがありました。しかし、このようにグローバル化とか、こういった書き方で流すしかないのかなと思っておりました。確かに英語の授業時数が増え、英語というものが非常に大事だということを私たちがこういった場で言っているが、しかし、なおかつ英語にかかわっている方々の中にも、英語だけではないだろうと、何で英語なのだと、何で小学校からの英語なのだという意見は今なお根強く一部にあるのではないかと思います。そうした場合、そういった方々の存在というものを認識した上で、そうではないと、だから、英語はもっとこれからの日本人にとって、私たちにとって大事なのだと説得させるような背景についての書きぶり、認識の仕方というのが非常に重要ではないかと私は思っています。そこのところを認識していないと、実際に授業を推進し、その英語の授業そのものを改善すると言っても、身についたものにならないのではないかと感じております。
 そのような意味で、そのことと関連いたしまして、1番目の英語の授業から日本の授業を考えるということについて私の感想を申し上げますと、このことを冒頭に持ってきているのは大変結構なことだと私は思っています。その中で、言うまでもないことですが、2つ目の白丸で、コミュニケーションを図ろうとする態度をもっと養っていきたいということについての言及があります。これは極めて重要なことでありまして、私は日頃思っているのですが、実際に英語の授業をやっている先生方自身がコミュニケーション能力のコミュニケーションというものは何であるかということをどれほど理解し、認識して授業をやっているかなということについていろいろ考えることが多いです。何も細々とした会話練習をすることがコミュニケーションに必ずしもつながるわけではないです。コミュニケーション能力というのはもっと自分自身の意見を持ち、相手のことに耳を傾け、それを理解し、そして、お互い意見を交換し合い、自分の言いたいことを相手に納得させるというように、非常に相関的な、非常に重要な機能なわけであります。そこのあたりのことを十分に理解した上での、コミュニケーションの態度を養うのだということを十分に理解しないといけないでしょう。そのような意味で、ここのところの書きぶりなども、こういったことでいいわけですが、もう少しコミュニケーションということについての書き込みをしてもいいのではないかなと思います。
 そのことに関連しまして、私は思うのですが、例えばコミュニケーション能力というのは、今言われております言語能力の向上、そういったこととも関連するわけですが、必ずしも英語だけではもちろんないわけです。国語はもとより、例えば各具体的な教科で言えば、一見コミュニケーションとは無縁ではないかと思われるような例えば体育とか、美術とか、あるいは音楽とか、立派なコミュニケーションというものをもとにした授業実践をやらなければいけないです。例えば音楽において合唱を指導する場合、ただ、うまく歌うように指導すればいいのではなくて、その歌を歌うことによって例えば保護者、地域の人を集めて、発表会を行う場合、生徒に対して教える音楽の先生が、この歌はあなた方が地域のお父さん、お母さんに、おじいちゃん、おばあちゃんに自分の思いを伝える気持ちを持って、このように歌わなければいけないんだよ、そういう気持ちでこの歌を練習しましょうねという指導を例えばするのと、そういう形のない指導の仕方では全く出てくるものが違います。美術もそうだと思います。1つの絵をかく。彫刻をする。粘土を使って、ものをつくる。ただ、その作業だけではなくて、それを通してあなたは、相手に何を伝えたいのということを訴えかけながら指導していく。そういった指導の中から、私は本当に身についたコミュニケーション能力というものがついていくのではないかというように考えております。体育もそうですし、ほかの国語、数学、理科、すべて教科はそうだと思います。
 そのような意味で、ここのところでやはり私たちは英語について議論しているわけですが、コミュニケーション能力は、英語はもとよりですが、そのように他の教科についても関連してくることであるというようなことをぜひ、私は触れることが大事なのではないかと思います。
 長々となりましたが、とりあえず第1項目のあたりで感じたことを申し上げました。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。最初は、背景というところから今のお話がありましたが、行動計画についての周知が十分に現場でもできていなかったということ、これは確かにそのとおりだと思います。今回のこの報告に関しては学習指導要領との関連もあわせて、どのようにしてこれを本当に広げていくか、周知していくかということは非常に大切な問題だと思いますので、そこも考えていく必要があると思います。
 それからもう一つ、英語の重要性について、もう少し具体的にちゃんと書いたらいいのではないかということです。確かに書けるところまでできるだけ書きたいと思いますけれども、皆さんからの、こういう点ももう少し入れたらいいのではないかというのがあったら、またどんどん言っていただきたいと思います。
 それから、太郎良先生からも、1番のポイントに入っていただきましたので、これをきっかけにほかの方からもご意見をいただきたいと思います。確かにコミュニケーション能力、コミュニケーションしようとする態度の育成、これはもう以前から学習指導要領の中でも強調されてきているわけですけれども、これをどのようにして本当に授業の場で実現していくか。つまり、コミュニケーションとは一体どういうことなのか、どういうものが含まれているかということをもう少し具体的に書けるのであれば書いたほうがいいのではないかということですね。
 もう一つは、英語だけではないのだという問題ですね。これも今回いろいろなところでも、既に言われており、特に言語力の育成についてはかなりこの点についてははっきりと書かれていると思いますが、この点についても、今回の報告書の中でもやはり強調していく必要があると思います。
 それでは、1番について既にある程度議論に入っていっているように思いますけれども、ほかの方でございますか。

【松本委員】 項目立てについてなんですが、例えば2番のように、実際に何をするということと、3番のようにどういった方向、目標でやるのかということと、6番のようにただテーマが書いてあるというように統一性がなく、まとめ方についても話したほうがいいのではないでしょうか。
 それと、何を問題として捉えているのかがよくわからないです。グローバル化に対応できてないとか、授業の改善がまだ不十分だというのはわかりますが、この検討会の立ち位置がはっきりしていないのではないでしょうか。例えば学習指導要領は改訂されて、教科書も変わる。それで、新しい教科書を実際に使っていく上で困難が生じることが予想される。そのためにどういう施策が必要なのか、どういう到達目標が国として必要なのか、といったような、問題、原因、方策、そして最終的ゴールといったような分け方のほうがわかりやすいのではないかと個人的に思いました。
 1番に戻りますと、この委員会の報告書の1番がこれというのは英語の先生にとってはちょっときついなと思います。英語の先生方にこういう志を持ってやっていただきたいですし、実際に英語教育がうまくっている学校というのはその学校の教育改革の先頭を英語の先生たちが走っていますが、他の教科の授業が変わっていない状況、あるいは変わるための施策がはっきりしてない状態で、英語の先生にだけ負荷をかけていくというのは、私はちょっと納得いかないです。
 高校に参観に行った際にほかの教科の授業もときどき拝見します。この間も、ある高校に行った際に見学しましたが、社会科の授業でしたが、50分間の授業中、教壇から一度も降りずにずっと板書し一人で話をしておりました。生徒はノートに書き写すだけ。こういった先生たちの授業まで英語科の先生が変えられるように頑張りましょうというのはちょっと無理な話だと思います。
 書かれてある内容は、基本的には新しい学習指導要領に基づいた英語教育を実施するということなので、そういうことをもっと直截的に書いたほうがいいのではないでしょうか。そのうえで、「結果として」英語だけでなく日本の学校の英語以外の授業スタイルも変わることを期待したい、といった感じでよいのではないでしょうか。この委員会が提示するアイデアとしては、原案は大き過ぎないかという危惧があります。以上です。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。まとめ方というのも、多分、これは6回目のものを比較的その順番に沿ってまとめただけですので、今後最終的な報告を書く際には、今松本委員がおっしゃったように、もう少し順番を変えたりとか、いろいろ必要だと思います。最終のほうでおっしゃった新しい学習指導要領が出る時期に、この会が開かれているというのは、当然それとの関連で出てきているというふうに私も解釈していますので、ですから、今おっしゃった現状の問題と学習指導要領が出てきて、それが一体どういう問題をどう解決するために出てきているのか、また、それに対してどういう解決法を与えようとしているのかという形でまとめられたら、私もいいかなとは思います。
 ほかの方で何かそれについてありますか。

【市村委員】 今の松本委員の考え方に私も全く同感でございまして、1番のタイトルといいますか、なじまないなというふうに非常に感じます。むしろ、英語教育のあり方がどうあるべきかとか、あるいはグローバル社会の進化に伴って、コミュニケーションというものがいかに重要で、それをどのように指導していくかということを議論してきたわけですから、授業の内容が英語によって変えられるというのは、本来の目的ではないはずです。英語力をどうやってレベルアップしていくかという議論をやってきているというふうに理解しておりますので、グローバル社会でなぜ英語が必要か。その中で、英語を学ぶにはいつからやるか、どのくらいのレベルか、こういう議論をやってきたわけですから。そういう観点からすると、ここに書かれていることは、松本委員が指摘してきたように、ばらばらだと思います。したがって、ここはもう一度整理をし直して、コミュニケーションの重要性という問題をとらえる。それに合わせて教育の仕方を見直すと。従来型の英語教育からもう少し現場に踏み込んだ形でのコミュニケーションをアップさせる教育に変えていくのだということを明確に打ち出すとか、こういうような方向でまとめないと、あまり今までと変わってないのではないでしょうか。むしろ、方向性が変な方向に行くのではないかなという危惧さえ思いつくというところです。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。

【岡田委員】 関連で発言させていただきます。メディア出身なものですから、あえてコメントをさしあげますと、このたたき台を、新聞記者が明日の朝刊用に記事を書くということになりますと、やはりキャッチーな見出しといいましょうか、内容から記事を構成するわけです。そういう意味で、私がこのたたき台で注目したのは、1番のタイトルと最後の大学入試は英語教育の敵ではない、味方にするという、この2つです。いい悪いは別ですが、こういう表現があるとメディアが飛びつきやすいです。
 先ほど太郎良先生もおっしゃったように、前回の行動計画が徹底されなかったのは、やはりパブリシティーにかなり問題があったのではないでしょうか。教育現場ですらも周知徹底されていないし、ましてや一般国民が、そういう動きがあったこと自体、おそらく知らないのではないかと思います。ですから、何を言いたいかといいますと、今回せっかくこれだけの討議を重ねた結果を、教育現場のみならず広く一般国民に知らしめるための作戦、戦術として、ある程度キャッチーで、アイ・キャッチングな項目なり、表現をあえて使うほうがいいのではないかというのが、メディアの反応、メディアを使ってパブリシティーをするという意味では必要だということをあえてコメントさせていただきます。

【吉田(研)座長】 ありがとうございました。

【根岸委員】 私も、キャッチーなというのは賛成ですが、議論を先ほどの松本委員と市村委員の議論に戻したいのですけれども、この検討会の最終的な、どこに向けてメッセージを発するかという、先ほど教員への周知ということも出ましたが、英語なのか、ここで言っている授業全体というところなのかによって発するメッセージがちょっと違ってくると思います。私は異なった考え方を持っていて、日本の授業全体が変わらないと、英語の問題があまり解決しないのではないかなと思います。例えば、もしこのまま狭い意味の英語力というのが向上したとして、このまま日本人が外に出ていっても、多分あまり状況が変わらないといいますか、根本的に、先ほど松本委員がおっしゃっていた例でもそうですが、授業の中で全くディスカッションしていません。世界史の授業の中で先生が黒板に書いて、生徒が写すだけ。うちの子供のノートを見ると、それが手にとるようにわかるわけです。それをしていて、事実を覚えていって、英語力がついて、事実を述べられるようになっても、多分議論することはありません。議論してきてないので。同じ世界史の授業を外国で見たりすると、ここの判断はよかったのかどうかみたいなことを議論しています。それは何語でもいいですけれども、そうしたことをしてないところで外国語だけ変わっても、本当の意味での今回議論してきたような問題点というのは、あまり変わらないのではないかなと思ってしまいます。
 ですから、例えば1つは細かいところですが、講義中心の授業から生徒の言語活動中心の授業へということが3点目にありますけれども、ここに言語とついているのは英語の話だということなのでしょうか。本当は講義中心の授業から活動中心の授業へという抜本的な改革が全体としてあって、そこの上で英語ものってくるということであればいいと思います。今の最後の点のように、英語の授業が変わることで全体を変えるというのは、英語の授業が変わると、自然とほかも変わっていくなんていう、多分そういうバラ色な想定は難しいと思うので、全体の中で、ともに英語も変わり、先ほどの外国語ということで言えば、広く外国語も変わるというほうがいいのではないかなと思います。

【吉田(研)座長】 今、何名かの方からいろいろご意見をいただきました。項目立ての問題もそうですけれども、確かに外国語教育ということ、特にその中でも英語教育というものを中心にずっと議論してきたわけで、それだけでいいのかという問題です。今まで過去においてもほとんどがそういう形だったのかもしれません。とすると、今回何かそれにプラスアルファで、今回の報告書の特徴のようなものを出すとすれば、どのようなものが出てくるのかということを考える上で、今のご意見なども出てくるかと思います。
 ただ、あくまでもここでやってきたのは英語教育中心ですので、ほかの教科については、触れるということ、最後にそれについて、先ほどからも出ましたけれども、ほかの外国語についても、何らかの形で最後に触れていかなければいけないのでしょうけれども、それと同時にほかの教科に対しても何らかの形で触れていく必要があるだろうと思うのですが、ただ、討議の中心ではないので、そこにあまり中心を置いて議論してしまうと、ゼロからやり直しになってしまい、これはちょっと難しいのかなと思うのです。
 ですから、それを一応念頭に置きながら、また、報告書の中では何らかの形で、それを盛り込むとしても、ここでのまとめはやってきた英語教育の改革を中心にやるということが大事なのではないかなと思います。
 岡田委員から出てきましたキャッチーなフレーズの重要性というのは、確かにパブリシティーという面では非常に大事でしょうけれど、それが内容的にきちんとした形で体系的にできているものに対するキャッチーなものであるか、それとも、その一部分だけがぽんと突出して出てしまうかというのはまた別の問題になりますので、そういう点も私たちとしては考えながらやっていく必要があるかなと思います。
 確かに1番と書いてある部分に関しては、必ずしもこれが出発点ではないのかもしれませんけれども、とりあえず順番で、今ここで順番を変えながらやっていくのは非常に大変ですので、ここに一応挙げられている順番に沿って皆さんのご意見をいただいた上で、それを今度、その後調整していくという形でやらせていただければと思いますが、よろしいでしょうか。

【卯城委員】 私もタイトル自体はキャッチーなほうがいいと思ってはおりますが、中身が英語の授業からほかの授業も含めてとなると、例えば一番最後のところで、新学習指導要領の中で各教科を貫く言語活動の充実を通してというところも、本当にほかの教科も言語活動の充実を通してというところは貫かれているかどうかというところも果たしてそれは言語力なのか、言語技術なのか、論理的な思考なのか、コミュニケーション能力の育成なのか、インタラクティブな授業なのか、文言はかなり慎重にならなければならなくて、そこがその前までの項目のトーンを少し抑えてしまうのではないかなという懸念を持っています。
 もう一つは、今、いろいろな議論の中で、外国の授業の活動的な授業に比べて日本の授業はというところについては、私は少し異論があって、確かに日本の高校、大学のどちらかというと一方的な授業がいいとは思わないですけれども、それでは、海外でよくあるペアに分かれながら話し合いを重ねていくような授業が本当にいいのかどうか、思考が深まっているのか、効率的なのかどうかと考えると、例えば日本の一方的な授業の中にも国語とか、外国語では発問というのを大事にしてきて、発問の中で全体に投げかけて、全体の生徒が非常に能動的に深く考えているという場面もあると思います。一方的に何か外側だけの活動というところに傾かないように、良さも残して整理する必要があるかなと思いました。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。折衷案と言ってはおかしいですけれども、今回、この中に英語でほかの教科も教えていくというような、実際にここでも発表してもらいましたけれども、そういうことも含まれています。そうなってくると、教科によって、語学の使い方というのは変わるのではないかと思いますので、ですから、ただ1つのやり方だけがすべての教科において通用するかどうかというのは、これまた考えなければいけない別の問題になっていると思うのです。ですから、そういう意味で言うと、言葉の重要性というのはあらゆる教科の中で実現していくということのメンションも必要だろうと思いますけれども、そのやり方について、統一的なやり方があるかどうかというのは、これは必ずしもこの委員会で言えることではないような気がいたします。

【中村委員】 英語、それ以外の言語ということでは、多分、私は私企業の立場で言いますと、英語すらできないのが、多言語なんて話すことを考える立場にあるのかというのが率直なところです。といいますのは、韓国や中国を見ていますと、若者をどんどん英語圏に送り込んでいます。残念ながらといいますか、コンピューターがこんなに普及したのはすべて英語圏から出ています。もちろんそれがドイツとかフランスとかに行っているのですけれども、残念ながら先進的な技術はここから来ているということで、英語をまず基礎として持ってないと、次に行けないのではないかというのが私の危機感です。ですから、英語をまずやらないと多言語なんてとんでもないと、いろいろな分野でもっと遅れていくのではないかというのが、私の個人的な見解です。
 英語の授業から日本の授業を変えるというのは、書き方はともかくとしまして、多分、ここで議論されたのは、英語の授業を先進的なものに変えることによって日本の教育のやり方も少しはインパクトが出て、ほかの分野にも波及するのではないかというような方向で議論をしてきたように私は思います。ですから、教育の現場におられる方はいろいろなことをご存じで、いろいろなことを考えられるのでしょうけれども、残念ながら日本人は遅れているということを言わざるを得ないと思うのです。ですから、この二、三年、英語を会社のコミュニケーションの第1言語とするというところが結構出てきました。雇用のほうでも、例えば新卒を1,000人採るとしたら、600人は外国人ですというようなところも結構出てきました。これは何かというと、英語を話すのは前提ですよということだと思うのです。もちろん英語でなくてもいいですけれども、フランス語でもドイツ語でもいいでしょうけれども、そういう人材がまずいないとだめなんですという企業が増えてきていると思うのです。ですから、そこに文部科学省を含めて、教育されている方々がどのようにこたえるかということが今回の委員会の目的なのではないかと思います。
 以上です。

【吉田(研)座長】 どうもありがとうございました。確かにまずはとにかく英語という立場でこの会もやってきたと思いますので、先ほどもお話しさせていただきましたように、多言語についての重要性を別に軽視するわけでは決してないですが、まずはとにかく英語教育をどう改善していくかということ。そこをまずきちんとした形でまとめていき、それをさらにその他の外国語にも連用していく。それに基づいて、それを参考に、さらにほかの外国語の教育も発展させていくという形に持っていくしかないかと思います。

【根岸委員】 大体それでいいですけれども、私が言いたかったことは、外国語能力の向上といったときの、日本の政策として多言語の人材をどう養成していくのかということで、個人が多言語であるという必要は、そういう選択肢もあるかもしれないですけれども、そうでなかったら、どのようにどういった言語の人材を養成していくのかということを最後のほうでもいいですけれども、議論する必要があるかなと思いました。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。

【本下委員】 ここで言う能力の向上という意味・内容をもう少しクリアにする必要があると思います。私の考えでは、ここで言う外国語能力というのは、テーマや課題があったときに問題点を掘り下げて十分に議論して、そこから出た意見、考えを論理的に説明できる、そういう能力、それを英語でできる能力ということだと思います。どういう能力を向上させるのかというのをはっきりさせないと、その後、どのように検証するのか、何を検証するのか、それからモチベーションの向上と言っているけれども、何のモチベーションをどのように向上するのかといった議論に繋がっていかないと思います。いろいろ皆様からご意見が出ましたけれども、まずは能力の内容をクリアにして、そのために必要なものは何かという考え方でまとめていくほうがまとまりやすく、また国民全体の能力向上という意味でもわかりやすいのではないかと思います。
 以上です。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。確かに外国語能力を向上させると言っているわけですから、それは外国語能力とここで言っているのは何なのかということですね。それを明確にする。今おっしゃられたように、問題解決能力が英語という言語を使ってさまざまな問題が出てきたときに、それを解決していく能力だというように私としては考えていますので、多分、今までの議論の中で、それがより細かく、いろいろな観点から述べられていたかと思います。明確にそれをさせるということも大事だと思います。そうでないと、その後が続かないということもあります。ありがとうございます。

【池上委員】 外国語能力ということを契機として始まった会議とはいえ、世界の中で孤立していくのではないかとか、内向きの若者が増えていくのではないか、これをどうしていくのだという、そのような問題解決型の検討会ですから、それのディスカッションの中で、英語が一番大事だ、英語が世界語で、世界の道具なのだということを、この委員会は再認識して、まず英語のアップを図ったということでやっていけば、後からほかの外国語については触れるという程度で、我々の発信として、それを出すことでいいと思います。ただ、その場合に、今この英語のというと、前から話があるのですが、中高までを含めた英語、その中で何が足りないのかというのがコミュニケーション能力としては、聞くこと、話すことが圧倒的に足りない、ということがやはり出発点にあったと思うので、その辺を絞り込んでいく必要があるでしょう。
 その視点で、1のところを見ますと、まずはマインド論がたくさん書いてあります。コミュニケーションを図るべきだ。これは当然のことですけれども、マインド論と具体的にここでは何を提案し、どういうことをしていくのだという具体論、これを分けて考える必要があって、マインド論はきれいに書けばいいのですが、それを達成するためにどうするのだという具体的な提案が、授業改善を図る必要がある。例えば講義ではなくて、言語活動中心の授業改善を図る。その内容はと見ると、その下のところのディベートやディスカッションの時間を確保したり、ICTを活用した海外との学習その他と続いて書いてあります。この辺が具体的にはここのところで提案したいところだと思います。ただ、私は教育の現場を知らないので、例えばこのように書けば、実際にディベートとか、ディスカッションの時間が大いにたくさんとられ、それから先生たちはそれを指導する方法についてはよく知っていてできるのでしょうか。それともそれが足りないから、今ここで提案するとすれば、それでは、ディベートやディスカッションはどの段階でどのくらい入れるべきなのか。それを指導する先生を、指導法を教える、もしくはそういう指導の手段を、これは国がというか、文部科学省が整えていくという、それをどういう方法でやるべきか。予算はどうつけてやっていくかなど、そのようなここで提案する具体論にはそのくらいのことをつけて提案していくべきではないでしょうか。単にマインド論と同じように、ただただ、これもやったほうがいい、これもやったほうがいいということに触れるだけでいいのかどうかについては、全体を読んでみて非常に感じます。
 それで、さらに言えば、1番の授業を変える、これの具体的な提案は言語活動中心のという、この具体論ですが、それ以外に成果、検証とか何とかありますけれども、そういう具体的な方法論の中に若者にグローバルな夢を持たせとか、これこそマインド論の一番出発点になるところですが、こういうものが散りばめてあるということも何か論理的にはなかなかたどりにくいので、この章立てについては別途話し合いをさせていただきたいと思います。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。今、池上委員からありましたように、確かにマインド論というか、理念的な話については、今までも今日ほぼ1時間近く比較的それを中心にずっとやってきたわけですけれども、具体的にそれではどうすればいいのか、ここに載っていることということが実際に実現可能なのか、可能でないとすれば、何が弊害になっているのか。どのようにすればいいのか。教員はどうすればいいのか。予算をどうすればいいかという具体的な提案に持っていけるような、そういう形、方向で、本当は議論を進めていかなければいけないと思います。
 確かに理念的に言うと、皆さんおっしゃったことはすごく大事なことばかりで、何らかの形で報告書の中には反映させていかなければいけないと思うのですが、今池上委員からも出た、より具体的な形としてここで述べられているような内容ですね。それについて、何か皆さんのほうでご意見ございますでしょうか。まだ1番しかやってなくて、あと、2、3、4、5、6というのは全くまだです。ただ、かなり関連しているので、全く独立はしてないと思いますが。

【太郎良委員】 先ほど池上委員がおっしゃったことは、実は私も同感の面がありますけれども、一読いたしまして、具体的な視点が物足りないなという思いはしておりました。
 ただ、こういった答申の場合どこまで具体案を出すかというのは難しい面もあるだろうと思うのですが、実際に学校で教育にかかわっておりますと、残念ながら基本的な考え方を出せば、それに基づいて、それぞれの個々の人たちが自分で創意工夫し、具体的な方法とか、施策を考えてくれればいいですけれども、これは日本人の特徴なのでしょうが、受け身である。言われれば本当にまじめに一生懸命取り組む。しかし、何もないところから、それでは、やりなさいと言われると、はたととまってしまうという実態は少なからずあるように思います。
 そのような意味で具体的なものをこういったものに載せればいいけれども、もしかすると、逆にそういったものを、別の言い方をすれば、例示ですね。こういったことが考えられるというように指導要領なんかでも載せられていますけれども、そういったものを載せてしまうと、それをやればいいんだなというようなことで、皆さん、総ならえでそのようなことをやるというような傾向もなきにしもあらずです。
 したがって、載せるにしてもどういう形で載せるのかというのは一長一短あるのかなという気がします。理想を言えば、考え方を出して、あとは皆さんで考えなさいよというのが一番の理想です。
 ただ、私としては、それほどこの細かな具体論でなくても、国としては、こういったようなことをこれからやりますよとか、こういったような予算をもとに、こういったことを何カ年計画で進めていくので、各地域にあっても、学校にあっても努力して、創意工夫して具体策を考えてくださいというような、例えば視点というのは、ぜひとも必要なのではないかと感じております。
 以上です。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。一番最初に松本委員から出た意識改革の問題というのとすごく関連しているかなと思います。確かに意識はきちんと変わっていきます。その中で、それでは、どうすればいいかということを自分たちで本当に考えてやっていけるような、そういう体制ができていれば、どこまで具体的なものを出すかというのも、ある程度抑えることができるかもしれませんけれども、果たして現状がそうなのかどうかという問題です。ですから、具体的なやり方とか、そういうものについても、どこまでどういう形で出していくか、それもこれからちょっと報告書の中で盛り込む際には考えていかなければいけないかなと思います。

【松本委員】 そろそろ2番に移ってもいいですか。

【吉田(研)座長】 いいですよ。どんどん言ってください。

【松本委員】 2番についてですが、成果を検証するとあります。3つ目の丸にあるように、成果を検証する前に学習成果を設定し、そのうえで成果を検証するということが大事だと思います。現在のところ、ほとんどの高校で、学習成果あるいは到達目標が設定されていません。設定していないのにどうやって成果を検証するのでしょうか。
 2番目は、だれが学習成果を設定するのかということです。中学校の学習指導要領では各校でしなさいと書いてあるわけですけれども、それでいいのか。高校の場合は入学するのに入試がありますので、学力的に学校間にものすごい差があるわけです。そういう中でこの趣旨に合った到達目標なり学習成果を学校任せで設定してもらっていいのかということがあるかと思います。現行の学習指導要領という枠組みの中では、外国語科だけ具体的な到達目標を設定するのは難しいようですので、別枠で、例えば国がそういうものを設定するのでしょうか。例えばヨーロッパのCEFRのように、あるいは英検やGTECのCAN-DO statementsのよう、段階が示してあって、うちの学校はこのレベルといったようなことにすることが考えられます。そのようにせずに、各学校に任せていても、あと10年たっても、目標設定は難しいような気がします。もし各学校で、あるいは各地域で学習成果を設定しなさいとした場合、どうやって検証・評価するのか、という問題もあります。
 検証する方法についても考えなさいということを今回打ち出すのも、それは1つの方法だと思います。そうであれば、それはそれで私は大賛成ですが、各校は大変でしょうね。いずれにしましても、だれが設定するのかということについてはっきりさせておいたほうがいいかと思います。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。非常に具体的で大事な点ですね。これは今までも何度も議論されてきていることであります。いかがでしょうか。私自身もこういうCEFRもそうですけれども、CAN-DO的なもので、国が率先して国の目標としてはこういうようなレベル設定ができますということを、何らかの形で提示していくという必要性は絶対あると思っています。

【根岸委員】 具体的な施策を提案するということは賛成です。今の学習到達目標の問題にも多少絡みますが、私自身は具体的にと言ったときにすごく単純に言うと、学習指導要領に沿うようにというのが最善のメッセージのような気がします。というのは、中学はまだいいかもしれないですけれども、私の見方からすると、文部科学省がいろいろな政策を今までも出してきたし、方針を出して、それは学習指導要領という形で具現化されてきたと思うのです。今、ここで議論してきたようなあるべき姿というのも大方学習指導要領の中に含まれていると思います。問題は、学習指導要領は、教科書というものを縛っていますので、教科書をつくる際には、著者の先生方もここにたくさんいらっしゃると思いますけれども、学習指導要領に本当に参照しながらつくっていて、最終的には検定というものもあり、そこでチェックされているわけですけれども、それが実際の現場に行ったときに、1つは先生方が文部科学省の考えているようには授業をしていない。とりわけ高校の実態はそうあるように思います。もちろん先進的な例で報告される例というのはあって、今回も我々は幾つかそういった授業を見てきましたけれども、わりと通りすがりに目にする授業、その授業というのは、ふだん公の場で見る授業とは全く異なっていて、そここそが問題だろうと思います。
 例えば私の学生が教育実習に行きます。君の学校では、君は何をやるのかと聞くと、高校1年担当です。何をやるのかと聞いたら、何とか大学の入試問題集です。これは学習指導要領と全く違います。そんな教科さえないわけです。英語Iの授業に当たりましたと言って、5分の2は文法の授業、文法の問題集を解く授業です、みたいなところがあります。ですから、最終的に先生方のいろいろな信念でそういう授業が選択され、行われているのです。
 そうすると、いろいろな政策が上からおりてきているのですけれども、最終的に判断されるところで、多くの先生方がそれとは異なった授業が展開されているということがあると思うのです。そこはあまり私たちが公に行くと見えてこないのですが、ふと見てしまう授業みたいなところで見えてくるところはそのような授業です。皆さんも多分実際に自分の経験を振り返ったときに、ああ、そういう授業だったなみたいな、それがあまり変わらない状態で今日まで来てしまっていて、ですから、具体的な提案といったときに、あまり派手さはないですけれども、学習指導要領の趣旨に沿ってやってくれというのが、多分、全然キャッチーでもなくて、だめなのですけれども、私としては本当は必要な気がします。
 先ほどの松本委員の話と絡めると、それは本来は学習指導要領に沿った形での指導目標、到達目標というところをより具体的に、今の学習指導要領はもしかしたら、到達目標というところをあまり記述するようには書かれていないので、そこに関連づけて目標を設定して、検証するということをやっていったらどうかなと思います。それが入試という形で関連づけてやるのかどうかというところはもう一つの議論だと思います。

【吉田(研)座長】 ありがとうございました。確かに学習指導要領が改訂されるという時期にこれをやっているわけです。先ほど申し上げましたけれども。それとあわせて考えると、今、根岸先生がおっしゃった学習指導要領を実現していく上で到達目標として具体的にこのようなことができるようになることが、学習指導要領を実現することになるのだという、そういう形の何か提案が、多少具体的にできていけば、一番いいのかなと思います。
 今回、特に高校あたりは英語表現の授業などを見ても、相当踏み込んで、かなりいわゆるディスカッションに関しても、発表など、相当1番で言われていたような内容も含まれています。ですから、それとあわせた形で記述していけば、今おっしゃったようなことというのは、報告書の中にある程度盛り込めるのではないかという気はいたします。

【本下委員】 私は、学校で教わる授業というのは、基本的にはアカデミックな学問の知識の吸収やそれによってレベルを上げていくということが目的だと思うのですが、言い方が適切かどうかわかりませんけれども、今回、目指している外国語能力の向上というのは、そういった学問知識の吸収というよりは、むしろもっとプラグマティックな、スキルの習得、スキルの訓練というような色彩が濃いのではないかと思います。したがって、そこで必要な学習指導要領、そこで求められる到達目標と言っていいのかわかりませんけれども、レベルというのは、知識の吸収とは違った設定になるのかなと思います。例えば、これが最低限必要なレベルなのですということを明確にしていく必要があるのではないかと思います。本検討会の目的は、国民全体、我が国全体の外国語能力向上ということですから、ある意味、こういったスキルを身につけるのが最低限必要なのですよと、はっきりさせるのが必要ではないかと感じております。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。今多分おっしゃったことというのは、どのような内容であっても、少なくともこういう基礎的な言葉を使って物を考えるという知識がなければできませんよという、ですから、その基本になる部分、論理的に物を考えて、それを発表していくとか、反対を言うとか、いわゆるいろいろなコグニティブな、認知的な意味での能力というものを、英語を使っていかにして身につけていくかという、そのようなことにつながるのかなと思います。

【太郎良委員】 今日は時間がたっぷりありますので、いろいろ申し上げたいのですが、先ほど根岸委員のほうから、最終的に学習指導要領どおりにやってくださいよということであるということをおっしゃっておりましたが、まことにそのとおりであると、私もそう思います。
 ただ、実際に現場の先生方の多くの方の要望を聞くと、学習指導要領って非常に難しいですね、読み込むというのは、簡単なようであって、書いてあることの中身の深さというのは、なかなか大変であると言われます。そこで、このようなものが出たけれども、それでは、新しい学習指導要領でどのような授業をしたらいいのですかという気持ちを持っている教師が決して少なくないのではないでしょうか。そうした場合、国レベルで考えることは、これはやっておられると思うのですが、私の手元にあるのですが、新しい学習指導要領にのっとった望ましい授業のDVDが出ています。私は、あれはとてもいい試みだと思って、あのような形でお金を使って、できるだけ学習指導要領にのっとった授業というのは、例えばこういう形ですよということを、視聴覚を通して全国の先生方に敷衍するというようなことが1つの有力な方法として考えられると思います。
 また、あわせて、これは各研究団体で日ごろ全英連や、各地方の中学校の研究団体など、やっていることでありますが、力があると思われる方がステージに立って、模範的な授業を行うことです。そういった考え方で文部科学省や各都道府県の教育委員会などが例えばタイアップして、全国を何カ所か巡回し、新しい指導要領にのっとった望ましい授業というのはこういったことであり、そして、ここではこのような、例えば教えるためのスキルが求められるのですよというようなことを実際に見てもらう。そして、ああ、そうなのかというように納得してもらう。そのような方法も考えていいのではないかと思います。もしもそのようなことが可能であるならば、それも大変立派なこのような計画に基づく具体的な提案、政策の提言になるのではないかと思います。
 以上、相当突っ込んだ具体的な話になりますが、以上です。

【吉田(研)座長】 ありがとうございました。確かに今、DVDがいろいろ配付されて、参照されているという、そういう現状があります。確かに具体的に目で見て、初めて、ああこうするんだというのは先生たちもおわかりになる。手だてとしてはいいと思いますけれども、そういうものももう少し充実させていくということ、それも必要なのかなと思います。
 まだ現在2番目のところ、成果検証も含めた形で、今1、2というのをやっているように思うのですが、もし3番、モチベーションに関係する部分とかにもご意見がございましたらどうぞご自由に発言していただければと思いますが、いかがでしょうか。

【池上委員】 モチベーションのところについてです。全体グローバルとか、夢とか、非常に大きなことで子供たちを勇気づけようということなのですが、なかなか中高の段階で、私はグローバルに雄飛していくのだと、杉山委員は小さいころから世界的なテニスプレーヤーになるには英語が必要ということで、英語を始めましたが、目的が決まっている人もいますけれども、なかなか全員そういうわけにいかないです。
 ただ、もう一つ具体的に、なぜ英語が必要かということについてわからせる必要があると思うのです。私も今大学で、各学部に、少し聞いてみますと、実際に学部、大学に入ってからは英語は勉強する段階ではなくて、使う段階だということが中心で、殊に英語を使わなければないのが医学部です。例えば医学部はかつてはドイツ語で、カルテとか、いろいろドイツ語でしたが、今はほとんどが英語の論文を読め、英語で自分で論文を書かなければやっていけないです。薬学部、理学部、工学部も授業で実際に英語を使って、要するに、道具としての英語を使って授業をしています。それから農学部も全くそうですね。逆に、今まであまり使わなかったけれども、使うようになってきているのが経済学部。例えばファイナンシャルテクノロジーというのが教科として入ってくると、英語やPCを使ってやらざるを得ません。一番使っていないのが、私も出身ですが、法学部です。法学部は、やはりまだ英語を使ってというのが少ないです。実際に私の経験でも、高校までは英語を大いに使ったけれども、大学4年間は英語を使うのが全く少なかったです。就職してから、また大いに英語を使うわけですけれども、どうもそのようなことで、法学部もいずれなるかもしれないけれども、とにかく大学に入って授業についていくには英語が必要だということを、道具としての英語が必要だということをみんなにどんな職業であろうとこの辺で勉強するにはそういうものが必要だということを具体的な例で出す必要があるのではないでしょうか。
 それから、そのことも含めてですけれども、そういう例をDVDなどであるようなお話ですが、具体的に人に語らせるということです。杉山委員もそうですし、石川遼選手みたいに、とにかくスポーツの世界でもそうです。それから、実際には製造業、それから貿易、金融なども本当に英語が必要で、例えばアジアでの会議で全く欧米人がいないところでも、共通の言語で何かやろうとすると、中国語でもなく、日本語でもなく、英語で話すしかないです。そのような状況を、やはり中高生に対して、大人の世界はこうなんだよということをもっと知らせる必要があるのではないかと思います。あまりグローバルな夢とか、グローバルな文明、文化という高いものではなくて、明日自分たちがこの国で何かしながら生きていこう、まじめに取り組む人は、やはり英語が必要だということを、道具として必要だということを知らせることがまず一歩かと思います。そういう意味では、グローバルなモチベーションというものは、方法論よりもっと前に触れたいなというふうに思います。モチベーションというところについてはそのように考えます。

【吉田(研)座長】 ありがとうございました。最初におっしゃった大学の問題というのは非常に大きな問題で、高校生は、半分は大学に行こうということで勉強しているわけですから、大学のほうが、入ったらこういうところで必要になるという形で、きちんと情報を発信していくようなことになれば、受験生に対してもモチベーションになる可能性は十分にあるかなと思います。また、そういった分野で活躍している人たちの話を聞くとか、私たちもよく高校の現場で模擬授業を頼まれたりとか、大学案内のかわりにそういうことをやったりしますけれども、そのような場面、大学人からすればそういう場面をもっと利用して、語学の重要性というものがあらゆる分野において必要だということを訴えていければいいかなと思いますし、それ以外のところで、今さっきおっしゃった、それこそ社会人として、さまざまな分野で本当に英語はこれだけ必要だという、それを知るための機会をどうやって設けていくかです。ですから、それを具体的な方法として、また、形としてこの案に盛り込んでいければいいかなと思います。
 ですから、形としては、多分、今、池上先生がおっしゃった、最初のほうでモチベーション、重要性を語る場面と、それからもう少し後になって、具体的にどうすべきかという部分、2つに分けて、ひょっとすると、このモチベーションにしては記述していく必要があるのかもしれませんね。

【松本委員】 授業を変えて子供たちにグローバルな夢を与えるという可能性はもちろんありますが、「学習環境」という点から、海外に出やすい環境、あるいは海外から来る生徒と一緒に学ぶという環境の整備ということを考えてはどうでしょうか。広島県では今年から県立高校1校につき最低1名は姉妹校に海外留学に出す、そのための予算措置をされたと聞きました。日本の高校としてはすばらしいことだと思いますが、「え、1名だけですか」と大学人としては感じてしまいます。
 あと、交換留学生を受け入れた場合にも、結局、英語で教えている科目は1つもないわけです。英語すら英語で教えていないし、もちろん理科も社会も英語で教えてない。結局、校長室に座っていて別なことをするか、日本語がよくわからないけど、教室に座っているみたいなことになってしまい、教育的に意味がない。
 学習環境として、高校は全然グローバル化されていません。この間、私が質問しましたように、常勤の外国人講師もほとんどいない。こういう状況でグローバル化だ、グローバル化だとわれわれが言っても高校生はやはりわからない。結局、模試で何点とるかというのがゴールになってしまうというのは仕方がないことのような気がします。
 ですから、学習成果を考える上でも、学習環境をどうしていくのかということも考えなければ、「夢を持て」「これからの日本はグローバル化だ」「君らはその一員なのだ」と言っても、ぴんと来ないと思うのです。ですから、学習環境に関して抜本的な改革が必要ではないかと思います。

【吉田(研)座長】 非常に大事なご意見だったと思います。確かに大学でさえそうですから、ましてや高校、もっとそういう意味では学習環境が整っていないというように思います。大学でも留学生を受け入れるのはいいけれども、留学生は留学生専科で終わってしまうというケースが非常に多いわけですから、実際に日本人の学生と本当に交流していくという場面って比較的少ないですよね。それはもう高校現場になれば、今おっしゃったとおり、姉妹校からやってきました、やってきましたけど、何をとるのですかといったら、英語の授業をとったって、ほとんど意味はないですけれども、そこでしか一緒になってないという場面はあります。ですから、学習環境をどう整えるか、どういう提案ができるか、ちょっとわかりませんけれども、ただ、この後にも出てきますALTの問題、常駐化の問題とか、そういうことも含めて、学習環境の整備ということを何らかの形で入れていく必要があると思います。

【根岸委員】 今まで何人か出てきた意見を具体的に考えたときの提案をちょっとしたいと思います。2つあって、1つは太郎良先生がDVDの配付の件をおっしゃってくださって、また池上委員のモチベーションの話も少し関係ありますけれども、1つは、どちらも提案としては文部科学省のほうでいろいろな動画としてネットで見られるような形にしたらどうかなと思います。
 DVDというのは入れて見られますけれども、もうちょっとだれでも見られるような形で配信したらいいのではないかなと思います。You Tubeみたいな形でもいいですが、ある活動を具体化しているものをたくさん載せておいて見られるようにする。今度の学習指導要領の1つの教科書などを用いながらやっている例などを見られるような形になると、先生方もイメージしやすいのかなと思います。イメージが、自分が訳読だけで育ってきていると、新しい趣旨のものを提案されても、その経験からは新しい形がなかなか想像できないので、そういったもので提示していくということが1つあるかなというように思いました。
 それから、先ほど池上委員のほうから、いろいろな分野の人たちが英語を使っているという、そういう話をというご意見がありましたが、そういった声みたいなものも配信していくようにできたらいいかなと思いました。たまたまこの間、ネットの動画を見ていて、有名人の英語力などという動画があって、延々いろいろな、本田選手とか、中田英寿さんであるとか、伊達選手だったかな、あとキム・ヨナ選手や、いろいろな人たちが英語を話していて、私はもともと何で見たかったかというと、三木谷社長の英語がどうなんだなどという議論があったので、実際どうなのだろうと思ってちょっと調べようと思ったら、そういうサイト自体があって、いろいろ見ていました。先ほどの目標設定ともかかわるのですけれども、実際にどのぐらいの英語を普通に日本で育って、日本語を母語とする人たちが英語を身につけたときにどのぐらいのレベルなのだという姿を見せられると、目標値みたいなもので、よりイメージしやすいのではないかなと思います。それはいろいろな難しさはあると思いますけれども、そういったものをやってみたり、先ほどのそれぞれの分野で使っているような人たちが実際に使っている様子とかというものを見せる。
 私自身も最初、20代高専で2年ぐらい教えていましたが、高専の学生に君たちは将来これから英語を使うんだと言っても、全く響きません。私のしゃべり方が悪かったのかもしれないけれども、君たちほど英語を使う人たちはないのかもしれないというふうに言っても、地方の高専にいる状態では、目の前にそういう想像ができないわけです。ですので、今であれば、実際に使っている様子であるとか、見せられればいいかなというふうに思いました。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。これは予算もあまりかからないのではないでしょうか。即できそうな気がするし、非常に具体的で、効果があるという可能性があるので、ぜひこれは入れていっていただければなと思います。

【岡田委員】 すみません、2番に関することなのですが、2点ほど。1つは、目標設定は国なり、現場でできるかと思うのですが、そのエバリュエーションをするのはテストであり、これにはお金がかかるということだと思うのです。大学生であれば、就活のためにTOEICテストをお金を払っても必死で受けるわけです。成果を反映させることができるのですが、中高の場合には経済的な負担を生徒が強いられるということになります。強いられると言うと変ですけど、負担せざるを得ないです。例えば英検を受けたときに幾ら受験料がかかるか、私詳しく知りませんが、何千円かかかるということであると、目標設定しても、生徒さんたちがそれを検証するというのでしょうか、自分のレベルを知る手だてがなかなかないということです。極論を言いますと、全国スタンダードで安くそういう自分のレベルをチェックするような仕組みができないかということです。
 私も具体的に思いつかないのですが、逆に言いますと、そういうことを実施されている団体にご協力を願って、安く生徒さんがチェックできるような新しいサービスを開発していただくということもあるのかなと思っております。
 もう一つは、英検もそうですし、TOEICもそうですけど、マージナル──こういうと非常に語弊があるのですけど、日本の独特なシステムであり、グローバル・スタンダードではありません。それがいいか悪いかは別ですが。グローバル・スタンダードであるテストがあるかと言ったら、ないわけです。あると言えば、1つあるのが、先ほど先生も何人か指摘されたCEFRだろうと思うのです。なかなかこれは評価が分かれるところだと思うのですが、パブリックなものでもあるし、グローバル・スタンダードになり得る可能性を秘めたものだろうと思われますので、これを1つ将来の課題として日本版CEFRを開発するということはぜひ取り組む必要があるのではなかろうかと思っております。
 その2つだけです。

【吉田(研)座長】 ありがとうございました。今確かにおっしゃるとおりで、中高生の目標、達成度ですね、それをどのようにして測っていくかといったときにどうしても金銭的な問題がかかってきますから、その辺をどのようにして解消していくか。以前TOEICの方からあれは教員向けだったのですけれども、ご提案がありまして、100名か200名ぐらいはただでやってもいいよという話を、私個人的にメールでいただきましたが、それだけでは全然足らないし、また、生徒たちになると、そんなどころではないですから、果たしてそういうことがどこまでできるかです。また、今の2番のCEFRの話は最初のほうでも出てきましたね。到達目標として、まず日本の学習指導要領に沿った形で、具体的な形で何がと言ったときに、CAN-DOリストでやるとか、CEFRが参考になるであろうと思います。それを具体的に記述することによって、それに到達しているかどうかの測定方法を今後考えていく、これはやはり大事なことだし、具体的にやらなければいけないのではないでしょうか。今後の日本の英語教育をきちんと進めるためには、そう思います。ありがとうございます。
 時間の関係もありますので、ほかの部分でももし皆さんご意見があればお願いします。今もそれなりにICTの利用も多少入ってきていますが、先ほど根岸先生の話というのはICTの利用にも入っていますので、ほかの観点でも、もしご意見がございましたら、どんどん言っていただいていいのではないかと思います。いずれにしても順番を入れかえなければいけないというのは最初でわかりましたので、どういう順番で皆さん、発言していただいても構わないかと思います。いかがでしょうか。

【卯城委員】 それでは1つ進んで4の(1)「ALTの力をもっと使う」のところですけれども、私もこれは賛成で、もっとALTの雇用形態とか活用、かかわり方といったところを推し進めて変えていかなければならないのではないかと思います。今は、いろいろな制限の中でALTの力を借りているので、例えば打ち合わせをしようにも3時になると帰ってしまうとか、なかなか難しい問題があるため、特に英語の授業においては母語話者ではない日本人の先生がつくっている英語の試験とか、英文とか、そういったものが、どうしても最後に正しいかどうかという、そういうチェックも含めて、教材を一緒につくっていくというような時間も必要だと思われるのですけれども、現在のところはそういう時間がありません。
 もう一つは、前にも申し上げましたけれども、ALT単独、あるいはALTとのティーム・ティーチングだけが独立するのではなくて、ほかのJLTの日本人の先生方の授業との連携がなければALTが例えばワンショットで入っているのは評価に関係がないとか、ほかの教科書とか、年間カリキュラムと関係ないということでは、単に特別なお遊びの授業で終わってしまいますので、そういったカリキュラムの中でのきちんとした位置づけ、教材、評価といったところが、見直しが必要なのではないかなと思います。

【吉田(研)座長】 ありがとうございました。特にこれはJETのプログラムで来ている人たちの場合はそういう時間的制約というのは比較的ないはずですので、今おっしゃったようなことというのは本当は可能なのでしょうが、ただ、人数的に増えていないです。ですから、果たしてその辺の手配ができるかという問題、これが大きな問題になるかと思います。それ以外の、いわゆる派遣であったりといった場合は、どうしてもかなりいろいろな制約がかかってきてしまうので、今先生がおっしゃったような形でなかなかできません。そうすると、ワンショット的になってしまって、それこそお遊びになってしまうとか、どうしてもカリキュラムの中心的な部分を担うという、そういうことができないです。これは確かに大きな問題ですので、どう解決していくかというのは、解決が必要であるということをまず述べなきゃいけないでしょうし、それをどのようにしていくか、今後考えていく必要があると思います。ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。

【松本委員】 ALTに関しては2点あります。1点目は財政的に雇うことができない地域についてはどうするのかということです。情報として正しいかどうかわかりませんが、例えば岐阜県にはALTが全県で10名もいないといったことを聞いたことがあります。このような県に対して、国が何らかの支援をするのかどうか、あるいはそのままの状態で放っておいておくのか、といった問題が1つです。
 2点目はもうALTの時代ではないのではないかという提案です。常勤の外国人講師を雇わない限り、英語科は変わらないです。A(Assistant)がついている限り、本人たちもその気にならないですし、学校側も単に「使う」という感じなのです。お金と時間をかけてALTの研修をしているのにもかかわらず、成果が出ているとは言いがたい。ALTについては、その存在意義自体を考え直したほうがいいのではないかと思います。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。確かにそうですね。常勤の外国人の先生がいると、例えば私立の学校などの場合ですと、本当にカリキュラムの中に入ってやっているし、それが可能な学校はあります。それに対してALT頼りのところというのはどうしても一時的になってしまうし、いつもいるわけではないということがあります。どのような形で常勤化ができるかどうかわかりませんけれども、方向性というものを示していく必要があるというふうに思います。ありがとうございます。

【中村委員】 今まで言っていいのかどうかちょっと迷って、言ってなかったのですけれども、英語の授業は、例えばアメリカ人なり、ニュージーランドなり、オーストラリア人や、イギリス人が主で、日本人が従になるような体制にするというのは考えてもいいのではないかなということを私は個人的には思っていました。今の教育体制を否定するようなことになってしまいますので、ちょっと怖かったので言わなかったのですけれども、英語の授業ということに関しては、それでもいいのではないかなというような気がしています。
 あと、「先生に自信と力を」ですけれども、生徒にモチベーションを与えることを議論しているように、先生方にもモチベーションを与えるようなプログラムなり、施策があってもいいのではないかなという気がします。
 以上です。

【吉田(研)座長】 ありがとうございました。最初の点は確かに躊躇されるのはわかります。皆さん、果たして賛成されるかどうか、なかなかわかりませんけれども。それだけやはりネイティブスピーカーの役割って、本当は重要だということだと思うのです。それが何らかの形で先ほどの常勤ということもそれにつながるものではないかと思うのですけれども、その点を何らかの形で指摘していく必要があるかなと思います。
 今おっしゃった、先生のモチベーション、これは非常に大きいと思います。研修など出ても、それがどういうプラスになるのかならないのか、それによって得られたものが生かせるのか生かせないのか、留学して帰ってきたけれども、ほとんど現場では何も生かせないという状況があるとか、金銭的な問題もあるかもしれませんけれども、いろいろな面でもっと先生たち自身が検証することによって身につけたものが評価される、そういう体制というのは、もうちょっと整えていく必要があるかなと私も思います。ありがとうございます。

【市村委員】 私からは3番の「モチベーション向上」と、5番の「先生に自信と力を」と、この両方に関係することを申し上げたいと思います。私は、前伊藤忠商事に勤めておって、海外駐在、17年ぐらいやってきたのですが、海外に生活をして感じたことがここに影響があるのかなと思いまして、申し上げるのですが、私が駐在したのは香港とマレーシアとインドネシアで、いずれも日本人が非常に多い国でございます。香港ですと日本人学校が今2つありますけれども、両方合わせると生徒数4,000名ぐらいになります。マレーシアも1,000名ぐらい、インドネシアも1,500名ぐらいです。そこへ派遣されている子供たち、これは駐在している人の子供たちで、かつ先生方も、大体10人に1人ぐらいの先生がいますから、4,000名の生徒がいると、先生は400名ぐらいいるわけです。こういう人たちが現地で非常に楽しく勉強して、そして、海外生活をエンジョイする。そして、コミュニケーションの場がいっぱいありますから、英語力もついて非常に外国語の能力の向上というのにつながっていると思うのですが、こういう場面をきちんとした形で、日本にいる子供たち、あるいは先生方に元気でやっていると、いわゆるグローバリゼーションの中でどういうふうに生きているのだということを生の形で伝えることができれば、これはそれなりに子供たちもそういうものを見れば、海外でこういうところだなと、あるいは、だれでもできるなというようなことで自信にもつながるし、モチベーションの向上にもつながるのではないかと思います。先生方も、そこへ3年ぐらい駐在するわけですが、自分も語学力の向上等の勉強をして、それでコミュニケーションができるなという自信を持って帰国されていると、こういうことだと思うのです。
 したがって、地方の方でもそういう場面を何かの機会で子供たちに見せてあげれば、グローバリゼーションというのはこういうことですよと、将来こういう形で外国の人と接していくのですよというような一助になるのではないかなという気がします。そういう意味で今報告いたしましたし、提言としてそういうことも検討していただいたらよろしいのではないでしょうかということでございました。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。海外で学んでいる日本人の生徒たちというのは確かにたくさんいるわけです。ただ、その現状というのは、多分日本の生徒もそうだし、先生方もほとんど知らないということがあると思います。先ほどのネット配信とも関係するのかもしれませんが、何らかの形でそういう情報なども伝えていく、それとあわせて、多分海外で実際に活躍している日本人をインタビューしたりとか、社会生活とか、仕事、場面などもいろいろな形でもっと今のメディアなどを使って、授業の中でも生かしていくとか、そういう方策をとる必要があります。そういうことができてくれば、もっとモチベーションにつながるのかなというふうに思います。ありがとうございます。

【根岸委員】 ちょっと時間がなくなってきたので先走ってしまうのですが、最後のところの大学入試絡みのところについて意見を述べたいと思います。
 2番目のところで、大学入試における英語の試験は、話す力を含めたグローバル社会に通用する英語力をはかるものに必ずしもなっていないのではないかというのは、まとめとしてはそれでいいのですが、だから、どうするというところがないので、もしできれば、それに対する施策のような、あるいは提案のようなものを含められたらなと思います。
 もちろん話す力もですし、もっと広く、発表技能の能力というのはかなり問題だと、つまり、書くことも含めた発表技能も問題だと思います。おそらく大学入試全体ということで言うと、センター試験にリスニングが入りましたけれども、基本的に受容技能であるということで、個別の試験も大学によってはある程度書く力を見ているところもありますけれども、やはり比重も小さいというところがあります。多分実施上の難しさというところがあるためにテストされてきていないのですけれども、先ほどの話にも出ていた、入試でテストされないためのそのインパクトというのはすごく大きくて、結果、高校英語教育全体が発表技能に対する軽視というのはあります。ですから、学習指導要領が今度の形でおりていっても、大学入試ということをにらんだときに発表技能とやっても、結局、東大でも70語ぐらいしか書かせないしみたいな話になると、やるほどには意味がないということになってしまうので、全体として発表技能の入試での学習指導要領に沿った形を反映した形での入試を実施するために発表技能の測定に関する方法を検討するコンソーシアムだったり、検討会のようなもの、ワーキンググループでもいいのですが、そういったものを設置するということを考えてはどうかなと思います。実際には、既にライティングにおいても、ETSさんでも進んでいますが、実際に書かせて自動採点という技術も進んでいますし、そのほかのところでも、実際の音声認識エンジンを使った自動採点の話すテストなんていうものも技術的にはできてきています。ですから、50万人が受験したときにどうするのかなどという、そういう技術的な、そちらの側面はありますけれども、全く不可能ではないということがあると思うので、そのような問題点の指摘と、検討、方向性に関しても少し含めていただけたらと思います。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。確かにそのとおりだと思います。今の入試のように、ある日にちが決められて、その日にすべてやらなければいけないとなったときの発表能力の採点、測定というのは非常に難しいというのは現状としてあると思います。けれども、だからこそ、逆に、最初の丸のところにあるように、いろいろな英語能力試験の結果などをここで利用するという、そういう機会をもっと増やしていく、そうすることによっていろいろなTOEFLにしても4技能をはかれる。TOEICにしても実際にスピーキング、ライティングもあるというようなものがあるわけですから、そういうものの結果を参考にするような形というのは当然提案できると思います。今おっしゃったように、技術的にはいろいろ今進歩してきているというので、そういう提案もできると思いますが、主にそのあたりは高等教育局のほうになるのかもしれません。ただ、私たちからも1つの提案として、こういうことを考えてほしいと。そうしないと、中学、高校現場が変わらないという発想です。ウォッシュバックの問題ですから。それをきちんと何らかの形で述べる必要があると思います。ありがとうございます。

【太郎良委員】 3ページ目のICTについて1点触れておきたいと思います。英語こそICTを最大限使うということになっておりますが、私の考えといたしましては、最大限使うことがいいのかどうなのかと思います。英語についてもそうですし、教育ということを考えた場合、ここについてしっかり押さえておく必要があるのではないかと思います。
 例えば学校の実態という面から見ますと、この報告書は小中高あたりに基本スタンスがあると思いますが、特に中学校を見た場合、その実態からしてICTを最大限使うと言っても、それは不可能です。時間的にもそうですし、予算的にもそうですし、また、各先生方の技量的な面から見てもできません。そうした場合、このような報告を出しても、本当にそうだよなと思っても、実態は進まないだろうということは押さえておく必要があるのではないかと思います。
 そのような意味で、私は例えば中学校と高校は違うだろうし、高校と大学とは違います。だから、ここの表現というのは最大限使うのかどうかは別にして、各学校種別ぐらいに差別化を図って、中学校レベルだったらこれぐらい、高校だったらこれぐらい、あるいは大学だったらこれぐらいというような記述をしてもいいのではないかなと思います。大学ぐらいになれば、おそらくゼミとか、専門的な時間で外国とのコンピューターなどを使った交流活動などもおそらく相当できるのではないかと思いますが、初等中等教育ではちょっと難しいだろうということは確認しておきたいと思います。
 それと、2つ目といたしまして、最大限使うのかどうかということですが、私は、これはICTというのは否応もない時代の流れですから、大いに活用すべきであるとは思うけれども、私はやはり教育の本質というものを考えた場合、この会議もお互い顔を合わせてやるのと、テレビを通してやるのとでは全然違うわけでありまして、直に顔を合わせてコミュニケーションを図ることが一番有効であり、また、教育という観点からも重要であるということからして、最大限でなくて、むしろICTを有効活用するとか、そのような考え方のほうがよろしいのではないかなというように感じました。
 それと、時間もありませんが、最後のページのグローバル化時代の大学入試というところを拝見いたしまして、量的に非常に内容的に物足りないなというのが私の感じでした。小中高大の一貫性ということを目指しているわけですから、この報告書が初等中等教育をおそらく基本スタンスとしているとはいえ、その結果が大学につながるわけであって、大学の英語教育を考えた場合、入試がすべてなのではなくて、入ってからどういう授業なり、活動がなされているかというようなことも、中学校、高等学校と変わらずさまざまな課題がおそらくあるのではないかと思います。そこあたりにつきましても少しは書き込んだほうがいいのではないかなというふうに感じました。
 以上です。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。最初のICTの問題、確かに最大限というのを有効にということと、基本的に同じ意味で使われているのだと思うのですが、今はあまりにももっと使えるだろうに使ってないという場面が多いということではないかと思うのです。ふだんの授業をもっとうまくやるためにももっと活用できるのではないかという、その点をもう少しはっきりさせれば、今の点については理解していただける文面になるのではないかと思います。
 入試に関しても、確かに先ほど池上委員からも出た問題だと思います。実際、大学の中でどれだけ本当に必要なのかということがはっきりわかれば、そのための入試ということになりますので、入試だけで切れるものではない、入試を通して、大学に入って、どれだけ必要なのかということがつながっていかなければいけない部分ではないかなという気がします。どこまで踏み込めるかわかりませんが、入試に関しても、今おっしゃったとおり、一貫性を考えたときに、何らかの形でもう少し触れられるところは触れてもいいのではないかなというように思います。

【岡田委員】 1点だけご提案ですが、3番と関係するかもしれませんが、やはり報告書がまとまる時期、状況を考えると避けて通れないのは大震災ということで、東北の再建、復興というのでしょうか、再生と絡める、何か具体的な施策をぜひ盛り込んでいただけないかと思うのです。漠然とですけれども、あの東北地方からグローバル人材を大量に輩出するというようなキャッチフレーズで、教育特区のようなものをつくって、実験校を大量につくって、東北地方の若い人たちに夢と希望を与えるということを、ぜひ国としても取り組んでいただきたいのです。予算もつきやすいと思います。それ以上に、このままでいくと、こういうテーマを入れれば、マスコミは必ず報告書を記事にするだろうということもありますので、これはぜひ検討していただきたいと思っております。

【吉田(研)座長】 ありがとうございました。確かに時期がちょうど時期で、しかも一夜にしてすべて解決するというものではないので、何らかの形でそういう視点というものを入れていくというのは決して悪いことではないと思いますね。確かにいいことではないかと思います。

【卯城委員】 それでは、残り時間も短いので、オムニバスに簡単に3点です。
 1点目は、4の(2)のICTですけれども、やはり今、ICT、例えば電子黒板を例にとっても、学校に何台あるのかという問題が大きいと思います。固定式で、学校に1台しかないとなれば、すべての授業で使えるのかどうかという問題もありますし、移動式のものが2台、3台あったとしても、例えば小学校の先生方がほとんど1時間目から6時間目まで授業がある中で、休み時間にどこから持ってきて、それを設置して、トイレに行ってなんていう、そんな時間はなかなかないのが実情で、これは一昔前のLL教室が学校に1室しかないので、各教科の時間に組み入れることができないということに似ていると思います。結局、そうなると、授業の中でイベントに終わってしまい、イベント型で、何かほかの学校と交流しましょうとか、そんな形になってしまいます。
 1つはもっとICT設備をたくさん充実させて、例えば50分の授業の中で5分しか使わないかもしれないけれども、いつでもぱっと5分、思ったときに使える環境にあるということは大事なのではないかと思うのです。例えばインターネットの活用ということも、どの先生だって思っているはずですけれども、実際使ってみて、教室にパソコンがあるのかどうか、立ち上げてから、20分ぐらいかかるような古いマシンでないのかとか、いざやってみても、線が細くて、安定しているのかどうかとか、あれあれと言いながら授業が終わってしまうなんていう公開授業もたくさんあると思うのです。そのようなところを整備して、最大限に活用というのが「50分使ってないではないかと」いうことではなくて、「1分とか、5分、いつでも使える、そういったものがある」整備が必要なのが1つ。
 一方で、各教室にあるものというのは別にあると思うので、例えば大型テレビ、こういったものは比較的どの教室にもあるといった環境にあります。そういったところでは、DVD等を用いて、疑似インタラクティブといいますか、例えばオプションを、答えを幾つか用意しておいて、先生のほうでそれに合わせて選んでやる、そのようなソフトウェアの開発といったことをできるのではないかなと思いました。
 それから2つ目は5番の「先生に自信と力を」ですけれども、ほかの教科も同じですが、もう少し授業の準備に割く時間の確保といったことを推し進める必要があると思います。校内分掌であるとか、部活動であるとか、さまざまなものでほとんど時間がないのが現状なので、そこを時間の確保といったところが必要で、特に英語の授業準備というのは、次の年に教科書が変わってしまうと全く教える内容が、英文も変わりますし、場面も変わります。ほかの教科などでは例えば公式を一通り覚えておけば教科書が変わってもそれほど時間がかからないような教科もありますけれども、そういったところの配慮が必要かなと思いました。
 最後に大学入試ですけれども、私も大学入試を担当する一人として、それでは、おまえのところの大学入試は何で変わらないのかと言われるとぐうの音も出ないですけれども、自分自身は大学は2校しか経験していませんが、その2校の中で見ても、英語を教えている教員というのは必ずしも英語教育の教員ばかりではないのが現状です。例えばもっと文法の問題を出したいという英語学の先生もおられますし、あるいは速読とか、大意把握なんてもってのほかで、もっと1行1行味わうように訳させたいという英米文学の先生もおられます。実は、英語教育の教員というのは比率が非常に少ないです。そういった中で、大学の中で話し合ってみても、なかなかこれ以上進まないのが現状ではないかと思いますので、もう少し外から大学入試に対しても要望とか、ガイドラインというものを出していかないと、変わらないのではないかなと思ったりします。
 以上です。

【吉田(研)座長】 ありがとうございました。時間もなくなってきました。今卯城先生からのご指摘がありましたけれども、確かに結局はICTの環境です。電子黒板の数の問題にしてもそうですけれども、先ほどの太郎良先生のおっしゃったこともすごく関連するのではないかと思います。本当に使いたいときに本当に使える環境というのが整っているのかどうかというのは確かに大きな疑問だと思いますし、そういうことに予算なども配分する必要があるのかもしれません。
 あと2点ありましたけれども、これは果たして予算との関係というのはよくわかりませんが、確かに学校の先生が忙し過ぎるというのは、だれが見てもいつもそのように出てきますけれども、授業準備にどれだけ時間が割けるかという問題です。そして、最後の入試の問題もそういう意味では外から大学に対して要望するのか、外から何らかの形で別のやり方の提案をするのか。先ほどありましたけれども、そういうある意味では外からの圧力というのでしょうか、そういうものもどこかで必要になってくるのではないかと考えられるかなと思います。

【池上委員】 1つだけ指摘しなければいけないなと思っているのが、小学校の英語が始まりまして、かなりいろいろな問題も指摘されています。今週のNHKの番組でもありましたし、今朝はフジテレビが問題ありというようなことで、子供たちは非常に喜んでいるけれども、教える体制が、今ALTと出ましたけど、地方によって偏在しています。それから、今度の災害でみんな本国に帰ってしまって、帰ってくる人が少ないとか、ALTの調達に問題があります。それから、調達方法が派遣会社からの請負契約なので、個別の学校は派遣会社経由でしか指示できないという問題。派遣会社は人材が足りなくなったために、今は質はともかくとして、とにかく量をかき集めています。広告を出してかき集めているというような状況で、このままだとやはり相当心配になります。ALT頼みだけではやっていけないというので、長期的には、もう少ししっかり小学校教員の英語教育というものを見つめ直す時期が来ているのではないでしょうか。これは問題が出るかもしれませんが、「先生に自信と力を」の最後の丸のところで小学校の教員養成、ちょっと触れていますけれども、小学校教員の教職課程においては、外国語活動に関する科目の開設をさらに進めるべきというのではなくて、もう小学校教員だったら担任を持てば全部やらざるを得ないわけです。音楽の先生でも理科の先生でも、英語を教えざるを得ないので、外国語活動に関する科目の必修化を進めるべきだと思います。ほかの科目を専門にする人でも、英語を教えるということに関しては、全員が1回方法論としては学ぶというのを必修化したらどうかというようにちょっと極端ですけれども、提案したいです。
 それから、当然のことながら、現在の英語の先生のレベルアップ、スキルのアップを図る。この前の文部科学省の報告と違って、今日のアンケート結果は5割以上の父母が先生の英語の能力に不安を感じているという結果が報道されておりましたし、これはやはり我々としてはこれを出すときには直面して、この問題について検討をしようというような提言は入れる必要があるかなというように思います。

【吉田(研)座長】 ありがとうございました。教員研修のところで大学における教職課程の中できちんとやっていくというだけではなくて、現実に今教えている先生たちの研修をどのようにしていくのか。それについてもっと具体的に踏み込んで、何か提案できればいいという話だと思います。

【山中局長】 どうもすみません。具体的な提案を盛り込むということで、先ほど中村委員から、例えばアメリカ人が英語の先生になってそれで主になってということも、実は制度的にはできまして、例えばアメリカ人で高校や中学の英語の免許を持っている方が、日本の学校で教えることは、教育委員会が採用しようすれば英語の講師として採用できます。ですから、制度的にはありますけれども、それをやるかどうかです。日本人の先生を雇わないで外国人を雇うということを教育委員会がやるかどうか。こういうところにかかってきております。かなり制度的にはやればできるというところはあります。
 あと、実は今日遅れたのはグローバル人材育成推進会議というものが官邸の中にできまして、これは新成長戦略実現会議というのが去年9月に閣議決定されて、そこでグローバル人材育成のための具体策を検討するというもので、そういった戦略もありますから、6月、7月、その辺には何かまとめようとしております。ここで検討していることと問題意識としては全く同じでございます。例えばアメリカへの留学生は、中国が2010年だと13万、インドが10万、韓国7万、台湾2万6,000、日本が2万5,000人、こういう状況ですし、私企業に勤めた新入社員で海外で働きたいと思わないという人が、10年前は3人に1人だったのが、今や2人に1人というような感じでどんどん内向きになっているということで、このようなグローバルな社会の中で、本当にこのようなことで大丈夫かという意識は全く同じでございます。
 それで、グローバル人材の活用とか、海外留学の推進ということで、その方策や人材育成のための環境整備、学生、研究者、社会人の留学の推進、英語力向上、グローバルな活動の動機づけというようなことについて今後検討しようということで、文部科学省、経済産業省、外務省、厚生労働省、玄葉国家戦略担当大臣や、官房長官も入り、細野総理大臣補佐官と文部科学省の鈴木副大臣がキャップになって幹事会も開催して検討することになっております。そういう意味で、ここで、この会議で具体的にこのようなことをやったらどうだということを言っていただきますと、私ども直結して提言をつなげていって、政府全体としての動きにつなげられるという可能性もございます。今日の議論では、企業の採用や、人材戦略、その辺が大きく変わってくれないと、学校教育だけ言われても困るという企業側に対する働きかけというのも、もっと積極的にやろうということです。
 大学の入試、これが変わらないと、高校以下の教育というのは、これに支配されているという面がある程度あります。高校の教育など、この辺についてはもっと具体的に提言しようというあたりがポイントとして語られていたところでございます。
 というのが並行して同じ時期に同じような方向でやっておりますので、ぜひ具体策というものを、これは無理だろうと考えられずに、ぜひこういうのが実現できたらということについて提言をしていただければ、政府全体の政策に反映できるという可能性がございますので、よろしく次回に向けて具体的な案を寄せていただければ、本当にありがたいと思います。

【吉田(研)座長】 どうもありがとうございました。
 時間が既に過ぎてしまいましたけれども、最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。

(4)その他

 次回の検討会の予定について事務局より事務連絡。

【吉田(研)座長】 ありがとうございます。今日まだ十分に意見を言えなかったという方もおられると思いますけれども、それについてはぜひメールなり文章なりで事務局のほうにお寄せください。6月30日に、最終的にそこで何らかの形でまとめていきたいというつもりでおりますので、事前に皆さんにまた連絡が行くかと思いますが、その際よろしくお願いいたします。
 今日は本当にお忙しいところ、ありがとうございました。

(5)閉会

 

お問合せ先

初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室

企画調整係
電話番号:03-5253-4111(内線3787)

(初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室)