外国語能力の向上に関する検討会(第6回) 議事録

1.日時

平成23年4月22日(金曜日)9時30分~12時

2.場所

中央合同庁舎第7号館(文部科学省)13階 13F1,2,3会議室
東京都千代田区霞が関3-2-1

3.議題

  1. 授業改善のための効果的なICTの活用について
  2. ALTの効果的な活用について

4.出席者

委員

吉田研作座長、池上久雄、市村泰男、卯城祐司、岡田恵介、杉山愛、太郎良博、中村保、松本茂、本下俊秀、吉田広毅

文部科学省

山中初等中等教育局長、德久審議官(初等中等教育局担当)、中井国際教育課長、渡邉外国語教育推進室長

5.議事録

(1)開会

【吉田(研)座長】  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第6回の外国語能力の向上に関する検討会を始めさせていただきたいと思います。
 本日もまたお忙しいところお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。本日は、授業改善のための効果的なICTの活用、またALTの効果的な活用について、皆さんと議論をしていきたいと思います。ICTの活用に関しましては、さいたま市立浦和中学校、また東北学院大学、稲垣忠准教授からお話をいただき、ALTの効果的な活用に関しては、財団法人自治体国際化協会(CLAIR)から、それぞれご説明いただくことになっております。浦和中学校様、稲垣先生、自治体国際化協会様、本日はよろしくお願いいたします。
 それでは、まず本日の議題につきまして、関係する資料について、事務局からご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

(2)事務局説明

 渡邉外国語教育推進室長から資料1,2,3,参考資料について説明。

【吉田(研)座長】  ありがとうございました。資料に関して、皆さんからご意見、ご質問などがありましたら、後ほどいただければと思います。
 それでは、まず初めに、さいたま市立浦和中学校様からご説明いただきたいと思います。浦和中学校は、1人1台パソコンを活用した学習を進めていると伺っております。本日は、特に英語教育における1人1台パソコンを活用した学習についてのご説明をいただければと思っております。それでは、浦和中学校様、よろしくお願いいたします。

(3)さいたま市立浦和中学校説明

 さいたま市立浦和中学校から、英語教育における1人1台パソコンを活用した学習について説明。

【さいたま市立浦和中学校(高久教諭)】  失礼します。さいたま市立浦和中学校英語科、高久正行と申します。本日はよろしくお願いいたします。では、座って説明をさせていただきたいと思います。
 本日お話しする内容ですが、最初に本校の概要、次の英語科の概要、3番目にICT、特に先ほどご紹介ありましたが、1人1台のノートPCを活用した授業実践、そして最後に、それらの活用に関する課題ということで、4つに分けてお話をさせていただきます。
 まず、本校の概要について、簡単にお話をさせていただきます。平成19年4月、埼玉県内では2校目となります併設型の公立中・高一貫校として、さいたま市立浦和高等学校内に開校しました。今年の4月で5年目ということで、まだ1期生が高校2年生に在学中という状況であります。母体校のさいたま市立浦和高校は、昔浦和市立高校と申しまして、昭和40年代は全国高校サッカーで全国大会を4回制覇するなど、文武両道をうたっている学校で、毎年埼玉県の公立高校入試の倍率、普通科ではトップを走っている、埼玉県内では非常に人気のある学校になっております。その中につくった中学校ということで、規模は1学年80人、2クラス、全部で240人になっております。クラスは全部で6クラスです。
 この学校を設立するに当たって、独自の教育活動として、Morning Skill Up Unit、MSUと私たちは言っていますが、その授業を月曜日から金曜日までの1時間目を使って行うということを決めていました。そこで使われるのが、生徒1人1台のノートパソコンを使ったe-learning、それを国数英の3つの教科で行うというものでした。このノートパソコンを使用するに当たって、校舎のほうもかなり改築をしまして、校内LAN並びに無線LANの整備をしております。したがって、本校は有線ではなくて、生徒のパソコンはすべて無線ですので、校内をパソコンを持って自由に動き回れるという環境をつくっております。
 続きまして英語科の概要についてですが、大きく3つ挙げております。私はその開設の2年前から準備に携わっておりまして、その2年前から目標を立て、どのような英語科の授業をつくろうかということで研究をしてまいりました。1つ目、中・高一貫校ですので、6年間を見通して基礎・基本の着実な定着ということで、中学校段階では20人ずつの少人数授業、少人数指導ということで行っております。その20人は単純に出席番号で分けておりますので、習熟度別ではございません。適性検査を通して入ってくる生徒ですので、中学3年生までに英検準2級をとらせようということを、1つ目標と挙げました。
 続きまして、実際の場面で使えるコミュニケーション能力の育成に重点を挙げ、3つ目、海外の研修等を通してということが書いてあります。実は、この浦和中学校の英語科の計画を立てるに当たって一番大きかったのは、海外Field Workという一番下に書いてあるものです。中学3年生の3学期、本校の生徒たちは一貫校ですので、高校入試がございません。ですので、2月に生徒全員を1週間ほど海外に連れていって、現地校の生徒と交流、ホームステイプログラムをという計画を立てました。その海外Field Workというところで、実際に話せる英語を特に意識して計画を立ててまいりました。
 授業の構成ですけれども、通常授業とMorning Skill Up Unit(MSU)の2本立てで、本校は英語の授業を行っているとお考えください。通常授業についてお話をさせていただきます。週3時間、現行の105時間のままです。少人数指導で20名、1クラスを単純に出席番号で2分割しております。そこに週1回ALT、または少人数サポートという教員が入って、2人1組や3人1組で授業を行っております。副教材として、Z会出版の「TREASURE」という教材も使っております。
 これからお話しするのは、私が1期生3年間持ち上がりでいきましたので、現高校2年生の3年間の取り組みの成果をお話しさせていただきます。現在は中学2年生の英語を担当しております。1年生段階では、やはり英語を使うことが普通であるという雰囲気をつくらせたいということで、積極的にClassroom English、あとはQuick Inputとか弾丸Inputと呼んだりしていますが、フレーズをとにかくインプットさせたい。あとは2人1組の会話をできるだけ継続させるということで、今日は天気、好きな食べ物などのように、あるトピックについてできるだけ多く会話をさせたいということを意識して、中学校1年生は行いました。
 中学2年生では、あるトピックについて30秒程度のショートスピーチを行い、そのスピーチに対してほかの者たちが質問するというEnglish Party、あとはメールマガジンで「毎日1分!英字新聞」というサイトがありまして、それを使ってのリーディング。あとは、これはちょっと中にはよくないのではないかと言われもしますが、修学旅行に行って、京都の現地で外国人の方に声をかけてインタビューをするという活動等を行いました。左側にあるのが、先ほど申し上げましたメールマガジンの抜粋でございます。右側が修学旅行で行ったインタビューのシーンです。
 3年生では、海外Field Workが近くなってくるということで、オックスフォード出版のいわゆる旅行英語のフレーズがたくさん入っている教材「PASSPORT」の採用。あとは中学3年生全員にスピーチを取り組ませて、「My Dream」というタイトルでの作成発表。そして、Field Workということで、日本の文化を紹介しますので、日本の文化を英訳等するという準備活動を行いました。その他、中・高一貫校の利点を生かして、合同英語レシテーション大会。あとは夏休みに、市内のALTを集めまして、ちょっとしたミニキャンプ、英語キャンプというものも実施しております。
 ICTについてですが、実は本校、各普通教室に1台ずつ、計6台の電子黒板が設置されております。英語の授業は少人数教室ということで、普通教室ではないところでやっていますが、まだ5年目なので、まだ全生徒が集まっていないときには、英語の部屋に電子情報ボードの余っていたものを持ち込んで、それでICTになるかどうかわからないですけれども、電子情報ボード、電子黒板の活用をさせていただきました。
 例えば、どのように使うかというと、職員室でつくった教材、パワーポイント系の教材を直接送って使うことができますので、教材提示。2つ目に、内蔵のカメラがありますので、生徒の写真と持ち物をそのカメラでスキャンをして、画像で映してショー・アンド・テルという発表活動。あとはペンが使えますので、電子黒板ということでペン書きをしてしまう。すぐに消したりすることもできますし、強調もできますので、拡大をしたりする使い方。あとはインターネットに接続ができますので、特に英語の教材は、外国のことを扱っているものが多いです。そのわりに生徒たちは外国の地理的なものは全くわからない子が多いですので、すぐにインターネットに接続して、この国ですよと地図を示したりというような使い方。あとは音声CDを入れて、頭出しが非常に楽でした。CDラジカセ等を使うと、どこまで戻せばいいのかが大変ですけれども、そのあたりはとても電子情報ボードでは助かっております。
 ただし、その一方、現在普通教室にある関係で、運び出すのが非常に大変です。確かに滑車がついていて楽なのですけれども、一回一回電源を落として配線を外して持っていく、これだけで約10分近く、休み時間がなくなってしまうという最大のデメリットがあると思っています。その一方で、宝の持ち腐れ的なところがありまして、やはり十分使いこなせていない。せっかく6台もありながら、各教科、インターネットでの利用はかなりしますけれども、電子黒板本来が持っているもっと効果的なあり方については、まだまだ検討の仕方があるのではないかと思っております。できれば英語の教室に1台欲しいぐらいですけれども、このような電子黒板の使い方をしてまいりました。
 続きまして、今回メーンになるかと思いますが、Morning Skill Up Unitについてお話しさせていただきます。1時間目、60分でもっています。各教科を20分ずつということで、国数英、このような形で20分ずつ行っています。今年度は学習指導要領移行期ということで1時間カットして週4回にしてしまいましたが、基本的にできるだけ毎日英語に触れるような機会を持っています。使っている教材は、アルク教育社の「Net Academy2」という教材です。これは実は、中学1年生には非常にハードなもので、もともと大学生で中学校の英語の勉強をやり直したい学生さんのためにつくられたというコンセプトだったらしいですが、非常にリスニングの教材が豊富であります。絵もたくさん使われているので、中学1年生でも何とかいけるのではないかということで導入をしてみました。実際自分でオリジナルをつくろうと思ったのですが、やはり著作権、肖像権、あとはリスニング教材をつくるのに多額の費用がかかるということで、一般に市販されているものを使いました。ただし、これは5年間で500万円、リースです。そのぐらいのお金がかかっております。あとはこの時間に洋書を使ったり、レシテーションスピーチの練習をして、とにかくインプットを心がけました。
 基本的な進め方は、与えられた課題を自分のペースで解くということでした。学習の成果がどれだけ確認できているかということで、我々とインタビューテストという形式をとりました。ただ、初めてのことだったので、やってみないとどのように進むかもわかりませんでしたので、このあたりは非常に試行錯誤でした。実際やらせてみると、生徒にとってはゲーム感覚です。本当にゲームのようにポンポンポンポン解いていってしまいます。後で申し上げますが、正解することが目標になっていました。この写真を見て、どのように思われますでしょうか。これがMSU、英語の時間の取り組んでいる風景です。英語の時間、1人1台持って、ヘッドセットをして問題を解いていきます。リーディング、音読の練習をするとヘッドセットに声が入ってきたり、自分の音声をパソコンに録音して聞いたり再生することができ、このような雰囲気が1時間続きます。他校から結構視察に来られることがありますが、このシーンを見て、あまりいい印象を持たれない感じがかなりします。何か学校ではないみたいという感じで、話はされます。
 e-learningの内容はこのようになっております。一番メーンにしたかったのが音声を聞くこと。とにかくたくさん聞かせたかったということです。あとは逆に、聞いたものをしっかりアウトプットする音読という活動をたくさんさせたいと思っておりました。
 通常授業では、このようにレポートを使っております。現在の検定教科書では、ライティングのパートというのが必ず学期ごとにあったりします。それを生徒1台のパソコンを使ってレポートにあてています。生徒はとても手慣れたもので、画像の挿入や文章を打つということはとても上手です。各教室にプリンターもありますので、それを使って打ち出したものを提出させて教員でチェック、もしくはALTにチェックという形です。
 これは現在の中学2年生が、この3月に旅先からALTの先生に書いた手紙の絵はがきです。これは現在の1期生、高校2年生が中学2年生のときに書いた、修学旅行に行ったときのレポートです。次が、やはり高校2年生、1期生が海外に行ったときのレポートです。右下に後輩にということで日本語がありますが、このようなA3版のレポートを課しました。このような使い方をしております。
 成果に入りますが、本校では毎年2月を基準に、TOEIC Bridgeを全生徒に受けさせて、1年間でどれだけ力が伸びたかということを定点観測しております。実際やることがすべて初めてでしたので、どれだけ力が伸びたのかが私たちは非常に不安でした。そこで、定点観測ができるということでのTOEIC Bridgeの導入でした。赤文字が1期生、今の高校2年生になりますが、180点中の平均点です。左から中学1年生のとき、真ん中が中学2年生のとき、一番右側の143というのが中学3年生、卒業時のものです。その右側にある黒字の99.7、112.1、121.9というのは、全国の中1、2、3年の平均的になっております。下側の黄色いところが、特にリスニングパートの平均点になっております。90点満点ですが、ここの点が非常に高かった。これはやはり1年間リスニング、非常に音声を聞かせたという効果が非常に出たのではないかと、私は思っております。当然文法事項、単語が入ってくれば、上のリーディングパートが伸びてくるのは必然だと思っておりましたが、1年目からリスニングの成果がこれだけ出るというのは、正直言って驚きでした。
 続きまして、これが現在の高校1年生、2期生になります。やはり同じように、リスニングの部分が全国平均と比べても高くなっております。続きまして、これが現在の中学3年生。中1から中2へのアップが約二十何点ということですごい伸び方をしました。やはりリスニングの伸びが非常に大きくなっております。比較対象がありませんが、これが現在の中学2年生です。やはり中学2年生でもリスニングパートで60.8点ということで、リスニング部分に非常に大きな成果が出ているかと思います。
 また1期生に戻ります。1期生、私、3年間もっていたので非常に思い入れもあるのですけれども、このように試行錯誤の中で、少しずつ右肩上がりで上がってきたのはとてもうれしく思っております。特にこのグラフですけれども、1年生のとき低かった子が、純粋に2年間やって、96点だった子が130まで上がったというのは、非常にうれしく思っています。全体的に一斉の取り組みをしていきながら、全員が上がっていったという結果が得られたことに、すごく満足しております。また、余談ですが、実は1期生、高円宮杯全国中学生英語弁論大会の全国大会に出場して、最後ファイナリストまで残るということがありました。また、昨年の全国高校生ディベート選手権、市立浦和高校は全国優勝して、この夏、アイルランドの世界大会に行きますが、そのメンバーの中に1期生が2人入っております。また、今年の3月の話ですが、高校のほうが姉妹都市であるアメリカのリッチモンドと交換留学といいますか交流をしておりまして、そこに行った際のことです。津波のあったこの時期によく来てくれたということで、たまたま内進生の親戚が宮城県にいて、祖母が被害に遭っていたことから、突然ローカル局に英語でインタビューを受けて、それに答えてテレビ放送されるということもありました。いろいろなところで1期生が活躍しているということがありました。
 3年間の集大成ということで、先ほど申し上げましたが、Field Workというものを1週間、ホームステイ並びに現地の生徒との交流ということで行ってまいりました。
 最後に、課題についてです。今、5年間のリースということで、5年目が今年で終わろうとしています。来年継続されそうですけれども、やはり市の財政状況によって、今後も継続できるかどうかが定かではないというのが非常につらいところです。ですので、この体制を続けるためには、受益者負担を検討しなければいけないのかなという話はしております。また、運営面についてですが、初期費用はかけてもらえましたが、その後リニューアルで変わったときの予算がついていないので、変えようがなくて、もらったものでやるしかないというところが非常に課題になっています。あとは、やはりいろいろなことをやっていく中で、電子黒板の活用についても、まだ十分校内研修がとれておらず、そのため、どうしてもICTの活用がパターン化してしまう。また、先ほど申し上げましたが、e-learning、子どもにとってはゲームになってしまっている。正解してクリアすることが重視されているという課題があると思います。なので、どうしても教員のほうで手立てを入れて、理解できているかということをしなければいけない。それはペーパーであったり、インタビューであったりしますが、やはり5年目になってもいまだにそういう課題はあります。
 非常に長くなってしまいましたが、これで本校の発表を終わらせていただきます。ご清聴どうもありがとうございました。

【吉田(研)座長】  ありがとうございました。非常におもしろい、非常に内容のある発表をありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、東北学院大学の稲垣准教授から説明をしていただきたいと思います。稲垣准教授は、ICTを活用した交流学習についてご研究されているということで、本日は特に、英語教育におけるICTを活用した交流学習についてご説明いただければと思っております。それでは、稲垣先生、よろしくお願いいたします。

(4)東北学院大学稲垣准教授説明

 東北学院大学稲垣准教授から、英語教育におけるICTを活用した交流学習について説明。

【東北学院大学稲垣准教授】  皆さん、どうもこんにちは。東北学院大学の稲垣と申します。東北学院大学は仙台市にありまして、今回震災ではいろいろございましたが、多くの学校現場では、今、復旧に向けて動き始めていて、大学に関しても、そろそろ通常の授業に向けて準備をしているところです。
 私自身は、専門としては教育工学で、ICTの活用、例えば、先ほどお話が出ていました電子黒板、そういったものの活用の仕方であるとか、あるいは一昨年度ですけれども、英語ノートのデジタル版を小学校の外国語活動の時間に電子黒板を使ってやった場合にどのような効果が出ていたかという検証をしたりとか、そういったことをやっております。
 もう一つは授業設計ということで、インストラクショナルデザインという言い方もしますけれども、実際にはこういったICTというのはあくまで道具なわけですから、その道具をただ入れれば授業が劇的に変わるというわけではなくて、その道具の上に、どういった授業デザインをすることで、子どもたちに意義のある学習活動になっていくかという、そういった話だと思うのです。そのような授業設計の部分で、特に学校間交流学習ということで、学校と学校をネットワークでつなげていく。ICTのCというのはcommunicationのCですけれども、もちろん先ほどの個別のスキルトレーニング的な形でドリルをやったりすることは、効果は既に実証されていることなので、これからもやっていくべきだと思うのですが、もう一つコミュニケーションの道具として、こういったものをどう使っていくかという話をお話しさせていただきたいと思っております。
 まず、学校間交流学習とはという話ですけれども、離れた学校と学校をつないで学習する形態を指します。私自身の研究の中では、国内の交流もやっていましたし、国際交流も含めてどちらも対象にしてやってきました。こういった取り組みというのは実はそんなに新しい話ではなくて、ネットワークを使ったものだけ見ても1984年から既に取り組まれています。このときは、今、東京大学で認知科学を専門にされている三宅なほみ先生が取り組まれたのですけれども、文化間学習ネットワークということで、イスラエルとかアメリカと日本とがつながって、どういうディスカッションをしたら海外の子どもたちのディスカッションが深まるかなど、そういった研究が当時されておりました。
 その後、日本の学校現場にインターネットが入ってきたのが、大体94年、95年といったところですが、最初に先生方が何に使おうかと思ったときに、やはりインターネットが入ってきたということは、世界とつながる道具だという意識はすごく強かったのですね。それもありまして、100校プロジェクトという、100校だけインターネットをつなげた学校をつくったプロジェクトがあったのですが、そのときにもたくさんの国際交流に取り組まれましたし、その後、こねっとプランという形で、これはNTTのほうが先導して、1,000校の学校にインターネット回線を届いたプロジェクトがあったのですが、そのときもいろいろな形で海外と交流する取り組みというのはされておりました。
 一方で、海外でもVirtual Classroom、これはAT&Tがサポートしていたのですが、3カ国でチームをつくって、共同のウェブページをつくるといったプロジェクト学習です。それから、スウェーデンで始まったKIDLINKというのは90年から。それから、あとアメリカで始まっているiearnという国際交流の支援団体がありますけれども、こちらは88年からということで、実はかなり古い歴史があるというのが現状ではあります。
 こういった学習のポイントというのは、私は4つあると思っているのですが、1つは生活地域に根ざすということです。よく外国のことを異文化理解で学ぶような学習活動がありますけれども、例えば、インドでカレーライスをみんなで手で食べているとか、そういうステレオタイプ的な話を学ぶということが、本当にそれは異文化理解になるのかという話です。もちろんステレオタイプを知った上で、それではそこの地域に本当に住んでいる人たちがどのような生活を送っていて、どのようなものを食べていて、どのようなことを考えているか。そこまで迫ってこそ、異文化理解としての価値というものは出てくると思っております。そういった意味では、例えば日本でも、北海道の子どもたちが一生懸命京都のこととか富士山のことを語ってもやはり何かちょっと違うわけですよね。そうではなくて、北海道の暮らしというものは何だということをちゃんと伝えていくこと。そういった生活地域に根ざすことができるということが、1つのポイントです。
 もう一つは、メディアの活用です。やはりICTというものをどういった道具として使っていくかという話がありますけれども、結局、特に海外との交流というものをやろうと思ったら、こういったいろいろな形でメディアを使わないと交流はできないわけです。ですので、メディアのために何か授業をするのではなくて、メディアを道具として授業をしていくということが自然とできてくるという、そういった価値があります。
 もう一つは、人間関係を組みかえるというところですが、ここに関しては、特に小規模校でずっと言われてきたことですけれども、やはり小規模校の子どもというのは、どうしても自分の考えをあまり述べるのが得意ではなかったりとか、人間関係が非常に固定されているという環境があったわけですが、そういったところをほかの地域の、大人とかかわるだけではなくて、ほかの地域の同年代の子どもたちとかかわることによって、自分たちの人間関係が開かれていくという、そういった意味では、当然それは国際交流にも大きな意味を持つだろうというところです。
 最後は、協同による学びのデザイン。これは先生同士の協同という話ですが、国際交流をするに当たっては、先生同士でお互いどんな授業をするのか、いつごろどんなことをやるのかという計画をある程度立てなければいけないのです。これがカリキュラム上の位置づけに対してちょっと無理があるところがあったり、しんどい部分もあるわけですけれども、やはりそれを通して先生同士が、英語でしたら英語教育の授業観であるとか、指導法であるとか、そういったものをぶつけ合わせていくことによって、先生自身も開かれていくという形があるのではないかと考えております。
 諸外国でも幾つかこういった取り組み、先ほど少しお話ししましたけれども、例えばイギリスの場合は、BBCがTwinningという言い方をしているのですけれども、ブリティッシュカウンシルと協働によって国際交流を支援するような取り組みをたくさんしております。イギリスとアフリカの学校をつないだりとか、そういったことも結構されているようです。EUでは、EU全体でコメニウスプロジェクトというものがあるのですが、その中でもTwinningとして、EU内の国と国の子どもたちが交流するような、それは直接対面で行って交流することも含むのですけれども、ただそのときだけではイベントになってしまうので、イベントにならないように事前の学習であるとか、あるいは事後の交流の継続であるとか、そういったところにICTを使っていくという話がされております。
 アメリカに関しては、先ほど紹介したiearnもそうですし、あとはGlobal School Netとか、かなりいろいろな団体が国際交流の交流相手を紹介したりしています。特に日本の先生の場合、最初に交流しようと思ったときに、それではどうやって相手を見つけるのかという話があるわけですが、そういった部分に関してはかなりの支援がいろいろなところからされております。教育者自身が教師向けの、こういったところのサイトに行って、このようなプロジェクトがたくさんあるので、このようなことをやってみてくださいというガイドがつくられているなど、そのような形で多様な取り組みが広がっているところではあります。
 次に実際、こういった学校間交流学習でどのような力が育つのかという話ですが、これは100校プロジェクトとか、そういった初期の国際交流をずっと先生方がやっていく中で、先生方がどういう学習の目標を設定したのかという事例を200事例ぐらい集めまして、分類していった調査の結果をご紹介します。最も一番皆さん言われるのはコミュニケーション力です。コミュニケーション力というのは、単に語学的な意味での、例えば語彙だったりとか、文法とか、そういった話とはもう少し超えたところで、相手が実際にいるわけですから、相手にちゃんとわかりやすく伝えること。それから、単に伝えた気になってしまうのではなくて、わかるまでちゃんと聞くことだったりとか、質問をちゃんと重ねていくこと。それから、必要感のある英語活動ということで、何のために学ぶのかというのを考えたときに、相手がいるからこそ、それではこの人たちに伝えるために僕らは英語を学ぶんだという、そういった学習ができるというところがあります。
 それから、あとは異文化・自文化の理解や、人と関わる力という部分があります。関わりについては、これはソーシャルスキル的な意味もあるのですけれども、初めて会う人とどうやって人間関係を築いたらいいのか。当然対面で出会って、突然仲よくなるというのも、子どもたちは得意ですからそれはできるのですけれども、ある意味ネットが介在することによって、どうやってその関係を築いていったらいいのだろうということを一歩一歩確かめながらやっていく、そういった学びもできるわけです。
 それから、後で紹介するプロジェクトですと、協同作業。お互い仲よくなるだけではなくて、考え方の違いでぶつかり合ったりとか、自分はこうしたいのだけど、向こうはどう思っているのかなとか、そういったやっぱりコンフリクトが出てくるわけです。そういったものをどうやって解決していくのかということ。その他には意欲だったりとか、あるいは情報活用。これは当然コンピューターを使っていくわけですから、そういったことも含めて、ねらいとしては設定されているわけです。
 ここからちょっと幾つかの事例を紹介していきたいと思います。1つはJapan Art Mileというプロジェクトがありまして、これは2006年度から国際交流を取り入れた形でやっています。大体教室の黒板ぐらい、1.5メートル×3メートルちょっとぐらいだと思いますが、それぐらいの大きさのテントの布地にアクリル絵の具を使って壁画を書いていく。そういう絵を書くプロジェクトなのですが、その絵を書くときに、それではどんなメッセージをその絵に乗せるのか、どんな構図でやるのか、分担をどうするのか、そういったたくさんの協同学習をするための相談をしなければいけないことがあるのです。しかもその絵の内容というのは、自分の地域のことを書くときもありますし、相手の国の人たちに教えてもらって、その内容を絵にまとめ直していくという、コミュニケーションが必然的に起こるような仕掛けが入ってきます。そういった国際交流のプロジェクトが2006年から始まっていまして、例えば昨年度でいうと小・中・高、その中では小学校が多いですけれども、57グループが参加して、20カ国の海外校と交流しております。海外合わせて3,000名ぐらいの生徒が参加しています。
 それから、もう一つは「つながーる」という、これは国際文化フォーラムという財団が運営している、中高生対象のSNS(ソーシャルネットワークサービス)です。掲示板みたいなものでいろいろな交流ができるわけですけれども、日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語で交流が進められています。英語だけではないというところも、1つここのおもしろいところだと思うのですが、この4カ国語の中で、中高生が本当に入り乱れていろいろな言語で交流ができているという、そういった形になっております。
 最後はConnecting Classroomというもので、これはブリティッシュカウンシルが行っていたのですけれども、イギリスの都市と日本とアジア、アジアの中でも台湾や韓国であるなど、そのような形で3地域でチームを組んでプロジェクト学習をするという取り組みがされていました。仙台に関しては、昨年度までイギリスのカンブリア地方と台湾と3地域で交流するプロジェクトを行っておりました。09年度でいうと、6地域37の中学校が参加して、これぐらいの参加規模でやっていると。こういったプロジェクトは、既にいろいろなところで動いているわけです。
 この中で、上2つについてお話ししていきたいと思います。まずアートマイルに関しては、これは江南中学校の取り組みですが、ポーランドと交流したときのものです。中学校3年生の選択英語の時間を使ってやっています。標準のカリキュラムの中になかなか入れ込んでいくのが難しいところがあるので、このときは選択科目を使うということをされておりました。
 テーマとしては私たちのタイムカプセルという話で、基本的には学校の学年暦が、例えば日本だったら4月から始まって3月に終わりますけれども、国によって違いますよね。基本的にアートマイルでは、9月から3月までのプロジェクトという形で、いろいろな国と交流しています。9月までのところというのは、自己紹介をしたりとか、このプロジェクトの概要を説明したりとか、あるいは自分たちの地域紹介とか自己紹介のメッセージをあらかじめ準備しておいたりとか、ある意味準備時間にあてておきます。9月以降のところで、左下にちょっと小さい画面がありますけれども、掲示板でメッセージを書いてお互い送り合ったりとか、テレビ会議を少ししてみたりとか、そういった話で少しずつ交流が始まっていきます。12月ぐらいに実際に絵を書いて、本当にテント生地を使ったものなので、そこはバーチャルではなくてリアルなのですよね。それを半分だけ書いておいて、相手の学校に郵送で送るわけです。送ったものの続きを向こうに書いてもらって、できたよというのをまたネットで伝えてもらう。最後に作品も日本にもう一回持って帰ってきてもらうことになっていますので、最後にみんなで鑑賞会をしておしまいという、そういった形での取り組みがされております。
 授業者は内田先生という方だったのですけれども、海外のことを知るだけではなくて、自分たちの生活、これはちょうど自分たちの将来像みたいなことを絵にまとめていくような活動をしていたのですが、そういったことを見つめることができた。それから、テレビ会議とかメールのやりとり、そんなにテレビ会議というのはしょっちゅう頻繁にやれることではないですけれども、でもそれがあることによって相手が見えてくる。しかも自分たちが言っていることが伝わっているかどうかという実感が持てる。そういったところの価値というのは、感じることができたという話を語られておりました。
 これは進捗シートという形で、左側のものがワークシートなのですけれども、先生方がいつ何をしたらいいのかというのはわかりにくいので、それを支援するような取り組みをアートマイルのほうでサポートとしてやっています。大体9月ぐらいにこんなことをやってください、10月頃ここまでやってくださいということを全部確認していくことで、基本的にはどこのペアも確実に最後まで交流できるという、そういう安心感みたいなものを持てております。右側のグラフは、どんなツールを使っていたかというのを、時期によってずっと見ていったものなのですが、テレビ会議というのは本当に場面場面、ポイントで使うだけなのですね。むしろ掲示板で、文字上の言葉であらわすことをずっと重ねていく中で、自分の考えをちゃんと伝えていく。相手がいる実感というのは、テレビ会議でさらに持ち上げていくという、そういった組み合わせがされていたところではありました。
 もう1つの「つながーる」ですけれども、例えば、鹿児島とカナダで交流していた事例なのですが、カナダとかで日本語を教えている学校が、このSNSにたくさん入ってきているのですね。そうすると、向こうは日本語で書いてきて、こちらはそれに対して英語で返したりなどします。しかし、向こうも日本語で全部書き切れないところがあるので、英語もごちゃまぜになってきたりします。そういうある意味マルチ言語な環境の中で、お互いの学校生活についてや、あるいは、今だったら震災の話であるなど、いろいろな日常的なことをディスカッションするようなコミュニティができています。
 もう一つプロジェクト的な話でいうと、下にフォト俳句というのがありますけれども、岐阜県の高校生から始まった取り組みなのですが、写真1枚携帯電話で撮ったものと、それについて簡単な日本語と英語で短い俳句をつくって、それをお互いいろいろな地域で交流していくという話が出てきました。右下のピザの俳句は、これはたしかアメリカだったとは思うのですけれども、俳句とは大分違う雰囲気になってきていますけれども、いろいろな形で自分の言葉で表現することを楽しく取り組んでいるところであります。
 こういった学校間交流学習というのが、結局学びとしてどういった意味を持つのかということを、まとめたいと思います。これは私自身の研究で2006年にまとめた授業設計モデルですけれども、左側のところに、コミュニケーション、コミュニティ、コラボレーションとありますが、下から上にだんだん向かっていって考えていただければいいのですけれども、交流学習をするときというものは、まず相手がちゃんといて、話が通じるといいますか、コミュニケーションが通じるためのスキルをちゃんと持つことが欠かせないのです。そのスキルを持つためには、先生の視点、一番右端を見ていただくと、それは当然きちんとしたトレーニングが必要です。
 それの上に何ができてくるかということを考えたときに、真ん中のコミュニティというところで、コミュニケーションを重ねていくことによって、この人たちだから自分の考えをちゃんと聞いてくれるのだとか、この人は一緒に学べる仲間だよねという、そういう学習コミュニティに対する感覚というのが生まれていきます。それが出てきたところで、きちんとコーディネーションを先生がして、それではどういうグルーピングをしたらいいのかとか、あるいは、どういうスケジュールをしたらいいのかとか、そういうアレンジをした上でコラボレーションを。海外の学校と一緒にやるからこその、例えば絵の作品をつくることであるとか、あるいは、絵本をつくるプロジェクトとかいろいろなプロジェクトがあるのですが、そういった最終的な学習成果物に持っていくことができるという、そういった形で、下からだんだん上に上がっていくところで、授業設計としては、どの教科のどの時間で、どういうタイミングでやらなければいけないかという話を考えなければいけないので、一番上のカリキュラムから下ろしていくのですけれども、そういった両面から授業設計を考えるというのを、取り組みとしてはやっておりました。
 少し長くなりましたが、最後、これでおしまいにしたいと思います。実際こういった国際交流を実施するに当たって、いろいろなメリット、それから課題をまとめとしたいと思います。
  1つメリットとしては、本当に非常に強い動機づけ。やはり今までは、結局、英語の学習にしても、先生が評価するわけでしたよね。あるいはいろいろなテスト。これはもちろん証拠としては私はすごく大事だと思っているのですが、でもそれは伝わったかどうかはわからないわけですよね。そうではなくて、同年代の人に伝えるという環境をきちんとつくってあげることによって、本当に英語を道具として使っていくという思いをきちんと持つことができること。それから、フィードバックですね。伝えることもそうですが、伝わらないという経験をどれだけさせてあげるかというのも非常に大事だと思っています。それも含めて、交流学習の場合は、なかなかうまくいかないこともたくさんあるので、それを含めて学べるというところがあります。あとは英語圏だけではなくていろいろな国がたくさん本当にいろいろなプロジェクトに入っているので、英語圏以外の人とも、英語を共通語として、道具として使う機会が得られるということです。
 もう1つは、ICTによる柔軟な学習環境ということで、実際直接出かけていって行ったほうが、当然交流は深まります。ですけれども、それを日常的に、継続的にやれるかというと、当然学校現場では難しいわけです。それを補ってあげる道具として、こういった形というのは十分使えるのではないかというところです。さらに、テキスト、音声、ビデオなど手段が多様であり、段階を踏んで活用できることが言えます。子どものスキルを考えたときに、直接話すのはまだ難しいけれども、文字上で時間をかけて文章を練ることだったらまだできるよとか、まずそういった形で言葉で伝えられる経験を持って、その上でやはり対面で話したくなるという、そういったところの子どものスキルにも、ある程度柔軟に応じられるというところがあります。もちろん情報教育的な意味もあると思います。
 一方で課題としては、相手のコーディネーションという話ですが、やはり交流相手を探すところが、先生方にとっては一番ネックになるところではあります。ただこれに関しては、先ほど紹介した団体も含めて、いろいろなNPOは国内でも既にありますし、海外にもいろいろなところがあるので、そういったところを文部科学省のほうで紹介していくなど、そういったことは積極的にやれる余地はあるのではないかなと考えております。それから、学習環境に関していうと、例えば、1人1台の環境、先ほどありましたけれども、なかなかまだそういった学校は多くないわけですが、交流学習は、パソコン室でもできますし、あるいは、電子黒板1台、教室にネット環境ができていれば、テレビ会議だったらすぐできるのです。そういう意味では、10年前とは大分環境も変わってきたので、今だからこそ、あまりそういったテクノロジーの負担を感じずに、できる段階が整ってきているのではないかなと思っております。
 最後はカリキュラム上の位置づけですが、英語科の学習事項として、何をどう埋め込むか。ここは私は専門ではないのではっきりしたことは言えませんけれども、それをちゃんと念頭においた短期間の交流プログラムをつくっていく必要があるだろうと。もう一方は、総合的な学習です。特に海外の人と意見を戦わせ合いながらやっていくというのは、本当にその意味での探究活動につながっていくものであると思うので、総合の中でこういったこともどんどんこれからも取り組んでいっていただきたいなと思っております。
 ちょっと長くなりましたが、以上です。

【吉田(研)座長】  ありがとうございました。非常に発展性のあるおもしろい発表だったと思います。
 それでは、続きまして、財団法人自治体国際化協会様(CLAIR)から説明をいただきたいと思います。本日は、自治体国際化協会のプログラムコーディネーターのミーク・ケビン様にご説明をいただくことになっております。ミーク様は、過去にALTとして学校現場におられ、その経験がおありということですので、その経験を踏まえて、我が国の生徒の英語力をさらに伸ばすために必要と思うことなどについてお話しいただければと思っております。それでは、ミーク・ケビン様、よろしくお願いいたします。

(5)財団法人自治体国際化協会説明

財団法人自治体国際化協会から、生徒の英語力をさらに伸ばすための、ALTの効果的な活用について説明。

【財団法人自治体国際化協会(ミーク氏)】  皆さん、おはようございます。ミーク・ケビンと申します。自治体国際化協会で働いています。少しだけ簡単に自己紹介をさせていただきます。私はジャマイカ出身です。今、JETプログラムコーディネーターとして働いていて、JETプログラム参加者、または任用団体の相談を受けたり、JETプログラムについて話し合ったり、情報提供するなどの業務です。その前は5年間、宮城県でJETプログラム参加者として働いてきました。そのうち2年間は県庁でJET参加者の相談であったり、世話をしたり、カウンセリングの業務をやったりしていました。これがもともとの私のJETの経験ですが、その前は3年間、泉高校というところでALTとして働いてきました。今日の話は、JETプログラムに対してですが、ALTの活用について3点あります。1つは、授業内の活用、そして授業外の活用、そして指導のことをお話しさせていただきます。
 JETプログラムの参加者は、先ほどお聞きしましたが4,000人を超えていまして、9割がALTです。9割以上は学校現場で働いています。小学校、中学校、高校も含めて全国津々浦々に配置されています。どこに行ってもJET参加者がいるということですね。基本的に1つの高校、学校や2、3校、または多数訪問のケースも多いです。仕組みとしてはティーム・ティーチングを行っています。それは日本人の教員と一緒に授業を行うということです。 私の経験から見ると、高校でしたが、私の高校は県内2つしかない英語科を持っている高校でした。その英語科は、普通科より週に多くの英語の授業を受けています。私たちALTは1年生と1回しか正式な授業はありません。英語科は2年生と3年生はCAI(Computer Assisted Instruction)、先ほどお話を聞いたと思うのですけれども、同じような仕組みでその授業をやっています。ALTが担当しているオーラル・コミュニケーションという授業は1年生だけです。
 その経験から、いろいろな点を考えてきました。1つは、1年生の授業をやるときに、オーラル・コミュニケーションということで、ほかの授業はあまり生徒と関係や交流がありません。廊下で、グラウンドで、食堂で話すことはしていますが、授業としてあまり正式にALTとの関係と交流はありません。それは1年生しかありません。何回も生徒たちと話すときに、何で英語を話さないのと聞いたら、私たちは話せると思っているのですが、1年生のときにALTがいたから、話そうとしていた。3年生になると、あまり言葉で英語を出すというのはちょっと遠慮する、できない。なぜかというと、オーラル・コミュニケーションのような授業やきっかけがないからです。
 そして、私が来たときに、ケビンさん、この授業をやります、オーラル・コミュニケーションをやります。そのオーラル・コミュニケーションの授業を担当する。英語の科目の中のほかの授業は何をしているのか、あまり把握できていなかったです。聞いたら、文法を集中して、またはリーディング、ライティングであったり、英語は勉強するものだという感覚を持っていることが多かったのです。英語は言葉で話す、使うという感覚はないなというようにそのときに思いました。ですから、オーラル・コミュニケーション以外では、ネイティブ・スピーカーとしてALTを別の英語の科目のほかの授業に入れたら、英語を普通に人間として使っているという感覚は増えるのかなと思っています。
 そして、先ほどの話と関係あると思いますが、オーラル・コミュニケーションは話す。だから、ALTの授業に行って英語を話す。そのほかの授業に行って話さなくてもいい、読んでも大丈夫です。語彙を覚えれば大丈夫です。試験はできるから、別に英語は何なのかというような感覚があると思っていまして、そのほかの英語の科目の中の授業でも、4つのスキル。先ほどお話があったのですけれども、コミュニケーション能力は書く、話す、聞く、読む、全部。でも、各授業で全部のスキルを少しだけでも、ネイティブ・スピーカーとしてもALTを使ってやれば、もっと言葉的な感覚は増えると思います。
 そして、授業の話ですけれども、ALTは英語以外の言語を話せる人もいるのですが、ALTは英語。また、ほかの科目、理科とかでも、英語は関係ない。なぜかというと、英語は勉強するもの。しかし、例えばもしALTが音楽のスキルを持っていれば、音楽の授業にも入れたりして、何とか英語で音楽を習う。だから、その生徒たちの趣味や興味や関心が生かせる。だから、英語で何でも習う。だから、実際に生きている言葉として理解がもっと高くなると思います。それは授業内のことです。
 そして、授業外です。よく聞いているのは、日本の中で英語を勉強するのは難しい。なぜかというと、英語を話す機会がない。日本ですから。ジャマイカでも日本語を話す機会はありません。ですから、もっと話す機会を増やすことが大切だと思います。いろんな面でできますね。ALTがいて、ネイティブ・スピーカーとしてもっと使えば、そういう機会が増えると思います。例えば、ALTの話を聞くと、海外にいる生徒たちとの交流、手紙を書いたり、ポスターをつくったりですとか、週に1回、2回、3回など、英語クラブの話し合いや、映画を一緒に見たりすることですとか、ALTはそういうことをやりたい気持ちは持っていると思います。だから、それをALTの関心や興味や趣味を使って、授業外でも何か英語でやることを設置したほうが効果的だと思います。
 ALTはそういうことをやりたいという声は多く聞いています。しかし、学校側では、先生忙しいな、だからできないなという話はよく聞いています。それは事実ですけれども、何とか管理しやすくして、ALTにそういう活動をやらせることをもっと正式にやれば、何とか機会が増えると思います。だから、授業外の活動のサポートと推進は、学校側から必要だと思います。ALTのスキルや趣味を生かす。前に話したとおり、英語以外の授業の中で英語を入れる。科学であったり理科であったりとか。授業外でも、ALTは何に興味があるのか。先ほどのITの関係の話ですが、ITにとても関心を持っているALTもいます。だから、何か授業外でALTのスキルを生かせて、英語でやる活動を設置ができるのか。それは考えたほうが効果的だと思います。
 授業外と授業内のつながりを強化する。先ほど申し上げた、例えばALTは、週に何回かALTと英語で話すときに10ポイントをもらう。または今週、英語のクラブで英語チャット、何かディベートをする。でも、それはALTがやることだから、普通の英語の勉強には関係ありません。その関係はもっと、例えばその10ポイントをもらって、自分の正式な成績に1%になるとか、何らかの仕組みを考えて、外でALTがやっている英語の機会が増える活動を、授業でやっている正式な面でもつながることは大切だと思います。
 もう一つあるのですが、私が来たときに、ケビンさん、ここのオーラル・コミュニケーションをやってというお願いがあったのですけれども、実際にほかの英語の中の文法ですとか何をしているか、あまり把握できていなかったです。そのとき、その説明も薄いと思いました。だから、もしできたら、オリエンテーションであったり、ほかのJETプログラムが行っている研修の中で、英語教育の全体のシステム、何の目的なのか、何のレベルで何を目指しているのか、それをもう少し情報を提供すれば、ALT自体も計画をするときに、自分の授業で何をやっているか、ほかの授業に何の貢献ができるのか、それを理解しないとあまり総合的に考えることはできませんので、そのところでもう少し情報提供が必要かもしれません。
 そして、一般的にALTが何をやるのかみんなわかっていますが、学校現場に行ったら、あなたはこの役割を果たすという説明は、時々ないことがあります。そして、ALTは授業をやるのですが、週3回しかやっていない。オーラル・コミュニケーションのところでゲームをやったりとかします。でも、実は何を期待されているのか、ALTは把握していない。もう少し計画的に授業外のこともやりたい。でも、言われていないからしない。だから、もう少しどのような役割と期待があるのか、もっとはっきり説明すると、ALTも何をするかわかります。わかった上でやっていく。やっていったら、その後数カ月がたったらもう一度確認して、その評価を出す。また、フィードバックを出す。
 よくALTが話しているのは、新しい職員が学校に入って周りを見て、何をやっているのかわかってやる。でも、文化の面もあるかもしれませんが、向こうから来て、ちゃんと何の仕事をさせるのか、ちゃんと説明する。その面でももっとはっきりしたほうがよくて、できなかったらなぜできないのか、しなかったらなぜしないのか、その評価をしながらコミュニケーションができると、自分の役割、自分の貢献、自分ができることをもっと把握できるようになると思います。
 全部の点については、もちろんALTの話、ALTに情報提供、ALTの研修でもっと情報を深めるとか、学校側も、その必要性は把握したほうがいいと思います。最近変わってきていると思うのですけれども、ある学校ではALTをどう活用するかわからないというところもたくさんあるという気がしますので、学校側もこういう研修、日本の教育制度についてなど、英語教育の目的など、その役割ですとか評価をする、フィードバックをあげるとか、そういうことも学校側は把握したほうがいいと思います。
 一般的にいうと、JETプログラムは外国語教育プラス国際交流という2つの目的があって、先ほどお話は聞いたのですけれども、ALTが実際にいるだけで、国際理解の推進にもいい影響を与えると思います。以上です。ご清聴ありがとうございました。

(6)自由討議

さいたま市立浦和中学校、東北学院大学稲垣忠准教授、財団法人自治体国際化協会に対する質問を含め、授業改善のための効果的なICTの活用、またALTの効果的な活用について、各出席委員より発言があった。

【吉田(研)座長】  どうもありがとうございました。ALTの課題についても、多少違うかもしれませんが、私たちの大学でも、外国人の先生たちを嘱託の講師だとかいろいろな形で抱えていますと、今おっしゃったこととすごく共通しているなと私、思います。やはり十分に情報を伝えていないのかなと。彼らが果たす役割、大学の中で授業を教える以外のところで何をやるべきかというのは、ほとんど伝わっていないのではないかと思うのですね。そういう意味では、今のお話も非常に参考になるなと思います。
 最初のお二人のお話も、ICTの利用の形態の違い、授業そのものの中で、どうスキルを個々に伸ばしていくかという、授業自体を運営していく上でのICTの利用と、それから、稲垣先生がおっしゃっていたような、学校を離れてさらに羽ばたいていくための道具としてのICTの利用という側面もあるわけで、両方ともやはり考えていかなければいけないのかなと思います。
 今日はいろいろな観点からお話をいただけたわけですけれども、これからいつものとおりご自由に、皆さんのご意見をお聞かせいただきたいと思います。

【吉田(広)委員】  私は小心者なものですから、いつもは様子を伺いながら適度なところで発言しようという、およそ英語教師らしからぬ、そういうコミュニケーションの姿勢をとっていたわけですが、11時過ぎに別の用で出ないといけないものですから、最初に失礼いたします。
 先生方、ご発表どうもありがとうございました。非常に示唆に富む内容であったと思います。ICTの活用を考えた場合の効果といいますかねらいというと、稲垣先生のご発表にあったような、ICTがなければつくれないような授業をつくり出していくということが1つあると思います。交流学習であったり、交流でないにしても、協同学習みたいなものをやっていくというものがあると思います。それを進めていく上での課題として、私がかなり感じているのは、交流とか協同学習というものを1つの英語教育の中核として考えていくとすると、交流学習や協同学習を推進していけるような形で教科書を変えていかないと、なかなかうまくいかないのではないかなとのように考えています。
 2つ目が、浦和中学校のお話の中にありましたように、生徒のある意味の自立的な学習ですとか、課外学習を促進するためのICT活用というものがあるのではないかと思います。場合によっては生徒の興味・関心ですとか、そういうものに沿った内容を学習していくというやり方があろうかと思います。すなわち、授業プラスアルファの形で学習をしてもらうというような形もあると思いますし、補習ですとか補講的な内容として使っていくというやり方があろうかと思います。どちらでも使えるツールだと思います。
 もう一つ、最初文部科学省から、デジタル教科書などのお話がありましたけれども、つまり、これまでの授業をベースにしながら、授業の効果ですとか効率を高めていくためのICTの活用ということがあろうかと思います。ここでの課題というのは、おそらくインフラの整備の問題があると思いますし、教員のICT活用能力と授業設計力の問題がおそらくあろうかと思いますし、もう一つ、多分かなり根強い問題としてあるのが教員の意識の問題です。これを変えていく必要があろうかと思います。
 それでは、どうして英語でICTを活用しなければいけないのかということを考えた場合に、今、3つ申し上げたICTを活用した上での授業改善というところに、すべてICTを活用できる余地が英語の授業ではあるのではないかと私は思っています。例えば、新しい授業をつくり出していくということで言えば、もちろん交流学習という形もありますし、例えば私たちの大学でやっているのは、海外の大学の授業を来てもらうことなく、要するに、講義形式のe-learningをやるということも、可能性としては考えられようかと思います。
 自律学習ということで言えば、英語というのは、やはりだれもが一致して同意していただけると思いますけれども、ある種継続反復的な練習というものが必要ですので、そのためのトレーニングとして使えようかと思います。授業の効果や効率を高めていくということで言えば、特に中学校ですと、どうあっても教科書を使うものですから、教科書を大きく見せて理解を共有するとか、英語ですので、音声を使うのは当然使うでしょうから、そのために例えばデジタル教科書を効果的に活用していったり、その他のオンラインの音声教材を使っていくということがあろうかと思います。
 ただ、どうしていくかという問題がおそらくあろうかと思いますので、例えば、交流学習ですとか協同学習ということに関して言えば、稲垣先生がおっしゃってくださったこととあわせて、例えば、それぞれの学校で、どういう授業をつくり上げていくかという話し合いはそれぞれの、こちらの教員と向こうの教員とでしていくにしても、相手を見つけていくというところでストレスを感じさせるのはあまり得策ではないなというふうに思いますので、例えば、そのあたりで各自治体でコーディネーターを組織していって、さらに文部科学省のほうがどのような形でコーディネートしていくのかということに関するイニシアチブをとっていくということが、ある意味必要かなと思っています。
 もう一つは、教科書をやはり交流学習や協同学習で使えるような、例えば言語材料を組み込んでいくとか、もしくは言語活動を組み込んでいくというような形で、教科書を変えていくということがある意味必要かなと思います。これは例えば、今、教員採用試験のための願書を学生が出しているような時期で、学生の教職の志望理由などを見てみると、正直なところ、10人いたら10人が、何のために英語を中学校で、もしくは高等学校で学ぶのかということに答えられる学生が、現時点ではまずほとんどいないです。もちろん、それはコミュニケーション能力を高めるとか、異文化理解など、学習指導要領に書いてあることは言えます。しかし、それが自分の言葉になって表現されない。つまり、何のために英語を子どもたちが学ぶのか、何のために自分たちが教えるのかということを、実感としてきちっと持っていないのです。授業づくりを考えていくときに、彼らは何をするのかというと、教科書のこのユニット、このレッスンでこういうことを教科書は要求している。だから、私はこういったような授業をつくっていくのだという発想でつくっていくのです。つまり、教科書にかなり縛られるような形で授業をつくっていくというようなことがあるので、教科書が変わっていかない限り、あまり授業が変わっていかないのではないかなというような実感が、個人的にはあります。
 自律的な学習ということについて、1つ提言を申し上げます、学習領域ですとか、学習の段階別の教材が出ているようなポータルサイトをつくっていくことが重要かなと思います。NICERなどもあるのですけれども、何かもうちょっとうまく活用されるような仕組みをつくれたらなというのが、個人的な気持ちです。それと同時に、教員が授業で使える素材であったりですとか、教員が自分の英語力であったり授業力を高めることができるような、研修体制がとれるような仕組みというのが同時につくれるといいのかなと思います。
 自律学習をやっている上で、多分かなりネックになるのが、例えば、浦和中学校のように、ある種学校の授業と同じに組み込んでしまうと使えるのだろうと思いますけれども、やはりそこで起きてくる問題というのは、どうしても点数をとるためのゲームになってしまったりとか、子どもたちがやらされていると感じながらやっているというようなことが生じる可能性があります。一方で、例えば私はニンテンドーDSを学生に与えて、TOEICの勉強などをさせているのですけれども、そこで起きてくる問題というのが、最初は楽しくやっているけれども、2週目以降になると全然やらなくなります。TOEICの直前の1週間ぐらい前になると、「うわ、やばい」といって、もう一度一生懸命やりだすというような形で、要するにどういうことかというと、適度なモニタリングと適度なコーチングがないと、どちらに転んでもいい方向には進まないなということです。ですから、自律学習でのモニタリングやコーチングのあり方というものを、一度プロジェクトを組んで研究してみる必要があるのではないかなと思います。
 あとは授業改善のための提言としては、インフラを整備するということと、やはり教師が授業力を高めていく一番手っとり早い策というのは、やはり優れたほかの先生の授業を見ることだと思います。ただ、そう簡単には出かけられないので、せめて事例を集めたサイトを公開したり、事例を共有するということが必要かなと思います。そうすることによって、最終的なゴールとしては、私はICTを使って英語の授業を改革していくことを通じて、中学校、そして高等学校の授業のつくり自体が変わっていくということをねらいに持ったほうがいいのではないかなと思います。多分英語にはその力があるのではないかと思っています。なぜかというと、英語というのは教科の中では珍しく、活動ベースの内容になっているからということです。大分長くなって恐縮ですけれども、以上でございます。

【吉田(研)座長】  ありがとうございました。さすがに専門の方のお話ですので、かなりいろいろな情報が今、詰まっていたように思いますが、私なりに簡単にもう1回振り返ってみたいと思います、先ほどの稲垣先生もおっしゃったような、ICTがなければできないことって何だろうというところからまず始めるという、そこのところは非常に大事ではないかと思います。またもう一つ大事だなと思ったのは、教科書に縛られているという点は、確かにそのとおりだと思いますので、もしICTというものを本当に中核に持ってくるのであれば、教科書もそれに合った形に変えていくという必要性は当然出てくるだろうと思います。デジタル教材との連携ということも、その際には相当もっと綿密に考えていかないと、なかなかうまく使えないです。結局は宝の持ち腐れ的なところに落ち着いてしまう可能性があるのではないかなということも、私も感じます。さまざまなICTの利用の良さというものは当然あるわけですけれども、最後のほうでおっしゃったインフラの整備というものがなければこれはできませんし、あともう一つは、教員の研修です。お互いのいい授業を見ていくとか、きちんとそういうものを通して使い方についても、またICTを使った授業のやり方についても、自ら学んでいくということの重要性は大切だと思います。
 それから、最後のもう一つは、自律的学習のための、放っておいても必ずしもうまくいかないということです。適度のモニタリングだとかコーチングを、やはりどうしても考えた上でやっていかなければいけないです。これは浦和中学校からもさっきおっしゃっていましたよね。ゲーム感覚でやってしまって、正確さだけを求めてしまう。やはりそこに先生が入っていって実際に使えるかどうか、どこまで身についているのかということを確認していかなければいけないという部分とつながると思うのですけれども、確かにそれを含めた形のものが必要だと思います。人間が返せないようなICTだけの教育というのは、まずないはずだと思いますので、そういう点を強調されたのは、非常によくわかったような気がいたします。

【松本委員】  私は吉田委員よりももっと小心者なのですが、私も公務のため早退させていただきますので、今日は珍しく先に発言させていただきます。
 ご発表について、私は意見というよりも質問させていただきたいと思います。まず、文科省に質問させていただきます。資料3の2ページ目にあります、「優れたALT等の正規教員への採用促進」というのは、非常に重要な施策だと思います。この点について、2つ質問させていただきます。ここでいう正規教員というのはどういう職位で、日本人の教員などと比べてどういう待遇面の違いがあるのかということについて、これが1番目の質問です。2番目は、この将来的には1,000名配置という目標数値に比べて現状(平成19年度現在)というのは、まだまだ少ない数だというふうに思いますが、なぜ多くならないのかという原因について教えていただければ幸いです。
 次に、さいたま市立浦和中学校です。一貫校の新しい学校ということで、肝入りで設立されたのではないかと推察いたしております。ICTとか英語の授業を20人編成という少人数制ということなど、すばらしい取り組みだと思うのですが、5年目に入って、いかにして持続可能なプログラムにしていくのかというご苦労がわかったというのが私の感想です。私も全国高校生英語ディベート大会の決勝戦で、市立浦和高校の試合を審判させていただきましたが、すばらしい高校生だったと思います。
 高校との連携という点で2つ質問があります。1つは、この中学校から同じ敷地内の高校へ進学された高校生の、追跡調査というのは行われているのかということです。きょうのご発表では、中学校の3年間の調査結果しかご提示されなかったので、高校進学後の追跡調査をされているのかということが1点目です。それから2点目は、中学校の先生は高校でも教えていらっしゃるのかということです。教えていらっしゃらないのであれば、高校の先生との連携ですね。教育内容及び教育方法についてどういう連携をされているのかを教えていただきたいと思います。
 稲垣先生のご発表については、さまざまな取り組みを教えていただいて、非常に参考になりました。先生は最後にご自分のご専門ではないとおっしゃってはいたのですけれども、例えば、熊谷市立の中学校の場合には、「選択英語」でしたが、普通の中学校で週3回しか英語の授業がないような学校において、通常の授業にどうやってこれを取り込んだらいいのかという、何かヒントがあれば教えていただきたいと思います。
 最後のミーク・ケビン先生については、ご発表内容については100%賛同します。「ALTの方はオーラル・コミュニケーション担当」という図式ができ上がっているという問題点も認識したこともあって、「オーラル・コミュニケーション」という科目をなくしたという経緯もあるかと思います。まあ、それは言い過ぎかもしれませんが・・・。ご自身の考えはわかったのですが、自治体国際化協会としては、ALTの効果的な活用に向けて何をされているのかということについて教えていただければと思います。以上です。

【吉田(研)座長】  ありがとうございました。それでは、まず文科省のほうから2点、正規の教員のどういうことかとか。

【山中局長】  それはおそらく、ALTの場合は外国人の方になると思いますので、常勤講師という形で採用されて、給与はそれぞれの地方公共団体における教育職俸給表に基づいた給与になっているのではないかと思います。

【渡邉室長】  外国人の正規教員の人数が伸びていない要因については、おそらく財政的な部分が一番大きいのではないかと思います。加配の中で具体的にどういった教員を措置するかというのは、各都道府県のほうで判断しておりますので、その中でいろいろな全体のほかの要素に絡んで、ALTだけが伸びるということは、今の現状ではないということかと思います。

【松本委員】  ありがとうございます。

【吉田(研)座長】  それでは、続きまして、浦和中学校の、高校生でも追跡調査があるのかということと、それから、中学校の先生は高校でも教えておられるのかという、そういう点ですね。

【さいたま市立浦和中学校(高久教諭)】  追跡調査の件ですけれども、実は1つ課題でして、中学校はTOEIC Bridgeで見ていきます。高校のほうはGTECを見ているのですけれども、一本化して、どう伸びているかを見たいという話はずっとでているのですけれども、今、現状ではまだできていません。ただ、中学1年生から、ベネッセさんの学力推移調査の試験はずっと受けてきていますので、ベネッセさんのほうからは、ある程度こういうふうに伸びてますよと、特に我々、内進生と呼んでいる浦和中学校の生徒の伸び率については、研修会のときには見せてもらっている次第ですが、できれば同じテストで中学1年生から伸びは見たいということは、話はしています。ただ、テストが非常に金額が高いので、GTECとかTOEIC Bridgeもというのは、正直言って苦しいかなというところはやはりあります。
 一方、中学校、高校の連携のところですけれども、教員の連携ですが、実は私、開校前、高校1年生のオーラル・コミュニケーションと、グラマー的な要素の授業を持ちました。それは高校生のレベルを知りなさいということでやりまして、その後、開校してから3年目まで、やはりオーラル・コミュニケーションをずっともってきました。中学校の教員でも、オーラルであれば、中学校の教員のインタビュー・アクティビティーとか、コミュニケーション・アクティビティーを十分生かせるであろうということで、私が高校に出て、そのかわり高校の先生が中学3年生です、今は。週2、週1ということでT2に入ってサポートに入る。やはりALTさんがどうしても週1回しか入れないので、ALTさんのかわりとして入ったりとか、ちょっと難しい内容になって文法解説をしてくれたりということで、それは続けております。以上です。

【吉田(研)座長】  ありがとうございました。

【松本委員】  授業内容とか指導法について、中・高の先生がミーティングを持つということはあるのですか。

【さいたま市立浦和中学校(高久教諭)】  基本的にできるだけ持とうとはしているのですけれども、中学校と高校の体系といいますかがすごく違います。なかなか同じ時間を持てないというのもあるのですけれども、比較的中・高の英語科、私たち3人、高校のほうは10人ぐらいいまして、なかなか交換はできないところはあるのですが、ちょうど来年度、新学習指導要領が、特に英語の場合は来年から週4時間完全実施になりますので、それに向けてもう一度見直そうということはしています。特に中から入ってくる子たちの英語力が本当に上がってくるのかというのは、高校の先生たちには非常に疑問だったようです。適性検査をやってくるかもしれないけれども、伸びてくるのか、特にライティングとかスピーキングの表現力はどうなのかというところがすごくあって、すごく消極的なところがありました。ただ、実際1期生を見ていただいて、非常にパフォーマンスがすごかったというところにびっくりされていて、オーラル・コミュニケーションは外から、高1から入ってきた子とは違う授業の内容になっていますし、そういうところでどんどんどんどん変えていかねばというところに、今なっている最中ではあります。

【松本委員】  ありがとうございました。

【東北学院大学稲垣准教授】  普通の学校で週3時間、それから、進学指導だったら4時間という中で、とれぐらいの交流ができるという話だったと思うのですけれども、基本的には今までのいろいろな中・高の実践を見ていると、本当にその教科の中で交流学習ができているのは、やっぱり事例としては多くはないのです。高校の場合は、特にオーラルだったりとか、そういった活動の中で取り組まれることはありましたし、あるいは中学校の場合ですと、例えば先ほどのアートマイルは絵をかく活動が結構中心にもなるので、美術科の中でやっている場合もあったりとか、あるいは課外活動とかそういったことでやっているのも見たことはあります。
 それからもう一つは、普通の週3回、4回の授業の中でどうするかという話になりますけれども、ではそこの中で、例えば交流学習の場合というのは、常にずっと交流してなければいけないということは普通はないのですね。お互いの学校がそれぞれ忙しいですから、例えば週1回とか月1回でもいいと思うのですけれども、それ以外の時間は普通の授業をやっていって、そこで学んだことを使って、それでは交流相手がいるから表現してみようとか、そういったことを少しずつやっていけば、十分組み込むことは可能なのではないかなとは思っております。ただ、それが成り立つように、学習する内容の系統であったりとか順番とか、そういったことを少しずつ工夫してあげることで、より子どもたちのコミュニケーションとして、道具として使いながら、教科書としても学んでいくという、その往復関係ができればいいのかなと考えております。
 もう一つ情報としては、小学校ですと、例えば社会科とか国語の教科書の中に、国内の交流学習の話はちょこちょこと出ているのですね。例えば、社会科で地域で調べたことをほかの県の人に伝えてみましょうとか、そういった書き方がされているのですけれども、それを中・高の英語の教科書でもそういったような生かし方というのは、これから出てきてもいいのではないかなと思っております。以上です。

【吉田(研)座長】  ありがとうございました。それでは、ミークさん、お願いします。

【財団法人自治体国際化協会(ミーク氏)】  自治体国際化協会は効果的な活動のために何をやっているかについてです。私たちはJETプログラム参加者をアレンジした後、直前にオリエンテーションがあって、その場で学校の現場の実際など、文部科学省が研修を行ったりしています。これからもどうそれを改善していくか、その話は今行っています。そういうところで仕事について、学校現場について、期待について、一般的にお話はしています。そして、中間期研修会のところでも、これも文部科学省とCLAIRなり、各県なり、その話はしています。特に中間期研修会の中では、ティーム・ティーチングの話はよくしています。ALTと日本の先生が一緒に参加して、事例を出したりして、その話し合いをしてどのようにこれから効果的な活動を改善していくのか、そういう話はしています。そして、私たちが出版しているJET活動事例集という出版物があって、それを県に配置して、学校現場であったり、教育委員会のところに出して、JETはどこかいい例があれば、これも考えてはどうですか、そういうような活動は行っております。

【松本委員】  高校や中学校の管理職に向けて、何か研修をするということはあるのでしょうか。その必要性が非常にあると思うのですけれども。

【財団法人自治体国際化協会(ミーク氏)】  そうですね。CLAIR、自治体国際化協会がやっているのは、任用団体の担当者向けの研修はあります。そこまでいきます。でも、直接の先生たちですとか、私たちはそこまでは行っていないです。

【松本委員】  わかりました。

【吉田(研)座長】  最後のいわゆる校長先生とか、管理者に対する指導というのは非常に大事な部分ではあるなというのは、私も感じます。ですから、個々の先生たちの授業の改善というのは確かにいろいろな形でできるのですけれども、学校全体としてそれをきちんと理解しているかどうかというのは、非常に大きな問題です。
 もう一つ、先ほど文科省のほうから、局長から、正規というのが、常勤講師というお話がありましたよね。常勤講師になった場合に、職員会議に出ているかとか、どういうような業務が学校内でほかにあるのということ、このあたりも実は大きな問題ではないかと思うのです。ですから、昨日も実は上智大学で、私は責任者なので、25名の外国人の嘱託の先生たちを集めて、地震の際どうだったかという話とかいろいろ話を聞きました。
 大学としてはいろいろな情報を出すのですけれども、英訳は出ているのですが、彼らが知りたいのはもっと細かい、このときはどうすればいいんだ、次にどうすればいいんだ、この場合はどうなのかという非常に細かい点で、日本人からすると、それはもうわかっているのではないかというところが、実はわかってなかったりというところはすごくあるのです。ですから、そういう点についても、きちんと伝えられるような体制というのでしょうか、それがないとなかなかうまくいかないのかなということがあります。それはまた管理者がそういうことをきちんと把握していないとできないのかなという気はするのです。その辺いかがなのでしょうか。常勤講師は一体どういう仕事をするのですか。

【山中局長】  英語の先生についてですから、常勤講師で任用されれば、教科の担任をするとともに、そのほか日本人の先生と同じような校務分掌をもつ方もあると思います。また、この資料の数字は、フルタイムの常勤講師で採用されている方の人数なのではないかと思います。期限付きは通常、非正規雇用というような形でカウントしますので、ここの数がどちらでカウントしているのかわからないですが、そういうことだと思います。
 それから、おっしゃられるように、管理職に対してどのようにして研修といいますか、ALTの役割について伝えるのかです。むしろそれは文部科学省の役割でございます。しっかりと学校の中で、それぞれ数学も教えなければならない、理科も教えなければならない、そして英語も教えなければならない、そういう中で外部の方を活用しようということでやっているのは英語の授業の特徴の一つです。そこで来られるALTの方をどう活用するのかということについては、英語の授業の中、ほかの授業、授業活動外において、それぞれの学校でどう活用するのか、それについて、文部科学省としてもどのように考えるのかといったこともよくお伝えした上で、文部科学省としてCLAIRと意思疎通、連携をしていくということになるのではないかと思います。

【吉田(研)座長】  ありがとうございました。松本先生、よろしいですか。

【松本委員】  はい、ありがとうございます。

【吉田(研)座長】  それでは、ほかの方。

【本下委員】  プレゼンを聞かせていただいて、感想といいますか、思いついたことを述べさせていただきます。具体的には、テレビ会議、それからEメールをもっと活用するようにしたらどうかという意見です。また、そのために、ALTの先生に対して、英語の授業以外のプラスアルファという形で、アサインメントを与えて活躍して頂くというのはどうかというアイデアです。企業人で英語を使う場面といいますと、海外赴任をする、海外に出張して会議等に参加する。また、実際に海外に行かなくても、テレビ会議に参加したり、Eメールでコンタクトをとるということになります。これらは一対一ではなくて、一対複数の場合も含めてですけれども。そういった観点で見ますと、稲垣先生のアートマイルのような、テレビ会議とか、Eメールを使ってプロジェクトを組んでいくという活動は非常に興味深く、まさにこういった、言葉は悪いですけれども、場数を踏んでいくことが英語に慣れることにつながるのではないかと感じた次第です。
 経験則からいいますと、赴任をした人などは、ある意味これにすっと入っていけると思いますが、学生が留学するといっても簡単ではない中、だれかのサポート、アシストがないと、海外経験の無い学生はテレビ会議やEメールでのプロジェクトにうまく参加できないのではないかと思います。また、ALTの先生方の授業以外のプラスアルファという形で、例えば月1回、イギリスの学校やアメリカの学校とプロジェクトについてテレビ会議を行い、その進捗をEメールでやりとりをするというようなプログラムを作っていくと、それに向けて何かしなければいけないという意識から、受ける授業にもモチベーションも上がりますし、やらなければいけないという尻に火がつくようなところもありますし、効果が上がるのではないかなと思った次第です。ジャストアイデアではありますけれども、例えばこういった試みは面白いのではないのかなと思いました。以上でございます。

【吉田(研)座長】  ありがとうございます。テレビ会議、Eメールというものをもっと活用できるような、そういうプロジェクトを組んでいくとかということですね。1つの問題としては、ひょっとすると1回だけのイベントになってしまうものと、それから、継続性のあるものと、どういう形でそれを組み合わせていくかです。やはり教育全体からすると、継続性というのはどうしても必要ですから、その辺とのつながりというのは、やはり考える必要があるかもしれませんね。

【杉山委員】  私も本下さんと相当似ている意見ですけれども、ICTというのは、私たちが英語を学校で学んでいたときにはなかったプログラムで、本当に今の子たちは、ある意味恵まれているなと思っています。勉強効率のためのパソコン活用ということですけれども、やはりそれがどれほど優れた教材かというよりも、子どもたちの意欲にどのようにつながっているのかとか、あとはどう意欲が芽生えるきっかけになるのかということがとても重要で、やはりより英語に興味を持つということがすごく大切なのではないかなと思います。ですので、先ほどゲーム感覚になってしまうとだめという意見がありましたけれども、逆に得点云々という、得点をとることに必死になってしまうといけないと思いますけれども、ゲーム感覚でも英語に親しみを感じて、英語に興味を持てるようになったら、それはそれでありなのかなというふうに私自身は感じました。
 ただ、テクニックとしての機器だけではなくて、やはりこれを使って世界を知って、交流できるきっかけとして役に立てていってほしいなと思うのですね。やはり日本というのは、あまりにも英語を使うきっかけがないので、そういうところでICTやALTの先生方とのコミュニケーションというのを、やはりどんどんどんどん使っていくということが大切です。先ほどミーク・ケビンさんの言っていた、やはり授業内だけのコミュニケーションだけではなくて、授業外でのコミュニケーションをもうちょっと、例えば先ほど音楽の得意な先生がいれば、音楽の授業もというふうにありましたけれども、例えば、運動の得意な、テニスが好きな先生だったら、授業外でテニスを英語で楽しむとか、そういった時間というのを組み込むということもすごく、遊びの中で、日常会話で英語を使えるということがすごく大きいと思います。ただただ授業、授業というふうにしてしまうと、やはり英語に対しての距離や壁ができてしまうかもしれないですけれども、日常の会話の中でコミュニケーションを図る上でのツールというふうにとらえて英語を使っていけるということが、今の日本人にはとても必要なことなのではないかなと感じました。ありがとうございます。

【吉田(研)座長】  ありがとうございました。やはり英語に対する興味をどうやって持たせるというのが一番のポイントということでしょうから、そのために確かにゲーム感覚でも悪くはない。きっかけということで考えれば、確かにそこから出発するということは大事だと思います。ただ、それで終わってしまわないということですよね。もっとそこから本当に交流の道具として英語を使っていけるような場をさらにどうやって設けていくか、そこにALTの、先ほどミークさんのお話されたような、さまざまな授業外の場面などもうまく活用していくという、そういうことも十分もっと考えていく必要があるかなということだと思います。

【池上委員】  いろいろ進んだ事例を今日聞かせていただいて、我々は専門家ではないものですから、非常にこういうやり方でこういうふうに進むのかと、いろいろなやり方があるなと感銘を受けています。浦和中学校のMSUであるとか、前回お聞きした千葉県の高校のSSHですかね、スーパー・サイエンス・ハイスクールのシステムを使って英語をやっていくとか、英語を織り込んだ科学教育とか、それから、松濤の中学校の例だとかいろいろなものがあるのですが、私、ここで聞いていて、これは多分相当進んだ例を持ってきて、私どもに聞かせてくれているのだろうなという気がするのです。
 一般的な平均的なレベルのところはどういうふうになっているのか。そういう進んだやり方は全部現場任せで、現場でそういうアイデアを持ってやっていくだけの実行力をもった先生がいればそれができる。もし不幸にしていない場合はどうなのかなと、この辺を考えていくと、やはり今後の取り組みとしては、文部科学省はある程度進んだやり方はこういうもので、失敗例もこういうものがあるけど、これだけ成功していますというような情報発信をしていくとか、もしくは先ほど研修という例もありましたけれども、研修でそういうやり方の中から自分たちで選んでいく。もしくは選ぶときに、初めの手づくりから、交流をしようという場合に相手校を選ぶけれどもなかなかないといっているうちに1年、2年たってしまうなんていうことがあるとすれば、相手校をリストの中から探せる体制をしていくとか、少なくとも一般のレベルは最低このぐらいはやってくださいと、その上で選択的な分でこれだけ進んだものを自分たちでつくり上げられるという、そういう授業の構築方法というものを、やはり考えていく必要があるのではないかなと思います。
 そうでないと、相当たくさんある一般レベルの中・高というものに対して、余りにもばらつきが多過ぎるような感じがするので、むしろその辺を考えていただくことです。これは質問と同時に提案ですけれども、既にあるというなら結構ですが、ぜひ考えていただきたいと思います。

【吉田(研)座長】  ありがとうございました。今おっしゃったことはそのとおりで、大体こういうところでお話しいただくのは進んだところです。しかし、そういう事例があるということで、平均的な普通のところも、どうやればそこまでいけるかということを施策として盛り込んでいくのが、この会の目的ではないかと思うのです。やっているところはやっているのですから、放っておいたって構わないわけで、むしろそれができていないところにできるようにするにはどうしたらいいか、その提案をこの場でつくっていきたい。おっしゃったとおりで、本当にいろいろな事例などの発信だとかも必要だと思いますし、それから、本当に交流の相手校のサイトだとか、そういうものも絶対必要です。そういうものをやはりきちんと今後、何らかの形で提案の中に盛り込んでいきたいなと思います。ありがとうございます。

【中村委員】  大体皆さんの意見とそんなに変わらないと思うのですけれども、今、池上さんがおっしゃったいわゆる事例、サクセスストーリーのシェアと、あとサクセスだけじゃなくて失敗事例も含めた事例を、教師の方々、また学校でシェアして高めていくというような方法というのは、我々商売やっていましても同じだと思うのです。私、複写機の商売をしていたのですけれども、いろいろなディーラーさんがいます。小さいところから大きなところまで、いろいろな話があります。ですから、そういう話を、本当にディーラーさんの間でシェアすることによって、チームとして上がっていくというようなことがありますので、それはぜひ文部科学省のほうでリードしてやられるといいのではないかと思います。
 あと、ICTですけれども、やはり協同研究とか交流、これは非常に役に立つのではないかという気がします。浦和市立高校のMorning Unitの写真がありますけれども、これはやはり違和感があるといいますか、これはちょっと違うかなという気がします。というのは、やはり教育の基本というのは、フェース・トゥ・フェースのインターアクティブなやりとりが多分基本だろうと思うのです。ですから、テレビ会議等で交流、協同というのはいいかと思うのですけれども、1人ずつがPCに向かってひたすら聞いているというのは、いいですけれども、果たしてそれで皆さんが本当に興味を持って、ああ、これおもしろいとか、やってみようとか、さらにやろうとなるかなというのは、私は個人的には疑問を持ちます。
 ですから、やはりICTというのは、どちらかというと補完的な部分で、基本は人と人とのコミュニケーションでやっていくと。ですから、そういう意味では、ケビンさんの言われた授業外のところでもっとできることがあるだろうというのは、そういうところではないかと思います。以上です。

【吉田(研)座長】  ありがとうございました。これは先ほどの池上先生も同じですけれども、失敗例の話、実は私たち、SELHiやっているときにいつも報告書を出すのですけれども、失敗したところも必ず書いてくれるようにということを指示していたのです。ですから、そうしないと事例で成功したところだけ読んでも、次の学校は役に立たないというところがありますので、必ず失敗例もそこにいれてくださいと。失敗して、それをどう乗り越えたかということも含めて書いてくれるようにというような指示を出したという記憶がありますので、本当にその点ももっとここでも考えていく必要があるかなと思います。
 それから、ICTの利用に関してもそのとおりだと思いますので、そういう意味で、補完的であるということは、やはり絶えず頭に入れながら、その最もいい活用の仕方というものを今後も考えていく必要があるかなと思います。

【市村委員】  今日のお三方のプレゼンテーションを拝聴しまして、非常に参考にもなりましたし、勉強にもなったということでございますけれども、私の意見としては、やはりこの新しい教育のモデル、これをぜひ今後とも研究されて、どんどん質と量とともによくしていってほしいと思います。まだ道半ばの点があるのではないかということは否めないと思います。
 具体的に申し上げますと、例えば、ALTでございますが、ALTの場合は、きょうの最初の報告では日本全体でJET、ALTが4,000名ということで、ということは日本の中・高何万校、3万ぐらいあるのでしたっけ、そのぐらいの中で4,000というのは、まだまだ少ないレベルだと思います。その4,000名のALTの人のレベルが、ケビンさんのように日本語が堪能でという方がどれだけいるのか。ここら辺もちょっと私、細かいことはわかりませんが、やはり正規雇用の問題も含めて、そういうALTの人数をどう増やしていくか。それと先生のレベルをどう維持、改善していくか等の問題はあるかと思います。
 したがって、その辺も踏まえて、今後の1つの教育という中での成長戦略を描くとすれば、やはり工程表をつくって、きちんとした形で見えるようにしていくべきではないかなという感じはしました。やはり英語ができる人が来るわけですけれども、だからといって日本語を勉強しなくていいという問題ではないと思うのです。なぜならば、英語のできない人に英語を教えるわけですから、ある程度は日本語は理解できないとだめだろうとなると、具体的に日本語をどうやって教えていくかとか、あるいは生活面でどう保障していくかとか、こういう点も踏まえて、この4,000人という数をどこまで伸ばしていったらいいのかなというところをきちんと考えるべきだろうと感じました。これはALTのほうでございます。
 それとICTのほうは、これはやはりまだまだ経験が、端的に言えばまだ創世記というか、未熟な時期であろうと思います。したがって、これの中身をどういうふうに改善したらいいのかというのは、やはりこの専門の方の研究等も踏まえて、ある程度のモデルをパターン化していくということでやっていかないと、やっていく先生方がついていけなくなるという問題があるのではないかと思います。一生懸命やっている先生は、今日の高久先生のような形の人がいっぱいいればいいかもしれませんけれども、やはり全国津々浦々という言葉をきょうケビンさんが使っていましたが、そういう状況に持っていくには、やはりそれなりのパターン化したものを、教材も含めてやっていかなければいけないだろうと感じました。
 それで、課題の中にお金の問題、財政上の問題がありました。リース期間5年切れるとその後どうするのかというものです。これは質問ですが、リースで5年間やっているというのは、1つの機械、一体どのぐらいするものなのですか。

【さいたま市立浦和中学校(高久教諭)】  先ほど言った5年間というのは、アルクという会社が出してくれているソフト2つの分の料金だけです。

【市村委員】  ハードではなくてソフトですか。

【さいたま市立浦和中学校(高久教諭)】  ハードではなくてソフトだけです。それ以外にパソコン240台分とサーバー代。サーバーもかなり情報が大きくて、浦和中学校の場合は、さいたま新都心にあるNTTのところに特別なサーバーを借りてという状態です。その額は正直言って私のほうは把握していないですけれども、かなりの額だと思われます。

【市村委員】  なるほど。それは5年のリースを終えると、所有権はどちらになるのですか。

【さいたま市立浦和中学校(高久教諭)】  また戻ってしまいます。リースなので、契約が切れると、継続をしなければいけないという話は聞いています。それでちょうど今年が5年目なので、ずっと昨年度あたりから、さあ、どうする、どうするという話をしています。さいたま市としてもパソコン、いろいろな浦和中学校で使っている数学の教材はオリジナルなのです。それを市内の生徒に使えるようにしたいというようにいろいろ工夫はしているらしいですけれども、やはり最近の財政事情によってかなり苦しいという話までしか、僕たちのレベルでは聞いていないです。

【市村委員】  なるほど。その辺の問題というのは、やはり文部科学省を含め、地方自治体等である程度解決してやらないと、もちろん受益者負担という観点もあるので、これは多少出さなければいけないとは思いますけれども、全体の予算がどのぐらいかというのはちょっと見えないので、こうしたらどうですかという意見は言えませんが、やはりある程度のことはしてやらないと普及はしないだろうなと感じました。ですから、その辺のソフトの面とハードの面と、やはり形をきちんと将来のことを考えて用意してあげるということが寛容ではないかなと、こういう印象を受けました。以上でございます。

【吉田(研)座長】  どうもありがとうございました。この予算の問題というのは本当に大きな問題だと思います。いろいろな取り組みは大体3年であるとか5年であるとかという期限が切れていますので、それを過ぎた先をどうするかというのは、どこもやはり問題として感じていますので、それについては今後大きな課題ではないかなと思います。
 それから、先ほどおっしゃっていたALTの数の問題、先ほどもなぜ減っていくのかというのはなかなか十分には理由がわからないという話もありましたけれども、日本語の問題は大事な問題だと思うのですが、ミークさんにお伺いしたいのですけれども、ALTの人たちの日本語教育というのは、CLAIRでは何かやっておられるのですか。

【財団法人自治体国際化協会(ミーク氏)】  一応日本語能力を持っている人材を募集するように指示を出していますが、もともとはJETプログラムの国際交流の面で、日本語が話せなくてもいいという条件があります。話せなくてもいいのですが、話そうとする、来日して習おうとする。私は来たときにゼロでした。CLAIR自体のサポートとしては、日本語講座という通信講座ですが、受けたい人は受けるようにしています。指示で日本語を勉強しなさいまでは言えないですが、してください、したほうが役に立つからと、そういうふうに今やっています。

【吉田(研)座長】  ありがとうございました。それでは、卯城先生。

【卯城委員】  私は前にもお話しさせていただいたことがあるのですけれども、北海道の公立高校で3校、12年間教員をしていました。そのときちょうど最初に教壇に立ったときは30年ぐらい前で、ティーム・ティーチングが本格的に始まったときで、いろいろな学校でお世話になりました。大学の教員に移ってからは、中間期研修でたくさんのALTの方を前に講演をさせていただいて原稿を棒読みしたのですけれども、講演後に教科書に対するクレームとか、学校システムに対するご不満とか、講演内容以外について山のように質問を受けまして、いつも主催者側がこの辺でとタオルを投げてくれて終わったことを思い出しています。
 ティーム・ティーチングが、やはり自分の経験でも、自分1人、JTE1人の英語のごっこ遊びのようなところから、本当のコミュニケーションに向かって大きく前進させたということは言えると思います。それから、日本は以前は文法訳読式が多くて、そういうのは学習活動で、結局違う場面では学んだことが発揮できなかったのを、インフォメーションギャップとか入れながら言語活動に持っていきましたけれども、本当の意味でコミュニケーション能力の育成にはならなかったし、一つ一つのそういったものを総合的に活用する場面もなかったということでは、ALTとのティーム・ティーチングのおかげで言語行為といいますか、L2コミュニティを授業の中に持つことができたということで大きく前進したと思っています。
 自分自身の経験では、最初の2つの高校は、ワンショットやレギュラー訪問でした。そこではティーム・ティーチングは、正直言うとうまくいきませんでした。最後の3つ目の高校は英語科のある高校で、自分は英語の担任で、週のうちのほとんどが、英語ⅠもⅡも、外国語事情とか英会話とか、いろいろな授業の中でティーム・ティーチングをやっていましたけれども、大きく違うのは、レギュラー訪問やワンショットのときには、どちらかというとALTとティーム・ティーチングだけどそれぞれが別々のことをやっている、教室の中にJTEとALTがいるけれども、もしかするとそれは1時間ずつ別の授業を持っても同じだったかもしれないというような、あまり共同性というか、インタラクションが高くなかったことです。
 ところが、経験豊かな最後のベーススクール、英語科のある学校では、ALTの先生は講師の方を入れると3人いたのですけれども、彼らから教わったのは、本当に生徒とALTとJTEがトライアングル型。いつでもコミュニケーションがどこからでも生まれるような形になっていたということを思い出します。それから、それを支える上で、必ず計画を立てる、レッスンプランの時間をきちんととる。これはなかなかワンショットやレギュラー訪問のところではとれなくて、ALTの先生が、今日何をやるのかということがわからなくて、その場で指示を受けることが多いですけれども、レッスンプランがあって、授業をやって、その後必ず評価の時間をとるということをやっていました。それは非常にお互いによかったし、目指すものがはっきりしていたのではないかなと思っています。
 それから、教科書の話が出ましたけれども、自分の経験でいうと、教科書を使ったほうがティーム・ティーチングはいいのではないかなと思いました。つまり、オーラル・コミュニケーションのような特別な時間だけ英語というのではなくて、普通の英語Ⅰでも英語Ⅱでも英語のやりとりがあります。例えば、教科書がいろいろな課題があって、制約がある中でできていますので、それをもっとオーセンティックなものにするようにALTが補ってくれるとか、あるいは、定期考査の英文とかリスニング問題を、教科書と関連したものをつくってもらうとか、毎時間のタスクや課題といったものを教科書に関連したもので発展してもらうとか、やはりそういったところはJTEよりはALTのほうが得意なので、そのようなところも教科書を使うということが、生徒にとっても何かオーラル・コミュニケーションだけのお遊びではないなという意識が高まっていいような気がしています。
 もう一つは、ティーム・ティーチングで問題なのは、JTEとALTが一緒に研修をすべきではないかなと思っていることです。これは杉山委員がここにおられますけれども、おそらくダブルスというと、一人一人が別々に練習するのではなくて、一緒に練習すると思うのです。でも、JTEの研修とALTの研修というのは別々に行われることが多くて、確かにそれぞれの研修で高まるけれども、一緒にどう授業をつくり上げるかというイメージがなかなかないので、まだTTに対する具体的なイメージや、それを高めるための研修というのは十分ではないような気がしています。
 そんな中で、私は最後のベーススクールでALTとトライアングル的に授業をやった中で、まさに今、新学習指導要領で英語の授業は英語で進めるといったことをどう進めるのかということを教えてもらったような、まさに何か補助輪の自転車に乗っていた、勉強していたような時期だったような気がしています。
 それから、もう一つ大事なのは評価に必ず入るということで、何かTTの時間とか、ALTの先生が来た時間が、最後の学期末の評価から離れた別個のエンターテインメントだけではないというように、評価に入るということも大事なのではないかなと思っています。以上です。

【吉田(研)座長】  どうもありがとうございました。TTの重要性というのを非常に強調されていたと思います。いろいろな学校へ行くと、本当にそういう形でうまくTTでやっているなというところと、そうではないところがかなり多いです。本当にネイティブ・スピーカーの先生、ALTの先生が発音の練習のためだけに来ているようなところも、今でも実はあるわけです。ですから、そういう意味では、TTをどう実際にやっていけばいいかという研修は、やはり大事だと思います。それから、ALTと日本人の先生、JTEとの間の合同の研修会というのがありますけれども、ALTの研修のときに日本人の先生が来られることはあるのです。それは我々も英語で中間期研修などをやっていますので来られるのですけれども、日本人の先生たちの研修会にALTが来られることってほとんどまずないです。結構日本語で講義をやっていることが多いものですから。ですから、その辺をどういうふうにやっていくかということも、今後の1つの課題かなと思います。
 しかもベース校になっているかどうかで、参加度が全然違うという点も大事だと思います。ワンショットとかレギュラー訪問だけでは、本当にレッスンプランだとか評価だとか、そういうところとなかなか結びつかないというのが現実だと思いますので、その辺をどういうふうに解決していくかというのが大事な点ではないかと思います。

【岡田委員】  前回、ALTの活用とか学校単位での国際交流事業のご提案を差し上げましたが、本日のプレゼンを聞きまして、着実に進んでいることを認識いたしました。着実に進めていただきたいと願っています。ただJET、ALTがまだ4,000名という人数でしかないとか、学校現場でパソコン1台に6人以上の生徒がぶら下がっているという現状は、早急に改善していただかないといけないと思います。先ほど市村委員のご発言にもありましたが、アクションプランなり工程表を策定し、その中で明確な数値目標を設定すべきではないでしょうか。予算もなかなか厳しいとは思いますが、例えば、JETプログラムによるALTの動員数を5年間で1万人にするとか、パソコンは1人1台を5年以内に実現するとか、そういうことを政策課題として明示していかないと、なかなか今の財政状況では進まないのではないかと危惧しております。
 あと、デジタルに関してですが、たまたま私の出身が新聞だからということではないですが、紙も忘れないでいただきたいと思います。日本新聞協会をはじめ、各新聞社が今、Newspaper in Education(NIE)ということで、かなり取り組みを強化しております。これは新聞が売れなくなっているという経営上の必要性からということもありますが、やはりコンテンツをデジタルのみならず紙で生徒にお届けし、将来の新聞の読者を育てるという狙いもあります。また、国策としては活字文化を絶やさない、活字文化を日本の文化として発展させることの重要性が広く認識されております。
 特に英語に関しては、小学校英語が始まったということもあって、各社もいろいろなメディアを使って教材的なものを発信し始めておりますし、また英字新聞等もございますので、これはぜひお役所のほうから新聞業界にプレッシャーをかけていただいて、学校や各クラス、できれば、生徒に1人当たり1部ぐらい、半年でも無料で配布してもらってもよいのではないでしょうか。それをやると、将来新聞の購読者が倍になるかもしれませんし、ただでは無理であれば、少なくとも原価で提供してもらうことも検討してもらってもよいのではないでしょうか。

【吉田(研)座長】  ありがとうございました。確かに先ほどからも出ましたけれども、ALTの数値目標のようなものが、もともと2002年か2003年が一番多かったです。あのころは6,000名いましたよね。それが今、本当に4,000名まで落ちてきているわけですから、これはどうやって数値を立てればいいのか、私もよくわからないのですけれども、やはり何か目に見えるものがないとなかなか進まないのかなと思いますし、予算措置ということもあるのでしょうが、やはりALTの重要性というのが今日の会議でもかなり出てきたので、それは大事な点かなと思います。
 それから、今おっしゃられた活字文化の重要性です。実は、大学では、幾つかの大学が、ウォールストリートジャーナルのインターナショナル版を無料でいただいていまして、ただ、無料でいただいているだけではなくて、1年に一度、クイズ大会をやられるのですね。もらっているところから代表者を、チームを2つか3つか出して、ウォールストリートジャーナルに載っている記事とか、それをベースにした、いわゆる大々的なクイズサークルをやられました。うちは負けましたけれども。そういうようなことも含めれば、それこそディベート大会もあればスピーチ大会もあるわけですから、いろいろな形で活字文化を使った中学生、高校生に、何か刺激を与えるものというのは可能ですよね。何かそういうことも、今後考えられるかもしれないなと、今、ちょっとお聞きして思いました。

【太郎良委員】  多くの方々がお話になったので、重複する面もあるかもしれませんけれども、2、3感じたことの感想というようなことでお話しします。
 今日は、お三方から大変立派なご報告をいただきましてありがとうございました。大変私も勉強させていただきました。その中で2、3感じたことをお話ししますと、まず1つ目はICTについてですけれども、私は日ごろからICTの活用をする場合、やはり1つ押さえておかなければけないのは、教育における余裕ということと、あと、考えるthinkということが、非常に教育において大事だというように私は思っております。そういうような視点で、浦和中学校がMSUの実践に大変熱心に取り組んでおられることに感銘を受けたわけですけれども、MSUのような実践を私は決して否定しないし、適宜ICTの使える場面を考えて、嫌がることなくこのように大いに活用してほしいなと考えるものです。
 そのような中で今日感じましたのは、おそらく発表された高久先生もかなり否定的な考えを持っていらっしゃるのかもしれませんけれども、e-learningを使ってのMSUというのですか、朝20分間隔で機械とにらめっこしながら勉強すると。このようなやり方は確かに望ましい形ではないとは思うのですけれども、私はいろいろ学校の実際の運営の実態であるとか、そしてある時期集中的にドリル的なものを、どうしても外国語というのはやらなければいけない教科でもあると思いますので、適切とは必ずしも思わないけれども、このようなやり方も適当な1つの方法なのではないかなと思って拝見いたしておりました。
 十数年前、実は私もこのような形で、同じようなことをぜひ導入したいなと思っておった時期があったのですが、やはりまだちょっと時期尚早で、生徒自体がまだ機械の操作にも十分慣れていない。また、このようなソフトを購入する予算もまだ十分でない等というようなことがあって、導入できなかったのが残念ですけれども。私はこのような方法は、現実的には考えられていいのではないかなと思いました。ただ、生徒はくたびれないかなとも心配しました。20分間隔で集中的にやるということについて。生徒に聞いてみなければわかりませんけれども、そのように感じました。
 今日の報告の中では出てきませんでしたけれども、電子黒板なども、今、専らそれを普及させようという流れのようですけれども、私もこのような電子黒板を使った授業などを今まで拝見しましたが、電子黒板の授業は正直私はくたびれてしまうのです。その授業の進め方が適切ではないのかもしれないけれども、非常に転換が早くて、考える余裕もない。到底私のような頭脳の人間にはついていけない。ものすごいスピードなのですよ。そういうことを考えると、先ほど私はthink、考えるということがすごく教育では大事なのではないかと申し上げたのですけれども、ある特定の場面で、ある特定の時期に、このような機器なりを使ってがんがん、そのほかの学校では弾丸ショットですか、というような実践もされているようだけれども、このようなやり方を否定するものではないけれども、やはり考えるという時間の設けられることを、常に教えるほうは押さえておかないといけないのではないかなと思います。
 Thinkというと、あたかも高校レベルぐらいの高度な授業でないとできないように思いますけれども、そんなことはないので、中学校の1年生の英語の段階から、非常に短い対話文であっても、ここでなぜ太郎君はこういうことを言ったのだろうか、それについて君はどう思うのというようなことを、英語でもいいし、英語で十分でなければ日本語でもいいから答えさせると。そういう考えさせるという時間、余裕を持たせることがとても大事ではないかと思います。そのことで、私はICTの活用というのは、時代の流れでありますし、避けることなく取り組むべきであるけれども、ぜひそのような、ICTを使う教員レベルもそうですし、私たちも常に光と影の、影の部分も押さえながら考えていくことが大事だと思いました。
 話はちょっと違いますけれども、余裕ということでぜひご紹介したいことがあります。私がいつもお話しすることをちょっとご紹介しますと、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、聖路加国際病院の副院長をなさっている細谷先生と言う方がいらっしゃいます。たまたま私の住んでおりますところと非常に家も近かったり、子どもたちが同じ学校に通っていたというようなこともあって、前々から家族ぐるみのつき合いをさせていただいているのですが、そのようなことで、かつて小学校のPTAに細谷先生にお越しいただいて、講演をいただいたことがあります。
 その講演の中で今でも私が忘れられないのは、細谷先生が最後のところで言われたことです。「お母さん方、子どもたちというのは、よく校庭の隅っこで腰掛けてぼーっとしている時間ってあるのですよね。そして、何か空なんかぼーっと見ていることがある。そうすると、学校の先生もそうだし、お母さん方もそうですけれども、何やっているの、早く何とかしなさいというようなことを言うことがどうしても多いのですよね。でも、そうではないのですよ。子どもたちにとって、大人から見ると一見ぼーっとしている時間というのはとても大事なものなのであって、そこをむやみに早くこうしなさいとか、せき立てるようなことは決していいことではないと思います。」というようなことを、最後にしめでおっしゃいましてね。私は、さすがにこの物の見方というのは、細谷先生は日ごろ小児がんの権威ですから、お医者さんという目で子どもたちを見ている方でないと言えないご意見だなということを感じたのですけれども、やはりぜひこのような物の見方というのは、学校で授業を進める先生たちが、必ず頭の隅に押さえておかなければいけないことではないかなと思います。あらゆる面で非常にスピーディーにビジーになっている世の中であるだけに、以上のお話をご紹介しました。それがICTについてのことです。
 あと、ALTについても1件、感じたことをお話しさせていただきます。大変すばらしい発表をありがとうございました。このJETプログラムが入って二十年数年経つのだそうで、本当に感無量だなという気がいたします。私もこのJETプログラムが入りましたときは、率先して外国人の方に来ていただいて授業をやった人間の1人で、その当時の実態を思い出してみましたけれども、そのときは学校全体が外国人の先生に来てもらって、どうなるのだろうという緊張の塊でした。太郎良先生、お手洗いはこのままでいいのでしょうかと。給食でいいのでしょうかと。駅まで迎えにいかなくていいのでしょうかと、そういうレベルでしたね。職員室ではだれも言葉をかける人もなく、生徒たちも極端に言えば逃げるように避けていると。それが10年もやっているうちに、当然ですけれども、そんなこと全くなくなりましたよね。今、ごく当然のように学校の中に溶け込んでいる。そのような意味で、私は国が導入したこのJETプログラムの貢献というのは、本当にすばらしいなと思います。どれほど英語を運用する力につながったかということは置いておいても、とにかく日本人のこの姿勢を変えたということで、私は非常に評価するものです。そのようなことで、この計画はお金もかかりますけれども、ぜひこれからもどんどん進めていってほしいなと思います。
 そして発表の中で、授業内での活動はもとよりであるけれども、学校外のことでもどんどん活動することが大事だというようなことで、まことにそのとおりで、そうありたいと思います。ただ、私が思いますに、二十何年経って、主として中学校でありますが、中学校のALTの活用状況を見ますと、残念ながら、本当に授業そのものの中で機能的に活動し得ているかというと、まだまだ全般的には問題があるのではないかなという気がしてなりません。
 先ほど卯城先生が、教科書というものを大事にして、それを活用しての協同授業というような評価のお話をされましたが、私も同感であります。いろいろALTとのティーム・ティーチングを見ましても、正直なところ、あまり感心できるような授業に出会ったことがありません。こういうことを言うのは非常に残念ですけれども、普通の日本人の教師がやっているビンゴを代わりにやってみたり、発音練習をやってみたり、ちょっとしたQ&Aのモデルをやってみたりと、そのような形にちょっとプラスアルファするとか、ゲームとか、遊びとか、そういう感じが多いように思います。
 去年もある学校で、ちょっと指導してくれというので、ALTとの授業を参観に行きました。学校名は挙げませんが、非常にレベルの高い学校です。名前を言えば皆さんご存じの学校だと思います。日本人の先生は主任教諭ということでしたから、おそらくそれなりのキャリアのある方だったと思います。授業の実態はというと、まず9割5分がALTの方の独壇場でした。指導案がすべて英語でできていまして、後で確認したら、その指導案も全部ALTがつくったと。日本人の教員はかかわっていないというようなことで、表面的に日本人がかかわらないTTということもあり得るけれども、事前の準備の段階を十分にこなしているかというと、それも聞いたらやっていないのですね。だから、もう丸投げなのです。そういう学校すらある。そういうことを考えると、やはりこれからALTの方を学校外で活用するというような方向を進めると同時に、もっともっと授業の中でどうすれば、態度の育成はもうできていますから、ALTを活用して英語の運用能力を高めることにつなげていくかという研究推進が必要だろうということが、非常に強く感じるところです。そのようなことを、大きく言って感じました。以上です。

【吉田(研)座長】  どうもありがとうございました。今、太郎良先生がおっしゃった、余裕と、それから考えることというこの2つの重要性ということをおっしゃっていましたが、今おっしゃった中で、e-learningの浦和中学校の最初に20分やっておられるというのが、正解だけを求める行為だということに対して、太郎良先生は、ある意味で集中して、ある一定の時間練習に割く時間というのも必要なのではないかというお話がありましたけれども、それはそうだと思いますね。ただ、そこで終わってしまうかどうかの問題で、それをどうさらに次のステップに持っていくかということが明確であれば、問題はないのかなと思いますね。
 あとはALTと日本人の先生とのお話がありましたけれども、これは先ほども出ましたけれども、なかなかうまく本当の意味でのTTができていない。日本人の先生たち自身の、特に中学校の先生たちの英語運用能力ということも、ある程度かかわっている部分というのは当然出てくると思いますけれども、そういう意味での、やはりこれも先ほどと関係しますが、TTなどを含めた教員研修の重要性というのは、今回の提言の中でもかなり重要な部分ではないかと思うのです。ずっとこれ、今日で6回目ですけれども、やってきて、やはり先生が変わらなければ授業は変わらないなということだと思います。ICTに関しても、技術はあるのだろうけれども、それを使えるかどうかというのは、やはり教員の研修の問題というのは一番大きな問題になるのかなという気がしますので、そういう意味で、またさらにそれが強調されたのかなというように思います。
 あと5分弱ですけれども、最後にこれだけは言っておきたいという方がおられましたら、どなたかおられますか。

【山中局長】  今、ALTについては、予算の問題もございますので、確かに厳しい予算の中でどのようにして伸ばしていくかということですが、JETプログラムを見ていただいても、吉田先生ご指摘のようにだんだん減ってきているというところがあります。これは文部科学省も大きい責任があると思っております。このJETプログラムは25年目で、56カ国、5万4,000人の方に来ていただいており、大学を卒業したぐらいの若い外国人の方が日本の社会に入ってきて、9割方が日本の学校で英語教育を3年ぐらい教えて、また戻っていきます。
 今回の震災においても、JETプログラムのOB、OGの方がそれぞれの国でいろいろな活動をしていただいており、そのような形で非常に日本の国際交流という意味で大きい力を持っていると思います。そのような面は、先ほど太郎良先生もおっしゃられたように非常にいいと思います。
 しかし、英語教育に活躍していただこうということで、もう25年やってきまして、当時中学校で授業を受けた12歳の子が37歳になっていますけれども、25年間やってきて、日本の子どもたちの英語能力が、特に聞く、話す能力がどれだけ上がったのかということについてです。ALTとして活動としていただくということがJETプログラムの大きな部分を占めているものですから、そうすると、日本人の英語能力が本当にそれでどれだけ上がったのかということです。これは誰もが一生懸命やろうと、それは重要なプログラムだというのですが、そういう方にしてみても、日本の子どもたちの英語能力が25年間で劇的に上がったと、最近の大学生は非常に英語の聞く、話す能力が高いと、企業で採用していても全然違うと、こういったようになっていれば、応援団にとっても非常にいいと思うのですが、そこのところが本当にそうなっているのだろうかということがあります。
 数の問題も1つあるのですが、数とともに、今いらっしゃる4,000人のJETプログラムで活躍していただいている方が、日本の英語の能力といいますか、中学校、高校、小学校においてもですが、日本の教育が目指している能力を高めるのに、本当にどれだけ活躍していただいているのか、その能力がどれだけ活用されているのかです。それはおっしゃられるように、まさに日本のTTのメーンになっている、日本人の先生方、あるいは学校の校長の役割だと思います。
 さきほど、TTについて、英語の授業で説明しながら自分でふと気がついたのですが、体育の授業は体育のプロの先生がいますが、トップアスリートといいますか、オリンピックのスポーツのプロの方もいます。そういう方に比べたら、スポーツの意味ではセミプロでも教えることはプロです。そういう意味で、英語のプロの先生というものは何かということです。体育の授業の場合は、オリンピックのスポーツのプロの方が必ず来ることにはなっていません。そういう中で体育の授業をやっています。しかし、英語の場合は、条件としてTTでALTの方をつけるような環境をつくるということで、一生懸命やってきたわけですので、文部科学省としてもALTの方をどのように活用することによって、日本の英語教育を変えていこうとしているのかということを、もう少しはっきりと打ち出さないと、お金の使い方としても非常にもったいないです。
 やはりALTの方がこれだけの大きな予算でこれだけたくさんの方がいらっしゃるのに、それをもう少しちゃんと活用していかないと、何のために予算を使っているのか、お金を使っているのかという問にうまく答えられなくなると思います。これはぜひ、今日言われた皆さん方からのご指摘もよく踏まえ、またケビンさんの言われたことが、ただコミュニケーションの授業だけなのか、ほかの授業もどうなのか、ほかの課外活動というのはどうなのか、授業以外のところはどうなのかとか、いろいろなところでどのような形でALTの能力を活用するのかということを、やはり文部科学省として一層真剣に考えなければならないと思います。このJETプログラム自体の有効性や効果について、重要なプログラムではあるけれども、効果がどうかと言われるときは、まさに学校教育、日本人の英語教育に対する効果についてでありますので、そこは真剣に自治体国際化協会さんのほうと連携して取り組む必要があり、大きい責任を負っているのではないかと思っております。

【吉田(研)座長】  どうもありがとうございます。非常に心強い発言をいただいたように思います。1点だけ、今、局長がおっしゃったことにつけ足させていただきますと、私もALTの中間期研修は毎年のようにやっているのですけれども、埼玉県で数年前にやったときに、アメリカ人のALTの先生が、私が話をした後にやってきて、自分は今、高校2年生にオーラル・コミュニケーションを教えているけれども、あるとき自分の生徒が自分のところへやってきて、あなたの授業をやめてくれと言ったというのです。要するに、どういうことかというと、受験に役に立たないから、だからその時間が無駄なので、もっと文法やってくれとか、もっとドリルをやってほしいということを言われたといいます。大きな悩みですよね。これは絶対あると思うのです。
 ですから、正規の授業の中でALTがどのような役割を果たせるかということと、それから、今、局長もおっしゃったし、ケビンさんもおっしゃったけれども、正規の英語授業以外のところでどれだけ活躍できるかということを、やはりきちんとした形でもう1回示し直すということは大事ではないでしょうか。どうしても入試を変えなければというのは分かりますけれども、なかなかそう簡単に変えられるものではないとなれば、やはりALTの人たちがもっと本当の意味で生かせる場面というのを、もう1回考える必要があるかもしれません。正規の授業というのは、なかなか大変なところもあるかなという、そんな印象もちょっと受けます。もちろん、そこをやらなければいけないとは思いますけれども。
 もう時間もほぼなくなりましたが、今日いろいろお話を伺っていて、ICTの活用というものも、授業そのものを補完していくものとしてのICTの活用、それともう一つは、授業外の活用、それを広げていくという意味での活用ということがありましたが、今、最後になってALTも同じかなというように思いました。授業そのものの中で、どうやってTTの形で入っていける、その体制をどうつくっていくかということを考えると同時に、授業を離れたところでもALTの、せっかく外国から来ていただいているわけですから、そういう方たちを、どうやってもっと生徒たちの英語力を伸ばすために生かしていけるのか。その両方の側面を、やはり考えていかないといけないのかなというように思いました。
 それでは、本日はこれで終わりますけれども、最後に事務局のほうからお願いいたします。

(7)その他

 次回の検討会の予定について事務局より事務連絡。

 また、国際交流政策懇談会最終報告書について、事務局より紹介後、国際教育交流政策懇談会の委員である池上委員より説明。

【池上委員】  では、簡単に。国際交流政策懇談会は2年間、21年1月からということでやってきまして、その間、状況の変化が非常に多くて、やりながら自分たちの姿勢を変えざるを得なかったです。まず自民党内閣のときに始まったということもあり、きっかけはとにかく日本人が内向きで、これをどうしたらもっと国際的に目を開いた日本人ができるのかということを総合的に考えようというような提案から始まったのですけれども、その直後にリーマンショックでレイオフが非常に多くなりました。その中で外国人が、殊にブラジル系の人たちがレイオフされて、子どもたちが学校に行けなくなってしまいました。それに対して、対策を特別な委員会をつくってやって、そこで提案した虹の架け橋日本語教室というのが全国に42できまして、とにかくそこに一時的に避難してもらって、そこから公立学校へ送り込もうという特別な提案をして、これは補正予算がついてすぐできたということがありましたけれども、そのようなことです。
 それから、次に、民主党にかわりまして、今度はアジアが大事であると、東アジアということで東アジア共同体構想なんていうのが出たものですから、東アジアとの交流をどうしていくのか。殊に教育・文化面ということで、単に教育だけではなかったということで、懇談会の名前も変えて、急遽東アジアとの交流をいろいろな意味で、例えば、アジア版のエラスムス計画をもう少し発展させようとか、キャンパスを共同でつくろうとか、そのような提案が出ました。それが決まって全体として、10年後に大人になる日本人の教育をどうするかからずっと、現在大人になっている人に至るまでをやっていったのですけれども、その中では、やはり英語が道具として絶対必要であると、学問としてというよりは、道具として必要であるということで提案しようとなりました。ただし、その頃この委員会ができましたので、具体的なやり方についてはこの委員会に任せようと。ただ、動機づけですね。これは杉山さんもよくおっしゃっていたけれども、要するに、英語を勉強するのは、英語をというよりは、将来何になりたい、だから英語をやるという、この動機づけが絶対大事だということで、このところでも随分それが出たように思います。
 最終回のところで実は震災が起こりまして、そこで緊急に最終回の委員会でもめましたのは、日本の、文部科学省は文部科学、科学技術も入っているわけですが、それに対する外国への英語の発信が全く下手で少ないということです。我々16人はいろいろな分野から来ていまして、45ページにありますので見ていただくとわかるのですが、それぞれの委員が外国から強烈なクレームを受けて、ここに次官、それから副大臣も出たのですけれどもぶつけて、その辺からして国際交流というものを、発信を考えていく必要があるのではないかという提言を盛り込んで終わったということで、かなり時機が反映された報告書になっています。
英語については、こちらでしっかりやってくれと頼まれてきておりますので、よろしくお願いいたします。

【吉田(研)座長】  どうもありがとうございました。それでは、これをもちまして、本日の会議を終わりたいと思います。どうもお忙しい中、皆さんありがとうございました。

(8)閉会 

お問合せ先

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企画調整係
電話番号:03-5253-4111(内線3787)

(初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室)