暴力行為のない学校づくり研究会(平成22年度)(第4回) 議事要旨

1.日時

平成22年11月26日(金曜日)10時から12時

2.場所

文部科学省17階 17F1会議室

3.議題

  1. ヒアリング
  2. 協議

4.出席者

委員

尾木座長、石橋委員、桶谷委員、木村委員、佐々木委員、筒井委員、中村委員、西山委員、萩原委員、三坂委員

文部科学省

磯谷児童生徒課長、井上児童生徒課課長補佐 他

5.議事要旨

開会

議事

(1)ヒアリング

・高等学校における生徒指導の実際  (県立高等学校校長)

(2)協議

【委員】対応が困難な保護者の問題が出てきましたが、具体的にはどんな保護者で、どんなところが困難だったか教えてもらいたい。

【ヒアリング対象者】例えば暴力行為を何回も繰り返している生徒で、本人も全く反省がないが、学校は絶対にやめないという場合がある。その場合、ほかの生徒がおびえて来れない。このような場合、学校としても懲戒処分も考えていくわけだが、「家庭で反省してください」と言うと、保護者から「うちは忙しくてそんな余裕はない。学校で面倒を見てくれないか」という場合がある。こういった保護者の場合、生徒が大きな問題を起こして退学ということになると、特に対応が困難になる。

【委員】ある指導を特定の生徒に対してやった結果改善された事例があれば、教えていただきたい。

【ヒアリング対象者】入学したときには名前も全部覚えて、特に悪そうな子は全部名前を覚えて名前を呼んでおく。名前で呼ばれると非常に喜ぶし、「中学校時代は呼ばれたことはなかった」と言ったりする。特にスタートというのは非常に大事と思う。小学校から中学校、中学校から高校というのは、やっぱり階段が非常に高い。特に中学校から高校は階段は高いと思う。

【委員】ある学校に、いわゆる問題行動を起こす生徒が集中しがちということは、中学校の進路指導も関係があると思うが、高校受験とのかかわりについてはどうか。

【ヒアリング対象者】基本的には本県の場合、例えば欠席が多くても、そのことだけをもって不合格になることはない。調査書なり学検点、面接等で判断する。学校によっては非常に指導困難な生徒が集まってくる。

【委員】人事異動と、生徒指導面における教師の指導力について何かお考えが伺いたい。

【ヒアリング対象者】本県の場合は、基本的には6年以上の場合には積極的に異動、10年以上は原則異動ということになる。例えば暴力行為や生徒指導上の課題が多い学校から進学校へ来て悩むケース、また、逆に進学校から生徒指導が非常に困難な学校に来て退職する先生もいる。しかし、進学校は進学校の子どもの悩みがある。課題が多い学校にも、課題が多い学校の子供の悩みがある。校内研修の中でもそういう話をするなどモチベーションを上げてもらうようにしている。教員の自己肯定感を上げ達成感をもたせていくというのが非常に大事だと思う。

【委員】学校の指導体制を整えて、先生方が力を発揮する体制を整えるというのが決め手と考えていいのか。

【ヒアリング対象者】はい。

【委員】かつてはやんちゃな子どもに対して指導できる先生がいたが、最近は指導できる先生が非常に少なくなってきた。教員の指導力の向上が求められているという話があった。例えば暴力が起こっていて、指導力がない場合に、何かお互いにカバーできる工夫はあるか。

【ヒアリング対象者】よく言っているのは、教員は教える人で、生徒は学ぶ人で、その関係が崩れたら、それは学校自体、授業そのものが成り立っていかない。例えば、器物破損などよくあるが、これは誰がしたのかということを徹底的に、全校集会までしてやらなければいけない。最終的には出ない場合あるが、その小さなところを徹底的にやらなければいけない。かつては結構紆余曲折し苦労しながら教員になった者もいたが、今は例えば進学校を卒業してそのまま教員になってちょっと人間の幅が狭い者もいる。特に荒れている子どもや保護者に対して対応を誤って問題を起こす場合がある。

【委員】では、これまでのヒアリングなども踏まえて、この研究会の報告書(案)について協議を移していきたい。事務局から説明をお願いしたい。

【事務局】まず報告書の構成のについて議論いただきたい。また、事例集、事例の調査項目についても議論いただきたい。

【委員】荒れる原因の一つに、教員側の要因があるように思う。荒れの質は確かに近年変わってきているように思うが、教員側の要因も入れた方がよいと思う。

【委員】単に、この子はこういう環境があるから大変だということではなくて、この子を育てていくために、今どういう注意の仕方、教員としてどうしていかなければならないのかということを、先生同士の中で話し合いが行われなければならないと思う。

【委員】小学校で実践しているセカンドステップや、中学校で行われているアンガーマネジメントという、暴力行為に対する怒りのコントロールというようなメニューなど、個に対するメニューと集団に対するメニューに整理して、実際にこういうプログラムが現実にあることを紹介していくことは、参考になると考えている。

【委員】学校に関する暴力問題でのご相談とかで感じている暴力行為の要因は、3つあると思う。1つめは、発達障害を抱えるお子さんがいろいろなストレスの中で暴力行為に発展するケース。2つめは、先生側の無理解や学級崩壊で生徒が切れるような形で暴力行為になってしまうケース。3つめは、自分の存在価値が感じられない生徒、特に、勉強や運動面での自分の価値を実感できないお子さんが非常に切れやすくなって暴力行為が起きてしまうケース。3つの要因に分析できると思っている。そのあたりを原因としても位置づけてはどうか。また、競争のストレス等に対して、学校が一つの防波堤になるような役目を先生方に果たしていただく取組が必要であると思う。

【委員】学校の中で生徒指導とかがうまくいかないときは、例えば生徒指導のプログラミングであるとか、それから先生たちを支える校長先生の配慮であるとか、本来あるべきものが網羅されていないときに、破綻を来たしていく。それを考えると、一般の先生がある程度持っておかなければいけない力や生徒指導を束ねる方や校長先生や管理職の方が支えられる領域を、ある程度整理をしておくほうがよい。

【委員】「荒れに対する予防策」はもっと適切な表現があったほうがいい。学校行事や学年行事などの行事が、今は行事が学校によっては非常に貧弱になってきている。集団的な活動をどう進めるかという視点を少し入れていただければいいと思う。それから地域と学校との連携が希薄になってきていると思うが、何かいい事例があるといいと思う。最後に、行政のバックアップも学校にとっては大きな支援になるので、その視点も入れていただけるいいと思う。

【委員】年度当初に黄金の3日間という言葉もある。最初にどのように子どもたちを指導するか、どのように約束事を取りつけるか、教員がどのようなスタンスで子どもたちへ指導規律、授業規律を植え付けるかということがかなり大切で、それがその後の生徒指導に有効につながっていくと思う。例えば時系列で、学校として例えば4月の入学年度当初は、これだけは子どもたちに対して毅然とした指導をする、また同時に児童理解、生徒理解を深めるためにこういった情報収集はしておくというところからスタートして、その後に家庭訪問があるときはこういう体制をとる、学校行事ではこういうことをするというようにする。おそらく現場の発想からすると、いつの時期に何をやったらいいのか知りたいという思いもあると思う。

【委員】関係機関の場合は、日ごろから問題行動、暴力行為などが起きないような体制づくり、例えば警察の非行予防教室やいろいろな取組もある。それからもう一つは、起きたときに速やかに連携して、なるべく早くおさめていくという取組もある。この視察の結果など見ても、その部分をうまくかかわっている学校もあるようなので、紹介していただくといいと思う。

【委員】やはり子ども自身が単に問題を起こすだけではなくて、子どもたちに、どう教員が対応できるのか。教育相談体制や、教員が忙しさの中で子どもをどのように受け入れていくのかという、そういう仕組みや体制づくりが明記されていたらありがたい。

【委員】各学校での取り組みの場合に、例えば「荒れ」「深刻化改善」というときに、具体的な問題行動の渦の中心あるいはそこの周辺にいる生徒に対する指導と、全校の指導ということがある。

【委員】先生方の相談体制とあわせて、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの導入が徐々に進んできていると思うので、外部から学校に入ってもらった方の効果的な利用というのを確認したいと思う。

【委員】小学校でいうと低・中・高という区分で、中学校は一くくり、高校も一くくりになると思うが、発達課題で、ここのレベルではこういう力がついていなければいけないという発達課題が読み取りづらい。発達課題のところをもう少し整理していけるといいと思う。

【委員】道徳教育のところに関して、道徳教育・特活の背景には、心をどう育てるかが入ってくると思う。高校の中には、あまり道徳教育というかたちで教育活動していない学校もあるので、タイトルのつけ方をもう少し広くしたほうがいいと思う。それから、改善してよくなったという状態を書くところがあったほうがいいと思う。

【ヒアリング対象者】出席停止だが、現実問題、出席停止をする場合に、かなり勇気が要るんじゃないかなと思う。文科省のほうもいろいろ通知を出しているが、保護者が「うちはできない。そんな暇はない、食べていかれない」と言うと、これはかなり難しい。

【委員】連携といっても段階があると思う。問題が起こらないように日ごろからいろんな人たちの知恵や技法をかりて生徒たちを指導していくという試み。それからもう一つは、起きたときの初期の対応、それからさらに深刻化したときに、どのような機関とのかかわりをやっておさめていくのかというところを整理すると、連携という言葉が整理できるのではないか。

【委員】暴力行為があって深刻化して非常に苦しむ学校というのは、どの学校でもそういう状態にはなるが、極めて深刻になる学校というのはそれほどはない。今の発言は関係機関との連携だが、同じように教育委員会にどういう段階でどういう連携が必要であるのかということに少し踏み込んで記載していただくといいと思う。

【ヒアリング対象者】平常時の連携、重大事件が起こったときの連携、さらには深刻化が進んでいるときの連携など、それぞれの連携がある。また警察だけでなく、地域、青少年の育成団体などとの連携も暴力行為の未然防止に役立つ。

【委員】連携の場合、問題は個人情報との関連である。本人・保護者同意というのが基本原則になっていて、なかなか警察のほうから学校に連携がしにくい。そこについても考慮しながら、どういう連携のあり方ができるのかもう少し研究していく必要があるなと思う。とりわけ暴力行為が起こったときは、個人情報で難しい要素が出てくる。学校側は神経を使うところだろうと思う。

【委員】小学校は中学校に送り出すというイメージがあるが、情報を確実に中学校に伝えていくということだと思う。学習の情報も伝えるとともに、生徒指導上の問題も伝えていくということが一番の連携だと思う。

【委員】今までの既存の出されたものの活用があったと思うが、国立教育政策研究所が生徒指導資料集の第3集、規範意識の事例集があったと思う。全部学校名は伏せてあるが、あれらの学校のその後というのはどうか。継続して、指導効果を上げているのであれば、参考資料としたいと思う。もしその後、再び非常に厳しい状況になっているのであれば、違う視点で取り上げることはできると考える。

【委員】最後に一つ。私はこの報告書の内容は、これを学校で取り組むと、必ず不登校の改善に通じると思うし、いじめの問題の抑止に必ず重なると思う。そのことがこの報告書を読んでいく中で、各学校に理解されていくとよいと思う。

閉会

 

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初等中等教育局児童生徒課生徒指導室