学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議 学校評価の在り方に関するワーキンググループ(第5回) 議事要旨

1.日時

平成23年11月7日月曜日10時~12時

2.場所

中央合同庁舎第7号館東館(文部科学省)5階5F3会議室

3.議題

  1. 学校評価の在り方に関するワーキンググループの到達イメージについて
  2. これまで(第1回~第4回)の主な意見について
  3. 学校評価の実効性について
  4. その他

4.出席者

委員

天笠主査、小松副主査、木岡委員、小林委員、實吉委員、松下委員、三塚委員、柳澤委員

文部科学省

下間参事官、田中主任視学官、松浦企画官、若林企画・学校評価係長 他

5.議事要旨

事務局から資料についての説明があった後、学校評価の現状と課題について討議が行われた。その概要は以下の通り。

(●は委員からの発言)

1.学校評価の在り方に関するワーキンググループの到達イメージについて

  • 資料1「学校評価の在り方に関するワーキンググループの到達イメージ」についてご質問・ご意見があればお願いしたい。 
  • 実効性のある学校評価を実施するための取組として、「国の取組(案)」「設置者の取組(案)」「学校の取組(案)」が挙げられているが、このなかでほとんど行われていないのは設置者の取組。自己評価・学校関係者評価の結果は、学校から設置者に報告することが法令上義務化されているにもかかわらず、報告の方法について学校と教育委員会のあいだで共有できてない。
  • また、「設置者の取組(案)」には、「評価結果を施策に反映すること」を盛り込むべき。このことについては、国からも各教育委員会に対して指導すべき。評価結果が設置者の施策に反映されない理由の1つは、学校から設置者にあがってくる報告が構造化されておらず、何を評価したのか分からない評価になっているために活用ができないこと。もう1つは、学校評価の結果が予算・施策に反映されず、指導主事による学校への支援に活用されていないこと。指導主事が各学校を訪問したとき、学校評価票などを活用して教職員にアドバイスすることがほとんどされていない。このような状況では、せっかく各学校で学校評価を実施して結果を提出していただいているのにやりがいがない。こうした問題は議論した方がよい。
    また、「国の取組(案)」についてはこのままで構わないが、「学校の取組(案)」についてはもう少し書き込めるはず。今後議論を深めていきたい。
  • 副主査の意見を踏まえて資料を見てみると、「国の取組(案)」「設置者の取組(案)」「学校の取組(案)」のあいだの矢印が一方向になっているが、本来は双方向であるべき。各主体のあいだの相互関係を示す記述の在り方を、今日の議論を踏まえて考えていただきたい。

2.これまで(第1回~第4回)の主な意見について

事務局より資料2、3について説明が行われた。

  • 資料2「これまで(第1回~第4回)の主な意見」について、各委員の意見が反映されているかを確認していただくとともに、資料2全体についてご質問・ご意見があればお願いしたい。
  • 主要な論点は概ね押さえられていると思うが、私が学校評価において一番問題だと捉えているのは、学校評価のなかで目標が系統化されていないこと。学校全体として立てた目標に対して、日常の授業にまで貫かれているような系統的な目標がない。このような事態が起きる原因としては、学校目標が校長や運営委員会等の場でしか検討されず、一人一人の教職員の問題意識や課題認識と連動していないこと等が挙げられる。目標設定における問題には、目標そのものの内容の問題と、設定過程の問題の2つがある。
  • 学校評価に対する各学校の考え方や各学校の学校評価の結果について、どの程度ホームページ等で公表されているか、現状を把握できればよいと思う。学校評価等実施状況調査(平成20年度間)の報道発表資料によると、学校に関する情報提供の方法として、「学校便り等に掲載して配布(94%)」「ホームページ等に掲載(62%)」「保護者等に対して直接説明する機会を設ける(51%)」が挙げられている。
    もう一つ指摘しておくと、校長が教育委員会に提出する教育課程届や学校経営方針等のなかに、学校評価をどのように捉え、どのように実施するかということが書かれていないケースが多い。経営ビジョンと学校評価が分離しているのはおかしいので、一元化すべき。経営方針のなかに学校評価について書いてもらうことが望ましい。
  • 仙台市は昨年度から学校経営要録のなかに一項目を設け、学校の重点目標か何か、それに対してどのように取り組むかを明記してもらうことにした。
  • 資料2の冒頭に「学校評価はかなり定着してきており」等の記述があるが、何が定着・充実してきていて、何が定着・充実していないのかを丁寧に見ていく段階にきている。今後は学校評価の現状を丁寧に記述していく必要がある。

3.学校評価の実効性について

  • 資料3「学校評価の実効性に関する論点」に沿って議論していく。4つの論点を順番に見ていきたい。まずは「1.学校評価の「実効性」をどういうものとして捉えるか」についてご意見・ご質問をお願いしたい。
  • 実効性は2つの面から捉えられると思う。1点目は、学校マネジメントにおいて、PDCAのサイクルが機能しているか否か。2点目は、学校が説明責任を果たすツールとして学校評価が機能しているか否か。本来学校評価が必要な理由は、学校が組織として機能していくため。学校が組織として機能していくためには、同時に説明責任を取り込んでいく必要がある。2点はこのような文脈で関わりがある。
  • 学校教育法第42条を資料上に引用していただいたことは意味がある。第42条がどの程度実現できているかが学校評価の実効性といえる。「評価が行い」までは現在でもできているが、「その結果に基づき学校運営の改善を図るため必要な措置を講ずる」ことがどの程度実現できているのかが問題。学校評価等実施状況調査(平成20年度間)によると、自己評価結果を踏まえた学校改善への取組状況についての設問に対して、86.2%が「改善の取組を実施した」と回答しているが、「必要な措置を講ずる」ことはどの程度できているのか。更に言えば、「その教育水準の向上に努めなければならない」とあるが、教育水準の向上にまでつながったか。
  • 別の角度から捉えると、学校が単独で行っているマネジメントに対し、行政や保護者・地域の方々がどう協働しているのか、どう支援できているのかということも実効性だと思う。
  • 自己評価と学校関係者評価を分けて考えるべき。私立学校においては、自己評価についてはどの学校も実施している。学校関係者評価については必ずしもそうではない。これには、私立学校は常々学校関係者の評価を受けているという事情がある。特に自己評価の実効性を見ていく必要があると思う。
  • 「改善」という言葉の受け止められ方は様々である。何をもって「改善」というのか、具体的な中身をもう少し明らかにしたほうがよい。
    学校の先生方は日常の授業などにおいて日々改善に取り組まれている。しかし、普段見えている改善の課題だけでなく、評価を行って初めて見える改善の課題がある。学校評価をするなかで、具体的な数値などで結果が出てくることによって、初めて気づくことや日々思っていることに確信を持つことがあり、このことで可能となる学校改善がある。こうした改善が学校評価の実効性を生み出すことにつながっている。
  • 「必要な措置を講ずる」ことによって教育水準の向上につなげることが、学校評価の実効性を担保することにつながると思う。
  • 「改善」というと、どこまでも「改善」をし続けなければならないというイメージがある。それでは学校も疲弊してしまう。ここまでは改善しようという、ある程度の最低基準や到達水準を示すことも検討に値する。
  • 「学校が元気になる」「子どもが元気になる」という目標は成果測定が難しい。それに対し、例えば「いじめがなくなる」「遅刻が減る」「学力が向上する」などの目標であれば、比較的測定可能である。前者のように抽象的な目標だけではなく、後者のように具体的な目標を設定することが必要。
    ある都立高校では、遅刻する生徒が15%にも及ぶことが学校評価で明らかになり、それをきっかけとして、教職員が生徒会とともに対策を検討・実施するなかで、遅刻が減るという成果があった。「元気になる」といった雰囲気の面での変化も重要だが、誰が見ても納得できる指標が必要。
  • 学校の分掌レベルで設定している目標や把握している指標を、学校全体の目標に上げていくことも学校評価の営みのなかで重要。例えば、虫歯の治療率で学校全体の状況が分かるという考えもある。そうしたデータは保健室にあるはずだが、それを学校全体の指標として上げていくとことも考えられる。もちろん、学校の状況に応じて取り組むべき課題に優先順位をつけ、用いる指標を取捨選択することは必要だが、こうした分掌レベルの指標を学校全体の評価プロセスにどう位置づけていくかが学校評価を実施するうえで重要。
  • 学校現場においては、説明責任を果たさなければならないという意識が先に立って、評価項目を網羅的に盛り込んでいく傾向があった。しかし、本来は学校の課題に応じて取り組むべき事柄を重点化すべき。仙台市教育委員会においても、各学校の課題に応じて目標を重点化するようお願いしている。
    資料2の3ページ、「2-3国の課題」の<実効性の把握>のところで、「文部科学省の学校評価等実施状況調査によると、99%が『学校関係者評価を実施して学校運営の改善に役に立った』と回答しているが、少し聞き方を変えると、文部科学省の指定校でさえ、『学校評価が学校運営・活動の改善につながっている』と回答しているのは、大体6割から8割ぐらいであり、指定校以外については、これよりも低い数字になると考えられる」との記述がある。この差異が生じる理由を考えたとき、学校管理職とそれ以外の教職員のあいだに意識の違いがあるのだと思う。学校全体で評価に対するモチベーションを上げていくことも大きな課題である。
  • 学校評価を学校運営の改善につなげるという意識は、管理職クラスでは概ね定着しているが、教諭クラスの意識はまた異なるのではないか。学校評価が定着しているか否かを論じる際は、誰が集めたどのようなデータなのかを踏まえて検討する必要がある。
  • 先ほど、学校の分掌レベルの指標を学校全体の評価のプロセスにどう位置づけていくかが学校評価を実施するうえで重要だというご指摘があった。その通りだと思う側面もあるが、そのような学校の捉え方は、学校の本質を分かった人間にしかできないことだと思う。一般的な校長は、ひとつの指標ではなく、複数の指標を用いて、様々な視点から学校を捉えようとする傾向がある。その結果、網羅的で構造化されていない指標設定が行われてしまう。
    ここでいう評価指標は、ひとつの目標に対して複数定めるものと考えるのか、あるいは、特定のひとつの指標で学校全体を見ようとするという意味の指標なのか、どちらか明らかにした方がよいと思う。
    また、先ほど具体的な目標設定が大事という話があったが、ひとつの指標で学校全体の状況を把握するためには、その指標が全体の系統のなかで位置づけられていなければならない。
    目標に系統性を持たせれば、その系統の中に分掌や個々の授業も位置づく。目標の系統性が確立していないのが問題。
  • 次に「2現状の学校評価の「実効性」は、どのように把握できるか」についてご意見・ご質問をお願いしたい。
  • 学校評価について、先生や保護者の方々がどう受け止めて、協力して、学校改善に結びつけていくかを考えたときに、「法令で決まっているから実施の義務がある」、「説明責任があるからやらなければいけない」という言い方ではなかなか協力を得られない。労力をかけて学校評価を実施するからには、「学校評価の実施を通じてこのように子どもが変わる」、「先生方の環境がよくなる」ということを伝えていかなければ協働は生まれない。
    学校が元気になる、先生方が元気になる、子どもは「分かる、できる、ほめられる」で元気になる。元気な学校は、子どもも先生も保護者も地域も元気でなければならない。元気になるための細かい取り組みは各学校が考えることが必要であるが、国や教育委員会も細かい統一的な指標を与えるのでなく、こうすれば子どもが元気になる、先生も保護者も元気になるという指針や元気になるイメージを提示し、各学校は、それに基づいて受動的に取り組むのではなく、能動的に考えて決めていかなければならない。網羅的に取り組んでも成果実感が得られない。
    「教育は人なり」という言葉があるように、ひとりひとりの先生が変わることで、子どもも変わる。これを逆に捉えて、学校評価などしてもしょうがない、人が変わらないと何も変わらない、と片付けられることもある。しかし、決してそうではない、学校は組織だって系統だって組織として動いている。そのなかで一人一人の先生がどうやって力を付けていくのかが重要である、という視点を踏まえて学校評価をしていかないと、一人一人の先生の問題になってしまって実効性は上がらない。
  • 平成20年度間学校評価等実施状況調査によると、自己評価結果を踏まえた学校改善への取組状況についての設問において、「改善の取組を実施した」と回答した学校の割合は86.2%だが、自己評価の実施は学校運営の改善に役立ったかという設問に対し「大いに役に立った」と回答した学校の割合は45.3%となっている。「大いに役に立った」と「ある程度役に立った」をあわせると98.8%に及ぶ、と考えるのではなく、86.2%もの学校で改善の取組を実施している割には「大いに役に立った」と回答したのは5割弱にすぎず、この数字を増していく必要がある、と考えるべき。
  • 学校評価を実施した労力に見合う成果が返ってきたかを考えたとき、こうした差が出るのだと思う。「ある程度役に立った」程度では、取組へのモチベーションがなかなか湧きにくい。
    情報を得たければ、積極的に情報を出さなければならない。ホームページや学校便りなどのツールも活用はされてきているが、頻度と質に改善の余地がある。情報を出すことで反応があり、反応があるから出していこうというサイクルが確立されると思う。その際、どの情報を出すべきか情報を精選する必要がある。例えば、ホームページで運動系の部活動の報告ばかりが載せられているとする。そうすると、文化系の部活に入っている子どもの親や、部活に入っていない子ども達の親は物足りない。多くの先生方は、自分の向き合っている子どもには熱心であり、詳細な情報を持っているが、全体を統括している校長先生は統括的な立場にあるので、全体を俯瞰した視点を持っている。教職員全体でのチームとしての体制が必要になってくると思う。
  • 資料3の2ページにあるデータをみると、自己評価に比べて学校関係者評価のほうが学校運営の改善に役立っているという実感が若干低いが、両者のあいだに差はないとみたほうがよいと思う。というのも、自己評価がしっかり実施されていれば、関係者評価も実施できる。学校関係者評価をよくするには自己評価をよくしていく必要がある。このことを認識しないと関係者評価のための議論になってしまう。
  • 先日、勤続10年目くらいの先生方と話す機会があったが、学校評価に対するイメージはほぼ学校関係者評価とイコールだった。つまり、学校評価と鋳物は対外的に保護者から意見を聞く物だという意識である。しかし、本来、自己評価が確立したうえに学校関係者評価が行われるべき。学校関係者評価は自己評価とセットだということが伝わっていないように感じた。
  • 資料3の2ページに「学校評価の『実効性』は、評価結果に基づく学校や児童生徒の変化によって把握することが一般的」とある。しかしもう一方で、学校評価を実施することによって、校長のリーダーシップがどう変化したのか、教職員が組織の一員として行動できるようになったか、それによって学校のマネジメントがどう改善していったか、それによって学校が元気になったか、ということもまた、実効性として考えられる。
  • 「教職員の意識向上」という表現は広義であり、具体的な中身が曖昧である。教職員が組織の一員として行動できるようになった、等とする方が分かりやすい。
  • 次に「3『実効性』の高い学校評価の実施を妨げる要因は何か」についてご意見・ご質問をお願いしたい。
  • 学校の課題と設置者の課題の間にあるのかもしれないが、校長・副校長・事務職員の会など、職種ごとの学校横断的な組織を活用すべきではないか。実際にはそうした組織のなかで、各学校の学校評価の取組等について情報共有をしたりお互いの問題点を指摘したりということができている。
    設置者の課題に関して、教育委員会事務局で学校評価に携わるのは指導主事だが、指導主事による学校支援において、学校評価の結果を活用できていない。
  • 学校関係者評価に携わる学校関係者の方々に学校評価に関する必要最低限の知見を持っていただく機会があまり設けられていない印象を受ける。そうした知見については、学校関係者の方々が学校に関わっていくプロセスのなかで自然と獲得していただく、という事例が多いが、関係者に集まっていただいて基礎的な事柄を伝えていくことは設置者の取組として求められると思う。
  • 仙台市では数年前から地域を学校運営の基盤に据えており、地域連携に重点的に取り組んでいる。例えば、地域コーディネーターの養成のため、研修会等を開催している。また、学校評価に関する教職員の研修会の場に、学校関係者の方や地域のPTAの方にも入っていただいている。
    学校評価の実施結果について、教育委員会には年度末の2月に報告が来るが、人事関係の作業は前年度の12月くらいからはじまって2月に終わるので、学校評価の実施結果を人事に活かせていない。評価結果を設置者に報告する時期の検討が必要。
    指導主事の学校訪問については、仙台市の場合、学校経営要録等の資料を事前に出していただいて、それをもとに5月に全校からヒアリングをする。
    そのほか、隔年で学校訪問を実施して、学校評価等についての指導の場としている。学校の課題が授業づくりであれば、センターから指導主事を派遣している。学校評価の結果に対する主事の派遣という形はとっておらず、学校訪問の結果各学校で出てきた課題に対する支援策はその都度行っている。
    また、全市で学校評価の実施状況調査をした際、教育委員会から受けたい支援や措置があれば記述してくださいという自由記述欄を設けたが、回答は全くなかった。学校評価が設置者から支援を得るための手段という意識が各学校に無いことが一因かと思う。
  • いきなり評価者の研修となると、保護者や地域の方々にとってはハードルが高いのではないか。コミュニティ・スクールに指定された学校で見られるように、学校運営に少しずつ関わっていくなかで、自分たちが参画している取組を評価してほしいという前向きな気持ちが保護者や地域の方々に芽生えていく。取組を前提として評価者としての力量を向上させていくというのが理想的な順序でないか。学校関係者評価委員の力量の向上は、コミュニティ・スクールの普及などとセットで考えることが必要である。
  • 設置者自身のマネジメント力の欠如が本質的な問題だと思う。その一例としては、学校評価が予算や人事と連動できるためのマネジメントサイクルが確立できていない。例えば学校経営方針の提出を5月に求めるのはおかしい。5月に求めるから学校目標も校長が一人で慌ただしく作ってしまう、そのため学校目標が教職員に浸透しない、という悪循環を辿ってしまっている。もう一つの例としては、教育委員会の行政範囲でしか物が考えられていないことが挙げられる。例えば、中学校区の整備について、小・中学校を連携させるというレベルでしか考えられていない。そこにある様々な地域団体との連携、「新しい公共」が目指そうとしていた地域主権をどう具体化していこうかという発想に乏しく、首長部局の市民関係の部署と連携が出来ない。そのため、例えば学校関係者評価の評価委員の確保に際しても、自治会くらいしか候補が思いつかないということになる。あるいは、教育内容論でいうと、小中一貫カリキュラムがやがて作られていかなければならないなかで、カリキュラムマネジメントとしての学校評価をやがて展開していく必要があるだろうといった見通しが持ちきれていない。
  • 私立学校の経営においては継続性が重要。単年度で学校評価をやることには少し無理がある。公立の学校も地域の学校としての継続性を担保する必要があるし、国としてどのような教育をしてほしいのか、どのような子どもを育てて欲しいのかという願いもあるだろうから、そうした視点から長期的に見ていく必要がある。単年度ではなく、もう少し緩やかに捉えることが必要ではないか。
    以前、私塾関係者に「学校の常識は世間の非常識」「世間の常識は学校の非常識」と言われたことがある。学校内部で行う自己評価と、学校外の視点を取り入れる学校関係者評価の異同を明確にしたほうがよい。
    設置者の課題に関連して、近隣の教育委員会同士の連携・連絡が全くできていないと思う。私学所管部局同士も同様である。また、学校評価に関して、国と各教育委員会の関係についても整理する必要がある。学校評価の推進は日本全体で取り組むべき施策なので、設置者・学校に求める共通の事柄は国として明示する必要がある。
  • 評価期間をどのように設定するかは重要なテーマである。たとえば、ドイツの学校評価は3年あるいは5年という長いスパンで行われているが、日本の場合は1年と短い。学校においては、3年取り組むことではじめて評価可能な取組もあれば、1年で可能な取組もある。期間が短いことで見落としてしまったり、見切れていなかったり、あるいは改善を焦るあまりに、効果的な取組もかかわらず、修正されてしまうという可能性がある。
  • 経済協力開発機構(OECD)が13日に発表した調査結果から、日本の先生は先進国の中で勤務時間が長いことが、明らかになった。ただ、長いのは授業ではなく、事務作業の時間であるとのことであった。ただでさえそのような状況であるにも関わらず、学校評価を費やす時間に対して多忙感を持ってしまうと、学校評価の実効性につながらない。学校評価は、管理職から教諭まで一致して取り組まなければならないもの。
    先生方が学校評価の成果を実感できることが重要。学校はたくさんの課題を抱えていて、先生方は真摯に取り組んでいる。しかし、各年度の4月から評価を実施までの短い期間で成果がはっきり出てくることは少ない。にもかかわらず、一生懸命取り組んでいる最中に、保護者や地域住民等に対するアンケートの結果が出てくる。成果が出てくる前に評価が下され、暗い気持ちになる。先生方が暗ければ子どもも暗くなってしまう。このような問題も踏まえて学校評価を進める必要がある。
    学校関係者評価がプラスの評価が比較的多い理由として考えられるのは、学校関係者評価の評価者は色々な場面で学校についての情報を得て、学校の実情や教員の苦労を目にしており、学校への理解が深いからだと思う。そういう意味で、学校からも積極的な情報提供を図る必要がある。
  • 評価結果を学校改善につなげるということについては、設置者にとっても負担が大きいと思う。各教育委員会が所管する学校の数は少なくない。各学校から課題があがってきても、それぞれに十分対応することはなかなか難しい。私の学校でも、行政機関にお願いして三年越しになっていた事案があった。安全に関することだったので学校関係者評価でも話題になったが、評価委員に自治会長がおり、その方が慣れているところで行政機関に話をしてくれて、すぐに対応していただけた。こうしたメリットを感じ取って貰えれば学校評価に対するモチベーションも増すのではないか。
  • 最後に、「4学校評価の『実効性』を高めるために、国・教育委員会・学校はそれぞれ何に取り組んでいくべきか」についてご意見・ご質問をお願いしたい。
  • 設置者の取組を考える際、指導主事の果たすべき役割については検討に値する重要なテーマと思う。そもそも指導主事は学校評価を指導できるのか、各教育委員会に学校評価担当の指導主事がいるのか、指導主事だったら誰でも学校評価を指導できるのか等、検討する必要がある。
  • 仙台市の場合、指導課には指導主事6名いるが、学校訪問の際などに学校の要請に応じて学校評価についての指導を実施している。その際は管理職経験のある主任指導主事と一般指導主事で必ずペアを組むようにしている。
  • 教育委員会によって組織や考え方に差があるので一概に論じることは難しいが、前橋市の場合、マネジメント担当の部署は、学校の取組を報告すると同時に、特色ある取組をする際には特別に予算措置をするためにヒアリングの機会等を設けるなどしている。課長・係長クラスの指導主事は管理職経験があるが、それ以外の指導主事は管理職経験がない。管理職経験のない指導主事は、自分が学校にいたときの管理職の取組を思い出しながら、あるいは、管理職からどう働きかければ教員のモチベーションがわくのかという視点で指導しているが、校長や教頭の管理職経験が無くても指導できるかと問われれば、マネジメント経験がないため難しい面もある。
  • 私は、指導主事に期待したところであまり望めないと思う。その理由としてまず挙げられるのは、指導主事の人数に限りがあり、複数の教科、学校種を担当せざるをえないという制約があること。そうした制約のなかで、学校評価も担当するのは難しい。
    戦後教育委員会制度が発足したとき、教育委員会法は各教育委員会に統計主事の設置を義務化し、教育委員会の事務として調査・統計に関することを規定した。同時に、文部省にも調査統計課を設けて、学校評価を検討しようとした。それらの課や主事は機能せず、なくなっていったが、今後、学校教育の検証改善サイクルを確立するために学校評価を全国的に普及させようというのであれば、統計主事の設置や調査統計部門の設置などを検討する必要がある。
  • 設置者の取組として、研修の重要性についても指摘しておきたい。現在、学校評価が制度化された頃に在職していた指導主事・学校管理職の代替わりが始まっており、学校評価の目的などが伝わらなくなっている。継続的な研修の実施が必要。
    また、お金に関わる話は「要求」になりがちであるが、一般的に教育委員会は予算がないため、そうした要求はなかなか反映されない。特に市町村教育委員会は人事権がないため、人事についての要望の反映も難しい。各学校からの要望を踏まえて教育委員会が財政当局とやりあうことも重要だが、学校、地域、保護者ができることは何かを考えてもらう熟議型の学校評価をする必要がある。当事者意識を持って自分の学校の評価に関わってもらう必要がある。そうした試みをすることが、学校評価の実効性につながる。
    また、学校評価制度はそれ単体で捉えるべきものではなく、義務教育システム改革の大きな流れの中で制度化されたことを認識する必要がある。学校評価は各教育委員会・各校長の教育ビジョンとの連携がとられていなければならない。市町村の教育ビジョンをうけて学校評価をすべきであるにも関わらず、どこの市町村でも成り立つような「無国籍」の評価書が出てきている。
    また、国の取組について、教員養成の段階で学校評価を扱う講義を充実させたり、免許更新講習などで取り上げるなどの取組が必要。また、講義のなかで取り上げてもらうための情報提供も必要。教育水準を向上するために学校評価をどう位置づけるか、国の考え方を示すとともに、設置者等への支援を継続的に実施していかなければならない。
  • 熟議型の学校評価で学校が明るくなればよいが、熟議型の学校評価をしても全く予算上・人事上の措置につながらなければ、学校はかえって暗くなってしまうので、措置につながることをある程度は担保する必要がある。
    学校改善は何をもって学校改善とするのか。学校の自助努力だけで改善を行うことは難しい場合も出てくる。設置者のほうで予算・人事等の措置をとれるかによって学校評価の実効性は変わってくると思う。そうしたことからも学校だけでなく教育委員会も学校評価に対応できる組織作りをする必要がある。また、資料中「教員の意識」という表記あるが、学校評価は学校全体で取り組むものであることを考えれば、「教職員の意識」とが適切と考える。
  • 学校評価の指導・助言があまり縦割りになってはいけないのではないか。したがって、指導主事であればどの主事も学校評価の知見を持って指導ができる、という形が望ましい。そのように考えると、教員養成や初任者研修において学校評価を主題として入れることも検討すべきではないか。
    また、地教行法において教育委員会評価の実施が求められているが、教育委員会評価の多くが学校評価と連動していない。教育委員会評価に学校からのフィードバックを反映させることが重要ではないか。その意味においても、やはり教育委員会のマネジメント力の向上が重要。
  • 教育委員会評価の大半は、教育委員会が実施する事業に対する評価に終始している。例外の一つとして、世田谷区の場合、評価委員が教育委員会の所管する全ての学校にヒアリングを行い、教育委員会評価を実施している。学校に対して、教育委員会からの支援は十分か、あるいは教育委員会に対して、学校の声や学校評価結果を活用しているか、等をヒアリングしながら教育委員会評価をしている。学校評価結果を活用しているか等の項目を設けるなど、教育委員会評価のなかに学校評価を位置づけることも書き加えた方が良いと思う。
  • その他、全体を通して何かご意見・ご質問あればお願いしたい。
  • 資料1の「国の取組(案)」のなかに「自己評価の客観性・透明性の向上」という記述あるが、評価は客観的にはなしえない。だからこそ透明性や社会的公正性が求められる。表現の再考を促したい。

事務局より、参考資料1、参考資料2について説明があり、平成23年度間学校評価等実施状況調査の内容は本WGの議論を踏まえて事務局が作成すること、調査票の方向性については本WGの意見を聴取することについて説明があった。
また、事務局より、次回WGまでに「これまでの意見のまとめ(素案)」を作成し、それをもとに議論を行う旨提案があり、了承された。

最後に事務局から今後の会議の予定について説明があり、閉会した。

お問合せ先

初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

若林・中村・志村
電話番号:03-5253-4111(内線3705)
メールアドレス:hyo-ka@mext.go.jp

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)