平成22年9月17日
常用漢字表改定に伴う学校教育上の対応に関する専門家会議
主査 吉田 裕久 様
全日本中学校長会
会長 新藤 久典
標記のことに関して、精力的に検討いただいておりますことに、感謝申し上げますとともに、敬意を表します。検討に際しまして、全日本中学校長会は、以下の点をご配慮いただきますようお願い申し上げます。
記
【意見】
何らかの目安を示すとしても、国語科教科書会社の判断に委ねること
ただし、新たに加わった漢字を含めて第1学年の教科書から常用漢字の全体を示す一覧表等を掲載し、いつでも全体像を把握できるように配慮すること
【理由】
1.現行の常用漢字表における1945字のうち小学校学年配当漢字を除く939字の扱いについても、教科書会社によって学年配当が異なっていること(全社とも概ね均等に各学年に配当はしている)
2.教科書を見ると、約三分の一に当たる300字以上は、漢字だけを取り立てて学習するページに示されており、しかも例文すら伴わない熟語としてのみ示されている漢字もあるという実態から、学年配当を示しても、現状のような新出漢字の扱いでは、かえって生徒の学習負担を増やし、漢字学習への意欲を削ぐことが危惧されること
3.「だだし書き」については、改定常用漢字が告示されれば、直ちに新聞や書籍等の中学生も目に触れるメディアに改定常用漢字が使用されるようになることから配慮が必要であること
【意見】
改定常用漢字の告示に呼応して速やかに指導を開始することが望ましいことから、新学習指導要領が全面実施となる平成24年度からとすること
ただし、学習の基本となる教科書については、平成24年度使用教科書の編集がほぼ完了していると思われるが、各学校における指導が円滑に実施できるよう教科書に適切な教材・資料等が含まれるよう要望するとともに、国としても指導内容・指導方法等に関する指導資料の提供に努めるなどのきめ細かな対応が求められること
【理由】
1.改定常用漢字告示と同時に、中学生が、日頃、目にする新聞や書籍等に改定常用漢字が使用されるようになることから、その時期と指導開始時期が一致することが望ましいこと
2.「ただし書き」については、実際に指導に当たる教員にとって適切な教材が不可欠であり、指導内容・指導方法等に関する研究も必要であることから、主たる教材となる教科書に適切な教材・資料等が掲載されている必要がある。
3.新学習指導要領への移行に際し、教科書には含まれない新たな指導内容を含む教科について、国が教材の提供と指導方法に関する資料を全学校に提供したが、改定常用漢字の指導に当たっても、国のこうしたきめ細かな対応により、指導者だけでなく、生徒・保護者の不安を払拭し、導入が円滑に行われることが期待できること
【意見】
教科書の本文に使用する漢字は印刷標準字形とし、筆写(手書き字形)も同じ字形を教えること
ただし、点画を省略した字形も正しい字形であることも教えること
【理由】
1.指導に当たる教員及びその指導を受ける生徒の混乱を回避するためにも、国としての明確な基準を示し、教科書もそれに準拠して編集される必要があること。その際、できる限り漢字の成り立ち等を踏まえた正しい字形を基本とすること
2.字形の指導は主に書写の指導において行うこととなるが、教科書に示された字形(印刷標準字形)と手書き字形が異なることは、生徒の混乱を招くだけで、教育的効果を減退させることが危惧されること。また、字形はその漢字の成り立ちと深く関わっており、表意文字である漢字の特質を考えれば、新しい学習指導要領において、漢字の指導を含めた「言語事項」が新しく「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」に改められたことから、漢字の特質に即して指導することが望ましいこと
3.「ただし書き」については、現行の漢字の指導においても、指導は正しい字形で行っているが、高等学校の入学者選抜試験や普段の漢字書き取りテスト等では、点画のハネやハライ等で許容範囲を認めているという実態があることから、点画を省略した字形も正しい字形であることを指導する必要はあること
【意見】
上記2の考えを踏まえて、平成27年度入試から出題範囲に含めることが妥当であること
【理由】
1.改定常用漢字が指導開始される平成24年度に入学した第1学年の生徒が第3学年に進級した後の入学者選抜から実施することが、生徒に過重な学習負担を強いることなく、公平な実施となること
※その際、中学生が日常生活においてほとんど触れることのない漢字については、中学校における漢字指導の意義を尊重する上からも、避けることが望ましいと考える。したがって、国として、入学者選抜を実施する都道府県教育委員会、国立私立高等学校等に対して何らかの指導・助言を行う必要があると考える。
以上
初等中等教育局教育課程課