全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議(第7回) 議事要旨

1.日時

平成22年11月15日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3階1特別会議室

3.出席者

委員

有馬委員、岩田委員、小川委員、梶田座長、小宮委員、柴山委員、志水委員、高木委員、田中委員、土屋委員、根岸委員

4.議事要旨

(1)事務局から資料1に基づき全国学力・学習状況調査における対象教科の追加についての説明が行われ、意見交換が行われた。

  • 理科の追加自体に反対はない。理科のアセスメントを実施するにあたっては、観察・実験が重視されており、パフォーマンスアセスメントである。これには労力がかかり、信頼性が低い。テストの実施も限られた数の子どもへの実施になる。現場へのフィードバックの強化を打ち出していることもあり、双方の両立はよく考えないと矛盾を起こす。方法論によって期待されていることが目的にも反映されてくる。目的を明確にしておかないと理科の位置づけがおかしなことになる。
  • 理科を入れるとすれば、本当の調査は抽出及び希望利用で行うとして、ここには観察・実験が入らない。1000人規模の調査に観察・実験はなるだろう。現場の取組の状況も多様だろう。現場の観察・実験の実態をまず把握した上で、そこから数千人のサンプルを選んで実施という形になるだろう。全国の1つの問題点が明らかになると同時に、学校がこういう取組をしておれば、このようなメリット・デメリットもあるというフィードバックができるのではというイメージがある。全国の実験・観察の実態がつかめていないとどこにお願いするかも考えられない。
  • 参考資料の理科のところで、理科WGで出てきたのは、教科が2教科のときと3教科のときの設計の全体像が変わるのではないか、どういう時間があれば理科の領域が網羅できるのか、国語・算数と同じ時間をかけると子どもの負担が増える。3教科になったときにはどのくらいの時間配分をすればよいのか、2日にするのか、という見直しが必要という意見があった。
  • 問題数や実施時間をいまと同じようにはできないだろう。具体の調査設計にあたっては十分に検討する必要がある。プレテストなども必要かと思う。
  • 各学校で学力調査が授業改善に活かされるような返し方が考えられる必要がある。学校レベルのいい取組にヒントがある。教育施策と授業改善の2本立てになる。教育施策について本文でもう少し明確に区分けされる必要がある。
  • 返し方はこの調査の意義付けでもある。
  • 中間まとめにおいては社会理科英語を追加することを検討するのが適当とされている。今回、英語と社会には追加することが適当という文言がなく、やらないのではないかという受け止めをされかねない。

 

(2)志水委員より資料2に基づき、イギリスのナショナル・テストについて説明が行われ、意見交換が行われた。

  • 荒井先生からアメリカの話をいただいたが、英米とも同時期に同じような経過をしている。70年代がゆとりの時代で、それを立て直すため、80年代からテストが本格的に入った。イギリスは政権が変わっても継続された。イギリスでは競争的であるため、批判的な見方も出ている。よく考えられているテストだと思う。
  • 教育指導の改善について、いい調査問題を作り、学力モデルを示したいと考えている。
  • 否定するつもりはなく、テストの大事な目的である。ただし、全国テストは行政目的の実態把握を中心にすべき。全国テストが学力観を示してきた事実はあるが、目的としては優先順位が落ちると思う。画一に示す必要はない。
  • イギリスには全国学力・学習状況調査が始まったときオフステッドがあり、見た目はよく似ている。世界でも先進的試みとおっしゃったが、日本の1つ先に国家規模で行われた実験と捉えることもできる。イギリスでは全国規模のテストの必要性が認められている。しかし、学校評価に結びつけたことで教育が歪んだ。4つを包摂することは、何もかもしようとして中途半端になることがイギリスの議員のレポートにも書かれていた。達成水準が年々下がっている疑いがあり、見た目学力を上げたように見せられる。志水委員の提案には賛成であるが、1と3の目的はきちっとやっておかないと、イギリスの教育の荒れを日本に持ち込むことになる。データ分析が大切。イギリスでそのような仕組みとして、公正、水準、比較可能性を担保する第三者機関を設けている。デメリットをフォローしながらいいものを作ろうとしている。
  • 仕組みとしては日本よりはるかにしっかりしている。ただし、いろんな問題をはらんでおり、政治の舞台でどうしても議論されることがあり、表面的な論争のネタにされるという不幸な部分もある。やり方はしっかりしているが、デメリットも論じられている。
  • 4つの目的のうち、4の部分はイギリスでは国としてどんな取組をしているのか。
  • イギリスの先生は学習指導に力を入れている。最近のスローガンとして、パーソナライズドラーニングがある。個別の力をどうのばすか、個人のパフォーマンスをのばすことを重視している。4について特定の施策があるというわけではなく、テストが日々の営みを規定している。
  • どこができてどこができないのか、評価することが重視されており、それにテストが結びついている。日本では平均値で語りすぎる部分がある。

 

(3)根岸委員より資料3に基づき、全国学力・学習状況調査を活用した学力向上の取り組みについて説明が行われ、意見交換が行われた。

  • クローズアップされるのは数字になりがちだが、4年間で具体的な改善の取組が広がっているという印象を持っている。
  • 幅広い総合的で多面的な取組が紹介されており、参考になる。どの観点も大切だと思うが、学級経営、人間関係作りについての取組について教えていただきたい。
  • 秋田県の先生はまじめであると言われる。秋田大学の教員養成が効いていると思う。ふるさと教材といって、地域を教材にする実践に取り組んできた。県民の4人に1人が学校に来ており、先生が周りから見られている。
  • 私が関わってきた自治体もあり、実感をもって聞いた。貴重な今までのデータを全部は無理だろうが、研究目的に即して公開の準備もしてほしい。
  • これからの在り方を考える際、現場へのメッセージ性を持つ調査であったが、それがどう進んできたかという理解を深めるためにお願いした。大なデータについて、兵庫教育大学でデータを集めるセンターを作ったが、報告書出して終わりではなく、蓄積していく検討も下準備としてはある。どこが引き受けるか、国研か、東京地区の大学か、他の所でもよいが、大きな課題だと思う。
  • データの集積をシステマティックにしていくことは大切。具体像が見えてきたらもう一つの会議に諮って議論していただく。
  • 秋田県では平成12年から県の調査を悉皆でされているが、4年間の全国学力・学習状況調査が始まったことにより、県の調査との役割、位置づけをどう考えておられるのか。
  • 悉皆は14年からでそれまでは抽出だった。始めは7月だったが、全国学力・学習状況調査が始まったので12月に時期を変えた。4月の調査の課題を12月にチェックして、高校入試で再度チェックしている。
  • データは限られた範囲でよいので活かせるように考えて欲しい。小中の問題を高校でどう活かしているかという視点が必要。高校の授業改善が大学で効果を上げている研究もある。高校でのことも考えて欲しい。ある学校で音読朗読の指導をして、学校事故が減った。落ち着いたので学力面でもよい影響があったと思う。いろいろな面から拾って欲しい。
  • 参加するかどうかの議論がもったいない。制度設計の段階で公立学校が参加すべきだという強いメッセージを出しておく必要がある。
  • 30年代のときは違ったと思うが、今回の法的根拠の整理はいまのようになる。今後の議論でも頭に入れておきたい。

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(初等中等教育局参事官付学力調査室)