全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議(第6回) 議事要旨

1.日時

平成22年10月29日(水曜日)10時30分~12時30分

2.場所

旧文部省庁舎6階 第2講堂

3.出席者

委員

相川委員、天笠委員、荒井座長代理、有馬委員、岩田委員、小川委員、梶田座長、小宮委員、柴山委員、志水委員、清水(静)委員、清水(哲)委員、田中委員、土屋委員、渡部委員

4.議事要旨

(1)事務局から資料1に基づき教科追加の検討に関するワーキンググループからの報告について説明があり、追加を検討する教科については理科とする方向性について了承された。

 

(2)荒井委員より資料2-1、2-2に基づき、全米学力調査について説明が行われ、意見交換が行われた。

○沿革を見ると、70年代は注目されなかった。アメリカはゆとり教育だった。80年代のNation at Riskから、アウトカム重視の学校、根拠に基づく教育が言われるようになった。ただし、70年代も調査はしっかりやっていた。日本は国が禁止したが。日本もいま70年代のアメリカと同じような流れにある。

 

(3)全国的な学力調査の在り方についての意見交換が行われた。

○調査の目的がいろいろあるので、整理して絞るべき。

 現場にどう活かすかという議論があったが、国語、算数・数学が地位が高いとみられる。理科を先行するとなると、現場できっと何か起こると思う。理科追加の背景があがっていて、科学技術、国際学力調査が挙げられており、日本の経済のためとみる人もいるだろう。

○一番大きな目的を絞ることだと思うが、始まった経緯は、学力、がんばる、指導ということを言わないようにしようという10年があった。

 2000年の国民会議で単なる産業の問題ではなく、危機に立つ国家と同様の議論が右から左からあった。

 力を付ける教育に立ち戻る必要があるという議論があり、2001年にレインボープラン、学びのすすめが出て、確かな学力が言われるようになった。その流れの中でこの調査が始まった。2つの面が元からある。1つは現場へのメッセージ。学校が一人一人の子どもに力を付けて欲しいために悉皆になった。ただし、新しい学力のためにB問題を入れた。同時に行政レベルの改善のため。本当は行政調査と現場のための調査は分けた方が設計がきちっとするが、経緯によって現在のような形になっている。予算が減って抽出になって行政調査にシフトした形になったが、希望利用を残して一人一人の子どもをみることは残した。

 日本の流れは頭に置いておいて、これからどうするかを考えなければならない

○NAEPは政策立案に特化しているが、日本の全国学力・学習状況調査は最初あまり認識していなかったが、現場へのメッセージも大切だと思うようになってきた。ただし、調査としての面も大切。エビデンスベースで保護者や地域に説明責任を果たすため、現場目線の調査も大切。1つの調査で何でもやろうとすると無理が出る。進学適性検査や30年代学テの轍を踏むことになる。全国学力調査だが、指導に重点を置くシステムと、政策立案のためのシステムの2way、あるいはそれぞれの目的を切り分け、それぞれに沿った調査を複眼的に考えた方がよい。

○これからどうするかというとき、機能分化が必要だと思う。例えば、悉皆は数年に一回にしてはどうか、いろいろなテストを順繰りに、理科の実験など。英語が入れば、少人数でもスピーキング、リスニングを入れる必要がある。

 機能分化しないと、二兎を追う者は一兎をも得ずということになり得る。既存の調査との棲み分けも考えなければならない。

○現場で指導する側から考えると、まず教員にこの調査のねらい、意味を理解してもらわなければならず、保護者への説明、地域の受け止めが必要になる。校長にとってすじが通って本気になれないと、結果についても受け止められない。

 理科の追加に反対の考えは持たない。今度の教育基本法、学習指導要領で、知恵の教育が大切にされなければならない。

 思考力判断力の充実が図られなかったという反省がある。それを担うのが理科社会。

 活用の中の問題解決能力を高めるためにと考えると納得できる。理科教育のリテラシーが失われてきた10-20年だった。もう一度自然現象や科学技術に子どもの目を開かせないと、人格形成や社会性の育成にも響いてくる。

 理科を追加する説明のしかたをきちんとしておくことが大切。今日の資料ではどちらかというと状況論的、国策的イメージがする。

 教育の本質論から意味を取り出すべき。そうすると社会科でも学習モデルが見えてくる。

○指導に活かすというのは役立つ部分があると思う。マトリックスサンプリングを理科の実験観察に応用する方法があるのだろう。

 結果を行政に使うというのはあるだろう。学校に返すことで役立つ部分があると思う。

 おおまかでなく、子どもがどこでつまづいているのか把握できると子どもに返すときも役立つ。

 中学校ですとパソコン、携帯電話でトラブルが発生している。そういった調査についても漠然とした調査になっている。もっと踏み込んで、何時間しているかだけでなく、何を見ているかも聞いて欲しい。発達障害も間隔尺度になっている。そのような子どもが一人いるだけで指導に困難が生じる。データをきめ細かくみることも子どもの指導にとって大切だと思う。

○来年度の質問紙をどうするか事務局で検討しており、どう改善するかはもう一つの専門家検討会議で出ると思う。念頭に置いていただきたい。

○調査の目的は2つある。行政の評価と各学校での学力向上の取組の検証改善。これからは発展的に切り分けて、2つの調査としてやるべきという思いを強くした。アメリカを参考にした高度な調査と、イギリスでやっているような、我が国特有の学校の指導改善のための調査。後者とすると悉皆を検討していただきたい。

 抽出校が1/3程度なので、学校での学力向上のための熱意が低下しつつある状況がある。平均値で語られても、それに合う学校は少ない。自校のデータで自校の把握をし、学校評価とのからみで自分の学校をこうするという授業や経営改善のためには悉皆が必要。

 エビデンスベースの改善のためには学校が主人公となる必要がある。自校データがないと自校の改善ができない。

 予算の関係もあるので3年に1度程度でよいので悉皆をやり、B問題と中心とした日本ならではの悉皆ももう一度検討する。

 2つの違うものを年度によって組み合わせる時期にきていると思う。

○議論が混合することが学力調査では多い。それは個人に返すのか、集団としてどうなっているかを見るのかという点に起因する。

 個人に返すのも大切だと思うが、集団としてどこが強く、弱いのか知る必要がある。

 ルールスペース法や推算値は集団としてどこでつまずいている確率が高いのか見る方法。

 現場の先生は子どものことをよく考えており、一人一人がどこでつまずいているか知りたいと願っている。学力調査はそこに答える仕組みも作る必要がある。それは現場の先生の感覚と外れていないと思う。ただし、現状のデータの使い方では、円周率の問題の正答率が低いとして、すべての子どもが苦手かというとそうではない。

 個人と集団という2つの目線を使い分ける必要がある。

○荒井先生の最後のご提案にこの分野における専門家、専門組織が未発達というのは大切な指摘である。第三者評価についても専門機関や人材が不足している。学力調査と学力調査における専門家の育成に早急に取り組むことも大きな課題である。この会議でもその芽が出てくるといいかと思う。

 目的を明確にするのは同感である。学校評価と学校質問紙が重なる。教育課程実施状況調査もあるので、交通整理が必要なところにきている。目的の整理からはいるのか、いろいろ切り口はあるだろうが、学力調査は避けざる課題である。

○理科が入るのは結構なことだと思う。理科の課題についての記述で、活用の問題について他教科も視野に入れる必要があると書いてある。従来国語数学の枠内で出題していたが、教科の切り分けもあるが、活用の内容の評価には内容教科の観点も必要。

 もう一つ上のB問題について内容教科がどう関わるかも検討していただきたい。

○4年前に始めて、学校、市町村・県教委のレベルで様々な取組をしておられる。結果をどう返すか、授業改善などされている。何かの機会に学校、地教委、県教委それぞれのレベルの取組をこの場で紹介していただいて議論できたらよいと思う。また、荒井先生の発表にあったが、測定評価の専門家が少ない。なんとか育成しないといけない。

 

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初等中等教育局学力調査室