今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する有識者ヒアリング(第3回) 議事録

1.日時

平成22年5月12日(水曜日)17時~18時30分

2.場所

文部科学省東館3階 2特別会議室

3.議題

  1. 参加有識者からの意見発表
  2. 意見交換

4.議事録

【髙橋初等中等教育局財務課長】  それでは定刻になりましたので、ただいまから第3回今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する有識者ヒアリングを開催させていただきます。本日はお忙しいところ、お二方の先生にご出席をいただいております。ご紹介させていただきますが、まず、放送大学教養学部教授、小川正人様でございます。それから、大阪大学大学院公共政策研究科准教授、赤井伸郎様でございます。それでは、まず冒頭、鈴木文部科学副大臣よりごあいさつを申し上げます。

【鈴木副大臣】  どうも今日はほんとうに小川先生、赤井先生、ありがとうございます。もう申し上げるまでもないんですけれども、政権の第2フェーズの最重要課題として、やっぱり教員の質と数というのは、今日は数の話を、今年、4,200人増やしましたけれども、やっぱり計画的に増やしていかないと、採用の関係等々もありますので、7次定数改善以降、この問題、ずっと手がついておりませんでしたので、新しい政権になって準備をしてまいりました。

それで、今日は学級編制40人上限というのはどうするかという議論と、それから、これから計画的にどういうふうにしていくかと、こういうご意見を伺いたいと思っていますが、これから財政当局とか納税者の皆さんに我々が説明をしていかなきゃいけないわけですけれども、多分、小学校、中学校、あるいは高等学校もちょっと含めてですけれども、なぜ教員を増やしていかなきゃいけないかというシナリオが少しずつ違うと思うんですね。小学校でも、低学年と高学年とでは違うと思いますし。そこの全体のポートフォリオだとは思うんですけれども、そのストーリーというものがまだいまひとつ、ちょっとつかみかねている──いろいろなことを言う人がいっぱいいて、どれもその日はそのとおりだなと思ってしまって、しかし、それを全部やると、ボリューム的に大変なことになってしまって、財源に限りがあるわけですから、そこを何とかやっぱり優先順位というのをつけていくというのは我々の仕事でもありますので、そのあたりをぜひ教えていただきたいのと、それから、やっぱり大都市部と地方部とで少し現状のスタートラインが違っていますので、そこについてどういうふうに考えていったらいいのかというあたりとか、いろいろ幾つか我々もそれなりに勉強を重ねてまいりまして、それ以外の論点ももちろん、後で伺いたいとは思いますけれども、その辺の迷いを晴らしていただければと思いますので、今日はよろしくお願いをしたいと思います。

【髙橋初等中等教育局財務課長】  それでは早速で恐縮でございますけれども、まず、小川先生から15分ないし20分程度でご発表をお願いいたしたいと思います。

【小川氏】  ありがとうございました。時間もありませんので、すぐに入らせていただきます。これまでの2回のヒアリングに関する資料等々は文科省のほうからいただいて、事前に学習させていただきましたけれども、学級規模とか教職員定数の改善に関する論点というか、そういうものはすべてほぼ出そろっているかなというふうな印象を持ちました。今日は同じことを繰り返すにしても、私のほうからは、今までの2回のヒアリングで出されていた課題を、アメリカにおいて少人数学級の研究についてはかなり進んでいますので、そうしたアメリカの少人数学級の研究とか、また、第7次改善以降、少人数学級とか少人数指導の調査研究とか、あと、都道府県がその効果検証というものをかなり蓄積してきていますので、そうしたことを踏まえまして、少し整理し直して、自分のほうからこういうふうなことではどうかというふうなことを提案させていただければと思います。

そういう点では、私も第7次改善以降、いろいろな自治体の学力向上にかかわる少人数教育の施策をいろいろ見る機会がありまして、そういう現場の実情を踏まえますと、何か思い切ったというか、大胆な制度改革の案というのはなかなか出しにくいところもあって、話とすれば地味な中身になるのかもしれませんけれども、ご了解いただければと思います。大胆な制度や仕組みの改革については、赤井さんのほうでいろいろご準備されているようですので、そちらにお任せして、私のほうは地味なところで、実効性を含めて、現場の実情を踏まえながら、少し問題提起させていただければと思います。

まず最初に、レジュメについては、一応、文章をつくってきていますけれども、これを全部読むと四、五十分かかるので、これを飛ばし飛ばししながら、赤井さんのほうにゆだねられるものは、すべて赤井さんのほかにゆだねるということで、レジュメに沿いながら、進めさせてください。

最初に、学級規模をめぐる論議と課題の整理、これは米国の少人数学級研究からの示唆ということで少し整理しておきました。これについては、もう既に第2回目のヒアリングで国研の山森さんのほうからテネシー州のSTAR計画については少し紹介があったと思いますけれども、山森さんの報告にあまり重複しない形で、今日の報告に関係するところを少し整理させていただきました。

学級規模の問題というのは、教育改革、学校改革が議論される際、常に取り上げられてきた重要なテーマですけれども、ただ、学級規模を縮小するということは大きな財政支出を要する施策であるにもかかわらず、実は教育効果の検証というのは非常に難しいというふうに言われてきました。学級規模の縮小の教育効果を実証的に検証するためには、厳密に諸条件を統制した中での実験的な調査研究というのが必要であるというふうに言われているのですが、実はこの分野で先駆的であると言われているアメリカなどにおける学級規模研究では、ほとんど自然にできた大小の学級規模をそのまま活用して、両者の比較研究、成績の比較研究にとどまっているものが大きく、学級規模以外の要因をきちんと除去できないために、効果検証の信憑性については、アメリカですら、これまでも多くの疑問というものが出されてきていました。実際、アメリカの学級規模の教育効果検証の論文というのは、私も集めていろいろ読んでみたんですけれども、大体、学級規模の教育効果をめぐっては、効果がある、効果がないという、そういう評価が二分されているというのがこれまでの傾向であったということが言えるのかと思います。

ただ、そうした中で、実はアメリカの少人数学級研究の大きなターニングポイントとなった実験的調査研究というのがあったんですね。それは2回目のヒアリングで国研の山森さんも紹介していたようですけれども、テネシー州のSTAR計画というものです。ご存じのとおり、1990年代以降、アメリカでは学力向上施策の一つとして学級規模の縮小というのが連邦でも州でも大きな目玉とされまして、半数以上の州で学級規模の縮小の政策が推進され、それを連邦政府が後押ししたというふうな経緯があります。実は、そうした連邦政府の少人数学級推進の後押しとなったのが、実はこのSTAR計画でした。このSTAR計画というのは、13から17人の少人数、22から26人の普通学級、そしてTTを配置した普通学級という3つの学級をつくって、そこに生徒たちをランダムに配置して、幼稚園から小学校3年までの4年間にわたって、この3つの学級別でどういう教育効果があったのかを検証したものです。STAR計画がアメリカでも大きな注目を集めたのは、今、言ったように大規模な調査であったこと、2つ目には3つの学級の編制という統制以外は、他に優秀な先生を配置するとか、研修をやるとか、カリキュラム等々の工夫をするなど特段の調整を行わないでやったということ、3つ目には3年次で少人数は終わって、4年次以降は普通学級に再編制されるんですけれども、その後も追跡調査を実施して、3年までの少人数学級の教育効果を継続的に検証していったという非常に壮大なプロジェクトであったということで、非常に注目を集めました。

STAR計画の分析で中心的な役割を果たしたフィン教授──ニューヨーク州立大学のバッファロー校の教育大学院の教授で、少人数学級についてのいろいろな本も出されているおり、この分野ではアメリカの第一人者の一人だというふうに言われている方ですけれども、このフィン教授がSTAR計画を総括して、この計画での少人数学級の教育効果については以下のように指摘しています。1つは、少人数学級に在籍した子供の成績は、すべての学年、教科で向上した。また、少人数学級に早期に在籍し、在籍の期間が長い子供の成績向上が大きかった。2つ目には、一律というより、むしろ、非都市部学校の都市部学校の白人生徒よりも都市部学校に在籍している生徒、マイノリティーの生徒のほうに影響が大きかった。3つ目には4年次から8年次までの成績を追跡調査した結果でも、少人数学級在籍の子供の成績は優位であって、また、少人数学級に早期に在籍し、在籍期間が長い子供ほど、その効果がより強く持続しているというふうに指摘しています。また、TTの教育効果の検証も、実はこのSTAR計画の大きな柱だったんですけれども、TTは少人数と比べて教育効果は見られなかったというふうな結論を出しています。

それから、2ページの真ん中辺で、STAR計画以降も多くの州で学級規模縮小の政策が試みられていくわけですけれども、それら少人数学級の取り組みから共通して指摘される改善点というものについても、フィン教授は以下のように、やはり全体的に教員のモラルの点でも、または教員の学校で費やす時間の中では授業指導に費やす時間が多くなっているとか、あと、生活指導上の問題が減ったとか、生徒のほうでも変化が生まれてきているというふうな指摘もされています。

ただ、少人数学級の教育効果というのはそういう点であるというふうに言われるに伴って、少人数学級のさらなる研究課題も指摘されています。例えば、フィン教授によれば、そうした問題の1つとすれば、例えば少人数学級といっても、少人数というのは何人なのかということについてはなかなか決めかねるし、また、今回、STAR計画は幼稚園から小学校の低学年の4年間でやったんですけれども、これが例えば中学校、高校ではどのような効果があるのか、まだよくわからないし、あと、少人数学級のメリットをある特別の教育プログラムとか方法と結びつけることで、さらにその教育効果を高めることができるのか等々、いろいろ研究課題が沢山残されているということです。

アメリカで今でも議論が続いているそうですけれども、基本的な大きな問題は、少人数学級はなぜ教育効果を生み出すのかということが実はよくわからないというか、確定できない。1つは、少人数学級によって、先生方の授業スタイルが変わるとか、いろいろな面もあるんだろうし、また、生活指導面での時間よりも、いわゆる教授指導に費やす時間が増えたというふうな、教員側の要因というものが指摘されていますけれども、それだけではやはり説明できないんじゃないか。もう一方では、少人数学級によって、子供の側の変化ということについても着目する必要があるのではないかという仮説もありまして、例えば少人数学級では子供たちが学習に専念して、反社会的行為を減ずるとか、少人数学級によって学習過程への継続的な参加を促すとか、生徒間、あるいは教師と生徒の間の緊密な共同意識が促される等々の心理学的な説明が行われるというふうなアプローチもあるようです。こういうことで、議論はいろいろあるんですけれども、このSTAR計画以降、少人数学級の教育効果については一程度あるというふうなことを認めつつも、少人数学級がなぜ教育効果を生むのかという、その辺のところの議論についてはいろいろな議論がありまして、学校改革全体の中で少人数学級をどう戦略的に位置づけるかということにもかかわってはまだいろいろな議論が継続してあるというふうなことのようです。

2ですけれども、以上のアメリカの動向を踏まえつつ、それを日本で引きつけて考えていくということですけれども、1つはその際、考えておくべきことは、やはりアメリカの学級と日本の学級の果たす役割、機能というのは違うということをまず押さえておく必要があるのではないかと思っております。特にアメリカなんかでは、学級というのは学習集団であって、しかも学級内の学習指導は個々の子供の個別指導が重視されるために、1人の教員が子供の学習指導上において個別指導が可能な人数として、概して少人数で編制される傾向にあります。つまり、学級というのは基本的には教科指導、学習集団であって、それも日本のように一斉授業とかじゃなくて、一人一人の能力に応じて個別的に学級の中でやるというふうなことですので、当然、1人の先生の目が届く人数に限定されるということで、もともと日本と比べて少人数で編制される傾向にあるのは事実です。

それに対して、日本では長い間、学級というのは、ご存じのとおり、学習集団であると同時に生徒指導集団でありますし、学校行事や学校経営の基礎的な集団として考えられてきました。学校は学習指導のほかに生徒指導も期待されて、学級を基礎とした生徒集団の教育力に基づく指導、そして教師に求められる力量も、異なる能力とか個性を持った子供たちを集団としてまとめながら、その違いを学習指導や生徒指導に活用していく授業力とか学級経営の技量というものが重視、評価されてきています。こうして、学級というのは学習指導とともに生徒指導とか学級経営の基礎的な集団機能を担わされてきたことで、総体的にアメリカなんかと比べると大きな規模で編制される傾向を生み出してきたということですね。

ただ、こうした日本の生活集団と学習集団を一体とする学級経営を基盤に教科指導と生徒指導の双方の取り組みを行う日本の教育活動は、ご存じのとおり、これまで子供の社会性の育成ということと均質な高い学力の育成に成功しているモデルとして海外からも高く評価されてきたということが言えるのではないかと思っております。ただ、そうした成功モデルが近年の変化の中でいろいろな問題を抱え始めてきて、その改善が求められているということを4ページで書いております。

これはもうご存じのことなので、簡単にということで、1つは学級をベースにして教科指導と生徒指導の双方を取り組むという日本の教育活動というのは、その分、教員に多様な能力と開発を求めますし、教員の業務内容も多様にならざるを得ないということで、教員が忙しいというか、授業のみに専念する、ないしは教科指導のみに専念するというふうなことはなかなか難しくなっています。従来もそうでしたけれども、近年、さまざまな変化の中、ないしは新しい学校の課題の中で、そうした先生方の勤務のあり方ということが限界に来ているのではないかということで、その辺の見直しが1つということと、もう一つは児童生徒の変容の中で、学級集団づくりとか学級経営というのが従来と比べて極めて難しくなってきているということと、もう一つは今回の学習指導要領の改訂にもあるように、個に応じた教育とか創造性の育成など、従来の一斉授業ではカバーできない新たな学習、教育指導の要請も高まってきている。そういう点では、教員の勤務形態、業務内容の見直しとともに、少人数学級ということについては、米国と比べて、一層切実で重要な課題としてとらえられるべきだったというふうに思っています。

3番目ですけれども、じゃあ、どういう形で組み変えるのかということですけれども、前政権で実施された第7次改善計画では、少人数学級でやるか少人数指導でやるかということが大きな争点になりました。ただ、少人数学級の教育効果に関する実証的な、実験的な調査研究というのは日本では非常に乏しかったということと、乏しい中でも幾つか重要な調査研究もあるんですけれども、そこでも少人数学級の教育効果を確定できるデータの蓄積というのは非常に脆弱であったということで、結局、第7次の改善ではその辺のところがきちんと整理できなくて、少人数学級ではなくて少人数指導の拡充方策が選択されたという経緯があります。

ただ、前政権で実施された第7次改善計画の少人数指導というのは、いろいろな地方自治体の取り組みを見ますと、一定の成果を上げているのは事実だというふうに思います。ただ、この間、第7次改善以降の自治体のいろいろな取り組みを見てみますと、学力だけではなくて、生徒指導上の問題の改善のためには、少人数指導のみでは不十分だという認識も非常に強くて、そのために自治体は、例えば小1・中1プロブレム、不登校児童生徒などの生徒指導上の諸問題への取り組みも視野に入れて、都道府県が最初は単費による少人数学級の導入を国に率先して進めてきたという経緯もあります。

この間、10年近く、そういう取り組みというのが蓄積されていまして、この間、いろいろ見てみますと、少人数学級を導入してきた多くの都道府県では教育効果の検証を継続的に進めてきています。そうしたいろいろな報告書等をこの間、私も目を通しているんですけれども、学力の向上だけではなくて、不登校・欠席児童生徒数の減少等、生徒指導面でも効果のあることが報告されています。また、少人数学級の教育効果に関する実験的な調査研究も、今、少しずつ取り組まれておりまして、私も文科省の委託研究でやった平成19年の少人数の効果に関する研究とか、あと、生徒指導面での影響ということについても、平成20年実施しましたけれども、少人数学級が学力面でも、ないしは学校生活の適応、生活態度の育成の面でも、一定効果があるということは検証されているのかなというふうに思っております。

第7次改善以降のこの10年間のそうした都道府県の検証とか近年のそういう調査研究を踏まえると、おおよそ次のように課題を整理できるのではないかと思っております。

1つは、学力向上等の教科指導面では、著しい教育効果を生み出すことのできる学級規模というのは、アメリカでも15人以下というふうに言っていますけれども、日本でも15から20人ぐらいが目に見える効果を生み出す学級規模だというふうに言われております。ただ、生活集団としての学級を基盤に生徒指導と教科指導を一体的に取り組む日本の学校では、学級規模30から35人学級に改善することで、生徒指導上の問題の改善とともに、一定の学力の向上にも成果があることが見出されています。児童生徒の学校生活の場である学級の質を高めることで、生徒指導面でも教科指導面でも一定の改善を可能とすることができるというふうに見ることができます。

最後に、生活集団としての学級という意味では、あまり小さくない学級集団が不可欠ですけれども、教科指導とか学力向上の取り組みには、やはり15から20人程度の少人数の学習集団がより効果的であるために、生徒指導と教科指導を一体的に行う教育活動は、基本的には30から35人学級をベースとしつつも、重視すべき教科指導については必要に応じた少人数学級、15から20人以下を適宜組み合わせていくという方向がどうも日本の学級機能、つまり生徒集団をベースとした日本の学級機能を重視した教育活動の取り組みに適合しているのではないか。

一応、基本的にそういう方向を押さえながら、具体的な学級編制標準の見直しと教職員定数改善の具体的な方向について、さらに踏み込んでみたいと思うんですけれども、お金のかかる話ですので、今のような厳しい国や自治体の財政事情のもとで優先順位をつける必要があります。そういう点で、どの程度の追加予算が必要なのかということを一応考えておく必要があると思います。

参考として、まず、第7次改善計画の策定時点、平成12年ですね、その当時では、30人学級では9,600億円、35人学級では4,000億ぐらい、国と地方を合わせての文科省の推計がありましたけれども、それと比べてみて、現時点で、これから学級編制基準、定数改善をする際、どれくらいの追加予算が必要かということを幾つかの基礎的なデータを踏まえて試算してみました。これが6ページです。

30人学級については、小学校1年から中学校3年までの全学年実施した場合は、大体7,300億円。ただ、これは今の時点で一気に全部やるというふうにした場合の算定、推定でして、例えば今後6年間の児童生徒数の減少等で生ずる教員の自然減、大体2万数千人というふうに見込んでいますけれども、そうしますと増加教員数は8万6,000ということで、実質的に5,700億円程度でできるのではないか、つまり、6年の改善計画ということであれば、大体、それくらいに押さえられるのではないか。次に、35人学級を小学校1年生から中学校3年まで全学年実施した場合には、大体3,100億円。これも6年間の児童生徒数の減少で生ずる教員の自然減を見込んでやれば、大体1,500億円程度になるのかなと。さらに、私自身が今考えている妥当な方向ではないかと考えている小学校低学年、1、2年生を30人にして、小学校の他の学年と中学校を35人とした場合には、大体3,900億円。これもさっき言ったように、自然減6年を見通しして考えた場合には2,300億円程度になるのではないかと試算しております。

こうした数字を見ますと、第7次改善計画のときと比べると、今、かなり財政事情が厳しいんですけれども、5年~6年の改善計画の期間を設定した場合、国民に理解いただける追加予算の中で幾つかの選択肢は可能なものとして出てくるのではないかというふうに思っております。

次に、具体的に選択肢の話ですけれども、6ページの学級編制標準の改善か教員の負担軽減か、これは議論としては成り立つんですけれども、基本的には負担軽減のために教員を増やすということではなく、学級編制標準を縮小して、それに伴って増える教員をうまく活用しながら、教員の負担軽減を図るというふうな方向でいいのではないかということで、これは時間がないので省略します。

7ページの2のところですね、学級編制標準の改善の基本的な考え方ですけれども、米国等の調査でも、教科指導において教育効果が著しくあらわれるのは1学級15人前後と指定されています。日本の調査でも、大体20人以下であるというふうに指摘する調査研究が非常に多いです。ただ、生活集団と学習集団を一体化した学級経営を基盤に教科指導と生徒指導の双方の取り組みを行う日本の学校では、1学級15人程度とか20以下の学級は問題であるというふうに言われておりますし、それに要する経費を現下の財政事情で賄うというのは困難です。現下の財政事情を考慮すれば、上記の試算でも明らかなように、まずは当面35人、しかし、小学校低学年は30人とした上で、自治体ごとに実情と課題に応じた取り組みの工夫を促していけるような定数運用の方法を考えるのが望ましいのではないかなというふうに思っております。

3つ目にはプライオリティーですけれども、まず、学級編制標準の改善については、ある特定の学校種とか学年を特定化して国の学級編制基準を改正の決定決定するというのは、自治体の実情に見合った運用とか創意工夫を促す点で問題があるのではないか。実際、現在、総額裁量制と義務標準法の弾力的運用のもとで、各自治体、都道府県が学級規模の縮小を図っていますけれども、その傾向を見ますと、小学校では1、2年の低学年と中学校1年での学級規模の縮小が圧倒的に多くなっています。ただ、それ以外の小学校の学年とか中学校の学年でも学級規模の縮小を実施している自治体も一定数ありますので、そうした全国の実情を見ますと、小学校低学年が30人、小学校の他の学年と中学校では一律35人とした上で、それ以下の改善については、自治体ごとの実情と取り組み課題に応じて、35人以下学級に取り組めるような、そういう定数運用とか仕組みをつくっていくのが望ましいのではないかなというふうに思っております。じゃあ、どういう方法があるのかということについては、また意見交換のところでお話しできればと思います。

あとは、定数改善ですけれども、時間がもう過ぎましたので後一、二分宜しいでしょうか。定数改善ですけれども、これもヒアリングではいろいろな定数改善の要望がありました。事務職員を増やしてほしいとか、支援補助スタッフを増やしてほしいとか、いろいろな議論がありましたけれども、財政事情が厳しい中で、どこかに重点を置かざるを得ないと思います。私自身は、基本的には学校のマネジメントの機能を高めることで少人数の取り組みの質を高めたり、教員の負担軽減を図るという、そういうふうな取り組みが今、非常に重要になっていますので、例えば大胆に一定規模以上の学校には教頭2人体制ということをきちんと配置していくとか、そういう重点的な配置がされてもいいのではないかと思っております。

最後に、現行の各種の加配教職員定数ですけれども、今、6万人ある加配教職員定数のうち、指導方法工夫改善の加配は約4万1,000人いて、現在でもさまざまな少人数教育に活用されています。基本的には、今、述べてきたように、30人から35人の少人数学級をベースに、適切な少人数教育の必要性というのはますます高まっていますので、今後も指導方法工夫改善の加配教員定数は継続して活用することが重要ではないかなと思っています。ただ、従来のような運用の仕方がいいのかどうかというのは、いろいろ検討を要しますので、基本的には今次の学習指導要領の改訂で重視されている理数系など、ある特定の教科に重点的に活用するなどの方策があっていいのではないかなというふうに思っています。この点についても、後でまた時間があればお話ししたいと思います。

4以降は、そういう定数改善、学級編制標準の見直しにかかわって財源保障をどうするかということですけれども、これについては赤井さんが詳細に述べているので、これ以下は割愛します。また、最後の学級経営の改善と検証のしくみづくりということについては、もう時間がオーバーしていますので、意見交換のときにでも追加で報告させていただきたいと思います。

ちょっと時間をオーバーしてしまいまして、済みませんでした。

【髙橋初等中等教育局財務課長】  どうもありがとうございました。それでは、後でまとめて質疑応答、意見交換したいと思いますので、続きまして赤井先生からお願いいたします。

【赤井氏】  赤井でございます。私の専門は財政ということなので、最近、教育は当然、重要なので、教育の財政システム、今の国の財政事情を考えますと、お金があれば、教育って、すごく重要で、どんどん増やしていく方向だと思うんですけれども、財政制約がある中で、いかに効率的に、効果的に教育のほうにお金を入れていくのか、そのためには国民に今、こういう財政事情ですから、国民に費用対効果をきちんと説明するということで、そのために何が必要なのかという財政面からのアプローチという形で、システムを含めて、ちょっとお話をさせていただきたいと思います。

少人数教育を導入するに当たってということで、もう小川先生が効果についてはアメリカの例も挙げてお話しいただいたのでいいかと思うんですけれども、見ればたくさんの事例があると。数的には、やはり少人数教育が望ましいというほうが多いし、ここに第2回のヒアリングの山森さんの資料とか、あと、小川先生も先ほど触れられていらっしゃった文科省での委託研究、これらを見ていますと、ほぼ効果はあるということなんですけれども、効果の度合いというのがやはり小さいものから大きいものまで、やはり事情、国によって、地域によって、先ほどおっしゃったように、学校の規模、いろいろな状況で違ってきます。最近の少人数教育の日本の実証研究でもあまり効果はないという論文も出ていまして、ただ、それを見ていると、やはり推計結果がないところほど少人数教育を入れて頑張ろうというのは、逆の関係もありますので、推計をするにしても、なかなか、単なるあるないのところは細かく見ていかないといけないということで、まだどうなのかというのは、やはり多様性があるのかなというような結果になっているかと思います。それは学術的な視点です。

3ページのところで、少人数教育を入れていくに当たって、先ほど言いましたように、費用対効果、どのぐらいの効果があるんだと。効果があるだけではなく、小さいものから大きいものまであって、どのようにすれば最大限の効果が得られるのか、それが費用よりも望ましいもの、費用よりも大きいものなのか、そこを説明していく必要があるということで、効果の度合いの多様性と、あと、少人数教育が最も望ましい教育なのかということで、少人数化、教員を増やしていく上で、その効果を最大限上げるためにはどのようにすべきなのかと。ほかにもいろいろ、複数担任制とか、科目・内容ごとに配置していく、一律的に強制的にやるのではなく、ほかの方法もあれば、そのほうがよければ、当然、そちらをやるべきだし、そういうものと比べて一律的にやるのが一番望ましいんだということをやはり説得的に話していかないと、今の財政事情の中では政策として受け入れられにくいのかなという面です。

その少人数化を強制していくのか、それとも少人数化に見合う財源を手当てして、後は任せていくのか、実際、今、加配というので少人数化を進めていますから、そことの兼ね合いもあるんですけれども、任せていくとすれば、評価体制が当然、重要になって、逆にインプットで縛れば、35人を満たしているから、それなりの質はあるでしょうという説明ができるんですけれども、任せるとすれば、38人プラス別のことをやっている場合に、それはそれで35人並みの質が保てているのかどうか、そこの評価というのも当然重要になってくると。

もう一つの視点は、後でもう少し詳しくお話ししますけれども、その下ですけれども、自治体での対応で、ここは地方財政システムともかかわるんですけれども、既に少人数化をやっているところではどのような対応になるのか、さらに少人数化を進めるのか、自分の財源を引き上げてそのままにするのか。引き上げるということは、結局、国から出して、その分、地方は別のところにお金を回すということなので、そこの地域の効果は変わらないということなので、その効果を図る上で、自治体対応というのは一つ重要。

あと、教育財政システムで、これは現行制度で3分の2が交付税で手当てされているということなんですけれども、国として予算を増やしたと。ただ、3分の1だけ国から出て、残りは交付税で手当てされるわけですけれども、今の財政事情と地方財政システムの交付税の設計から言いますと、3分の2が丸々、交付税の算定上は増えるんですけれども、そのまま増えるとは限らないという部分もありますので、逆に地方の財政は苦しくなる可能性もあるということなので、そういう効果も含めると、全体としての制度設計で少人数教育の効果、地方財政での効果も含めて議論しないといけないと。

4ページでございますが、もう一つの視点、2番目としてコストの把握ですね。コストを把握することが重要だ、コストは最小化することが重要だというのは当然なんですけれども、これに関して、小川先生がコストを一つ、例示してくださいましたので、そういう流れは重要だと思うんですけれども、海外を見ていても、効果があるなしという論文が多い。ただ、どのぐらいどういうところで入れればコストが節約できたのか、コストがどのぐらいだったのかというのはほとんど議論されていないので、次のステップとしてはコストを明確にはかる。そのコストも、一番下ですけれども、画一的な少人数教育──ここで小川先生に出していただいたのは一つの事例ですけれども、いろいろな選択肢を組み合わせながらやると、もう少しコストが小さくなるよとか、例えば地域別、学校別でコストが違うよとか、もう少し明確なところを議論してこそ、もう少し先の議論があるのかなと。

そこのところと関係するんですが、5ページのところで政策パッケージということで、少人数化が最も効率的な政策とすれば、説得性はどうなのか。小川先生のところでは、教師の負担を減らすということとまた違う議論だという話なんですけれども、確かに両方とも重要な政策なので、お金があれば両方とも進めるということでいいと思うんですけれども、なかなか財政的な制約がきつい中でどのように組み合わせていくのかと。今、加配している部分をもう少し再配分しながら、つまり、少人数化で加配しているとか習熟度別のところを減らしながらも、こちらの少人数化を強制するというか、そちらのほうに財源を回すのか、もう少し入れかえながらやるのか、ここはなかなか難しいんですけれども、もっと下に行くと規制緩和とか権限移譲とかほかの部分、例えば加配定数、現在、少人数で4万人、習熟度で4万人ぐらいですかね、小川先生の推計だと、35人学級が4万6,000人ぐらいできるというお話ですから、そこの入れかえで、実際に必要な額というのが、ほんとうの目的は少人数化であれば、ほかの政策を再配分することで、より少ないコストで実現できるかもしれない。そのあたりもすべてを見た上で、これが望ましいんですというのを提示しておかないと、単に少人数化をやるとなると、先ほど副大臣のほうからいろいろな意見がありましたけれども、じゃあ、もっと別のことをすればもっといいじゃないかという議論に当然なるので、そこのところですね。例えば、学校統廃合とか、校長の問題とか、教員配置の問題とか、いろいろなところを含めた上で、あらゆる政策を考えた上で、この少人数化の政策が一番いいということが出てきましたよというふうな説明をしないと、なかなか受け入れられにくいのではないかというようなことです。

それで、考え方しか示せないんですけれども、続いて、そこまでが少人数化の話で、6ページのところが都道府県から市町村への権限の移譲ということで、私も地方財政を専門にしていると、ここのところ、学術的にデータで示したいというのはあるんですけれども、なかなか事例がなかったり、難しい部分もありますし、今、道州制ということが一番事例がないケースで、議論が多いわりには進んでいないという一つの理由なんですけれども、今、市町村へ権限ということで、最近だと大阪府の例で下におろすという例が出ていましたけれども、実際、明確にどの時点まで、どの規模までおろせばいいのかとか、そこのところをある程度、難しいのかもしれないんですけれども、データとか、ここまでいいんだというところを示して、実際の基準自体を議論するというようなところが大事なのかなと。ある程度の規模があればいいというのを広域自治体──今回、広域自治体の話だったと思うんですけれども、広域自治体だとどういう連携をしていくのがいいのか、さらにどんどんおろしていくと、残りの部分が僻地というか、地方部ばかりになりますから、そこのところでの格差の問題、そこも兼ね合いながら、ある程度、数値的なものを示しながら判断していくという方向が重要なのではないかということです。

続きまして、次が大きなテーマですが、教育財政システム、どのように設計するのかということで、ここは皆さん、ご存じだと思うんですけれども、現在のシステムが地方交付税、あと、不交付団体だと自己財源、あと、国庫補助負担金による財源保障という形になっていて、教職員給与は3分の1が文科省から出ていて、あとは交付税で算定されると。交付税措置分というのが積算されて、そこにも書いていますけれども、渡されるわけですけれども、地域独自に教員数を削減した場合、交付税を減らされるわけではないので、自治体独自で、全体としての給与カットの中で、3分の1は国庫に返さないといけないというのがあるんですけれども、3分の2は残るということになります。給与削減のインセンティブがあるわけです。これは努力面で見れば、3分の2があるから、努力をするんだという、逆に言うと効率的な面もあるので良いという面もあります。8ページのように、実際、国が用意していた額まで使い切れずに、これは給与削減の効果ですけれども、実際、実額県といいますか、国に戻している県がこのような状況であす。

9ページのところを見ていただきますと、実額負担県がどんどん増えていっています。これは自治体が苦しいというか、給与削減を行っているからで、その結果をどのように見るかというので、中立的に見ますと、1つは国が用意した額を使い切れていないわけですから、質が落ちているんじゃないかという議論もあります。とりあえず、学級定員というのは縛っているので、そこで質は確保されていると見ることができるのかどうか。もう一つは、地方が苦しいので、自分で努力をしているという意味で、質は落ちてないけれども、努力の成果でコスト効率的になっているんだという見方もあって、これ、どちらなのかで、やはり今後、国としてどういう制度がいいのかという議論をすべきだと思うんですけれども、ここに関してのデータ構築は、これまでの議論で、ほんとうに質がどうなのかというところは、やっぱりアウトプットの評価をしていかないと、単に今、インプットで議論しているだけでは、この先進まないと。実際、実額になっているので、十分な教育がなされていないという意見と、努力をして減らしているんだという意見と両方あって、それは国に任せるべきか、地方に任せるべきかの議論につながりますから、そこのところのセット的なデータ構築というのが次に重要になっていくでしょう。

次のところからは考え方なんですけれども、義務教育費負担のあり方で、国が全額負担するのか、地方が負担するのか、国と地方で分担するのか、いろいろな考え方があって、結局のところは、時間もありませんので、11、12、13、14にかかわるところですけれども、義務教育、ほんとうに国民はどういうふうに思っているのか、義務教育の中でもいろいろあると思うんですけれども、どの部分までをナショナルミニマムというとなかなか決めにくいですが、どこまで国が責任を持って全国一律にやるべきなのか、どこまで格差があってもいいのかというところを、もう少し国民の意識を目に見えるような形で示して、そこから制度をつくっていく。例えば、義務教育の最低レベルだけで、格差がついてもいいんだ、あとは競争させればいいんだというふうな意見になれば、ナショナルミニマムのレベルは下がるでしょうし、競争よりも最低限のレベルを引き上げるべきだとなれば、公平性重視で、ある程度、インセンティブは阻害されたとしても、ナショナルミニマムのレベルを上げることが望ましいということになるでしょうし、そこの部分は国がどこまで関与するのかというところともかかわってくるということで、国民はどういうふうに考えているのかというパラメーターというか、考え方をきちんと把握していくべきでしょう。

それが14ページのところに飛びますけれども、国民の望むもの、どのくらい格差が許容されて、どのくらい競争というのが重視されるのかという、まさにそこになると思うんですね。義務教育に関しては、高等教育よりかは格差はあまりないほうがいい、競争よりも格差是正というところは重要視されていると思うんですけれども、そこをある程度、なかなか数値で見るのは難しいんですが、そういうものをとらえる努力をしていく、それをベースに教育義務教育というものを構築していくということが大事なのかなと。その場合に、格差は許されないとなれば、国が全額見て、責任を持ってやると。そのかわり、執行は当然、地方でやれということなので、国が最終的な責任を持つかわりに、一時的な責任というか、初めの段階は地方がきちんと行って、問題があれば国が出ていくというようなシステム、ガバナンス制度の構築、インプットコントロールからアウトプットコントロールという議論になるんだと思います。

その結果、出てくる具体的な制度設計ということで、15ページに書かせていただいたんですけれども、これは国民がどういうふうに考えているかというのがまず一つ、ベースにあるかと思うんですけれども、競争重視よりも格差是正ということで重視、公立と公平のトレードオフというのがありますけれども、公平性が義務教育には重要なんだというふうに考えれば、国が財源保障として、現在、3分の1になっているのを100%、国が責任を持つということが重要なのではないか。責任を持つということは、逆に、ちゃんと国民に示せないと責任が持てないわけで、総額の正当性に関して、徹底した算定根拠とか、議論内容の透明性、情報公開も含めて、それが不可欠になってくるということですね。

もう一つは、あとは一括交付金という形になりますと、自由度も増すと思うんですけれども、逆に評価システム、それがほんとうにどのような効果があるのか、ほんとうにコスト効率的になっているのか、そういうところに関して、評価システムをきちんとつくるということが大事で、逆にその評価ができないんであれば、そこの折衷案といいますか、地方にある程度、費用負担をさせて、そこでコスト効率を図るということになるので、まさにその評価ですね。教員の給与がほかの自治体職員よりも少し高くなっている部分があるということに関しても、きちんと評価ではかれないと、なかなかそれも維持できにくいという部分もあるのかと思います。

それから、権限移譲とか徹底した結果責任とか、そういうような仕組みを、ガバナンス制度をきちんと入れて、基準と評価体制ができて、これだとモラルハザードが置きにくい、いわゆる全額国庫負担ですから、地方は負担がないというようなことから起きるモラルハザードを阻止できるような形での評価体制、そういうものができるということになって、初めて国としてというか、国民として、100%の国庫負担を行うということが実現してくるのではないか。だから、理想としてはいいんですけれども、そのためのハードルを幾つか超えていかないといけないというふうに思います。

あとは、参考資料として、諸外国としてはどのような設置主体、国庫負担がなされてきているのかというようなところを文科省のほうからの委託調査でさせていただいたので、その結果を述べさせていただいております。またこれは議論の中で。

とりあえず、以上です。よろしくお願いします。

【髙橋初等中等教育局財務課長】  どうもありがとうございました。それでは、6時半までを予定しておりますが、質疑応答、意見交換に入りたいと思いますが、副大臣、いかがでございましょうか。

【鈴木副大臣】  ありがとうございます。ちょっと時間切れで終わってしまった、小川先生の9ページの学校経営の改善と検証のしくみづくりのところを、赤井先生もさっき評価という、ガバナンスというお話がありましたので、ちょっとここを補足していただければと。

【小川氏】  第7次の改善計画のときに、少人数学級ではなくて少人数指導というふうなことでやって、それも都道府県が加配を重点的に、ある目的を持って市町村におろすというふうなことをやりました。そのときには、都道府県が市町村におろすということは非常に目的が明確であって、その目的に沿って、少人数教育が実際どのような効果があったのかということをかなり緊張した空気の中で、効果検証を進めて行ったように思います。また、少人数教育の効果の上がる手法の改善、授業開発とか教材開発にも取り組み少人数教育に伴うさまざまな授業や教材や研修の工夫というのが一体的に行われていたように思います。同じように、国が少人数指導を選択したということで、都道府県は独自財源でもって少人数学級の指導を図っていきますが、その際も、県民の税金を使って少人数学級を独自にやるということで、税金を使ってまで国とは違う少人数学級をやるのだから、その効果検証をきちんとやらなきゃだめだということで、当初は少人数教育にしても、少人数学級にしても、そういう検証の体制とか、少人数教育、少人数学級の教育効果を図るいろいろな仕組み、工夫をどうやって開発していくかを県、市町村、学校のそれぞれのレベルで意識的に取り組んでいたように思います。

ところが、その緊張がちょっと慣れに変わっているのかもしれませんけれども、そういう検証とか、全体で少人数教育や少人数学級をより効果を上げるためにどういうふうにするかという工夫とか研修というのがある時期から非常に弱くなってきています。私も幾つかの自治体の評価委員会のメンバーとして各自治体の学力向上の授業現場をよく見せてもらうことがあるんですけれども、ちょっと固有名詞は言えませんし、レジュメに書かなかったのもそういうことなんですけれども、少人数学級にしても、少人数指導にしても、従来、学校や教育委員会が一体的に取り組んでいた体制が、最近は、少人数学級の担任の先生とか少人数教育の担当の先生方に全部丸投げされている状況も生まれていて、先生方一人一人の力量によって、少人数教育や少人数学級の効果が違ってくるというような事態も見られています。今回、少人数学級とか定数改善をしていく際に、もう一度、原点に返って、仕組みづくりとか、体制づくりを一緒にやらないと、なかなか効果が上がっていかないのかなという印象を持っています。。

【鈴木副大臣】  ありがとうございました。お二人に伺いたいのは、40人を30とか35にするという議論がちょっと先行し過ぎていると思っていまして。それは最後には決めますけれども、むしろ、義務標準法の制度枠組み、まさに赤井先生がインプットとアウトプットとおっしゃったんですけれども、今はインプット主義をとっているわけですよね。それのリクワイアメントというのを決めていると。もちろん、方向としては弾力化の方向だと思いますが、理論的にはというか、要するにちゃんとした検討がなされれば、私個人としては、別に標準法自体の改正を封ずる必要はないと思っていて、そこも含めて、私は8次定数改善では断固ないということを申し上げているのはそういうことなんですけれども、そのあたりはインプットとアウトプットのバランスというか、インプットでどこまで縛るのか、あと、アウトプットで何を加えるのかというあたりで少しコメントをいただきたいんですけれども、赤井さんからどうぞ。

【赤井氏】  ありがとうございます。いろいろやっぱり学校でもバラエティーがあって、ほんとうに自由にさせても、ちゃんと質の確保ができるところとできないところがあって、一律にやるとなると、どうしようもないところも含まないといけないので、インプットでばっとやるということなんですけれども、当然、能力があるところは自由裁量を与えていったほうがいいということなので、何らかの形で能力があってできるというのを、完全じゃなくてもとらえて、そこの部分だけで、できるかどうかわかりませんが、少しインプットを緩和して、特区制度みたいな形で、35人、40人にしろ、達成できているところは、例えば35人と決めていても37人になっても、アウトプット基準がクリアされていれば、そこは弾力化とか、されていない場合は一律というような形で、何か基準を決めて、そこをクリアしていれば自由になるみたいな、地方財政でもあると思うんですけれども、財政健全化であるところを超えれば、計画を出してちゃんとしないといけないけれども、それを超えていれば、自由に、地方債の発行も自由化されていますけれども、そういうような形で、完全にアウトプットを評価するのは難しいんですけれども、学力テストとか、そういうもので見ながら、ある程度の基準を超えていれば弾力化して、超えていなければ弾力化しないという、それはインプットとアウトプットのバランスというような形になるんだと、方向性としては。

【小川氏】  どこまで答えられるかわかりませんけれども、一つは、今の標準法の制度的な見直しと言う点では、教職員の配分というか、定数算出の方法の見直しがあります。今は学級をベースにしてやっていますが、今後の考え方とすれば、学級をベースにしつつも、児童生徒数を加味して、プラスの定数を付加していくという方法もありますし、学級ベースの算定と国の標準をやめて、児童生徒数で算定した教職員数を使って学級規模は各都道府県で自由にやってくださいというふうなラジカルな方法もあると思います。理論とすれば、そういうふうな議論も当然あるんですけれども、ただ、先ほどアメリカと日本の比較をやったように、日本の学校教育の強みというのは、生徒指導と教科指導を一体的に取り組む教育活動にあると思っていますので、基本的には今までの強みをベースにして、学級をベースにしながら、教育活動をやるということを押さえていいんじゃないかと。その上で、ただ、今までの学級をベースとした教職員定数の算定というのは、かなりリジットで弾力的な面を考えると、なかなか窮屈な点もありますので、学級というものをベースとした算定にプラス、例えば先ほど地方と都市部という話をしましたけれども、今の標準法の教職員の定数の算定というのは、どうしても小規模とか地方のほうに有利な形になっていますよね。その不足分については、いろいろな加配でもって対応していますけれども、基礎的なところについては、もう少し学級数をベースにしつつも、児童生徒数で定数をきちんと、そういう児童生徒数が多い地域や学校が取り組まなきゃならない課題は沢山ありますので、そうしたことにきちんと対応できるような、児童生徒数に応じた定数配置というふうなこともやってもいいのではないかと思っております。

それと、学級をベースとする算定もやめて、すべて児童生徒数で丸ごと定数をやって、どういう学級基準をつくるかについては都道府県なり市町村が自由に地域に応じてやってくださいという大胆な考え方もありますが、現段階では私個人は躊躇しています。学級をベースとした条件整備というのは、やはりいろいろな教育活動の基本的なベースじゃないのかなというふうな感じがします。どういうことかというと、先ほどアメリカの事例もご紹介したんですけれども、少人数学級というのは、なぜ効果があるのかということについては、いろいろな議論があるんですけれども、ただ、少人数学級以外の、それにかわり得る教育効果を上げるような他の手法として確定的なものはあるのかというと、ないですよね。例えば、少人数学級に必要な予算を使って教員の給与を今の2倍ぐらいにすれば、優秀な先生が集まって、教員の質が高まって、40人、50人でも質の高い授業ができるはずで、そっちのほうが学力が向上するというような議論もありますけれども、果たしてそれがほんとうに実証的に検証できるかどうかというのは非常に難しいですね。そういう点で、少人数学級に代わり得る、同じような教育効果を期待できる代替の施策というのがなかなかあり得ないし、その効果の検証も大変難しいと考えています。いろいろな創意工夫の取り組みの最も基本的なベースになるのは、やはり少人数学級であるように思います。少人数学級の30とか35のところは国レベルできちんと押さえた上で、それ以外のさまざまな創意工夫は、それをベースにしながら、いろいろな地域、学校の創意工夫で少人数学級の教育効果が上がるような取り組みや創意工夫をしていくというような制度デザインのほうがいいのではないかと今の時点では考えております。

あと、標準法の制度枠組みについては、今の県費負担教職員制度があることによって、県が主導的に、国からもらった定数とか加配を市町村に配分しています。おもしろいのは、国からもらった加配以外に、都道府県ではしみ出し定数というのがあって、つまり、国の標準と違った形でもって各都道府県が実情に応じて都道府県独自の定数の配置基準をつくっていますが、国の標準と都道府県が独自に設定する配当基準の間で端数がありますので、それを集めてしみ出し定数というふうに言っていますけれども、その数も結構、都道府県は多く持っているんですね。そうした国の加配とかしみ出し定数については、都道府県は市町村の意見を十分聞きながら、適切に配置してるというふうに言っていますけれども、市町村の話を聞くと、なかなかその辺のところは都道府県の思いと市町村の思いは違うんですね。ですから、加配等々を含めて、定数の自由度というのか市町村のほうにもう少し大くくりでやるとかというふうな制度改正ということがあってもいいのではないかなというふうに思っております。答えになっているかどうかわかりませんけれども。

【鈴木副大臣】  よくわかりました。それと、私、最後ですが、学力テストの感じを見ていますと、上位県と下位県は気にしているんですよ、やっぱり。この間のいろいろなコミュニケーションで。上位県は絶対にキープしたいと、下位県は何とか挽回したいと。だけど、中位県は別の理由に、地域条件が違うとか、そういうところで逃げると言ったらおかしいんですけれども、というのが私の印象ですね、特に人事権者の。そういう中で、競争というものが、仮にさっきのお話のときに、なかなか現実問題として難しいなと、特区と言ったときに、上位10県は特区にするというのもまたなかなか現実論としては。

【赤井氏】  でも、イメージとしては真ん中があんまり気にしないということですが、どこに線を引くかですよね。ある程度、下10%だけが問題と見なして、あとはクリアしていれば、そこは努力していなくてもというか、普通だからいいんだと見るのか、全部に努力してもらうために見るのか。アウトプット評価というのは、完全なランキングづけは難しいので、悪いところだけを見るというのがナショナルミニマムとしては重要なんでしょうね。だから、僕のイメージとしては、できるかどうか別ですけれども、上位はもう自由化して特区、下位の悪いところは地方の再生計画みたいなイメージで、何か計画を出させて、いついつまでにそこのところをクリアさせるというふうなことで、ある程度、努力をさせる。そのための費用はモラルハザードにならない程度で与えてもいいと思うんですけれども。そういうシステムづくりが受け入れられれば望ましいと思います。

【鈴木副大臣】  なるほどね。

【髙橋初等中等教育局財務課長】  ほかいかがでしょうか。お願いします。

【金森初等中等教育局長】  小川先生のご報告の中で、アメリカのSTAR計画で、ちょっと意外だったのは、補助教員を配置した普通学級と未配置の普通学級の間に教育効果の上でほとんど差がなかったという分析があるんですけれども、これは私どもの日本のあれから見ると、13から17が少人数で22から26が普通学級だから、もともと22から26が普通学級という、ここが日本から見れば、既に少人数だというので、あんまり差がなかったということなんでしょうかね。

【小川氏】  そういうこともあるかと思いますね。ですから、複数担任やる意味ないですよね。

【金森初等中等教育局長】  小さい場合には。

【小川氏】  ええ。そういうことかなと思うんですけれども。ただ、なぜTTが教育効果がなかったかについての分析というのはあまり見たことないんで、私自身もちょっと、こういうことではないかという説明はちょっとしづらいんですけれども。

【金森初等中等教育局長】  ありがとうございます。それと赤井先生に、市町村への権限の移譲というのが一つの課題なんですけれども、例えば今の基準で言えば40人を上限としていますけれども、例えば特定の市町村で、うちの学校はもう40人じゃなくて42人とか45人でも、もう生徒や教員も優秀だから、そのほうがむしろ教育効果が上がるというようなところがあれば、それも許容するのがほんとうの権限の移譲なんでしょうかね、それともそこはやっぱりだめだと、下げるのはいいけどという考え方ですね。

【赤井氏】  インプットとアウトプットの基準で、それを許容するということは、それは強制しているよりも質が高くなるんだということを証明できるアウトプットの基準が必要ということでしょうね。だから、先ほど学力テストで上位にあれば緩和もするというところにつながるんだと思いますけどね。それが説得的であればですけれども。

【髙橋初等中等教育局財務課長】  そのほかいかがでございましょうか。

【鈴木副大臣】  赤井先生の6ページで、ちょっと今日のお話とは外れるんですけれども、裏腹の話なので、大事な話なので。私もちょっと国会図書館で何年か前に適正教育行政規模というのは調べたことが、ちょっと論文にまではならなかったんですけれども、30から50というのはそうなんだろうなと思ったんですけれども、中核市であれすると、国のスキミングの話になっちゃうというところがあるので、2のところですね、広域自治体の場合、責任はどのくらいになるのか、多分、ここが解ければかなり進むと思うんですけれども、ここはどう考えたらいいという、ちょっと赤井思案を。

【赤井氏】  多分、広域自治体といっても、真ん中に中核市ぐらいがあって連携するとか、ある程度、差があって、中心自治体があると思うんですけれども、そこがある程度、どのぐらい権限をまとめられるのか。一番恐れているのが下におろして人事もやったけれども、結局うまく行かなくて、じゃあ、もうやめたといったときに、制度が持続可能じゃないということと、やはり中心になる自治体はそれなりにほかの自治体よりも財政力が豊かなので、もっと充実したいと思っていても周りはしないということで、だから、その中心になる自治体が自分のことだけじゃなくて、周りをちゃんと考えていればいいですけれども、何かが変わって、市長さんがかわったときに、やっぱり自分のところだけでやりたいとなると破綻する可能性がありますよね。だから、そこの持続可能性のリスクみたいなところが結構、責任という意味でも関係してくるんじゃないでしょうか。

【鈴木副大臣】  そこはある程度、覚悟する制度をビルトインしておくということですかね。

【赤井氏】  市長もかわるわけですから、国との関係、都道府県がそれをちゃんと見るとか、ある程度、何かを入れておかないと、市長がかわったから、もうやめましたとなると、そうですね。そこは1つの市だったらいいんでしょうけれども、連携ですから、そこはどういう仕組みをつくるかということだと思うんですが。

【髙橋初等中等教育局財務課長】  今の点、小川先生のほうは何かございますか。

【小川氏】  広域自治体?

【髙橋初等中等教育局財務課長】  ええ。

【小川氏】  いや、特にないですけれども、基本的には中教審等々の議論にも私、かかわっていましたので可能性のあるところはおろしていっていいと思うんですけれども、ただ、都道府県といっても、状況が全く異なりますので、全国一律にその辺のところは法律改正でやるというのはしんどいものがあるので。ただ、現時点でも実質的に人事等々含めて、かなり県内の小さなテリトリーで人事を回しているような県もあるんですよね。例えば、神奈川県は実質的には市町村移譲の実態ですよね。例えば、そういうところについては、今回の大阪府と同じように、県と市町村の間での合意ができれば、そういう条件のあるところ、可能なところから随時、進めていくということについては全然問題はないと思うんですけれども。ただ、離島僻地を多くかかえているような地域では一律ということは難しいと思いますので、その辺は法律改正ではなくて、何度も言うように、都道府県と市町村の間の協議で可能なところから随時ということでやりながら、その実証的な検証を積み重ねながら、今後模索するということでいいのではないかなと思っています。

【赤井氏】  ちょっとここに書き切れなかったんですけれども、当然、残された部分との格差は問題ですよね。

【鈴木副大臣】  それと、まさにおっしゃるとおりで、今も教育事務所単位で大体やっているんですよね。

【小川氏】  あるんですよね。

【鈴木副大臣】  ええ。だから、実態はあまりないと思うんですけれども、赤井先生もお書きになっているけれども、要は設置者と任命権者をなるべく一致させるということがやっぱり責任あるガバナンスということから重要だということをどう進めていくか。

それと、これは民主党のシンクタンクでもちょっと議論をしていたことがあるんですけれども、やっぱり2,000人の町と80万人の世田谷区と同じ土俵で議論するというのは、そもそも無理があって、だから、例えば適正規模が50万としたときに、50万2つで100万の県というのは、大体、40府県ぐらいはそのユニット掛ける2とか3になるわけですよね。だから、結局、問題は離島僻地を膨大に抱える北海道とか沖縄とか、鹿児島とか長崎みたいなところと、それから東京とか神奈川とか、要するに首都圏及び近畿圏の巨大県と、だから、少なくとも3つぐらいに分けないと、市町村と言ったときに、みんなイメージしている市町村が人によって違っている議論をちょっと交通整理しないといけないなと。だから結局、話を戻すと、どのユニットでどうアウトプット評価もするのか。だから、東京都と鳥取県とで同じ都道府県任命権利者でございますと言って評価するというのも、なかなか難しいなという気もしていて。当然、社会条件、地域情勢違いますからね。それから、ガバメントリーチが全然違いますもんね、東京都の教育行政のスコープと、要するに他の社会条件が違うので。

【赤井氏】  国と地方の形になってきますね。

【鈴木副大臣】  ええ。

【辰野政策評価審議官】  インプット、アウトプットの議論が出ているんですけれども、これは非常に何かまだもやもやしたところがあって、小川先生からも紹介ありましたけれども、今までも定数の改善のたびに、どういう研究があるんだ、どういう教科があるんだということで、いろいろな説が出てきて、どうなんだと。少人数といって、じゃあ、それがほんとうに直接的に効果として結びつくのか、もし少人数であればいいとなれば、僻地であれば、少なければ少ないほどいいんであれば、マンツーマンというのも教育の形ですから、僻地なんて5人、10人のところが幾らでもあるんですね。現実に地方に行ってみると、そちらのほうがよっぽど心配なぐらいで、いいんだろうかと思うときもある。例えば、学力テストの結果なんか見て、秋田県も、もともと学級規模が地域条件からして非常に少ないですけれども、あれはむしろ、学級規模もあるかもしれないけれども、当たり前のことを当たり前にやっていると、早寝早起き朝ごはんみたいなことも含めて、しっかり家庭とか地域の教育力もあると、そういう条件の中で出てきた話だと。そうすると、学級規模と効果をほんとうにそこだけをインプット、アウトプットという形で検証するなりとらえるなりということができるんだろうかというところが非常にもやもやする部分があるんです。ですから、おそらくこれはいろいろなことをやりたいと、しかし、今のリソースではなかなかできないというところに、リソースをなるべく、いわゆる条件整備、環境整備をして、その中でしっかりやってくださいと。また、評価とか、そこら辺のところはしっかりやりますよ、そこに何か問題があるところはそこで考えて、リソースをどういうふうに使うかというところの自由度を高めてやっていくと、そういう発想で臨んだほうが、基本的な考え方として、つまり、インプット、アウトプットでこうだという効果をやるんだという、そういう土俵の中で議論するのかどうなのか、根本的に疑問に感じる部分もあるんですけれども、そのあたりについて、何かお考えございますか。

【小川氏】  先ほどもちょっとお話ししたんですけれども、少人数学級が効果があるかないかというのは、議論がいろいろあって、なかなか勝負がつけられないので、それは成績に影響する要因というのがすごく複数で絡み合っていますので、条件、要因を全て統制して、純粋に少人数学級の、そういう物理的なところだけで検証の実験を実施するというのはほとんど不可能ですよね。ただ、少人数学級が全く教育効果がないという、100%否定しているような論文というのは、実はそんなに多くないんですよ。それなりの効果があるけれども、ただ、少人数学級に要する経費が極めて大きいんで、その大きな追加予算に対してこれくらいの効果しか出てないので、投資した経費に見合わないのではないかという疑問や意見が多いというのが実相ではないかと思っています。それであれば、少人数学級に要する諸経費をほかの有効な施策に使っていけばいいんじゃないかという議論は一般的に成り立つんですよ。でも、じゃあ、少人数に変わる、ほんとうに有効な教育活動の質を高めていく他の諸方策って、具体的に何かありますかとなると、その辺のところの検証もなかなかできないんですよね。確かにもやもやしている中で、さまざまな教育活動の創意工夫を可能にしていく、その土壌として、やはり少人数学級というのはベーシックなものとしてあって、そのいろいろな工夫をしていく条件をつくる一つの器として、少人数学級というところに最終的に落ち着くという、そういう議論の経緯だと思うんですね、これまでの議論を見ていくと。ですから、少人数学級以外に、これさえきちんとやれば、子供の学力とか社会性がきちんとつきますよという明確に検証できるほかの代替施策があれば、それは当然、そっちのほうに重点投資したほうが最も効果的だと思うんですけれども、ないんですよね、今までの議論を見てくると。

【赤井氏】  ないのか。そこはいろいろ検証していかないといけないと思うんですけれども、確かに少人数学級を入れたから効果がどうだというのは難しいし、当然、地域事情もあるし、分析する方法にも依存すると思うんですけれども、逆に、わからないからアウトプットが望ましいという議論になってきて、アウトプットがちゃんと評価できているんであれば、わからないというのは地域事情でいろいろあるということなので、それは地域にお任せすると。その結果、ちゃんとアウトプット、ある程度の効果が出ているのであれば、そこは自由化して、それなりの予算を与えて、その結果、アウトプットだけで評価して、逆にインプットの効果がわからないからこそ、アウトプットをしっかり評価できれば任せるという話になっていくわけですね。地方分権もそうで、完全に国が知っていればやればいいんですけれども、それがわからないので、地方に任せるほうが望ましいという議論になるんですね。

最後、小川先生がおっしゃったように、最終的に少人数化に落ち着いていくのかどうかもわからないですけれども、いろいろ見て、どれもわからなくて、少人数化が一番与えるダイレクトの効果が大きそうだということになって、当然、いろいろな事情があると思うんですけれども、豊かなところとかノウハウのあるところは自分たちでできると。ノウハウのないところは何をすればいいかわからないと。わからないとして、国が提示するとすれば、例えば、少人数化が一番いいんじゃないですかというふうに提示する第1案として少人数化というのが出てくるというのは、多分、そのようなイメージなのかなという気はするので、それは自由度を与えるところと、もう何もわかりませんというような自治体があれば、そこには少人数化からまず始めませんか。その基準となるのは、少人数化をできるだけの予算をまず与えながら、一部は自由にしていいですよ、一部はわからなければ、その予算で少人数化をやってくださいよというような流れにあれになるのかなという気がしますけどね、そこを整理すると。

【髙橋初等中等教育局財務課長】  ありがとうございました。ほかに。

【山中官房長】  赤井先生のほうで、15ページのところの具体的な設計ということで一括交付金、今のような話が、だんだん基本的なところはやっておいて、お金は与えて、かなり自由に使っていいと、使い道の最低限の基準としてはこういうことをつくるけれども、プラスアルファをどこにつけるのは、それぞれの自治体に任せたらどうかと。そしてアウトプットを重視するということにしましょうと。徹底した権限移譲、学校がやっぱり自分で決められるという、そこの制度的なものについての基準性を非常に緩くしていって、弾力的にやらせましょうと。これも大体、皆さんそう言うと思うんですよね。ですから、最低レベルの基準づくりと評価体制づくり、これは重要だと。これもみんな賛成するんですが、先ほどの副大臣とも関連するけれども、徹底した結果責任のところなんですね。つまり、そうなると、人事権とか財源にしても、それは学校を設置している人が持つというのが当たり前の話で、どこの市町村だって、自分の市町村の職員は市町村が雇うんですよね。ところが、義務教育、小中学校に限っては、自分の市町村は雇わないで、金も自分のところは出さないで、それでいて結果責任だというのはちょっとおかしいので、やっぱりそこは、となると、またさっきの規模の話になってきて、はっきりさせたいにもかかわらず抵抗が働いて、そこで昭和16年にそういう体制になったにもかかわらず、戦中体制のままで、戦後一たん切れましたけれども、ずっとその形になっているので、どうも責任の所在がはっきりしないというところがもやもやしたところの一つにあるんですけれども、そこはどういうふうにすれば。

【赤井氏】  ここで書いた意味は、権限とか結果というのもいろいろあると思うんですけれども、まず、イメージとしては、国が最終的な責任を持つと。結果責任も持つと。例えば、これは極端ですけれども、日本語があまりしゃべれないまま大きくなっちゃうというようなことは、日本として許されないので、自治体に責任を持たせることはいいと思うんですけれども、ある程度、国がお金を出しているというからこそ、国は口を出せるわけです。そこで国がお金を出して、一種の契約みたいな、委託みたいなイメージでもいいと思うんですけれども、こういう結果責任を出して、こういう成績、ちゃんと出してもらうというのを条件としてお金を渡して、あなたに教育をしてもらいますよ、あなたに給料を払います。それができない場合は、市町村とか都道府県もありますけれども、そこをまず任せて、それでもできない場合は国が入るとか、そこはいろいろあると思うんですけれども、最終的に国が格差を是正する義務があるということなので、最終的にはそういうような責任は国が持っている。いいかげんに教育をやっていて、成績が悪くても給料をもらって普通に退職していくというような状況ではなくて、責任を持った状態でないと、逆に自分でやるという意識が生まれないのかなという整理なんですけれども、どうでしょう、答えになっていますでしょうか。徹底的に介入しというのはいろいろ難しいと思うんですけれども、そこのレベルがいろいろあって、最終的には、もう自治体に任せても、校長は頑張っている、頑張っていると言うんだけれども、どう見てもレベルは最低で上がらないとなれば、都道府県に任すけれども、都道府県がやっても上がらないとなれば、最終的に国が何とかしないといけないというのは、最後の最後の責任は国にあるということだと思うんです。

【鈴木副大臣】  もやもやの続きを言うと、そういう全体のデザインとか制度設計とか、それは当然、国がやるんだと思うんですね。これは僕も全然、最近フォローしていないんですけれども、逆に教えてほしいんですけれども、例えばゲーム理論とか行動経済学と言うと、47のプレーヤーというよりも、むしろ、6とか、何を思ったかというと、秋田が伸びたことで、山形の知事と福島の知事はものすごく反応していますよね。今、ものすごく県単独予算をつけて、劇的な勢いで福島県は、要するに県単職員の増というのを、特に新しい知事になってからやっていて、これの成果があと3年後ぐらいに出てくるのか来ないのか、ものすごく僕は注目しているんですけれども。それから、例えば北陸3県は、やっぱりあの3県でものすごく緊張感を持ってやっていますよね。だから、3とか6とか、そういうわりと認識しやすいというか、意識しやすいライバル県というか、そういうリーグをつくっていくと、例えば四国リーグとか、それはやっぱりある程度の意味があって、そこはそれなりの健全な競争が起こるというのはある程度、さっきの鳥取と東京はお互いに全然土俵が違うよねということだけど、東北だったら、大体、地域状況も同じで、ちょっとガリバーの宮城がありますけれども、にしても、そういうようなことが今、現にいい意味で起こってきていると。だから、そういう中で、さっき言った大きな3つのカテゴリーで、例えば離島僻地を抱えているところでも、やっぱり北海道は広いんじゃないですかというのがあって、それはやっぱりガバナンス上、何らかの問題をはらんでいるんだろうと。だから、そのグループの中でやるべきことをやっていないんじゃないですかというようなことはある程度、言えるのかなと。ただ、わかりません、それは別に検証があるわけじゃないですけれども、若干の思いつきというか、この半年間ぐらいのオブザーベーションと、それぞれの教育長とか知事のビヘイビアを見ていて、そんなことは思ったりもするんですけれども。

例えば、私なんかも赤井先生のご提案のとおり、義務教育国庫負担全額、国が教育一括交付金にする、これはもちろんやりたいとは思いますけれども、なかなかそこに行けないとしたときの、例えばミニマム・リクワイアメントのところの補助率と、それから頑張った分の補助率を若干変えて、だから、福島とか山形なんかはすごい頑張っているわけですね。こういうのは多少応援したいと。それから、一方で、今回も高校無償化のときによくわかったんですけれども、奨学金制度は県の仕事だということで、ちゃんと仕切っているにもかかわらず、この3ページで少人数化を達成している自治体への対応みたいなところで、そこを、要するに他に流用するような県からひっぺがして、むしろ、福島とか山形みたいに一生懸命頑張っているところに財源として充てたほうが、ある意味では頑張る県は助けるみたいな、そういうポジティブな競争をやや刺激しながら、もちろん、ミニマム・リクワイアメントは、標準法の枠組みで、今日の小川先生のお話を参考にしながら、ベースにするみたいな、そういう、わりとハイブリッドな形をもうちょっといろいろ議論を深めていくのかなという、今日は感想なんですけれども。ということなんですかね。いや、難しいことはよくわかりますけれども。

【赤井氏】  いやいや、そういう案もあるんですかね、段階的に。ナショナルの部分はどういうふうに決めていくのかということがありますけれども、絶対、みんなが思う部分と、どうかなというところで、国の負担度を変えていくというのは受け入れられやすいかもしれないですけどね。ちょっとわからないですけれども。

【髙橋初等中等教育局財務課長】  今日は大変示唆に富むご意見をいただきまして、今後、この有識者ヒアリングでいただいた意見などもまとめながら、少し来週から中教審でも集中的にご審議をいただくことにしておりますので、また今後ともよろしくお願い申し上げたいと思います。そのほかなければ、本日はこのあたりでよろしゅうございましょうか。それでは、時刻にもなりましたので、以上で第3回目のヒアリングを終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

── 了 ──

 

 5.出席者

小川正人氏(放送大学教養学部教授)、赤井伸郎氏(大阪大学大学院公共政策研究科准教授)

お問合せ先

初等中等教育局財務課

電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2567)