2010年5月11日
岩立京子(東京学芸大学)
よい教育や指導法は多様である。しかし、いずれにしても子どもの発達に適したものでなければ、その効果は限定的であるか、逆に発達や学びを阻害するものになりかねない。
ここでは、乳幼児期から児童期への発達に適した質の高い学びを生み出す今後の接続の在り方を考える。
古典的研究にみられる乳幼児期の知的な発達の特徴(例 ピアジェ、J.の認知発達の段階)
感覚-運動期(0-2歳)
感覚と運動(活動)を通して、環境に働きかけたり、新しい場面に適応する時期
イメージのルーツがある
前操作期 *前概念的思考(表象的思考)(2-4歳頃まで)
具体的操作期 (7、8歳-11、12歳頃まで)具体的な状況や日常的活動において論理的思考が可能となる。
近年の研究にみられる乳幼児期の知的な発達の特徴(ピアジェ以降の認知発達の研究者)
子どもの知的な発達は過小評価されている。それは、子どもの生活の文脈からかけ離れた質問や、抽象的な言葉で質問されたりするので、子どもは実力が発揮できなくなる。様々な実験を工夫して、かなり早い時期からの子どもの知的な能力を検証している。
ピアジェはある段階の子どもは、どのような分野・領域であれ、その段階の特徴的な思考を示すと考えたが、領域ごとに固有な知能(言葉や、論理―数学的、身体―運動的知能など)が体系化されていく過程として認知発達を捉える考え方
一般的には4、5歳から他者の信念や感情、あるいは他の心的状態を推論することができるようになる。課題に慣れさせたり、言語を媒介として質問をしない実験方法を工夫すると、2歳代でも推論できる(シーガル、外山訳、2010)
出来事表象あるいはスクリプト(生活の「見通し」の基礎となる力)
出来事の時系列的な表象(イメージとほぼ同意)。4歳代から5歳代にかけてスクリプトが形成される。自己を調整する力などともに、人から指示されなくても、自ら行動するための基盤として機能する。
各領域の能力をより自覚的に機能させる働きをする。この力は、「内省力」(reflection)と「動機づけ」とともに、自律した学習、概念の理解、知識の構造化という3つの今日的学習課題に影響を及ぼす要因である。(Paris & Cunningham, 1996)
例 意図的に記憶するためには、記憶することについてある程度、知識をもっていたり、記憶について自分が今、どのような状態にあるのかを振り返り、考えたり(monitoring)、うまく記憶できるように自己制御できる能力など。
この力が幼児期後期から児童期初期に芽生えるので、あまり自覚しない学びから、自覚的な学びへの変化と関わっている可能性がある。
幼児期から児童期への発達の特徴
初等中等教育局幼児教育課