幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議(第6回) 議事要旨

1.日時

平成22年5月28日(金曜日)17時~19時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室(3階)

3.議題

  1. 幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について

4.出席者

委員

無藤座長、岩立委員、榎沢委員、太田委員、岡上委員、押谷委員、神長委員、神村委員、岸本委員、木下委員、河野委員、嶋田委員、角田委員、北條委員、山本委員、湯川委員

文部科学省

金森初等中等教育局長、濵谷幼児教育課長、梶山教育課程企画室長、津金幼児教育課教科調査官、坂下幼児教育課子育て支援指導官 他

オブザーバー

(厚生労働省)丸山保育指導専門官

5.議事要旨

  • 事務局からの配付資料の確認の後、幼児期の教育と小学校教育との接続に関して、委員からプレゼンテーションが行われた。その概要は以下のとおり。

(1)榎沢委員から、幼児期の教育と小学校教育との接続に関して意見発表があった。その後、質疑応答の時間が行われた。

(○は委員の質問、●は発表者からの回答)

○ 小学校の低学年だと子どもが話すというのはなかなか難しいが、あるクラスの授業を見たときに、とてもよく子どもたちが話し合っている場面があった。担当の先生に話を聞くと、授業だけではなく、朝のスピーチをはじめ、いろいろな場面で話す機会を設けているとのことであった。子どもが自由に話をし、先生がほめたり、ひきだしたりしながら、話をすることの積み重ねが授業の中でも話をするということにつながっているとのことであった。先ほどのお話もそうだが、こうした取組が小学校での授業の充実につながっていくと感じた。
● 子どもを早く学校の授業スタイルに合わせることを考えてしまいがちだが、子どもは、学校生活に適応しようとする意思は持っているので、そこの部分を見てあげると、いろいろな手立てが出てきて、結果的に子どもは話せるようになる。皆が話すことを温かく見てもらっているという経験が大切である。子どもへの援助としては、幼稚園でやっていたことが小学校でも役立つと思われるので、幼稚園と小学校の教員が違いを認識した上で、考え方を共有することが大切だと考える。

(2)岸本委員から、幼児期の教育と小学校教育との接続に関して意見発表があった。その後、質疑応答が行われた。

(○は委員の質問、●は発表者からの回答)

○ 平成5年から7年に研究開発学校の指定を受けていたということで、資料のp5のカリキュラム表には10の視点が記載されているが、これはどこから出てきたのか。領域や評価との関係はどのようになっているのか、もう少しご説明願いたい。
● 子どもたちの日々の実践を教師が見取った学びのカードを基に10個の視点を立てたものであり、子どもの姿や現場の教員の中からから出たものである。5領域との厳密なつながりまで問うたものではない。
○ 平成18年からの研究の中で、幼小が一緒に指導計画をつくることがとても大変だったとのことだが、指導計画ができて実際に活動に移った場合でも、幼小では見ているものや見えているものが随分違うのではないか。先ほどのお話では幼小で一緒に指導案をつくったことで納得できたとのことだったので、その納得できたことをもう少し詳しくご紹介願いたい。
● 昭和51年以来、ずっと幼小で交流をやってきた中で、幼小で言葉がかみあわない、幼小で別々の指導案があって、交流をしても通じない、反省会をしても通じないなどといったことがずっとあった。幼小で使用する言葉やフォーマットを協議し、連携して一つの指導計画をつくりあげたことが納得につながっている。内容的な納得というよりも気分的な納得という意味である。

(3)山本委員から、幼児期の教育と小学校教育との接続に関して意見発表があった。その後、質疑応答の時間が設けられたが、特に質問はでなかった。

(4)神村委員から、幼児期の教育と小学校教育との接続に関して意見発表があった。その後、質疑応答が行われた。

(○は委員の質問、●は発表者からの回答)

○ 総合単元活動についてだが、生活科に国語や図画工作などの内容を加えて、180時間程度の時数をとるということは、国語や図画工作の時間を減らして実施ということなのか。また、評価、例えば指導要録の記載はどうされているのかをお聞きしたい。
● 総合単元活動は活動に加え、活動したことを基にして作文等の文章を必ず書かせているので、こうした活動については、国語の授業時数を充てることができる。また、これらの作文等を評価の対象としている。図画工作についても作品を評価し、同様の考え方でやっている。
○ そうなると、幼児教育と小学校教育とのすり合わせしていかないと構想が難しいのではないか。例えば、基地ごっごというようなテーマをめぐって、いろいろな教科のねらいも含んで実施していくということか。
● しっかり遊ばないと文章も書けないので、子どもたちは本気で遊んでいる。例えば1年生ではメタセコイアの木に大きなロープを吊してブランコごっこをしながら、子どもたちは揺れる体験やそこからできてくるいろいろな遊びを工夫する中で、いろいろな発見をしており、それらを基に書かせたりするような時間に持っていくようにしている。

(5)各委員からの意見発表及び質疑応答の後、全体を通じた意見交換が行われた。その概要は以下のとおり。

(○は委員の発言(発表者への質問を含む)、●は発表者からの回答)

○ 本日のご発表の取組は子どもの姿をよく見ており、子どもが学んでいることを踏まえて書かれている。子どもがどういう存在かをきちんと見る力が必要であり、それには教員養成の段階の役割が大きい。現場に行ってからも、子どもがどのように生きて、どのように物事をつなげて、どうやって環境を理解しているかということを知識のみならず、実際にそこで起こっていることから捉えていくことが必要である。そのためには、教職員の協同性をどう高めていくかが重要だと考えるが、実際にどんなご苦労をされているのか、お聞きしたい。
● 市に公立の幼稚園は4園あるが、すべて認定子ども園になっており、幼稚園と保育所が一緒になっている。午後は幼稚園の子どもは帰るが、保育所の子どもは残る。保育所の保育士は子どもたちと1日過ごすことになるので、研修の時間がなかなかとれない。スタッフの増員により研修時間を確保できるようにすることが必要だと考える。
● 幼小中の教員が集まって大変だと思ったのは、子どもの発達、すなわち幼児、児童、生徒の違いからくるものだと思うが、言葉の使い方が違うということであり、教育の形態、教師の持っている雰囲気、支援の考え方が違うということである。また、研究会の時間を設定することがなかなか難しい面がある。
  そういったことを越えて研究を進め、結果としてできたのは「子ども」や「学習」など幼小中で使う言葉を揃えることができたということである。指導案の作成でも以前は小学校の教員が主で幼稚園の教員が補助的な立場で関わっていたが、幼稚園の教員も全面に立って学習を展開できるようになった。子どもの学びを皆で一緒になって見るところをスタートラインにおいて研究を進めたことがよかったと思う。
○ 小1の入学時の段階で学習する力にかなりの差があると思う。遊びの中で、50、100と数を数える子どもたちもでてくるとのことだが、かなりの個人差が出てきているのではないか。資料1のp3に、「基礎的な経験活動のうち、言語に関するもの、数量形に関するもの、体育的活動に関するものなどについては、特に取り上げて検討し、3才から7才までを通して順序、段階或いは系統などを整理している」とあるが、小1に入学する際に、どの程度、学ぶ力を身に付けているのか。個人差など支障の無い程度になって上がっていくのか。具体的なところを紹介してほしい。
● 3歳から7歳の教育課程の研究開発ということで、例えば、子どもたちの遊びの中での言語が幼稚園ではどのように体験しているのかを5歳までのカリキュラムを考え、6歳は小学校の立場でそれを受けて同じような形でスジを通していくということをしてきたので、子どもたちは違和感なく小学校に入学したのではないかと考えている。
○ 幼小の「接続」をどう考えるか。幼稚園で遊びの充実に取り組むほど、小学校での教科教育との違いがでる。幼小の「接続期」をどのようにとらえればよいかということになるのかもしれないが、幼小の学習スタイルの違いをどのようにお考えか、お聞きしたい。
● 3歳、4歳、5歳の子どもたちの発達をとらえた指導が大切である。幼稚園、小学校とも互いの充実を図りつつ、連携を進めることが重要である。
● 今日話が出た内容について自分も非常に共感を持つ。自分でも接続というよりも小学校への切り替えと思っているところが課題だと思った。幼児期と小学校とのつながる期間における連携をさらに深めていく方法があればよいと考える。
● 小学校では遊びや活動に夢中になる姿だけでは必ず批判される。何を学んだのか。学習指導要領のどの内容を習得したかが問われる。本校でも活動することがどういう力になっているのかを明確にしなければならないということで、自尊感情を高めているという視点から、総合的な学習の時間の活動を再評価してみようという取組を今やっている。幼児教育の中でも、幼児期以降のその後一生にわたっての学ぶ力を培うんだという視点で成果を明確に捉える必要があると考える。 

  • 座長から、次回はこれまでの各委員の整理した上で、更に議論を深めていきたい旨、発言があった。
  • 事務局から次回の会議の開催日時について説明があり、閉会した。

 

 

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