今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する意見(全国高等学校長協会)

平成22年3月2日

今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する意見

                         全国高等学校長協会

(1)学級編制について

〔1〕現在の学級編制標準40人は平成5年度から据え置かれたままであり、早急にその削減を要望する。

○平成16年度の学校基本調査によれば小学校の84%、中学校の62%が35人以下の学級数という。高校もすみやかに35人以下とすべきである。

○高校全入時代で学校の多様化が進み、また、同時に社会の変化に伴って生徒の状況も大きく変化してきている。授業の質を高めるためには40人単位の一斉授業では難しい。一人ひとりの習熟度に応じたきめ細かい指導態勢が是非とも必要であり、そのための少人数単位での授業展開が望ましい。

○近年は知識中心から思考力や表現力など多面的な能力の開発が求められている。そのために調べ学習やグループ学習・作業学習などが工夫され実践されている。しかし、教材不足や教室の狭さがネックとなる。いずれも少人数での授業なら困難はある程度解消する。

〔2〕学級は学校生活の基本の最小単位であり、学校行事などの実施単位ともなるのである程度の人数が必要と考えるが、授業を行う視点でみると少人数の方が良い。そこで、学級の標準となる定数と教科指導の定数とを分けて設定できないものか。すなわち同時展開の条件の緩和を検討してほしい。

(2)教職員定数改善について

〔1〕習熟度別授業は効果もあるが、問題点も指摘されており、少人数授業の枠に一本化し、授業展開は各学校の裁量に任せてほしい。

〔2〕円滑な学校運営のために副校長(教頭)の複数配置を完全実施とする。近年のコンピュータシステム化によって学校の事務処理は一層肥大化している。副校長(教頭)も事務処理に追われて機能不全に陥り、学校造りのリーダーシップを発揮するどころではなくなっている。事務処理を減ずるとともに、ワークシェアリングの考え方でもう1名副校長(教頭)をおいて、服務管理と企画・指導に分けるなど分業体制を確立することが必要と考える。

〔3〕PDCAシステムの導入によって授業計画・週案の作成や成果報告書・授業評価アンケートの集計・分析、教科書採択理由書や審査報告書など授業そのものというよりも周辺業務が一段と拡大した。また、総合的な学習の時間や奉仕、職場体験の導入も教育効果は期待できるにしてもあまりにも負担が大きい。修学旅行・遠足等校外行事の企画・立案・現地視察などでは旅行業者の介入が認められないために旅行業者並みの仕事を強いられている。加えて、各種研修会への参加・事前研修届け・事後報告書の作成、学校外への情報提供や様々なサービス等数え上げたらきりがない。近年ではコンピュータの導入によって機器やソフトの保守・管理まで加わっている。これでは本来の生徒に向き合ったきめ細かい指導がなおざりにされかねない。教員の負担軽減が急務であり、そのための教育事務支援員の派遣を検討してほしい。その業務は、各種資料の印刷、整理・保管、統計資料の作成や集計・製本・分類・管理、校内のロッカーやパソコン、机・椅子・カーテンなどの物品の日常的な管理、等さまざまなことが考えられる。

〔4〕分掌の仕事も拡大しており、分掌専門の教員の配置があっても良い。現在、教務主任や進路主任・生徒指導主任には持ち授業時数の4ないし6時間ほどの軽減が認められているが、各学校の事情を考慮して軽減幅の拡大をしてもらいたい。また、主幹は副校長の補佐を重視して、持ち授業数を軽減する。例えば上限を10時間と定めるなどしたらどうか。同様に、主任教諭にも時間軽減を認めてほしい。

〔5〕担任は一つの学級に一人であるが、実際には副担任が必要である。たとえば、2学級に1人など、副担任も定数として参入する制度を導入して欲しい。

〔6〕生徒の質の変化に伴って生徒指導が難しくなってきている中で、部活動での指導は大きな教育効果を上げている。しかし、教員の負担も大きい。そうした点を考慮し、授業持ち時数の柔軟な運用や外部講師の派遣の拡大および外部講師の権限の在り方について考えて欲しい。とくに土日の部活動の引率や練習指導などは本来休養に充てるべき週休日に行われており、教員の休養や研修が犠牲になっている面もある。同様に、PTA活動や保護者会などの休業日での業務も正当に評価されていない。きちんと振り替えが保障されるべきと考える。

〔7〕土曜日の活用が拡大される傾向にある。週休日の振り替えが保障されるにしても、それは授業等の関係で長期休業期間内に取らざるを得ない場合が多い。加えて、保護者会・PTA活動や部活動の指導が入ると、1週間全く休みを取ることができない事態も発生する。すでにそのような状況は頻繁に起きており、労基法上も課題がある。こうしたことで教員は疲れ切っており、これではゆとりある生徒指導など難しい。

〔8〕以上のような点からも、教職員の定数増と教育事務支援員の配置、主幹、主任教諭等の持ち授業時数の軽減を要望する。

 

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