7 スクールカウンセラーの対象1-人

  学校に所属するあらゆる人がスクールカウンセリングの対象である。ただし、スクールカウンセリングの最終目的は、担当する学校の児童・生徒の利益となるための援助であるから、スクールカウンセラーの第一義的な対象は、学校に所属する児童・生徒である。その他の人々は、児童・生徒とのかかわりにおいてスクールカウンセラーの対象となる。

(1)生徒

  配置された学校に所属する全ての生徒が、第一義的にスクールカウンセラーの対象である。症状や問題を抱えた生徒だけがスクールカウンセラーの対象であるのではない。

  • 症状や問題を抱えた生徒
      本人とのカウンセリング、その生徒に関係する教職員とのコンサルテーション、協議の対象である。相談内容については、守秘すべき内容と報告すべき内容を、スクールカウンセラー自身が確定して報告する。来談の事実それ自体は、原則的に学校に報告するべきである。
  • 症状や問題行動を呈するまでには至らないが、日常的な悩み、相談事をもった生徒
      カウンセリングの対象である。この場合、相談内容や来談の事実それ自体をどこまで守秘するかは、その時々の学校の状況と照らし合わせながら、スクールカウンセラー自身が主体的に判断していかなければならない。
  • 一般の生徒
      メンタルヘルスの観点からスクールカウンセリング活動の対象である。特に危機対応の場面では、全ての生徒のストレス状況を把握しなければならない。

  全ての生徒がスクールカウンセリングの対象であるので、スクールカウンセラーは、全校生徒に認知されている必要があるし、ふだんから全校生徒と良い関係を保っておかなければならない。そのためには、可能なかぎり学校行事に参加することが望ましい。また新しい学校に配置された年度の初めには、全校集会などで全生徒に紹介されることが望ましい。
  認知を得るために、「カウンセラー通信」などの印刷物を全校生徒に配付するのもよい方法であるが、必ずそれを発行しなければならないというものではない。
  生徒の学年、クラス、氏名については、クラス名簿などを入手し、来談生徒が誰であるのかを把握できるようにしておくべきである。

(2)保護者

  生徒の保護者や家族は、生徒との関わりにおいてスクールカウンセラーの対象となる。

  • 症状や問題を抱えた生徒の保護者
      保護者カウンセリング、その生徒に関わる教職員とのコンサルテーション、協議の対象である。相談内容の守秘については、生徒の場合と同じである。
  • 自身の問題を抱えた保護者
      保護者自身の問題が、子供である生徒に影響するという意味で、カウンセリングの対象である。この場合の相談内容については、一般成人のカウンセリングと同じように厳重に守秘されなければならないが、生徒にとって著しく不利益となるような内容、例えば生徒への虐待の事実などはそのかぎりではない。
  • 一般生徒の保護者
      メンタルヘルスの観点からスクールカウンセリングの対象であるのは生徒の場合と同じである。特に心のケアを必要とする危機的な状況では、保護者説明会などを開催し、専門的な観点からの情報を提供することによってその動揺を鎮めなければならないが、それはスクールカウンセラーの重要な業務である。

  生徒の場合と同様に、全ての保護者がスクールカウンセリング活動の対象となるので、PTA主催の講演、その他の行事などにも積極的に出席し、スクールカウンセラーの存在を認知してもらうよう働きかけることは重要である。

(3)教職員

  • 問題生徒に関わる教職員
      コンサルテーションの対象である。ここで注意しなければならないのは守秘についてであるが、対象となる児童生徒がスクールカウンセラーとカウンセリング関係を結んでいるかどうかによって、守秘のあり方は変わってくる。クライアントである児童生徒が対象となるときは、その児童生徒との面接内容のうち何を守秘し何を話すべきかは、スクールカウンセラーが主体的に判断し決定しなければならない。その場合、「カウンセラーは生徒の情報を抱え込み何も話してくれない。」といった批判を受けることのないよう、言葉遣いなどに最新の注意を払わなければならない。
      クライアントではない児童生徒のコンサルテーションでは、学校組織の一員として、教育公務員の守秘義務に準じた情報の取り扱いを行なわなければならない。
  • 自身の問題を抱えた教職員
      カウンセリングの対象である。面接内容の守秘は重要であるが、それが生徒の不利益となるような内容である場合は、管理職に報告しなければならないのは前述のとおりである。
  • 一般教職員
      メンタルヘルスの観点からスクールカウンセリングの対象である。危機的状況では、その危機に対応する教職員のメンタルヘルスに特に注意を払うことが重要である。特に重大な危機に際しては、必要に応じて教員のストレスチェックなども行なわなければならない。
  • 新任教職員
      新任教職員のメンタルヘルスには特に注意しなければならない。ストレスに耐え切れず不祥事を起こすといったことがないように、ふだんからストレスについて気軽に話してもらえる関係を作っておくことが重要である。

(4)地域の社会資源

  地域の社会資源と良好な関係を維持しておくことは、スクールカウンセリングを円滑に行なううえで重要である。特に連携先である心に関わる地域の社会資源、即ち、病院、クリニック、教育センター、子供センター、保健センター、補導センター、少年警察、などとは、日常的に信頼関係を作っておくことが重要である。また、それ以外の地域の資源、例えば公民館、児童館や地域の文化、福祉などにかかわる資源などとも、講演や講話を通じて良好な関係を作ることが望ましい。

(5)校区小学校

  中学校区の小学校はスクールカウンセラーの担当校である。従って小学校の児童、保護者、教職員も全て上記の(1)~(3)と同じ扱いでスクールカウンセラーの対象であることを忘れてはならない。
  勤務の空き時間があれば、要請がなくても積極的に小学校を訪問することなども行なう必要がある。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課