児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(令和2年度)(第2回) 議事要旨

1.日時

令和3年2月26日(金曜日)11時00分~13時00分

2.場所

 Web会議

3.議題

  1. コロナ禍における児童生徒の自殺等に関するヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

    新井委員,内野委員,川井委員,窪田主査,阪中委員,松本委員
 

ヒアリング協力者

    東京都教育相談センター,東京都教育庁指導部主任指導主事,特定非営利活動法人BONDプロジェクト
 

文部科学省

    江口児童生徒課長,鈴木生徒指導室長,伊藤専門官
 
 

5.議事要旨

※議事に先立ち,主査より挨拶があった。
※事務局より配布資料の確認があった。

【主査】 議事に入るが、今回のコロナ禍において、児童生徒より悩み等の相談を直接受けておられる機関からヒアリングを行うこととなった。まず、取組について20分ほど説明していただき、それぞれの説明に対して10分ほど質疑応答を行いたい。
初めに東京都教育相談センター及び東京都教育庁指導部に説明をお願いしたい。
【東京都教育相談センター】 東京都教育相談センターです。当センターからは、令和元年度、また令和2年度については令和3年1月までの東京都教育相談センターの取組について説明したい。
東京都教育相談センターの相談事業としては、電話相談、来所相談、メール相談、SNS教育相談を実施している。その他に、高校進級、進路、入学相談、さらに、教職員等からの児童生徒理解に関する相談を受けている学校等支援事業、区市町村や都立学校と教育相談の連携を図る事業、学校問題の解決に向けた支援を行う学校問題解決サポートセンター事業など、教育相談に係る事業を多岐にわたり展開している。本日はそのうち、電話相談と来所相談、メール相談について、また、学校等支援事業の1つに位置づけられる、児童生徒等に係る事件や事故が発生した際に、心のケアと学校の教育活動の正常化に向けた支援を行う緊急支援についての概況を説明したい。
初めに、資料「令和元年度東京都教育相談センター電話相談の概況」について、資料の数値は、東京都教育相談センターでは、相談の延べ数を回数として表し、同一の相談者からの相談を件数として記載している。なお、これから口頭でお伝えする令和2年度1月までの数値は、全て暫定値であることに留意願いたい。
まず、電話相談について、当センターの電話相談は、東京都の教育相談一般、いじめ相談ホットライン、加えて文部科学省の24時間子供SOSダイヤルがあり、全てフリーダイヤルで相談を受けている。電話相談の回数は、令和元年度は1万5,359回、令和2年度は1月までだが1万3,980回、ほぼ例年と同程度である。令和元年度相談者別回数と年齢段階別回数について、例年、保護者等からの相談が6~8割で、子供本人からは2~3割、年齢別の相談では、小学生と高校生に関する相談が29%、中学生に関するものが25%で、令和2年度もほぼ同様の傾向である。
相談内容別回数については、上位の項目を載せている。上段の棒グラフは、保護者等を含めた回数、下段は子供からの相談を上段から抜き出した回数である。上段について、令和元年度の順位は家族関係、いじめ、友人関係、学校・教師への苦情の順番、令和2年度は1月までで、家族関係が1,816回、第2位に、ここが少し昨年度と違い、情緒不安定が入って1,291回、第3位に学校・教師への苦情で1,028回、第4位に友人関係で1,001回と順位の変動があった。
続いて、子供からの相談を抜き出した部分について、令和元年度は、友人関係が546回、情緒不安定が509回、家族関係が410回、いじめが399回の順で、令和2年度は1月までは、1位が情緒不安定で916回、2位に友人関係で515回、3位に家族関係で442回、4位にいじめで250回である。本年度の特徴としては、情緒不安定に関するものが、保護者と子供ともに昨年度の違いで上位を占めた。
なお、棒グラフには記載はないが、自殺・自傷の相談回数を取り上げると、令和元年度は176回、うち自殺の相談は107回、令和2年度の1月までの自殺・自傷の相談回数は211回、うち自殺の相談は118回と、既に1月の段階で令和元年度の総数を上回っている。この数値は、子供からだけではなく保護者等も含めた数値だが、そのほとんどは死にたいぐらいつらく苦しい思いをしているといった希死念慮の相談であり、自殺・自傷の相談は様々な原因が重なって、学校や家庭でのいづらさ、生きづらさを感じ、希死念慮につながっている。
続いて、令和元年度の来所相談の概況について、令和元年度の相談件数は558回、相談回数は6,816回、令和2年度は1月までは、相談件数は468件、相談回数は4,420回。同年度4月、5月の緊急事態宣言下では新規の受付は行わなかった。また、継続で相談している方について、来所か電話かの希望を聞き取った上で、相談者の希望にかなう対応を行った。来所相談内容別件数は、令和元年度と令和2年度の1月までの傾向は同じで、件数の順位も変わっていない。年齢段階別件数は高校生が多いが、この点については小・中学校においては、区市町村の方で教育相談を多く行っていることによるものである。自殺・自傷の相談件数は、令和元年度は11件、うち自殺の相談は4件。令和2年度の1月までの暫定数は、自殺・自傷を含めて6件、うち自殺の相談は1件。
続いて、令和元年度のメール相談の概況について、令和元年度の相談回数は257回、令和2年度1月までの暫定回数は218回と、ほぼ例年と同じである。相談内容は、令和元年度の第1位が、学校教師への苦情で67回だったが、令和2年度の1月までは暫定数として71回で、やはり第1位である。第2位、第3位について、令和元年度はいじめ、相談の問い合わせの順で、令和2年度の1月までは、進路、学校選択の順で、進路が18回、学校選択が13回となっている。相談の特徴として、コロナ禍による海外留学に関するものが例年より多くあった。年齢段階別回数及び相談者別回数は、令和元年度と令和2年度の1月までは同様の傾向だった。
自殺・自傷の相談回数は、令和元年度は0回、令和2年度1月までは暫定数として2回、うち自殺の相談は0回だった。
最後に、事件・事故が発生した際に、学校の支援を行う緊急支援の概況について、令和元年度の件数は26回で、そのうち自殺案件は14件、令和2年度は1月までは25回、そのうち自殺案件は19件と既に令和元年度の件数を超えている。自殺の原因は詳しくは分からないということがほとんどだが、周辺の状況からは精神の不安定で、既往症や自傷があるや、家族内の不和、進路、友人関係等に悩んでいることが複合的に絡んでいることが多くある。また、行動として、SNSに自殺をほのめかしたり、お別れのようなことを書き込んだり、インターネットで自殺について調べているなどの例も見受けられた。昨年度と令和2年度の自殺数を比較すると顕著に増加しているが、女子の自殺者数が昨年度と比べて1月までの時点で8名増加しており、このことから児童生徒全体の自殺者数の増加は、ほぼ女子が多くなったことによるものということが分かる。また、特徴的なこととして、女子のうち、特に高校3年女子に関しては、昨年1名だったものが9名となって、顕著に増えていると考えられる。
【東京都教育庁指導部】 SNS教育相談の概況について説明する。SNS教育相談は、平成30年度から、2週間試行し、昨年度から通年で本格実施しており、今年度2年目である。
まず、昨年度の実施状況について、昨年度から対象を都内国公私立在学の中学生、高校生に広げて実施しており、心理カウンセラー資格を有する相談員が一対一でチャットによる相談を受け、通常時は5回線を準備し、同時に5人まで相談を受けることができるようにしている。特に夏休み終了前後の期間など、生徒が不安を抱えやすいと考えられる時期には、回線数を増強して対応している。
昨年度の実施状況について、まず登録数だが、こちらは友達登録をして相談に入ることになっており、開始当初1,753人から、昨年度末で1万6,543人となった。東京都教育庁が実施しているSNS教育相談は、東京都福祉保健局、そして都民安全推進本部が実施するSNS相談と同じアカウントで実施しており、この登録数には、他局のSNS相談で登録した方も含まれており、純粋に中高生だけがこの人数というわけではない。
次に、相談件数について、1年間で2,775件、1日平均7.6件、1件の相談にかかった時間は平均42分、チャットで42分やり取りをするということである。
相談件数は週ごとに集計し、相談件数の推移としてまとめているが、昨年度は、全体として上半期に多くの相談が寄せられ、特に新学期開始時期の4月当初、それか5月の連休後、そして教育相談センターが相談窓口の周知用カードを配布した時期である7月、また夏休み終了後から9月にかけて多く見られた。3月の第4週は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための学校の臨時休業の最中、高校進学への不安などが寄せられた。
時間帯別のアクセス状況について、開始時刻である午後5時台に最も多くの相談が寄せられている。相談者の性別では、昨年度は女子が約7割を占めた。校種比では、中学生からの相談が半数以上を占めている。学年別相談人数について、中学校、高校とも上級学年に進むにつれて、相談者が減っていく状況であった。1人当たりの相談回数について、1回だけ相談したという生徒を各月ごとに集計したところ、約7割の子供たちが月1回の相談をしている。主訴について、昨年度はいじめを除く友人関係の悩みが最も多く、次いで家族関係、学業不振、男女関係と続く状況であった。
次に本年度上半期の実施状況について、本年度は昨年度と同様に実施しているが、主な改善策として、相談終了に引き続いてオンラインでのアンケートを実施し、満足度などを把握する取組を6月から、また利便性の向上に向けて、時間外にアクセスしてくれた相談者に対して、翌営業時間になってこちらから相談を促すメッセージを配信する折り返し発信を5月からそれぞれ実施している。
本年度上半期の実施状況について、特に新型コロナウイルスの影響が見られるものなどを中心に説明したい。
相談件数の推移について、昨年度は新学期、そして新学年新学期が始まる時期に相談が大変多く寄せられたが、今年度は学校が再開した6月から相談件数が急に増えている。臨時休校期間の4月、5月は全体の相談件数は少ないものの、主に友人関係や家族間、そして学業不振に関する相談があった。
次に主な主訴の概要について、いじめを除く友人関係の悩みが最も多かった点は昨年度と同様だが、今年見られた傾向については、相談内容としては、自粛期間中に友達と会う機会が減って不安を感じたり、それから分散登校自体のこと、また分散登校によって仲のよい友達とグループが分かれたりしたことによる不安など、昨年とは違うものが見られた。
学業不振については、既に今年度上半期の相談件数で、昨年度1年間の相談件数を上回っており、主な相談内容としては、休校中に家にいる時間が長過ぎて勉強に気持ちが切り替わらないなどがあった。
家族関係についても、今年度上半期の相談件数が、昨年度1年間の相談件数とほぼ同数となっており、相談内容は登校自粛やリモートワークなどにより家族で過ごす時間が長くなり、勉強のことや生活態度のことで保護者と口論になるなどが見られた。
進路についても、今年度上半期の相談件数が、既に昨年度1年間の相談件数を超えており、内容は、新型コロナウイルスの影響が受験を及ぶことなどへの心配が見られた。
情緒不安定については、今年度顕著に見られた内容で、休校になったことや友人と会えないことに対する不安感などがあった。虐待については、今年度上半期の相談件数が昨年度1年間と同数に近い状況となっており、内容は、コロナの影響で収入が減って保護者からいらいらして叩かれたりなどがあった。
教員等への苦情については、体育祭などの行事を開催することに不安を持っているなどがあった。都教委としての教育相談の概況としては、以上である。
【委員】 1つは、東京都教育相談センターで来所相談、子供が延べ件数で2,807回来ている。子供が直接来ているということだが、来談の経路について、子供がどうやって来ているのか、学校に言われて来たとか、保護者に連れてられて来たとか、来談に至った経過について教えていただきたい。
もう1点、SNS相談体制について、登録者が対象者に比べると、64万人に対して1万6,000人であったものが、令和2年度は2万6,000まで増えているが、登録数はまだ低い。これは他府県でも同じような状況だが、登録を促すためにどのような方策があるか。どうやって登録し、ここにつなげていくのかという点が1つの課題になるかと思うが、登録を増やすために、どのように取り組まれているのか。または、逆に登録が増えない原因がどこにあるのかという点について教えていただきたい。
【東京都教育相談センター】 来所相談に至る経緯について、その多くはまず電話相談をやっていて、その中で来所してお話ししたほうがいいケースについて、相談員のほうから来所を促してつなげている。また、一部だが、学校から当センターの来所につなげる事例もある。大きくはその2つである。
【東京都教育庁指導部】 SNS教育相談の友達登録を増やす方法について、教育庁としても登録数を増やしていくことは課題と認識しており、まず名刺サイズのSNS教育相談を促すカードを、毎年、学校を通じて対象となる中高生に配布している。このカードには2次元バーコードが付いており、こちらからスマホのカメラで読み取れば、すぐ友達登録ができるようになっている。また、関係施設にポスターを掲示して相談を促したり、また各学校を通じ、子供たちにチラシをまく形で、年に数回子供たちに登録を促している。子供たちは、たとえ今は悩みがなくても、もしかしたら何か月後、半年後、1年後に、悩みを持つかもしれないということで、こうした周知については繰り返し行っていくことが大切かと思う。
もう一点、今まさに取り組もうとしているが、SNS教育相談は、無料通話アプリLINEを使っているが、そのLINEの中で友達登録を子供たちに促すようなLINE広告みたいなもの、そういったもので友達登録数を上げることができないかということで、今、業者と打合せをしながら進めている。
【委員】 相談窓口の周知について、学校で先生が直接子供たちにこういう相談窓口がありますということを知らしめていくことが一番大きいかと思う。そういう意味で、先生たちがSNSというものをどう捉え、その相談の在り方というのをどう見ているのか、場合によっては、否定的な見方をしている人もいるかもしれない。仮に深刻な相談が出たときにどうするのか、またどんな内容でやっているのかなど、大人の中にはSNSに対する拒否反応というものもゼロではないと思う。そのため、先生たちに対してどのように理解を広げ、その下で子供たちに、こういう相談の窓口があるということを周知のカードを配るだけではなく、先生が実感を持って伝えることこそが、ひいては先生に相談しようという気にもつながってくると思うが、学校の教員を通じた働きかけのような点については、どのように対応されているか。
【東京都教育庁指導部】 仰る通りかと思う。教育庁としても、なぜSNSを使った教育相談を実施しているかというと、子供たちがSOSを上げる、様々な方法が多様にあればあるほど、上げやすいのではないかという点にある。直接信頼できる大人に相談できる子供もいる一方、中々できない子供もいる。そうした場合、電話だとハードルが高いが、日頃使い慣れているSNSであれば、本当に気軽に相談できるのではないか。そうした気軽に相談をするという経験を積んでいくことで、本当に例えば重篤な状況に追い込まれたときに、相談してみようと、相談に対するハードルが下がるのではないかと思う。
そのため、教育庁としては、例えば学校の先生方に、学期ごとに生徒指導について、このような形で生徒指導をしてくださいとお願いした通知において、こうしたSNSの教育相談も含めて、相談窓口をしっかり周知し、子供たちに積極的にSOSを出してもらうということで進めている。今後も学校を通じて子供たちに周知していくが、SNSもSOSを上げるための一つの有効なツールだと認識しており、引き続き実施をしていきたい。
【委員】 SNS相談について、登録が少ないか多いかという点で、SNS相談なのでスマートフォンなどが必要な一方、対象の64万人の皆が皆持っているわけではない。この点をどう考えればいいのか。
【東京都教育庁指導部】 スマートフォンに関しては、高校生は9割以上、中学生は8割方の子供たちが使っているという教育庁の調査結果が出ており、かなり多くの子供たちがスマートフォンを利用し、SNSではLINEを使っているという調査がある。ただ、当然全ての子供たちがこうしたツールを使っているわけではないので、先ほどお示しした、教育相談を促すカードには、SNSの教育相談に加え、現在実施している様々な相談窓口を紹介しており、LINEといったSNSを使った形で相談ができない子については、また異なる形で相談してもらえるように周知をしているところ。現在の友達登録数は3万3,000人ぐらいであり、少しずつ友達登録は増えている。
【事務局】 家庭内不和の話でデータが出ていたかと思うが、児童生徒側は、要は長期間、家に、家庭内に滞在することで、家庭内不和として、児童生徒側は親の愚痴を聞かされる、親からお𠮟りを受けるといった相談があるのは分かったが、実際に、保護者からの相談も電話相談で来ていると思うが、保護者側については今回、令和元年と令和2年の違い、相談の質の違いは何があったか分かるか。
【東京都教育相談センター】 令和元年と令和2年における保護者側からの相談の違いについては、ここ最近は、新型コロナウイルス感染症に関しては際立った違いがある。つまり、当初は臨時休校措置をとったが、次第に学校内の対策も進み、休校措置は取らなくなってきた。一方、感染が爆発的に、最近まで2,000人というときもあり、とても怖くて学校に行けません、なぜ学校はやっているのかという相談があった。または、学校行事や修学旅行を東京都では止めていたが、緊急事態宣言の間止めているのであって、解除後もまた不安だという相談があったことが特徴的だった。
もう1点、子供が学校に通常通り学校に行っているときは、子供の勉強が、実は親からはっきりと見えていなかったのではないかということが分かった。つまり学校に行っていると目が届かないので、子供が勉強していると思っているが、家にいるとゲームばかりやって、勉強をちっともしない、困っている、勉強をやらないから勉強の内容が分からなくなる、そこで保護者が怒るとうるさいと親子げんかになるというところが、今年度の特徴だと思う。
【主査】 東京都教育庁からの発表と質疑はここまでとさせていただく。引き続いて、特定非営利活動法人BONDプロジェクトからの説明をお願いしたい。
【BONDプロジェクト】 10代、20代の生きづらさを抱えている女の子たちの支援ということで、2009年から活動しており、今回若年女性を取り巻く現状ということでお話しさせていただく。2006年に『VOICES MAGAZINE』というフリーペーパーを作ったことが、この活動のきっかけで、若年女性のありのままの声を聞いて表現できる場所を作る、伝える、つなげるという活動をしている。
【BONDプロジェクト】 配布資料では、LINE相談、メール相談、電話相談、面接相談、bond@あらかわとなっているが、今は荒川の相談室ではなく横浜の関内に相談室を開いて、直接の対面の面談を行っている。その他にもネットパトロール、街頭パトロール、今はコロナ禍で中止しているが、アンケート等を行っている。
【BONDプロジェクト】 長期にわたる包括的支援ということで、女の子たちはSNSやテレビ、また学校の先生から聞いた、友達から教えてもらったということで私たちのことを知ってくれている。更に、困っていても相談に来られないような女の子たち、声を上げられない子たちを自分たちでも見つけたいと思い、ネットパトロール、街頭パトロール、アンケート等で女の子たちを見つけて相談につなげることをしており、役割としては、動く相談窓口という気持ちでやっている。話を聞いて、家庭で暴力や虐待を受けている場合等はシェルターで一時的な保護等もしている。
2020年の1月から12月までの相談件数について、LINE相談は、アクセス数が4万5,829件で、対応できた件数は1万9,786件。メール相談は24時間受け付けていて、LINE相談は、今は週5回、8時間実施している。
問題の背景について、女の子たちは色々と気持ちや状況を伝えてくれるが、例えば寂しい、苦しい、しんどい、消えたいなど、そうした言葉の背景には、学校のことや家族のこと、性被害等の問題があって、しんどかったり、フラッシュバックが起きていたり眠れなかったりということもある。今年多かったのは暮らしのことや貧困、経済苦、食べるものがないなど、そうした相談も増えている。
資料の写真は10月に設置した相談室だが、神奈川県横浜市でカフェ型の相談室を開いた。10代、20代の女の子のための自立準備の家ということで、BONDプロジェクトではシェルターをやっている。公的機関につながれない、制度にたどり着けないような女の子たちがシェルターで暮らしながら自立に向けて頑張っている。例えば、17歳だが、もうすぐ18歳になるような女の子、児童福祉法による支援が終了して、でも家には居場所がない女の子がシェルターで暮らしながら学校に通っていたこともあった。更に、居場所のない大学生、学校には通えていて親が学費は出してくれているが家に帰れない、食べるものがないといった状況で居場所のない大学生等も、うちのシェルターで暮らして学校に通ったりしていた。
行き場のない女の子たちというのは、家では虐待や、安心できない、食べるものがないなど、そういう状況で過ごしている。これを学校の先生に話すことができればいいが、家のことは話せないという子が多い。学校の友達は、自分が作っているようなキャラがあって、悩んでいるとか困っていることを話すのが恥ずかしいという子もいるし、知られたら関係が崩れてしまうのではないかということで気にして話せない。学校の先生に話したいと思っているが、先生に話したら親に話されて、さらに虐待等がエスカレートするのではないかという不安から学校に相談できないという子もいる。
2017年10月に神奈川県座間市のアパート内で9人の遺体が見つかった事件についてだが、被害に遭った10代、20代だった女の子たちの接点が、SNSで彼女たちが自殺をほのめかすような投稿したところ、協力するふりを装って犯人が接近したというのがあの事件だったが、うちに相談に来る子たちも死にたい、消えたい、しんどい、居場所がないなどそういう声を届けてくれて、自分の身近な人には相談できず、SNSや、あとは町で声をかけられた人について行ってしまうこともある。当然、大人に守られていないと、そういう状況なので弱みに付け込まれて犯罪被害に遭ってしまうケースが少なくないが、身近な人の悩みは身近な人に相談できないということから、ネット上に居場所を求めている子たちが多いのではないかということで、2017年12月にBONDプロジェクトとしてアンケート調査を実施した。
これはBONDプロジェクトに相談してくれている女の子たちにお願いし調査させてもらったものだが、SNSに死にたいとつぶやいたことがあるか、なぜ死にたいとつぶやくのか、実際つながってやり取りをしたことがあるかなどについて聞いた。年齢層は13歳~15歳の子や16歳、18歳、学生等が多い。
なぜつぶやくかという点については、寂しい、存在を分かってほしい、身近な人には話しづらい、リアルで話せる場所がないなど色々なことを話してくれた。
実際に死にたいとつぶやいたことがあるかとの質問には、「ある」と答えた子が68%。知らない相手とつながってやり取りをしたことがあるかとの質問にも「ある」と答えた子が61%だった。
女の子たちの声を聞いて、年代の近い人に共感してほしいと思う気持ちがあるということが分かった。どうしたらそうした死にたいなどのつぶやきがなくなると思うかとの質問についても、居場所があって誰かが認めてくれたらとか、孤独だと思わないような環境など色々と答えてくれた。
2018年3月から厚生労働省で自殺防止対策事業としてSNS相談事業が始まったが、BONDプロジェクトもこの事業を受託していて、LINE相談の強化、ネットパトロールの実施等を行っている。まず、相談ということ自体のハードルを下げたいと思ってLINE相談を取り入れた。そして、ハイリスク者の早期発見、早期介入ということでネットパトロールを実施している。
ネットのつながりからリアルなつながりへということを目指して活動しているが、SNS上には危険な書き込みをしている子たちがたくさんいて、そうした書き込みを見つけ、相談につなぐという活動である。つながったらLINE相談、電話、メール、直接会う、直接その子の場所に会いに行くなどしながら、BONDプロジェクトの今までの既存の支援につないでいる。
2020年4月、新型コロナウイルス感染症拡大に伴って緊急事態宣言が発令されて、外出自粛、休業要請等によりステイホームの掛け声の下、多くの人が自宅で過ごすことを余儀なくされた。BONDプロジェクトにも当然そうした相談も増えてくるが、どんな相談が増えたかというと、家が安全ではない、安心できる場所ではないという状況についての相談が増えた。ただ、全国から声は届くが、遠方に住む子に会いに行けない状況だったので、オンライン面談などを取り入れながら、色々と話を聞くことを続けているが、同時に、大変な状況だからこそ、そうした彼女たちの状況を知りたいということで緊急調査を実施した。
10代、20代女性における新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響についてのアンケート調査ということで、話を聞いた。BONDプロジェクトのLINEに登録している、または相談には至らないけど、関心をもって登録をしてくれている子たち、9,501人にお願いし、950人からの回答を得ることができた。年齢、職業、住んでいる場所、家族、おうちのこと、心・体のこと、SNSのこと、お金、暮らしのこと、学校のこと、望まない妊娠をした・したかもしれない不安があったか、外出自粛・休業要請中にどんな助けが欲しいと思ったかなどについて質問した。これら質問内容は、実際女の子たちからの相談があったもので、その中で多かったものを組み込んだという形である。
調査結果について、回答者は13歳~27歳までが90%で、学生が多かった。回答者が住んでいる場所は、関東地方が最も多かったが、全国から回答を得ることができた。家族、おうちのことについては56%が何らかの困ったことがあった。特に小・中・高校生、無職では、家族からいらいらをぶつけられた、暴言が多かったなど家族の問題を抱えた人が多いことが分かった。
体や心のことについて、96%が何らかの困ったことがあった。また、消えたい、死にたいと思ったという子が69%という深刻な数字が出たが、自分を傷つけることが増えたなど、そうした声を話してくれた。
SNSやネットについては、44%が何らかの困ったことがあったということで、知らない人とやり取りをした、住所を教えてしまったなどがあり、その後、犯罪などに発展しないか懸念しているが、何かあったときに相談をしてもらえるようにやり取りを重ねているの現状である。
お金や暮らしのことについて、これも61%が困ったことがあったと回答した。食べるものがなくなったということのほか、奨学金などの返済ができなくなったなど、そうした不安の声が寄せられた。
学校のことについては、87%が困っている、困ったことがあったと回答した。友達、いじめ、不登校の悩みが減ったという子も多かったが、休校が長くなり不安になった、先生に相談したくてもできなかった、友達や先生に会えなくて寂しかった、給食がなくなって昼御飯が食べられなかったといった状況の子もいた。勉強や宿題に困った、久しぶりに学校が始まることになって心配になった、その他学校に関係する問題があったと回答した子がいた。給食がなくなり昼御飯が食べられなかったことについては、私たちはもっと彼女たちの状況を知って支援することができたはずと思っているが、こうしてアンケート結果が出て、このような状況だったと知り、もともとこの子たちは相談につながっている子たちだが、本人が話せない。なので、話さなくてもこちらが気にして声をかけることが大事だったと反省している。
望まない妊娠、予期せぬ妊娠について、9%が妊娠した、したかもしれない不安があったと回答した。
こうした支援が欲しかったということでお伝えしたいが、学校が休校になったとしても、保健室やスクールカウンセラー等との相談ができる体制は作ってほしいということを回答してくれる子も多く、248件だった。家族のことや身近な人のことを相談できる場所がなくなったということで、学校に行けばカウンセラーや保健室の先生、担任の先生に話を聞いてもらうことができても、学校に行けない時期には、色々と不安や悩みがあっても話せるようなしっかりした人とのつながりが途絶えてしまったということである。話を聞いてくれる場所というのは、どんな大変な状況になっても開けていてほしいし、話を聞いてくれる人というのを必要としているということが分かった。今日はこうしたことをお伝えしたかった。
【BONDプロジェクト】 BONDプロジェクトに来る相談者で、コロナ禍で顕著になったのは、相談に来る子自体がそもそも不安定な子たちで、だけど世の中全体が不安定になって、不安定な彼女たちが寄りかかる存在である人たちまで不安定だったということだった。今は少し落ち着いたかもしれないが、昨年はとても不安な気持ちの若年女性が増えたのではないかと思う。
【主査】 大変貴重な実践のお話を聞かせていただき、コロナ禍の子供たちの置かれている状況がよく分かった。
【委員】 SNSを使って、多彩で、かつたくさんの相談を受けていることがよく分かった。その上で、SNSでやり取りしているだけでは問題の解決には必ずしも結びつかないという面はあると思う。特に問題を解決するに当たって、BONDプロジェクトだけで解決できないケースというのもままあるのかなと思われ、そうした場合、配布資料に連携機関といった連携先がいくつかあったが、専門機関等との連携がとても大事だと思うが、連携に当たって重要なこと、課題というのはどのようなものがあるか教えていただきたい。
【BONDプロジェクト】 連携は色々あるが、案件によって、例えば警察や弁護士、また心療内科、学校もそうだが、連携していただけたらありがたいと思う場所の1つだと思うが、婦人相談も児童相談もそうだが、課題は、BONDプロジェクトとしても窓口につないで、そこにつなぎっ放しというわけにはいかないので、つないでぽっと放っておくわけにいかないので、彼女たちの現状について、つないだ先も知りたいというのが、まずある。情報の共有について、どのくらいつないだ先とできるかという点は、今後も課題としてずっとあって、そのためには、我々がつないだ先にどれぐらい信用されているかといったことになってしまうのではないかと思う。
よって、我々が連携したいと思えるような方々とケース会議のような形や、今はこうやってリモートなどが発達しているので、ある事例について情報共有をし、皆さんで考えるような時間をつくっていただいたりといったことができたらいいと思っている。
【BONDプロジェクト】 女の子たちは、私たちに相談をくれているけれども、他にも相談していたりということが多々ある。だけど、誰にも話せないということなどで、私たちに話してくれるが、希死念慮が強い子や、リストカットや、薬をたくさん飲んで死にたいという気持ちを行動に出してしまうような子で、私たちもLINEやメール、電話で、実際に今はコロナ禍で遠方に会いに行けないという場合も多々あるので、その子をきちんとした、例えば病院の先生等と、しっかり情報共有しながら、彼女の安全や安否確認を取れたらいいと思うが、女の子たちは色々と気にするから、どこの方と誰とつながっているかということも、なかなか教えてもらえないこともあるが、命の危険性があるような子については、関わっている方たちとつながりをつくっていって、その子を支えるという形も必要だと思う。また、まだまだ若年女性の支援ということが全国的に活動されているところが少ないこともあるので、何かあった場合、つなぐ先がないということも、私たちの今の課題の1つだが、揺らいだり、迷ったりしているような状況の女の子たちを支えられるような、何かあって相談できて一緒に考えてもらえる、そういう支援者の方たちを増やしていけたらいいと思う。よって、行政機関にはもちろん頼るが、その手前で支えたり、そのような場所や支援者が多くできるといいと思う。
【委員】 BONDプロジェクトで支援されている若い女の子については、精神科医から見ると、結構重たい子たちが少なくないのではないかと思っている。その意味では、連携等が必要だが、現状、10代の子たちを見てくれる医療機関はそれほど多くないという点も特に問題だと思うし、自傷や薬物、それからトラウマを抱える子たちを診られる体制も、まだまだ脆弱ではないかと思う。
恐らく10代の若者たちの自殺を防ぐ観点からは、色々な入り口は用意する必要があるが、同時に高度な専門的な支援の力が必要なのは事実だと思う。だから、今はとても窓口が増えてきているので、その意味で、本人さえその気になれば、頼れる場所は以前よりも選択肢は増えているが、つながった先の支援の質はどうなのかということを、次のフェーズとして考えていかなければいけないと思っている。
【BONDプロジェクト】 委員のような子供たちの話を聞いてくれる精神科医のような先生たちが増えていけばいいと思うがたくさんはいなくて、予約が取れない。そのため、その手前もいいので、その手前で、この人だったら大丈夫と話を聞いてくれるような人たちがいたらいいのではないか。
【BONDプロジェクト】 BONDプロジェクトに関わる子たちは、心療内科や、カウンセリングに通っている子はとても多いが、相性みたいなものがあるのか。相性がとても合った存在に出会えていたら、半分ぐらいは救われると思う。BONDプロジェクトができるフォローというのは、他愛もない話を聞いたり、そうしたことだったら役割としてできると思うが、精神等の専門分野では、精神科医の先生等を頼っていただくみたいなのがベストなのかと思う。
【BONDプロジェクト】 例えば、BONDプロジェクトではそういう子の話を聞いて、死ぬような行動、もう電話できないんだったら死ぬ、電話を切った後、これからたくさん薬飲みますといった形で遺書のようなメールやLINEを送ってきたり、電話で伝えてきたりする子で、こちらが中々切りづらい、またねと言いづらいような子等もいる。ただ、そうした子たちというのは、今、BONDプロジェクトに話していて、BONDプロジェクト以外話せないみたいなことを言っているが、でも長い付き合いになって、実は心療内科に通っていたり、話を聞いてくれる人がいるということが分かったりしたときに、私たちも、こうした心療内科の先生等と会わせてとお願いする。何かあったときに、その子はBONDプロジェクトには今このような状況を伝えているが、元気でしょうかと聞けるような関係性を作っていければいいなと思っている。女の子さえよければという状況になるが、それはお願いして、主治医の先生等にも会わせてもらっているようにはしている。
【委員】 あとは、専門機関の方も選択肢があったほうがいいとは思っている。合う、合わないというのもあるので、そこの選択肢が今中々ないなと思う。
【事務局】 そもそも論だが、東京都教育庁の発表でも話があったと思うが、コロナ禍で友達と会えなくて寂しいという子が相当出てきたという話があった。
相当数の子がそもそもコミュニケーションを取りたいのかどうかという点、またコミュニケーションを取りたいという子たちの距離感について、身近な人に相談できないので、相当数の子は赤の他人に相談したいという傾向なのか、身近な人には絶対したいが相談できないということなのか、もしそういう傾向が分かれば教えていただきたい。
【BONDプロジェクト】 子によっては、友達との付き合いを見て、例えば、家のことは話せないが、その友達と一緒にいるときは楽しいし、将来の話もするというように、使い分けではないが、キャラをちゃんと作って、そのキャラを貫き通すみたいな子もいるし、また普段話す先生はいるが、悩み事などは話せないという子がSNSでつぶやくということもあるのかなと思う。
【BONDプロジェクト】 周囲との関係性など、問題によって分かれると思う。BONDプロジェクトの相談は、基本的にLINE相談は近しい年代、20代の対応スタッフ等が対応しているが、それほど関係性のない彼女たちだから言いやすいというのはとてもあると思う。ただ、学校という空間が普段心地よい場所で、今回臨時休業に伴いそこに行けなかったことで寂しかったとか、そうしたことはあると思う。
【主査】 今回のヒアリングでは、特に非常にリスクが高く、リアルな身の周りの信頼できる大人が持てない方たちのセーフティーネットといった話が中心だったと思う。
自殺予防というときに、全体的予防という全ての子供たち、そして自殺予防教育も含めてメッセージを届けるという側面、それから選択的、指示的というところでリスクの高い人たちをいかに早く見つけて支援につなぐかという3段階のアプローチを同時並行で進めていくことが必要だと思うが、それではこれより、こうした点も含めて、今後の自殺予防全般に関して意見を述べていただきたい。
【委員】 BONDプロジェクトの話を聞いて、改めて学校の中で保健室を大事にしていくことが、リスクの高い子を学校の中で支えていくという意味でとても大きいと思った。学校にあって、通常の教室は必ずしも先生がいつもいるという場所ではないが、保健室だけは、その部屋へ行けば、そこには必ず同じ人がいる。BONDの家というものがあったが、学校の中で一番家のような場所は保健室であり、そこに行けば必ず養護の先生がいて、場合によっては少し寒くて元気がないときに、温めたミルクぐらい飲ませてくれたりもする。そういう場がなくなったことは、休校になっても話を聞いてくれる場は開けておいてほしいという声があったということを伺い、かなり大きな影響があったのではないかと感じた。学校に行くのは嫌だが、保健室なら行きたいとか、図書館の司書の先生には会いたいという子もいるだろう。学校はやはり授業をして学ぶ場だと思うが、そこにそうでない機能を持っているものが存在し、子供たちが合法的にそこに行ける場があったが、その場がコロナ禍で失われたということは大きかったと思われる。
保健室や養護教諭の重要性はこれまでもずっと言われてきたが、保健室という場を機能させて、リスクの高い子が行ける、いられる場にしていくことを考えていく必要があると思う。学校によっては、保健室にいるとすぐに授業に戻りなさいと指導されることがないわけではないが、リスクの高い子がいられるような場所を学校の中に確保していくことが必要だということを痛感した。
【委員】 今委員の仰ったことを言葉を換えて言う感じになるが、私は主に薬物依存症の人たちの診療をしているが、実はコロナ禍で、従来の高校生年代の薬物依存の子たちがとても増えたが、ほとんどの子たちが市販薬を乱用している。リストカットを繰り返し、摂食障害になり、死にたい、消えたいとなっている。
なぜコロナ禍で増えたかというと、ステイホームと言われているが、これは本当に美辞麗句だと思うのだが、皆ハウスを持ってはいるが、安心できるホームがない。特に首都圏では、住宅事情で、父親が書斎を持っていない人がほとんどで、テレワークをしている父親が家にいると、家族が集まるリビングに腰かけ、パソコンを開いて、一気に家の中の雰囲気が悪くなる場合がある。子供たちは皆スマホを見ているというが、今までもそうしていた。ただ、ずっと家にいるから親がそうした光景を見る機会が増えただけで、母親はカリカリしているという中で、そういう居場所がない家の中で、ある意味、逸脱的ではあるが、パワーのある子たちは早過ぎる自立を試みて、その中で失敗して支援団体に漂着する。
問題は、そうした度胸や根性がない子が、その中でずっと行き場を失ってリストカットしたり、市販薬を乱用したりしながら、何とか生き延びていること。友達と会いたいとよく言うが、それよりも家から離れたいのが実態に近い。今までも家は最悪だったが、学校に行って友達に会っている間だけ、ちょっと救われるというところがあって、コロナ禍で何が浮き彫りになったかというと、学校は勉強する場所ではあるが、実は若者の福祉的な支援も機能も実は結構担ってきたし、今後も、子供の自殺を本当に防ぐ意味では、そこをきちんと機能を強化しておく必要があるのだろうと思う。
質の高い保健室などは、疑似家庭的なホームであったりする子たちが少なからずいる。そういう意味で、学校の部分的福祉施設というか、そうしたこともとても大事だと思う。そういう子たちを支援していて、いつももどかしく思うのは、変な言い方だが、家族って病気の温床だと思うことがある。だから、この子たちは世帯分離して、生活保護で、一人暮らしの家から高校とか中学に通わせた方が学業も最後までできるのではないかと思うこともある。ただ、それを直ちに行うことは現実的ではないが、そのような観点から、学校の保健福祉的な機能の強化ということは、とても大事だと思う。
【主査】 貧困対策の議論の際も、学校のプラットフォームとしての機能の議論があったが、子供の受け皿としての機能を学校が持たざるを得ないという状況は明確だが、本当に今回のコロナ禍で明らかになった感じがする。
【委員】 1点目、保健室は、子どもの心のケアのためには、とても大事だと思っている。さいたま市では保健室の他に主に中学校に相談室があって、常時相談員がいる。教室には行きづらい、何か相談があるという子の居場所になっている。コロナ禍で保健室に発熱した子と相談がある子が一緒にいられないという状況が発生しており、相談室を保健室の隣に設けるなど工夫している学校もある。
もう1点は、SNSの件で、委員からも、教員が実感を持って、生徒にSNSで相談してくれと言わないと、中々登録数が増えないという話があった。SNSについては、どうしても危険性と隣り合わせというような意識が、教員にも親にもある。しかし、実際にSNS相談のやり取りを見ていると、とても専門性が高く、信頼できると実感している。そうしたことを、教員、保護者、子供たちに伝えること、遠慮なく相談していいんだよ、信頼できるということを伝えていくことが、相談窓口を広げることになるのではないかと感じている。
【主査】 SNSを使うことが危険につながるような、SNSを勧めることになると、そういう寝た子を起こすと同じような議論はある。これだけ子供たちが実は使っているのだから、今後はどう適切に使わせるかという論点があるが、今の指摘の通りだと思う。
【委員】 保健室の曖昧さみたいなものが結構意味があるような気がする。体の具合については保健室で、悩みについては相談室で、というように区分けし過ぎると、逆に行きづらくなる。だから社会の作り方として、きちっとしていくということが必要なのは当然だが、少し体の具合が悪いからみたいな感じで行けて、実はそこで心のことも言えるような場があってもよく、保健室、相談室と限って作られずに上手くやれないかと思う。制度的に作り過ぎると、どうしてもこう整備して、こういう専門家を配置してとなって、そうした面も必要だが、それでは上手くやっていけない子がいるのかなという気がする。
もう1点、ある県で、コロナ禍での不登校の実態を教育委員会として調べたところ、まだ途中段階だが、長期休業になって、実は継続的に不登校だった子には大きな影響がみられないという結果が出てきた。学校に行けないのが寂しいとか、学業が不振になっているなどの影響はあまり大きくは出ていない。学校に行けていた子たちが休校で行けなくなり、その中で不登校に新たになり始めた子たちに大きな影響が出ていた。ということは、長期の継続的不登校、引き籠り的な状態になっていてリスクの高い子は微妙に安定しており、あまり影響を受けていないということになる。ストレスを溜めて深刻化しているにもかかわらず、それが表に見えてこないような子たちが、どこにSOSを発信しているのかということが気になっている。大変だ、困った、といったことが表に出ず、周囲の目に引っかからない子たちをどうしたらよいのかという点が課題かと思う。
【委員】 最後に委員の仰った話はそうで、とても落ち着いた子がいる。それは子供だけではなく、一般の精神科の患者もそうで、例えば発達障害でも、自閉症スペクトラムの子たちの中でとても落ち着いた子たちもいるし、それから統合失調症の方たち、要するに、どちらかと言えば内に籠もって、必ずしも社交的でない傾向の方たちの方が、影響を受けておらず、具合がよくなったりする子たちもいる。
一方、児童期の患者では、ADHDの傾向の子たちは具合が悪くなっている。薬物の患者も、ADHDを合併している子たちが薬物の再使用をしているので、そういう意味では、色々なタイプがいると感じている。
【主査】 私自身もスクールカウンセラーとして学校に入ったりしているが、保健室にいて、何となくそこに来た子たちがカウンセラーとしゃべったりする中で、相談室につながるケースが実はとても多く、一方、カウンセリングや、心療内科、精神科等については、子供も非常にまだまだ敷居が高いところもあり、そうした意味で、やや曖昧なふんわりしたといった居場所が学校の中に増えることの意味は大きいと実感している。
学校全体が今回、コロナ禍の影響を受け学業をどんどんやらなければいけない中で、登校再開後、余裕を失っているが、学校全体の、保健室がそこに代表される場所だが、先生方の暖かさや許容的な雰囲気といったものを、どのように全体に広げていくかというときに、心理教育等の定着を通じ、先生方も心を大事にすることで、学校全体の雰囲気が変わることをとても感じる。自殺予防教育が全国津々浦々で徹底されるようにと、いつも言っていることにつながるが、そういうことも学校の居場所機能を高めるというところでは欠かせないと思っている。
【委員】 しんどい子は体に出てくることも多く、保健室はハイリスクな子が行きやすい場所かと思う。BONDプロジェクトの方がハイリスクな子どもを精神科医などにもつなぎたいと言われ、東京都教育庁の発表でも、電話相談は対面につながることが多いとの話があったが、SNSから対面につながることはあるのか。SNS相談だけでも、子供たちは自分の足で立っていくことができるのか。教えていただきたい。
【委員】 SNS相談から実際の支援につながったケースもある。数は少ないが、危険性が高い事例で、実際にSNSの会話の中で、「学校の先生やカウンセラーさんに相談してみたらいいよ」とか、「カウンセラーさんに相談してみました」といった会話があり、複数回のやり取りが行われているケースもある。
また、1回限りの相談でも現実の相談先につながっているケースもないとは言えない。
【委員】 SNSの相談体制の評価に少し関わっているが、その経験から言うと、匿名性という点が微妙で、匿名でやっているから相談してくるが、危険性が高いと思われるときの特定が非常に難しく、先生たちの不安もそこにあるのだと思う。匿名で訴えてきたのに誰か分からない場合どうするか。ただ、相談員の方は結構上手く、色々なことを聞いていく中で、リスクの高い場合には、ある程度特定し、それを学校につないだり、緊急性の高いときには警察につないだりということもやっている。
私はそれを恐れることによって失うものと、つながる窓口が増えることによって救われることのプラスとをはかりにかけたときに、もしかすると、判断ミスや何かで上手くつなげられない場合があったり、匿名でやっている中で、もう死ぬとかいって、本当にそうなってしまった場合があったりしたとしても、それでも、つながったことによって助かっている子の方が多いことを考えると、オプションとして、できるだけ多くの相談できる窓口を用意することは必要だと思う。こうした点を共通理解できるかどうかが、学校で広めていく上でとても大きいと思っている。
【委員】 SNSの功罪みたいなことがあるが、確かにリスクが色々ないわけではないが、私自身は肯定している。もちろんSNSで相談したり、または愚痴をこぼしたりなどして、必ずしも対面につながっているわけではない。むしろ、ある意味、対面につながりたくないからSNSでつぶやいている方たちもいる。
自分が見ている10代の子たちは、闇アカや裏アカを持っていて、そこで毒を吐き、全てではないが、小さなトラブルは何とか切り抜けている感じがする。だから、SOSを特定の人に出さず、闇に向かって吐くことで、何とか生き延びている子たちがいるという実態がある。確かにSNSからリアルな相談につながることはあまり多くはないが、それでもつなぐ仕組みを作ることには一定の意味があると思う。
座間の事件を熱心に取材している方から聞いたが、「死にたい」とつぶやいて加害者とつながった女の子のほぼ全員は、加害者と会って話しているうちに死にたい気持ちが収まったらしいとのことだった。だから、SNSでつながって、誰かにその気持ちを受け止めてもらえて、明確な答えがなかったとしても、それはそれで助けになることになるかもしれないと思う。
【主査】 やはり誰かに受け止めてほしい、認めてほしいといった基本的なところがベースにあることを考えると、そのような場も作りつつ、リアルなところでもいかにそういう環境が広がっていくか、両方が本当に必要だろうと思う。
【委員】 SNSなどの前に家庭の問題と学校の問題と考えたときに、親と先生だと思う。親に対しても色々なことはやらなければいけないが、親の方は一旦置いておいて、先生たちがどのくらい受け止める姿勢を持てるかが鍵だと思う。自殺などの問題に不安を抱えている先生がいて当然だが、認めてほしい、支えてほしいと訴えるばかりでなく、逆に悪態をつくことで何とかしてくれ、生きていきたいみたいな表し方をする子供の存在について、多くの先生は掴んでいるが、掴み切れていない先生もいるように思う。上手く掴み切れないまでも、こういう子たちがいて、非常に分かりづらいが、自分の心の危機の叫びを出しているのかもしれないという視点をもって、それを受け止めようとする姿勢でいてほしい。保健室の機能も、今以上にもっと充実させ、人材も増やす必要があるように思う。自殺予防教育を進めていく前提として、色々な子たちがいる中で、先生たちがそれを受け止める姿勢を持ってほしいというメッセージを、文部科学省としてあらためて発信していくことが必要ではないかと思う。
【主査】 先生方に色々受け止めてくださいというメッセージの出し方はもちろん必要だが、ちゃんとやっていますと仰る先生方も、ちゃんとやっていらっしゃる先生もたくさんおられるが、そういうときに、子供たちに色々しんどいこともあるが、それはちゃんと話していいんだという、自殺予防教育の肝のような話をしっかり先生方に伝えてくださいということをお伝えすることで、結果として、先生方が重要性を肌で体感していかれるということは感じる。ストラテジーの話になるが、いかにきちんと子供たちに向けての教育を先生たちがやれるような支援をしていくことが、結果として、一人一人の先生が子供を受け止めるということにつながると思う。
【委員】 東京都教育庁からの女子生徒の死亡が多いという話があった。その中で、東京都教育相談センターの緊急支援の概況説明の中で、本年度1月までの女子の自殺者数が8人プラスで、前年1人だった件数が9人に増えたとのことだが、これは9倍という言い方は数字が小さいので適切ではないと思うが、この背景は何なのか。そして、連鎖の関係などはあるか、何か分かることがあれば聞いておいていただきたい。
【主査】 女子高校生の自殺の増加は全国的にも明らかだが、この点に関して、その背景等について考えや知見をお持ちであれば教えていただきたい。
【事務局】 参考資料2を御覧いただきたい。8ページに令和元年と令和2年の児童生徒の自殺者数の原因・動機別別表の詳細があるが、真ん中が高校生1年生、2年生、3年生の女子について原因別でデータがある。トップは令和元年はその他の精神疾患だが、令和2年はうつ病と、2番目が令和元年は親子関係の不和だったが、令和2年はその他進路に関する悩みとなっており、ここから少し異なり、令和元年の3番目が失恋である。ところが、令和2年になると、その他の精神疾患が人数では10人以上出てきている。
【主査】 高校3年生ということと、進路が上に上がっていることとの関連はあるのではないかと思っていたが、この点に関して、他に、家族の経済状況の悪化のような部分が、女子高校生の進路問題といったところへの難しさにつながっているところもあるのか。また、全体的なストレスの増加が精神疾患の増加に出ているのかと思ったりはしていたが、何かこの点について、もし考えや意見があれば伺いたい。
【委員】 高校3年生ぐらいで自殺で亡くなる子たちは結構なケースで医療につながっている気がする。メンタルヘルスの問題としても、結構輪郭がはっきりしているが、ただ、精神科に行って治療を受けたり、薬を飲んだりすることでは中々解決しないという中で、結局命を落としている人たちも少なからずいるのではないかと思っている。
その他に、私の周辺で発生した10代の方たちの自殺行動、未遂に終わっている方も含め、どんな背景の方がいるかというと、結構家族との問題は大きいと思っている。その中で、親の方が経済的なダメージを受けることで、進路に関して変更せざるを得なくなったりしている。経済的にもどん詰まりとなって、家から離れることもできなくなるという中で行き場を失う。しかもこの数年、市販薬の乱用がとても増えていて、その中で市販の漢方薬は命を落とすことにつながる場合がある。大麻はたくさんやっても死亡しないが、市販薬をたくさんやると死亡することがある。
何が言いたいかといえば、家族全員がしんどい中で、その中で一番、出口がふさがって、一番弱い人たちに苦しみが集中し、命を落としているということ。
【主査】 コロナ禍で、リスクのある子供たちをささやかながら支えていた大人が疲弊してしまい、より弱いところに負担がいくということがリアルになった。だから、一つ一つの児童生徒の自殺の背景要因自体はコロナ禍前後でそんなに変わっていないが、支える基盤がなくなったために顕在化しているということがたくさん起きていると考えられる。家庭への関与は難しいと言いながらも、今後、学校を通して家庭にどれぐらい働きかけができるか重要だと思う。だから、学校を色々な意味でプラットフォームにしつつ、子供たちが安心できる環境をどう確保していくか、つながっていくかということが重要なのではないかと思う。
【委員】 やはり問題はマンパワーだと思う。基本的に保健室に養護教諭は1人、複数配置の学校もあるが、非常に負担がかかっている。先生たちも、今までもいっぱいいっぱいでやってきたところにコロナ禍での消毒や、子供たちの安全・安心を確保しなければならないという多忙を極める状況にある。だから、教員の数を増やすということが必要であるし、学級当たりの児童生徒数を減らすという動きも出てきたので、ぜひ実現してほしい。
家庭の問題を脇に置いてと言ったが、自殺の問題を考えるとき、やはり家庭をどう支えるかということは大きな問題である。その点で、SSWの活用事業を文部科学省が打ち出していることは評価できるが、制度として作っているものの、ではどう活用すればよいのか、どのようにそれが子供たちを支え、救っていくのか、という理解が学校現場では進んでいないように思う。スクールカウンセラーが定着するのにも相当時間がかかったし、今もまだ学校の常勤スタッフになっているわけではない。さっき曖昧なことが大事だと言ったが、一見無駄に見えるところに、もっとお金をかけて、人材を確保することに、実は意味があるのではないか。無駄を排してぎりぎりの効率でやっていくところに、日本の脆弱さがあるように思う。SNSも費用対効果が問題になる。東京都は5回線とのことだったが、5回線通年で用意できる自治体はほとんどないと思う。そうすると、かかってきているが出られないということで、相談員ももどかしさを感じる。つながる率が5割、6割だったら、やっている意味があるのかという批判も出てくる。そこにどれだけお金をかけられるか、誰からもかかってこない無駄な日があってもいいと腹をくくれるかどうか。今回のコロナ禍の色々な危機が出てきたときに、今まで無駄を省いてきたところがアキレス腱となって、危機が増大したということをいろいろなところで感じている。
だから、一見無駄に見えるけれども、本当は無駄ではないというところに、もっとお金をかけることが必要なのではないかと強く思っている。
【委員】 先ほどの委員の指摘は、教育関係だけではなく、自殺対策全体が、相談窓口や支援機関を増やした方がいいということで、単年度の1年契約の多くは民間に委託して、あまり質が担保されてないというか、それが単年度契約の不安定雇用でやっているところがあって、学校のスクールカウンセラー等も一般の教職員に対しては中々発言力が持てないままの状況で行われている。
そういう意味で、確かに余裕を持たせた、腹をくくれるかという点については同感。更に、全国の教員に対し、自殺予防教育など教育の仕方について色々なマニュアルを作ったり、指導することは引き続き必要だが、同時に、今回のコロナ禍で分かったのは、学校という場所で別に相談するわけではないが、先生と楽しく話したり、友達と遊んだりと、これが実は結構自殺予防になっていた可能性があると思う。だから、日頃の何気ない関わりがすごく役立っていたということも、どこかで触れていただければと思う。
【委員】 中学1年生が今とても危なっかしいという話を、学校で聞くことが多い。自殺ということではないが、学校の中で非常に不適応を起こしている。それは4月、5月学校がなくて、学級作りができず、学校行事のような特別活動も省かれ、ぎゅうぎゅうで勉強を詰め込まれている。部活動でも、3年生の先輩の姿を直接見ることも少なかった。学校に馴染んでいくための何気ない時間というものが、2か月間奪われたことが影響しているように思われる。先ほど委員が仰ったように、例えば、一緒に掃除しながら、先生の「掃除、うまいな」と声をかけるさりげないやり取りが、実は子どもたちを支えているんだということを、改めて私も感じている。
【主査】 こうした点を学校にフィードバックしていくことも、先生方はもう大変な思いをしながら、あれが足りない、これが足りないといったことをとかく言われてしまうので、エンパワーメントという点でも重要かと思った。
【事務局】 次回については、本日、委員の皆様からいただいた意見を踏まえた上で、どのような形にするのか、また開催日時についても後日連絡する。
【主査】 それでは、閉会させていただく。

―― 了 ――

 

 

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