児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(令和2年度)(第1回) 議事要旨

1.日時

令和3年2月15日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1.  SOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防教育の更なる充実について
  2.  コロナ禍における児童生徒の自殺等に関する現状について
  3.  その他

4.出席者

委員

    内野委員,荊尾委員,川井委員,窪田委員,阪中委員,中馬委員,坪井委員
 

文部科学省

    瀧本初等中等教育局長,江口児童生徒課長,鈴木生徒指導室長,伊藤専門官
 

5.議事要旨

※ 議事に先立ち、委員の紹介が行われ、主査の選出が行われた。その後、瀧本初等中等教育局長、主査より挨拶があった。
※ 事務局より配布資料についての説明があった。

≪議題(1)SOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防教育の在り方について≫
※事務局より「(資料2)児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議 審議のまとめ(案)」について説明。
【主査】 前年度議論いただいたSOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防教育の在り方についての審議のまとめ案について、改めて各委員に確認いただき、最終まとめという方向で進めてまいりたい。意見や質問があればいただきたい。
【委員】 4の「今後の課題」のうち、「短期的課題」について、SOSの出し方に関する教育(援助希求的態度の育成)のみを推進していくと誤解されないよう、「自殺予防教育(SOSの出し方に関する教育を含む)を推進していくに当たって」と書いたほうがよいのではないか。
【委員】 整理され分かりやすくなったと思う。細かい部分にも配慮した内容が記述されており、丁寧に進めていかなければいけないということがよく分かる。
8ページのSOSの出し方に関する教育と自殺予防教育の関係性の図について、この審議のまとめ案を読む方々が、その関係性を図で理解してから読んでいけるよう、もう少し前にあった方がいいのではないか。
【主査】 例えば「教育の構成」のところがいいかもしれない。
【委員】 最初の3ページにこの審議まとめ案の結論として、「以上を踏まえた上で、本協力者会議としては、SOSの出し方に関する教育と自殺予防教育の関係性を次のように理解した」と書かれているが、その「次のように」の部分がとても長く、結局最後の7ページで自殺予防教育の一部だったということが分かるようになる。これは結論までが長過ぎるので、「次のように理解した」という部分を、SOSの出し方に関する教育は、自殺予防教育の一部であるということを次のように認識したなど結論を前の方に出していただきたい。
【委員】 10ページの学校以外の他の関係機関との連携に関して、子供たちの複雑な要因のうち、家庭の要因が大きい場合が多々あるので、外部の専門機関の力というのはとても大きいとは思うが、「専門家でなければ適切に対処することは困難である」と言い切っている点が気になる。学校においても子供たちの身近なところで子供たちの思いを丁寧に聞きながら対応する場面もあるので、断定し過ぎているように感じる。
【主査】 関係機関との連携というタイトルなので、連携協働が必要であるということが明確に示されればよいので、委員の発言の趣旨を生かした形で修正いただきたい。
【委員】 まず、表記の問題だが、「児童生徒」と「子供」の表記が混在しているが、広い意味で子供と、狭い意味で児童生徒という使い方はあると思うが、同じ文脈の中で一緒に出てくるので、少し整理していただきたい。
また、3ページの中ほどの「教育の実施者(主体)について」の部分について、教員が基本で、他に保健師や大学教員等が例示されているが、学校現場では、この例示が非常に大きな影響を受ける部分であり、学校では特にスクールカウンセラーの役割が非常に大きい。その場合、やはり一番密接に関わっていると考えられるスクールカウンセラーについて、例示の中に入れていただきたい。
また、4ページの冒頭、2行目後半から、「心の危機に陥った友人の感情を受け止めて、考えや行動を理解しようとする姿勢などの傾聴の仕方を教えることなども共通している」の部分について、以前ピアカウンセリングの是非について議論したことを覚えているが、この文言のとおりでいいのだが、これが学校現場でピアカウンセリングというところまでいってしまうと非常に問題が大きいような気がする。その点をどう書くのかというところはあるかもしれないが、この点は共通の認識をぜひ持っていただきたい。
【事務局】 ピアカウンセリングの書きぶりについて、具体的に何かお考えはあるか。
【委員】 この記述部分を学校現場が、友人の感情を受け止めて行動を理解しようとする姿勢をもう少し発展させて、ピアカウンセリングまで持っていってしまった場合、例えば、括弧書きでピアカウンセリングを意図するものではないといった表現がいいのかどうかは別として、コロナ禍に巻き込まれてしまった子供たちがさらに大きな負荷を感じるといった危険度もかつて指摘されたことがあったと思うので、その点、誤解がないようにしていただきたい。
【主査】 関連して、今仰っていただいたことはとても大事な部分で、傾聴についてだが、その後の信頼できる大人につなぐという、あくまでその文脈で話を聞きましょうということなので、信頼できる大人につなぐことが特に危機に関しては大事だという辺りが確かに入る必要があると思う。
【事務局】 書きぶりについて主査と相談したい。
【主査】 スクールカウンセラーについて、私も関係者の一人として、スクールカウンセラーが学校のスタッフとして先生方と協働しながらやる、または養護教諭の先生等が前面に出るほうがいいという意見には賛成なので、これらの点も上手く組み込んでいただきたい。
事務局では、必ずしも今日でこの審議まとめ案を決めてしまうということではないとの理解でよいか。
【事務局】 昨年2月からの宿題として、ほぼまとまりつつあった今回のまとめ案だが、ただ、昨年の1年、このようなコロナ禍もあったり、自殺者数が増えるなど、やはり自殺予防教育の大切さが一層高まっているが、平時においても、このような特殊な状況においても自殺予防教育をしっかりと学校現場において実施していただき、そしてフォローアップ体制や相談体制を整えるということが重要なので、この御提示いただいたまとめ案は本当に重要なことだと思うが、これにある程度今回のコロナ禍等々も踏まえながら、一層自殺予防教育の重要さということを御提示いただくのであればよいと思う。
【委員】 審議のまとめ案について、ここまでよく整理され、分かりやすくなったと思う。その上で1点、先ほど話題になった8ページの自殺予防教育とSOSの出し方に関する教育の図について、ここはさじ加減になるのかもしれないが、三角形の図の一番上の三角形の部分、これを右半分と左半分に分けて、左が早期の問題意識、右が援助希求というように分かれているが、ここまですぱっと分ける必要があるのかと思う。このようにすぱっと分けた場合、右側の援助希求の部分に吹き出しでSOSの出し方に関する教育がついているが、この審議のまとめ案におけるSOSの出し方に関する教育というものが自殺予防教育の半分を担っているというように思ってしまうとところがあり、本来この会議の議論では、自殺予防教育の中に包含されるというような位置づけであるのに、ここまで明確に半分をSOSの出し方に関する教育が担っているというように見える表現はもう少しまろやかにした方がいいのではないか。ここは図の作り方の問題なので、現在の案のように明確にした方がいいという意見もあるだろうし、明確にし過ぎるがゆえに行間が読めなくなるという問題もあると思うので、ここは各委員の意見でよいかと思うが、私はもう少しまろやかにしたほうがいいかと思った。

≪議題(2)コロナ禍における児童生徒の自殺等に関する現状について≫
※事務局より「(資料3)コロナ禍における児童生徒の自殺等に関する現状について」について説明。
【委員】 資料3の11ページのスクリーニング活用ガイドやストレスチェックはどういう基準で選ばれているのか。
【事務局】 これは早期発見のためのツール、児童生徒の自殺が多くなった時期に早期発見の対応ということで、その時に入手した情報を紹介したもの。また、最初の「スクリーニング活用ガイド」は、実は2年前に児童虐待が相当社会的に問題になったときに、こうした児童生徒の変化を早期にチェックするシステム、アイテムがなかろうか、そして、学校に対してお伝えすることができないだろうかという観点で探した大阪府立大の先生が取り組んでいるものを文部科学省からこういうものがありますよという形で活用ガイドを事例として出させてもらったもの。
また、2番目の「子どものストレスチェック」に関しては、実はストレスチェックをやっている大学研究機関が色々あるが、実際、子供の発達や心理というものを研究している千葉大学を中心とした研究コンソーシアムがあるが、そこからいただいた提案として、自殺の企図があまりにも多いので、子供のストレスチェックをクラス単位、学校単位で行う提案としてこのようなものがありますよということで提供を受けたので、これに関してもある程度こういうストレスチェックという方法がありますよということで、ここに載せている。
また、一番下はRAMPS(ランプス)という東京大学で作ったシステムで、パソコンやノートパッドにこのアプリを入れて、そのアプリによって子供たちにチェックをしてもらうもの。要はストレスチェックなのだが、世田谷や新潟の学校で活用されていると聞いている。これに関しては、例えば保健室でこうした端末を用意し、そこに来る子にチェックしてもらう。要は、子供のストレスチェックをICTによりチェックして、そのICTのチェックによってハイリスクの子を探るというもの。その後は、養護教諭やスクールカウンセラーにつないでいくというものがRAMPSというシステムであって、早期発見となるきっかけの段階である程度ICTを活用している。このように、その時々で発見したものをまとめたというものである。
【委員】 スクリーニングのツールについては、商品化されているものも含め様々な団体からたくさん出ているので、文部科学省として、この3つのツールだけを取り挙げることには、少し違和感を覚える。
また、スクリーニングについて、私は学校現場にいたときに、「生活アンケート」という形でずっとやってきたし、また、それをもとに教育相談や事例検討会を定期的に開催してきた。スクリーニングとしてここに書いていることと似通ったことを教育相談部や生徒指導部でやっている学校も、また、いろいろなツールを使ってやっている学校も少なくないのではないだろうか。これを見ると、どこかこれまで学校現場は何もやってきていないではないかといった捉え方をされたり、今まで学校現場ではできていないので、このように提供しますよといった誤解を生じさせたりしないかと危惧を感じる。
それから、自殺予防教育実施前には、ハイリスクの子を把握することが不可欠で、そのためにもスクリーニングをどんなふうにしていくのかという議論が必要だと思う。
【主査】 スクリーニングは、した後どうするかということの方が肝なので、その点も併せて検討いただきたい。
【委員】 高校生女子の自殺が増加した点について、その原因として、分析されたことと高校生女子の自殺の原因というものはリンクしているのか。高校生女子の自殺について、精神的な病についての原因が多かったと考えてよいのか。
【事務局】 そこに関しては、巷では色々と言われているが、科学的根拠をもって分析されたものは具体的には出ていない。ただ、今回数字だけを見ると、実は、今ここでは小中高校生だけ取り上げられているが、厚生労働省で調査している自殺者全体でも若い女性が多くなったと言われているので、これの点をお伝えしたく、高校生女子の数字で載せている。
【委員】 私たちのところに対するSOSも家庭の中の親子関係の深刻化とか、または女性の場合、DVの深刻化といったものが実際現場には数多く上がってきているので、恐らくそういったことから家庭問題、またはそこから精神的な疾患にまで至ってしまっている若い女性たちではないのかなと推測はするが、もしもう少しデータがあればと思ったので質問した。
【主査】 本当にこうしたところの影響が一番女子に来ているのではないかと私も思うので、この点についてはまた今後検討していくことかと思う。
他にこの結果部分に関して、実態についての質問、この後、今後に向けての対策についても意見を伺っていくが、質問はこの辺りでよいか。
それでは、これまでの現状について、そしてそれを踏まえて審議のまとめ案について、今後の方向性も含めた形でのお話をいただいたが、この後フリートーキングの形で現状、そして今後の方向性について意見交換したい。
【委員】 今、小・中、高校で、GIGAスクール構想を進めていて、1人1台端末、タブレットが多いと思うが、これを本年度中に全自治体で整備する予定である。これは主に学力向上という視点から目が行きがちだが、自殺予防や不登校対策の観点でも重要な整備であり、ぜひそういう視点を持ちたい。児童生徒の自殺予防について、令和2年5月の文科省の通知に、「(1)学校における早期発見に向けた取組」として、自宅で過ごす子供たちと連絡を密にして、そのような子供たちの心身の状況の変化、または違和感の有無に注意すると書いてあるが、要は、1人1台端末を通じて、学校に来ていない子供たちにも朝夕に担任が声をかけたりするなどのやり取りが日常的に行えるようになる。
アンケート調査の機能も十分に持っており、また、担任等による個人面談も、他の子供たちに分からないように1対1で行うことも十分可能である。また、ストレスチェックなどRAMPSのようなスクリーニングの機能も可能であり、とりわけ学習支援に対応することもかなりできる可能性を持っている。
要は、タブレット端末の活用は、学習のみならず不登校対策や自殺予防の観点からも、非常に大きな役割を担っていくと思うし、期待もしている。こうした点も踏まえて、今後各種通知に、このような情報端末の活用の観点も含めて、文部科学省の方で教育委員会や学校に対し少しサジェスチョンしていただければありがたい。
【事務局】 先ほど委員から指摘いただいた資料3の11ページはあくまで事例であり、様々なスクリーニング、ハイリスクの子供をチェックする方法であり、ICTを活用するもの、実は色々とたくさんやっと最近出てきたというか、私共もやっと見つけ始めたというところもあるので、そうした意味で、委員御指摘の例えばGIGAスクール構想による端末の活用についても、実は今これらの研究に着手しようとしている大学コンソーシアムもあるので、こうした研究や事例もこの会議において提示できればよいと考えている。
【主査】 先ほどの委員の提案は、スクリーニングといった一部に限られない、本当にトータルな、学習支援から担任との関係づくりも含めてトータルに活用することで、学習も含めて子供たちの学校生活の充実につながるという意見だったと思うので、スクリーニングに特化するというよりは、むしろ今の提案でトータルな形での様々な支援につながるという点は、とても貴重な意見かと思う。
また、先ほどの審議のまとめもそうだが、今まで文部科学省が作成してきた自殺予防教育の冊子や通知等の内容が実際に現場で行われるようにしていただきたい。やってくださいと言われても、中々慣れない、やれない中で、例えば「子供に伝えたい自殺予防」の冊子がウェブ上にアップし使いやすくしたり、また、教材として様々な取組を紹介しているが、今一度、どういうことが重要なのかが上手く伝わるようにするなど、これまでのことがもっと本当に全国津々浦々の学校の先生方に届くための条件整備や仕掛けといった部分に、もう少しエネルギーが傾注できるといいのではないかと思った。
【委員】 同感。自殺予防教育を公教育で行うということは、熱心な指導者がいるとか、地域に専門機関が多いからできるということではなくて、全国誰でもどこでも同じ内容の学習が受けられるということが大切ではないか。例えば、今まで作成した冊子等の中からポイントを取り上げたリーフレットを作成し、子供たちがいつも身近に持っていたり教員による指導の際にも使えたりできるものがあると良い。どこでもどの教員でも安心して指導ができるという情報や環境を整えることが大事なことではないか。
【主査】 同感。そういう意味で熱心な指導者がいるからできるというより、公教育の中で、例えばさいたま市等は自殺予防に関する教育がしっかりカリキュラムの中に入っており、さいたま市の子供たちは下地づくりの教育から自殺予防教育をおそらく数年来受けることができていると思うが、このように公教育の中でも工夫して実施されているところはある。一方で、教育課程上の位置づけがネックになっていて動けないでいるところもある。こうした自殺予防教育を学校の中で無理をせずに実施できるための体制づくりのようなこともぜひ検討いただきたい。
【委員】 さいたま市では、平成24年度から実施しており、今年度は小学校1年生から高校1年生まで、SOSの出し方に関する教育を実施した。このことで、子供たちの援助希求行動のスキルは育成されてきているのではないかと思う。
一方、今色々なお話を伺いながら、授業時間数の問題や、その他の土台となる信頼関係の育成といった点について、コロナ禍において、学校で苦労していたり、子供たち自身が悩んでいたりということがあると思う。
先ほど委員からGIGAスクール構想で整備される1人1台端末の活用の話もあった。さいたま市も1人1台端末で、不登校児童生徒も含めて子供たちの学習面の支えをしながらも、やはり心身の健康の部分でも活用できないかということについて検討を進めていきたいと考えている。
【主査】 GIGAスクール構想における端末の活用のほか、文部科学省として全国各地に届くための施策が重要だという議論もあるが、事務局としてどう考えるか。
【事務局】 自殺予防教育全体を進めていきたいという点については、平成20年代から委員の方々に「子供に伝えたい自殺予防(学校における自殺予防教育導入の手引き)」や「子供の自殺が起きたときの緊急対応の手引き」等を作成していただき、かつ、それを普及させるためにも全国で研修会を進めてきたところではあるが、やはりまだまだ学校現場に届きづらい、届いていないところがあると思う。
また、学校だけでは中々対応し切れないケースが多く出てきているため、自殺予防教育というものをもう一歩進め、かつ学校が様々な関係機関と連携を進めるという点で、実際は、いじめも不登校も、それから虐待も、最近ずっとチーム学校として学校外部の関係機関と連携していただきたいということを強く言って来ているという現状もある。その中でコロナ禍というものが出てきて、それへの対応も上手くいっているかというと、中々難しい部分もあると思っており、文部科学省としては、そこを一歩進めるための施策を考えたい。現状、すぐに対応策というものも難しいが、先ほど委員から話もあったが、場合によっては、方法論としての1つではあるが、GIGAスクール構想における端末をはじめとしたICTを活用するという方法もある。ただ、やはりその後に続くのはスクールカウンセラーや養護教諭、学校というアナログの部分というもの、それからそもそも自殺予防教育というものはアナログという部分があるので、そうしたところを一層進めていくにはどうしたらいいかという点をもう少し考えていきたい。
【委員】 今、事務局からスクールカウンセラーの話、また、審議のまとめ案の中に、教員の働き方改革を踏まえ、今後の課題として、必ずしも新たな負担とならないようにという表現があるが、実はスクールカウンセラーの配置が全国的に小・中学校でずっと行われてきたが、これにプラスアルファで、山口県では、同県の単独事業かもしれないが、「思春期グローイングハートプロジェクト」という事業を実施している。要は、スクールカウンセラーが通常相談業務で学校に行くことにプラスして年間16時間、県として経費を見るので、心理教育プログラムの中で、必ず年1回以上はスクールカウンセラーによるSOSの出し方に関する教育を実施するよう求めるものである。その他に心理教育プログラムは様々あるが、その中にストレスマネジメントやアンガーマネジメントも含め、小学校は原則4年生以上、中学校は全学年を対象に、県としてスクールカウンセラーを派遣し、各学校で年16時間実施するようになっている。要は、スクールカウンセラーとして相談業務のほか、こうした教員や保護者への支援等があるが、ぜひこういうプロジェクトに文部科学省としても取り組んでいただいて、このSOSの出し方に関する教育等の中々教員が向き合えない部分を、スクールカウンセラーを中心にして学校全体で行い、それを教員も参観することによって一緒に認識を深めていくような試みも重要ではないか。
もう一つ、審議のまとめ案で先ほどから援助希求の話が出ているが、子供たちにとって、人間関係や互いの信頼関係がある大人の役割の大切さ、これらはまさにその通りだが、いじめや自殺も、子供たちがいざ相談をしようとするときは、子供たちは住んでいる同じ市内の相談窓口には電話せず、かなり離れた、要は自分が特定されにくい、または安心して話せる場所の相談窓口に電話する。だからこそ、他の関係機関の存在が重要になってくるが、子供は必ずしも人間関係が本当にある人だけに話したいと考えているわけではない。そういう子供たちの心理状態についてもこの審議のまとめ案の中にあるように感じた。
【委員】 6ページの通知に、(2)で「保護者に対する家庭における見守りの促進」とあるが、大半の子供たちにとっては、これが大事なことだとは思うが、家庭内不和や家庭に課題がある子供たちもいるわけで、そうした場合は子供の思いがその保護者には伝わらないこともあるのではないか。そうした細かな点を一言書いておかないと、小学生でも中学生でも一人の人格者として、学校が彼等から相談された内容を保護者にどう伝えるのかという点は、一応押さえておく必要がある。そこまで理解してくださる保護者が全部だったらいいが、万が一のことがあったら困る。
【委員】 GIGAスクール構想の下で、学校現場の教員の負担がどの程度のものか聞きたいが、1人1台端末を使って個別対応が可能になるということは、例えば担任の先生が35人なら35人の子供たちと個別の時間を作って対応することが技術的にはできるかもしれないが、先生方がそこまで対応するということが前提になっているのか。それは実際には大変だと思うが、現実的にあり得るのか。
また、私たちの現場でもSNSを使った相談を導入しなければならないということで、子供たちからのSNS相談を受ける体制を試行錯誤中だが、色々な問題がある。確かに子供たちはアクセスしやすいということで相談してくるが、それに対する対応が一問一答のLINEだとやり取りが延々と続いて、一体どこで止めればいいのかという問題がある。
また、電話であれば相手が分かり、答えることができるが、LINEの場合、相手がどこまで言っているのか分からない。どこかでLINEから電話、または面談へつなげないと、具体の対応ができないという悩みもある。こうしたSNS相談という提案について、どの程度の現実的な成果をもとに議論されているのか伺いたい。
【事務局】 例えば、ICTを使った相談体制は2パターン考えられ、まず、ハイリスクの子を見つけるためのスクリーニングといったチェックプログラムが1つ。そして、その後その子が相談するという相談体制についてのICTの活用という、2つが考えられると思う。
今、複数の大学が研究しているものの一つに、まず、最初のスクリーニングやチェックをするためのソフトをGIGAスクール構想の端末に導入し、ある程度サーバーに吸い上げ、そこから自動プログラムになるのか、AIになるのか、またはアナログになるのかという点はあるが、ハイリスクの子を見つけ、その後は学校に連絡し、その子に対する対応をお願いするという取組事例がある。
また、SNSについては、本当に際限なく、NPO等でのSNS相談事業において、どこかでその人を特定しなければならないが、それに何日もかかったり、場合によっては自殺の企図寸前に至っている子がいたり、またそういった子たちを果たして受け止め切れるのかなどのマンパワーの課題があったりすることはしばしば聞く。その点について、全部が全部GIGAスクール構想の端末を活用してというわけではなく、その後のアナログ的な対応をしっかり行うことができる体制ができれば、そうしたGIGAスクール構想の活用という考えもあると思う。特に相談体制ついては、マンパワーが必要という話はよく聞くので、そうした活動をしている団体の話もヒアリング等で聞くことができればと思う。
ただ、まだGIGAスクール構想での端末が全ての学校に配られているわけではない。ICTを活用した対応を実施している学校は、例えば、保健室に端末が1つ置いてあって、そこに保健室登校する子たちに利用してもらうシステムを作っている。現時点で、実証研究段階として導入しているという学校はあるが、GIGAスクール構想全体で実施しているところはまだないと思う。
【主査】 先ほど委員から教員の負担の件が質問として出ていたが、その件についてはどう考えるか。
【事務局】 今、コロナ禍で、教員はまだまだソーシャルディスタンスの確保や除菌、そしてこれらに伴う授業の体制づくりなどやることがいっぱいある。その中で、相談事業や自殺予防教育を実施してもらいたいが、中々そこまで手が届かないという話はしばしば聞く。これは自殺予防のほか、いじめや不登校対策、生徒指導全般に共通する課題だが、こうした点である程度教員の負担を軽減するためにはチーム学校、要は様々な関係機関と連携し、ある程度任せられる部分は任せ、学校がやるべき部分はやるといった区切りをつけることが重要なのではないか。
【主査】 ただ、チーム学校に当たっては、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー等を学校内部のチームの一員として活用することとなっているが、また今後、これらについて教員としての定数化も検討するようになっていると思うが、現時点では進んでおらず、結局、ワークシェアといっても限られたパイの中で、どこの誰の負担が重くなるかという話のような気もする。
この辺りは本当に難しいことだが、現実的に、例えば30人学級が実現するだけでも先生方の負担や、子供たちを受け止める力はとても伸びると思うし、やはりこれだけ子供たちが自ら命を絶っているという事実は、国として最大の危機だと思うので、教員定数やカリキュラムなど、中々難しいとは思うが、こうした点に手をつけていっていただかないと、今回コロナ禍で先生方も疲弊しているということが、子供たちがSOSを出しにくくしていて、子供たちの自殺ということにつながっている面もあるのではないかと。そういうことを考えると、かなり根本的な話にはなるが、ぜひ検討していただきたい。
【委員】 先ほどの話に付け加えで、スクールカウンセラーやSNS相談等を上手く回していくためには、これらをコーディネートする人がいなければ回っていかない。生徒指導主事の授業の軽減はなされているところが多く、その必要性が認められているが、教育相談担当教員においても軽減を図り、コーディネートをしっかり担うことができる教員を育てることも重要。時間的な保障や教員定数にも関わることだが、非常勤講師をあてるとか様々な人的なバックアップもしていただきたい。
【主査】 要は、いじめや不登校、暴力といったあらゆる生徒指導上の課題に波及していく話なので、自殺予防だけでというより、全体としてよい影響が出てくるはずだと思うので、よろしくお願いしたい。
よって、ICTを活用した事例の検討も必要だと思うが、先ほど委員から話があった山口県のスクールカウンセラーを活用した心理教育の普及や、例えば、北九州市も心理教育を小学校1年生からずっとやっており、そうした地道なことを徹底してやっていくことについても情報収集を改めてしつつ、とにかく全国津々浦々の学校で子供たちにいい環境が提供できるようにすることは、結局この会議だけの課題ではない課題の改善にもつながると思う。
【委員】 せっかくネットを使うのであれば、冊子「子供伝えたい自殺予防」を掲げて、これを読みなさいというようなアクセスの仕方を子供たちに対しするのではなく、例えばアニメ化するなど、もう少し子供たちが見て、何とか目から、ネットからの情報として吸収しやすい、そういった媒体に変えて活用するという方法はできないか。または教員の方々にとっても冊子を全部読んで、その通りやりなさいというのも中々難しいので、解説とモデルケースを見せる映像等を使ってやれるようにすることなどが考えられる。それはそういう業者がいなければできないのかもしれないが、そうした広報の仕方も考えられないか。
【事務局】 児童生徒に伝えるということについては本当に重要で、防戦一方よりやはり積極的に子供の心に伝えるということは本当に大事だと思うので、事務局でも検討したい。
【委員】 資料3の8ページの令和2年の通知の概要の(1)について、ここも「SOSの出し方に関する教育を実施するなどにより」ではなく、やはり「自殺予防教育(SOSの出し方に関する教育を含む)を実施するなどにより」とし、SOSの出し方に関する教育も大事だが、同時に、心の危機に気づくことが大事なので、次回の通知では検討していただきたい。もし可能であれば、こうした通知を出すとき、せっかくこの協力者会議があるわけなので、委員に意見を求めてもよいのではないか。
【事務局】 審議がまとまったものについては、やはり貴重な提言になり、それを受けての文部科学省の方策や自殺予防の周知ということになるので、また徹底して通知等で学校側には伝えていきたい。
【主査】 これまでの議論は、1つは、自殺予防で言うところの全体的予防、全国津々浦々の全ての児童生徒に対して今まで十分届いていないメッセージを、工夫しながら届けていくためのツール等の開発や、そのツールを活用することができようにするための先生方の研修や学校へのサポート等を通じて、とにかく全ての児童生徒に伝わるようにするということと、もう一つはハイリスクの人たちのSOSをどう受け止めるか、SOSの出し方とは言うが、やはりリスクの高い人にSOSを出せということには元々無理があるので、いかにそのSOSをキャッチするかということに関して、GIGAスクール構想等の活用できるものを上手く利用していくための工夫はどのようなものがあるのかといった議論があり、これらを全体として支える体制の整備といったことについて、ぜひ文部科学省には検討いただきたいといった議論だったかと思う。
【委員】 SNS相談について、心配なのは、SNSでテキストを書いて子供が相談を出した場合、それが記録としてネット上に残って、もしかしたら様々な形で拡散されるかもしれないという恐怖感があると思う。どのような媒体がいいのか分からないが、今始まっているクラブハウスのような形で記録されない媒体があるようだが、話をしたときに録音や記録されているのではないか、または残ったやり取りがどこかへ拡散していくのではないかといった、これら技術的な問題も実はSNS相談についてはあるのではないかと思っていて、相談体制を考える際には、こうした子供たちの不安に対応できるようなシステムがあってほしい。
【事務局】 相談体制の様々な事例について、例えばSNS相談を実施している自治体、24時間SOSダイヤル、そして子供たちからのSNS相談を直接受けている支援団体等をこの会議にお呼びして、関係機関等へのつなぎ方等をどうしているのかといった事例を把握できればと思っているが、どうか。
【委員】 いくつかの団体等に聞いてみた場合、もう少しイメージや問題点が見えてくるのではないかと思う。
【主査】 また、こうしたハイリスクの人たちの受け皿を整備していく上での課題も明らかになるのではないかと思う。
【委員】 さいたま市もSNSを活用した相談事業は今年もやっているが、ハイリスクの子たちには効果的な部分もあることは実感している。ただ、それをどのように関係機関等につなげていくのかという点については、やはり我々も様々な意見を聞きたいし、状況がどうなっているのか知りたいと日頃思っている。
また、今年度、コロナ禍での長期休業明けの学校再開時に、特に子供たちの心の問題がとても心配だったので、さいたま市では児童生徒の心のサポート手引という形で、4月、5月、6月、11月にわたって3度、先生方にリーフレットを出している。その中で、いわゆる外部の関係機関等との連携についてお示ししたり、先ほど心理教育の話もあったが、コロナ禍の子供のストレスにこのように寄り添おうといった例示をさせていただいた。
やはり心理教育ではスクールカウンセラーの力が重要だと思っていて、ただ、現状、スクールカウンセラーについては、学校での相談業務がかなり詰まっていて、子供たちの心理教育までさいたま市がどれだけ関われいるかといった点については、もう少し力を入れたいと思っている。そうした部分では文部科学省においてもスクールカウンセラーの人員の配置といった補助の充実についても更に力を入れていただきたい。
【主査】 公認心理師という新しい資格仕事の中に、心の健康に関する啓発は明確に位置づいており、従来のようにカウンセラーは相談しておけばいいということではなくなっていて、大学院で正規科目としても実施されているので、この点を更に活用するようなことを考えていただきたい。
【事務局】 次回会議の進め方については、本日、委員からいただいた御意見を踏まえた上で、今後の対策、議論の方向性を固めていきたい。その際、必要に応じて、コロナ禍においてSNS相談や24時間ダイヤルといった直接児童生徒からの悩み相談を受けた機関からヒアリングすることも検討していきたい。
【主査】 それでは、以上で、今年度第1回の会議を閉会する。
―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課