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児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(令和元年度)(第2回) 議事要旨

1.日時

令和元年11月1日(金曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. SOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防教育の更なる充実について
  2. その他

4.出席者

委員

新井委員,荊尾委員,川井委員,窪田委員,阪中委員,坪井委員,松本委員,村瀬委員

文部科学省

蝦名大臣官房審議官(初等中等教育局担当),大濱児童生徒課長,
松木生徒指導室長,伊藤専門官

5.議事要旨

※議事に先立ち,主査より挨拶があった。
※事務局より配布資料の説明があった。

≪平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について≫
※事務局より(参考資料1)平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について説明。
【主査】 ただいま事務局から説明があったが、先般公表された「平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(以下「問題行動等調査」という。)について、委員から質問があればお願いしたい。その後、自殺の実態調査に基づく要因分析をどう見るか、今後どうしていくか意見を頂きたい。
【委員】 自殺の状況に関して、「児童生徒が置かれていた状況」とあるが、不登校になってから自殺をしてしまったという子供の数は分かるか。
【事務局】 実はそこが分かっていない。先ほど紹介した3年分の「児童生徒の自殺等に関する実態調査」(以下「実態調査」という。)では、背景について深掘りして聞けていたが、問題行動等調査では、なぜ自殺したか、そこに至るまでに何があったかという関心の高い部分については拾えていない部分があり、データとしては持っていない。
【主査】 「置かれていた状況」の中に、不登校状態というものが入っていないということか。
【事務局】 その通り。ここに書いてあるのが、要因としては全てである。そのため、様々な悩みを抱えているなというところまでは分かるが、増加の原因等については見えてこない。全国の小・中・高等学校等3万校以上の学校に対して様々なことを聞く調査であるため、深掘りにも限度があり、取れているデータがここにあるもの全てである。
【委員】 いじめの重大事態について、1号事案全てが自死というわけではないが、この中で自殺に関する事案の件数は分かるか。
【事務局】 参考資料1の52ページに、1号重大事態の分類として、「生命」、「身体」、「精神」、「金品等」が挙げられているが、このうち「生命」が54件である。ただし、この「生命」は自殺の既遂だけではなく未遂も含んでいる。既遂がどれくらいかというと、先ほどの自殺の要因の箇所に、いじめが原因のものが9件とあるため、5分の1程度は既遂に達していて、残り5分の4程度は未遂というのがデータとしては出ている。
【委員】 不登校の子供たちと一緒に活動しているが、現場で感じることは、学校で少し目立った行動をする子は、特性があるかもしれないということで検査を受けたり、適切な支援を受けたりして学校生活に適応していくこともあるが、小学校等では、目立たず、おとなしくしている子は学級の迷惑にもならないし、友達ともあまりトラブルをおこさないのでどうにか無難に過ごしている子もいるということである。しかし、実はコミュニケーションが苦手で本人には困り感があり、学力面についても困難さを持っていたりすることもある。小学校はどうにか乗り越え進級して中学生になり、学校へ行きにくくなってやっと周りが本人の特性や今までの困難さに気づく例も多い。不登校だからといって皆特性があるわけではないが、低学年の頃から本人の特性や困り感に対して丁寧に対応したり支援をしたりすることで、不登校にならずにすむ子供がいるように思う。

≪児童生徒の自殺等に関する実態調査、実態分析について≫
※事務局より【資料3】児童生徒の自殺等に関する実態調査について(依頼) 、【資料4】子供の自殺等の実態分析について説明。
【主査】 次に、自殺の実態分析、特に自殺の要因分析の方法について議論したい。これもこの会議で進めていったものだが、問題行動等調査のみでは分析に当たってデータが足りない。そこで実態調査では、各学校から自殺した子供が置かれていた状況について、匿名で詳細に調査票に書いて提出していただく形にした。原則、学校が特定できないようになっていた。この実態調査について平成23年から平成25年までのデータと、平成26年度、27年度、28年度分のデータがあるので、今後平成30年度、今年度、来年度という形で、3年区切りで見ていってはどうかという提案が事務局からあったが、この実態調査と要因分析の進め方について意見を頂きたい。
【委員】 大きな事故や事件が起きたとき、学校側が捉えている原因や課題と、保護者が訴えてくる原因や課題は必ずしも一致していない場合がある。そのとき、これは、先ほど校長が調査票を書くという説明があったが、学校として把握しているものを書けばいいのかどうかという点についてお聞きしたい。
もう一つは、原則この実態調査は、どこの学校か特定できないようになっているとの話があったが、校長の立場でこれを書くときには、保護者と学校で意見が不一致の場合、おそらく書くのはかなり慎重にならざるを得ない。この点についてお伺いしたい。
【事務局】 自殺の要因について、学校側の要因は学校の方で把握できるとしても、家庭で何があったかという点については、学校側からは十分見えていない部分もある。ただ、ルール上、まず自殺が発生した場合、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」(以下「背景調査」という。)に基づき、学校は必ず基本調査をやることになっている。その際、教職員からの聞き取り、関係の深かった児童生徒からの聞き取り、生徒指導の記録など紙ベースで残っている記録、加えて、遺族や警察等の関係機関から聞いた内容、こうした4種類の情報について、時系列で整理するのが基本調査である。この基本調査は、背景調査の指針に基づき、学校は必ず行う必要がある。当然その中で警察から十分情報が得られなかったり、または子供を亡くした家族の場合、誰とも話したくない、十分なコミュニケーションが難しいなど、限界があるのは当然だが、そのような状況でも、あくまで学校が把握できたものを基本調査としてまとめてもらったはずなので、この実態調査ではその中から拾えるデータを提出してくださいということでお願いしている。
簡単に言うと、学校と保護者で持っている情報は違うかもしれないが、この実態調査で聞いているのは、学校としてどう見ているかというものを書いていただく調査である。
【委員】 今、指針で基本調査は必ず行うとおっしゃったが、自殺事案があれば、どこの学校も基本調査を実施しているのか。
【事務局】 ガイドラインは平成26年に1回改訂され、その後も機会あるごとに周知も図っているので、必ずやっているという前提になっている。
【委員】 それでは、この基本調査も文科省に全件数が上がっているか。
【事務局】 背景調査の指針では、国に提出しなさいという形にはなっていないので、基本調査については、まず設置者と遺族へ説明をしてくださいとなっている。その後は、遺族が希望する場合や、学校側に原因がありそうな場合は、設置者で詳細調査に移行する判断をする。この場合、先ほどのような時系列で事実を整理するだけでなく、事実関係を調べた上で、再発防止策を考え、もし学校側に原因があるのであれば、その原因を突き止め、今後このようなことが起こらないよう、ここを改善すべきだといった提言を出すところまでやるのが詳細調査である。
それで、各学校でそれぞれ再発防止に努めることとしており、文部科学省に報告しなさいという形にはなっていない。別途、自殺事案が発生したときには、24時間以内にできるだけ第一報を報告してくださいというお願いはしていて、そちらの報告は頂いているが、何しろ第一報なので、「自殺事案が発生しました。原因はよく分かりません」といった簡単な内容のものしか報告されないこともある。
【委員】 背景調査は分かったが、無記名の実態調査については、既遂の全児童生徒のものが今も上がっているのか。
【事務局】 今は上がって来ていない。このときの調査分析は特別に行ったもので、例年やるというよりは、要するに3年分取得した後、更に3年分取得して、実はそこで終わっている。平成26、27、28年分まではあるが、平成29年分はない。ただ、平成30年で数字が上がっているので、改めてまた何かすべきではないかという提案であり、本日フリートーキングで意見を頂ければということでお諮りしている。
【主査】 平成23年度にこの実態調査についての依頼文書を出したと思うが、その後、平成28年度まで依頼文書を毎年出していたのか。この実態調査は1回途切れてしまっている。要因分析をしていく上で、今はこの実態調査を義務付けてはいなくて、今回報告してくださいという依頼になるが、今後この実態調査を自殺予防に生かしていく観点から、どのように進めていけばよいか。実施方法や調査項目等について意見をお願いしたい。
【委員】 問題行動等調査の自殺の状況の調査項目と、実態調査は必ずしも一致していない。例えば、問題行動等調査では「父母等の叱責」が、これは実態調査では「家庭的背景」のうちどの項目に該当するのか。また、問題行動等調査で「病弱等による悲観」があるが、実態調査の「個人的背景」では「慢性疾患」に該当するのか。病弱の悲観をしているわけなので、要はそれを悲しんでいるということであり、病弱だからというわけではないので、どちらにどのように合わせるか分からないが、この辺りの整合性を取れば学校の方も調査がしやすい。
【主査】 問題行動等調査と実態調査それぞれの質問の整合性について、少し文言等を合わせた方が学校としてはやりやすいという意見を頂いた。
【委員】 自殺予防教育をどこで、どのような方向で行えばよいか考えるときに、この実態分析のデータはとても重要である。
例えば、不登校の子供が自殺に至ってしまった場合、その自殺予防というのは、学校で授業をいくらしていても、不登校の子供には届かない。学校に来ていながら、突然に自殺をしてしまう子供には、学校の授業の中での自殺予防教育は有効かもしれない。一方、家族要因が多い場合、その家族要因の解消のためには、おそらく学校の授業だけではどうにもならない部分があり、そこは子供に、逃げていいんだ、SOSを出していいんだということばかりを伝えるしかない。実際は家庭要因自体の解消ということにまで踏み込むのは学校の授業では中々難しい。
また、精神的な病気を持っていたことが明らになった場合、医療にかかっていたかどうかということが重要だと思う。自殺の背景として、そのような精神科医療が適切になされていなかったことが自殺に至ってしまった理由だということが分かってくれば、子供たちや親たちに精神科医療の必要性をきちんと伝えることが必要だとなる。その意味で、様々な形で実態分析はとても重要だということを改めて感じている。
せっかくデータが平成26、27、28年分あるのであれば、それを是非まとめていただきたい。ただ、あまりにもたくさんの調査依頼が来るので、学校の先生たちは調査に疲弊している実態もある。そのため、項目を整理し、同じことを色々な角度から、様々書かなくても済むような調査形式にしてほしい。そうであっても、少し突っ込んだ実態調査は必要なのではないかと思う。
【主査】 予防教育を進める上でも必要なデータであるというご指摘を頂いた。
【委員】 この実態調査の項目について、複数回答で原因、要因がいかに複合的であるかという点について説得力を持って示していくという意味でも、結果は非常に重要である。いじめなど学校要因がある場合に行う詳細調査や、いじめ防止対策推進法に則った第三者委員会の調査では、やはりいじめ以外の要因が扱えていないため限界がある。いじめについてきちんと取り組むことは重要だが、それ以外の要素に目が向きにくいということが実際かなり起きていることを踏まえたとき、このようなデータを使って、いかに様々な要因が複合した中で不幸な事態が起きているかということをより明確に示すことが重要である。
自殺予防の観点からは、いじめだけに焦点化するのではなく、幅広く捉えて対応していく。自殺の要因については、家庭の特性や個人の特性に関して何らかの特定の要因が直接自殺に結び付いたというよりは、そのような特性を持つ児童生徒に対し、学校がより包括的な支援をするべきだという意味からも、また個人の特性や家庭の特性も含めて捉えていく必要性をより明確に示す意味でも、このデータは説得力のあるものとして出てくると思う。そのため、現状のデータの出し方では、それのみが要因みたいに見えるので、いかに要因が複合化しているかということも含めてデータを出せるよう、今後データの出し方を工夫する必要があると思う。
【主査】 様々な要因が絡んでいることがもう少し見えるように、データの示し方や分析の方法を考えた方がよいとのご指摘を頂いた。
【委員】 警察も調査しているので、調査項目の言葉が少し違う。どちらに合わせるかという論点はあるが、一緒の方がデータが見やすい。
また、基本調査や詳細調査の結果については、文科省に報告することにはなっていないが、その結果を教育委員会までは上げるのか、学校内で持っているのかなど、どのような扱いになっているのか教えてほしい。
【事務局】 基本調査の結果については、まず設置者に報告し、また遺族に説明することになっているので、設置者と遺族には情報が共有されることになるが、文部科学省には特段報告されない。
【委員】 以前、私が関わった学校で、1か月以内に基本調査はされていると思うので、そこから対応策を考えるのも1つではないかとを話したとき、実はそのような調査はやっていないという学校があった。基本調査を行うことで学校も振り返ることができるので、次自殺事案が起こらないように、教員が基本調査をすることで学ぶところは大きい。必ず基本調査を実施するということを徹底していただきたい。
【事務局】 今、児童生徒の自殺予防に関する普及啓発協議会をブロックごとに年間全国10か所で開催しているが、その中で各教育委員会等にお願いしている。
今年度35ヵ所で実施するいじめ問題に関する行政説明でも、実は資料の中に背景調査の指針の資料を入れていて、必ず説明をしてお願いするなど、あらゆる機会で周知を図っているが、もしかしたら残念ながら中には知らないと言っている学校があるのかもしれない。我々としては、必ずやってくださいということを、機会を捉えて周知をしているしこれからも続けていく。
【委員】 実態調査については、前回実施したときにどのようなことをイメージしていたかと言えば、1つは、児童生徒間で連鎖して自殺が起きていないかどうか、地域的な特異な変化や傾向が出て来るかどうか、それから、自殺の手段の特異性や、または新しい手段の登場などについて把握できる可能性はないかといったことを想定していた。
今後、どのように調査するか考えたときに、昨年亡くなった児童生徒の数が前年度から増加していることや、他の年代では減少傾向の中で若年者の死亡率が高まっている傾向を考えると、来年度以降、何らかの調査や把握する仕組みを作っておいた方がよい。
【主査】 少なくとも自殺予防を進めていく上で、不可欠なデータである。データの取り方や調査項目等については、今後検討していくということで、とりあえず実態調査については、新たな形態もあり得るということも含みとして持ちながら継続してやり、そして分析をこの会議を中心に進めていき、それを自殺予防教育の方にもつなげていくこととして、ここの段階では一応の我々の意見としておきたい。

≪議題1.SOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防教育の更なる充実について≫
 ※事務局より【資料1】児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議 審議のまとめ(案)について説明。
【主査】 「審議のまとめ(案)」については第1回会議で議論いただき、その際頂いた意見の内容が、本日の資料に反映されている。まず、「4.今後の課題(おわりに)」について議論いただきたい。その後、「SOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防教育の今後の具体的な普及方法や更なる充実」について、フリートーキングの形で進めていきたい。その中で、先ほどの実態分析も絡んでくると思う。
今後「審議のまとめ」として各地に出していくことになるので、「今後の課題」の他にも、前回の議論を踏まえ、さらにこの辺をもう少し付け加えた方がいいとか、またはこのような違う観点があるといったことなど意見を頂きたい。
【委員】 全体的に感じたことは、このまとめ案の中にも様々な形で盛り込まれているとは思うが、一応自分の感想を述べさせていただきたい。
SOSの出し方に関する教育というものがいかなるものなのかが、実はよく分かっていないが、これは別にこういう言葉が最近出てきたが、昔から若年者の自殺予防に関わっている人たちは、ヘルプシーキングということで、様々な形で言ってきたし、従来のものの中にも、実は既に入っていたものなのではないかなと思う。
ただ、もし年1回とか、非常に限られた形での教育だった場合、非常に危惧しているのは、健康度が高い子たちは、さぞかし出し方が上手になるだろうなと思うが、そもそも自殺のリスクが高い子たちは、多分ほとんど変化しないと思う。でも、逆にこのような教育を徹底することで、ちゃんと学んだはずだからみたいな、自己責任論みたいな議論が今後出てきたら嫌だなと思うし、むしろリスクの高い子たちのSOSにどうやって周りの子供たちが気付くのかということが、もっと大事になってくるし、さらに言えば、SOSの出し方を学んで、援助希求性の高まった子供たちが大人に相談したときに、大人はそれを適切に受け止めることができるのかということについてとても気にかかっている。
私自身、精神科の医師なので、自分が臨床現場で10代の、いつも「死にたい、死にたい」と言って、本当に1週間、2週間ごとに寿命をつないでいるような子たちと会っていて思うのは、援助交際や薬物など危ういことをしている子たちがいる、そういった問題も含め、学校の先生に相談したときに、先生たちは、その安心・安全な場を確保して支援につなげることができる力量や度量を持ち合わせているか。または管理職として判断できるのか。底なしで子供たちのSOSを出す力だけが突出して伸びていくことによって、かえって子供たちの失望が高くなるのではないかということも懸念している。
それから、高校の新しい学習指導要領の保健体育には、精神保健というものが入ったが、中学校の保健体育では入っていない。そうした場合、精神保健の知識等とどのように整合性を付けていくのかという点も重要な論点である。また、精神保健の授業も、例えば「早寝早起きしないと鬱病になるぞ」みたいな精神論みたいなことをやられたらたまらない。それよりは、むしろ学校の先生たちの中にはメンタル問題で休職している方もいるが、復職したての先生が、「いや、鬱病はきついよ」とか、そのような大人たちが自分たちの失敗や泣き言を語るというか、でも、それは格好悪くないというような、もう少しリアルな授業をしていただくことが、本当の意味で困っている子たちがSOSを出しやすい教室を作っていくのではないかと思っている。
【委員】 先ほどの委員の話に全く同感。今委員が話され、恐らく他の委員の方も共感している部分が、この審議のまとめ(案)でしっかり分かるように書いてあるのか。私は、審議のまとめ(案)を読んでみて、読んだ人に、それが伝わるかとても心配である。現在の案は、SOSの出し方に関する教育にあまりに配慮した書き方であり、これでは、読んだ人がSOSの出し方に関する教育にも問題があると気付くだろうか。審議のまとめというのは、この委員会でどのような審議をしたかというまとめではないのか。それにしては、よく分からない。読んだら、かえってよく分からなくなってしまって、審議のまとめ(案)より、先ほどの委員の意見を聞いている方がよく分かった。
【主査】 抽象度を高めているから分かりにくいという部分があり、このままでは、少し伝わりにくいのではないかという意見だと思う。
【事務局】 審議のまとめ(案)については、本日まとめ切ろうという意図があるわけではないので、また直して次回までにお示しするなど、いただいた意見を反映させたい。できれば、具体的にこのようなものを入れた方がよいとか言っていただきたい。
また、「審議のまとめ」はまとまっても、短期的課題で説明した通り、学校現場に浸透させる際には、文部科学省として、当然このまとめや、SOSの出し方に関する教育をそのまま流して終わりという考え方には立っていない。ただ、これらは取っかかりとしては非常に重要であり、やはり援助希求的態度というものは、自殺予防教育の中の2本柱の1つで、これが重要であることは間違いない。
先般の自殺対策基本法の改正でもSOSの出し方に関する教育が新たに出てきて、大綱でも定められているもので、それは進めるが、やはり学校現場には、従来の自殺予防教育との関係性がどうなっているかなど、分かりやすい形で示す必要があると考えているので、そういった意味で理解いただきたい。
【主査】 多分、この「審議のまとめ」としてまとめる部分と、それから、SOSの出し方に関する教育と、従来この会議で考えてきた自殺予防教育との関係性を示しながら、進めていく上での留意事項のようなものを早い段階で出していく。それが短期的な課題ということになっている。この関係性について詳細は通知で出すにしても、このまとめだけでは、その意図が伝わりにくいという指摘だと思う。
【委員】 本当に危険度の高い子に対して、SOSの出し方に関する教育ということでは意味がないと思う。私も自殺をしようとする子どもたちの現場にいるので、そのように感じる。例えば審議のまとめ(案)の中で、「短期的課題」として「SOSの出し方に関する教育を推進していくに当たって」と書いてある。つまり、SOSの出し方に関する教育を推進することが前提になっているが、それでいいのか。SOSの出し方に関する教育を推進することの危険性が、今問題になっているのではないのか。援助希求が必要だというのは分かるが、それは、今までの自殺予防教育の中の2本柱の1つとして入っていることで、今、その中から援助希求の部分だけを引っ張りだして、SOSの出し方に関する教育を進めることが有益だという認識で書いているように見える。そうではなくて、SOSの出し方に関する教育を、そこだけ引き出してやってしまうことが危険だということが、この会議の意見ではないのか。
【主査】 SOSの出し方に関する教育については法や大綱で定められており、文科省としてはこう書かざるを得ないところもある。
【事務局】 委員の指摘は理解できるが、まず国民の代表者で構成される国会での議論の結果、法律が改正され、それに基づき、我々行政府の責任として大綱を政府全体の方針として閣議決定している。同時に、我々はもちろん委員の意見を頂戴し、受け止めて進めていかなければいけない。先ほど委員が指摘した問題で、前提となっていることについて議論頂くのはもちろん必要で大切なことだが、この点についてもう少し理解いただけるとありがたい。
また、留意点を示す中で、例えばハイリスクの子に、そもそもSOSの出し方に関する教育が有益かどうか、またはそのような子向けにはこのような教え方が別途あるなど、そのようなことも併せて留意事項の中に含めていくということもできるかと思う。
【主査】 前々回まで、SOSの出し方に関する教育について、危惧を感じるところがあってヒアリングをし、その中で危惧する点に対する指摘をした。一方、従来の自殺予防教育についても十分に浸透していないのではないかと、これまでのこの会議と文科省の取組に対する批判もある。対立軸で捉えていくと、学校は混乱するだろうということで、長期的課題として書いてあるような、SOSの出し方に関する教育を包含する形で、従来型の自殺予防教育の2本柱の「心の危機理解」と「援助希求的態度」のうち、「援助希求的態度」の部分はSOSの出し方に関する教育と重なるという示し方をしたらどうだろうか。前提となる教職員の合意の形成、保護者からの同意、これをどう捉えるかという問題はあるが、やはりそういうものは残していく必要がある。
また、先ほど指摘のあったSOSを受け止めた側の対応が問われるが、そこについてはSOSの出し方に関する教育では触れられていない。こうした危惧が審議のまとめに表されていないのはどうなのかということについて苦慮する部分もあるが、法律や大綱も含めこのような様々な状況の中でどのようにしていけばよいかということについて意見を頂きたい。
【委員】 「子供に伝えたい自殺予防」の中に、ピラミッドの図がある。学校の環境づくりがあり、下地づくりがあり、自殺予防教育があって、ここの三角形の半分が心の危機で、半分が援助希求となっている。この半分の部分がSOSの出し方に関する教育であって、心の危機の部分についても、学校の環境づくりと言っているところが合意形成だったりする。それから、やはり温かい人間関係がある中でなければ援助希求も出せないということで、今度は下地づくりも重要であるということをこの図で示している。
よって、基本的には文科省の方向性としては、「子供に伝えたい自殺予防」を出した頃から変わっておらず、この援助希求という部分が新たに「SOSの出し方に関する教育」と命名された。心の危機の部分だけを取り出してやればこれも危険である。具体的には、あのピラミッドの図の中の環境づくりのところで、健康観察や相談体制等を書いているが、このようなところがしっかり整っているということが、子供たちのSOSを教員が受け止めるということでもあるので、このピラミッドの図をベースに、そこに書き込む形で1枚の図で現場に出せるのではないかと思う。決して文科省が方向転換したわけではなく、この部分にSOSの出し方に関する教育を入れていますよということでやっていただけるといいのではないか。
【主査】 認識が間違っているかもしれないが、何かSOSの出し方に関する教育が、法や大綱で出てきて、文科省の従来の自殺予防教育と比較され、従来の自殺予防教育が普及していないから今後はSOSの出し方に関する教育を進める、というような見方もあると思われる。そのため、我々の方がSOSの出し方に関する教育に対して批判している感じもあるが、逆にSOSの出し方に関する教育が出てきて、文科省は今まで何をやって来たんだと批判されているような気もする。だから、批判ということではなく、従来の自殺予防教育に包含して、このように位置付けられるということを示していくということではないかと思う。我々としては、危うさは訴えているが、必ずしも批判はしていない。
【委員】 「SOSの出し方に関する教育」という言葉は、従来の道徳教育や命の大切さのような、ある種の価値観のようなものを押し付けることに対し、いや、そうではないという意味で出てきたもので、非常にざっくりとした漠然としたものだと思っていたが、しっかり確立されたプログラムが存在しているということなのか。
【委員】 先日文科省から平成30年度の問題行動等調査結果が公表されたときの毎日新聞の記事には、児童生徒の自殺が増えたという件にGRIPの話が出ている。GRIPは兵庫県尼崎市などいくつもの自治体で行われているが、このGRIPが現場で取り組まれている自殺予防の内容として出てくる。要するに、今マスコミでは、児童生徒の自殺が増えた、そして各現場で既に先端的な取組がなされているという文脈でGRIPが紹介されている。そのような認識がもう広まっているんだと、この記事を見たときに思ったが、文科省はこのマスコミの捉え方についてどう考えているか。
【事務局】 GRIPについてはこの会議でもヒアリングを行ったが、従来型の援助希求だけではなく、心の危機に気付こうという両方の柱をしっかりこなす、優れたプログラムである。ただ、好事例の1つではある一方、年間5時間ぐらいかけてやるプログラムであることから、今後教員の働き方改革の観点も踏まえれば、GRIPを必ず全校でやってくださいとまで文科省が言っているわけではない。
【主査】 現状、SOSの出し方に関する教育というものが、立法、行政の裏付けを持った形で出てきているから、スタンダードになりつつあるという感覚は持っている。これまで文科省は文科省として、「子供に伝えたい自殺予防」で方針は出し、これをモデル、参考にして学校で活用してくださいと周知してきた。しかし、中々広がっていっていない中で、「子供に伝えたい自殺予防」に基づいた自殺予防教育をやっているところもあれば、例えば研究協力者として誰かが入りGRIPをやったり、または全く違う予防教育を行ったりという乱立状態と言ってよいか分からないが、そのような状況になっていると思う。
だから、私もその記事は見ていないが、たまたま答えた学校や教育委員会等がそれに立脚してやっているということなのかと思う。
【委員】 GRIPは、SOSの出し方に関する教育とは別のプログラムと考えていいか。
【主査】 別。
【委員】 では、1時間で行うSOSの出し方に関する教育とは別の形で、5時間で行うGRIPが存在すると。この会議が今までやってきた自殺予防教育の方向性とGRIPは、同一の方向性にあると思っていいか。
【主査】 内容は全く同じではないが、2本柱という点では、非常に近いものがある。
GRIPについては書いていないが、資料5「自殺予防とSOSの出し方に関する教育の整理表」に見られるように、SOSの出し方に関する教育として、今行われているもので代表的なものが足立区、東京都、北海道教育大の取組みである。GRIPについての説明は、審議のまとめ(案)の5ページに出ている。よって、GRIPは従来の自殺予防教育の取組の流れの1つであるという捉え方をしている。各地の様々な取組みについて我々も学んでいかなければならないが、その記事の取材に回答した学校や地域でGRIPをやっていたということだと思う。
【委員】 ただ、平成28年施行の改正自殺対策基本法は、学校に対して自殺予防教育の努力義務を盛り込んだ。学校現場は試行錯誤しながら取り組んでおり、兵庫県尼崎市では、GRIPという自殺予防教育プログラムを導入した。埼玉県志木市もGRIPを基にした授業を市立中学校で実施している。群馬県は、SOSの出し方に関する教育をテーマに独自教材を作っている。
【主査】 色々な取組がある中で、SOSの出し方に関する教育というのは、援助を求めるというコアの部分を強く打ち出したわかりやすい構成になっていると言える。。SOSの出し方に関する教育がある、GRIPがある、他の取組もある。さらに、従来型の文科省の自殺予防教育があるというなかで、これまでは、文科省のものが、ある意味お墨付きがあるような形だったけれども、今度は法改正や閣議決定という中でSOSの出し方に関する教育が出てきて、お墨付きが与えられた。それで、学校や教育委員会としては、自殺予防教育についてどうしたらよいのか、分かりづらくて困っているという話になっているということだと私は理解しているのだけれど。そんな理解でよろしいですかね。
【事務局】 そもそもSOSの出し方に関する教育というものが何なのかという部分だが、平成18年に成立した自殺対策基本法が平成28年に改正された際、第17条が新設され、その第3項で「学校は、当該学校に在籍する児童、生徒等の保護者、地域住民その他の関係者との連携を図りつつ、当該学校に在籍する児童、生徒等に対し、各人がかけがえのない個人として共に尊重し合いながら生きていくことについての意識の涵養等に資する教育又は啓発、困難な事態、強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育又は啓発その他当該学校に在籍する児童、生徒等の心の健康の保持に係る教育又は啓発を行うよう努めるものとする」と定められている。今読み上げたものの中で、「困難な事態、強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育又は啓発」、これが「SOSの出し方に関する教育」と言われている。
平成28年の法改正を受け、平成29年7月に閣議決定された自殺総合対策大綱の中で、「命や暮らしの危機に直面したとき、誰にどうやって助けを求めればよいかの具体的かつ実践的な方法を学ぶと同時に、つらいときや苦しいときには助けを求めてもよいということを学ぶ教育(SOSの出し方に関する教育)を推進する」と書いてあり、この「SOSの出し方に関する教育」という言葉は、法律の条文では出て来ないが、この大綱で出てくる。閣議決定でこれが決まっている。
よって、当然政府の務めとして、これを進めないといけないが、その進め方については、留意点を今まで十分示して来なかった。正確に言えば、従来の我々の自殺予防、これは2本の柱を同じように重視しつつ、下地づくりを経て最終到達点に行くというような教育だが、その一部であるSOSの援助希求の部分だけにフォーカスしているものが法律には書かれ、これは努力義務として教育や啓発を行うよう努めなさいと書かれている。しかし、これにフォーカスした教育をやっていく上で、何に気を付けなければいけないのかということが示せていなかったので、それを示すべきではないかというのが、本日の審議のまとめ(案)の結論のところに書いてある部分である。
そういった流れになっているということを理解いただきたい。
【委員】 今の説明はよく分かった。というか、今の説明みたいに書いていただいたら、よく分かるなという気はする。
あとは、やはり自殺リスクの高い子たちは、援助希求能力が低いが、その低い背景にあるのは、援助、SOSを人に出すのはとても危険だと認識していること。人は必ず私を裏切るとか、自分は価値がないから人に助けを求めるに値しないと思い込んでいたりする。だから、この子たちがSOSを出せるようになるということは、実は年余を要するセラピーになってしまう。
だから、健康度が高い子たちにはそれで伝わると思うが、一番リスクが高い子たちは、多分そこに反応しなくて、リスクが高いままになってしまう。一応、それは頭の片隅に置いておいた方がいいことなんだと思う。
【委員】 先ほど、自殺対策基本法第17条の最初に自他尊重の話が出てきて、それから、心の健康の保持増進の教育もやると書いてあるので、そこから援助希求といった困難な状況に直面したときの対処のことだけが取り出されて、「SOSの出し方に関する教育」となっているところに少し違和感がある。
この下地づくりを強調したり、やはり自尊感情の部分も含めてやらないといけないということは、法にもしっかり書かれているので、文科省の従来の下地づくりという面も重視した上での援助希求だというところは、決して法の趣旨から外れているというより、むしろその部分はしっかり書かれているので、改めて明確に説明してもいいのではないかと思う。
【委員】 法律の条文が大綱に移ったときには、SOSの出し方に関する教育と言われているが、そもそも法律では別に援助希求だけではなかったように思ったがいかがか。
【委員】 その通り。
【委員】 法の定義に照らしてもそうである。いくら閣議決定といっても、間違ったことを文科省がやる必要はない。今、本当に危険なことを、わざわざここで子供たちのためにやってはいけない。
ハイリスクの子供たちにSOSの出し方に関する教育を実施しても、裏切られ続けてきた子供たちは相談なんかしない。だから、問題はその子たち自身を取り巻く大人たちが、その子たちに信じてもらえるかどうかの問題であって、その子たちに一からSOSを出しなさいと言っても、周りの大人を信じていない子供は絶対出さない。大人が子どもたちに信頼されていないのに、子供にSOSを出しなさいと言う。SOSを出されても受けられない大人たちがそのように教える。だから、その子たちは、もう死ぬしかないというところまで行ったって、SOSなんか出さない。こういったことを踏まえて、SOSの出し方に関する教育ということを言わなかったら危険である。
それにもかかわらず、閣議決定でそうなっているから、SOSの出し方に関する教育だけということではなくて、先ほどの事務局の説明のように、法や大綱でこうなっていて、一方、文科省の従来の自殺予防教育ではこうなっているが、ピラミッドの図のここの部分がSOSの出し方に関する教育と言われているが、実際は、ピラミッドの全部が重要であるというような、従来文科省がやってきた自殺予防教育と閣議決定が矛盾しない形で、きちんと先ほどの説明のように出していただいた方がいい。
この資料5「自殺予防とSOSの出し方に関する教育の整理表」がよくない。整理表なんか出してしまうから、従来の自殺予防教育とSOSの出し方に関する教育が対立的にとらえられてしまっている。そうではなく、SOSの出し方教育は、自殺予防の援助希求の部分に相当すると言えば、別に対立するわけではないし、SOSの出し方教育の部分以外も、実は本当に重要だということ自体は、閣議決定に反するわけではない。
私は、ここの会議にいながら、SOSの出し方に関する教育を推進しますみたいな見解をもし書くのであれば、委員としての責任は取れない。だから、そのようなまとめ方にはしないでいただきたい。
【委員】 前回、冒頭で聞いたが、非常に事務局で言い回しを苦労なさったんだと思うが、我々の考え方は、今日の議題にも書いてあるように、今回の審議のまとめは、「SOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防教育の更なる充実について」という捉え方でよいか。要は、SOSの出し方に関する教育の報告書ではないということでよいか。
【事務局】 その通り。
【主査】 一番根源的なところに帰る議論ではあるが、要は、まとめのところの示し方をどうするか。前回の議論でも危険性については触れられている。本日、特に、医療や司法、福祉といった委員それぞれの現場の観点から、実際にリスクが高く、苦しんでいる子たちを念頭に置いたとき、我々がSOSの出し方に関する教育というものをどう捉えているのか、また子供たちに対しどう働き掛けていくのかということをきちんとした形で出す必要がある。そのための審議のまとめであるということを、本日の議論を踏まえ、少し長くなっても、真意が伝わるようにまとめていただければと思う。
【事務局】 先ほどの議論のとおり、少し言葉足らずの部分と、従来の自殺予防教育との関係が不明瞭な部分もあったので、しっかりまとめ直し、我々はSOSの出し方に関する教育だけを切り取って、これだけやればいいという間違ったメッセージ、これさえあればよいとは決して思っていないので、そのような誤解リスクも含めて、皆さんが読んで、このような全体像の中でのSOSの出し方に関する教育で、例えばこのようなリスクがあるので、これをやったからといって万能でもないし、危ない部分はまた別途対応が必要というか、それは本質的に大事な手当てがハイリスクの子には必要なんだというところも書き込んで、全体像として間違ったメッセージにならないようにまとめ直したい。今日の議論を踏まえた形で、分かりやすく、少し長くなるが、もう一度まとめ直したいと思う。
本日の議論を盛り込んだ、網羅した形での案文をそれぞれ見ていただくような形にはなろうかと思うので、そちらをまたそれぞれで、ここが足りない、またはここは間違っているといったことも指摘いただいて、そこを反映させた形でもう一度お示ししたい。
【主査】 そのような形で、もう一回少なくとも審議のまとめ(案)を検討する会議があるということでよいか。
【事務局】 先ほど説明した通り、特に今回でまとめ切るというわけではないので、本日頂いた意見を踏まえて修正したものをまた次回示す予定でいた。本日頂いた貴重な意見は反映させたい。
【委員】 そもそも論になるが、この会議は自殺予防教育に関する会議ではなくて、児童生徒の自殺予防に関する会議である。それで、児童生徒の自殺が増えていて、自殺予防教育をしっかりやらなければいけないが、自殺予防教育とは、ある意味で自殺予防のうちの1つのアプローチであり、いわゆる全体的予防、ユニバーサル・プリベンションと言われているもので、ハイリスクの人たちもいる中で、またこれもピラミッドの図になるが、その中のこれさえやればいいというふうになると危険である。このような自殺予防教育自体が自殺予防の中でのこのような位置付けであるといった記述も、審議のまとめの最初に少しあった方がいいのではないかと思う。
【主査】 自殺予防教育ばかりに目が行っている感じがして、今までのこの会議での議論の経過をたどれば、教師が知っておきたい自殺予防、つまり教師が正しい理解を持って、危機にある声を受け止められるような教師ということをまず第1に考えた。
そして、次にポストベンションとして、不幸にして自殺が起きたときに、連鎖を防ぐということを含めたポストベンションについて、緊急対応の手引を出した。
そして、そういう下地ができてきたであろうという中で、子供を直接に対象とする自殺予防ということで、子供に伝えたい自殺予防というところに来た。
そして、先ほどの法改正、閣議決定等があって、SOSの出し方に関する教育が出てきた。その中で、自殺予防教育について、自殺予防全般の中での位置付けということをもう一度改めてきちんと整理し、そして、先ほど委員から指摘のあった、我々が作ってきた自殺予防教育のピラミッド型の構造を明確にする。
そして、自殺予防全般、全ての児童生徒を対象に、その中の当然ながらハイリスクの子たちに対しどうするか。そのような包含的というか、全体的な自殺予防に対する見取り図をきちんと持った上で、何をやればよいのかということを示す。そんな形で、審議のまとめを出していただきたい。
また、委員の意見を受けながら、少なくとも次回示されたものを1つのたたき台にしながら議論したい。
SOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防教育ということで、我々が考えている、文科省が取り組んできた自殺予防教育を捉えていきたい。これを、今後、どのように普及啓発していくか。実際、浸透していないという批判もある。また、どうようにして充実していくのかという点が長期的な課題になると思う。
【委員】 自殺予防教育という今のピラミッドの部分だけではなくて、やはり本当に自殺予防をしたいということであれば、先ほどの実態分析の中に出てきているように、本当に複雑な要因のうちの家族関係が背景にあるという点が、学校問題以上にとても大きい。そうであれば、教員が子供の命を守ろうとするのであれば、1つは精神医療に関しての正確な知識を持っていること、個人要因の問題、それから家族要因として、今本当に問題になっている虐待や親子関係の問題に関してしっかり知識を持ち、それに対してどのように介入したらいいかということまで持っていないと、自殺予防のために教員が動けないと思う。自殺予防をするためには、虐待の背景にある家族問題にまで切り込むということで、例えば子ども家庭支援センターや児童相談所といった他の関係機関との連携が必要になる。当たり前のことだが、自殺予防は、学校だけではできないという点まで含めたことを、きちんともう一回審議のまとめで言っていただきたい。充実ということであれば、しっかりそこに戻っていただきたい。
【委員】 実態分析に関連して、私自身10年ほど心理学的剖検といって、自殺既遂者のご遺族を情報源として自殺既逐者の実態を調べるという研究をやってきたが、特に10代の若年者の場合、本当に分からないというところがあるし、親が情報源になることが多いので、それが本当に客観的な事実なのかどうかということが、とても悩ましい。
実際、我々が臨床現場で会う10代の子たちで自殺リスクの高い子たちは、やはり親にも先生にも本当の姿を見せていないだろうな、と思うことが多々あったりもする。
それから、私自身、いじめで自殺裁判で遺族側から意見書作成を依頼されることが度々あり、その中で稀に引き受けることがある。その折に感じるのは、学校側の主張と遺族側の主張との大きな食い違いである。でも、学校の先生を情報源とした調査というのは、恐らく事実の一面でしかない。といって、遺族が言っていることも自殺した子供の全てではないだろう。そういう意味で、本当に真実は藪の中だが、何か手掛かりが欲しくて調査をやらざるを得ないという苦しさがあると思う。そこをブレークスルーするために、しかも、負担が掛からない調査をするためにはどのような方式がいいのかということを考えている。
【委員】 質問だが、審議のまとめ(案)の一番最後のところに「SOSの出し方に関する教育の実態について、改めて年度内を目途に把握した上で、必要に応じて、留意事項を追加、見直すこととする」と書いてあるが、このSOSの出し方に関する教育の実態調査についてはどのように実施するのかということも、今回の議題に入っているのか。
【事務局】 SOSの出し方に関する教育が法改正で盛り込まれたすぐ後に、どれぐらい学校現場でSOSの出し方に関する教育、自殺予防教育が実施されているかということを調べたことがあるが、その1回であり、その後実態把握をしていないので、今後年度内を目途にもう一度今学校現場でどれくらいこれらの教育を実施しているか調べたいと思っている。
今回、留意事項をこの審議のまとめ(案)でもまとめているが、これは、関係者からのヒアリングを経てまとめているわけだが、今後学校現場でどのような教育がなされているかなどの実態を把握していく中で、新たにこういうところも留意した方がいいのではないかといった、新たに追加すべき留意点も出てくる可能性があると思ったので、今後のことということで書かせていただいた。
そのため、基本的には、どのような実態を把握するかといった実態把握の方法までこの会議の場で議論することまでは考えていないので、事務局で色々な実態を把握していく中で、少し気付いた点や、こういった問題が新たにあることが分かったときには、またこの会議でも諮ったりして、留意点を議論いただくといったこともあるかと思い、最後に付け加えた。
【主査】 私も「短期的課題」の中で、SOSの出し方に関する教育について閣議決定が行われ、進めましょうということが努力義務として示されていて、それを行うのであれば、今までの従来の自殺予防の全体像を示しながら、留意事項について示していくということかと思っているが、最後のところを見ると、SOSの出し方に関する教育がどのように行われているかを把握するというように見え、今学校で自殺予防教育、または自殺予防にどう取り組んでいるのかという全般的な実態を見るのか、SOSの出し方に関する教育にフォーカスして実態を見るということなのかが分かりづらい。私は全体の状況を見るのであれば意味があるかなと思ったが、その点についてはいかがか。
【事務局】 全体の状況を見るということの方が、より適切と思うので、そのように書き直したい。
【委員】 そうであれば、自殺予防教育をやっているとした場合、SOSの出し方に関する教育も含めて、どのようなプログラムを導入しているか、導入する予定があるのかという点も一緒に調査してもらうといいかと思う。普及状況というか、使われている状況を、恐らくオリジナルでプログラムを作っている場合もあるだろうし、どれがよいとか、どれが普及しているかということを調べるというよりは、なぜそのプログラムを選んだかということを、仮に調べていくとした場合、学校の置かれた状況というものも、そこからある程度読み取れるかもしれないと思う。
【主査】 今後自殺予防教育をどのように充実させていくのか、またはどのように進めていくのか考えるときに、SOSの出し方に関する教育だけではなく、一体どのようなプログラムを実施し、それをなぜ選んだのかということの実態を把握し、それを今後文科省としてどのように進めるかという議論に反映させていく。そのような実態調査であってほしいという意見かと思う。
【委員】 もしこのような研究があれば教えていただきたい。子供たちではなくて、大人たちもみんな死にたいと思っているんだよ、死にたいと思っても、それはいいんだよ、私だってそうだったし、自殺したいと思っていたし、そういうこと自体は全然変じゃないよ、死にたいと思うのは当たり前、あるいは、鬱になることは全然恥ずかしいことじゃないよ、鬱になるということは、風邪を引くのと同じだよ、ということを伝える教育はあり得るのではないか。教育の中で先生たちが、先生たちは死にたいなんて思ったことはないよ、死にたいなんて思ったこと自体が病気だよ、みたいな方向ではなくて、人間誰でも生きていたら死にたいと思うことはあるんだよ、私だってそうだったよと伝えることはあり得る。のではないか。
それを乗り越える方法はSOSを出すだけではなく、多分色々な方が色々な方法で乗り越えていると思う。そういう方法を子供たちと一緒に語るということはできないのか。私も鬱だったんだよ、鬱ってきついよ、みたいな、そういう話の方が、かえって子供たちに勇気を与えることがあるのではないかと思う。そういう教え方を用いることはできないのだろうか。
【委員】 北九州市のプログラムで、「誰にでも心が苦しいときがある。苦しいときは、必ず終わりがある。誰かに相談する力を持とう」というシンプルな、そこの「誰にでも心が苦しいときがある」というものの授業展開がどうなっているかというと、死にたいと思ったと子供たちに話しているかは分からないが、先生たちが体験談を語る。すごく行き詰まって、どうしていいか分からなかったときのことを最初に語ってもらうという形のことを割とやっていると聞いている。
だから、その点はとても大事だと思うし、内閣府のアンケートで、2,000人ぐらい調査したら、4分の1ぐらいの人が「死のうと思ったことがある」と言っていて、それを乗り越えたときに何をどうやったかという点について、身近な人に話を聞いてもらったと回答した人が一番多く、専門家の相談はとても少なかったが、そのような調査結果も出しながら実施するみたいなことは、私自身は教員研修などでは、いつもそれを使って、こういうものをやってくださいと言っているが、学校現場でそのような点がきっちり入っているかどうかは分からない。
【委員】 それに関連して、10代の患者の子だが、薬を飲んでちょっと授業中眠くなってしまって、うとうとしたときに、先生が来て、「僕も去年まで鬱で薬を飲んでいたから分かるよ。寝てていいよ」と言ってくれたときに、すごく楽になったと言っていた。そういう大人の失敗談やしんどい話はとても励みになるという部分はあると思っている。
それから、「助けて」を言うのは大変だが、やはり「助けて」と言えないよねという分かち合いで救われる人も実はいる。だから、少なくともジャージを着た先生が、「おまえら、朝飯食べないと鬱になるぞ」と言うよりは、はるかに支えられると思う。
【主査】
今最後に出てきたところ、とても大事な点で、これは自殺の問題だけではなくて、今教員自身が教育をどう捉えるのか、子供とどう向き合うのか、教師としての自分をどう捉えていくのかというところが問われているのだと思う。自殺の問題についてみんなで考えていくということが、一体子供たちと自分との関係はどうなんだろう、自分は教師としてどうあろうとしているのかというようなことを問い直していく切り口になると思う。
だから、簡単にやれるというのではなくて、難しいが、やるとしたらどうするかという議論が教員の中で行われることによって、教員一人一人が死について考えたり、自分の弱さを見つめ直したりすることを通して、子供の苦しみを知っていくということにつながっていく。そこが、何か表層だけ削り取られて、助けを求めなさいというふうにならないように、何とかこの会議で議論を進め、具体化していく。これも本当に「更なる充実」という中でとても大事なことかと思う。
それでは、ここまでの議論を踏まえて、事務局も大変だと思うが、「審議のまとめ」に生かしていただきたい。
―― 了 ――

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