2006年10月30日
山口県精神保健福祉センター所長 河野通英
(山口県CRT委員長)
今回の会議用に大急ぎでまとめましたので、表現が必ずしも適切でないカ所があるかもしれませんが、ご容赦ください。この資料は、自殺に限定せず学校で重大な事件・事故が発生した場合の事後対応(ポストベンション)について説明しています。自殺の事後対応だけをマニュアル化しても今の学校の実状では習得できないでしょうから、危機対応という枠組みの中で、その1つとして児童・生徒の自殺のポストベンションを位置づけ、備えるのが妥当と考えます。
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→ | このような状況下で意思決定を強いられる |
危機対応の目的(例) | 危機対応の達成目標(例) |
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1)子どもと職員の体と心を守る |
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2)教育など学校本来の機能を維持する |
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3)子ども、保護者、社会からの信頼を保つ |
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4)危機からも学び、プラスに変えていく |
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※7.には、背景調査、安全対策~再発防止策、より良い危機管理態勢の構築が含まれます。
危機対応の手段 | 内容 |
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[1]危機対応態勢と計画 | 状況把握、態勢確保、行事変更、計画 |
[2]遺族への対応と喪の過程 | |
[3]保護者への対応 | PTAとの協力、保護者会、文書 |
[4]マスコミ対応 | |
[5]警察との連携と学校安全活動 | |
[6]心のケア態勢と計画 | 被害把握、ケア態勢、学校再開計画 |
[7]子どもと家庭へのサポート | 気になるケースへの関わり、面接、電話 |
[8]教職員へのサポート | 教職員への教育、助言、ケア、サポート |
CRT側から見た支援のメニューは5つに分類されます。
事件規模 | レベル | 事案例 |
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大規模 | 6 | ●北オセアチア共和国学校テロ |
5 | ●大阪池田小事件 | |
中規模 | 4 | ●佐世保市の小6殺害事件(全国マスコミ殺到) ●寝屋川市教師殺害事件(全国マスコミ殺到) ●仙台ウォークラリー事故、3人死亡、20人以上重軽傷(全国マスコミ殺到) ●京都宇治小侵入傷害事件(全国マスコミ殺到) ●光高校爆発物事件、数十人救急搬送(全国マスコミ殺到) |
3強 | ●校内での飛び降り自殺、目撃多数、学校に報道殺到 ●小学校のプールで水死、児童目撃多数、学校に報道殺到 |
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3弱 | ●児童の列に車、1人死亡、2人怪我、目撃数名、学校に報道多数 ○親子心中事件、学校に報道多数 |
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小規模 | 2 | ○親子心中事件、学校に取材無し~僅か(旧基準ではレベル) ○自宅での自殺、学校に取材無し~僅か ●体育中に児童が倒れ、搬送先の病院で死亡 ○夏休み中に川での水の事故、複数児童目撃 |
小規模以下 | 1 | ○家族旅行中の交通事故で児童死亡 ○自宅で家族の自殺を児童が目撃 |
※ 特定個人・家族にとっての衝撃度ではなく、あくまで学校・学級の衝撃度(急性期)で段階を付けている点に注意してください。学校・学級としてはそれほどでなくても、個人・家族にとっては大変な事案はいくらでもありますから。
レベル | 教育委員会等派遣職員(注1) | 小規模校の場合 | 必要とする心の専門家 |
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レベル4 | 常時4人以上の実務者 | 左記に加え1~2人追加 | 15人以上(CRT他(注2)) |
レベル3強 | 常時3人以上の実務者 | 10人以上(CRT他(注2)) | |
レベル3弱 | 常時2人以上の実務者 | 6人以上(CRT他(注2)) | |
レベル2 | 常時2人以上の実務者 | 2人以上(SC) | |
レベル1 | 必要に応じて | 1人以上(SC) |
(注1)朝から晩まで実務を行う職員の数であり、視察や協議に訪れた職員などは人数に含みません。教育委員会職員以外に、自治体の事務職員等も含みます。
(注2)CRTの他に、SC(スクールカウンセラー)、自治体の保健師等を含んだ人数です。
CRTの活動はこういった人員態勢が前提となります。
(高校爆発物事件,2005年)
1週目 | 毎日7~8人 |
2週目 | 毎日3~4人 |
3週目 | 毎日2~3人 |
4週目 | 毎日2人 |
5、6週目 | 毎日1人 |
夏休み中 | 変則配置 |
9月以降 | 週1.5人 |
子どもが自分や他人の生命に関わるような衝撃的な出来事を体験したり、目撃したりした直後には、心と体にいろいろな反応や症状が出ることがあります。
これらは「衝撃的な出来事へのごく自然な反応や症状」であり、その多くは一時的なものです。しかし、その出来事が子どもにとって、あまりにつらく、また、適切な対応を受けていないと反応が長引いたり、症状をこじらせてしまったりすることがあります。
このパンフレットは、このような事態が起こったとき、子どもの心と体にどんな変化が起こるのか、また、どう接してあげるとよいのかなど、親としての基本的な対応について示したものです。
(事例については、小学校高学年を想定しています)
遊び・勉強
食べる・寝る
からだ
ピリピリ
赤ちゃん返り
ぼーっ
強がり
悲しみと怒り
こわい・不安
まわりの大人が落ち着いて子どもに接することで、子どもも落ち着きを取り戻していきます。しかし、大人が落ち着くということは、自分の気持ちをおさえることではありません。大人が自分の気持ちをおさえつけていると、子どもはそれを真似してしまいます。大人であっても、涙が出たり感情がこみあげてきたりするときには、「自分は、今こんなふうに感じている」と、子どもにわかる言葉で説明してあげてください。
また、子どもから衝撃的な話を聞くと、大人のほうが耐えられなくなることもあります。そのような場合は、別の大人に話を聞いてもらうことも必要です。それでもつらい時には専門家に助けを求めましょう。
何度も同じ話を繰り返すかもしれませんが、話すことで頭の中が整理されます。もちろん話したがらない子どももいます。話したがらない時には無理に聞き出そうとせず、「話したくなったらいつでも聞くからね。」と伝えてあげてください。
事実を子どもにどう伝えるべきか、悩むところです。きちんとした説明がないと、うわさ話が広がり、いろいろな想像をさせ、かえって子どもを不安にさせてしまいます。そんなときは、学校からの「お知らせ」も参考にしてください。
体の症状の治療のために病院に連れて行くことが大切です。苦痛を和らげるとともに、手当をしてもらうことで「守られている」という安心感を子どもに与えます。
小さい子のように甘え、一人になりたがらないときは、つきはなさないで、できるだけそばにいてあげてください。甘えることで心がいやされるので、たいていは徐々に落ち着いてきます。しばらくは、幼い子のつもりで接してみてください。
まるで何事もなかったかのように普通にふるまったり、逆にはしゃぎすぎたりするので、驚かされることがあります。これは、悲しみやショックを子どもの小さな心で受け止めることができずに、それを打ち消そうと必死で抵抗しているのです。本当は不安でいっぱいなのです。「悲しいね。」と気持ちを代弁してあげてください。いい言葉が見つからないときは、手を握ったり、背中をさすったりするなど、やさしく接してあげましょう。
予期せぬ出来事を体験すると、目に映る世界がそれまでとは違って見えてきます。だから、学校も家庭も可能な限り普段どおりの生活になるようにしてあげてください。食事、睡眠、勉強、遊びといった、いつもしていることを続けてください。これは悲しみやショックを無視するのではありません。悲しみを中心にしながらも、日常生活を保つことで回復していく力を低下させないためです。もちろんショックが強くて日常生活を保つことができないことがあります。その場合は専門家(カウンセラーや医療機関)に相談してください。
※ これまで説明したことは、ほんの一部です。心配なこと、困ったこと、分からないことがあるときは、一人で悩まず、まず学校に相談してください。
長期入院していた同級生が亡くなった場合は喪失体験ですが、トラウマにはならないでしょう。
逆に、全く知らない他人が殺されるのを目撃するのはトラウマとなりえますが、自分と無関係の人が亡くなっても喪失体験にはならないでしょう。
担当 | 場所 | 態勢 | 備考 |
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CRT | 相談室1 | CRT2人 | |
相談室2 | CRT2人 | ||
カウンセラー | 相談室3 | カウンセラー1人 | 予備2人 |
相談室4 | カウンセラー1人 | ||
教職員 | 相談室5 | 教師2人 | |
相談室6 | 教師2人 |
(高専学生殺害事件の例)
(大人であれば)刑事事件に該当するような事案と、そうでない事案とは一応区別しておく必要があります。以下は、刑事事件に該当しない場合を想定しています。
初等中等教育局児童生徒課生徒指導室