資料8 自殺予防に向けての政府の総合的な対策について

平成17年12月26日
自殺対策関係省庁連絡会議

  我が国における自殺の死亡者数は平成9年まで2万5千人前後で推移していたが、平成10年に3万人を超え以後その水準で推移している。自殺者数が増加し、減少していないことに関しては、健康問題、経済・生活問題、家庭問題の他、人生観・価値観や地域・職場のあり方の変化など様々な社会的要因が複雑に関係しているとされており、自殺予防対策を推進していくに当たっては、多角的な検討と包括的な対策が必要になる。
  こうした状況を踏まえて、平成17年7月には参議院厚生労働委員会において「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」がなされた。政府においても自殺問題を喫緊の課題として総合的な対策を推進するため、自殺対策関係省庁連絡会議の場において、検討しているところであるが、今般、関係省庁が連携して、以下のとおり、対策を取りまとめた。今後とも、関係省庁が一体となってこの問題に取り組んでいく。

1.自殺の実態分析の推進

  • 統計調査等から得られたデータ(自殺者数、自殺率、原因・動機、手段等)を分析するとともに、予防対策に向けた必要な情報の不備を補完するための新たな調査を検討するなど、関係省庁の協力も得て、自殺の実態や要因の分析を社会的要因も含め多角的に進める。(厚生労働省)
  • 自殺予防における対象、方法などの介入ポイントを明確化し、地域における自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)を減少させるための対応方法の研究を推進する。(厚生労働省)
  • 自殺と関連の強いと言われるうつ病等の精神疾患について、病態解明や治療法の開発などを推進する。(厚生労働省)

2.自殺予防に関する正しい理解の普及・啓発

  • 国立精神・神経センター精神保健研究所に設置予定の自殺予防総合対策センター(仮称)等を活用し、国民に対する正しい知識の普及啓発を強化するとともに、一般向けの自殺に関する情報や行政担当者等向けの自殺予防対策に関する情報の提供を拡充する。(厚生労働省)

3.相談体制等の充実

(1)ライフステージ別の対策

1.児童生徒

  • 学校において、体験活動を活用するなどして、児童生徒が命の大切さを実感できる教育を推進するとともに、スクールカウンセラーや、こどもと親の相談員の配置などを行い、相談体制の充実を図る。(文部科学省)
  • 児童生徒の自殺の特徴や傾向などを分析しながら、自殺予防の取組の在り方について調査研究を行う。(文部科学省)
  • 子どもの心の問題に対応できる医師等の養成を推進する。(厚生労働省)

2.労働者等

  • 労働者に対するメンタルヘルスについての正しい知識の普及を推進するとともに、相談事業の充実を図る。(厚生労働省)
  • 事業場におけるメンタルヘルス対策についての指針を公表し、その普及啓発を図るとともに、事業場に対する支援を実施する等事業場内における対策の充実を推進する。(厚生労働省)
  • 失業者に対して早期再就職支援等の各種雇用対策を推進するとともに、ハローワーク等の窓口においてきめ細かな職業相談を実施するほか、失業に直面した際に生ずる心の悩み相談など様々な生活上の問題に関する相談に対応する。(厚生労働省)

3.高齢者

  • うつ状態にある高齢者を早期に発見し、適切な相談等につなげるための体制を整備する。(厚生労働省)

(2)地域における対策

  • 保健所、精神保健福祉センターなどにおいて、心の健康問題に関する相談事業を充実する。(厚生労働省)
  • 地方自治体の自殺関連の担当者に対してうつ・自殺対策のマニュアル、等を配付し活用を促す。(厚生労働省)
  • 地方自治体が独自で対策を進めるに当たって、地方自治体ごとの特性(年齢層、性別、産業構造、地域性)に基づいて適切な対策をとることができるように基礎データの分析を行い、成功事例等とともに情報提供を強化する。(厚生労働省)
  • 自殺の危険性(リスク)が高いとされるうつ病等の患者が早期に医療を受けることができる体制や、精神科救急体制の整備を図る。(厚生労働省)
  • 法的なトラブル解決への道案内が受けられる体制を全国に整備する。(法務省)
  • 農村における高齢者福祉対策を農業協同組合やその助け合い組織等の協力を得て推進する。(農林水産省)
  • 農山漁村における高齢者の生きがい発揮のため、ハード整備や情報インフラ整備を行うなど、快適で安心な農業環境・生活環境づくりを推進する。(農林水産省)
  • 商工会・商工会議所等と連携し、経営の危機に直面した中小企業を対象とした相談事業、中小企業の一般的な経営相談に対応する相談事業を引き続き推進する。(経済産業省)
  • 商工会・商工会議所等の経営相談窓口を訪れた中小企業者に対して、その経営相談にとどまることなく適切な対応が取れるよう、相談員へのメンタルヘルスについての正しい知識の普及を推進する。(経済産業省)

(3)相談員の育成支援

  • 自殺予防総合対策センター等で研修事業を行い、公的機関や、民間団体の相談員の資質の向上を促す。(厚生労働省)
  • 教育相談を担当する教員の資質向上のための研修を行う。(文部科学省)

4.その他の自殺予防対策

  • 従来から行っている自殺するおそれのある家出人に関する家出人発見活動を継続して実施する。(警察庁)
  • 「インターネット上の自殺予告事案への対応に関するガイドライン(平成17年10月5日電気通信事業者団体において策定)」を踏まえた適切な措置に努めるとともに、普及啓発を推進する。(警察庁、総務省)
  • インターネット上の違法・有害情報に関して、プロバイダ等による自主的措置及びこれを効果的に支援する方策等について検討する。(総務省)
  • インターネット上にある自殺関連情報等のサイト閲覧を制限するフィルタリングソフトの無償提供や、フィルタリングソフト普及のための普及啓発セミナーの開催等を実施する。(経済産業省)
  • 児童を自殺関連サイト等から保護することを目的として、現在パソコン向けに実現・普及しているフィルタリング機能をモバイル(携帯電話等)向けにも実現するための研究開発を推進する。(総務省)
  • 違法・有害情報対策に関する情報モラル教育を推進する。(文部科学省)
  • 旅客の転落防止等のために設置している鉄道駅のホームドア・ホーム柵について、技術上設置可能な箇所について整備を促進する。(国土交通省)
  • 事業存続の可能性がある中小企業が、一時的な経営環境の悪化等の要因により安易に廃業・倒産に至らないようにするための支援を行う。(経済産業省)
  • 都市と農山漁村の交流を通じて、農山漁村地域の住民の生きがい発見と都市部住民への癒し・安らぎの場を提供するため、グリーン・ツーリズムを推進する。(農林水産省)
  • 倒産やリストラ等に伴う経済・生活問題について、雇用の創出・安定、中高年者をはじめ失業した場合の早期再就職支援等の総合的な雇用対策等を推進する。(厚生労働省)
  • WHOや諸外国が示している自殺報道のガイドライン等の収集・分析を行い、その成果を広く情報提供する。(厚生労働省)

5.自殺未遂者のケア

  • 民間団体とも連携し、救急病院に搬送された自殺未遂者が退院後も精神科医や相談機関によってフォローアップされる体制の充実を図る。(厚生労働省)
  • 自殺未遂者が再び自殺をしようとしないための働きかけの方法や、民間支援団体との連携方法について研究を強化する。(厚生労働省)

6.自殺遺族・周囲の人のケア

  • 自殺遺族に対するケアのあり方等について精神保健研究所等の研究機関を中心に検討する。(厚生労働省)
  • 自殺遺児に対するケアが的確にできるよう学校教職員、スクールカウンセラーに対する研修等を行う。(文部科学省)

7.連携

  • 自殺対策関係省庁連絡会議を定期的に開催する。(関係省庁)
  • 政府における各省庁の、自殺対策の担当窓口のリストを作成し、公表する。(関係省庁)
  • 各都道府県において自殺問題を担当する部署を明確化するとともに、民間団体とも連携する自殺対策連絡協議会の設置を促す。(厚生労働省)
  • 各都道府県において、自殺対策活動を行っている公的機関・民間団体等が互いに連絡を取ることが出来る、確かな連携体制の確立を促す。(関係省庁)
  • 具体的な自殺の相談に対して適切に対応するため、関係団体の連絡・調整を担う自立的・中間的な民間団体の在り方等の研究を進め、その成果を普及させる。(厚生労働省)

8.目標及び今後の推進スケジュール等

  • 定期的に開催する自殺対策関係省庁連絡会議にて、進捗状況について報告・公表するとともに、各省庁が自らそれまでの評価を行う。(関係省庁)
  • 2年以内を目途にすべての都道府県において自殺対策連絡協議会を設置されるよう促す。(関係省庁)
  • 自殺率を20パーセント減少させるための地域における対応方法及び、自殺未遂者の再企図率を30パーセント減少させるための自殺未遂者への対応方法を5年以内に確立し、全国に展開する。(厚生労働省)
  • 5年後の中間期を目処に中間評価を行い、その結果を以後の政府としての自殺予防対策に反映させる。(関係省庁)
  • 以上のような種々の施策を講ずることにより、当面は、今後10年間で自殺者数を急増以前の水準に戻すこととする。

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