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児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(平成23年度)(第4回) 議事要旨

1.日時

平成24年1月27日(金曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省 旧庁舎2階第2会議室

3.議題

  1. 自殺予防教育の取組に関する事例紹介
  2. 討議
  3. その他

4.出席者

委員

新井委員、荊尾委員、川井委員、菊池委員、窪田委員、阪中委員、高橋委員、村瀬委員

文部科学省

白間児童生徒課長、郷治生徒指導室長、鈴木生徒指導調査官 他

5.議事要旨

開会

議事

 (1)教育委員会等における自殺予防に関する研修の実施状況に関する紹介及び質疑が行われた。
 (2)自殺予防教育の取組に関する委員からの事例紹介及び討議が行われた。

 

(1)研修の実施状況に関する紹介等

【委員】それでは、第4回児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議を開催いたしたい。まずは、事務局から資料の説明をお願いしたい。

【事務局】資料1として、児童生徒の自殺防止に関する研修の実施状況調査の結果概要を配付している。平成21年度から平成23年度に、「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」及び「子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き」を活用した研修を行っている都道府県・指定都市教育委員会、市町村教育委員会の状況について調査した。結果を見ると、平成23年度までに、8割以上の都道府県教育委員会が研修を実施している。研修の対象者や、対象者が学校関係者の場合の学校種などもまとめたので、後ほどご覧いただきたい。

 また、「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」や「子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き」、背景調査や実態調査等の通知に関して、教育委員会や教員に広く周知するため、全国4ブロックで児童生徒の自殺予防に関する普及啓発協議会を開催している。

【委員】普及啓発協議会で講師を担当した委員から、一言ずつ感想をお願いできないか。

【委員】参加者の熱心度は昨年度よりも高いと感じた。また、生徒指導担当者や教育相談担当者、養護教諭の方は自殺に関する知識、自殺のサインに非常に関心が高い一方、管理職や教育委員会の方は自殺が起きてしまったときの事後対応についての関心が高いというように、立場によってニーズが異なるという印象であった。

 参加したいずれの回も、講演後の質疑は背景調査に関する内容であった。また、協議会が終わった後に、個別に相談に来る方が数名おり、現実に困難を感じている方が来ているのではないかと感じた。

【委員】参加したいずれの回も、私学の先生から個別の事例や調査の方法などについて質問や相談があり、私学関係者の関心やニーズも実感した。立場によってニーズが異なるという点は同意見である。今後実施する際には対象者を分けると、こちら側から伝えるべき内容も明確になり、より良い研修になる。

【委員】協議会の終了後、私学関係者から、事後対応において外部から支援を求める方法などの切実な相談を受けた。私学を巻き込んでいく以上、具体的な情報を私学に提供するなど、もう少しはっきりとした形の支援が必要である。

【委員】子どもの自殺予防に関して学校側のニーズは現実に高く、このような協議会の機会を設ければ熱心に参加してもらえるということであった。では、事務局からの説明や、普及啓発協議会に参加した委員の発言に対する質問などあればいただきたい。まず、資料1のポイントはどこにあるのか説明してもらえないか。

【事務局】資料を活用した研修の実施数は年々増えてきている。しかし、都道府県の単位では熱心に取り組んでいるが、市町村の単位では、平成23年度までの3か年で見ても全体の5割弱の市町村教育委員会が研修を実施していない。市町村単位での研修の実施に難しい面があるのかもしれない。また、管理職や指導主事を対象とした研修の機会が多いが、一般の教員に対する研修の機会が少ない点は注意すべき点である。また、都道府県・市町村ともに、小学校、中学校における研修の機会が多いが、高校や特別支援学校が非常に少ない。こうした点への対応も今後求めていくようにしたい。

【委員】一番ニーズがあって良いはずの高校関係者に対する研修が少ない印象は否めない。  また、先ほど私学の先生の話が出たが、私学では、教育委員会に対して臨床心理士やCRTの派遣をなかなか依頼できず、何かが起きたときの事後対応が全て内部で処理されるようになっているので、不安感を持っているという声を聞いたことがある。

【委員】研修の実施状況について、地域的な濃淡など、地域ごとの特徴は見えてくるものか。

【事務局】分析不足で恐縮だが、地域差については分からない。都道府県や政令市の取組を聞いて回る中では、研修に力を入れていると話している自治体も少しはあるが、やはりまだ取り組み始めたばかりではないかという印象である。

 

(2)自殺予防教育の取組に関する委員からの事例紹介

【委員】他にはよろしいか。では、ここから、自殺予防教育の取組に関する事例紹介をお願いしたい。

【委員】それでは、主に3点にわたってお話したい。まず、視察する機会があったアメリカとオーストラリアにおける自殺予防教育の取組を簡単に振り返りたい。次に、教員の自殺予防教育に関する意識や大学生の自殺予防に関する意識の調査結果を報告したい。最後に、実際に自殺予防教育を実施して感じた課題を提示したい。

 アメリカで2つの学校の自殺予防教育の取組を視察した中では、どちらも健康教育の範囲の中で、スクールカウンセラーや健康教育の教員が、1~3時間のプログラムを実施していた。マサチューセッツ州では、ロールプレイやディスカッションを通してうつや自殺の誤解を解き、正しく自殺予防の知識と理解を深めるSOSプログラムという取組があった。これは、自殺の深刻さを伝えるとともに、うつ病や自殺の危機にある友人をどのように支えていくのか、映像教材を用いて行われているものである。また、同州内の高校の授業では、市販の教材を用いた授業も行われていた。これは、自殺のサインに気づき、関わって、信頼できる人につなぐということを意味するACTの考え方を徹底するような内容である。メイン州では、1985年頃から様々な取組がなされている。昨年度視察に行った際には、命を守るために、友人同士でどのように助け合うのかという内容について、ロールプレイなどの体験を通して学ぶ仕組みができていた。

 オーストラリアでは、自殺予防教育のためにMindMattersという教材が作成されており、政府保健省のホームページからダウンロードすることができる。この教材は全8冊であるが、教師向けの自殺予防プログラムも含まれており、いのちの教育、学校における自殺・自傷予防について50ページにわたって記載されている。  また、MindMattersの基本理念として貫かれているのは、学校に基盤を置く自殺予防は、基本的には心の健康の増進にほかならないという点である。レジリエンスの強化ということで、オーストラリアの中等教育は11歳から17歳までを対象としているが、その前期半ではコミュニケーションについて、後半ではストレス対処などについて学ぶという一連のプログラムになっている このように、プログラムとして示されなければ、なかなか実際の学校現場では行われないということを実感した。海外で作成されているプログラムから学ぶべきところは多い。

 次に、日本の話になるが、教員の自殺予防教育についての意識調査の結果についてである。これは、県の教育委員会が主催する研修会や養護教諭の勉強会を実施している機会を捉えて、参加者に事前に質問用紙を配布し、回答いただいた調査である。その結果、中学校でも6,7人に1人が学校危機として自殺を経験していることや、1割程度の教員が自殺予告を経験していることが分かった。児童生徒の自傷行為を学校危機として経験した教員は5割程度となっているが、別の調査では、児童生徒全体の1割が自傷行為を経験しているという報告があり、養護教諭の9割以上はその対応に苦慮しているという。教員の5割しか経験していないという数値は、教員にはなかなか子どもたちのSOSに気づきにくい実態があることを示すものであると思われる。

 ある県内で小学校5年生から中学校2年生に対して、いのちに関するアンケート調査を行った結果によれば、人は死なないと思っている子どもが約2%いることや、死んだとしても生き返ると考える子が10%弱いるなどから、死の捉え方を正しく教える必要があると思われる。

 また、小・中・高等学校の教員に対して、子どもの「いのち」の捉え方に対する印象調査した。その結果、6~7割の教員が、「いのち」の大切さを理解していないと思われる言動が目立つと回答している。個人的には、子どもはいのちの大切さは分かっているのだが、いのちを大事にできない現実があり、それにどう対応していくかが大事だと考えている。しかし、教員側にこのような意識があることが、自殺が起こった際に集会を開き、校長先生がいのちを大事にしなさいとい言う訓話を行うような対応につながっているのではないかと感じている。また、自殺予防教育に対する関心については、自殺予防教育に「非常に関心がある」という回答は2割前後、「やや関心がある」という回答を含めると7~8割程度になる。自殺予防教育の必要性についても、2~3割が「大いに必要である」と回答しており、「やや必要」という回答を含めると7~8割になる。これは自殺予防に関する研修を受けていない方の認識だが、1999年に、教師向け自殺予防プログラムを受けた後の振り返りとして質問した際には、「必要だ」は57%、「どちらかと言えば必要だ」と回答している教員を合わせると8割以上となっており、研修をすれば教員の認識は高まる可能性が高いと思われる。

 また、2007~2008年に、生徒向け自殺予防プログラムの必要性について、教員心理職、保護者、一般等を対象として調査し、平均値を出した結果からは、「必要だ」というのが74%になっている。中学校の職員研修として行った際に得られた回答は、「必要」というのは5割にしか達していないが、一方で、何らかの参加の意思のある方が集まる研修の際に得られた回答は「必要」と答える割合が高いため、必要と感じる認識の差が大きいと思われる。多忙な学校現場の中で、「必要」とまで答えられない現状があるのかもしれない。

 次に、大学生の自殺予防に関する意識についての調査結果を紹介したい。1999年の調査では、友人から「死にたい」と打ち明けられたときに、まず聴くという回答が約4割、傾聴する姿勢がない回答が36%、「支えられない」、あるいは「わからない」と回答している者が全体の約4分の1であった。昨年度に実施された同様の調査でもほぼ同じような結果が出ており、大学生の実態は十数年前と変わらないということである。

 続いて、自殺防止のための援助機関に対する認知度については、1999年では、「勧めたいが、どこがいいかわからない」という回答が43%、「どこも勧めたくない」が16%となっており、援助機関を全く知らないという回答も14%あった。昨年度の調査では、「勧めたいが、どこがいいか分からない」という回答の割合が上がっており、半分の学生は、自殺防止のための援助機関としてどこに相談すればよいかが分かっていないことになる。以上のような教員や学生の実態を踏まえると、子どもに自殺の危機を乗り越える力をつけること、互いの危機を察して適切に対応できる力を育むこと、生涯を見通して精神保健の理解を深め、培うことを目的とした自殺予防教育に取り組んでいくことを考えていく必要があると考えている。また、そう思って、細々とではあるが実践してきた。

 視察で目にした取組は、すべての子どもを対象としていたが、その場合、自殺の危険の高い生徒をよく見きわめて、教育相談や保健室で個別に対応することも含め、援助機関や家庭と連携をとる必要があり、そのための下地をつくることが必要だと思われる。

 次に、実際に中学生に向けて実施した自殺予防プログラムをご紹介し、自殺予防教育の課題についてお話したい。このプログラムでは、友達の危機に「きづいて よりそい うけとめて しんらいする大人に つなげよう」という内容を伝えるため、頭文字を取って、自殺予防は「きょうしつ」から、と伝えている。内容的には大人にも通用するものだと思われる。専門機関とのつながりを持ち、信頼できる学校の教員の輪をつくっていくことから自殺予防教育は始まると思う。

 プログラムの具体的内容についてだが、全10時間からなるプログラムのうち、7時間目と8時間目は自殺という言葉を前面に出した。7時間目では、道徳的なことは持ち出さず、グラフや新聞などで自殺の深刻な実態を伝え、自殺予防の正しい知識を身につけさせることや、誰もが経験する可能性があるひどい落ち込みや苦しみの中で命を支える力について考えさせることをねらいとして、前6時間で扱ったこととも関連づけて授業を行ったう。また、8時間目は、苦しみの中でも命を乗り越える力を培ったり、友達の危機を察知したら寄り添い、信頼できる大人に必ずつなぐこと、死にたいと打ち明けられたらどのように対応すべきかということ、死にたいという気持ちを相談すれば受け入れてもらえるということをロールプレイで体験するような授業を実施した。

 実施にあたっては、毎年継続して実施している生活アンケートの結果から、自殺の危険の高い生徒を事前に見きわめておくこと、授業担当者以外に2、3人が必ず教室に入って生徒の表情や様子を見守るように留意した。また、命の授業を実施している間に辛くなったり、気分が悪くなったら、すぐ申し出るように伝え、丁寧に授業を進めるようにした。また、他の教員に教室に入ってもらい、ロールプレイに加わってもらったり、ストレスを感じたときの体験を話してもらったりするなど、学年で一緒に取り組んでいるという姿を子どもたちに見てもらうようにした。さらに、道徳的な価値を押しつけるのではなく、事実に基づく自殺予防の正しい理解と知識を伝えた上で、グループの話し合いをたくさん入れて、できるだけ子どもたちが参加できるようにすることをめざした。授業の中で振り返りを行ったところ、よかったという回答が6割、まあまあよかったを含めると9割に上り、5カ月後に授業の最初に実施した同じQ&Aを行ったところ自殺に関する正しい理解も向上した。また、「死にたい」と言われたらどうするかという問いに対する非援助的な回答は2%程度に減らすことができた。

 今後に向けて課題として感じているのは、現状では、ほとんどの人が実施が困難であると思っている点である。困難を感じる理由としては、寝た子を起こすといった理由よりも、指導案やカリキュラムがないこと、実施に当たっての共通認識を持つことが難しいこと、が大きいようである。また、自殺遺児や死別体験のある子への配慮が難しいという要因もあげられている。本会議においても、誰が、何を、子どもたちにどう教えるか、ということをこれから考えていかなければならないと思う。誰が自殺予防教育を実施するかについては、担任、教科担当者など選択肢はいろいろあるので検討が必要であるし、何を実施するかについても、例えばレジリエンスを強化する内容などをどういうことを伝えていくのか、検討が必要である。

 また、どの時間で、どの授業を実施するかという課題もある。自身が実施した際には、総合的な学習の時間や特活等の時間を使用した。また、各教科の中には自殺予防教育の視点から話ができる内容が多く存在するので、自殺予防教育の視点を各教科の先生が持つことで変わる部分も大きいと思われる。

【委員】現在、実践されている自傷・自殺予防教育の中で、むしろ危険をもたらしかねない方法で行われている例があれば、具体的に教えてもらえないか。

【委員】亡くなった子どもの部屋の風景を見せて、お母さんだったらどう思うかを考えさせ、死んではいけないということを伝えるような取組は聞聴いたことがある。自殺してはいけないということを伝えるためにグループワークをさせる例もあるが、グループ内に自殺の危険の高い子がいることを想定しているかどうか不安であり、違和感を感じる。また、自分の辛い気持ちを友達や教員に相談する、という内容を教えても、他の教員が自殺するなんて考えるな、といった態度であれば現実には相談がなされないことも考えられる。

 やはり、取組について学年や学校内で共通理解があるのか、また、その取組がどのような位置づけになっているのか、ハイリスクの子がいたときにつながる援助機関はあるのか、といったことが考えられていることが必要と思われる。

【委員】自殺の場面を想起させるような内容を教育の中に含めること自体、非常に危険であるということを理解してもらわなくてはいけない。また、善意で自殺予防教育をしている方の中には、自殺の手段をあまり細かく見せてはいけないということへの配慮をせず、自分の思い込みから、子どもたちにそういうことを一方的に伝えている例があるということと理解した。

 細かいことを言うようだが、人は死んでも生き返る、といった死生観を調査する場合、小学校5年生から中学2年をまとめるのは年齢幅が広過ぎないか。本当はもう少し年齢を区切って調査した方が良いと思われる。

【委員】学年を分けて調べると、「人は死んでも生き返る」と回答する割合は中学2年生が一番高くなっている。他の調査でも、中学生で15%程度が「人は死んでも生き返る」と回答している。輪廻のような考え方もあると思うが、クラスに1人か2人は、本当に人が生き返ると思っている子がいるのではないかという感触である。

【委員】追い詰められると死の概念が変化してしまうということも指摘されているが、「生き返ることができる」という回答は年齢とともに減るというのが一般的なデータである。高い値が出た場合には、セレクションバイアスがかかっている可能性を考えるべきだと思う。

【委員】詳しくお話をいただいたが、自殺予防教育を行うとした時の要点、これだけは外してはいけない、という点をお話頂けないか。

【委員】アメリカのプログラムにある、ACTは重要であると思う。すなわち、Ackenowledge(危険に気づく), Care(相手を気遣う), Tell a trusted adult(責任のある大人に伝える)である。それから、レジリエンスの強化、援助機関を知ること、相談するという事に対する肯定的な捉え方、精神疾患に対する教員や保護者の誤解を地道に解いていくこと、などではないか。

【委員】これまでのお話を踏まえて、自殺予防教育を実施する際に必ず押さえなければいけないと思われる点を挙げてみたい。まず、とにかく早い段階で問題を認識し、援助を求めることを強調すること。要するに、人生では誰でも問題を抱えることがあるので、一人で抱え込まずに必ず信頼できる大人に相談するという点。そして、事実そのものに現実の深刻さを語らせ、中立的に自殺を取り上げるという点。ストレスについて取り上げ、将来どのような問題を抱える可能性があるのかを伝えるという点。自殺の背景にはしばしば精神疾患が隠れていることがあり、精神疾患には効果的な治療法があることを強調する点。このようなことであったと思う。

 また、自殺の方法を詳しく伝えたり、遺体の画像を見せたりといった、自殺の手段については絶対に伝えないという点、自殺自体をおとしめたり、逆に美しい行為のように取り上げるようなことはしてはいけないという点もあった。さらに、具体的にいじめなどに気づいたときや、友人の自殺の危険に気づいたときにどう対応するべきかを伝えるという点、地域にはどのような自殺予防関連の機関があるかを取り扱うという点、一方向性の授業にせず、生徒も関与できるような形の授業になるよう工夫するという点もあった。これら以外にも抜けている点があるだろうか。

他の先生からも質問や意見があればいただきたい。

【委員】紹介いただいた実践では、全10時間分のプログラムのうち、6時間分の積み重ねがあって、7、8時間目で自殺予防に焦点を当てた授業を行っているが、今後、自殺予防教育を現実的に普及させていくことを考えたとき、自殺予防そのものに焦点を当てた7時間目、8時間目の2コマに当たる部分だけを、教員で共通認識を持ちながら実施することは可能なのか。やはりベースとなる6時間の命の教育がなければ難しいのか。

【委員】まだあまり整理できておらず、直接的な回答ではないと思うが、7、8時間目は自殺予防の時間という区切りではなく、命の授業として扱う中で、自殺という言葉を出した。オーストラリアでもアメリカでも、自殺予防の時間ということではなく、レジリエンス、喪失、精神疾患など、広く健康教育を扱う中で自殺予防教育を行っている。

【委員】今の点に関連して、厚生労働省の自殺予防に関する研究に携わる中で、昨年9月に北京で開催された国際自殺予防学会に参加していた各国の専門家に対し、自殺予防教育にどのように取り組んでいるのかについて質問書を送り、回答を求めた。18カ国から回答を得ることができた。自殺予防教育を実施しているのは大半が欧米で、アジア、アフリカ、南米のほとんどは、自殺予防教育を実施するだけの余裕がないということであった。また、自殺予防教育だけを取り出して、全国で一律に自殺予防教育をやっている国は一つもなかった。健康教育やレジリエンスの促進、問題認識などを中心に据え、それを土台に、各学校の判断で必要に応じて自殺予防教育を実施しており、国は自殺予防教育を実施しようとする学校に対しては積極的に支援を行い、教材なども用意するという場合がほとんどであった。極めて常識的に取り組んでいるという印象を受けている。

 さて、何時間程度実施するかいう点についてはいかがか。調べた限りでは、各学区や学校の必要性に応じて実施されている場合が一番多い。学校において健康教育や自殺予防教育は決してコアカリキュラムではないので、そう長く時間を使っているところはない。どの程度が現実的だろうか。

【委員】レジリエンスなど一般的な健康教育やキャリア教育を含めない、自殺予防教育と銘打っていいような授業のみであれば、同じ学年でやるとして、2、3時間が可能だと思われる。以前の会議で他の委員から紹介していただいた事例では、小学5年から中学3年まで、各学年1時間ずつ積み上げる形であった。

【委員】先程詳しく紹介いただいた取組は、1つの学年の中で実施したのか。

【委員】1年の3学期と、2年生の1学期、2年生の2学期か3学期と分けて実施した。

【委員】では、自殺予防教育の担当者についてはいかがか。海外からの回答では、最初は外部から専門家を呼んで実施するという場合や、学校内の、保健についてよく知っている先生が担当するという場合があった。担任などが担当するのが理想的だが、最初から一般の教員にそれを求めるのはかなり難しいという答えもあった。

【委員】先程詳しく紹介した取組の中では、最初から何の研修も受けていない担任が実施するのは難しい、あるいは、担任がやり辛いと思っている部分は、自分が担当した。ただし、パワーポイントや短いビデオなどの教材があれば、担任の先生もやりやすい。また、養護教員の先生やスクールカウンセラーなどが学校の中で核になると、そこから取組が広がるのではないかと思っている。

【委員】内容や時間数、担当者など、色々と議論はあると思うがいかがか。

【委員】本校では全クラスで自殺予防教育を実施し、全て担任が担当した。その際、スクールカウンセラー、養護教諭、さわやか相談員などが必ず入るチームティーチングの形にするよう心がけた。担任が実施することの危険性を指摘する声もあったが、指導案や授業の進め方に関する資料が確立された中で実施したため、そのような危険性はあまり感じなかった。むしろ、必ず全教員が実施しなければならないということで、研修への身の入り方も違ったと思う。また、教育委員会の指導主事に模擬授業を実施して、教員が生徒役となって授業を受けるような取組も行った。

 取り組んだ中で、一番課題と考えているのは、授業で学習した内容をいかに子どもたちに保持させるかという点である。授業を実施して終わりということではなく、授業で学んだ内容をいかに実践で活用させるか、いかに意識づけする場面を設けるかといったことを課題としている。また、取組を行った結果、リスクの高い子どもが見つかるが、重篤な子どもを医療機関等につなぐときの対応が難しく、課題を感じている。

他機関につなぐ際には、その方法も、受け入れ先のキャパシティーの面にも課題がある。

【委員】保護者に対して、どのような形で、授業の意味やその後に必要になる対応などの理解を求めるような対応をしたか教えて欲しい。

【委員】本校の場合、授業参観を行い、どのような内容を扱うのかを説明して、見ていただいた。相談機関については、事件や事故が発生する度に、ご家庭に文書を出すなどして連絡を取っている。

【委員】例えば、県や政令指定都市の精神保健福祉センターに連絡をとって、自殺予防教育を始める前段階の共通認識を得る意味で、教員を対象に講演をしてもらい、十分な質疑応答をしていたりすれば、ある程度の関係が作れるし、問題を抱えている生徒の相談を持ちかけたときにスムーズに進むと思うが、そのような工夫はしていないのか。

【委員】実際に学校に来て何かをしていただくことはしていない。精神保健福祉センターは域内に1つしかないが、域内の小中学校は百数十校ある。市域内にある全ての学校に来ていただくのは実際には難しい。

【委員】指導案を作れば実現できるという考え方には疑問がある。他の地域では、医療機関の協力体制を背景にしていたりするのではないか。

【委員】近隣の児童精神科医や精神科医など、5人の方に校内研修等で学校に来ていただいた。子どもの問題を親身に考え、連携しながら取り組んで下さる精神科医の先生は少なくないと思っている。ただし、そのような専門家の数に対して、自傷行為など、問題を抱える子どもの数が多いということではないかと思っているた。現実には学校に来ていただいている精神科医の先生も予定が詰まっており、なかなかすぐに診ていただけなかったこともある。学校と連携しようという考えの先生には、どこの学校の教員もその先生につなごうとして殺到してしまうことがあるのかもしれない。しかし、私自身は多くの専門家に助けていただいたから自殺予防教育ができたと考えている。

【委員】現在、スクールカウンセラーが担任の先生と一緒に実施することを目標として、リーフレットと指導書を使い、数年かけて研修を行っている最中である。リーフレットの作成や研修は、精神保健福祉センターが内閣府の自殺対策基金の交付を受けて行っていることもあり、精神保健福祉センターと教育委員会、臨床心理士会が一緒に協議しながら進めている。ハイリスクの子が浮かび上がってきたときのネットワークについても、市の自殺対策連絡協議会等も含めて考えているところである。

【委員】どこまで現実的にできるか分からないが、高校や中学校の学校医のうち一人は心療内科医や精神科医に入っていただくといいと思う。

【委員】事務局で、校医として精神科医が入っている割合を把握しているか。

【事務局】今具体的な数字は持っていないが、非常に少ない割合ではないかと思う。

【委員】可能であれば、どの位の割合なのか、そして、校医に精神科医を入れることがなぜ難しいのかについて教えていただきたい。

【委員】委員の話題提供の中にあった、自殺予防教育の阻害要因は、相当大きな壁なのか、それとも、色々な取組をしていく中で越えられるようなものなのか。

【委員】以前の会議でもお話ししたが、教員には、自殺予防教育としてどのような学習をするのかというイメージが湧いておらず、そのことが、寝た子を起こすという考え方とリンクしている。下手なことを言うと子どもに悪影響を起こし、子どもが死に向かうことを後押ししてしまうのではないかといった様々な不安感が大きい。国からの後押しのようなものがあると、学校の教員は安心して取り組むことができる。

 教員による自殺予防教育については、教育委員会でも授業の運営方法に関する具体的な研修を行うなどの取組があればハードルは低くできるという感触をつかんでいる。

【委員】日本人が持つ自殺という言葉に対する悪いイメージが影響していると思うが、実際に自殺予防教育を体験してみれば、必要と考える人は増えると思う。また、管理職や学年代表の意向は非常に大きい影響力を持つと思っている。自殺予防教育は学校内でも連携することが大事なので、そういった難しさはあるが、だからこそ、子どもの命を救うために繋がることが大切だと思っている。

【委員】相当壁はあると感じている。1つは、自ら選んだ死に周囲がとやかく言えるのかという意見が、比較的年配の高校以上の教員から出てくる。また、最悪の事態を思い浮かべることは学校教育にそぐわないという考えをお持ちの方もいる。

 もう1つは、教員自身が自殺の問題や死の問題に不安があり、それが投影されていたり、そうした問題を自分が担えるんだろうかという思いを持っていたりする。

【委員】小・中学校は全ての子どもを抱えざるを得ないというところで、非常に危機意識が高いのに対し、高校はかなりハイリスクの生徒もいる一方、総じて様々な問題を抱える子どもたちを抱えることへの意識に大きな差がある。

【委員】高校生段階でドロップアウトした子どもの中にはかなりハイリスクの子もいる。そうした子を見守るようなシステムというのはあるのか。

【委員】公的なものでは、児童相談所は18歳までの子どもを見守る。ドロップアウトしそうな子どもは早い段階でそういうところにつながっておくと見てもらえると聞いている。

【事務局】高校からドロップアウトし、かつ、社会との関係も作りにくくなった子については、教育と福祉と労働という3つの要素を持ったサポートを行う機関を新しく作らなければ抱え切れないのではないかという指摘もされている。このあたりは非常に大きな課題であると考えている。

【委員】自殺予防教育を実施し、ハイリスクの子が見つかったものの、専門家に紹介できる体制がとれておらず不幸な事態が起きたような場合を想定した議論はあったか。

【委員】教育委員会での経験からお答えすると、まず医療機関につなげるまでの保護者や本人へのアプローチの仕方が非常に難しい。次に、教育委員会の教育相談室や学校のスクールカウンセラーなどを活用した上で、いよいよ保護者が医療関係のところに相談に行くと、予約がいっぱいなので待って欲しいと言われることも事実としてある。学校として一番困るのは、本来であれば閉鎖病棟に入れていただきたいような子どもがいても閉鎖病棟が無いような場合である。地域の医療機関のキャパシティーが圧倒的に少ないのも事実だと思う。

【委員】自殺予防プログラムの取組は、背景に何か緊急性があって始められたものなのか。

【委員】特に実施する前に何かがあったというわけではなく、学校で、保護者の未遂や自殺に関わる問題・自傷に関して、子どもや保護者への対応に苦慮してきたことはある。事例検討会などの取組を積み上げてきたことで可能になったと思っている。

【委員】時間が迫ってきたため、そろそろ終了としたい。次回は関係者の合意形成について話したい。委員から、ネットワークづくりの事例について、話題提供のような形でお話しいただきたい。どのような話し合いの流れがあり、どこまで進んで、どんな問題点が出たのかというお話をお願いしたい。

本日の会議はこれで閉会としたい。どうもありがとうございました。

閉会

 

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室

-- 登録:平成24年07月 --