児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(平成21年度)(第5回) 議事要旨

1.日時

平成22年3月26日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 旧庁舎第2会議室

3.議題

  1. 平成21年度児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議審議のまとめ(案)について

4.出席者

委員

高橋主査、新井委員、市川委員、川井委員、河野委員、
菊地委員、窪田委員、阪中委員、坪井委員

文部科学省

德久大臣官房審議官、磯谷児童生徒課長、岸田生徒指導室長、粟野生徒指導調査官 他

オブザーバー

厚生労働省

5.議事要旨

開会

議事

 平成21年度児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議審議のまとめ(案)について議論があった。

 

(1)全体構成及び本文の内容について

【事務局】「審議のまとめ」は、主として、平成21年度の審議経過や内容について記述した本文部分と、添付資料として危機対応の成果物の素案である児童生徒の自殺の事後対応の手引きと、背景調査についての論点整理の素案を添付している。

 本文は、これまでの経緯、本年度の審議経過、審議内容、審議結果の取りまとめ、今後の取組から構成されている。

【委員】「今後の取組」のところで、教師向けの自殺予防の研修会の開催について委員から要望があった旨が記載されているが、「今後、生徒を直接対象とした自殺予防教育の必要性についての発言が委員からあった」ことについても付け加えてほしい。 

【委員】子どもを直接対象とした自殺予防教育については、かえって危険な面があるのではないかという指摘がある。平成19年の第一次報告では、「ただちに実施すべき対策」として、教師を対象とした自殺予防教育を取り上げた。しかし、なぜ子どもを対象とした自殺予防教育のプライオリティがもっと高くないのかということはしばしば指摘されているので、今回の「審議のまとめ」の中に入れておくことは意味があると思う。

【委員】「外部委員の加わった調査」については、「人材確保と養成は相当困難と考えられる」と記述されているが、これまでの議論の経緯を踏まえ、困難だが、何かいろいろ手だてを立てていけば、出来そうであるというニュアンスを出すようにしたい。

【委員】「審議内容」の「事後対応と背景調査」の項目で、「調査に当たる人間と、心のケアに当たる人間とは一応区別しておく必要があることが確認された。どのように役割分担や協力していくかが課題である」。とあるが、これでは別個のものという印象が強いので、最後に、「一方で両者の機能は深く関連しており、どのように役割分担や協力していくかが重要である。」と書き加えたらどうか。

 

(2)児童生徒の自殺の事後対応の手引き(案)について

【事務局】この手引きは、特に危機対応研究グループにおいて集中的に議論いただいた内容になってる。6つの部分に分かれており、危機対応の態勢、遺族へのかかわり、情報発信等、保護者への説明、心のケア、学校活動から構成されている。

 危機対応の態勢については、状況把握、当面の対応、目標、対応態勢、適切なリーダーシップ、必要な人員の確保等について記述している。

 遺族へのかかわりについては、事実の子どもやマスコミへの伝え方の確認、通夜・葬儀についての意向の確認や葬儀後のかかわり等について記述している。

 情報発信等については、情報収集と整理、積極的な情報発信と注意すべきこと、情報の取扱い、広報対応等について記述している。

 保護者への説明については、保護者への情報提供、保護者会について記述している。

  心のケアについては、ケア会議、気になるケースへのアプローチ、教職員へのサポート等について記述している。

 学校活動については、子どもに事実を伝える準備、校長から伝える際の注意、学校再開の準備等について記述している。 

【委員】タイトルについては、事後数日間の対応という意味では、「緊急対応の手引き」とした方が伝わりやすいのではないか。

 中身については、「クラスでの伝え方」の項で、「自分がとてもつらくなった時に誰に相談するのかを話し合ってみます。」とあるが、自分がつらいとか、悲しいとかいうことを伝えてもいいということだけではなく、この子は実はこういうことで苦しんでいたんだって自分は知っていたとか、聞いていたとか、いじめられていたんだとか、そういうことを子どもたちが話していいんだよということを伝えてあげる必要を感じている。子どもが言っちゃいけないと思わされているのではないか。

【委員】「自分がとてもつらくなった時に」と限定されていると、そういうときしか言ってはいけないというイメージも伝わりかねないという危惧がある。とにかくどんなことを感じたり、考えたりしてもよいので、それを信頼できる人に話すことはよいことなんだという形で書けるといいのではないか。

【委員】「はじめに」のところに「マニュアル」という表現があるが、「マニュアル」という表現は、そのとおりにやるべきものという印象を受ける。この手引きは、マニュアルというよりは啓発的な色彩を持っているものだと思うので、「手引き」で表現を統一した方がよいのではないか。

【委員】「はじめに」の部分でも、「書いているとおりの型どおりの対応が、かえって遺族の心の傷を深めてしまうこともあります。『なぜそうするのか』を考え、臨機応変な対応をこころがけてください。」と記載しているのは、あくまでこれがたたき台であるという趣旨である。

【委員】「はじめに」の部分の「マニュアル」という言葉は、この手引きを指したものではなく、都道府県等が作成したものを指している。

【委員】この手引きは、あくまで変えていく可能性を持っているものだというニュアンスが入っていればよいと思う。

【委員】「おわりに」のところに、「今後新たな知見が加われば、改訂時に反映する予定です」ということが記述されている。

【委員】数字を具体的に入れていることに意味はあるのか。例えば2者以上が~とか、1日1回以上とか、目安として書いてあるところもあるが、数字はひとり歩きしやすい部分があるのではないか。

【委員】最初のところにただし書きで、出てくる数字はこれまでの経験からのあくまでも目安ですというようなことを入れて、現場の状況に応じて臨機応変な対応をしてくださいとしたらどうか。

【委員】数字はあったほうが、目安という点を断っていればよいと思う。

 

(3)児童生徒の自殺の背景調査に関する検討状況について(案)について

【事務局】こちらは、背景調査研究グループで中心に検討していただいた内容である。文部科学省への報告統一フォーマットの検討、背景調査の指針の提示に向けての論点整理の二つから構成されている。

 統一フォーマットの検討については、自殺予防のための必要なデータをとるためどのような項目を盛りこむか、また、どの時点で報告を求めるか、どのように協力依頼をするかといった点が課題として挙げられている。

 背景調査の指針の提示に向けての論点整理については、設置・運営の主体、調査委員会の委員構成、調査事項と方法、報告書の作成及び公表等について得られた結論と今後の検討課題を整理している。

【委員】結論と言えるまで議論を進められなかった点もあるので、確認された方向性と今後の検討課題という形で整理してはどうか。 

【委員】本文の「審議内容」に書かれている事項の全てがこの「背景調査に関する検討状況について(案)」にまとめられているわけではないが、ここに入れていない事項については、今後の検討課題からはずれるという整理になるのか。

【事務局】「検討状況について(案)」にまとめられている検討課題については、少なくとも、来年度以降の検討の焦点として取り上げる必要がある。当然、それに付随して、いろいろな論点が出てくることは考えられる。全体の方向性として、ある程度まとまりのあるものを一区切りこの段階で示すため、このような形にしている。

 

(4)まとめ

【委員】このような会議で、他職種の人間が一緒に議論することの意義を感じた。 

【委員】今回の審議のまとめが現場で生かされる形の仕組みづくりが来年度進むとよいと思っている。

【委員】将来は、子どもを直接対象にした予防教育ができるように、考えていきたい。

【委員】背景調査についての積み残しの課題は、次年度以降詰めていきたい。教員に対する自殺予防の研修は、進めている県もあるので、徐々に広げていけると良い。

【委員】背景調査に携わった関係者にワーキンググループでのヒアリングに来ていただき、協力していただいたことに、敬意と感謝を伝えたい。これが来年度以降の背景調査の検討の足場になると考えている。

【委員】事後対応についてはある程度現場における蓄積があるが、背景調査に関してもある程度論点が見えてきたことは良かった。

【委員】この検討会が始まって四、五年たつが、ぜひ昨年度作成した「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」を使った研修会を全国で少しずつでもよいので進めていきたい。 

【事務局】「教師が知っておきたい自殺予防マニュアル」については、来年度、生徒指導関係の研修のあり方につきましてモデルプログラムを検討していきたいということを考えおり、その中でそのマニュアルの活用についても位置付けをして、活用されるようにしていきたい。

閉会

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室