生徒指導提要の作成に関する協力者会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成21年6月9日(火曜日)10時~12時

2.場所

フロラシオン青山2階「芙蓉(東)」

3.議題

  1. 生徒指導提要の作成について
  2. 生徒指導上の課題に関するヒアリング 1.大橋忠司(京都市立桂中学校長) 2.梶谷尚義(大阪府教育委員会児童生徒支援課長)
  3. 自由討議

4.出席者

委員

森田座長、麻畠委員、石井委員、市川伸一委員、市川宏伸委員、市村委員、大橋委員、尾木委員、小笹委員、影山委員、梶谷委員、北川委員、木下委員、櫻橋委員、笹森委員、杉原委員、須藤委員、角谷委員、竹内委員、横山委員、渡辺委員

文部科学省

磯谷児童生徒課長、岸田生徒指導室長 他

5.議事要旨

開会

議事

(1)座長に森田委員(大阪樟蔭女子大学学長)、座長代理に尾木委員(NPO法人言語教育文化研究所代表理事)が選任された。

(2)議事の取扱いについて了承された。

(3)座長から挨拶があった。

(4)事務局から資料について説明があり、その後ヒアリング、討議が行われた。

(5)次回は7月7日(火曜日)に開催することとなった。

【委員】昭和56年に改訂した「生徒指導の手引」は、いまだにバイブルと言われており、原本は知らずとも、それぞれの教育委員会、現場の中ではこれを一つの大きな基本にしながら、今の生徒指導というものが実践されているところもある。それに新たな時代の様相、社会の状況、子供たちの状況を踏まえながら、今日的な状況に照らし、新しい形で内容を充実させていきたい。

【委員】生徒指導の概念をどこまで含むのか。生徒指導と教育相談、進路指導等が考えられる。また、学習指導との関係をどう考えるのか。提要がどこまで含むのか教えていただきたい。

【事務局】改訂版の手引の考え方では、進路指導については別途資料を引用している。進路指導までを含めると守備領域的には広くなってしまうのではと思う。教育相談は、基本的には一番広い意味での生徒指導があり、その中には狭い意味での生徒指導と教育相談が両輪と考えられているので、今回教育相談は取り入れていく必要があると考えている。学習指導とのかかわりは、これまでの手引の考え方は学習をしていく基礎になる条件を、生徒指導を行い、一人一人の生徒が落ち着いて学習に取り組めるように条件整備をしていくのが、「生徒指導の意義」として一つ位置づけとの記述があり、今回も「生徒指導の意義」という項目を設けた場合に、そこに含めることがふさわしいのではないかと考えている。

【委員】進路は、これからの社会あるいは人生へ出ていくための一つの大きな態度形成であり、基盤形成であり、生徒指導と進路指導が重なる部分がある。進路指導は、生徒指導の重要な根幹を担う基礎的な力というか、そういう基本的な人間性にかかわる能力、資質と言われるものを形成する一環として解釈したほうがいいと考えている。

【事務局】これまでの手引も、進路指導と生徒指導のかかわりとか意味づけを記載しているので、そのような形で記載していくことを考えたい。

【委員】協力者会議の設置要項に、「予防的な対応を行うような生徒指導を展開する必要がある」とあるが、小学校については平成元年の学習指導要領総則まで全く空白であったことから、当然そういう必要性があるわけで、「予防的な対応」というよりもむしろ「発達的な対応」という概念のほうがふさわしいかと思う。

【委員】基本的な概念とかいうことは当然必要だが、現場においては具体的なものとか手法というものを求めるところがあるので、提要の作成で全体像、概念が明確になった後には、事例等の作成についても今後検討してもらいたい。

【委員】1人の子どもが成長していく過程の中においては、学校教育以外でも教育を担っているところがある。学校も地域に開かれるということや、保護者とどのようにかかわっていくかということが、大きな要素だと思う。また、「子育ち支援」ということの視点が欠けていることが問題である。

【委員】消極的な生徒指導、積極的な生徒指導、という文言については40年の手引のまえがきで使われてから一般に使われるようになったと考えている。そういう用語・概念が生徒指導を十分に機能させていない一つの要因にもなっているので、今回整理が必要ではないか。

【委員】児童虐待については、現在、全国的にも児童虐待が非常に問題になっている中で、学校については、一番児童虐待に気づきやすい立場にあるという視点を盛り込んでいただきたい。問題行動、非行等についても、その背景に虐待あるいは虐待に類似する行為が存在するのではないかという視点から見ていくところが非常に大切だと考えている。

【委員】問題行動の状況は、平成19年、20年度は中学校で、悪質ないたずらと生徒間トラブルが上位を占めている。昔はエスケープとか暴力とかけんかが多かったが、この数年、悪質ないたずら、生徒間トラブル、暴力までは至らないけれども、いじめにつながるのではないかというような問題が起こっている。

 発達に課題のある子どもそれぞれに対応して特別な支援をしていくような体制を、学校内でつくっていき、保護者と学校がどのように同じ歩調で進めていけるかというところが、非常に課題になっている。

 保護者対応については、いろいろな考え方の保護者の方がいる中で、どのようにして子どもに規範意識も含めて伝えていくかが課題。個人を大切にしなければならないが、集団としての学校教育の中で、どこまで取り組んでいけるのか。小学校では暴れている、あるいは課題のある子どもに対応する先生が本当に足りない。

 9年間の義務教育という学校教育の中で、少なくとも居場所をつくるとか、進路指導も含めて、そういうことを教えていく責任をもって学校現場でやっていかなくてはいけない。

 学校運営組織の改編が必要だと思う。小学校で生徒指導主事とかいう位置づけは非常に低い。中学校の生徒指導は非常に力のある先生を持ってきて、組織として対応している。小学校の段階で早めに組織として対応できるように、小中一貫教育とか小中連携や、ボランティアの活用など子どもを複数の目で見られるような体制づくりや、大学との連携を行う必要がある。さらに、児童相談所、警察、福祉事務所との連携も十分にしていかなければいけないと思っている。

 教員はノウハウを若手に引き継いでいくことが大きな責務である。学校では、対策と事前に育てる部分と両方をしっかりやっていかなければ大変になっていくのではないかと思っている。

【委員】中学校は問題行動等に課題があるが、背景には、小学校、中学校のシステムの大きな違いがあるのではないかと感じている。小学校の学級担任制から、中学校に行くと教科担任制になって先生が変わることや、受験の問題、あるいは定期考査があるなど、学習のシステムの違いに対しても子どもたち自身に大きな戸惑いがある。また、大きな集団に変わっていくことと同時に、行動範囲も広がっていくいき、そのことが何かあったときの行動そのものがひどくなることにつながることもある。

 また、社会の大きな変化があり、特に、インターネットや携帯電話等の普及・活用などで、いろいろな情報が広まっており、子どもたちの行動範囲、あるいは人間関係に大きな変化が出ていると感じている。

 小学校、中学校、高校という長い視点から見ると、高校の中退あるいは長欠の問題等にもつながっている。学習始動と生徒指導を両輪として落ち着いた学習環境をつくっていく中で、子どもたちがの育みを確かなものにしていくことが、まさに生徒指導の果たす役割であろうと考えている。

 学校は、生徒指導をチームとして取り組みをしていく。学習指導、生徒指導などさまざまな視点から、また心のケアを含めて、学校の先生たちがチームをつくりながら、子どもたちを分析しながら取り組みをしていくことが大事だと思っている。また、ケース会議の重要性というものを、学校では非常に強調している。1つ1つのさまざまな事象に対する学校としてのアセスメント、そしてプランニングしていくことの視点の大切さ、そしてそれを振り返っていきながらどうだったか、次にどうつなげていくのかということの充実を今後とも図っていく必要がある。さまざまな専門家の方々にも入ってもらっているが、そうしたネットワーク化は非常に大事だと感じている。

【委員】そもそも家庭教育が一番問題になっているのかと感じている。携帯、インターネットのいじめについては、保護者が直接学校に出向いて、保護者の立場でリスクについて啓発する活動をしている。学校の中で生徒指導の先生の立場や力量などにより、取組の度合いの差があると感じる。生徒指導提要は、保護者には配付されないが、提要の中の提言が、先生方を通して保護者にも伝わっていくものになればと考えている。

【委員】教員の保護者との会話能力にも課題がある。保護者は多くの場合は、学校に対してもの申したいだけであるが、今の教員はすぐに校長のところにくる。教員の力量を上げていくのは、特に大事ではないかと感じている。保護者の願いがわからず、話ができないという教員が多くなっている。

【委員】中学校の現状と課題、いろいろな取組を聞いて、小学校での積み残しが中学校にも大きな影響を与えていることを改めて認識した。小学校でも生徒指導は学習指導と並んでまさに学校では両輪となるものということで、どこの学校の校長も、教務主任と教務を担当する主幹教諭と、その下には生活指導を担当する主幹教諭を配置している。その中で、学校では校務組織、校務分掌に位置づけて、常に情報交換とかケース会議を行っている。

 対応が年々難しくなっている理由の一つとして、子どもが大きく変化してきている。特にうそをつくことが、非常に大きな問題と考えている。学校で言っていることと、保護者の前で言っていることが違い、そこから問題がこじれていって、何が真実なのか、事実なのかを特定することがなかなか難しく、学校の対応として行き詰まりを感じ、限界を感じることが多々生じている。低学年の問題も、ここ数年大きくクローズアップされており、その根底には家庭での愛情不足というかしつけができていないということがある。

 生徒指導提要に期待したいのは、学校支援になるような内容を盛り込んでいただきたい。生徒理解の全体像みたいなものを教員も身に付ける必要があると思う。

【委員】教員からは、子どもが変わったという言葉を非常によく聞くが、社会が変わり、大人が変わったから子どもが変わってしまったと感じている。

 評判のいい先生は集団としての子どもにうまく対応しながら、一人一人の子どもの特色をつかんでいるのだろう。問題行動はだれが主語か、だれが指導するのか。配慮しなくてはいけないのは、本人であり保護者になってくるだろう。

 我々ができるのは、発達支援であって子育て支援なのではないか。本人、子どもに対する支援が、学校に対する支援につながっていくようにしないと、うまくいかなくなってしまうだろう。

【委員】生徒指導上の課題を抱える子どもたちの背景を見ていくと、実は小学校の段階でそういう芽を持っていることが随分ある。小学校あるいは幼稚園の段階から、そういうことも含めて、規範意識として、これは法律に触れる、だめなことはだめだということを教えていくことが大きいのではないか。

 小中連携として、中学校の先生を小学校に配置していく、小学校の先生を中学校に配置していく形で、先生たちの人事交流を同じ中学校区の中でかなり進めている。また、中学校の先生が生徒指導のノウハウを小学校に入れてくれているという大きなメリットもある。小学校は、生徒指導のシステムができないところを、中学校の先生がそのシステムを小学校へ入れてくれているという効果は上がってきていると考えている。

【委員】生徒指導上の課題は、発達障害等の子どもたちにも全部当てはまる話。被害者にも加害者にもなる可能性がある。生徒指導や教育相談と、発達障害等の障害のある子どもの問題というのは、切り離すことができない時代になってきいると思っている。発達障害の子どもが不登校、あるいは触法行為等に至るケースも結構多く出ている。

 2次障害が大きな問題としてこじれるかどうかは、ベースとなる生活空間である学級や学校が、落ち着いているかいないかということがとても大きい。支援を必要とする子どもに特別な支援ができるかどうかは、ベースとなる生徒指導がしっかりしている必要があると思う。生徒指導という観点と特別支援教育は切り離す話ではなく、生徒指導が土台にあると考えている。

閉会

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室

生徒指導企画係
電話番号:03-5253-4111(内線3298)