第8章 学校におけるICT環境整備

第1節学校における具体的なICT環境整備

1.学校におけるハードウェア整備と留意点

 学校におけるICT環境整備のうちハードウェアの整備については、コンピュータ教室、各普通教室及び特別教室等に整備する教育用コンピュータや周辺機器、学習用ソフトウェアが必要であるほか、教員が校務処理に使用する校務用コンピュータや周辺機器、校務用ソフトウェアが必要である。また、校内LAN(Local Area Network)やインターネット接続といったネットワーク環境の整備も必要となってくる。以下において、学校における具体的なICT環境整備とその際の留意点について解説する。

(1)普通教室

 普通教室におけるICT環境整備については、「IT新改革戦略」では、教育用コンピュータ2台に加え、各学校でクラス用コンピュータ(可動式のコンピュータ(ノート型))を40台(標準法に基づく目安の台数)配備することとしている。
 普通教室2台の教育用コンピュータについては、1台を教員がプロジェクタ等を介して教材等を提示するために使用し、もう1台を子どもたちが発表したり疑問に思ったことを調べたりするために使用する方法がある。2台とも子どもたちの調べ学習のために使用することも考えられる。それぞれの授業のねらいによって活用方法は変わってくる。
 また、クラス用コンピュータについては、普通教室で使用する場合、1人1台で使用すればコンピュータ教室と同様の活用が可能となるほか、各教室に数台ずつ持ち込んでグループ学習(グループに1台)で活用することなども可能になる。なお、空き教室等にクラス用コンピュータや周辺機器を集中的に配備することで、授業の際にコンピュータを移動させる手間が省けるだけでなく、様々なICT機器の特性を指導の場面ごとに活かせる環境を作ることが可能となる。
 このように、普通教室におけるICT環境整備にあたっては、日常的にICTを活用することを念頭に、それぞれの授業における学習のねらいに合わせて整備や活用の方法を工夫することが重要である。

1)コンピュータの選定について
 デスクトップ型とノート型に大別される。授業で使用する場面(教員が使用するのか、児童生徒が使用するのか、双方かなどを含む)を想定し、操作性、視認性、可搬性、ハードディスク容量、バッテリー稼働時間のほか、LANや周辺機器との接続インタフェースの種類や個数などを勘案して選定する。
 最近では、ノート型サイズで、ディスプレイ上でペン入力が可能なタブレット型と呼ばれるコンピュータを導入する学校も増えている。

2)周辺機器の活用について
 普通教室における周辺機器としては、現在、授業では主に、プロジェクタ、実物投影機、電子黒板、デジタルカメラ等が使用されることが多い。なお、今後のICT機器の発展に伴い、普通教室での学習のねらいを踏まえて、新たな機器を積極的に導入していくことも必要である。
 なお、それぞれの教員のICT活用指導力が十分でない場合は、扱いやすいものから整備し、整備したICT機器が十分に活用されることを心がけたい。

アプロジェクタ
可搬型と、天井などに固定する固定型に大別される。コンピュータや実物投影機(後述)などを接続してスクリーンや紙面に大きく映し出すことができ、教材(インターネットからのデジタルコンテンツを含む。)や発表用資料等の提示を簡単に行える機器である。解像度、消耗品交換(ランプ等)の簡便性、使用準備等の簡便性などを勘案して選定する。
 プロジェクタは投影するための機器であり、幅広く使えるので積極的に導入することが望まれる。その際、投影するものがインターネット上で入手する教材なのか、デジタルカメラで撮影した写真やソフトウェアの教材なのか、実物そのものなのかなど、それぞれの教員のICT操作スキルにより接続する機器も異なるものになるので、これを把握し、勘案した上で、プロジェクタに接続する機器を整備する必要があることに留意する。
 なお、固定型のプロジェクタは、操作が簡便なほか、コードレスであるため子どもの安全面や機器の破損のしにくさ等の面からメリットが多く、設置工事費も高額にならない反面、移動させることができないデメリットがある。

図8-1プロジェクタのイメージ

イ実物投影機(書画カメラ)
 書類や立体物をそのまま画像でスクリーン等に映し出す機器である。映し出したいものをカメラの下に置けば、プロジェクタを介して大きく映し出すことができて操作が簡便であり、立体物もそのまま立体的に映し出せる。プロジェクタとスクリーンがあれば使用できるほか、デジタルテレビや大型ディスプレイに直接接続して映し出すこともできる。
 例えば、書写の指導でカメラの下で筆を動かしその動きを大きく映したり、美術科で彫刻刀を使って木を彫ったり、家庭科の裁縫で縫い物をしたりするときの手の動きを大きく映したりすることで、子どもたちの理解を早める。また、子どもたちが作った資料や作品などを大きく映しながらプレゼンテーションをしたり、することができるため、子どもの学習の理解促進やコミュニケーション能力の育成という観点を持つ。
 実物投影機については、ズーム機能、撮像サイズ、照明や画素数などを勘案して選定する。最近では、デジタルカメラ(後述)等で使われているメモリーカードを差し込める機能により、撮影した写真をより簡単に映し出せるものや、顕微鏡と接続可能なものもある。

図8-2実物投影機の活用イメージ

ウ電子黒板
 コンピュータの画面上の教材をスクリーン又はディスプレイに映し出し、その画面上で直接操作して、文字や絵の書き込みや移動、拡大・縮小、保存等ができる機器である。プロジェクタに接続してスクリーンに投影する「ユニット型」や「ボード型」、プロジェクタと一体となった大型ディスプレイ状の「一体型」に大別される。電子情報ボードともいう。
 例えば、専用のペンで画面に直接書込みをすることが可能であり、字の太さやカラーなどのバリエーションも豊富で書き込んだ内容を保存することができる。このほか、映し出された図形や文字、絵、写真等をタッチパネルで動かしたり、大きく表示したりすることや画面を切り替えることも容易にできるため、子どもの学習の理解促進や学習履歴の容易な蓄積という観点を持つ。
 電子黒板については、準備の簡便性、スペースや移動性、画面の精細度や大きさ等を勘案して選定する。

図8-4 電子黒板の活用イメージ

エデジタルカメラ
 撮影した写真や動画をデジタル画像としてコンピュータに取り込むことができるため、教員が提示する教材に活用したり、子どもが観察等で撮影したものを資料や作品に活用したりする等、デジタルコンテンツを簡単に作ることができる。体験的な学習等と結び付けながら、子どもの情報活用能力の育成や学習の理解促進の観点を持つ。
 例えば、野外観察等で撮影した写真をコンピュータに容易に取り込めてすぐに映し出すことができたり、調べ学習においては撮影した写真をまとめの資料に貼り付けたりすることができるほか、動画による記録もできるため、学習に必要な教材やコンテンツの収集が容易になる。
 デジタルカメラについては、操作性、耐久性、画質、フラッシュの有無、バッテリー容量、画像を記憶するメモリーカードの種類や容量などのほか、液晶画面、動画機能、接写機能、ボイスメモ機能の有無なども勘案して選定する。

図8-5デジタルカメラのイメージ

(2)コンピュータ教室

 コンピュータ教室におけるICT環境整備については、「IT新改革戦略」では、教育用コンピュータ42台を整備することとしており、このうち40台(標準法に基づく目安の台数)が児童生徒用、2台が教員用である。
 コンピュータ教室の場合、子ども1人1台のコンピュータが使用できるという特性を活かした使い方として,例えば、キーボードによる文字入力などのコンピュータの基本的な操作を習得することや、一人一人課題のまとめをしたり、一斉にドリルを使って学習したりするなど、子どもの情報活用能力の育成のほか個々の学習進度に応じた学習に使うこともできる。
 なお、コンピュータ教室の整備にあたっては、配線工事等の関係から後で配置を変更することが困難な場合があるため、配置等の計画をしっかり立てて整備することが重要である。このほか、一度に多数のコンピュータを使用するため部屋が高温になりやすいので、空調設備にも配慮する必要がある。

1)コンピュータの選定
 デスクトップ型とノート型に大別される。子ども1人1台の環境を考えた場合、デスクトップ型については、キーボードと本体・ディスプレイが分離しているため、ノート型のように本体のデザインや大きさの関係からキーボードが小さくなることがないことや、修理等に際しキーボードのみやディスプレイのみなどパーツのみでの対応が可能であること等が挙げられるが、学校の実情に応じて適切なものを選定する。

2)周辺機器の活用について
 コンピュータ教室における周辺機器としては、現在、授業では主に、プリンタ、スキャナ、ヘッドセットが使用されることが多いが、今後のICT機器の発展に伴い、コンピュータ教室での学習のねらいを勘案して、新たな機器を積極的に導入していくことも必要である。

アプリンタ
 子どもたちがインターネットや文献などから収集した情報やそれらをもとにまとめた資料等を紙媒体に記録するなど、コンピュータに接続しておいて、必要に応じて印刷する際に使用する。また、プリンタについては、スキャナ(後述)等の機能を併せ持つ複合機もある。

イスキャナ
 紙媒体に記録された情報を、画像情報として電子媒体に取り込むことができる。膨大な紙の資料がある場合、電子媒体で保存することで資料のかさばりを回避できる。

ウヘッドセット
 コンピュータ教室では、子ども1人1台のコンピュータ利用環境となるため、音の出るソフトウェアやコンテンツを使用する際、一人一人の子どもが鮮明に音をとらえることができる。また、外国語のヒアリング等の学習では子ども個々の学習進度に応じた学習環境が提供できる。

(3)特別教室

 特別教室におけるICT環境整備については、「IT新改革戦略」では、各学校で教育用コンピュータ6台を整備することとしている。
 学校に6台ある場合、特別教室(理科室、音楽室、図書室など)ごとに1~2台ずつ整備したり、6台を一つの教室に集約してグループ学習で使わせたりするなど、学習のねらいに応じた整備が求められる。コンピュータを移動させて使用する機会が多い場合にはノート型のコンピュータとするなど、それぞれの学校の事情に応じて適切なものを選定する。
 また、特別教室における周辺機器としては、現在、授業では主に、普通教室と同様にプロジェクタ、実物投影機、電子黒板、デジタルカメラなどのほか、理科の授業でデジタル顕微鏡、音楽の授業で電子楽器、図書室での図書管理のためのバーコードリーダーなどが使われている。

 ICT機器の発展は日進月歩であり、これらのほかにも、特に周辺機器については、携帯型の情報端末やゲーム機、デジタルペンなど、様々な機器の活用が学習活動に取り入れられていくようになると考えられる。新たな機器について積極的に導入を検討していくことも必要である。

2.学校におけるソフトウェア整備と留意点

(1)教育用ソフトウェアの種類

 教育用ソフトウェアは、基本ソフトウェア等のほか、文書や図表作成等に汎用的に用いる基本的なアプリケーションソフトウェア、教科指導に用いるために特に工夫された学習用ソフトウェア、成績処理、時間割作成、保健管理などに用いる校務用ソフトウェアなどに大別できる。
 特に、教科指導に用いる学習用ソフトウェアにはその用途により様々なものがあり、ドリル学習型、解説型、問題解決型、シミュレーション型、表現・コミュニケーション用のツール型、情報検索用のデータベース型などがあり、今日では、多くの企業等が様々なソフトウェアを市販するようになり、その種類も豊富にある。
 また、単体としてのソフトウェアではなく図書教材と連携したソフトウェアや、活用のための実践事例や指導用マニュアル、資料集、児童生徒用活動シート、ビデオ教材などを組み合わせた教材も増えてきており、これらを授業で効果的に活用することでより一層の学習の充実に努めたい。

(2)学習用ソフトウェア(教育用コンテンツ)の活用

 教育用ソフトウェアのうち学習用ソフトウェア(教育用コンテンツ)については、現在様々なものが普及しており、動画から写真やイラストなどの素材型に加えドリル学習型やシミュレーション型などその種類は豊富になっている。有料のものや無料のもの、DVDやCDといったパッケージのもの、インターネットによりダウンロードするものなど様々である。

教育用ソフトウェアの分類)

○基本的なソフトウェア
- 基本ソフトウェア
・オペレーティングシステム(OS)
- 言語処理ソフトウェア
- 基本的応用ソフトウェア
・日本語ワードプロセッサ・表計算
・データベース・図形作成
・プレゼンテーション・インターネット閲覧
・電子メール・ホームページ作成
・ウィルス対策、情報セキュリティ、フィルタリング
○学習用ソフトウェア
・ドリル学習型・解説指導型
・問題解決型・シミュレーション型
・教材作成・資料、データ集
・デジタル教科書・プログラミング言語
・授業支援システム
○校務用ソフトウェア
・グループウェア(掲示板、施設予約等)・教務(成績管理、時数管理等)
・保健管理・学務処理(図書管理、文書管理)

1)学習用ソフトウェア(教育用コンテンツ)を入手する際の注意点
 学習用ソフトウェアやコンテンツを購入する場合は、ソフトウェアやコンテンツによってはライセンス数が決められており、必要とするクラス数まで使用できなかったり、購入しようとするソフトウェアやコンテンツが使用するコンピュータの仕様に合うのかなどに注意して導入する必要がある。インターネットで購入する場合も同様である。
 また、試用期間やサンプルなどにより内容を十分確認の上、想定している学習のねらいに即しているものか確認の上、購入する必要がある。

2)教育用コンテンツの自主作成について
 学習のねらいを明確にして教育用コンテンツを探した場合でも、必ずしも、ねらいに沿ったコンテンツが容易に見つかるとは限らない。このような場合、教員自身で作成することもある。例えば、植物や地形などはデジタルカメラがあれば、これを撮影してコンピュータに取り込み、プロジェクタを介して大きく視覚的に見せるだけでも教育効果は高い。そのほかにも、プレゼンテーションツールのアニメーション機能を使って、答えが見えたり消したりするようなコンテンツも容易に作成できる。
 日頃からこのようなコンテンツの収集・作成にあたることで学校の教育用コンテンツが増えていき、授業の質の充実にも繋がるので教員同士が連携し、このような環境整備の工夫が重要である。

 教育情報ナショナルセンター(NICER:National Information Center for Educational Resources:ナイサー)は、我が国における教育・学習に関する情報を扱う中核的Webサイトとして、インターネットで提供されている教育用コンテンツなどの概要や所在情報を収集、整理して提供している。また、教育関係者等を情報化の面から支援する機能も有している。
 平成18年度から運用にされており、このようなサイトを有効に活用し、授業のねらいに即した教育用コンテンツを探して大いに利用したい。

(特徴)
  1. インターネット上に散在している教育学習コンテンツの所在情報を提供するポータルサイト。
  2. 教育情報コンテンツの所在情報は、図書館の目録にあたるLOM(学習対象メタデータ)として管理されており、タイトル、概要、分野、教科学年、著作権、利用制限などの情報を登録している。
  3. 教育情報の検索は、学年毎や教科書の目次、学習指導要領の項目に応じて検索できる。
  4. 習っていない漢字が多い児童でも検索が行えるように、ひらがなでの検索にも対応している。また、検索結果に対して学年に応じたふりがなを振ることができる機能も有している。
図8-2教育用コンテンツポータルサイト(NICER)

3.校務用のICT環境整備について

 校務の情報化によって、出欠管理、成績処理、保健管理などの校務を大幅に効率化することが可能になる。しかし、教員が個人用のパソコンを持ち込み校内LANに接続するなどによりコンピュータウィルスに感染させたり、外部記憶装置(USBメモリなど)を使うことで重要なデータを紛失することなどが問題となっている。
 校務の効率化に加え、このような問題の解決のためにも、教員1人1台の校務用コンピュータの早急な整備を進めるとともに、第6章(校務の情報化の推進)の情報セキュリティについての解説を参照頂きながら、次項で説明する校内LANを併せて整備し、より効率的で安全な環境の実現に努めたい。

4.校内LANやインターネット接続環境の整備

(1)校内LANやインターネット接続環境の整備による効果

 校内LANを整備することで学習用ソフトウェアをサーバ等で一元管理することができ、校内で情報共有しながら使えるほか、校内のどの教室でもインターネット接続が可能となったり、校内のどこでもプリント作業ができるなど、教科指導でのICT活用や情報教育において授業の質がより充実する。
 また、学校ホームページにより学校情報を外部に公開していくことで保護者や地域とのコミュニケーションを生みだし開かれた学校づくりにも大きな効果がある。

図8-3校内LANの活用イメージ

図8-4校内LANのシステムイメージ

図8-5校内LANの使用前・使用後

(2)校内LANの整備に当たっての留意点

 校内LANの整備に当たって、一般的に留意しなければならない点としては、「拡張性」と「安全性」が特に挙げられる。
 「拡張性」については、接続するコンピュータ数の増加や、性能向上等に伴うコンテンツの増加や大容量化に対応できる設計であることが必要である。
 「安全性」については、物理的な安全確保のほか、落雷や雨による通信障害、周辺の電磁波対策、火災時に有毒ガスを発生しない材料、機器類の耐震対策、停電時のサーバ保護対策が必要であるが、校内LANを整備する際に最も気を付けなければならないことは、個人情報の保護やコンピュータウィルスへの対応を含む情報セキュリティの確保である。
 教育用コンピュータと校務用コンピュータでは、校内LANに接続して利用するときの取り扱うデータや使途が異なるので、ネットワークを論理的に切り分けるなどの措置を講じておく必要がある。校務用コンピュータに係る情報セキュリティについては、第6章(校務の情報化の推進)を参照されたいが、児童生徒が使う教育用コンピュータに係る情報セキュリティについては、フィルタリングとID・パスワードの設定に配慮する必要がある。
 1)フィルタリング
 子どもが自主学習などで使用することを想定し、安全の観点から、違法・有害情報に晒されないようフィルタリングを設定する。
 2) ID・パスワード
 子どもが自主学習などで使用することを想定し、管理の観点から、教材の改竄や教員用データ等の閲覧がなされないよう、また、どの子がどのコンピュータをいつ使用し、どこへアクセスしたかなどを把握できるよう、個人認証とアクセス制限を行う。
 一方、学習の観点から、ID・パスワードなど実践を通した学習を可能とし、情報セキュリティの重要性を理解できる学習環境を整備する。

(3)校内LANの具体的な整備

 校内LANを整備する具体的な方法は、有線と無線に大別される。有線にするか無線にするか、それらの組合せとするかは、それぞれの特徴を踏まえた上で、校舎等の実情や外部との接続環境(インターネット接続速度)を考慮して決定する必要がある。
 具体的に、各普通教室や特別教室等において校内LANへの接続を実現する方法は、主に以下の3つに整理できる。ここでは、教室間等を繋ぐ部分(基幹系)は有線(ケーブル)で整備することが多いため、それを前提に記述している。

1) 教室内の壁等までケーブルを接続し、LAN端子を設置
 →教室内の当該LAN端子にLANケーブルとハブ等を接続
  →教室内のコンピュータとの間をLANケーブルにより接続
2) 教室内の壁等までケーブルを接続し、LAN端子を設置
 →教室内の当該LAN端子に無線LANアクセスポイントを接続
  →教室内のコンピュータとの間を無線LANにより接続
3) 教室外の廊下等までケーブルを接続し、LAN端子を設置
 →廊下等の当該LAN端子に無線LANアクセスポイントを接続
  →教室内のコンピュータとの間で無線LANにより接続

 教室間をケーブルで繋ぎ、教室内の壁等にLAN端子を設置する校内LAN工事について、校舎内にLANケーブル(光あるいはメタル)を新たに敷設することは必ずしも必要ではない。具体的には、各教室に非常電話が設置されている場合の電話回線や、各教室にTV受信波を分配するためのTV共聴ライン、また、PLC(電力線搬送通信;校舎内の電源ケーブルを利用した通信方式)といった、校舎内の既存のケーブルを利用することも十分考えられるため、効率的な整備手法として検討に加えたい。
 また、今後、各普通教室や特別教室等でクラス用コンピュータ(ノート型)を柔軟に使用したりするため、上記(ii)あるいは(iii)に示した無線LANの利用により教室内の校内LANアクセス環境を効率的に整備していくことが望まれる。なお、無線LANにはいくつかの規格(2.4GHz帯、5GHz帯等)があるため異なる規格間の互換性に注意するとともに、情報セキュリティについては暗号化に関する最新の状況などに十分配慮が必要である。

 なお、校内LANの整備については、これまで文部科学省や総務省において整備の考え方や効果的な使い方について解説した報告書を作成し公開してきているので活用されたい。

  • 「校内ネットワーク活用ガイドブック」(文部科学省)
    https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/kounai/index.html
  • 「校内ネットワーク活用ガイドブック2005」(文部科学省)
    http://www.japet.or.jp/handlers/getfile.cfm/4,158,116,32,pdf
  • 「校内LAN導入の手引~校内LANモデルプラン集~」(総務省)
    http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/pdf/index_01.pdf

第2節学校におけるICT環境の運用

 整備にあたって初期経費はもちろん必要であるが、整備した後にもコンピュータや周辺機器、サーバ等の保守管理(メンテナンス)など引き続き運用のための経費(ランニングコスト)が必要である。
 日常のメンテナンスを確実に行うことで、ICTを活用した日常の授業でのシステムダウンや不具合などを回避できるのであり、必要な予算を十分に確保する必要がある。また、これから整備を進める学校においては、計画段階で整備後の運用も含めたランニングコストを十分念頭に置き、計画を立てる必要がある。
 また、システム障害などへの対応として、外部専門家の雇用やICT支援員などによる管理体制を作り上げることが重要である。支援や管理体制については第6章(校務の情報化の推進)及び第10章(教育委員会・学校における情報化の推進体制)で詳細に解説しているのでこちらを参照されたい。

第3節学校におけるICT環境整備の推進

(1)教育の情報化のための地方交付税措置

 学校におけるコンピュータや周辺機器の整備、インターネット接続、教育用ソフトウェアの整備等のICT環境整備に必要な経費は、地方交付税措置(普通交付税)されている。ここでは、まず、地方交付税について触れておく。
 地方公共団体は、教育、土木、厚生労働、産業経済、警察・消防などの各分野にわたり国民生活に密接に関連した行政サービスを提供しているが、すべての地方公共団体がそれぞれ必要な財源のすべてを地方税のみによって賄うことは困難である。そこで、地方公共団体間の財源の不均衡を調整し、どの地域に住む国民にも一定の行政サービスを提供できるよう保障するのが地方交付税である。
 学校におけるICT環境整備に必要な経費が地方交付税に位置付けられているということは、それが、どの地域に住む国民にも一定の水準が維持されなければならない行政サービスの一つであると理解する必要がある。地方交付税は、こうした標準的な行政サービスとは何かを考えたときの経費を積算根拠として算定されるが、その使途については地方公共団体の自主的な判断に任せられている。
 つまり、地方交付税の積算上は教育の情報化に必要な経費として算定されて地方公共団体に交付されるが、教育の情報化以外の使途にも充てることができる財源として扱われる。(一般財源)

図8-6地方交付税措置のイメージ

 教育の情報化を進めようとする場合、その整備等に必要な経費についてはしっかり予算要求を行い確保していかなければならない。地方公共団体の財政事情は厳しい現状にあり、教育の情報化が一定の水準が維持されなければならない行政サービスと位置付けられているからといって、予算が確保される訳ではない。また、国の掲げる目標(「IT新改革戦略」や各年度の「重点計画」)をもって必要性を訴えるだけでなく、投資に対する効果を示していかなければ予算を確保することが極めて困難な時代でもある。

 「教育の情報化」の必要性、投資に対する効果を示していくためには、まず、教育の情報化の目的を理解する必要がある。教育の情報化の目的は、第1章でも述べたように、

  • 情報教育(情報モラル教育を含む)~子どもたちの情報活用能力の育成
  • 教科指導でのICT活用~各教科等の目標を達成するためのICTの活用~
  • 校務の情報化

の3つから構成され、これらを通じて教育の質の向上を図ることである。そこで、学校におけるICT環境整備に当たっては、情報活用能力を身に付けさせるための授業を行うにはどのような整備が望ましいのか、学習の関心・意欲を高め理解を深めるためにはどのような整備が望ましいのかを、教員によるICT活用、児童生徒によるICT活用の両面から検討すること、また、教員の事務負担軽減等のため校務の情報化としてどのような整備が望ましいのかなどについて検討することが必要である。
 即ち、教育委員会・学校において学校のICT環境整備のねらいや期待する効果を明確にし、説明できるだけのビジョンをもって予算要求に臨むことが非常に重要である。そして、その際、教員のICT活用指導力の向上のためどのような研修を行うか、整備されたICT環境をどのように活用していくか、実際に活用して授業を行う教員をどのようにサポートしていくかまでの施策全体を関連付けし、教育委員会内・首長部局など関係部署との連携を図りながら、計画的に整備を行うことが必要である。
 地方交付税の使途が地方の自主的な判断に任されているからこそ、地方公共団体が、教育の質の向上に向けて、それぞれの教育の情報化ビジョンをしっかり構築することが極めて重要である。
 なお、こうした学校のICT環境整備等を着実に行う上で、第10章で解説する教育CIO・学校CIOのリーダーシップやマネジメントが大きく寄与する。

(2)学校におけるICT環境整備に関する補助制度など

1)安全・安心な学校づくり交付金(文部科学省)
 公立学校等の施設整備に関する交付金であり、大規模改造(質的整備)で校内LAN整備が交付の対象となっている。校内LANの整備に要する経費(パソコン等の備品は除く)が400万円以上(上限額3,000万円)(事業費ベース)の場合、補助対象となっており、学校単独で整備する場合に活用しやすい。(算定割合1/3)

2)地域イントラネット基盤施設整備事業(総務省)
 地域における公共施設等を結ぶ情報通信ネットワーク基盤となる施設及び設備の設置に関する事業に対し経費の補助を行うもの。平成20年からは新たに学校の普通教室や特別教室等を繋ぐ校内LAN整備経費についても補助対象とされた。補助対象となる経費規模が3,000万円以上(事業費ベース)であるため、教育委員会や社会教育施設あるいは他の行政分野のイントラネットと併せて整備する場合に活用することが考えられる。(補助率1/3)

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初等中等教育局 参事官付課

(初等中等教育局 参事官付課)