第2章 学習指導要領における教育の情報化

第1節学習指導要領における教育の情報化の概要について

 平成20年1月の中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」においては、「社会の変化に対応して教科を横断的に改善すべき事項」の1つとして情報教育の改善を図ることや、「効果的・効率的な教育を行うことにより確かな学力を確立するとともに、情報活用能力など社会の変化に対応するための子どもの力をはぐくむため、教育の情報化が重要である」などの提言がなされた。これらを踏まえ、小・中・高等学校の新学習指導要領においては、情報教育及び教科指導でのICT活用について充実が図られた。
 また,特別支援学校については,指導方法等の改善として「情報機器の活用などによる効果的・効率的な教科指導の必要性を明確にする」などの提言がなされたことを踏まえ,特別支援学校の新学習指導要領においても,小・中・高等学校の教育課程の基準の改善に準じ,情報教育及びICT活用について充実が図られた。
 基礎的・基本的な知識・技能を習得させるとともに,それらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等を育成し,主体的に学習に取り組む態度を養うためには,児童生徒がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を適切に活用できるようにすることが重要である。また,教師がこれらの情報手段や視聴覚教材,教育機器などの教材・教具を適切に活用することが重要である。
 こうした考え方を踏まえた、新学習指導要領における情報教育及び教科指導でのICT活用の充実について、概要は以下のとおりである。

(1)小学校
  •  「総則」において、各教科等の指導に当たって、「児童がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ、コンピュータで文字を入力するなどの基本的な操作や情報モラルを身に付け」るとともに、情報手段を「適切に活用できるようにするための学習活動を充実する」こととした。また、「これらの情報手段に加え視聴覚機器や教育機器など教材・教具の適切な活用を図る」こととした。
  •  各教科等においては、国語科における言語の学習、社会科における資料の収集・活用・整理、算数における数量や図形の学習、理科の観察・実験、総合的な学習の時間における情報の収集・整理・発信や日常生活・社会への影響を考えるなどの学習活動などでコンピュータや情報通信ネットワークなどを活用するほか、道徳において情報モラルを取り扱うこととした。
    (表2-1【小学校】学習指導要領における教育の情報化に関する記述)
(2)中学校
  •  「総則」において、各教科等の指導に当たって、「生徒が情報モラルを身に付け」るとともに、「コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を適切かつ主体的、積極的に活用できるようにするための学習活動を充実する」こととした。 また、「これらの情報手段に加え視聴覚機器や教育機器など教材・教具の適切な活用を図る」こととした。
  •  技術・家庭科の技術分野「情報に関する技術」において、小学校で身に付けた知識・技能を基に、情報の科学的な理解に関する学習として、情報通信ネットワークと情報モラル、ディジタル作品の設計・制作、プログラムによる計測・制御をすべての生徒に履修させることとした。
  •  国語科における資料・機器の活用や情報の比較などの学習,社会科における資料の収集・処理・発表、数学科における表・グラフの整理や標本調査の学習、理科の観察・実験・データ処理・計測、音楽科や美術科における表現・鑑賞、外国語科におけるコミュニケーションの学習、総合的な学習の時間などにおいてコンピュータや情報通信ネットワークを活用することとしている。また、道徳において情報モラルを取り扱うこととした。
    (表2-2【中学校】学習指導要領における教育の情報化に関する記述)
(3)高等学校(P)
  •  「総則」において、各教科等の指導に当たり、「生徒が情報モラルを身に付け」るとともに、「コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を適切かつ実践的,主体的に活用できるようにするための学習活動を充実する」こととした。また、「これらの情報手段に加え視聴覚機器や教育機器など教材・教具の適切な活用を図る」こととした。
  •  普通教科「情報」について、社会の情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度を育成する観点から、「情報A」「情報B」「情報C」の内容を再構成し、「社会と情報」「情報の科学」の2科目構成とした。「情報社会に参画する態度」や「情報の科学的な理解」を柱に科目の内容を改善するとともに,情報モラルを身に付ける学習活動を充実することとした。
  •  専門教科「情報」について、情報技術の進展や情報産業の構造変化等への対応、問題を適切に解決する能力や態度の育成への対応から、「情報と問題解決」「情報テクノロジー」「情報システム実習」「情報コンテンツ実習」を新設するなど11科目から13科目に再構成した。
(4)特別支援学校(P)
  •  小・中学部では,「総則」において,各教科等の指導に当たり,「児童又は生徒がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ,その基本的な操作や情報モラルを身に付け」るとともに,「適切かつ主体的,積極的に活用できるようにするための学習活動を充実する」こととした。また,「これらの情報手段に加え,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図る」とともに,「児童又は生徒の障害の状態や特性等に即した教材・教具を創意工夫するとともに,学習環境を整え,指導の効果を高めるようにする」こととした。
  •  知的障害者である生徒に対する教育を行う特別支援学校の中学部の職業・家庭科について,「職業生活や家庭生活で使われるコンピュータ等の情報機器の初歩的な扱いに慣れる」こととした。
  •  高等部では,「総則」において,各教科等の指導に当たり,「生徒が情報モラルを身に付け」るとともに、「コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を適切かつ実践的,主体的に活用できるようにするための学習活動を充実する」こととした。また,「これらの情報手段に加え,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図る」こととした。
  •  知的障害者である生徒に対する教育を行う特別支援学校の高等部の職業科について,「職場で使われる機械やコンピュータ等の情報機器などの操作をする」こととした。
    (表2-3【特別支援学校】学習指導要領における教育の情報化に関する記述)

第2節学習指導要領を踏まえた情報教育とICT活用の推進について

 前節で見たように、今回の学習指導要領の改訂では、各教科等の指導における1)教員によるICT活用、2)児童生徒によるICT活用、のいずれについても充実が図られているところである。また、教科の目標や内容が情報活用能力の育成に直結する要素を含むものもある。
 特に、児童生徒によるICT活用については、知識・技能の活用を図る学習活動や探求的な学習活動、また、これらの基盤となる言語活動(記録、要約、説明、論述)において、教科の目標を達成するための効果的なICT活用について示されている。このことは、児童生徒が効果的にICTを活用する学習活動を通じて、教科の目標を達成することと、子どもたちの情報活用能力の育成とを、併せ行う機会が充実することを意味する。

 以上を踏まえ、確かな学力の育成において、教科指導でのICT活用を積極的に推進することは非常に重要であり、そのための具体的な指導事例等を第3章(教科指導でのICT活用)で解説する。
 前章でも述べたとおり、「知識基盤社会」の時代にあって「生きる力」の重要な要素である「情報活用能力」を身に付けることが一層求められている。そのためには、各教科等の指導を担う教員が、その指導の中に情報教育のねらいや内容が含まれていることを認識するとともに、情報教育の目標の3観点(情報活用の実践力、情報の科学的な理解、情報社会に参画する態度)をバランスよく身に付けさせるよう、学校全体で計画的に情報教育を推進することが極めて重要である。情報教育のうち、昨今の喫緊の課題である情報モラル教育にも留意しつつ、これらの具体的な指導事例を、第4章(情報教育)及び第5章(情報モラル教育)で解説することとする。

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