「教育の情報化に関する手引」作成検討会(第2回) 議事要旨

1.日時

平成20年11月27日(木曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 有識者からのプレゼンテーション
    ・岡本敏雄 電気通信大学大学院教授
  2. 「教育の情報化に関する手引」の検討状況について
  3. その他

4.配付資料

  • 資料1 世界の中の日本の情報教育-何が問題で、何をしなければならないか-(岡本教授プレゼンテーション資料)
  • 資料2 「教育の情報化に関する手引」各章の構成及び概要(案)
  • 資料3 今後のスケジュール

5.出席者

委員

(構成員:敬称略)
赤堀、五十嵐、石原、梶本、金森、小泉、佐藤、清水、高橋、玉置、永野、中村、西田、野中、野間、原、堀田、本田、桝田、安川、横山

文部科学省

斎藤初等中等教育局参事官、中沢情報教育調整官 その他

6.議事概要

  • 第1回欠席の構成員の紹介・挨拶があった。

(1)有識者からのプレゼンテーション

  • 電気通信大学大学院岡本教授より、資料1に基づき情報教育に関する海外の動向にについて発表があった。

(2)「教育の情報化に関する手引」の検討状況について

  • 各WGリーダー及び事務局より、資料2に基づき各章の検討状況について説明があり、その後、以下の意見交換が行われた。
  • 手引は何のためのものかを踏まえて、分かりやすさ、視点が入っているか、10年間は活用できるか、どこで使われるかということや、章どうしの関係といった点に留意してご意見をいただきたい。
  • 第1章について、これまでの2つの「情報教育に関する手引」がどのような位置づけでどのように活用されてきたのかを記述してはどうか。10年経つと管理職や指導主事も替わっていて以前のことを知らない可能性もあるので、今回の手引が3代目であり、これまでの手引がどう活用されてきたのかに触れてもよいのではないか。
     3.(教育の情報化に関する政策)に、文部科学省における施策として教員のICT活用指導力チェックリスト等の成果物が記載されているのは良いと思う。一方で、「初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議」、「初等中等教育における教育の情報化に関する検討会」など方向観を決めたり考え方を示してきた調査研究会もあり、それらを会議名を含めて記述すべきである。
  • 第1章について、これまでは「情報教育に関する手引」として情報教育を主としつつ、現場でのコンピュータの活用を考えて校務の情報化などにも触れる形であったが、今回は誤解のないように「教育の情報化に関する手引」としたことに賛成である。ただ、「情報教育に関する手引」の延長であると誤解される方もいると思うので、「教育の情報化」を構成する3つの項目がそれぞれどこに対応するのかを全体として意識して記述すべきである。その意味で、第1章2.(情報教育の進展)は教育の情報化について記述しようとしているが、ここは情報教育に特化して記述すべきであり、第2章第3節(教育の情報化と学習指導要領)についても同様ではないかと思う。ここは「教育の情報化」についてまとめた部分、ここは「情報教育」についてまとめた部分、ということが分かることで各章が生きてくるので、第2章を含め体系をクリアにして記述してほしい。
  • 現在、我が国では高等学校の普通教科で情報を取り扱うので、第1章・第2章から第3章・第4章へと展開するのはそのとおりだと思うが、第1章又は第2章において、情報教育について初等中等教育でも教科としての志向性を持っているということに触れるべきである。情報教育が大事であると書き、その後すぐに各教科での扱いの記述となっているが、その間の繋ぎになることをどこかに記述してほしい。
     第3章において、小学校と中学校の繋ぎは記述されるようだが、中学校・高等学校間の繋ぎについても記述があるとよい。
  • 高等学校で情報は必修なので、中学校・高等学校間の繋ぎも重要である。高等学校の新学習指導要領が示された後、高等学校分を追記する際の重要な視点として受け止めたい。
  • 第3章について、現場から見れば、目標を細分化して階層化すると分かりやすくはなるが、逆にトータルな部分が消えてしまう怖さがある。例えば、「情報活用の実践力」はあくまで「ある課題に対して主体的な課題意識をもって活動する」ことであるが、それを一つ一つの「適切な活用」とか「プロセス」とかに分けてしまうとトータルの部分が見えなくなる。
     「卒業時に身に付けている能力」においても、10年後にどのツールが残っているかは分からないので、ここでは例示に留めるべきである。また、記述はクリアにしながらも時代に左右されないグローバルな内容にすべきである。
     「情報の科学的な理解」については、小学校ではあまり扱わなくてよいという考えからか、記述がない。「情報の科学的な理解」は、情報活用に実際に使うところの裏側にある理論や考え方であり、コンピュータだけでなく自分を対象化することも含まれる。小学校で身に付けてほしい能力として、自分を外から見る、発表の内容がしっかりできているかをモニターするなどがあり、科学的な理解が全くなくスキルだけトレーニングすればよいことにならないように吟味して表を作成してほしい。
  • 中身については検討中であり、小学校段階における「情報の科学的な理解」についても記述する予定である。「初等中等教育の情報教育に係る学習活動の具体的展開について」において、小学校段階でも「情報の科学的な理解」を扱うようになっているので、これに沿って進めたいと考えている。
  • トータルの能力というのは重要な視点である。過去にも議論があったが、「情報活用の実践力」は独立にやるものではなく「情報の科学的な理解」を進めた上でバランスよく指導していくことにより、トータルの能力が高められる。今回、8つに細分化されている目標について、バランスに注意して記述していただきたい。
  • 第4章の情報モラル教育については、国の動きとして、教育再生懇談会の報告では一番のポイントとして情報モラルを入れているし、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する法律」ではフィルタリング等の話に触れている。これらについても、情報モラル教育の必要性の根拠として取り上げてほしい。
  • 家庭や地域との連携について、第4章(情報モラル教育)や第7章(校務の情報化)では取り上げられているが、韓国では情報教育・ICT教育において保護者の関与が極めて強く、それが功を奏している。日本においては関与、理解、協力のうちどのレベルを求めるかは検討が必要であるが、他の章でも学習活動における家庭の関与・理解・協力の可能性に触れる記述があってもよいのではないか。情報教育それ自体が他の教科教育と多少質が異なり他の教科教育にも影響を与えるものであるので、家庭や地域の理解が今後必要であるということで、各章で具体的な方策を記述できるとよい。
  • 章の並び順について、第7章までは一人一人の教員を対象とした内容であり、第9章の「教員のICT活用指導力チェックリスト」の守備範囲に収まるようにそれらの章が記述されている。また、第8章の情報化推進体制と第10章のICT環境整備は対応していると感じる。第8章が第7章の直後にあってあまりに連続性を持ってしまうと、第8章は校務の情報化の推進体制ばかりが強調されるように見える。従って、第7章、第9章、第8章、第10章の順にすると分かりやすいのではないか。
     第6章についても、特別支援学校全体の情報化の話を含んでいることを考えると、現在の位置ではなく、別の位置に置くなどの検討をすべきではないか。
  • 「教育の情報化」の3本柱から考えた場合、全体のバランスが気になる。情報教育は重要であり小学校段階からのカリキュラムが必要だとしても、現実には、中学校では進路指導が忙しく、ICTの活用はプラスアルファという現状がある。先日、高等学校の先生と話をしたときも、普通高校では入試対策の授業が中心でICTの活用はプラスアルファであり、理科や地歴では進んでいるが他の教科ではどう扱うか悩んでいるとのことであった。実物投影機で映して指導するだけでなく、児童生徒が教科の学習のためにICTを活用することも含めて、各教科に、ICTをこのように活用すると教科のねらいを達成できる、というものがあるはずである。その意味で、第5章(学習指導でのICT活用)での扱いがさらっとしすぎている。第5章の説明の際、教科ごとに書くべきかどうかという話があったが、現場にICTの活用を浸透させる意味でも教科ごとで記述してほしい。
     章の並び順についても、第5章を第2章の後に置き、全ての教員が教科でのICT活用が当然必要であると理解させた上で、情報教育や情報モラル教育に進んでいく方が全体に広がるのではないか。これからICTを推進していく立場の人や現場の先生にこの手引を広めていくに当たり、情報教育が大事だとして進めるためには、戦略的に、まずは全ての先生が教科でICTを活用していくという土台を作ることが必要だと思う。そういう意味において、第5章に記述される各教科でのICT活用の扱いがかなり大きくなってくるのではないかと考える。
  • 日本の教育の情報化がどのような位置にあるのか、また、10年後に向けて教育の情報化の目指すところを前段に記述できないか。日本の場合は情報教育からスタートしていると考えるが、ここで転換して、改めて学習指導でのICT活用の普及からやるのだというようなビジョンを打ち出さないと、全体がぼやけるのではないかと感じる。
  • 第2章について、現行の手引では、ICTを手段として使うことと情報教育の目標(3観点)がビジュアルに表現されていた。今回はそこにコンピテンシーといった一つの能力のようなものが加わるのではないかと思う。「生きる力」とか、社会に出たときにそうした能力をしっかり身に付けておかないと問題解決やコミュニケーションができないといった視点は、学習指導要領にも、明確とは言えないまでも色濃く出ている。そうだとすると、コンピテンシー、手段、目標という3つの観点がもう少し明確に見えると分かりやすいと考える。現実にはICTを手段として使うのだが、将来を目指すときコンピテンシーが非常に重要であるといったことを第2章辺りに記述する必要があるのではないかと思うので、検討してほしい。
  • 現場の視点から発言させていただくと、学校では、コンピュータやインターネットだけでなく携帯電話に関するトラブルが多く起こっている。携帯小説も小学校まで広がりつつあり、情報モラルの観点に重点を置いて手引を作成してほしい。
     第3章のリストについて、現場の先生にとってはこういうものがあるとやりやすいと思うが、情報教育に精通していない先生には抵抗がある記述だと感じる。実際の指導内容にリンクして作成した方がイメージがわきやすい。児童生徒に対する計画だけでなく先生の指導用も両方セットであるとよい。
     第4章の情報モラル教育の各教科の事例についても大賛成であるが、10行程度でどのように記述されるのか気になる。情報機器を活用した授業を全く見たことがない先生にも分かっていただけるよう記述の工夫をしてほしい。
     現場ではある程度しばりがあった方がよいと思うので、第8章における「校内研修」を「校内研究」と広げて、学校でどういう研究テーマを選択したとしても、必ず1本は情報教育を考慮に入れた授業にするなどとすれば、必ず全校がこの手引を使うと考える。管理職のアクションの中に、校内研究の一つの柱として情報教育の授業を行う旨を記述してはどうか。
  • 第3章のリストについては、現場の先生に抵抗感を与えないような表現で慎重に記述したい。
  • 第3章のリストのように、具体的な例示をすることには大賛成だが、こういうものは独り歩きする可能性がある。独り歩きしても大丈夫なように、言葉や内容は陳腐化しにくいものを精選しなければいけない。独り歩きしたとしても、翻って手引を見たときに文章中にその考え方が示されていて、あくまで例示なのだとはっきり分かるようにすべきである。このことは第3章以外でも留意する必要がある。第3章で言えば、小学校の新学習指導要領に書かれた「基本的な操作」は学習活動を支えるための操作であって、その操作を例示したものがこれであるというロジックを明記すべきである。
  • 第10章の学校におけるICT環境整備の中に、「教育の情報化」の3本柱が見えるようになっていればよいと思う。子どもたちが学習で使う環境、教員が学習指導で使う環境、校務の上での環境があるということが理解されていないという状況がある。
     第10章第2節は、学校に整備されているものの調査データを基に記述するかと思うが、そこに現れない要素が学校の中にはある。以前、市内学校の全ての教室にコンピュータとプロジェクタを導入したがなかなか使われず、実物提示装置を入れたところそちらから使われ始めたということがあった。どのようなICT環境が「教育の情報化」のどの柱に繋がるのかという視点で記述すると、導入の際に活用しやすいと考える。
  • 第10章第3節に「学校におけるICT環境の運用」が記述されている。保守管理の体制や整備されたICT環境を活用するための体制については第8章にも記述されているが、現場としては保守運用していくことが一番大事で、作ったものを継続的に保守していくことが血液を正常に流すことになるので、最後のまとめとして、大切なことだと力説してほしい。保守は予算を削られやすいこともあり、この点からも力説してほしい。
  • 手引のボリュームが大きくなりそうだが、全てを全員が読むのは大変である。それぞれの教員にとって自分が押えるべき章が分かるような、一目で俯瞰できるものがあるとよい。また、情報教育の必要性を家庭に理解してもらうという趣旨から、保護者にアピールすべき内容も記述できるとよい。
  • 追加のご意見があれば、事務局あてにメールでいただきたい。
     「教員のICT活用指導力チェックリスト」は目標として重要であり、抜けのないように取り組んでもらわないといけない一方で、この18項目が全てではない。評価の視点として出しているが、今回の手引では、この18項目に限るわけではないことを考慮してほしい。
     いくつかの章で新たなチェックリストを検討されているが、作成するとそれで固まってしまう。10年間活用できるものであればよいが、どのように扱うかについては議論が必要である。例示や新たなチェックリストは作成する必要があると思うが、記述の仕方には注意する必要がある。
     各WGでは、分かりやすい手引とするためにどのようなイラストを入れる必要があるか検討してほしい。また、執筆に当たっては各章お互いのバランスを考えて協議してほしい。
     今後、構成員の方に個別にご相談するかも知れないが、あるいは事務局を通して、全体の整合性をとりながら作成していきたいので、よろしくお願いしたい。

(3)今後のスケジュールについて

 事務局より、資料3に基づき今後のスケジュールについて説明があった。

(以上)

お問合せ先

初等中等教育局参事官付