資料2 特別支援学校のセンター的機能の具体例

1 小・中学校等の教員への支援

○1 地域内の特別支援学級担任への巡回による支援

・ 特別支援学校(視覚障害)の相談支援担当者が、視覚障害のある児童が在籍する小学校を巡回して支援を行っている。具体的には、弱視特別支援学級の担任に対して、視覚障害教育の理解、校内環境の整備と学習・生活上の配慮、教材・教具等の作成と活用等についてアドバイスを行っている。訪問による支援をきっかけに、特別支援学校の児童と小学校の児童との交流及び共同学習の実施につながる例や特別支援学校で行う点字力テスト等を受検する例などもある。

○2 特別支援学級担任への継続的な支援

・ 知的障害の生徒が在籍している中学校特別支援学級の担任に対し、特別支援学校(知的障害)の特別支援教育コーディネーターが訪問して継続的にアドバイスをした。その結果、担任の生徒に対する理解が深まるとともに、指導の内容・方法を個別に検討できるようになり指導が改善されていった。

○3 高等学校教員からの要請に応じ支援

・ 高等学校の教員が、肢体不自由のある生徒に対する教科指導についての支援を求めて、生徒ともに特別支援学校(肢体不自由)に来校した。特別支援学校では、相談支援担当者、各教科担当者、自立活動担当者がチームを組んで生徒の状態を観察し、学習時の姿勢や学習環境、上肢の困難さを補う教材・教具等についてアドバイスを行った。その後も高等学校の教員からの要請に応じ、認知の特性に応じた指導方法についてもアドバイスを行った。

2 特別支援教育等に関する相談・情報提供

○1 児童生徒、保護者、教員を対象とした相談

・ 特別支援学校(知肢併置)は、対外的な相談・支援活動に当たる支援センターを設置している。このセンターでは、地域の小・中学校の特別支援学級や通常学級のLD等支援の必要な児童生徒、保護者、教員に対する相談支援を行っており、年間200~300件程度の相談に応じている。そのうち、発達障害の児童生徒に関する相談が約6割を占めており、電話相談や来校相談のほかに、児童生徒の実態を観察したり、ケース会議に出席したりする訪問相談が多くなっている。
 保護者からの相談は、学習上の問題や友人関係、家庭での対処の仕方などが多い。困難事例については、市が委嘱している専門家チームのアドバイスを得て解決を図っている。

○2 関係機関と連携した相談会の実施

・ 特別支援学校(視覚障害)が中心となり、0歳児~高齢者までを対象として県下6地域を巡回し、「目に関する相談会」を行っている。相談者に応じて、盲学校の職員はもちろん、大学教授、眼科医、歩行訓練士、視能訓練士、メガネ業者等が連携をとりながら相談に当たっている。

・ 聾学校が中心となり、研究機関(特殊教育総合研究所聴言部)と地元医師会(耳鼻科医)、企業(補聴器業者)が協力して、毎年、3月3日(耳の日)に「聞こえに関する相談会」を実施した。事前に市の広報紙等で地域の人に知らせ、子どもの聞こえや養育についての相談を受け、聴力測定を行ったり、高齢者の聞こえや補聴器の調整等に関する相談を受けたりして、聴覚障害教育等の理解啓発を図った。

○3 小・中学校等教員に対する情報提供

・ 特別支援学校(病弱・身体虚弱)では、退院後に児童生徒が小・中学校等にスムーズに復帰できるように支援するため、退院前後に前籍校である小・中学校等と連絡を取り、病気の子どもの理解を広げるようにしている。その際、特別支援学校長会病弱教育校長会等が作成した冊子「病気の子どもの理解のために」を活用している。 

3 障害のある児童生徒等への指導・支援

○1 特別支援学校が行う通級による指導

・ 特別支援学校(聴覚障害)に通級指導教室を設置し、担当者2名が定期通級(週に1~2回)20名、不定期通級生10名の指導に当たっている。小学校、中学校の児童生徒に対しても、聴力の測定、補聴器の活用、言葉の聞き取りや読話、発音指導や構音指導、国語・英語など言葉にかかわる教科の補充指導、心理的安定にかかわる指導を個別に行っている。

○2 継続的な相談を通した支援

・ 小学校に在校している弱視児が、特別支援学校(視覚障害)で教育相談を受けている。放課後来校し、弱視レンズや拡大読書器の使い方についてアドバイスを受けている。

・ 特別支援学校(肢体不自由)では、小・中学校に在籍する肢体不自由のある児童生徒を対象に、月1回程度支援教室を実施している。児童生徒の教育的ニーズや保護者の希望に応じて、姿勢や身体の使い方に関すること、認知の特性に合わせた学習の仕方に関することなどを個別に指導している。放課後に設定し、本人の思いを聞きながら、本人と保護者ができることを具体的に提案している。小・中学校と連携をとり、在籍校でのかかわり方、教材教具、補助具などの生かし方について相談に応じている。

4 福祉、医療、労働関係機関等との連絡・調整

○1 医療機関との連携による支援

・ 県内の聾学校が協力し、人工内耳を装用している児童等に対して、関係機関の連絡・調整を図るため、定期的にケーススタディを行う定例会を実施している。その結果、聾学校の教員や病院の医師、ST等の協力体制が整い、術後のアフターケアや教育的対応が適切に行えるようになっている。

○2 福祉、労働関係機関等との連携による就労移行支援

・ 本人の意思に基づいた移行支援を行うため、特別支援学校(複数)の高等部段階では進路相談と個別の支援体制の構築を重視している。生徒の進路に対するニーズを明確にしながら、ハローワーク、相談支援センター、就業・生活支援センター、福祉課、児童相談所等必要な機関に参加をいただきながらケース会議を実施し、現場実習で希望と適性を確かめながら就労移行支援を行っている。

○3 広域にわたる関係機関の連携

・ 特別支援学校(病弱・身体虚弱)では、3校が連携・協力して病弱教育の相談センターとして県内の相談業務等を行っている。センターとしての機能を遂行していくために必要な医療等の関係機関とのネットワークを作るため、病院等と定期的に連絡会を行ったり、医師や看護師と密接に連携をとったりしながら、病状に応じた支援や病気の子どもの心のケアなどを行っている。

5 小・中学校等の教員に対する研修協力

○1 校内研修会の講師としての協力

・ 各特別支援学校の特別支援教育コーディネーターは、地域の小学校や中学校の要請に基づき、障害の理解、校内支援体制の在り方、支援の方法等について、それぞれの校内研修会で講師として協力している。

○2 ケース会におけるアドバイザーとしての協力

・ 発達障害の児童が多く在籍する小学校の事例検討会に、特別支援学校(知的障害)の特別支援教育コーディネーターが定期的に参加し、授業場面のVTR等を見ながら一人一人の子どもに必要な支援内容・方法の検討を行っている。児童の行動の原因や支援の方法等を具体的に検討することにより、小学校教員が事例検討に積極的に取り組むようになってきている。

6 障害のある児童生徒等への施設設備等の提供

○1 教材・教具の提供

・ 特別支援学校(肢体不自由)では、地域支援室に教材教具や補助具、コミュニケーション支援機器や入力支援機器などを用意しており、小学校や中学校からの要請に基づいて貸し出している。

○2 障害のある人等への施設・設備の提供

・ 聾学校においては、卒業生を中心とした聴覚障害者の野球チームにグランドを貸したり、在校生を含む地域の人たちや子どもたちの放課後の活動を行うNPOに、体育館等の施設を貸し出したりしている。

・ また、理容科では、卒業生に対して、最新の理容に関する知識・技術の習得を図るため、研修会等を開催するなどして、休日に実習施設等を活用している聾学校もある。

○3 障害のある人の交流の場としての提供

・ 特別支援学校では、学校の施設を活用して筋・神経疾患の児童生徒がお互いに自立を目指す交流の場として提供したり、卒業生等の成人の筋ジストロフィー患者や経験豊富な保護者等によるピア・カウンセリングの場として提供したり、小・中学校等に在籍する筋ジストロフィー等の児童生徒やその保護者が積極的に活用できるようにしている。

 

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