特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議(第21回) 議事要旨

1.日時

平成22年2月24日(水曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 審議経過報告(案)について
  2. 自由討議
  3. その他

4.議事要旨

(1)髙倉座長より挨拶が行われた。

(2)事務局より配布資料の確認が行われた後、説明が行われた。

(3)事務局より資料に基づき説明が行われた後、自由討議となった。討議等の概要は以下のとおり。

〔概要〕○:委員 △:事務局

△資料2の審議経過報告(案)は、前回第20回において論点整理(案)として示したものを、「現状・これまでの取組」「検討の方向性及び課題」として整理し、審議経過報告の案としてまとめたものである。なお、「検討の方向性及び課題」については、論点整理(案)の「課題」と「協力者会議における主な意見」を文章化したものである。

○審議経過報告(案)P1「はじめに」の2行目から、平成17年12月の中央教育審議会答申で示された特別支援教育の理念について示されているが、同答申で示された理念の前段の「障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち」という部分も追加した方が良い。

○審議経過報告(案)P1の「障がい者制度改革推進本部」について、障害の「害」が平仮名で表記されている。漢字表記と平仮名表記が混在するので、何らかの配慮が必要ではないか。

○審議経過報告(案)P1の「特別支援教育の理念の実現という観点からは、これらの取組はまだ緒についたばかりであり」について、学校教育法等が改正されて3年が経過しているので、表現を工夫した方が良い。

○審議経過報告(案)P2「1.特別支援学校における現状と課題」における事務次官通知の引用について、盲・聾・養護学校の名称を用いることについての項目が最初に引用されていることについては違和感がある。

○特別支援学校の課題として自閉症の問題がある。筑波大学附属久里浜特別支援学校でも自閉症の研究が始まり、全国特別支援学校知的障害教育校長会の調べでも約6%の学級が自閉症に特化した学級を編制しているというデータもある。「検討の方向性及び課題」でもう少し自閉症を併せ有する児童生徒に対する取組について追加した方が良い。また、センター的機能の部分でも、そのような障害特性に対応する指導方法や教材等の開発などについて示すことができれば、今後の特別支援学校のセンター的機能の充実に役立つと思う。

○審議経過報告(案)P3「検討の方向性及び課題」中の「特別支援学校の課題」「センター的機能」の2つの表題について、特別支援学校の課題としては、在籍する子どもへの対応とセンター的機能の2つがあると理解しているので、「センター的機能」に並ぶ表題としては、「特別支援学校の課題」ではなく「在籍者への対応」などの表現が良いのではないか。

○特別支援学校が地域の特別支援教育のセンター校を担うというのが今後の方向性だと思うが、そうであれば、様々な障害種・複数の障害種に対応する学校として整備されていくものと思う。特に審議経過報告(案)P1に示されているインクルーシブ教育システムの問題等も勘案すると、そういった方向性が強まるだろう。そのような方向性をある程度見通した対応を考えなければならない。そうすると、障害に特化するという考え方を否定するものではないが、P2のような従来の特定の障害者を対象とする学校を残しても良いとするのは、少し違和感がある。P3の「センター的機能」の2番目の段落「また、センター的機能を有効に活用するためには」の中に、特別支援学校の機能の発揮として学習指導要領等で示されているような自立活動における他者とのかかわりなどに関する指導の活用などを示せば、特別支援学校の課題としてもその部分を示すことができることになると思う。

○審議経過報告(案)P3の「特別支援学校の課題」の最後に、次の表題の「センター的機能」へのつなぎの文として「在籍する子どもへの教育的対応により蓄積されたノウハウはセンター的機能の発揮に資する」などを入れてみてはいかがか。

○審議経過報告(案)P3の「複数障害への対応も含めた適正配置」について、「適正規模」も併せて示すべき。障害種別を複数にして規模が非常に大きい学校を設置するという状況も見受けられるが、このような状況は児童生徒にとって良いことではない。

○審議経過報告(案)P5の「検討の方向性及び課題」の「発達障害を含めた幅広い障害に対する」について、「障害」が続いているが、例えば「発達障害を含めた幅広い認知特性」などのように、幅広く対象を捉えた方が良いと思う。特別支援教育が現在の方向で進んだ場合、カバーする範囲はさらに広がると思うので、ハンディキャップのみに限定しない方が良い。従来どおりのハンディキャップにも対応するが、もっと広いものも取り込むことができるというニュアンスを残した方が良いと感じた。

△発言のあったような認知特性と表現すると、どうしても身体的な障害の面が弱くなってしまう。ここはすべての障害者を想定できる良い表現を検討したい。

○例えば、前段の「発達障害」を削除して、「障害」を「困難」や「ニーズ」などと表現してみはいかがか。

○特別な教育的ニーズのような表現であるならば、幅広く捉えられると思う。

○審議経過報告(案)P11の個別の指導計画で、個人情報に触れられているが、個人情報の保護については適切に示すべきである。特に、次ページの個別の教育支援計画などで学校外に情報を提供する場合は、法令上の第三者提供に該当するので、保護者は本人の同意が必要である。これについては、P11において触れられているように、ガイドラインを示すべき。また、P11の下から2つ目の段落で示される保護者との関係というのは、保護者の意見聴取などということであるので、個人情報の保護の問題とはまた別の視点になる。このため、個人情報の保護とは分けて示した方が良い。また、P12の個別の教育支援計画について、保護者の意見をどう入れるかについて、「共通理解を図る」と示されているが、平成16年1月の「小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」ではもう少し詳細に「作成作業においては、保護者の積極的な参加を促し、計画の内容や実施について保護者の意見を十分に聞いて、計画を作成・実施し改善していくことが重要です。」と示されている。保護者からすると、保護者の意見をどう取り入れるのかというところが重要な点になる。審議経過報告(案)の示し方では、少し後退感を感じるので、この部分については触れずにガイドラインを優先することにする、もしくは、保護者の意見の扱いについてより明確に示す、などと対応すべき。

○審議経過報告(案)P26で、親の会やNPO、学校支援ボランティア等の連携が最後に示されているが、最後の段落の表現は文章として誤解を招きやすい。「そのような団体は」から始まり、「改善を検討すべきと考えられる。」で終わっている。学校や行政側が配慮すべきという意味であれば良いが、この文章では親の会等に対する要望と読める。この部分については、表現を工夫すべき。

○審議経過報告(案)P11・12の個別の指導計画と個別の教育支援計画の順序について、学習指導要領ではまず個別の指導計画が示され、その後に個別の教育支援計画が示されている。ただし、例えば審議経過報告(案)P55の資料でも、個別の教育支援計画から矢印が下りて個別の指導計画につながっているように、現場感覚からすると、個別の教育支援計画が先に示されるべきと感じる。審議経過報告(案)の順序については、意図的なものがあるのか教えてほしい。

△順序について、標準のフローとして学校を主体に考えると、まずは学校が主体的に作成して指導につなげる個別の指導計画が先となり、その後に関係機関との連携の下に一層の支援の質を高めるための個別の教育支援計画が続くという流れが想定される。現在の審議経過報告(案)ではこの順序で示している。ただし、他の資料等では、個別の教育支援計画が最初になる場合もある。福祉施策などの関係機関との連携など幅広い視点を重視すれば、個別の教育支援計画を先にするのも十分理にかなうものと思う。学校を主体として考えるか、より幅広い視点から示すと考えるか、ということかと思う。他の委員からの異存が無ければ、順序を入れかえて個別の教育支援計画を先に示しても良いと思う。

○個別の教育支援計画については、P11の下から7行目で「保護者との連携の下に作成されるもの」と示されているが、P12の下から7行目では「保護者または本人の理解の下に作成する」と示されている。同じ個別の教育支援計画の作成プロセスに関して示されているものと思うが、P12において「本人の」と示されていることについては意図があるのか、教えてほしい。

△個別の教育支援計画の異なる表記については、統一するよう修正したい。

○個別の指導計画や個別の教育支援計画の保護者への提供については、各教育委員会の判断に任せるという見解と思うが、その点についての見解があれば教えてほしい。

△本人等への提供については、教育委員会において本来の趣旨を損なわない範囲で適切に判断すべきものと考えている。

○例えば、交流及び共同学習や個別の教育支援計画などは特別支援学校と小・中学校の双方に関係し、課題としては両方にまたがるものと思う。これらを記載するとなると、一方に重点を置くことになるとは思うが、現在の案で良いのか、念の為確認した方が良いのではないか。

○発達障害のある子どもが通常の学級に在籍している学校の9割以上が、定数配置や特別支援教育支援員の配置、特別支援教育コーディネーターの強化充実・人的充実などを切実に望んでいる実態がある。そのようなことが審議経過報告(案)の各項目で触れられているが、その実態が今後の特別支援教育を進めていく上での大事な基盤になると思う。その点を明確に示した審議経過報告にすべき。

○特別支援教育コーディネーターや通常の学級の担任教員、あるいは校長に求められる専門性の視点として、子ども同士の相互理解や協力の築き方を追加したい。これは経験や人権的な素養を非常に要する。これについては、担任本人の研修の積み方やコーディネーターの助言の仕方も難しいが、最も困難な部分は保護者間の相互理解である。多くの教員は保護者間の相互理解に混迷している。そのような意味で、子ども間や保護者間の相互理解の築き方を、担任教員レベル、コーディネーターレベル、校長レベルで位置付けないと問題は解決しないと思う。

○審議経過報告(案)P14で通級による指導や特別支援学級の対象者や在籍者が小・中学校別で示されているが、これを見ると明らかに中学生の通級による指導対象児童生徒数が少ない。中学生が増加しないということを、P15の上から2つ目の段落などで触れて課題として示すべき。

○審議経過報告(案)P15の(7)特別支援教室構想について、制度化に対する困難さを感じさせるような内容となっている。せっかく研究開発学校などのデータも示されているので、その有効性や必要性など、ポジティブな内容にも触れた方が良い。

○平成17年12月の中央教育審議会「特別支援教育を推進するための制度の在り方」や平成13年1月の「21世紀の特殊教育の在り方について」の議論の段階では、盲聾の教育の問題がかなり議論されていた。盲聾や希少障害に対してどう対応するのかというような問題があった。このように障害の多様化や障害の重複化というような議論がなされてきたが、それに対応してきたのは、国立特別支援教育総合研究所であった。発達障害の問題も大事であるが、このように、盲聾や希少障害への対応や、特別支援教育の研究所が大きな役割を果たしているということを審議経過報告に含めても良いと思う。

○国立特殊教育総合研究所から国立特別支援教育総合研究所に変更したが、従来の障害に対する内容を基盤にして特別支援教育という方向に進んでいるということを強調しながら、従来どおり、盲・聾についての研修を実施している。先ほど発言のあったように、研究所が実施しているということをもう少し明確に示しても良いのではないか。

○先ほど希少障害教育について発言があったが、視覚障害と聴覚障害の重複障害といったような出現率の低い子どもの教育の重要性などを審議経過報告でも示してはいかがか。地方の大学にはそのような研究の専門家は少ないが、国立特別支援教育総合研究所では専門家もおり、ノウハウが蓄積されているので、期待しているところである。

○特別支援学校の使命は様々であるが、最も大事なことは、重複や重度の障害のある子どもにどのように対応するのかを原点として、さらに何ができるのかという視点で取り組むことであると考える。

○多様な子どもの教育的ニーズを踏まえ、学級をどうまとめて授業を実施するのかという問題がある。審議経過報告(概要)-案-の2枚目の「○3小・中学校通常学級担当教員の専門性」の3点目の「各教科等への特別支援教育の視点を加えた授業力」と示されているが、このあたりがモデル事業の実施や研究発表会の開催などを通じて現場では非常に盛り上がっている。日常的な校内研修や校内研究の中で教科指導の研究を行っているので、そこに、どの子どもにもわかる授業、個に応じた指導、学習のルール、子ども同士のつながりなどをキーワードとする特別支援教育の視点を加えた「わかりやすい授業」についても含めるべき。このことについて、審議経過報告(概要)-案-には示されているように、審議経過報告(案)のP23の「(3)小・中学校等の通常の学級担任の専門性」においても示すべき。

○保護者対応について、家庭との連携やサポートの比重が大きくなりつつある。具体的には、就学についての相談的なサポートや福祉への接続、経済的な問題、保護者自身の病気の問題、子育ての基本の問題などへの対応が求められる。特に、子育てについては対応が難しいために虐待へつながる可能性もあったり、また、1年生の問題が就学との関連で大きな問題になっている。

○幼稚園においても、子どもが健やかに育っていくという方向が大切であるので、医療機関や福祉機関など専門機関との連携を充実することが何よりも大事だと感じている。

○審議経過報告(案)P25の検討の方向性及び課題の表現について「検討する必要がある」「図るべき」などと示されているが、主語が不明確である。文部科学省が主語になるのかもしれないが、そうであれば「今後の検討」では何にも変わらない。ここはもう一歩踏み込んで、検討の方向性及び課題で、各地方公共団体の教育委員会にも取り組んでいただくというニュアンスを含めるなど、工夫すべき。

○保護者の立場からすると、家庭教育、地域教育、学校教育の3つが充実してはじめて地域の学校が成り立つと思う。保護者に対するサポートを含め、保護者が学校に相談に行ける環境整備を進めるべき。また、保護者の意見が障害のある子どもへの教育にどれだけ取り入れられるかというのは、非常に気になるところである。その部分については、審議経過報告(案)では文言だけで終わっているように感じるので工夫すべき。

○交流及び共同学習について、受け入れる側においてすべての障害種別に対応し切れないという現状があり、混乱が生じている地域もある。全体的に幅広く支援を行える者が、通常の学校にもいると良い。実態としては、受入れ側の学校における授業計画の作成や、保護者との関係などに困難をきたしているのが現状かと思う。交流及び共同学習が進んでいる地域もあるが、そういうような困難に対して工夫するように、審議経過報告では示すべき。

△平成16年の障害者基本法の改正の際に交流及び共同学習が規定され、それに基づき、各学校、地域での取組が進んでいる。その法律に規定のある交流及び共同学習を受けとめて、通常の小・中学校、特別支援学校の新しい学習指導要領では、特に計画的・組織的に進めると位置付け、これから本格的に展開していくところである。初期段階では困難もあり、なかなか進みがたい部分もあるが、今後本格的に進めていくことは、将来のインクルージブ教育システムに向かっていく際の心のバリアフリー、あるいは本格的な受け入れに当たっての条件整備のトライアルいったような入り口段階の検討につながると思われ、非常にメリットが大きいことであると思っている。

○これまでと政治のシステムが変わってきている。報告書のような書類は、これまでは専門家が読んでいたが、今後は専門家ではない人にもアピールできる報告書にしなければならない。現状の審議経過報告は専門家向けの書類となっているので、これまでの特殊教育から特別支援教育までの流れや、現在テーマとなっていることなど、専門家ではない人にもわかりやすい解説を入れる必要を感じる。そうしないと、放置されてしまう気がする。

○審議経過報告(案)P23の「小・中学校等の教員に関する免許制度」について、これまでその部分が抜けたまま免許状が付与されてきた。このため、学校でも特別なニーズがある子どもの対応ができていない仕組みの上で学校運営がなされているということに気がついていない。インクルージブな教育についても議論されているが、現実的な問題として教員が対応できなくなることは予想できる。そのような意味から、最初の段落、免許制度の箇所について、免許制度の現状がわかるよう修文する必要があるのではないか。現政権では、今後、教員免許制度の抜本的見直しを図るとなっているので、そのときにはこのことを整備することが求められる。

△一般向けの説明を考慮して、報告書の参考資料に、特別支援教育の理念や学校教育法の一部改正、主な課題と対応する施策などを一枚の資料で添付したいと思う。

(4)この後、審議経過報告のとりまとめについて、座長に一任することの採決が行われ、可決された後、閉会した。

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)