資料5 子どもの体験について(論点メモ)

論点1  子どもの成育をめぐる問題の背景の1つとして、自然体験、生活体験などの様々な体験の不足があると指摘されるが、このことについてどう考えるか。

→ 子どもの成長・発達にとって、どの時期に、どのような体験・経験を重ねることが、本来必要なのか。

→ 現代の子どもについて、どのような体験の機会が減少しているか。

→ どのような体験の不足が、子どもの問題を引き起こしているか。

【体験の不足等に関する指摘(これまでの会議意見等から)】 
 ・「現場・現物・現人間」の経験の不足
 ・「農」からの遊離した社会における自然体験・生活体験の少なさ

《参考》子どもの体験に関する各種調査

○身近な自然体験を含め、自然の中で活動する機会が減少している (平成10年と17年の比較)。
   〔独立行政法人国立青少年教育振興機構「自然体験活動等に関する実態調査」〕

○自然体験の多い小中学生には道徳観・正義感の身に付いている者が多い。
   〔独立行政法人国立青少年教育振興機構「自然体験活動等に関する実態調査」〕

○自然に触れる体験をしたあと、勉強に対してやる気がでる子どもが増える。
   〔平成14年文部科学省委託研究「学習意欲に関する調査研究」〕

論点2  徳育の一環として、子どもの成長・発達の過程において、意図的・積極的に与えていくべき経験・体験といったものはあるか。

→ どの時期に、どのような経験・体験を与えるべきか。

→ 誰が、どのような機会を通じて、どような手段を用いて、与えていくべきか。

【子どもに積極的に与えていくべき体験に関する指摘(これまでの会議意見等から)】
 ・子どもたち自身が一緒に考え、ルールを変えたり、作ったりしていく体験
 ・子ども同士が生でぶつかり合い、ケンカもして、そこから相手との関係を言葉で調整していく経験
 ・大人とのかかわりなど、他者との交流を深め、人間関係を築く体験
 ・障害者や高齢者など様々な人々と触れ合い、それらの人々の生の言葉を聞くことができるような体験・地域におけるボランティア活動の体験

《参考》各学校段階で重点的に推進すべき体験活動 (学習指導要領における考え方)

 

【発達の段階としての特徴】

【重点的に推進する体験活動】

小学校

学年が上がるにつれて、自分のことを 距離をもってとらえられるようになることから、自分対象とのかかわりが新たな意味を持つ

自然の偉大さや美しさに出会ったり、身近な学校の仲間とのかかわりを深めたりする自然の中での集団宿泊活動

中学校

未熟ながらも大人に近い心身の力をもつようになり、大人の社会とかかわる中で、大人もそれぞれの自分の世界をもちつつ、社会で責任をたしていることへの気付きへと広がっていく

職場での体験を通して社会の在り方を垣間見ることにより勤労観・職業観をはぐくむ職場体験活動

高等学校

思春期の混乱から脱しつつ、大人の社会を展望するようになり、自分は大人の社会でどのように生きるかという課題に出会う

人に尽くしたり社会に役立つことのやりがいを感じることで、自分の将来展望や社会における自分の役割について考えを深めることが期待できる奉仕体験活動や就業体験活動

「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」(平成20年1月17日中央教育審議会)より

《参考》体験活動の推進に関する施策

〔学校における体験活動〕

○子ども農山漁村交流プロジェクト[文部科学省・農林水産省・総務省による連携事業]  平成20~24年度までの5年間で、全国の小学校(1学年120万人・2万3,000校)において、農山漁村における長期宿泊体験活動を実施できるような体制整備を目指す。

○児童生徒の輝く心育成事業 ~ふれあい応援プロジェクト~
  小・中学校を指定し、世代間交流や動植物の育成を通じて感性を育み、命の大切さを学ばせる体験活動プログラムについて調査研究。

○高校生の社会奉仕活動推進校
  各都道府県の高等学校を指定し、社会奉仕活動のプログラムについて調査研究。

○発達段階に応じたキャリア教育支援事業
  発達段階を通じた組織的・系統的なキャリア教育を推進する観点から、職場体験の教育効果を高めるための工夫策についても調査研究。

〔その他〕

○青少年体験活動総合プラン
 *小学校長期自然体験活動支援プロジェクト
  小学校が実施する1週間の自然体験活動を支援するため、指導者の養成や青少年教育施設等における特色あるプログラムを開発。
 *青少年の課題に対応した体験活動推進プロジェクト
  様々な困難を抱える青少年の自立支援、青少年の社会性や意欲の向上、体験活動の機会と場の開拓など、青少年の課題に対応した体験活動を推進。

○ 子どもたちの発達の段階として、個人差はあるものの一般的に見られる主な特徴については、例えば、
 ・ 小学校においては、学年が上がるにつれて、自分のことを距離をもってとらえられるようになることから、自分と対象とのかかわりが新たな意味を持つ
 ・ 中学校になると、未熟ながらも大人に近い心身の力をもつようになり、大人の社会とかかわる中で、大人もそれぞれの自分の世界をもちつつ、社会で責任を果たしていることへの気付きへと広がっていく
 ・ 高校生になると、思春期の混乱から脱しつつ、大人の社会を展望するようになり、自分は大人の社会でどのように生きるかという課題に出会う、
といったことが挙げられる

○ このような発達段階のほか、親や教師以外の地域の大人などの交流の場や自然体験の減少といった子どもたちを取り巻く状況の変化を踏まえれば、学校教育において
 ・ 自己が明確になり、自覚されるようになる小学校の時期においては、自然の偉大さや美しさに出会ったり、身近な学校の仲間とのかかわりを深めたりする自然の中での集団宿泊活動
 ・ 大人が社会で責任を果たしていることに気付き、進路を自分の問題として考え始める中学校の時期においては、職場での体験を通して社会の在り方を垣間見ることにより勤労観・職業観をはぐくむ職場体験活動
 ・ 自分と他者や社会との関係について考えを深める高等学校の時期においては、人に尽くしたり社会に役立つことのやりがいを感じることで、自分の将来展望や社会における自分の役割について考えを深めることが期待できる奉仕体験活動や就業体験活動
をそれぞれ重点的に推進

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課