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資料4

学校運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等について

全日本教職員連盟

はじめに

 昭和49年2月25日に公布・施行された「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教職員の人材確保に関する特別措置法」(人材確保法)に、「義務教育諸学校の教職員の給与については、一般の公務員の給与水準に比較して必要な優遇措置が講じられなければならない。」と記述されている。これは、教育に対する国の明確な意志を反映したものと言える。
 しかし、同法が施行されて34年を経過した現在、教員を取り巻く環境は、大きく変化した。様々な教育的諸課題が生じ、それらに日々対応している教員は、身体的にも精神的にも大きな負担を背負うようになった。
 そのような状況において、「人材確保法」の趣旨は、財政論の前で踏みにじられようとしている。平成18年に公布・施行された「行革推進法」には、「人材確保法」の廃止を含めた見直しを行うことが盛り込まれ、それを受けた形で、教員給与月額が一般行政職給与月額を上回るとされた部分の縮減(2.76パーセント)が行われることになった。平成19年3月には中教審が「今後の教員給与の在り方について」を答申し、教職調整額の見直しの必要性を提言した。
 全日教連は、教育専門職としての自覚を持ち、子供たちのために真摯に日々の教育活動に取り組んでいる教員に対して、十分に給与が優遇されなければならないと考える。教員の職責と職務内容は、一般行政職や、ましてや民間企業の従業員とは一線を画するものであり、それを明確に現した「人材確保法」はまさに教員の誇りともいえるものである。「教育は人なり」という言葉の持つ重さを、改めて感じて欲しい。

ヒアリング事項

(1)学校の組織運営について

1 学校が組織として問題解決に当たる体制の構築のために、具体的にどのような条件整備等が必要と考えますか。

  •  何よりも、校長・副校長・教頭という管理職が、学校のリーダーとして教員や保護者、地域からも信頼されるよう、管理能力を育成するための十分な研修を行うことである。学校マネジメントという言葉が盛んに使用されているが、学校を組織的に運営していくためには、まず学校の最高責任者である校長のリーダーシップが重要である。校長が代わったことにより、学校が大きく変わることは教職員であれば、誰もが経験していることであり、それだけ校長の責任も重いと言えよう。
  •  その上で、学校が組織として問題解決に当たる体制を構築するためには、学校内の組織の再編が重要である。現在の学校組織体制は細分化されている。それは、社会の要求に学校教育が応えようとするあまり、多くのものを抱えすぎているからである。学習指導要領にある教科の枠を越えた「図書館教育」「性教育」「福祉教育」「情報教育」「環境教育」「人権教育」「食育」「特別支援教育」「健康教育」「安全教育」「金銭教育」「防災教育」等、様々な内容の教育活動が求められている。いずれも重要なテーマであるが、これらの企画・指導は、当然、教員が担わなくてはならない。
  •  さらに、文部科学省や教育委員会からの調査報告、様々な学校行事や生徒会活動の計画立案、校内研修や各教育委員会主催の研修等に参加するための資料作成、校内の課題の解決を図るための各種会議の資料作成等も、多忙化の一因になっている。これらの仕事は、教員一人一人に任されている。教員の少ない小規模校になるほど、一人当たりが抱える校務分掌は増えるため、仕事の量は膨大になってしまう。
  •  したがって、何よりもまず早急に手をつけなければならないことは、子供たちの教育に対して、「学校」「家庭」「地域」がどこまで責任を持つのかを、明確にすることである。今日的教育諸課題の全てを、学校が抱え込み、学校教育において解決しようとしたことが、教員の多忙化を招いた要因でもある。
  •  その上で、校長のマネジメントによって、学校としての業務を、全体的な視野から整理し、限られた時間を効率よく配分するための協働のシステム作りを行うことが重要である。その中心となるのが、主幹教諭や指導教諭という中堅リーダーである。したがって、早急に、主幹教諭、指導教諭の配置の促進を促す必要がある。特に主幹教諭が、あらかじめ意見集約を行い、会議等を効率的に運営したり、生徒指導上の課題にチームを編制して対応したりするなど、効率的、機動的に動くことによって、教員の負担軽減は大幅に図れるものと考える。
  •  また、指導教諭においては、教育指導上の助言や、研修機能を担う位置付けとし、現状把握・原因追及に向きがちな各種研修や会議等を、問題解決策に焦点を当てるものに変える等の役割を行うことで、限られた時間を有効に使うことができる。
  •  さらに、学校事務職員を文書取扱主任として、権限と責任の特定を行うことで、文書等の事務処理の効率化が図られると考える。児童生徒の名簿管理、各種の会計業務等についても学校事務職員が行うことで、より効率的に実施できる場合もある。

2 教員の子供と向き合う時間を確保し、教育に専念できるようにするため、教員が現在行っている業務のうち、具体的にどのような業務については、外部の専門家や地域のボランティア、他の組織等に委ねることができると考えますか。

  •  現在、教員の負担を軽減するために、地域の人材や、外部の専門家、学校支援ボランティア等の多様な人材の活用が言われている。しかし、それらを導入するための準備や、関係者間のコーディネート等は決して容易ではない。むしろ、打合せや協働の過程が新たな負担となり、逆に子供と向き合う時間が削られるという懸念を現場は持っている。
  •  したがって、業務を委ねる際には、ある程度長期的に関われる人物を選ぶことが、重要である。毎年、新しい人材を活用することは、むしろ非効率的なものになってしまう。それらを踏まえて、委託できる業務としては、次のようなものと考える。
    • 授業においての教員の補助や支援
    • 不登校への対応
    • 部活動及びクラブ活動の指導や支援
    • 校内環境の整備の支援
    • 登下校中における安全指導
    • 各種の学校行事の補助や支援
    • 各種集金業務及び未納金への対応
    • いわゆるモンスターペアレンツ等、保護者の理不尽な要求への対応
    • 地域住民との問題等の対応

(2)教員の勤務とその処遇について

1 労働法制上、公立学校の教員についても他の労働者と同様に勤務時間管理を適正に行うことが求められております。時間外勤務を縮減するため、教員の勤務時間管理を適正に行うことについて、どのようなことが課題であると考えますか。また、その課題の解決のためには、どのような対応が必要であると考えますか。

  •  平成18年度に実施された教員勤務実態調査によると、月平均の時間外勤務が約34時間にのぼった。これは昭和41年の調査の約8時間を大きく上回っている。多忙化を背景として、教員の勤務時間は確実に長くなっていることが調査から明らかになったわけである。また、様々な問題を抱える子供たちに対応したり、安全上の問題から、放課後の時間を指導に使うことができないため、休み時間(昼休みを含む)に指導を行ったりすることもあり、教員の1日の休憩時間が10分以下という実態も明らかになっている。さらに、教員は子供たちが事件や事故に遭ったときや、逆に子供たちが事件や事故を起こしたとき、保護者と話し合ったり、関係機関と連絡を取り合ったり等、勤務時間外に動かなければならないことが日常的に存在する。
  •  これらを考えると、勤務時間管理は大変難しいといえる。時間外勤務の縮減ということで、子供たちや保護者等の対応を蔑ろにするわけにはいかない。むしろ、真摯な姿勢で、情熱を持って教育に当たっている教員ほど、勤務時間に関係なく、丁寧に対応するものである。国民は、学校に対して、学習指導だけを求めているわけではない。それらは、例えば子供が帰宅後や休日に問題を起こした場合でも、本人の自宅ではなく、真っ先に学校に連絡が入るような状況であることからも明白である。
  •  勤務時間管理を適正に行おうするのであれば、教育における「学校」「家庭」「社会」の責任分担を明確しなければならない。それを規定しないかぎり、教員の勤務時間管理は困難であると考える。

2 教員の処遇について、一人ひとりの能力実績に応じたものとすることや、メリハリある給与体系を実現して頑張る教員の処遇の充実を図ることについて、どう考えますか。

  •  現在の給与制度は、必ずしも校内における職責や職務遂行能力が給与に反映しているとは言えない。優れた指導力を持つ教員がその職務や職責、能力にふさわしい給与を与えられることは、教員の意欲や資質の向上につながるものと考える。しかし、一人一人の能力実績に応じたものとすることが行き過ぎて、成果主義に陥ってしまっては、教育現場の荒廃を招くことになる。
  •  成果主義は個人主義を生み出す。お互いに協力しようとする姿勢もなくなる。それぞれの教員が自らの成果を上げることのみに力を注いだら、お互いに助け合い、協力し合って、児童生徒を健全に育てていこうとする教師文化が損なわれ、職員室の雰囲気や人間関係は悪くなっていく。それが、子供たちに良い影響を与えるとは思えない。
  •  したがって、現在、全ての都道府県において実施されている「教員評価制度」については、それを直ちに給与に反映させることに慎重でなければならない。何よりもまず、信頼に値する「教員評価制度」を確立することが重要である。評価される側、評価する側、そして中立的な第三者ともに納得できるようなシステムにする必要がある。
  •  能力や実績を鑑み、責任ある業務を担っている教員に対しては、「主任」や「主幹教諭」「指導教諭」等への任用ということで処遇するべきである。一方、休職中の教員や指導力不足で研修中の教員等、学校現場で子供たちの指導に関わっていない教員については、給与を減額する方向で考えるべきである。それによって、メリハリは十分につけることができる。

3 部活動指導について、教員の勤務負担を改善するために、どのような対応が必要であると考えますか。

  •  部活動は、子供たちの健全育成の上で重要な役割を果たしている。しかし、部活動指導に当たっている教員への負担は大きい。平日は、部活動指導後に、自らの校務や学級事務等をこなすため、帰宅が深夜になることもある。また、土日には対外試合等があり、一日が費やされることも多い。このような実態から、部活動を受け持った教員の家族にも負担をかけている状況もあり、家族から改善を求める声もあがっている。
  •  これらの負担を軽減するためには、地域にいる専門家を指導者や支援者とすることも検討されている。しかし、部活動における教員と生徒の深い結びつきが、教育的な効果を現していることも事実である。部活動を教員の手から離してしまうことは、学校教育にとって大きなマイナスになることも考慮しなくてはならない。
  •  また、少子化の影響から、一つの学校では部活動が成り立たない状況もあることから、地域のクラブ化を進め、数校の教員と地域の専門家が協力して指導に当たれるようにすることで、教員への負担軽減が図られると考える。

4 いわゆる持ち帰り業務については、適正な情報管理や教員の勤務負担の軽減という観点から、これを改善するために、どのような対応が必要であると考えますか。

  •  いわゆる持ち帰り業務は、教員の特殊な勤務業態と考える。子供たちの作品へのコメント記入や、テストの採点、子供たちの評価等、学校の勤務時間内では処理しきれないものを、家に持ち帰って処理するものである。一方では、学校から家への帰宅途中で、子供たちの情報が入ったパソコンやUSBメモリーが盗難に遭う、という事件も発生している。
  •  これらを改善することは難しい。なぜなら、持ち帰り業務は教員の家庭的な事情が大きく関与しているためである。持ち帰り業務をしている教員の多くが女性であることからも、それらは伺うことができる。したがって、情報管理の徹底を行うことと、適切な校務分掌への教員配置を行うことが重要である。

(3)教職調整額の見直し方策について

1 教員の時間外勤務については、個々人によりその実態には大きな差があります。一律の処遇を見直し、長時間の時間外勤務には、それにふさわしい手当を支払うべきとの意見がありますが、どのように考えますか。

  •  一般の行政職に比べて教員は、教材研究や授業準備、児童生徒の指導等、勤務時間外においてもその職務を維持する必要がある。現在の教職調整額4パーセントは約8時間相当にあたるが、平成18年の教員勤務実態調査によると、月当たりの平均残業時間は約34時間にも上っている。一律の処遇を見直すべき、との意見があるが、これは教員の勤務の実態を理解しているとは言い難い。教員の時間外勤務に大きな差ができるのは、個々の教員の問題ではなく、むしろ校務分掌や学校、さらに子供たちに起因しているのである。
  •  教員の受け持つ校務分掌は、毎年、見直しが行われる。その学校の中心的な役割を担う教務主任や生徒指導主任等を担当した場合は、どうしても時間外勤務時間が長くなる傾向がある。
  •  学校の地域性により、問題等が多く発生する学校に勤務している教員は、時間外勤務は多くなる。一方で、地域が安定しており、児童生徒指導上の問題が少ない学校に勤務する教員は、時間外勤務は少なくなる。
  •  勤務校が研究校や実験校になっている場合、研修や会議のために、教員の時間外勤務は、他の学校よりも多くなる。
  •  同じ学校であったとしても、問題を抱えた児童生徒が多い学年や学級を担任すれば、時間外勤務は長くなる。反対に、問題を抱えた児童生徒が少ない学年や学級を担任した場合、時間外勤務は短くなる。
  •  つまり、校務分掌の内容や学校の状況、受け持った学年や学級の状況により、教員の勤務時間は大きく左右されるのであって、時間外勤務の個人差を短期的に見て、問題として取り上げることには無理がある。
  •  また、教員の勤務時間の管理は、様々な状況から困難であることから、長期的な視野から教職調整額の一律支給が望ましい。教員勤務実態調査を踏まえると、単純に計算すれば教職調整額は17パーセントに相当するが、現実的には上記のような実態から、教職調整額は12パーセント程度が妥当だと考える。しかし、前述した通り、休職中の教員や指導力不足として研修を受けている教員等、学校現場で子供たちと関わっていない教員に対しては、教職調整額を減額または支給しない方向で考えるべきである。

2 また、逆に、全くあるいは殆ど時間外勤務をしていない人には、4パーセント支払うことは適当でないという意見もありますが、どのように考えますか。

  •  上記で述べたとおり、時間外勤務をしていない教員も、校務分掌の内容や学校・学年・学級が変わることにより時間外勤務が増えるわけである。また、反対に、現在時間外勤務が長い教員も、担当した校務分掌、学校や学年・学級が変わることで、時間外勤務が短くなることはあり得る。また、時間外勤務をしていなくとも、毎日のように持ち帰り業務をしている教員は多数いる。さらに、前述した通り、教員の職務内容や勤務実態から考えて、勤務時間の管理を行うことは極めて難しい。
  •  したがって「4パーセント支払うことは適当でない」という意見は、教員の勤務の実態を正確に把握したものではないと、と考える。

3 仮に、教職調整額を廃止し、時間外勤務手当を導入する場合、具体的にどのような課題がありますか。また、その課題の解決のためには、どのような対応が必要であると考えますか。

  •  教職調整額を廃止し、時間外手当を導入しようとすることには反対する。教員の勤務実態に馴染まない、ということで時間外手当ではなく、教職調整額が導入された経緯を考えるべきである。時間外勤務手当を導入した場合、現在の教員勤務の実態から推測すると、教職調整額よりも多くの財源が必要となる。その持ち出しを少なくするために、当然、月当たりの残業時間の上限や、時間外勤務手当の支給条件の規定等が考えられるわけであるが、それらに含まれない部分はサービス残業となる。多くの教員がサービス残業を強いられることになるのは必至である。
  •  前述した通り、教員の勤務は時間で区切ることができるものではない。教員が勤務時間外に実施した生徒指導や家庭訪問、地域の行事への参加、持ち帰り業務等についても時間外手当を支給することが可能といえるのか。休日に学校にきて仕事を行った場合について、休日出勤として休日給を支給できるのか。
  •  適切な勤務時間管理が可能なのかどうかも疑問である。教材研究や授業準備と称して、遅くまで学校に残り、組合活動等私的な業務を行う教員を把握できるのか。これらの課題を解決するためには、管理職が一人一人の教員の勤務実態を正確に把握する必要がある。小規模校であれば可能であるかもしれないが、大規模校では不可能と言えよう。校長や教頭等の業務に、時間外勤務の管理を導入することは、管理職のさらなる多忙化を促進するとともに、管理職になろうとする教員の減少という危惧まで出てくる。したがって、時間外勤務手当の導入には強く反対する。

4 仮に、同様に時間外勤務手当を導入する場合、どのような準備が必要であり、また、どれぐらいの準備期間が必要であると考えますか。

  •  我々は、教員は「教育専門職」と考える。教員は労働者ではない。したがって、時間外勤務手当を導入することは、到底受け入れられない。したがって、時間外勤務手当については、「仮に」であろうとも、強く反対する。

5 いわゆる超勤4項目(「公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令」第2号に掲げる業務)があることにより、学校の運営において支障となっている事例がありますか。また、仮に超勤4項目を拡大する場合、どのような項目を追加すべきと考えますか。

  •  いわゆる超勤4項目があることにより、学校運営上において支障になることはない。むしろ、これら4項目があることによって、時間外勤務を全教員が行わなくてはならないわけで、公平性を担保するものと考える。
  •  超勤4項目を拡大する項目としては、臨時的・緊急的に設けられた研修(事件や事故の防止、救命処置等)を行う場合が想定される。

(4)その他

1 仮に、1年単位の変形労働時間制を導入する場合、具体的にどのような課題がありますか。また、その課題の解決のためには、どのような対応が必要であると考えますか。

  •  教員勤務実態調査によると、長期休業中の時間外勤務はほとんどないことから、平日の勤務時間を延長して、その分、長期休業中の勤務時間を短縮する、変形労働時間制が考えられる。
  •  教員の多忙化や、教員免許更新制の導入等により、長期休業中に各種の研修が組まれることが予想される。したがって、変形労働時間制を導入するのであれば、研修内容を検討し、限られた時間の中で充実した研修を行えるようにすることが望ましい。

2 その他、教員給与や勤務条件の見直しに関して、ご意見等がございましたら、お願いいたします。

  •  人材確保法は、教育現場に優秀な人材を確保することを目的に、教員給与を他の公務員より優遇することを規定している。先般、行革推進法において、教員給与が一般行政職を上回る分2.76パーセントの縮減が決定した。これは、人材確保法の趣旨に反している。
  •  この時に比較した一般行政職の給与の算定には、高等学校卒も含んでおり、大部分が大学卒であり、免許を必要として、さらに研修等が義務付けられている教員との比較自体に無理があった。また、俸給法が10級まである一般行政職に対して、教員は4級までしかないため、昇給メリットが少ないという現状もある。教育専門職として、教員がその職責と職務内容から要求されるものに対して、その給与額は決して十分とは言えない。
  •  多くの教員は自らの職務と職責に真摯に取り組んでおり、給与にこだわらない面がある。その教員の人の良さに頼るような施策をとるようであってはならない。人材確保法は教員の誇りであり、多くの教員が勤務時間外であろうとも、子供たちのために懸命に努力していることを重視する必要がある。そこに、インセンティブを持たせることにより、質の向上も図ることができると考える。

終わりに

 教育は人創りである。資源の少ない我が国において、人材こそが国家の基盤を成すものであり、教育への投資は、最も優先されなければならない。そして「日本の伝統と文化」の継承者であり、未来を担う子供たちの、健やかな成長を促すために、教職員が安んじて職務に専念できる環境を整えなければならない。
 学校現場の教員の厳しい勤務状況が伝えられている中で、教育学部に進学する生徒が減少している現状がある。かつて、子供たちのアンケートで「将来なりたい職業」の上位に上がっていた教員は、給与面も縮減されようとして、若者たちには魅力のある職業とは映っていない。このままでは、日本の未来を担っていく子供たちの教育に危機的な状況が訪れることも十分に考えられる。
 公教育の充実は、何よりも教員の双肩にかかっている。少しでも魅力ある職業とするためにも、人材確保法の趣旨を尊重し、「教育専門職」として、その職務と職責にふさわしい給与条件の確立を強く願うものである。