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資料3

学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する意見

全高長 第37号
平成20年6月27日

学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する検討会議 議長 様

全国高等学校長協会長 戸谷 賢司
(公印省略)

 貴会議より依頼のあった、学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する意見を下記のように申し述べる。

(1)学校の組織運営について

1学校が組織として問題解決に当たる体制の構築のために、具体的にどのような条件整備等が必要と考えますか。

  • 校長、副校長、教頭、主幹の系列強化。
  • 主幹を分掌業務に専念させ、準管理職(課長補佐)として位置づける。
  • 教員の増員による個々の生徒への対応強化

2教員の子どもと向き合う時間を確保し、教育に専念できるようにするために、教員が行っている業務のうち、具体的にどのような業務については、外部の専門家や地域のボランティア、他の組織等に委ねることができると考えますか。

  • 教員の業務を完全に外部に委託するには責任問題等支障が多く限定される。また、業務を委託する手続きを考えると学校が行う業務が増加する矛盾が生じる。
  • 完全な業務委託ではなく、教員の補助的役割が望ましい。例えば、授業や補講の支援。

(2)教員の勤務とその処遇について

1労働法制上、公立学校の教員についても他の労働者と同様に勤務時間管理を適正に行うことが求められています。時間外勤務を縮減するため、教員の勤務時間管理を適正に行うことについて、どのようなことが課題であると考えますか。また、その課題の解決のためには、どのような対応が必要であると考えますか。

(課題)

  • 東京都ではタイムカードを設置しているが出勤時のみで、退勤時は使用していない。その理由は、超過勤務が当たり前のようになっているからである。即ち、社会の学校に対する期待や要求が多様化、複雑化し、それに伴い、組織も複雑化し一人で二〜四役を行う現状で勤務時間内に業務を終えることは困難になっている。

(解決策)

  • 学校の行うべき使命と関係諸機関の行うべき役割、渉外業務等を明確に仕分けする。

2教員の処遇について、一人ひとりの能力実績に応じたものとすることや、メリハリある給与体系を実現して頑張る教員の処遇の充実を図ることについて、どう考えますか。

  • 教員が意欲を持ち自らの役割を果たすよう、教員の能力や実績、情意を適正に評価するとともに、適切に人事や能力開発及び処遇に反映させることは大切である。また、優れた実績や高い指導力のある教員の評価も重要である。ただ、教員の能力や実績、情意を測定する基準と評価が公正であるか、また、客観的に実施できるかの課題が残る。より公正な評価システムの開発と導入が望まれる。一方で、幼児の面倒や介護のため学校での時間外勤務ができず、自宅で業務に時間をかけている教員のことも考える必要がある。

3部活動指導について、教員の勤務負担を改善するためには、どのような対応が必要であると考えますか。

  • 社会教育やスポ−ツ振興会への移行も考えられるが、部活動を通して身につく協調性や責任感、指導力等は生徒の実態をいかに把握しているかが大きな要素になり、学校教育の延長線上で行われるのが望ましい。よって、それに見合う教員増、週休日の活動に対しての勤務の振り替え、あるいは手当ての増大以外妙案がない。

4いわゆる持ち帰り業務については、適正な情報管理や教員の勤務負担の軽減という観点から、これを改善するために、どのような対応が必要であると考えますか。

  • 日常の業務の縮減が進まない限り、持ち帰り業務はなくならない。さらに、情報管理が進めばその管理のためのチェック体制の構築その手続きで業務が増える矛盾も生じる。また、閑散期と繁忙期で勤務を振り替えるとの考えもあるようだが現実的ではない。補習授業や部活動指導で長期休業中も閑散期とならない教員も多数いる。

(3)教職調整額の見直し方策について

1教員の時間外勤務については、個々人によりその実態には大きな差があります。一律の処遇を見直し、長時間の時間外勤務には、それにふさわしい手当を支払うべきとの意見がありますが、どのように考えますか。

  • 勤務時間に個人差が生じるのは仕方ないが、手当ての支給が青天井とは行かないだろうし財源的にも無理ではないか。また、仮に財源があるとしても、超過時間で単純に判断はできず、それに応じた実績や貢献度、情意等が勤務した時間との関連において考慮されるべきだが、どのような基準内容で、どのように、誰が判断するか難しい。

2また、逆に、全くあるいは殆ど時間外勤務をしていない人には、4パーセント支払うことは適当ではないという意見もありますが、どのように考えますか。

  • 明らかであれば当然である。ただ、これまで自宅で行っていた教材研究や授業準備あるいは電話による保護者との生徒相談などで無理をして在校し、時間外勤務の形で行うことも予見される。また、現在の学校現場では昼食をとりながら生徒の指導をしているというような場合もかなりあり、休息、休憩時間はほとんど無い現実も考えなければならない。

3仮に、教職調整額を廃止し、時間外勤務手当を導入する場合、具体的にどのような課題がありますか。また、その課題解決のためには、どのような対応が必要であると考えますか。

(課題)

  • 時間外勤務の基準を策定することが難しい。またその承認方法をどのようにするのか。
  • 財源が少なく、時間外勤務において、仮に、その実績や貢献度、情意等を時間外勤務手当の算定資料とした場合、どのように教員の実績等を把握するのか。
  • また、その実績等と勤務時間との関連よる客観的評価基準をどのように定めるのか。

(解決)

  • 財源の確保と時間外勤務の基準の策定
  • 多くの教員は本来、経済的動機で、即ち、多くの報酬をを求めて教職に就いたのではない。子供や教えることが好きだとか、その献身的な態度に憧れ志望した人が多いことは事実であるが、だからといって使用者側が正当な報酬を支払わなくて良いということにはならない。

4仮に、同様に時間外勤務手当を導入する場合、どのような準備が必要であり、またどのくらいの準備期間が必要であると考えますか。

  • 準備は、勤務実態調査及び勤務時間外における実績や貢献度、情意等と時間数との関連調査が必要である。また、その調査により、実績等と勤務時間との関連よる客観的評価基準を作成することが必要である。この調査及び評価基準を作成することを勘案すると、少なくとも3〜4年の期間は必要であると考える。一方で、妥当性、客観性の保障を管理職が行うにはかなりの困難さが予想される。

5いわゆる超勤4項目があることにより、学校の運営に支障となっている事例がありますか。また、仮に超勤4項目を拡大する場合、どのような項目を追加すべきと考えますか。

  • 先にも記したが、学校の役割は複雑化、多様化しておりこの規定は現実にはそぐわない。
  • 進路指導上及び生活指導上における生徒指導、保護者との面談。不登校などの家庭訪問。入試関係等の採点業務。教育委員会より委託された業務。等々

(4)その他

1仮に、1年単位の変形労働時間体制を導入する場合、具体的にどのような課題がありますか。また、その課題の解決のためには、どのような対応が必要であると考えますか。

(課題)

学校単位での導入は難しいと考えると個人の導入となる。その場合、

  • 勤務時間の把握を誰がどのように行うのか。
  • 大災害等が起こった時など、全教員が一斉に緊急事態等に対応することができない。

2教員給与や勤務条件の見直し

  • わが国は「教育立国」である。それは、優秀で熱意のある教員が不可欠であることを意味する。そのためにも、多様な教師の存在、多様な働き方を許容し、安心して暮らせ、かつ業務量に応じた満足感を充たす給与を保障すべきである。