(1)学校の組織運営について
指示系統を明確にする上で、主幹教諭や指導教諭を置くことは組織図を見る限りは有効に思えるであろう。しかし、現場から見れば、主幹教諭は定数外配置でなければ、実質的な主幹教諭としての職務は滞る。主幹教諭が担任も兼務していれば勤務時間外に仕事をしなければその職務はこなせない。
学校現場でもっとも負担感を感じているのが、「保護者対応」「生徒指導」である。また、都道府県、区市町村からの調査も大きな負担となっている。中学校においては部活動の指導も負担感を増す要因になっている。
(全国公立学校教頭会調査より)
委託できる主な業務は以下のものが考えられる。
- 部活動における対外試合などの引率ボランティア
- 学校弁護士やカウンセラー等の配置による保護者対応や教育相談
- 人材バンクによる学習ボランティア
- 会計事務
- 図書館業務
教育は様々な場での子どもと教師のふれあいによって行われている。清掃活動も教育の一環であり、業者にまかせるようなことはできない。
(2)教員の職務とその処遇について
勤務時間の管理
事務方と違って、教員は授業に関する業務を次の日に持ち越せない事が多い。しかし、長時間学校にいる教員のみが多くの仕事を行っているのではなく、家庭の都合により自宅に仕事を持ち帰っている教員も多い。
教育現場が多くの女性教員によって支えているという現実を忘れてはならない。ノート処理や教材研究等を、家事を行った後に取り組んでいる実態がある。家庭を持つ女性の働きを評価するならば学校においての残業だけを評価し、家庭での取り組みを評価しないシステムはそぐわない。勤務時間のみによって仕事の成果を図ることはできない。
教員の処遇について
頑張る教員の処遇充実を図ることは大いに結構なことです。「努力や実績に応じた処遇」は一見もっともだが、能力や実績の評価基準が曖昧な状態では、現場に不信感を増長させ、教員のモチベーションを下げかねない。
部活動について
指導だけでなく、引率・生徒管理等のボランティアが必要。
勤務時間外の報酬を本俸並みに近づけ、サービス残業を極力少なくする。
持ち帰り業務
理想は勤務時間内に終わるように、仕事をする時間を保証すること。情報の流出を防ぐ観点からも持ち帰りは禁止が望ましい。しかし、現状では持ち帰り業務は絶対に減らない。(女性教員の例からも)
一例として大まかな学校例を示す
8時15分〜17時まで勤務での例
8時15分〜15時55分 |
児童生徒指導(授業等) |
16時〜16時45分 |
休憩時間 ←実質は会議や事務処理 |
16時45分〜17時 |
教材研究等 |
- 勤務時間内で実質的に仕事ができる時間は16時45分〜の15分間
教員数を増やし、空き時間を増加させる以外には不可能である。
どうしても持ち帰らないようにするには、残って仕事をしていく以外にない。
(4)その他
年俸制や長期休業中の俸給なし等、現在の日本と異なるシステムを行っている国もあるが、教育の質の高さ、教員の質の高さを維持してきた日本の給与システムはすばらしいものである。その点を充分に理解して新しいシステムを考えていただきたい。日本の未来に向けての先行投資であることを。