これまでの主な意見と論点

 <1.人事権について>

【総論】

  ○ 都道府県教育委員会は、教職員の人事権の行使に当たっては、都道府県内における教育の機会均等及び教育水準の維持向上のために相当な措置を講じている。

  ○ 離島への異動の問題などは人事権の所在を変更することに伴って新たに生じる問題ではなく現在でもあり、都道府県教育委員会が必要な対応を行っている問題である。ここで議論すべきことは、仮に中核市等に人事権を移譲したとして、教育の機会均等、教育水準の維持向上のために現在都道府県教育委員会が講じている措置と同様のことが、制度上担保できるような仕組ができるかどうかを検討することではないか。

 

(1)広域人事異動の仕組みについて

【主な意見】

  ○ 人事権を移譲したとしても、独立独歩ではだめで、都道府県、指定都市、中核市の三者が集まって、広域調整を確立していけば支障はないのではないか。

  ○ 中核市の中でも、広域調整の仕組みは必要であるという意見で一致している。ただ、その中身については県によってだいぶ違う。制度上、何らかの協議会を設置するということを規定すればよいと思う。

  ○ 当県では、人事を行う会議にはすべて中核市が出席し、中核市の人事は中核市がやっている。ただし、広域で動かなければならない場合には、県が調整している。各県によって事情が異なると思うが、当県では中核市が人事権を持っているのに近い形になっており、うまく機能していると考える。

  ○ 市町村に移譲するとした場合に、広域調整を行う組織をつくるという意見があったが、同様の権限をもつ広域組織間で調整するのは難しい。よほど強力な調整権者がいないと機能しない。

  ○ 県が人事を行うことで、公平性や客観性における責任を担っている。人事については、いろいろな利害がからむものであり、市町村の力関係が出てくるものでもある。今でも、県と市は、人事異動について綿密な事前協議を行っている。いずれにせよ、どこかが調整権限を持つというのであれば、県がいいのではないか。

  ○ もし、人事権移譲がなされたとしても、県が積極的に広域調整に関わるのであれば、責任だけが市町村にくるだけであって、何も変わらない。基本的には、自分の自治体の先生は、自分たちで責任をもって育てるべきであり、その能力を各自治体がきちんと持つことが必要。それが難しい場合に、どのブロックがいいのかとか、自治体間で人事交流制度をつくるなど、そこに県がどのような関与をしていくかということをきちんと法律事項にしていく必要がある。

  ○ 都道府県教育委員会としては、市町村への配慮から設けているルールであるが、市町村教育委員会からすると、100%納得できておらず、自分の責任で人事を行った方が望ましいのではないかと考えているということ。

 

 【論点(案)】

● 都道府県と中核市等の具体的な調整方法について、制度上、どこまで担保することが必要か。(例えば、広域人事交流協議会を設置した上で、「広域人事交流方針(又は計画)」を策定することについて制度上義務付けることとし、具体的な部分は実際の協議に委ねる)

● 人事権移譲を都道府県と中核市等が同意する場合に限る選択的なものとする場合、都道府県が同意するにあたって、「広域人事交流方針(又は計画)」を中核市等と策定することを要件とすることが考えられるかどうか。

● 現在、各都道府県で定めている人事異動方針等の内容を、新たに都道府県と中核市等との「広域人事交流方針(又は計画)」に盛り込めば、現在と同様の人事異動が担保でき、支障は生じないのではないか。(一方で、その場合の中核市等への人事権移譲のメリットは何か。中核市等においてどのような取組が可能になるのか。)

● 個々の教職員の実際の異動を担保するため、都道府県に人事に関する何らかの調整権を設けることが考えられるか。

● 指定都市を含めた広域調整についてどのように考えるか。

 

 

(2)採用のあり方について

【主な意見】

  ○ 人事権が移譲されることによって、自らが求める人材を示せるかどうかが問題である。技術的な課題は一方であるが、それは根本的な問題ではない。独自で採用する意味を忘れてしまうと意味がない。そうしないと結局県で一括してやったほうが早いということになる。

  ○ 共同採用は能率的にはよいと思うが、移譲されたときの「効果」を考えると、それ相応のところまで移譲していったほうがいいのではないか。

  ○ 指定都市を抱えるある県の人に、なぜ指定都市を除いても県の採用に人が集まるのかと聞いたことがあるが、答えはよくわからない。ただ、やはり自分のところを考えれば、全県か中核市かで言えば、中核市を希望する方が多くなるのではないか。

  ○ 「共同」でといっても、試験問題作成などの作業を一緒にやるというのもあれば、採用まで一緒というのもあり、幅が広いのではないか。

  ○ 特別枠採用について、へき地で教育をしたい、という人はやはりいるとよいと思う。地域の学校を出て免許を取った人が優先的に採用されるような、各教育委員会や大学でそういう仕組みをつくれないものか。

  ○ 現実問題として共同で採用した教員をどう分けるのか。

  

【論点(案)】

 ● 都道府県と中核市等が共同で採用を行わなければならないこととするか。(制度上義務づけるのか、運用に委ねるのか)

 ● 共同採用を行う場合、どのように都道府県と中核市等が調整し、配置するか。(本人の希望に反して都道府県(又は中核市等)に採用された者についてどう考えるか。)

 

 

(3)人事権を移譲する場合の範囲  

  ○ 採用からキャリアアップまでをトータルで考えないといけない。育てた教員が出て行くのが、一番残念なことである。人事権があれば、自分たちの責任において、「まずは大規模校に」とか「その次は生徒指導困難校に」など育て上げようという気にもなる。

  ○ すでに政令市には人事権が付与されているので、次の段階として中核市にも人事権は付与できるのか否かということを議論すべきだと思う。

  ○ 仮に、中核市には人事権を移譲するということになったときに、各県には移譲するか否かの選択の自由はあるのか。県によって事情も違うので、全国一律にやっていくことになるのかについて心配している。

  ○ 人事業務といっても異動だけでなく、新規採用、管理職登用などもあり、どこまで市町村に任せるのか、それとも県が全部掌握して市町村に処理だけをさせるのか、ずいぶん違いがあると思う。事情は各都道府県によって様々であるので、弾力的且つ柔軟な対応ができる仕組みを作ればよいのではないか。

  ○ 中核市は人事権を移譲されても心配はないが、指定都市や中核市とその他の市町村の間で広域の人事異動を行う協議会をどのようにつくっていくのか。小さい市町村で、人事権を移譲して欲しいという希望は今のところない。

  ○ 中核市に人事権を移譲するかどうかの議論と学校が一つしかないような小さな市町村に人事権を下ろすかどうかの議論を一緒にするのは無理がある。

 

【論点(案)】

 ● 中核市等に対して一律に人事権を移譲することとするか。

 ● 中核市等のうち、都道府県と協議し、同意を得た場合等について、当該中核市等に人事権を移譲することとするか。

 ● 特別区について、中核市と同様に人事権を移譲することとするか。

 

 

(4)管理職、事務職員等の異動について

【主な意見】

  (管理職について)

  ○ 人事権の移譲は一括して行うべきで、管理職も含めてやるべきと思う。人事権をおろすというのはそういうことだと思う。管理職は学校の経営、運営の全てを行うが、それを県が持っていては基礎自治体への権限移譲にならない。

  ○ 管理職の人事権だけ県に残すのは現実的ではない。地域のことをよく知っているのは管理職であるべきだし、一緒に移譲すべき。

  (事務職員について)

  ○ 教員と学校事務職員というのを分けて人事権の移譲を考えるということはできないか。市町村の学校の現実を見ると、市町村で採用した事務職員と県で採用した事務職員で二層構造になっており、連携がとれておらず非常に非効率的である。学校事務職については市町村の職員として任命し、給与をおろすのは難しいと思うが、採用などは市町村におろすという発想は考えられないだろうか。

  ○ 学校事務をどうするかというのは、教育活動を支えていく仕組みとして、重要である。事務職員の人事権移譲については、教員より議論しやすいと思う。

 

【論点(案)】

● 仮に人事権を移譲するならば、管理職と一般の教員を分けず、一体として移譲すべきではないか。

●  教員と学校事務職員は分けて移譲することは可能か。

 

 

(5)移譲の対象とする事務の範囲について(懲戒等の扱い)

【主な意見】

  ○ 懲戒については、県内でもバラバラである。例えば、飲酒運転は一発免職であるがこれは県より厳しい。でも指定都市に入って損をしたなと思う職員はいないのではないか。

  ○ 服務規程などは県と協議しながらやっている。懲戒については将来的には県の助言があれば、市町村がやってもできると思う。

【論点(案)】

● 仮に人事権を移譲するならば、懲戒等を含め、人事に関する事務は一体として移譲すべきではないか。

 

 

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