県費負担教職員の人事権等の在り方に関する協議会(第2回) 議事要旨

1.日時

平成20年6月26日(木曜日) 15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省5階 4会議室

3.議題

  1. 広域人事の現状等についてのヒアリング
  2. その他

4.議事要旨

 議事に先立ち、本日の会議は、各県の人事に関する事柄についてヒアリングが行われることから、非公開とされた。
 その後、事務局より、資料1、2に基づき地方分権改革推進委員会「第1次勧告」等に関する情報提供があり、質疑応答が行われた。

[質疑応答]
【委員】
 以前は「中核市等」と書かれていたが、第1次勧告や要綱には「中核市」と書かれている。「等」がなくなったのは、特別区を意識していないからか。

【文部科学省】
 第1次勧告や要綱には「中核市」と書かれているが、この協議会においては「中核市等」というとこまで含めて検討していく。

【委員】
 特別区を抜く趣旨で、意図的に「等」を抜いたわけではないという理解でよいか。

【文部科学省】
 地方分権推進委員会との協議の際に、意図的に「等」を抜いたということはない。

(1)広域人事の現状等についてのヒアリング

 5名の協力者から、各県市の事情に即して、広域人事の現状等について発表していただいた。

1.太宰委員(宮城県教育委員会)よりヒアリング

 本県の人事異動方針は、「長期的展望及び全県的視野に立って適材を適所に配置するよう学校教職員の異動を行う」こととしている。本県の広域の人事異動の現状としては、各教育事務所及び指定都市の教育委員会で人事担当者会議を開催し、広域及び交流人事を行っている。平成17年度(市町村合併以前)までは、他市町村及び他管区への広域異動者数が全体の4分の3程度となっていたが、市町村合併以降は、市町の規模が大きくなり同一市町内での異動が多くなっている。また、新任教員は、原則として出身の教育事務所管外に配置している。採用後3年を経過した者は、原則として異動対象者としているが、都市部への異動を希望する者が非常に多い。
 少子化による学級減や学校統廃合によって定数減となる教育事務所では、定数を超える教員を他管区へ異動させざるを得ない状況である。逆に、管内出身の教員が少なく当該管内への異動希望者が少ない教育事務所では、他管区からの転入者より転出者が多い出入り差を生じている。また、広域の教育事務所間異動に加え、居住地を移さずに通勤可能な範囲で異動する隣接教育事務所間の「近隣市町村異動」を行っている。
 次に、広域の人事異動の課題について説明する。まず、管内出身の教員が少ない教育事務所では、異動の欠員を新任教員で補充せざるを得ないのが現状であり、その新任教員が異動すると、後任にも新任教員を配置するという状況である。また、逆に学級減等による定数減で他管区へ教員を異動せざるを得ない教育事務所では、新任教員を配置する余地が無く、教員の高齢化が起きている地域もある。指定都市及び指定都市周辺市町出身の新任教員が多く、採用3年経過後に出身地への異動を希望する者が多い。ところが、指定都市及び指定都市をもつ教育事務所はその数を全て受け入れることができない状況である。管内出身の教員が少ない地域には、管内出身の教員を増やす方策が必要である。加えて、優れた教員を確保する上で「教員養成と教員採用の制度」をどのようにするかという政策を改めて考える必要がある。例えば、教員養成について考えた場合に、それぞれ教育大学に地域枠を設け、地元出身の教員を視野に入れて採用を進めることができないかと考えている。
 また、仮に一部の市町村に人事権を移譲した場合、広域調整の仕組みを構築するにあたって考慮すべき事項についてご説明する。現在、長期的・全県的な視野に立って人事異動を行っているが、市町村に人事権を移譲した場合、優秀な教員の囲い込みや都市部や財政力のある市に希望が集中し、人材の地域偏在が懸念される。指定都市への人事権移譲後の経過を見ると、県との交流は停滞・硬直化してきており、従って市町村に人事権を移譲した場合も長期的に見ると同様の傾向になるおそれがある。広域人事を行うためには、人事権を移譲した市町村内で長期間勤務をさせるのではなく、他市町村への異動を義務づけるなどのルールを定める必要がある。
 また、広域調整が合意に至らない場合を想定すると、広域調整を行う権限が市町村の人事権を超えるものである必要である。それが担保できないのであれば、現行の県費負担教職員制度を維持する必要があると考える。任命権者の異なる市町村へ異動する場合、事務手続き上本人の退職願が必要であり、本人の承諾が必要となることから、特に都市部から外に出るときには課題となる。本県においては、昨年10月に市町村教育委員会協議会教育長部会から、現行の県費負担教職員の任用制度の継続を要望されたところである。
 次に、指定都市との人事異動の現状と課題についてご説明する。採用については、管理職も含めて共同で実施している。ただし、管理職選考については選考基準を作成し、記述問題は共通であるが、選考は両教育委員会それぞれで行っている。指定都市との交流状況が硬直している例として、指定都市になる以前は、市への異動が100名を超えていたが、段々と減少している。一方で、県への異動はここ10年間は3~10名で、出入り差が大きい。そのことから、平成18年度からは、相互に同数で交流する人事交流を実施している。
 最後に、指定都市との人事異動の課題については、指定都市になって以降、県との異動規模が縮小しており、人事の停滞・硬直化が進むことを懸念している。指定都市への異動では、元に戻らないのが実状であり、相互に交流している異動は、非常に少ない。指定都市を生活本拠地とする者が多いことから、指定都市への異動希望者は実異動者の2倍程度になっている。さらに、指定都市の受け入れ数が減少していることも影響して、指定都市を希望せずに指定都市をもつ教育事務所管内(指定都市周辺市町)への希望者が増加しており、指定都市をもつ教育事務所管内への異動が指定都市への異動より多くなっている。しかし、実状は希望者の半分程度しか受け入れられない状況である。

2.新井委員(東京都教育庁)よりヒアリング

 都の異動の方針について、区市町村との関係性という観点から説明する。まず、区部と市部との人事交流を一層、促進するとともに、新規採用教員の配置割合の偏りを考慮した異動に努めることで、地区の課題に対応し、教員構成の均衡のとれた人事異動を行うこととしている。次に、都では平成15年度から独自の主幹制度をとっているが、その異動方針としては、1主幹昇任者は原則異動であるが、一部自校昇任を認めている、2主幹の未配置校の解消に努める、3各地区の状況に応じた主幹と学校基幹要員の配置を行い、学校の活性化を図る、としている。また、島しょ・へき地への異動については、島しょ・へき地等における教員組織の充実を図ることとしている。
 次に、資料4‐2の定期異動の実施要綱について説明する。まず、「第2 異動の方針」については、「1 教員の人材育成と能力開発の視点に立ち、学校経営方針を踏まえた校長の人事構想に基づくきめ細かな異動を行う、2 教員に多様な経験を積ませるため、区部と市部・町村部の地域間の異動など全都的な視野に立った人事交流を促進する、3 島しょ・へき地等における教員組織の充実を図る」こととしている。
 次に、「第3 異動の基準」であるが、原則は「(1)現任校において引き続き3年以上勤務する者を異動の対象とする、(2)現任校において引き続き勤務する年数が6年に達した者は、異動するものとする、(3)過員解消のため異動を必要とする者は、異動の対象とする、(4)現任校における勤務年数が3年未満の者であっても、校長の具申及び区市町村教育委員会の内申に基づき、異動することが適当であると都教育委員会が認めた者は、異動の対象とする」。反対に、「現任校において引き続き勤務する年数が6年に達した者のうち、校長の具申及び各教育委員会の内申に基づき、学校経営上引き続き勤務させることが必要であると都教育委員会が認めた者については、異動の対象としない」としている。
 次に、「第4 異動の手続及び決定」であるが、「1 「第3 異動の基準」により異動の対象となる者は、教育職員自己申告書裏面に必要事項を記入し、校長に提出するものとする、2 都教育委員会は、校長が作成し各教育委員会に提出した異動申告書及び各教育委員会が作成した異動計画案に基づいて、各教育委員会と協議・調整を行い、各教育委員会に異動予定者を通知する、3 都教育委員会は、各教育委員会が作成する異動予定者の異動配置案に係る内申に基づいて異動を決定する、4 教員は、校長の具申及び各教育委員会の内申に基づいて、都教育委員会が決定した学校に異動するものとする」としている。
 次に、「第5 異動の方法」については、「1 地域・地区の指定」について、「(1)区市町村間の人事の交流を促進するとともに、教員の経験を豊かにするため、教員の通勤圏等を考慮して、全都を12地域に分ける、(2)各区市、多摩教育事務所西多摩支所管内の町村、教育庁各出張所管内の町村及び小笠原村は、それぞれ一つの地区とする」としている。また、「2 各地域と異動との関係」については、「(1)教員は、5校を経験するまでに、異なる三つの地域を経験するものとする、(2)異なる三つ以上の地域での経験のない者は、同一地区内での異動を認めない。ただし、校長の具申及び各教育委員会の内申に基づき、都教育委員会が認めた者については、この限りでない。(3)新規採用以来最初に異動する者は、島しょ地域等への異動の対象とする」としている。
 また、資料4‐3の主幹級教職員の定期異動実施要綱については、異動の基準に多少の異なる点があるが、基本的には資料4‐2と同じ内容である。
 最後に、課題等について、説明する。特別区を含めた中核市に人事権が移譲された場合に必要となる事務については、人事権についてどの段階まで権限を移譲するかによって異なるが、すべての権限を移譲する場合であっても、教職員の身分が切り替わるまでの移行期間というのは現在と同様の事務をする必要があるのではないかと考えている。例えば、服務監督権はすでに区市町村にあるが、服務事故等が起こった場合に、都教委としても関わる必要があると考えている。調整機能の一部を都教委に残した場合には、調整を行う組織及び人員がそのまま都に残ると考える。
 また、一部の区市町村に人事権を移譲した場合、都教委の考え方としては、人事異動による環境の変化は教職員の人材育成につながると考えているため、積極的に人事異動を実施するのがのぞましいと思われるが、それぞれの地区で調整に望んだ場合、お互いに優秀な人材を囲い込んでしまうことも考えられるため、例えば調整団体を設置して、お互いどうやって融通していくのかについて調整する必要がある。
 一部の区市町村に人事権を移譲した場合と特別区まで移譲した場合については、区部に人材が偏らないように人材確保を担保していくという課題がある。教育活動の活性化のためにも、区部と市町村部の人事交流は必ず行う必要がある。教職員の採用については、例えば、財政的に不安であったり交通が不便であったりする市町村には、希望者が出ないことも考えられるので、区市町村間で差が出ないようにする調整が必要である。また、教職員の能力の育成については、区部の授業力向上の研究が比較的充実しているので、他の市町村にも発信していくことが大切である。特に多摩地区については、初任者研修をいくつかの市で合同で実施しているところがある。これらについては、調整団体による広域調整を行う必要がある。
 特に、異動希望は、小学校では約5千人、中学校でも約3.5千人ある。中学校になると教科や部活動指導について、こういった先生を必要としているといった要望がある。主幹教諭は教務主任や生活指導主任、進路指導主任といった主任の職務を担い、それぞれ適性をみながら各校に配置している。地区によって、それぞれ必要な人材が異なるが、大量退職・大量採用の時期を迎えているため、各要望に答えるような人材を配置するのが難しいところ。逆に、いわゆる課題のある教員への対応は地区によって異なり、自分のところで育成しようというところもあれば、そうではないところもある。
 最後に、島しょへの異動の現状であるが、定期異動方針や要綱にもあるように、欠員を生じさせないための優先的、計画的配置を行ったり、新規採用以来最初に異動する者は、島しょ地域への移動の対象としている。島しょへの異動の規模としては、小学校・中学校でそれぞれ約40人くらいの異動がある。島しょへの異動希望は多くないので調整は3月末くらいまで必要である。

3.大久保委員(鹿児島県教育委員会)よりヒアリング

 本県は、離島も含めて南北に約600キロメートルあり、県庁所在地を中心に円を描くと、大阪府周辺まで入ってくる。そのくらいの距離の広域異動があるということを頭に入れて,本県の人事異動の現状について聞いていただきたい。
 本県では,資料5の4ページにある「鹿児島県公立小・中学校教職員長期人事異動の標準」に従って、人事異動を行っている。どこの都道府県においても、趣旨に,教職員の人事異動は、「学校教育の充実振興を図るために行う」と掲げている点は同じかと思うが、本県では、「職員構成の適正化」と「気風の刷新」、さらには,「すべての教職員が本県の教育を公平に分担し、全県的な人事交流が公正かつ円滑に行われる」というところを強調している点が特色としてある。
 異動の原則としては、在任期間中に、本県を13地区に分ける勤務地区のうち3以上の地区を経験することとし、その間に2回以上のへき地等を経験しなければならないこととし,その間に必ず一度は離島に行かなければならないとしている。これは,離島を含むへき地等に,小学校が275校、中学校が120校あり、本県の学校の相当数が離島やへき地等にあるからである。同一校の標準勤務年数は6年であるが、離島やへき地等においては、級地の高いところは3年以上、級地の低いところは5年以上というように特例を設けている。学校運営上の特別の必要から6年を超える場合にも、基本的に同一校10年を超えることはない。また、同一市町村における継続した勤務年数は、最高14年までとしている。かつては、中核市内に勤務している人は,ずっと中核市内、中核市外に勤務している人はずっと中核市以外を異動しているという状況もあったが、現在は,この標準により,すべての教職員が本県の教育を公平に分担し,全県的な人事異動が公平かつ円滑に行われるようになっている。
 次に,へき地等への異動の現状であるが,7ページの本県の小中学校数などを表した表を見ていただきたい。本県においては,小学校584校中275校、中学校262校中120校がへき地にある。つまり、本県においては、50パーセント近くが離島を含むへき地にあるということである。そのような中では、在任期間中に2回以上のへき地、1回以上離島を経験するといった全県的な広域交流のしくみが不可欠なのである。実際,このようなルールがあっても離島に配置する職員を確保するのは非常に難しいのが,現状である。今年度,へき地等へ赴任した教諭数は,小学校208件、中学校147件、へき地等から引揚げた数は小学校208件、中学校145件であり、全部で700件を超える数がへき地等との交流を行ったことになる。さらに、教育事務所管外への異動が362件あった。本県の場合、同じ教育事務所管内で異動するのは10~15パーセント程度で、かなりの割合が教育事務所管外へ異動することになっている。
 このようなことから,中核市への人事権の移譲が行われた場合の課題としては、離島をはじめとするへき地等において教職員の確保が極めて難しくなり,学校教育が成立しがたい状況になる。また,県全体としては,年齢構成及び教科構成等の不均衡を招き,地域間の教育力の格差が大きくなり,ほぼすべての市町村において教職員の確保や配置及びそれを基盤とした一定の教育水準の維持・向上が難しくなることが予想される。さらに,中核市を生活本拠地とする教職員が,推定で全体の50パーセント近くに上ることから、人事権を移譲した後は、残りの教職員数で他の市町村をカバーすることになり、多くの市町村で教職員の確保が困難になることが考えられる。逆に、県内の多くの県費負担教職員が中核市での勤務を希望した場合、中核市には過員が生じることとなる。
 広域調整の仕組みを構築するにあたって必ず考慮すべき事項としては、離島や山間のへき地を多く抱える本県のような県においては、これまで実施してきた中核市を含めた一括採用や全県的な人事交流の仕組みを維持することが不可欠だということである。広域調整の仕組みが担保されないままに移譲されると、離島や山間のへき地等を多く抱える都道府県においては,適正な教職員配置等を進め,教育水準の維持・向上を図ることが困難になり,教育の機会均等などが根底から崩れることになると考える。

[意見交換]
【委員】
 資料3の4(1)に、政令市になる以前は、市への異動が100名を超えていたと書かれているが、10年前には60名、2年前からは20名台と減少している要因はどこにあるのか。

【委員】
 今年の傾向を見てみると、新任教員を県よりも市の方が多く採用しており、県から異動させる必要性が低くなっているのではないか。

【委員】
 指定都市が新規採用教員を順次増やしてきたので、県から市への異動が減ってきたという理解でよろしいか。

【委員】
 確かにここ2~3年はそのような傾向にあるが、指定都市において退職者が少なくなっているという現状もあり、結果的に異動が少なくなってきている。

【委員】
 指定都市が新規採用教員を必要なだけ採用していくということになれば、当然指定都市の枠内での異動しかできないため、県からの受入がなくなり、完結型になると思う。

【委員】
 県によっては、離島枠ということで限定新規採用をはじめたところもあるが、検討したことはあるか。

【委員】
 都においては、昨年度は島しょに欠員を生じたが、今年度は欠員ゼロをキープできたところ。現在、公募制をとることについて、町村教育委員会へ照会をかけている。コミュニティスクール、中高一貫校とともに、島しょ配置について、公募制を行う方向で検討している。

【委員】
 離島枠ということで限定新規採用は考えていないのか。

【委員】
 考えていない。「島しょへ行っても良い」というアンケートのチェック項目はあるが、独自では採用はしていない。

【委員】
 本県において、離島枠について検討した経緯があるかどうかについては把握していないが、現在は行っていない。そのかわり、本県では、人事異動の標準に「大島地区に勤務する者の特例は別に定める」として、本地区については、自ら立候補して地区内を異動することは可能である。

【委員】
 離島の勤務を希望する者が少ないというが、基本的には希望制なのか。

【委員】
 都の場合、人事異動は「配置」ということでやっているが、実際、島しょの小学校40人、中学校40人くらいの1/6は希望者であるが、それ以外は「配置」となっている。

【委員】
 本県では、基本的に希望者を離島に異動させるのが原則である。若い先生に対して、校長先生を中心に「離島での経験は原点であるから経験すべき」などと語りこみをしながら、本人の希望によって異動してもらう。一方で、ある程度のベテランになっても離島を経験したことがないという場合には、本人の希望とは別に異動してもらうこともある。

【委員】
 県で採用された教員が指定都市の採用試験を受け直すケースなどは出てきているか。

【委員】
 本県においては、そもそも県と指定都市の採用は共同で行っており、受験者は県か指定都市かを選んで受験するわけではない。採用後、県と指定都市のどちらに配置するかは人事権者側の意志で決めている。

【委員】
 本県においては、採用試験自体は共通であるが、そもそもの受付が県と指定都市で別である。県採用の教員が指定都市を受け直すケースがあるのかどうかは把握していないが、県内交流という制度があるのでそれを活用して指定都市に異動する人はいる。

【委員】
 本県は、地教行法40条規定による。

【文部科学省】
 宮城県では、へき地は若い教員ばかりであり、指定都市は年齢層が高めである。年齢だけで見ると構成がアンバランスな状況である。指定都市が新規採用を増やして年齢構成を是正すれば、他市町村においてもバランスがとれてくるのではないか。

【委員】
 県から指定都市に異動する人は、すでに3回程度異動した人である。指定都市も受け入れるにあたっては面接をして、必要な人材を確保するので、多少年齢は高めになっている。また、へき地については、そもそも地元出身者がいないということが大きい。

4.有路委員(横浜市教育委員会)よりヒアリング

 本市には、503校(小学校346校、中学校145校、特別支援学校12校)の市立学校があり、県費の本務教職員は、5月現在、14,921名(小学校9,522名、中学校4,545名、特別支援学校854名)いる。本市における人事異動については、「全市的観点に立った適材適所の人事を徹底する」、「校長を中心とする組織体制構築を図るため、校長の意見具申権の拡充を図る」、「多様な経験を積むことによる資質向上を図るため、異校種間の人事交流を一層促進する」、「特色有る学校づくりの推進や、教職員の意欲を一層引き出す人事異動制度の制度化を図る」ことなどを基本原則としている。多様な経験を積んでもらうために、積極的な異動をさせている。
 管理職人事については、経験・年齢にとらわれず、管理職としてふさわしい人をあてている。また、自ら教育理念に基づいた学校運営を展開するために、校長先生の同一校の在任期間を工夫ている。他にも、校長が校内の職員のキャリアステージを考えて、人事計画を策定し、校長判断による異動対象者の決定が行われる。また、特色のある学校づくりのために、FA制度をとっている。教員が「私はこれができる」と自らキャリアやスキルを売り込み、経験を生かせる学校に異動できるようにするとともに、校長先生の方から「うちはこんな学校をめざしている」といった学校の運営方針を示す教員公募制度も取り入れている。FA制度は90件くらい宣言され、85件が成立、教員公募制度は291校中半分弱くらいが成立している。
 教員の異動については、同一校に6年以上勤務する者、新採用で同一校に4年以上勤務する者が異動対象となる。また、同一校に3年以上6年未満勤務する者で、本人が希望する場合を含め、校長が異動の必要があると判断した場合には異動対象となる。
 平成20年4月1日の人事異動については、管理職では、校長の異動が52人、昇任が118人、副校長の異動が124人、昇任が141人である。教員については、小学校929人、中学校516人、特別支援学校97人、高等学校75人、合計で1,617人が異動している。これは全教員の12パーセントである。新採用教員は、小学校700人、中学校325人、特別支援学校49人、高等学校11人で、合計1,085人を配置した。
 次に、中核市に人事権が移譲された場合に発生する組織、事務及び仮に一部の市町村に人事権を移譲した場合の広域調整の仕組みを構成するにあたって考慮すべき事項については、指定都市である本市がどのような事務分掌となっているかを紹介することで説明する。本市の教育委員会では、教職員人事・企画部の教職員人事課人事係、任用係、教職員労務課労務係、厚生係が人事を担当している。事務分掌としては、資料6の4ページに書かれているが、教職員人事課人事係が任免、懲戒、服務、任用係が採用試験、教職員労務課労務係が給与、職員団体、厚生係が福利厚生となっている。本市としてはこのような体制で、教職員の人事事務を分掌している。
 採用については、県や他の指定都市と会議を開き、改善点や検討事項などの情報交換を行っている。一般選考の一般教養や専門教科の問題については、県や他の指定都市と共同で行われる。採用試験の課題については、大量退職の時代でもあるので、北海道から九州まで全国で採用活動を行いたいところであるが、説明会を開いてPRするものの、試験は一緒につくっていることもあって現地試験を実施できないという制約がある。
 県との人事交流については、本市・他の指定都市・横須賀市の人事担当主管課長、県の教育事務所長、教職員課の人事担当者などで構成する人事調整会議を開き、人事交流の調整を行っている。県との人事交流の中で、自分の居住地に近い本市の近郊の教育事務所に行きたいという希望が多い。
 また、採用にあたって、本市への希望が集中しているかについては、昨年度の採用試験の実施状況を見ていただくとわかるが、小学校については最終倍率2.4倍であり、中学校についても各教科によってバラつきはあるものの倍率自体は高くはないのが現状である。県には山間部や川があり、都会よりもそのようなところで教員をやりたいという受験者も少なくない。県と横浜市ではセールスポイントも異なっている。最終合格者の住所地の内訳を見ると、神奈川県49パーセント、北海道10パーセント、関東(神奈川県以外)9パーセント、中部8パーセント、近畿14パーセント、中国2パーセント、四国1パーセント、九州7パーセントとなっており、半分は県内、半分は県外からの受験者である。本市ばかりに受験者が集中しているということはないと考える。今後10年間における優秀な教員の確保が課題である。

5.土屋委員(新潟市教育委員会)よりヒアリング

 本市においては、広域人事にかかわり、「多様な地域における勤務を通して経験を豊かに」するという異動方針を示している。この方針を達成する方法については、資料7‐2の2の2段落目に、県の現状をとらえた上で、市の方針として県と連携していく旨を明記している。
 次に、県との人事交流についてであるが、県との協議の中で、指定都市になる前に採用された人については「異動」、指定都市になった後に採用された人については「交流」といったように使い分けることとしている。留意事項として、「自宅を考慮する」とあるが、現在市内に住所を有している教員は、前回約600人いると申し上げたが、この数は、市外に自宅をもち市内に勤務している教員と市内に自宅をもち市外に勤務している教員がすべて入れ替わったときの数であり、現在、市内に自宅をもち市外に勤務している教員は、実際には1,200人である。また、「自宅を考慮する」ことについては、管理職についても同様である。
 次に、「念書及び(中)登録の教員の異動は県の方針により行う」についてであるが、念書とは、指定都市になったため今はないが、採用後6年間の異動にかかわる県の制度であり、教員の資質向上と教員確保困難地域での教員確保を考慮したものである。なお、この制度は今年度からなくなった。(中)登録教員の異動とは、40歳前後の経験豊かな教員を教員確保困難地域に配置するために行うものである。この制度で異動すれば、広域人事にかかわる異動基準としての「念書期間後から49歳までに、勤務地区分Bの学校に1回及び勤務地区分Cの学校に1回勤務」をクリアしたことになる。
 一般的には、広域人事にかかわる異動基準「念書期間後から49歳までに、勤務地区分Bの学校に1回及び勤務地区分Cの学校に1回勤務」に沿い、採用から6年間が念書期間、その後49歳までの約20年間に、自宅から約20~35キロメートルの勤務地区分Bの学校に1回、35キロメートル以上の勤務地区分Cの学校に1回、残りの14年間は通勤に容易な学校に勤務するということにある。これにより県は広域人事を行ってきたわけであり、本市が指定都市になった現在も県の基準に準じている。なお、「勤務地区分Cには、勤務地区分Dを含む」の勤務地区分Dとはへき地のことであり、本市にはない。
 また、勤務地区分Cにあたる勤務先は市内にほとんどなく、Cに勤務しなければならない際には、多くが市外に出ることになる。
 また、現在はないが、「勤務地区分特C・特D」という基準があった。特Cは50キロメートル以上または公共交通機関で90分以上の異動であった。この特C・特D勤務も(中)と同様に、1回でB・Cを勤務したことになるという制度である。県はこれまでこのようにして教員確保困難地域に教員を確保していた。
 次に、人事異動の現状については、前回、教諭の転出入は合わせて約400人とお話した。昨年度末今度初の人事異動では、県への転出が170人、県からの転入が202人、合わせて372人という規模となった。
 仮に一部の市町村に人事権を移譲した場合に考慮すべき事項としては、本市では他市町村との交流がさかんに行われているが、現在の大規模な交流が解消されるまでには年数がかかる。また、基準等を変えることは、教職員に混乱が生じる。
 広域人事の仕組みをつくるにあたっては、地域によってまったく実情が異なるので、県と市で協議して何を一番大切にするかを明確にする必要がある。
 次に、広域人事に関して、今後の県との調整方針についてお話する。通常、指定都市は、退職人数から採用人数を把握して採用すると思うが、本市については、市内に自宅を有する教員が市外に多数いるため、その人たちを市内に入れていかないといけない。採用数にかかわる県との協議には厳しいものがある。加えて、新潟県は団塊の世代が7~8年ほど都市部とずれているため、もう7~8年は冷え込んだ採用となる。現在は50人くらいの採用しかないが、7~8年後には、ようやく100人前後の採用ができるようになる。
 また、広域人事については、県と市との協議の中で、市で採用した人は研修目的で必ず人事交流をするということになっている。しかも、へき地及びその周辺地域を含めてということになっている。交流規模などについてその都度県と協議することになる。
 次に、指定都市移行に際しての県との協議、調整状況については、資料7‐1の別紙「政令指定都市移行に伴う県費負担教職員の採用・異動に関する事務の取扱い」に係る県との確認の概要を参照いただきたい。2にあるように、政令市となった平成19年度までの採用を県採用教員、平成20年度初からの市独自採用を市採用教員に分けて考え、県採用職員は広域「人事異動」の中で、市採用職員については「人事交流」中で行う。
 最後に、政令市移行に伴う人事権の移譲に際して最も課題となった事項と現在の課題については、資料7‐1の5をご覧いただきたい。

[意見交換]
【委員】
 神奈川県は、指定都市もあり、適度な人口規模の市町村がバランスよく配置されている。人事異動については、他県に比べて小規模であり、実質的に同一地域内で完結しているようにみえる。他県のように広域人事の課題はあるのか。

【委員】
 県内の各市町村はある程度の規模があり、各教育事務所管内で完結している面もあるが、県全体での人事交流も行われている。

【委員】
 神奈川県には、離島やへき地の多い県のように「必ずこの地域に何回行かなければならない」などの人事のルールはないのか。

【文部科学省】
 質問の趣旨は、もともと教育事務所管内で異動が完結しているので、中核市に人事権を移譲してもあまり問題がないのではないかということか。

【委員】
 そうである。離島やへき地の多い県と適度な人口規模の市町村がバランスよく配置されている県を同じ土俵で考えるのはどうかと思う。

【文部科学省】
 神奈川県には、事務局から確認しておく。

【委員】
 横浜市では、県立高等学校や特別支援学校、国立の附属学校との人事交流はしているか。また、貴市の教職員人事課人事係の事務分掌にある学校における教職員の任免、分限、懲戒などの基準は、県のそれと大きく異なるか。

【委員】
 県立高等学校や特別支援学校、横浜国立大学とも人事交流を行っている。教職員の任免、分限、懲戒などの基準については、市長部局の基準とも調整しなければならないということもあり、県と同じではない。

【委員】
 中核市から指定都市になることで、どう変わったか。また、周辺地域にはどのような影響があったのかにつき、詳しく教えていただきたい。

【委員】
 指定都市になり人事権を得ることで、県と対等に協議ができるようになったことが大きな変化である。以前は、県の意向のままに人事異動や採用が行われていたが、いまは市の方針に基づいて採用ができる。それに伴って、責任も増え、大変ではある。

【委員】
 新潟市が指定都市として独立したことが理由で、他市町村に問題が起きたということはあるか。

【委員】
 以前より、県の人事交流は県全体に及び、規模が大きすぎると考えてきた。教員確保困難地域に近い教員が別の教員確保困難地域に行くといった、必要以上に遠い地域への異動も行われてきた。しかし、本市が指定都市になり人事権を得ることで、広域人事から外れてしまったため、いま県では、教育事務所単位での人事交流などを考え直している。そういった意味で、県には良い影響を与えたと考えている。

【委員】
 新潟市が人事権を得たことによる弊害より、今までの大規模な広域人事の見直しが行われたという良い意味での影響の方が大きいということか。

【委員】
 県にとっては、人事制度を見直すいい契機になったと考える。しかし、中核市へ人事権が移譲される場合には、2市が抜けることになる。その場合、2市の近くにある教員確保困難地域で、教員が確保できなくなる。

【委員】
 新潟市が人事権を得たことで、他市町村に影響はなかったのか。

【委員】
 本市では、市外から入ってくる教員が多く、反対に本市の教員が市外の勤務になったまま入って来れずにいるという事態が生じていた。年齢構成の軟弱さはあるが、それを入れ替えるという意味では今はいい時期である。今回の異動については、退職前ラスト1校のような教員については極力本市に入れた。その結果、転任が増え、欠員は減った。

【文部科学省】
 中核市は、「研修の義務が課せられているのに、人事権がないのはおかしい」と言い続けてきた。新潟市では、研修計画と人事とを考えあわせた新しい方針は考えているのか。

【委員】
 昨年から、マイスターという研修制度をとっている。マイスターに認定された場合には、教頭選考検査の受験資格が与えられる。昨年は6人与えられた。

(2)その他

 資料4‐1、資料5の8ページ目を非公表とする。また、次回会議も人事権の関係であるため、非公開とする。

(3)閉会

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