別添2 幼稚園を活用した子育て支援としての2歳児の受入れに係る留意点

平成19年3月31日
文部科学省 初等中等教育局 幼児教育課

1 基本的な考え方

  • 大人への依存度が高い2歳児について下線ここまで、幼稚園児としての集団的な教育を行うのではなく、幼稚園内の人的・物的環境を適切に活用し、個別のかかわりに重点を置いた子育て支援として受け入れる際には、下線ここから幼児の主体的な活動を前提として行われる満3歳以上の幼児を対象とする幼稚園教育を当てはめていくのではなく、2歳児特有の発達を踏まえた受入れに配慮し、その成果を3歳児以降の幼稚園教育に円滑につなげていくことが大切である。
  • 幼稚園を活用した子育て支援としての2歳児の受入れについては、保育所とは異なり、幼稚園教育への円滑な接続の観点から行うものである。2歳児の発達段階上の特性を踏まえ、その基本的な考え方については、次のとおりである。
    1. 2歳児の受入れに従事する者は、幼児との一対一の関係を大切にして信頼関係を築き、幼児が安心して自分の気持ちを表したり、自分の思いで行動したりするように援助することが大切である。
    2. 幼児一人一人が、食事、排泄、衣服の着替えなどの健康で清潔な生活の習慣を身に付け、自立しようとする意欲を持つようにすることが大切である。
    3. 2歳児の受入れに従事する者は、幼児と一緒にいろいろな遊びをしながら、ものや人などへの興味や関心を引き出し、幼児の世界を広げていくようにすることが大切である。
    4. 2歳児の動き方や遊び方を踏まえ、健康や安全に十分に配慮した園舎内外の環境を整備するようにすることが大切である。
    5. 親子で一緒に活動したりして、保護者が子育ての喜びや楽しみを味わう機会をつくりながら、親として成長できる場を提供していくようにすることが大切である。
  • 幼稚園で子育て支援として2歳児を受け入れることで、受入れに従事する職員が、2歳児の発育・発達への理解を深め、経験を重ねることで、実践力を高めていくことが期待される。その上で、幼稚園においては、さらにその機能を充実させて、認定こども園となることが考えられる。

2 満3歳以上の学級との関係等

  • 2歳児の特質を踏まえれば、満3歳以上の幼児とは別に2歳児のグループを編成して行うなど、工夫することが大切である。
  • 2歳児の場合、一人一人の発達、体力等の実情や家庭の状況により、毎日登園する幼児、定期的に週数回登園する幼児、不定期に登園する幼児などがいると想定される。こうしたことに配慮して、グループ等を工夫して編成することが大切である。

3 安全の確保

(1)園舎内の安全の確保

  • 保育室を中心に、園舎内の安全の点検は、職員全体で行い、安全に対する十分な配慮をすることが必要である。
    特に、保育室や廊下などの施設や設備の設置に当たっては、非常時などの避難経路の確保などに十分に配慮する必要がある。

(2)園舎外の安全の確保

  • 2歳児は、興味を持ったものにすぐにかかわり遊び出すことが多く、危険を予測したり、安全に配慮したりすることは難しい。活発に動く4~5歳児に憧れの気持ちを抱きつつも、動きがぎこちないため、一緒に活動することで2歳児にとっては危険な動きに巻き込まれてしまう可能性もある。また4~5歳児と一緒では、2歳児が思うように遊具が使えなかったりして、十分遊べないこともある。このような事情を踏まえ、園舎内と同様に園舎外の安全を確保する必要がある。

4 子育て支援としての受入れの内容等

  2歳児の発達を踏まえ、養護的側面を重視した活動の内容を検討する必要がある。また、各幼稚園には、教育目標があり、それに基づいて3歳児以上の教育の全体計画である教育課程が編成されているので、こうした3歳児以上の幼稚園教育に円滑に移行していけることにも留意し、2歳児にふさわしい活動の内容を検討する必要がある。

(1)2歳児の受入れで重視したい事項

  • 2歳児の発達の特徴として、複数の幼児が平行的に遊ぶ中で、受入れに従事する者との一対一の関係を基本とし、幼児同士が同じ活動を同じ場で行うことが多く、3歳児同士のように、かかわり合う、見合う、模倣し合うという関係にはなりにくい。
  • こうした点も踏まえれば、2歳児の受入れに際して、以下に示す保育内容を手がかりにして活動の内容を検討する必要がある。
    1. 食事、排泄、衣服の着替えなどの基本的な生活習慣を身に付ける。
    2. 全身を使う遊び、手や指を使う遊びなどを繰り返して行い、いろいろな体の動きを楽しむ。
    3. 自分の好きなものや遊具、遊びなどを見つけ、楽しむ。
    4. 友達の遊びに興味を持ったり、先生や友達と一緒に遊んだりする。
    5. 園生活に必要な言葉や、受入れに従事する者の簡単な指示がわかる。
    6. ごっこ遊びなどをする中で、先生や友達と言葉のやり取りを楽しむ。

(2)家庭との連携

  2歳児の受入れは、保護者の育児不安、負担の解消等の保護者のニーズに応えることになる。その際、単に保護者の子育てを肩代わりするのではなく、家庭と緊密な連携をとりながら、保護者の幼児の成長への理解や共感を高め、親として成長する機会を提供することが大切である。

ア 家庭との緊密な連携

1.保護者との信頼関係の構築
  • 幼児の家庭での過ごし方やグループ等での状況等について情報交換するなど、家庭と緊密な連携をとりながら、2歳児の受入れに従事する者と保護者がともに幼児を育てるという意識をもつことが大切である。
    このため、園便りや連絡帳、または活動への参観や参加、個人面談など様々な機会を使って、2歳児に関する活動の方針を家庭に伝えることなど、2歳児の受入れに従事する者と家庭の連携を深めることを積み重ね、保護者一人一人との信頼関係を築くことが大切である。
2.保護者の育児不安への対応
  • 保護者の中には、幼い我が子を登園させることに不安を感じている者もおり、折に触れて、その幼児の成長や良さを伝えながら、2歳児の受入れに従事する者に対して信頼が持てるようにするとともに、保護者自身が子育てについて自信を持てるようにしていくことが大切である。
  • 特に、育児不安が深刻化している場合は、必要に応じて地域の保健センターや相談機関と連携を図ったり、専門カウンセラーを活用したりすることができるよう、保護者の個々の悩みや相談に応じていく体制を整えることが望ましい。

イ 家庭の教育力の再生・向上につながる子育て支援

1.親子登園の機会の提供
  • 2歳児を持つ保護者の中には、子育てがよくわからず、子どもとのかかわりがうまくできないと感じている者も少なくない。こうした保護者にとっては、2歳児の受入れに従事する者が幼児たちとかかわる姿に接することが、日頃の自分の子どもとのかかわりを振り返ったり、改めて子育ての仕方を学んだりする機会となる。
      また、折に触れて子どもを通して職員や他の保護者などとつながりをもつことは、孤立した子育てから開放され、保護者自身が、子どもの自立を促すために子離れをしていくことにもつながる。
  • このようなことを踏まえ、2歳児の受入れでは、適宜、親子登園の機会をつくり、親として成長する場を提供することが考えられる。
      その際、どのような親子登園を企画していくかについて、年間を見通して計画を作成することが大切である。
      この場合、幼児たちと一緒にいろいろな遊びやゲームを楽しむ、自分の子どもと一緒に何かをつくる、母親だけでなく父親も一緒に活動する等、保護者や幼稚園の実態に沿って様々な工夫をすることが大切である。
      また、地域の人材やボランティア、子育てNPOを活用するなどして、楽しく活動しながら子育てを学べる場をつくることも大切である。
2.子育てを話し合う場の提供
  • 自我が芽生える2歳児の発達やそれに応じたかかわり方などについて、2歳児の受入れに従事する者の話を聞いたり、他の保護者と話し合ったりして、子育てを共有することは非常に大切である。
    また、3歳以上の幼児の保護者との交流の場も設けながら、子育ての経験者の話を聞くことも有効である。
3.子育てに喜びと希望を持たせる取組
  • 保護者が園行事に参加することなどを促し、3歳児、4歳児、5歳児に接する機会をつくりながら、幼児期の発達や幼稚園教育についての理解が得られるようにして、子どもの成長について見通しをもち、ともに喜びや期待が持てるようにすることが大切である。

(3)2歳児の受入れにおける計画の作成と留意事項

ア 計画の作成

  • 幼児の実態に基づいて受入れの計画を作成し、計画性のある指導を行うことが大切である。
      その際、子育て支援としての2歳児の受入れ内容は、3歳児の教育内容を下ろしてくるのではなく、2歳児の発達を踏まえたものとする必要がある。
  • 長期の計画の作成に当たっては、全職員の理解のもとに、2歳児の活動内容を十分に検討し、幼児の実態、幼稚園や地域の実態を踏まえる必要がある。
      また、幼児の発達や保護者の実態等に沿って、適宜、親子で活動する場面などを取り入れながら、親も子も楽しみに登園し、成長することにつながる計画とすることが大切である。
  • また、2歳児から3歳児への移行が円滑なものとなるよう配慮をすることが大切である。
  • 短期の計画では、幼児一人一人の興味や関心、発達等が異なり、個人差が大きいことに配慮し、家庭との連携を図りつつ、幼児一人一人の実態に即して作成することが大切である。
      特に、登園日数が異なる幼児がいるグループ等の編成に当たる場合には、どの幼児も戸惑いが少なく、安心して過ごせるように配慮することが大切である。
      また、具体的な活動の展開においては、幼児一人一人の活動に応じて、柔軟に展開していくことが必要なため、時間的にもゆとりを持った計画を立てることが大切である。
      さらに、個人別の記録等もつけながら、幼児理解を深め、一人一人について発達の見通しをもって援助をすることが大切である。
  • 2歳児が園行事に参加する際は、短時間の参加や、行事の一部への参加などの無理のない参加形態を検討する等、2歳児の発達の特性や興味・関心に配慮し、工夫する必要がある。
  • 計画の作成に当たっては、常に、実施、点検・評価を重ねながら、幼児の実態に沿った計画を作成することが大切である。
  • 2歳児の場合、年度途中での受入れや不定期的に登園する幼児、親子で登園する幼児の受入れも予想される。このため、それぞれの実態に応じて個別の計画を作成する必要がある。
  • 2歳児は、特に、緊急時に活動に従事する者の指示に従った行動がとりにくいため、避難訓練などは適宜行い、2歳児があわてず避難できるようにすることが重要である。その際、2歳児がグループ等の生活に安定する過程を見通して、年間の計画の中に位置づけるなどの配慮が必要である。

イ 留意事項

  • 2歳児は、これまでの生活経験や月齢などにより発達の個人差が大きい時期であるため、幼児一人一人の発育・発達状態を把握し、一人一人の実態に沿ったきめ細かな援助を行うことが大切である。
      また、して欲しいことや困ったことなど自分の思いをうまく言葉に表すことができないことも多いので、2歳児の受入れに従事する者は、ゆったりとした構えで幼児と接し安心感を持たせるとともに、幼児の表情やしぐさなどからその内面を読み取っていく姿勢を持つことが大切である。
  • 日々の活動では、2歳児が健康で快適な生活を送れるように、一日の中で適切な休息や水分補給を行い、食事や排泄、衣服の着替え等の基本的な生活習慣を身に付けるための援助をきめ細かく行うことが大切である。
  • 2歳児の受入れに従事する者は、幼児一人一人の発達や、興味や関心、意識の流れなどに沿って環境を構成し、幼児自らが好きな遊びを見つけ十分にそれを楽しめるような状況をつくり、遊びへの意欲を育てていくことが大切である。
      また、幼児一人一人が持つ生活のリズムに沿って、食事や午睡も含めて幼児にとって無理のない一日の活動の流れをつくることも大切である。

(4)遊具・用具

ア 2歳児の受入れに必要な遊具・用具

  • 計画に沿って2歳児の受入れを行うに当たって、必要な種類及び数の遊具・用具を備える際には、2歳児が扱いやすい大きさや形などに配慮することが大切である。
  • 幼児が直接に触れ、扱うものであるから、材料や構造上の安全性に十分配慮して、遊具を選択することが大切である。
      また、幼児にとって心地よく、親しみやすい材質であることも大切である。

イ 収納、清潔、安全点検

  • 幼児自身が、遊びの一環として遊具・用具を出し入れできることに配慮して、遊具・用具の量や種類、収納の仕方を工夫することが大切である。
  • 2歳児の場合、遊具や用具を口にすることもあるので、適宜、洗ったり拭いたり、消毒したりして、清潔や衛生に配慮していくことが大切である。
  • 3歳以上の幼児が、通常使っている用具類の中には、はさみなど2歳児が使うと危険を伴うものもあり、特に2歳児が活動する場に置く用具類などの管理を適切に行い、幼児が使用するときには2歳児の受入れに従事する者が渡すなどの配慮が大切である。
  • 戸外遊びの遊具・用具などの中には、3歳以上の幼児が使う遊具・用具と共通なものが多い。この場合、あらかじめ2歳児が使っても安全かどうかなどの点検を行い、場合によっては、2歳児の使用を制限したり、2歳児の受入れに従事する者が必ず付き添ったりするなどの配慮が大切である。

5 2歳児の受入れ体制にかかる園全体の協力と複数担当

  • 2歳児を受け入れるに当たっては、担当の職員に任せるだけでなく、職員全体の協力体制が必要である。また、2歳児を複数で担当する場合は、個々の幼児理解について話し合ったり、一緒に活動の計画を作成したりして、援助の方向について共有して臨むことが大切である。2歳児に対する職員の配置については、低年齢児の保育を実施している保育所における6対1の配置基準も参考として、受入れ体制を整備することが大切である。
  • 2歳児を複数で担当する際、年度途中の受入れも含めて受入れ当初は、幼児にとって、特定の職員とのつながりを持つことで安定することもある。必要に応じて担当制を取り入れるなど、幼児の実態に応じて柔軟な体制をとるようにすることが大切である。

6 2歳児の受入れに従事する者の資質向上

(1)2歳児の発達等についての理解

  • 2歳児の受入れに従事する者は、2歳児の発育・発達の特質を十分に理解した上で、幼児一人一人について発達の見通しを持って援助を行うことが大切である。
  • 園外研修や園内研修等を通して、2歳児の発育・発達への理解を深め、実践力を高める努力が大切である。
    また、保育所における2歳児保育の実際を見たり体験したりするなどして、2歳児の発育・発達や保育の在り方についての研修を行うことが有効である。
  • 2歳児の受入れに従事する者は、当該幼稚園の3歳児以上の教育課程に基づく教育活動とのつながりを意識して2歳児の受入れを行うことが大切であるが、2歳児の場合、特に養護的なかかわりが必要なことから、幼稚園教諭免許のほか、保育士資格を有するなど低年齢児の子育てに関する知識・経験を有することが望ましい。

(2)保護者との関係を構築する力と親育ちの支援

  • 2歳児を持つ保護者からの相談を受けたり、親育ちのプログラムを作成したりする等、積極的に子育て支援をすることが期待されているので、2歳児の受入れに従事する者の資質として、保護者との関係を構築する力をもち、子育て支援を実践していく力量をつけることが大切である。

7 その他

  • 2歳児の受入れの形態によっては、2歳児が保育されている実態があるものと考えられ、認可外保育施設として、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第59条に基づく指導監督の対象となる場合がある。その指導監督については、「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」(平成13年3月29日雇児発第177号)の別添「認可外保育施設指導監督基準」に示されているところであり、同基準を遵守する必要があることについて留意することが必要である。
    なお、児童福祉法上の保育されている実態があるか否かの判断については、「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」に示されているところである。
  • 2歳児を受け入れる際には、傷害保険の加入等についても十分配慮することが必要である。
  • 2歳児を受け入れる際には、2歳児に関する活動の方針や内容、受入れ体制等について十分に情報提供を行い、幼児や保護者が安心して登園できるようにすることが必要である。

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文部科学省初等中等教育局幼児教育企画係

(文部科学省初等中等教育局幼児教育企画係)